(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】バルブの過剰締付け防止装置、およびそれを備えたバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 31/50 20060101AFI20220407BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20220407BHJP
G05G 1/08 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
F16K31/50 A
F16K1/32 A
G05G1/08 D
(21)【出願番号】P 2019534481
(86)(22)【出願日】2018-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2018028357
(87)【国際公開番号】W WO2019026815
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-05
(31)【優先権主張番号】P 2017148635
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】小林 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】小原 俊治
【審査官】小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-042742(JP,A)
【文献】特開2005-344918(JP,A)
【文献】特開2009-150529(JP,A)
【文献】特開2012-189088(JP,A)
【文献】特開2014-228058(JP,A)
【文献】特開2016-003752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0035325(US,A1)
【文献】米国特許第4483512(US,A)
【文献】米国特許第3334654(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/44-31/50,39/02,
1/00- 1/10, 1/32- 1/50
G05G 1/08- 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブの弁体が弁座に接触した状態で過剰に締め付けられることを防止する過剰締付け防止装置であって、
前記弁体が開閉する開閉方向に沿ってねじ孔が形成された台座部と、
前記ねじ孔に螺合するおねじ部が外周面に形成された円筒部、および前記円筒部の先端側の端部に設けられた頭部を有し、前記円筒部および前記頭部の内部において前記開閉方向に延びる連続した挿入空間が形成された第1ステムと、
前記第1ステムの挿入空間の内部に前記開閉方向へ移動自在に挿入された棒状部を有し、前記棒状部の端部が前記円筒部よりも前記台座部の内方に突出して前記弁体を閉じる方向へ押圧することが可能な第2ステムと、
前記第1ステムの頭部の外周を覆うように配置され、回転操作可能な形状を有する回転操作部材と、
前記回転操作部材における前記台座部に近い側の部分と前記第1ステムの頭部との間において前記開閉方向に圧縮された状態で挟まれている圧縮ばねと、
前記開閉方向と交差する方向に延びるように配置された連結ピンであって、前記第1ステムの前記頭部、前記第2ステムの前記棒状部、および前記回転操作部材を互いに相対回転できないように連結する連結ピンと、
を備えており、
前記第1ステムの前記頭部は、前記台座部の前記ねじ孔の内径よりも大きい外径を有し 前記頭部には、前記開閉方向に延びる長孔が形成され、
前記連結ピンは、前記長孔に挿入され、これにより、前記第1ステムは、前記回転操作部材および前記第2ステムに対して前記開閉方向への相対的な移動が許容されている、
ことを特徴とするバルブの過剰締付け防止装置。
【請求項2】
前記回転操作部材は、前記第1ステムの前記頭部の位置を当該回転操作部材の外部から視認できるように構成されている、
請求項1に記載のバルブの過剰締付け防止装置。
【請求項3】
前記回転操作部材には、前記第1ステムの前記頭部が当該回転操作部材の外部に突出可能な貫通孔が形成され、
前記頭部は、前記貫通孔を通して前記回転操作部材から外部に出没可能な位置に配置されている、
請求項2に記載のバルブの過剰締付け防止装置。
【請求項4】
前記第1ステムの頭部は、前記台座部の先端部におけるねじ孔の周辺部に当接した状態では、当該頭部の先端が前記回転操作部材の前記貫通孔の開口縁と一致する位置になるように配置される、請求項3に記載のバルブの過剰締付け防止装置。
