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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/08 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
B65D47/08 130
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017205695
(22)【出願日】2017-10-25
(65)【公開番号】P2019077469
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒本 学
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-049218(JP,A)
【文献】特開2017-013830(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0042341(US,A1)
【文献】特開2008-110771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に取り付けられるキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体に設けられた外蓋とを有するキャップであって、
キャップ本体は容器内に連通する注出筒を有し、
外蓋は、蓋本体と、注出筒の開口部を開閉する中栓と、中栓を蓋本体に保持する保持部とを有し、
中栓は、外蓋が閉じた状態で、注出筒内に挿入される挿入部を有し、
挿入部は、注出筒の内周上部に密接する封止部と、封止部から注出筒の奥に向かって延長された延長部とを有し、
外蓋が閉じた状態で、延長部の外周上部と注出筒の内周下部との間に所定の間隙が形成され、
外蓋を開く際、中栓の挿入部が注出筒から開栓方向へ脱抜する中途段階で、延長部が注出筒の内周に当接することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
外蓋が閉じた状態で、中栓の延長部の先端が注出筒の奥端よりも奥方に突入することを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
延長部は内側に中空部が形成された筒状であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のキャップ。
【請求項4】
中栓は、がたつき可能な状態で、保持部に保持されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に取り付けられるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャップとしては、例えば図7に示すように、容器101の口部に取り付けられるキャップ本体102と、ヒンジ103を介してキャップ本体102に設けられた外蓋104とを有するものがある。キャップ本体102は容器101内に連通する注出筒105を有している。
【0003】
また、外蓋104は、蓋本体107と、注出筒105の開口部108を開閉する中栓109と、中栓109を蓋本体107に保持する保持部110とを有している。中栓109は、円盤状の栓体基部112と、栓体基部112の下面から垂設され、注出筒105内に嵌入可能な密封リング113とを有している。
【0004】
これによると、キャップ114の外蓋104を閉じることにより、中栓109の密封リング113が注出筒105内に嵌入して注出筒105を閉栓する。この状態において、密封リング113の外周が注出筒105の内周に密接することにより、密封リング113と注出筒105との間がシールされる。
【0005】
また、図8に示すように、外蓋104を開けることにより、中栓109の密封リング113が注出筒105内から開栓方向Aへ脱抜され、注出筒105の開口部108が開放される。
【0006】
尚、上記のようなキャップは例えば下記特許文献1に記載されている。
【0007】
また、工場等において、調味料等の液体を容器101内に充填する際、加熱殺菌のため温度が高い状態で液体を容器101内に充填し、キャップ114で密封することがある。この場合、充填後に温度が低下して容器101内が減圧状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-13830
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、図7に示すように液体を容器101に充填してキャップ114で密封した後、工場から出荷し、消費者等が未開封の状態から最初にキャップ114の外蓋104を開いた時(以下、初期開封時と言う)、図8に示すように、中栓109の密封リング113が注出筒105内から開栓方向Aへ脱抜されるため、初期開封直後、急激に容器101内の減圧状態が破られる。これにより、外気Bが注出筒105と中栓109の密封リング113との隙間から一気に容器101内に流入し、その反動で、容器101内の液体が注出筒105と中栓109の密封リング113との隙間を通って容器101の外部へ噴き零れるといった問題がある。
【0010】
本発明は、初期開封時に、容器内の液体が外部へ噴き零れるのを防止することが可能なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本第1発明は、容器の口部に取り付けられるキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体に設けられた外蓋とを有するキャップであって、
キャップ本体は容器内に連通する注出筒を有し、
