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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】外ダイヤフラムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20220407BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220407BHJP
   E04C 3/06 20060101ALI20220407BHJP
   B21C 37/15 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
E04B1/24 L
E04B1/58 506S
E04C3/06
B21C37/15 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017236556
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019105037
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000110446
【氏名又は名称】ナカジマ鋼管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 功雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 教雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 伸
(72)【発明者】
【氏名】加納 英樹
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016859(JP,A)
【文献】特開2012-130930(JP,A)
【文献】特開平04-037413(JP,A)
【文献】特開2013-174107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38 - 1/61
E04B 1/24
E04C 3/06
B21C 37/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
角形リング状に成形され、角形鋼管柱に対する梁の接合位置に外嵌される外ダイヤフラムの製造方法であって、
板厚が40mm以上の鋼板を冷間プレス成形によって、各コーナー部の内面曲率半径が均一となる角形鋼管に成形し、
前記冷間プレス成形によって成形した前記各コーナー部の内面曲率半径が均一となる角形鋼管を、その内面曲率半径が、前記角形鋼管柱の各コーナー部の外面曲率半径に応じた所定の内面曲率半径となるように絞り状に熱間ロール成形によって成形すること
を特徴とする外ダイヤフラムの製造方法。
【請求項2】
前記冷間プレス成形によって成形する角形鋼管を
各コーナー部の内面曲率半径が均一な一対のみぞ型材を組み合わせて四角形状に成形するとともに、
各コーナー部の内面曲率半径が、前記冷間プレス成形によって成形する角形鋼管の板厚の2倍から3倍となるように成形すること
を特徴とする請求項1に記載の外ダイヤフラムの製造方法。
【請求項3】
前記熱間ロール成形によって成形する角形鋼管を、各コーナー部の内面曲率半径が、前記熱間ロール成形によって成形する角形鋼管の板厚の1倍から2倍となるように成形すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外ダイヤフラムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角形リング状に成形され、角形鋼管柱に対する梁の接合位置に外嵌される外ダイヤフラムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、梁の接合位置を補強した角形鋼管柱としては、例えば、特許文献1に示すような角形鋼管柱がある。特許文献1に示す角形鋼管柱においては、角形鋼管柱に対する梁の接合位置であって、当該角形鋼管柱の長さ方向の複数箇所に、角形リング状の外ダイヤフラムを外篏して溶接結合することにより梁の接合位置を補強する。
【0003】
特許文献1に示す角形鋼管柱に用いられる外ダイヤフラムは、外ダイヤフラム用の角形鋼管を加熱手段(加熱炉)及び成形手段を用いて熱間成形し、熱間成形した角形鋼管を冷却後、切断装置により所定の寸法で角形リング状に切断することによって製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-16859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す角形鋼管柱に外篏される外ダイヤフラムは、最終製品の角形鋼管の断面形状に比べて若干の加工量(度)を残した(最終製品の角形鋼管の断面形状に成形する全加工量の70%から80%程度で加工した)角形近似断面の半成形鋼管を、加熱手段(加熱炉)及び成形手段を用いて熱間成形することによって製造するため、製造された外ダイヤフラムは、その断面厚さが不均一であるとともに、その各コーナー部の外面曲率半径R図6(b))が大きくなる。すなわち、梁の接合面である当該外ダイヤフラムの外周の平板部分(コーナー部の曲率部分を除く平坦な部分)が狭くなる。そのため、例えば、図6(b)及び(c)に示すように、外ダイヤフラム100が四角形鋼管111に外篏されて壁90に近接した角形鋼管柱110に梁20を接合させる際に、梁20を壁90に寄せて接合することができず、梁20と壁90と間に隙間Kが生じるという問題あった。
【0006】