【請求項5】
前記第1ステムの前記おねじ部および台座部のねじ孔は、前記圧縮ばねの内側に配置されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバルブの過剰締付け防止装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の過剰締付け防止装置と、
前記第2ステムによって閉じる方向へ押圧される弁体と、
前記弁体が閉じた位置で当該弁体に当接する位置に配置された弁座と
を備えていることを特徴とするバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバルブの過剰締付け防止装置、およびそれを備えたバルブに関する。さらに詳しくは、ねじ部分の構造が簡単であり、かつ、使用者が回転操作部材に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブを締め付けることが可能なバルブの過剰締付け防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダイヤフラムバルブなどの手動弁において、ハンドルやつまみなどの回転操作部材に過剰な回転力を与えると、ダイヤフラムなどの弁体が弁座に過剰な押圧力で押圧されることによって、弁体や弁座の劣化や破損などが生じるおそれがある。
そこで、バルブの過剰な締付けを防止するために、回転操作部材と弁体を押圧する部材との間にばねを介在させて所定の締付け力でバルブの締付けを行う手動弁が種々提案されている。
【0003】
例えば、従来の手動弁の一例として、特許文献1記載の流体制御器は、流路を有する弁箱と流路を開閉するダイアフラムと、このダイアフラムの背面側に設けられた操作機構と、この操作機構を上下動させるハンドルとから構成されている。
操作機構は、ダイアフラムを流路側へ押圧又は離間する押圧子と、上下方向に延びるシャフトであって下端部が押圧子に遊嵌されたシャフトと、当該シャフトが下端開口から挿入された筒状のステムと、このステムの外周側において上下方向に移動自在に配置されたバネ受け部と、このバネ受け部と押圧子との間隙に配設されるバネとを備えている。ステムは、ばね受け部の中央を上下方向に貫通している。
上記の筒状のステムは、ハンドルを回転操作によって時計方向および反時計方向の両方に回転することが可能である。ステムの内周面および外周面には、当該ステムがハンドルから受けた回転力によってシャフトおよびばね受け部を昇降させるために、2種類のねじ部を有する。すなわち、ステムの内周面には、螺合孔(めねじ部)が形成されている。この螺合孔は、ステムに挿入されるシャフトの外周面に形成されたおねじ部に螺合している。
また、ステムの外周面には、ねじ山(おねじ部)が形成されている。このねじ山は、ばね受け部の貫通孔内部に形成されためねじ部に螺合している。
ステムの下端外周面には、ばね受け部に当接するリング状のフランジからなる当接部が設けられている。ばね受け部がステムの当接部に当接した状態では、ステムはロックされて回転できなくなる。
このように構成された流体制御器では、ハンドルを回転させると、ハンドルの回転に伴ってステムが回動される。ステムの回動によって、ステムの螺合孔に螺合するシャフトおよび押圧子が下降し、ダイアフラムを弁箱のシール座に押圧する。それとともに、ステム外周部のねじ山に螺合するバネ受け部が下降し、このバネ受け部の下降によってバネが押圧子とバネ受け部との間隙で収縮される。ハンドルは一定以上回転されると、ばね受け部がステム下端の当接部に当接することによってその回転力が抑制され、ステムの回動が停止される。ステムの回動が停止した状態では、バネ受け部の下降によってバネが押圧、収縮されている。そのため、ステムの回転がロックされていてもバネによる一定の弾性力によって押圧子が押圧されるので、ダイアフラムがシール座へ押圧されて流路が閉鎖される。
【0004】
上記の流体制御器では、ステムの内部にはシャフトと螺合する螺合孔が形成され、さらに、ステムの外周面にはねじ受け部と螺合するねじ山が形成されており、ねじ部分の構造が非常に複雑である。
しかも、ステムの内外に形成されたねじ部分の構造が複雑であるために、ステムにわずかでも不良があればステム内部でシャフトが引っかかるか、またはステム外周面でねじ受け部が引っかかるおそれがあるので、過剰な締め付けを防止する動作を確実に行うことができないおそれがある。