外蓋は、蓋本体と、注出筒の開口部を開閉する中栓と、中栓を蓋本体に保持する保持部とを有し、
中栓は、外蓋が閉じた状態で、注出筒内に挿入される挿入部を有し、
挿入部は、注出筒の内周上部に密接する封止部と、封止部から注出筒の奥に向かって延長された延長部とを有し、
外蓋が閉じた状態で、延長部の外周上部と注出筒の内周下部との間に所定の間隙が形成され、
外蓋を開く際、中栓の挿入部が注出筒から開栓方向へ脱抜する中途段階で、延長部が注出筒の内周に当接するものである。
【0012】
これによると、初期開封時において、キャップの外蓋を開くことにより、中栓の挿入部が注出筒内から開栓方向へ脱抜される。この際、先ず、外蓋が開き始めた段階で、中栓の封止部が注出筒内から開栓方向へ離脱し、封止部の外周と注出筒の内周との間のシールが解除され、中栓の挿入部の外周と注出筒の内周との間に僅かな隙間が形成され、この隙間を通って外気が容器内に流入する。このとき、中栓の延長部が注出筒内に残留しているため、中栓の延長部が抵抗となって外気の流入が緩やかになる。
【0013】
その直後、外蓋の開栓方向への開き角度が増加すると、中栓の延長部が注出筒の内周に当接するため、外蓋を開く際の抵抗が増し、外蓋が一時的に半開き状態となり、中栓の延長部が抵抗となって外気の流入は緩慢な状態に維持される。
【0014】
その後、外蓋を開栓方向へさらに開いた場合、既に外気が容器内に流入済みであるため、外気が一気に容器内に流入するのを防止でき、容器内の液体が注出筒と中栓の挿入部との隙間を通って容器の外部へ噴き零れるのを防止することができる。
【0015】
また、容器を過大な力で把持する等によって、容器に過大な外力が作用し、万一、容器内の液体が噴き出そうとしても、注出筒内に残留している中栓の延長部によって液体の噴出が阻止される。
【0016】
本第2発明におけるキャップは、外蓋が閉じた状態で、中栓の延長部の先端が注出筒の奥端よりも奥方に突入するものである。
【0017】
これによると、初期開封時において、キャップの外蓋を開くことにより、中栓の延長部の先端部分が注出筒の内周の奥端部分に当接するため、外蓋を開く際の抵抗が増し、一時的に半開き状態となり、中栓の延長部が抵抗となって外気の流入は緩慢な状態に維持される。
【0018】
本第3発明におけるキャップは、延長部は内側に中空部が形成された筒状であるものである。
【0019】
これによると、延長部の剛性が低下して、延長部が変形し易くなる。このため、初期開封時において、キャップの外蓋を開くことにより、中栓の延長部は、注出筒の内周に当接した後、当接した状態で僅かに変形することで、注出筒からスムーズに脱抜される。
【0020】
本第4発明におけるキャップは、中栓は、がたつき可能な状態で、保持部に保持されているものである。
【0021】
これによると、初期開封時において、キャップの外蓋を開くことにより、中栓の延長部は、注出筒の内周に当接した後、当接した状態でがたつくことで、注出筒からスムーズに脱抜される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によると、初期開封時に、容器内の液体が外部へ噴き零れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態におけるキャップの断面図であり、外蓋を閉じた状態を示す。
図2】同、キャップの断面図であり、外蓋を僅かに開いた状態を示す。
図3】同、キャップの断面図であり、外蓋をさらに開いた状態を示す。
図4】同、キャップの断面図であり、外蓋をさらに開いた状態を示す。
図5】同、キャップの断面図であり、外蓋をさらに開いた状態を示す。
図6】同、キャップの平面図であり、外蓋を開いた状態を示す。
図7】従来のキャップの断面図であり、外蓋を閉じた状態を示す。
図8】同、キャップの断面図であり、外蓋を僅かに開いた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
図1に示すように、1はペットボトル等の容器2に装着された樹脂製のキャップである。容器2内には、例えば調味料等の液体3(内容液)が充填されている。
【0026】
キャップ1は、容器2の口部4に取り付けられるキャップ本体10と、ヒンジ11を介してキャップ本体10に設けられた外蓋12とを有している。
【0027】
キャップ本体10は、円筒状の胴部14と、胴部14の先端上部に設けられた円形状の天板部15と、容器2内に連通する注出筒16とを有している。胴部14には、下方が開放された溝状の嵌込部18が全周にわたり形成され、容器2の口部4が嵌込部18に嵌め込まれて装着される。注出筒16は、円筒状の部材であり、天板部15から上向きに突出して形成されている。
【0028】
外蓋12は、蓋本体20と、注出筒16内の開口部21を開閉する中栓22と、中栓22を蓋本体20に保持する保持筒23(保持部の一例)とを有している。蓋本体20は、円形状の蓋板部26と、蓋板部26の周縁に設けられた円環状の周壁部27とを有している。
【0029】
キャップ本体10の天板部15と外蓋12の周壁部27とには係止片45,46が形成されている。図1に示すように、外蓋12を閉じた際、係止片46が係止片45に係止することで、外蓋12が閉位置Sに固定される。
【0030】
保持筒23は、円筒状の部材であり、蓋板部26の内面に設けられている。保持筒23は、その先端開口部の内周に、径方向内向きに突出した脱落防止用突部29を全周にわたり有している。
【0031】
中栓22は、保持筒23内に遊嵌されて、径方向Rおよび高さ方向H(上下方向)へがたつき可能な状態で保持されている。中栓22は、外蓋12が閉じた状態で、注出筒16内に挿入される挿入部31と、挿入部31の一端(上端)に全周にわたって設けられた鍔部32とを有している。
