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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】車両のクロスメンバ
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
B62D21/02 Z
B62D21/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018037801
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019151218
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】関水 巧実
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-272356(JP,A)
【文献】実開昭59-97117(JP,U)
【文献】特開2000-127777(JP,A)
【文献】米国特許第4850448(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102013021009(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右1対のサイドメンバよりも車幅方向内側、且つ前記左右のサイドメンバの上面よりも下方に配置される被支持部材を上方から支持する車両のクロスメンバであって、
前記左右のサイドメンバの上方で車幅方向に延びるクロスメンバ本体と、
前記クロスメンバ本体の下面に固定されて車幅方向に延びる支持部材と、を備え、
前記支持部材は、前記クロスメンバ本体の車幅方向両側の外端部に下方から重なる左右の外端上板部と、前記左右の外端上板部の車幅方向内側に配置されて前記被支持部材の左右の被支持部をそれぞれ支持する左右の支持板部と、前記左右の支持板部の間に配置される中央上板部とを一体的に有し、
前記クロスメンバ本体の前記外端部と前記支持部材の前記左右の外端上板部とは、上下に重なった状態で前記左右のサイドメンバの前記上面に載置されて固定され、
前記支持部材の前記中央上板部は、前記クロスメンバ本体の車幅方向の中央部に下方から重なって固定され、
前記支持板部は、車幅方向に互いに離間して相対向する状態で前記クロスメンバ本体から下方へ延びる左右1対の縦板部と、上下方向と交叉した状態で前記左右の縦板部の下端部同士を連結して前記被支持部を上方から支持する底板部とを有し、前記クロスメンバ本体と前記左右の縦板部と前記底板部との間に前後方向に貫通する空間を区画す
ことを特徴とする車両のクロスメンバ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のクロスメンバであって、
左右の前側補強部材と左右の後側補強部材とを備え、
前記支持部材の前記左右の外端上板部は、前記クロスメンバ本体の前記外端部よりも車両前方及び車両後方に突出し、
前記前側補強部材は、前記クロスメンバ本体の前記外端部に車両前方から重なって固定されるとともに、前記支持部材の前記外端上板部に上方から重なって固定され、
前記後側補強部材は、前記クロスメンバ本体の前記外端部に車両後方から重なって固定されるとともに、前記支持部材の前記外端上板部に上方から重なって固定され、
前記クロスメンバ本体の前記外端部と前記支持部材の前記左右の外端上板部とは、前記左右の前側補強部材と前記左右の後側補強部材とによって補強される
ことを特徴とする車両のクロスメンバ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両のクロスメンバであって、
前記被支持部材は、トランスミッションであ