また、ステムに過剰な回転力を与えたときには、ばね受け部がステム下端のフランジ状の当接部に局所的に押し付けられることにより、フランジ状の当接部が変形や破損するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべく、ねじ部分の構造が簡単であり、かつ、小型で、使用者が回転操作部材に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブを締め付けることが可能なバルブの過剰締付け防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバルブの過剰締付け防止装置は、バルブの弁体が弁座に接触した状態で過剰に締め付けられることを防止する過剰締付け防止装置であって、前記弁体が開閉する開閉方向に沿ってねじ孔が形成された台座部と、前記ねじ孔に螺合するおねじ部が外周面に形成された円筒部、および前記円筒部の先端側の端部に設けられた頭部を有し、前記円筒部および前記頭部の内部において前記開閉方向に延びる連続した挿入空間が形成された第1ステムと、前記第1ステムの挿入空間の内部に前記開閉方向へ移動自在に挿入された棒状部を有し、前記棒状部の端部が前記円筒部よりも前記台座部の内方に突出して前記弁体を閉じる方向へ押圧することが可能な第2ステムと、前記第1ステムの頭部の外周を覆うように配置され、回転操作可能な形状を有する回転操作部材と、前記回転操作部材における前記台座部に近い側の部分と前記第1ステムの頭部との間において前記開閉方向に圧縮された状態で挟まれている圧縮ばねと、前記開閉方向と交差する方向に延びるように配置された連結ピンであって、前記第1ステムの前記頭部、前記第2ステムの前記棒状部、および前記回転操作部材を互いに相対回転できないように連結する連結ピンと、を備えており、前記第1ステムの前記頭部は、前記台座部の前記ねじ孔の内径よりも大きい外径を有し、前記頭部には、前記開閉方向に延びる長孔が形成され、前記連結ピンは、前記長孔に挿入され、これにより、前記第1ステムは、前記回転操作部材および前記第2ステムに対して前記開閉方向への相対的な移動が許容されている、ことを特徴とする。
【0008】
上記のバルブの過剰締付け防止装置の構成では、ねじ部分は、1組のみであり、具体的には、第1ステムの円筒部の外周面に形成されたおねじ部と当該おねじ部に螺合する台座部のねじ孔とによって構成されている。そのため、第1ステムの構造が非常に簡単になり、ねじ部分における引っかかるおそれが低減する。また、第1ステムを台座部から取り外すだけで、ねじ部分が外部に露出するので、ねじ部分のメンテナンスも非常に楽である。しかも、バルブの閉動作時において弁体を押圧する第2ステムが停止した後に長孔を有する第1ステムが圧縮ばねを縮めながら閉方向に進行し、第1ステムの頭部が台座部に当接したときにバルブの締付けが完了されるので、機構的に過剰な締付けを防止する。これにより、使用者が回転操作部材に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブを締め付けることが可能である。
【0009】
具体的には、バルブを閉める動作では、使用者が回転操作部材を手動で閉方向に回転操作すれば、回転操作部材に対して連結ピンによって連結された第1ステムおよび第2ステムも回転する。第1ステムの円筒部の外周側のおねじ部は、台座部のねじ孔に螺合しているので、回転操作部材、第1ステム、および第2ステムは、一体となって回転しながら閉方向へ進む。第1ステムおよび第2ステムが台座部の内部へより深く挿入されることにより、第2ステムの端部は、弁体を閉方向へ押圧する。
【0010】
弁体が弁座に接触したときには、第2ステム、および当該第2ステムと連結ピンを介して連結された回転操作部材は、閉方向への進行を停止する。
【0011】
一方、第1ステムは、その頭部に形成された開閉方向に延びる長孔の内部に連結ピンが長孔に挿入されていることにより、第1ステムは、回転操作部材および第2ステムに対して前記開閉方向への相対的な移動が許容されている。そのため、弁体が弁座に接触した状態で回転操作部材をさらに回転すれば、第1ステムのみがその円筒部のおねじ部が台座部のねじ孔に螺合しながらさらに閉じる方向へ進行する。
【0012】
このとき、第1ステムの頭部と回転操作部材における台座部に近い側の端部との間の距離が縮まることにより、これらの間に介在する圧縮ばねが圧縮されて回転操作部材を閉方向へ押圧する力は増大する。回転操作部材が圧縮ばねから受ける押圧力は、連結ピンを介して第2ステムへ伝達され、第2ステムは、弁体をさらに押圧する。この状態では、第2ステムは、第1ステムと台座部との螺合による締付け力を受けずに、圧縮ばねの押圧力を受けて弁体を押圧するので、バルブの過剰な締め付けを防ぐ。
【0013】