【0032】
挿入部31は、上下両端が開口した円筒状の部材であり、注出筒16の内周に密接する封止部33と、封止部33から注出筒16の奥方(容器2の内方)に向かって延長された延長部34とを有している。
【0033】
外蓋12が閉じた状態で、延長部34の外周と注出筒16の内周との間には、所定の間隙35が全周にわたり形成されている。尚、延長部34の外径は注出筒16の内径よりも小さく、延長部34の外周面は、注出筒16の奥方(下方)ほど、縮径するように僅かに傾斜している。
【0034】
また、挿入部31内には、封止部33と延長部34との境界を仕切る円形状の閉鎖板36が設けられている。尚、延長部34は、内側に、閉鎖板36によって仕切られた中空部37を有している。
【0035】
鍔部32は封止部33の一端(上端)から径方向外側へ張り出すように形成されている。尚、鍔部32が脱落防止用突部29に係合することにより、中栓22が保持筒23から脱落するのを防止している。
【0036】
また、鍔部32の下面には、下方が開放された凹部39が全周にわたり形成されている。外蓋12が閉じた状態で、注出筒16の先端部が凹部39に嵌まり込み、中栓22の延長部34の先端部分34aが注出筒16の奥端部16aおよび天板部15よりも奥方(下方)に突入する。
【0037】
また、図3に示すように、外蓋12を開く際、中栓22の挿入部31が注出筒16から開栓方向Aへ脱抜する中途段階で、延長部34の先端部分34aが注出筒16の奥端部16a(下端部)の内周面に当接する。
【0038】
尚、図1に示すように、注出筒16と保持筒23と中栓22とは、キャップ本体10の中心を通る軸心40に対して、ヒンジ11から遠ざかる位置に偏心している。
【0039】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0040】
初期開封時において、図1に示す未開封の状態から外蓋12を開くことにより、図5に示すように、外蓋12と共に中栓22の挿入部31が注出筒16内から開栓方向Aへ脱抜される。この際、先ず、図2に示すように、外蓋12が開き始めた段階で、中栓22の封止部33が注出筒16内から開栓方向Aへ離脱し、封止部33の外周と注出筒16の内周との間のシールが解除され、中栓22の挿入部31の外周と注出筒16の内周との間に僅かな隙間が形成され、この隙間を通って外気Bが容器2内に流入する。このとき、中栓22の延長部34が注出筒16内に残留しているため、延長部34が抵抗となって外気Bの流入が緩やかになる。
【0041】
その直後、図3に示すように、外蓋12の開栓方向Aへの開き角度αが増加すると、延長部34の先端部分34aが注出筒16の奥端部16aの内周面に当接するため、外蓋12を開く際の抵抗が増し、外蓋12が一時的に半開き状態となり、延長部34が抵抗となって外気Bの流入は緩慢な状態に維持される。
【0042】
その後、図4に示すように、外蓋12を開栓方向Aへさらに開いた場合、既に外気Bが容器2内に流入済みであるため、外気Bが一気に容器2内に流入するのを防止でき、容器2内の液体3が注出筒16と中栓22の挿入部31との隙間を通って容器2の外部へ噴き零れるのを防止することができる。
【0043】
また、容器2を過大な力で把持する等によって、容器2に過大な外力が作用し、万一、容器2内の液体3が噴き出そうとしても、注出筒16内に残留している中栓22の延長部33によって液体3の噴出が阻止される。
【0044】
また、延長部34は内側に中空部37を有する円筒状の部材であるため、延長部34の剛性が低下して、延長部34が弾性変形し易くなる。このため、延長部34の先端部分34aは、図3に示すように注出筒16の奥端部16aの内周面に当接した後、当接した状態で僅かに弾性変形するとともに中栓22ががたつくことで、図5に示すように、注出筒16からスムーズに脱抜される。
【0045】
このようにして、中栓22の挿入部31が注出筒16内から開栓方向Aへ完全に脱抜される位置まで外蓋12を開き、注出筒16の開口部21を全開にした状態で容器2を傾けることにより、容器2内の液体3が注出筒16の開口部21を通って外部へ注ぎ出される。
【0046】
その後、図1に示すように、外蓋12を閉位置Sまで閉じることにより、中栓22の挿入部31が注出筒16内に挿入され、注出筒16の開口部21が閉鎖される。この際、注出筒16の先端部が中栓22の凹部39に嵌まり込み、中栓22の延長部34の先端部分34aが注出筒16の奥端部16aおよび天板部15よりも奥方(下方)に突入する。
【0047】
この状態で、中栓22の封止部33の外周面が全周にわたって注出筒16の内周面に密接するため、封止部33の外周面と注出筒16の内周面との間がシールされ、容器2内の液体3が注出筒16から外部へ漏出することを阻止している。
【0048】
尚、図1に示すように、外蓋12を閉位置Sまで閉じた場合、中栓22は、封止部33が注出筒16に密接しているとともに、鍔部32が外蓋12の蓋板部26に当接しているため、がたつくことなく固定される。
【0049】
上記実施の形態では、図1に示すように、外蓋12を閉位置Sまで閉じた場合、中栓22の鍔部32が外蓋12の蓋板部26に当接しているが、鍔部32と蓋板部26との間に僅かな隙間が形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 キャップ
2 容器
4 口部
10 キャップ本体
11 ヒンジ
12 外蓋
16 注出筒
16a 注出筒の奥端部
20 蓋本体
21 開口部
22 中栓
23 保持筒(保持部)
31 挿入部
33 封止部
34 延長部
34a 延長部の先端部分
35 間隙
37 中空部
A 開栓方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8