ことを特徴とする車両のクロスメンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のクロスメンバに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンとトランスミッションとが一体化された駆動装置を左右1対のサイドレールに装着する駆動装置の支持構造が記載されている。駆動装置には、マウントボスが形成され、マウントボスには、車幅方向に延びるサポートブラケットが装着される。左右のサイドレールには、その内側にリンホースがそれぞれ締結され、左右のリンホースには、車幅方向の内側へ延びるマウントブラケットがそれぞれ固着されている。サポートブラケットの両端を左右のマウントブラケットの上に載置した状態で、サポートブラケットの両端を左右のマウントブラケットに連結することによって、駆動装置は、左右のサイドレールに装着される。なお、同公報には、前後方向と交叉する板状のマウントボスが図示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-299598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の駆動装置(被支持部材)の支持構造では、サポートブラケット(クロスメンバ本体)と被支持部材との間に前後方向と交叉する板状のマウントボスが配置されるので、被支持部材の上方の空間のうちマウントボスが配置される領域には、線状部材(ハーネス等)を前後方向に配索することができない。このように、被支持部材の周辺の線状部材を前後方向に配索可能な空間が、被支持部材を上方から支持するためのマウントボスによって制限されてしまうので、前後方向に延びる線状部材(以下、単に線状部材という。)のレイアウトの自由度が低下してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、被支持部材を上方から支持しても、被支持部材の周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することが可能な車両のクロスメンバの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、車両前後方向に延びる左右1対のサイドメンバよりも車幅方向内側、且つ左右のサイドメンバの上面よりも下方に配置される被支持部材を上方から支持する車両のクロスメンバであって、クロスメンバ本体と、支持部材とを備える。クロスメンバ本体は、左右のサイドメンバの上方で車幅方向に延び支持部材は、クロスメンバ本体の下面に固定されて車幅方向に延びる。支持部材は、クロスメンバ本体の車幅方向両側の外端部に下方から重なる左右の外端上板部と、左右の外端上板部の車幅方向内側に配置されて被支持部材の左右の被支持部をそれぞれ支持する左右の支持板部と、左右の支持板部の間に配置される中央上板部とを一体的に有する。クロスメンバ本体の外端部と支持部材の左右の外端上板部とは、上下に重なった状態で左右のサイドメンバの上面に載置されて固定される。支持部材の中央上板部は、クロスメンバ本体の車幅方向の中央部に下方から重なって固定される。支持板部は、車幅方向に互いに離間して相対向する状態でクロスメンバ本体から下方へ延びる左右1対の縦板部と、上下方向と交叉した状態で左右の縦板部の下端部同士を連結して被支持部材を上方から支持する底板部とを有し、クロスメンバ本体と左右の縦板部と底板部との間に前後方向に貫通する空間を区画する。
【0007】
上記構成では、支持板部は、クロスメンバ本体と左右の縦板部と底板部との間に前後方向に貫通する空間を区画するので、被支持部材を上方から支持するための支持板部を被支持部材の上方に設けても、前後方向に延びる線状部材(以下、単に線状部材という。)を支持板部が区画する空間に配索することができる。このように、線状部材を前後方向に配索可能な空間に対する支持板部による制限を抑えることができるので、被支持部材を支持板部によって上方から支持しても、被支持部材の周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。
【0008】
また、支持板部は、車幅方向に互いに離間して相対向する左右の縦板部と上下方向と交叉する底板部とを有する。すなわち、線状部材を前後方向に配索可能な空間に対する支持板部による制限は、左右の縦板部及び底板部の板厚による制限であり、板厚を抑えるなどして小さくすることができるので、被支持部材を支持板部によって上方から支持しても、被支持部材の周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。
【0009】