さらに具体的に言えば、第1ステムがさらに閉方向へ進行したとき、台座部のねじ孔の内径よりも大きい外径を有する第1ステムの頭部は、台座部の先端部におけるねじ孔の周辺部に当接することにより、第1ステムの閉方向への進行は停止する。これにより、第1ステムの頭部と回転操作部材における台座部に近い側の端部との間に介在する圧縮ばねの圧縮力は、それ以上増大しないので、回転操作部材および連結ピンを介して第2ステムが受ける圧縮ばねから受ける押圧力は、増大しなくなり、バルブの過剰な締付けを防ぐことが可能になる。
【0014】
この状態では、回転操作部材をさらに回転して締め付けようとしても、回転操作部材の内部では、第1ステムの頭部が台座部の先端部にすでに当接して第1ステムの進行ができない状態であるので、たとえ回転操作部材に大きな回転操作力を加えても、圧縮ばねはそれ以上収縮しないので、バルブの過剰な締め付けを確実に防ぐことが可能である。
【0015】
前記回転操作部材は、前記第1ステムの前記頭部の位置を当該回転操作部材の外部から視認できるように構成されているのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、第1ステムの頭部の位置を回転操作部材の外部から視認できるので、回転操作部材を手動で回転してバルブの閉動作を行うときに、第1ステムの頭部が台座部に当接して停止してバルブの締付け作業が終了したことを使用者は視覚を用いて容易かつ確実にチェックすることが可能である。
【0017】
前記回転操作部材には、前記第1ステムの前記頭部が当該回転操作部材の外部に突出可能な貫通孔が形成され、前記頭部は、前記貫通孔を通して前記回転操作部材から外部に出没可能な位置に配置されているのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、第1ステムの頭部は、回転操作部材の貫通孔を通して回転操作部材から外部に出没可能な位置に配置されている。これにより、第1ステムの頭部の位置を回転操作部材の外部から視認することが可能になり、バルブの締付け作業が終了したことを使用者は視覚を用いて容易かつ確実にチェックすることが可能である。
【0019】
前記第1ステムの頭部は、前記台座部の先端部におけるねじ孔の周辺部に当接した状態では、当該頭部の先端が前記回転操作部材の前記貫通孔の開口縁と一致する位置になるように配置されるのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、第1ステムの頭部が台座部の先端部におけるねじ孔の周辺部に当接した状態では、頭部の先端が回転操作部材の貫通孔の開口縁と一致するので、この頭部の先端の位置が貫通孔の開口縁と一致しているか否かを見るだけで、バルブの締付け作業が終了したことを使用者はより容易で、しかもより確実にチェックすることが可能になる。
【0021】
前記第1ステムの前記おねじ部および台座部のねじ孔は、前記圧縮ばねの内側に配置されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、圧縮ばねの内側において、台座部、第1ステム、および当該第1ステムの内部に挿入された第2ステムの3つの部品を配置することが可能になり、当該過剰締付け防止装置の小型化を達成することが可能になる。
【0023】
本発明のバルブは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の過剰締付け防止装置と、前記第2ステムによって閉じる方向へ押圧される弁体と、前記弁体が閉じた位置で当該弁体に当接する位置に配置された弁座とを備えていることを特徴とする。
【0024】
上記のように構成されたバルブは、上記の過剰締付け防止装置を備えていることにより、ねじ部分の構造が簡単であり、しかも、バルブの閉動作時において弁体を押圧する第2ステムが停止した後に長孔を有する第1ステムが圧縮ばねを縮めながら閉方向に進行し、第1ステムの頭部が台座部に当接したときにバルブの締付けが完了されるので、機構的に過剰な締付けを防止することにより、使用者が回転操作部材に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブを締め付けることが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のバルブの過剰締付け防止装置およびそれを備えたバルブによれば、ねじ部分の構造が簡単であり、かつ、使用者が回転操作部材に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブを締め付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係る過剰締付け防止装置を備えたバルブの全体構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の連結ピンによってハンドル下部、第1ステム、および第2ステムが互いに相対的に回転できないように連結されることを説明する断面説明図である。
【
図3】ハンドル下部、第1ステム、および第2ステムが分離されている状態を示す断面説明図である。
【
図4】
図1の過剰締付け防止装置の使用方法の手順を示す図であって、バルブの全開状態を示す断面説明図である。
【
図5】
図1の過剰締付け防止装置の使用方法の手順を示す図であって、バルブの全閉し始めの状態を示す断面説明図である。
【
図6】
図1の過剰締付け防止装置の使用方法の手順を示す図であって、バルブの全閉状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
つぎに図面を参照しながら本発明のバルブの過剰締付け防止装置およびそれを備えたバルブの実施形態についてさらに詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るバルブの過剰締付け防止装置を備えたバルブとして、
図1に示されるバルブ(1)は、手動で開閉操作される手動弁であり、一例として弁体(4)としてダイヤフラム弁を備えたダイヤフラムバルブが示されている。
【0028】
バルブ(1)は、バルブの過剰締め付けを防止する過剰締付け防止装置(2)と、弁箱(3)と、弁体(4)と、弁座(5)とを備える。
【0029】
弁箱(3)は、その内部に流体が流れる流路(3a)が形成され、流路(3a)の内部に弁座(5)が設けられている。弁座(5)は、流路(3a)の一部を閉塞する形状を有する。
【0030】
弁体(4)は、例えばダイヤフラム弁などからなり、弁箱(3)の弁座(5)の上方位置に配置され、開閉方向(A)に往復移動し、弁座(5)に当接して流路(3a)を閉じる閉位置と弁座(5)から離間して流路(3a)を開く開位置との間を移動することが可能である。弁体(4)は、ダイヤフラム弁以外でも、力を受けたときに開閉可能な構成であればよい。
【0031】
本実施形態のバルブ(1)は、弁体(4)の開閉方向(A)が
図1の上下方向になるように構成されているが、この位置関係は相対的なものであり、本発明はこれに限定されるものではなく、開閉方向(A)が上下方向以外の他の方向、例えば水平方向を向くように構成されてもよい。
弁座(5)は、弁体(4)が閉じた位置で当該弁体(4)に当接する位置に配置されている。
【0032】
過剰締付け防止装置(2)は、バルブ(1)の弁体(4)が弁座(5)に接触した状態で過剰に締め付けられることを防止するような構成を有する。
具体的には、過剰締付け防止装置(2)は、台座部(6)と、第1ステム(7)と、第2ステム(8)と、回転操作部材であるハンドル(9)と、圧縮コイルばね(10)と、連結ピン(11)とを備えている。
【0033】
台座部(6)の上部には、貫通したねじ孔(6a)が、弁体(4)が開閉する開閉方向(A)に沿って形成されている。台座部(6)の内部には、第2ステム(8)の下端部(8b)および弁体(4)の一部が収容されている。
【0034】
第1ステム(7)は、
図1~3に示されるように、ねじ孔(6a)に螺合するおねじ部(7c)が外周面に形成された円筒部(7a)、および当該円筒部(7a)の先端側の端部に設けられた頭部(7b)を有する。円筒部(7a)および頭部(7b)の内部には、開閉方向(A)に延びる連続した挿入空間(7d)が形成されている。
【0035】
第2ステム(8)は、第1ステム(7)の挿入空間(7d)の内部に開閉方向(A)へ移動自在に挿入された棒状部(8a)を有し、当該棒状部(8a)の下端部(8b)が円筒部(7a)よりも台座部(6)の内方に突出して弁体(4)を閉じる方向(A1)へ押圧することが可能である。本実施形態では、下端部(8b)とダイヤフラム弁からなる弁体(4)との間にダイヤフラム押さえ(14)が配置された構成が示されているが、台座部(6)内部の構成について適宜変更してもよい。
【0036】
ハンドル(9)は、第1ステム(7)の頭部(7b)の外周を覆うように配置され、使用者が手動で回転操作可能な形状を有する。ハンドル(9)は、ハンドル下部(9a)と、ハンドル上部(9b)とを有する略円筒形状の部材である。ハンドル下部(9a)の外周面に形成されたおねじ部とハンドル上部(9b)の内周面に形成されたねじ孔とが螺合することによって、ハンドル下部(9a)とハンドル上部(9b)とが連結されている。
【0037】