また、クロスメンバ本体の両端部は、左右のサイドメンバ側にそれぞれ載置されるので、クロスメンバを左右のサイドメンバ側に取り付ける前に被支持部材をクロスメンバの支持板部に取り付け、その後クロスメンバ本体の両端部を左右のサイドメンバ側に載置することによって、クロスメンバ及び被支持部材を左右のサイドメンバ側に取り付けることができる。このため、予め左右のサイドメンバ側に対してクロスメンバを取り付け、クロスメンバの支持板部の下方に被支持部材を配置し、被支持部材を持ち上げて支持板部の底板部に取り付ける場合とは異なり、容易に被支持部材を左右のサイドメンバ側に取り付けることができる。
【0011】
上記構成では、クロスメンバの両端部が、左右のサイドメンバの上面に載置される。このため、クロスメンバの両端部を下方から支持するための他の部品を左右のサイドメンバ側に設けなくてもよいので、部品点数を削減することができる。例えば、左右のサイドメンバから車幅方向内側へ延びるブラケット(他の部品)を左右のサイドメンバに固定し、このブラケットにクロスメンバの両端部を載置する場合とは異なり、ブラケットを必要としないので、部品点数を削減することができる。
【0012】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の車両のクロスメンバであって、左右の前側補強部材と左右の後側補強部材とを備える。支持部材の左右の外端上板部は、クロスメンバ本体の外端部よりも車両前方及び車両後方に突出する。前側補強部材は、クロスメンバ本体の外端部に車両前方から重なって固定されるとともに、支持部材の外端上板部に上方から重なって固定される。後側補強部材は、クロスメンバ本体の外端部に車両後方から重なって固定されるとともに、支持部材の外端上板部に上方から重なって固定される。クロスメンバ本体の外端部と支持部材の左右の外端上板部とは、左右の前側補強部材と左右の後側補強部材とによって補強される。
本発明の第3の態様は、上記第1又は第2の態様の車両のクロスメンバであって、被支持部材は、トランスミッションである
【0013】
上記構成では、左右の支持板部の底板部が、トランスミッションの左右の被支持部を上方から支持する。このように、クロスメンバに左右1対の支持板部を設け、左右の支持板部によってトランスミッションを上方から支持するので、1つの支持板部でトランスミッションを支持する場合に比べてクロスメンバの支持剛性を向上させることができる。このため、クロスメンバの支持剛性を確保し、且つトランスミッションの周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、被支持部材を上方から支持しても、被支持部材の周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る車両のクロスメンバを左右のサイドメンバに取り付ける状態を示す斜視図である。
図2図1の車体フレームの要部拡大斜視図である。
図3図2の平面図である。
図4図3のIV-IV矢視断面図である。
図5図2の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0017】
図1に示すように、本開示に係る車両のクロスメンバは、車両1の後部にエンジン2が配置されるリヤエンジンバスの車体フレーム10のトランスミッションクロスメンバ(クロスメンバ)16に適用される。車体フレーム10は、車両1の車幅方向両側で前後方向に延びる左右1対のサイドメンバ11と、車幅方向に延びて左右のサイドメンバ11同士を連結する複数のクロスメンバ12(図中には、4つのクロスメンバが示されている)とによって構成される。
【0018】
図2及び図5に示すように、左右のサイドメンバ11は、上下方向と交叉する上板部11aと、上板部11aから下方に離間した位置に配置される下板部11bと、車幅方向と交叉して上板部11a及び下板部11bの車幅方向外端縁同士を連結する側板部11cとを一体的にそれぞれ有し、断面略コ字状に形成されて車両1の前後に亘って延びる。複数のクロスメンバ12は、トランスミッション(被支持部材)3を上方から支持するトランスミッションクロスメンバ16(以下、クロスメンバ16と称する)を含む。左右のサイドメンバ11のうちクロスメンバ16が取り付けられる領域には、サイドメンバ補強板17がそれぞれ設けられる。
【0019】