ハンドル(9)の上部には、第1ステム(7)の頭部(7b)が当該ハンドル(9)の外部に突出可能な上部貫通孔(9c)が形成されている。第1ステム(7)の頭部(7b)は、上部貫通孔(9c)を通してハンドル(9)から外部に出没可能な位置に配置されている。これにより、ハンドル(9)は、第1ステム(7)の頭部(7b)の位置を当該ハンドル(9)の外部から視認できるように構成されている、
【0038】
圧縮コイルばね(10)は、ハンドル(9)における台座部(6)に近い側の部分であるハンドル下部(9a)と第1ステム(7)の頭部(7b)との間において開閉方向(A)に圧縮された状態で挟まれている。圧縮コイルばね(10)は、圧縮されることにより弾性力を発生する圧縮ばねの一種であり、コイル形状を有する。本実施形態では、頭部(7b)に取り付けられたばね押さえ(13)によって圧縮コイルばね(10)を上方から押さえているが、本発明はこれに限定されるものではない。頭部(7b)の一部を水平方向に突出させ、その突出部分によって圧縮コイルばね(10)を上方から押さえてもよい。
【0039】
連結ピン(11)は、開閉方向(A)と交差する方向、具体的には、本実施形態では、開閉方向(A)と直交する水平方向、に延びるように配置された連結ピン(11)であって、第1ステム(7)の頭部(7b)、第2ステム(8)の棒状部(8a)、およびハンドル(9)を互いに相対回転できないように連結する。具体的には、
図2~3に示されるように、第1ステム(7)の挿入空間(7d)の内部に第2ステム(8)の棒状部(8a)が挿入され、かつ、第1ステム(7)の外周側にハンドル(9)のハンドル下部(9a)が配置される。この状態では、第1ステム(7)の頭部(7b)に形成された長孔(12)、第2ステム(8)の棒状部(8a)に形成された貫通孔(8c)、およびハンドル(9)のハンドル下部(9a)に形成された貫通孔(9d)がそれぞれ水平方向に連通するように配置される。連結ピン(11)がこれらの長孔(12)、貫通孔(8c)、および貫通孔(9d)にそれぞれ挿入されることにより、第1ステム(7)の頭部(7b)、第2ステム(8)の棒状部(8a)、およびハンドル(9)を互いに相対回転できないように連結する。
【0040】
なお、本実施形態では、連結ピン(11)は、開閉方向(A)と直交する方向(水平方向)に延びているが、本発明ではこれに限定されるものではない。連結ピン(11)は、第1ステム(7)、第2ステム(8)、およびハンドル(9)を互いに相対回転できないように連結するために、開閉方向(A)と交差する方向に延びていればよい。例えば、開閉方向(A)と交差する方向であれば、水平方向から若干傾斜した方向に延びていてもよい。
【0041】
第1ステム(7)の頭部(7b)は、
図1に示されるように、台座部(6)のねじ孔(6a)の内径D1よりも大きい外径D2を有している。したがって、台座部(6)の先端部(上端部)は、第1ステム(7)の頭部(7b)に当接することによって第1ステム(7)の閉方向(A1)への移動(下降)を禁止するストッパとして機能する。
【0042】
第1ステム(7)の頭部(7b)には、開閉方向(A)に延びる上記の長孔(12)が形成されている。連結ピン(11)は、長孔(12)に挿入されている。これにより、第1ステム(7)は、ハンドル(9)および第2ステム(8)に対して開閉方向(A)への相対的な移動が許容されている。
【0043】
上記のように構成された過剰締付け防止装置(2)では、ねじ部分は、1組のみであり、具体的には、第1ステム(7)の円筒部(7a)の外周面に形成されたおねじ部(7c)と当該おねじ部(7c)に螺合する台座部(6)のねじ孔(6a)とによって構成されている。そのため、第1ステム(7)の構造が非常に簡単になり、ねじ部分における引っかかるおそれが低減する。また、第1ステム(7)を台座部(6)から取り外すだけで、ねじ部分が外部に露出するので、ねじ部分のメンテナンスも非常に楽である。
しかも、バルブ(1)の閉動作時において弁体(4)を押圧する第2ステム(8)が停止した後に長孔(12)を有する第1ステム(7)が圧縮コイルばね(10)を縮めながら閉方向に進行し、第1ステム(7)の頭部(7b)が台座部(6)に当接したときにバルブ(1)の締付けが完了されるので、機構的に過剰な締付けを防止する。これにより、使用者がハンドル(9)に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブ(1)を締め付けることが可能である。
【0044】
具体的には、上記のように構成された過剰締付け防止装置(2)を備えたバルブ(1)では、以下のようにして、バルブ(1)の閉動作が行われる。
まず、