左右のサイドメンバ補強板17は、上下方向と交叉する上板部17aと、上板部17aから下方に離間した位置に配置される下板部17bと、車幅方向と交叉して上板部17a及び下板部17bの車幅方向内端縁同士を連結する側板部17cとを一体的に有する。左右のサイドメンバ補強板17の上板部17aは、左右のサイドメンバ11の上板部11aの上面に面接触した状態で固定される。左右のサイドメンバ補強板17の下板部17bは、左右のサイドメンバ11の下板部11bの上面に面接触した状態で固定される。左右のサイドメンバ補強板17が左右のサイドメンバ11に対して固定された状態で、左右のサイドメンバ補強板17と左右のサイドメンバ11とは、閉断面を区画する。左右のサイドメンバ11の上板部11aと左右のサイドメンバ補強板17の上板部17aには、上下方向に貫通してボルト5の挿通を許容するボルト挿通孔(図示省略)が形成される。
【0020】
図1に示すように、エンジン2は、エンジン2の前方に配置されるトランスミッション3と連結される。エンジン2は、後から2番目のクロスメンバ12の上方、且つ左右のサイドメンバ11の間に配置される。トランスミッション3は、左右のサイドメンバ11よりも車幅方向内側、且つ左右のサイドメンバ11の上面よりも下方に配置される。トランスミッション3には、車幅方向に互いに離間した位置に左右のブラケット(被支持部)4が設けられ、左右のブラケット4は、後述するようにクロスメンバ16に上方から支持される。
【0021】
図2~5に示すように、クロスメンバ16は、クロスメンバ本体20と、支持部材21と、複数(本実施形態では、4つ)の補強部材25a,25b,26a,26bとを備える。
【0022】
クロスメンバ本体20は、前後方向と交叉する後板部20aと、後板部20aから前方に離間した位置に配置される前板部20bと、上下方向と交叉して後板部20a及び前板部20bの下端縁同士を連結する下板部20cとを一体的に有し、断面略コ字状に形成されて車両1の車幅方向に略直線状に延びる。クロスメンバ本体20の車幅方向の長さは、左右のサイドメンバ11の車幅方向外端部同士を結んだ長さと略同一である。クロスメンバ本体20の車幅方向の両端部38a,38bは、左右のサイドメンバ11の上面に対し、左右のサイドメンバ補強板17の上板部17a及び後述する左右の外側支持部材22の上板部22aを介して載置された状態で固定される。
【0023】
支持部材21は、クロスメンバ本体20の下面に固定され、クロスメンバ本体20の下方で車幅方向に延びる部材であって、略クランク形状の左右1対の外側支持部材22と、略ハット形状の内側支持部材23とによって構成される。支持部材21の前端縁は、上面視において車幅方向に略直線状に延び、クロスメンバ本体20よりも前方に配置される。また、支持部材21の後端縁は、上面視において車幅方向に略直線状に延び、クロスメンバ本体20よりも後方に配置される。すなわち、支持部材21の前後方向の長さは、クロスメンバ本体20の前後方向の長さよりも長い。
【0024】
左右の外側支持部材22は、上板部22aと外側縦板部22bと外側底板部22cとを一体的にそれぞれ有する。左右の上板部22aは、上下方向と交叉し、クロスメンバ本体20の車幅方向外端部の下面に沿った状態でそれぞれ固定される。左右の上板部22aに対するクロスメンバ本体20の前後位置は、上板部22aの前後方向の略中央部である。上板部22aの車幅方向外端部は、左右のサイドメンバ補強板17の上板部17aの上面に載置される。左右の上板部22aの車幅方向内端縁は、サイドメンバ11よりも車幅方向内側、且つ左右のサイドメンバ11間の車幅方向中央よりも車幅方向外側にそれぞれ配置される。上板部22aの前端縁は、クロスメンバ本体20よりも前方に配置され、上板部22aの後端縁は、クロスメンバ本体20よりも後方に配置される。上板部22aのうちクロスメンバ本体20よりも前方の領域、及び上板部22aのうちクロスメンバ本体20よりも後方の領域には、サイドメンバ11の上面の上方で上下方向に貫通するボルト挿通孔(図示省略)がそれぞれ形成される。左右の外側縦板部22bは、左右の上板部22aの車幅方向の内端縁から曲折して車幅方向の内側下方へそれぞれ延びる。左右の外側縦板部22bの下端縁は、サイドメンバ11の上板部11aと下板部11bとの間の高さ位置に配置される。左右の外側底板部22cは、上下方向と交叉する板部であって、外側縦板部22bの下端縁から曲折して車幅方向内側へそれぞれ延びる。左右の外側底板部22cの車幅方向内端縁は、左右のサイドメンバ11間の車幅方向中央よりも車幅方向外側にそれぞれ配置され、互いに離間している。
【0025】