図4の全開状態のバルブ(1)では、第1ステム(7)の頭部(7b)は、ハンドル(9)の上部貫通孔(9c)を通してハンドル(9)の上方に突出している。この状態で、使用者がハンドル(9)を手動で閉方向(A1)に回転操作すれば、ハンドル(9)に対して連結ピン(11)によって連結された第1ステム(7)および第2ステム(8)も回転する。第1ステム(7)の円筒部(7a)の外周側のおねじ部(7c)は、台座部(6)のねじ孔(6a)に螺合しているので、ハンドル(9)、第1ステム(7)、および第2ステム(8)は、一体となって回転しながら閉方向(A1)へ進む。第1ステム(7)および第2ステム(8)が台座部(6)の内部へより深く挿入されることにより、第2ステム(8)の下端部(8b)は、弁体(4)(
図1参照)を閉方向(A1)へ押圧する。このように、ハンドル(9)、第1ステム(7)、および第2ステム(8)が一体になって閉方向(A1)へ進行するときには、ハンドル(9)における台座部(6)に近い側の部分であるハンドル下部(9a)と第1ステム(7)の頭部(7b)との間に圧縮された状態で挟まれている圧縮コイルばね(10)のたわみ量は初期状態に維持されている。
【0045】
この状態では、圧縮コイルばね(10)によってハンドル下部(9a)に下向きの力が付与されているので、第2ステム(8)も下向きに押圧されている。この下向きの力は、連結ピン(11)が第1ステム(7)の長孔(12)の下端に当接することにより、第1ステム(7)によって受けられている。
【0046】
ハンドル(9)、第1ステム(7)、および第2ステム(8)が一体になって閉方向(A1)へ進行して、
図1に示される弁体(4)が弁座(5)に接触したときには、
図5に示されるように、第2ステム(8)、および当該第2ステム(8)と連結ピン(11)を介して連結されたハンドル(9)は、閉方向(A1)への進行を停止する。
【0047】
一方、第1ステム(7)は、
図5~6に示されるように、その頭部(7b)に形成された開閉方向(A)に延びる長孔(12)の内部に連結ピン(11)が長孔(12)に挿入されていることにより、第1ステム(7)は、ハンドル(9)および第2ステム(8)に対して開閉方向(A)への相対的な移動が許容されている。そのため、上記の弁体(4)が弁座(5)に接触した状態でハンドル(9)をさらに回転すれば、第1ステム(7)のみがその円筒部(7a)のおねじ部(7c)が台座部(6)のねじ孔(6a)に螺合しな
がらさらに閉じる方向(A1)へ進行する。
【0048】
このとき、第1ステム(7)の頭部(7b)(具体的には頭部(7b)に取り付けられたばね押さえ(13))と台座部(6)に近いハンドル下部(9a)との間の距離が縮まることにより、これらの間に介在する圧縮コイルばね(10)が圧縮されてハンドル(9)を閉方向(A1)へ押圧する力は増大する。ハンドル(9)が圧縮コイルばね(10)から受ける押圧力は、連結ピン(11)を介して第2ステム(8)へ伝達され、第2ステム(8)は、上記の弁体(4)をさらに押圧する。この状態では、第2ステム(8)は、第1ステム(7)と台座部(6)との螺合による締付け力を受けずに、圧縮コイルばね(10)の押圧力を受けて弁体(4)を押圧するので、バルブ(1)の過剰な締め付けを防ぐ。
【0049】
さらに具体的に言えば、第1ステム(7)がさらに閉方向(A1)へ進行したとき、台座部(6)のねじ孔(6a)の内径よりも大きい外径を有する第1ステム(7)の頭部(7b)は、台座部(6)の先端部(6b)におけるねじ孔(6a)の周辺部に当接することにより、第1ステム(7)の閉方向(A1)への進行は停止する。これにより、第1ステム(7)の頭部(7b)とハンドル下部(9a)との間に介在する圧縮コイルばね(10)の圧縮力は、それ以上増大しないので、ハンドル(9)および連結ピン(11)を介して第2ステム(8)が受ける圧縮コイルばね(10)から受ける押圧力は、増大しなくなり、バルブ(1)の過剰な締付けを防ぐことが可能になる。
【0050】
この状態では、ハンドル(9)をさらに回転して締め付けようとしても、ハンドル(9)の内部では、第1ステム(7)の頭部(7b)が台座部(6)の先端部(6b)にすでに当接して第1ステム(7)の進行ができない状態であるので、たとえハンドル(9)に大きな回転操作力を加えても、圧縮コイルばね(10)はそれ以上収縮しないので、バルブ(1)の過剰な締め付けを確実に防ぐことが可能である。
【0051】
本実施形態の過剰締付け防止装置(2)では、ハンドル(9)は、第1ステム(7)の頭部(7b)の位置を当該ハンドル(9)の外部から視認できるように構成されている。
具体的には、本実施形態の過剰締付け防止装置(2)では、ハンドル(9)には、第1ステム(7)の頭部(7b)が当該ハンドル(9)の外部に突出可能な上部貫通孔(9c)が形成されている。この頭部(7b)は、上部貫通孔(9c)を通してハンドル(9)から外部に出没可能な位置に配置されている。
【0052】