内側支持部材23は、上下方向と交叉して左右の外側支持部材22の外側底板部22cの上面に面接触した状態で固定される左右1対の内側底板部23d,23eと、左右の内側底板部23d,23eの車幅方向内端縁から略鉛直方向に沿って上方へ延びる左右1対の内側縦板部23a,23bと、左右の内側縦板部23a,23bの上端縁同士を連結する上板部23cと一体的に有する。左右の内側底板部23d,23eの車幅方向内端縁は、左右の外側支持部材22の外側底板部22cの車幅方向内端縁と略同じ位置に配置される。左右の内側縦板部23a,23bの上端縁は、クロスメンバ本体20の下面に接触し、車幅方向に互いに離間している。左側の内側縦板部23aは、左側の外側支持部材22の外側縦板部22bから車幅方向内側へ離間した位置で外側縦板部22bと相対向する。右側の内側縦板部23bは、右側の外側支持部材22の外側縦板部22bから車幅方向内側へ離間した位置で外側縦板部22bと相対向する。また、左右の内側縦板部23a,23bは、車幅方向に互いに離間して対向する。上板部23cは、クロスメンバ本体20の車幅方向中央部の下面に沿った状態でクロスメンバ本体20に対して固定される。上板部23cに対するクロスメンバ本体20の前後位置は、上板部23cの前後方向の略中央部である。
【0026】
左右の外側支持部材22と内側支持部材23とを固定した状態の支持部材21は、クロスメンバ本体20から下方へ延びる略U状の左右1対の支持板部30a,30bを有する。
【0027】
左側の支持板部30aは、左側の外側支持部材22の外側縦板部(縦板部)22bと、左側の外側支持部材22の外側底板部(底板部)22cと、内側支持部材23の左側の内側縦板部(縦板部)23aと、内側支持部材23の左側の内側底板部(底板部)23dとによって構成される。すなわち、左側の外側支持部材22の外側縦板部22bと、内側支持部材23の左側の内側縦板部23aとは、車幅方向に互いに離間して相対向する状態でクロスメンバ本体20から下方へ延びる左側の支持板部30aの左右1対の縦板部31,32として機能する。また、左側の外側支持部材22の外側底板部22cと左側の内側底板部23dとは、互いに上下に重なった状態で、左側の支持板部30aの底板部33として機能し、トランスミッション3の左側のブラケット4に固定され、トランスミッション3を上方から支持する。左側の支持板部30aは、クロスメンバ本体20と左右1対の縦板部31,32と底板部33との間に、前後方向に貫通する線状部材配索空間(空間)24を区画する。
【0028】
右側の支持板部30bは、右側の外側支持部材22の外側縦板部(縦板部)22bと、右側の外側支持部材22の外側底板部(底板部)22cと、内側支持部材23の右側の内側縦板部(縦板部)23bと、内側支持部材23の右側の内側底板部(底板部)23eとによって構成される。すなわち、右側の外側支持部材22の外側縦板部22bと、内側支持部材23の右側の内側縦板部23bとは、車幅方向に互いに離間して相対向する状態でクロスメンバ本体20から下方へ延びる右側の支持板部30bの左右1対の縦板部34,35として機能する。また、右側の外側支持部材22の外側底板部22cと右側の内側底板部23eとは、互いに上下に重なった状態で、右側の支持板部30bの底板部36として機能し、トランスミッション3の右側のブラケット4に固定され、トランスミッション3を上方から支持する。右側の支持板部30bは、クロスメンバ本体20と左右1対の縦板部34,35と底板部36との間に、前後方向に貫通する線状部材配索空間(空間)37を区画する。線状部材配索空間(空間)37には、前後方向に延びる線状部材(図示省略)が配索可能である。
【0029】
左右1対の支持板部30a,30bに左右のブラケット4が固定された状態の支持部材21は、内側支持部材23の左右の内側縦板部23a,23bと、左右の内側縦板部23a,23bの上端縁同士を連結する上板部23cと、左右のブラケット4と、トランスミッション3との間に、前後方向に貫通する中央貫通空間40を区画する。中央貫通空間40には、前後方向に延びる線状部材が配索可能である。
【0030】
左右のサイドメンバ11に対してクロスメンバ本体20が固定された状態の支持部材21は、左右のサイドメンバ補強板17の側板部17cと、左右の外側支持部材22の上板部22aと、左右の外側支持部材22の外側縦板部(縦板部)22bとの間に、略逆U状の端部貫通空間41を区画する。端部貫通空間41には、前後方向に延びる線状部材が配索可能である。
【0031】