かかる構成によれば、第1ステム(7)の頭部(7b)は、ハンドル(9)の上部貫通孔(9c)を通してハンドル(9)から外部に出没可能な位置に配置されている。これにより、第1ステム(7)の頭部(7b)の位置をハンドル(9)の外部から視認することが可能になり、バルブ(1)の締付け作業が終了したことを使用者は視覚を用いて容易かつ確実にチェックすることが可能である。いいかえれば、第1ステム(7)の頭部(7b)は、その位置によってバルブの締付け完了を示すインジケータとして機能することができる。
【0053】
とくに、第1ステム(7)の頭部(7b)は、
図6に示されるように、台座部(6)の先端部(6b)におけるねじ孔(6a)の周辺部に当接した状態では、当該頭部(7b)の先端(7e)がハンドル(9)の上部貫通孔(9c)の開口縁と一致する位置になるように配置されるのが好ましい。この構成では、第1ステム(7)の頭部(7b)が台座部(6)の先端部(6b)におけるねじ孔(6a)の周辺部に当接した状態では、頭部(7b)の先端(7e)がハンドル(9)の上部貫通孔(9c)の開口縁と一致するので、この頭部(7b)の先端の位置が上部貫通孔(9c)の開口縁と一致しているか否かを見るだけで、バルブ(1)の締付け作業が終了したことを使用者はより容易で、しかもより確実にチェックすることが可能になる。
【0054】
上記の構成では、第1ステム(7)の頭部(7b)の位置をハンドル(9)の外部から視認できるので、ハンドル(9)を手動で回転してバルブ(1)の閉動作を行うときに、第1ステム(7)の頭部(7b)が台座部(6)に当接して停止してバルブ(1)の締付け作業が終了したことを使用者は視覚を用いて容易かつ確実にチェックすることが可能である。なお、上記のようにハンドル外部に突出する第1ステム(7)の頭部(7b)をインジケータとして用いる例以外でも、第1ステム(7)の頭部(7b)の位置をハンドル(9)の外部から視認できる構成であれば他の構成でもよい。例えば、他の構成として、ハンドル(9)を透明または半透明の材質で形成したり、ハンドル(9)にスリットまたはのぞき窓が形成されたりしても、第1ステム(7)の頭部(7b)をハンドル(9)の外部から見ることが可能になる。
【0055】
また、本実施形態の過剰締付け防止装置(2)では、第1ステム(7)のおねじ部(7c)および台座部(6)のねじ孔(6a)は、圧縮コイルばね(10)の内側に配置されている。この構成では、圧縮コイルばね(10)の内側において、台座部(6)、第1ステム(7)、および当該第1ステム(7)の内部に挿入された第2ステム(8)の3つの部品を配置することが可能になり、当該過剰締付け防止装置(2)の小型化を達成することが可能になる。
【0056】
本実施形態のバルブ(1)は、上記の過剰締付け防止装置(2)と、弁体(4)と、弁座(5)とを備えている。このように構成されたバルブ(1)は、過剰締付け防止装置(2)を備えていることにより、ねじ部分の構造が簡単であり、かつ、バルブ(1)の閉動作時において弁体(4)を押圧する第2ステム(8)が停止した後に長孔(12)を有する第1ステム(7)が圧縮コイルばね(10)を縮めながら閉方向(A1)に進行し、第1ステム(7)の頭部(7b)が台座部(6)に当接したときにバルブ(1)の締付けが完了されるので、機構的に過剰な締付けを防止することにより、使用者がハンドル(9)に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブ(1)を締め付けることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、バルブの過剰締付け防止装置、およびそれを備えたバルブに利用可能である。さらに詳しくは、本発明は、ねじ部分の構造が簡単であり、かつ、使用者が回転操作部材に過剰な回転力を与えても確実に所定の締付け力でバルブを締め付けることが可能なバルブの過剰締付け防止装置に利用可能であり、手動で回転操作される手動弁であれ広く利用可能である。したがって、上記実施形態に示されるようなダイヤフラムバルブ以外にも、流体の流量や圧力を調整可能な手動弁であれば広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 バルブ
2 過剰締付け防止装置
3 弁箱
4 弁体
5 弁座
6 台座部
7 第1ステム
7a 円筒部
7b 頭部
7c おねじ部
7d 挿入空間
8 第2ステム
8a 棒状部
8b 下端部
9 ハンドル(回転操作部材)
9a ハンドル下部
9b ハンドル上部
9c 上部貫通孔
10 圧縮コイルばね(圧縮ばね)
11 連結ピン
12 長孔
13 ばね押さえ
14 ダイヤフラム押さえ
A 開閉方向
A1 閉方向