複数の補強部材25a,25b,26a,26bは、左右1対の前側補強部材26a,26bと左右1対の後側補強部材25a,25bである。前側補強部材26a,26bと後側補強部材25a,25bとは、クロスメンバ本体20の前後にほぼ対称的に設けられ、略同様の構成を有し、また、左右の前側補強部材26a,26bは、クロスメンバ本体20の左右にほぼ対称的に設けられ略同様の構成を有するため、以下では、左側の前側補強部材26aについて説明し、他の補強部材26b,25a,25bの説明を省略する。
【0032】
前側補強部材26aは、断面略L字状に形成されて車幅方向に延び、支持部材21の上板部22aの上面及びクロスメンバ本体20の前板部20bの前面に固定され、クロスメンバ16を補強する。前側補強部材26aのうち支持部材21の上板部22aに重なる領域には、上下方向に貫通するボルト挿通孔(図示省略)が形成される。
【0033】
次に、エンジン2と一体化された状態のトランスミッション3を車両1に搭載する際の作業について説明する。
【0034】
トランスミッション3等(エンジン2を含む)を車両1に搭載する際には、先ず、クロスメンバ16の左右の支持板部30a,30bの底板部33,36と、トランスミッション3の左右のブラケット4とを固定する。次に、クロスメンバ16及びトランスミッション3等を車体フレーム10の上方へ釣り上げ、クロスメンバ16のクロスメンバ本体20の車幅方向の両端部38a,38bを、左右のサイドメンバ11の上面に載置する。最後に、クロスメンバ16の車幅方向両端部を、左右のサイドメンバ11、左右のサイドメンバ補強板17、クロスメンバ16の支持部材21、及びクロスメンバ16の補強部材25a,25b,26a,26bのボルト挿通孔を挿通するボルト5によって締結固定する。これによって、クロスメンバ16は、トランスミッション3を上方から支持する。
【0035】
本実施形態では、左側の支持板部30aは、クロスメンバ本体20と左右1対の縦板部31,32と底板部33との間に、前後方向に貫通する線状部材配索空間(空間)24を区画し、右側の支持板部30bは、クロスメンバ本体20と左右1対の縦板部34,35と底板部36との間に、前後方向に貫通する線状部材配索空間(空間)37を区画する。このため、トランスミッション3を上方から支持するための左右の支持板部30a,30bをトランスミッション3の上方に設けても、前後方向に延びる線状部材を左右の支持板部30a,30bが区画する空間に配索することができる。このように、線状部材を前後方向に配索可能な空間に対する左右の支持板部30a,30bによる制限を抑えることができるので、トランスミッション3を左右の支持板部30a,30bによって上方から支持しても、トランスミッション3の周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。
【0036】
また、左側の支持板部30aは、車幅方向に互いに離間して相対向する左右1対の縦板部31,32と上下方向と交叉する底板部33とを有し、右側の支持板部30bは、車幅方向に互いに離間して相対向する左右1対の縦板部34,35と上下方向と交叉する底板部36とを有する。すなわち、線状部材を前後方向に配索可能な空間に対する左右の支持板部30a,30bによる制限は、左右の縦板部31,32,34,35及び底板部33,36の板厚による制限であり、板厚を抑えるなどして小さくすることができるので、トランスミッション3を左右の支持板部30a,30bによって上方から支持しても、トランスミッション3の周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。
【0037】
また、クロスメンバ本体20の両端部38a,38bは、左右のサイドメンバ11の上面にそれぞれ載置された状態で左右のサイドメンバ11に対して固定される。このため、トランスミッション3とクロスメンバ16とを固定して一体化した状態で車体フレーム10の上方へ釣り上げ、クロスメンバ16のクロスメンバ本体20の車幅方向の両端部38a,38bを、左右のサイドメンバ11の上面に載置することができる。従って、予め左右のサイドメンバ11側に対してクロスメンバ16を固定し、固定したクロスメンバ16の下方にトランスミッション3等を配置し、トランスミッション3等を持ち上げて左右の支持板部30a,30bの底板部33,36に取り付ける場合とは異なり、容易にトランスミッション3等を左右のサイドメンバ11側に取り付けることができる。
【0038】
また、クロスメンバ本体20の両端部38a,38bが、左右のサイドメンバ11の上面に載置される。このため、クロスメンバ本体20の両端部38a,38bを下方から支持するための他の部品を左右のサイドメンバ11側に設けなくてもよいので、部品点数を削減することができる。例えば、左右のサイドメンバ11から車幅方向内側へ延びるブラケット(他の部品)を左右のサイドメンバ11に固定し、このブラケットにクロスメンバ本体20の両端部38a,38bを載置する場合とは異なり、ブラケットを必要としないので、部品点数を削減することができる。
【0039】
また、左右の支持板部30a,30bの底板部33,36が、トランスミッション3の左右のブラケット4を上方から支持する。このように、クロスメンバ16に左右1対の支持板部30a,30bを設け、左右の支持板部30a,30bによってトランスミッション3を上方から支持するので、1つの支持板部でトランスミッション3を支持する場合に比べてクロスメンバ16の支持剛性を向上させることができる。このため、クロスメンバ16の支持剛性を確保し、且つトランスミッション3の周辺の線状部材のレイアウトの自由度の低下を抑制することができる。
【0040】
また、左右の支持板部30a,30bは、車幅方向と交叉する左右の縦板部31,32,34,35及び上下方向と交叉する底板部33,36とによって構成される。このため、左右の支持板部30a,30bの前後方向に対する剛性を確保することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、クロスメンバ本体20の両端部38a,38bを、左右のサイドメンバ11の上面に対し、左右のサイドメンバ補強板17の上板部17a及び左右の外側支持部材22の上板部22aを介して載置したが、これに限定されるものではなく、クロスメンバ本体20の両端部38a,38bを、左右のサイドメンバ11の上面に直接載置してもよい。
【0042】
また、本実施形態では、クロスメンバ本体20の両端部38a,38bを、左右のサイドメンバ11の上面に載置したが、これに限定されるものではなく、左右のサイドメンバ11側(例えば、左右のサイドメンバ11に固定して左右のサイドメンバ11から車幅方向内側へ延びるブラケット等の上面)にクロスメンバ本体20の両端部38a,38bを載置してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、トランスミッション(被支持部材)3に左右のブラケット(被支持部)4を設け、クロスメンバ16に左右の支持板部30a,30bを設けたが、これに限定されるものではなく、被支持部材に1つの被支持部を設け、クロスメンバ16に1つの支持板部を設けてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、クロスメンバ16に、複数の補強部材25a,25b,26a,26bを設けたが、補強部材25a,25b,26a,26bを備えなくてもよい。
【0045】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、本開示に係る車両のクロスメンバを、バスのトランスミッションクロスメンバ16に適用したが、バス以外の車両(例えば、トラック等)に適用してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、本開示に係る車両のクロスメンバを、トランスミッション(被支持部材)3を上方から支持するためのトランスミッションクロスメンバ16に適用したが、これに限定されるものではなく、他の被支持部材を上方から支持するためのクロスメンバに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の車両のクロスメンバは、トラックその他の車両に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 車両
3 トランスミッション(被支持部材)
4 ブラケット(被支持部)
10 車体フレーム
11 左右のサイドメンバ
16 トランスミッションクロスメンバ(クロスメンバ)
17 サイドメンバ補強板
20 クロスメンバ本体
22 外側支持部材
23 内側支持部材
24,37 線状部材配索空間(空間)
30a 左側の支持板部
30b 右側の支持板部
31,32,34,35 縦板部
33,36 底板部
図1
図2
図3
図4
図5