そこで、本発明は、断面厚さが均一で且つ梁の接合面である外周の平板部分(コーナー部の曲率部分を除く平坦な部分)が周方向に大きい外ダイヤフラムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上であり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明の外ダイヤフラムの製造方法は、角形リング状に成形され、角形鋼管柱に対する梁の接合位置に外嵌される外ダイヤフラムの製造方法であって、板厚が40mm以上の鋼板を冷間プレス成形によって、各コーナー部の内面曲率半径が均一となる角形鋼管に成形し、前記冷間プレス成形によって成形した前記各コーナー部の内面曲率半径が均一となる角形鋼管を、その内面曲率半径が、前記角形鋼管柱の各コーナー部の外面曲率半径に応じた所定の内面曲率半径となるように絞り状に熱間ロール成形によって成形する方法である。
上記方法では、板厚が40mm以上の鋼板を冷間プレス成形し、その後、熱間ロール成形によって外ダイヤフラムを成形する。
【0009】
また、本発明の外ダイヤフラムの製造方法は、上記製造方法において、前記冷間プレス成形によって成形する角形鋼管を各コーナー部の内面曲率半径が均一な一対のみぞ型材を組み合わせて四角形状に成形するとともに、各コーナー部の内面曲率半径が、前記冷間プレス成形によって成形する角形鋼管の板厚の2倍から3倍となるように成形する方法である。
上記方法では、冷間プレス成形によって成形する角形鋼管を一対のみぞ型材を組み合わせて所定の内面曲率半径で成形する。
【0010】
さらに、本発明の外ダイヤフラムの製造方法は、上記製造方法において、前記熱間ロール成形によって成形する角形鋼管を、各コーナー部の内面曲率半径が、前記熱間ロール成形によって成形する角形鋼管の板厚の1倍から2倍となるように成形する方法である。
上記方法では、熱間ロール成形によって成形する角形鋼管をその板厚に対する所定の内面曲率半径で成形する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の外ダイヤフラムの製造方法によれば、断面厚さが均一であり、且つ、各コーナー部の外面曲率半径が小さく、梁の接合面である外周の平板部分(コーナー部の曲率部分を除く平坦な部分)が周方向に大きい外ダイヤフラムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る外ダイヤフラムが外篏された角形鋼管柱を用いた鉄骨構造物の斜視図である。
図2】同外ダイヤフラムが外篏された角形鋼管柱を用いた鉄骨構造物における要部の一部切り欠き平面図である。
図3】同外ダイヤフラムが外篏された角形鋼管柱を用いた鉄骨構造物における要部の縦断正面図である。
図4】同外ダイヤフラムの製造方法の冷間プレス工程における鋼管素材の形状を示す図である。
図5】同外ダイヤフラムの製造方法の熱間ロール工程の工程斜視図である。
図6】(a)は、同外ダイヤフラムが外篏された角形鋼管柱を用いた鉄骨構造物における要部の一部切り欠き平面図、(b)は、従来の製造方法で製造された外ダイヤフラムが外篏された角形鋼管柱を用いた鉄骨構造物における要部の一部切り欠き平面図、(c)は、従来の製造方法で製造された外ダイヤフラムが外篏された角形鋼管柱を用いた鉄骨構造物における要部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る外ダイヤフラム30の製造方法について説明する。
【0014】
まず、本発明の製造方法によって製造される外ダイヤフラム30が外篏される角形鋼管柱10と梁20との接合構造について説明する。図1から図3に示すように、角形鋼管柱10と梁20との接合構造においては、角形鋼管柱10に対する梁20の接合位置(仕口部11)であって、角形鋼管柱10の長さ方向の複数箇所(図1においては2箇所)に、外ダイヤフラム30がそれぞれ外篏され、溶接接合される。溶接接合された外ダイヤフラム30の四方に向く外側面30aには梁20のフランジ21の一端部が固定される。これにより、梁20が角形鋼管柱10から水平方向に延びて設けられる。
【0015】
梁20は、H形鋼により構成され、対向する2枚の平板状のフランジ21と、対向するフランジ21の間に形成されるウェブ22と、から構成される。梁20は、フランジ21が上下方向に対向した位置となり、且つウェブ22の一端面が角形鋼管柱10における一方の外側面10aに沿って当接するように、角形鋼管柱10に固着される。
【0016】
角形鋼管柱10は、冷間成形により断面視四角形状に成形される中空状の四角形鋼管12により構成される。四角形鋼管12は、所定の板厚tであり、各コーナー部12bが所定の外面曲率半径rであり、且つ、所定の外寸dとなるように冷間成形されている。なお、本実施の形態においては、角形鋼管柱10(四角形鋼管12)を冷間成形により成形しているが、これに限定されるものではなく、熱間成形により成形しても構わない。
【0017】
外ダイヤフラム30は、角形鋼管柱10(四角形鋼管12)の板厚tと同様の板厚か、或いは少し厚い板厚T(すなわち、[T≧t])で成形される。外ダイヤフラム30は、その各コーナー部30bが、角形鋼管柱10(四角形鋼管12)の外面曲率半径rよりも少し大きい内面曲率半径Rで成形されるとともに、所定の外面曲率半径Rで成形される。すなわち、外ダイヤフラム30の各コーナー部30bは、角形鋼管柱10(四角形鋼管12)の各コーナー部12bの外面曲率半径rに応じた内面曲率半径Rとなるように成形される。また、外ダイヤフラム30の各コーナー部30bは、その内面曲率半径Rが、外ダイヤフラム30の板厚T(角形鋼管柱10と同様の場合は板厚t)の1倍から2倍となるように成形される。外ダイヤフラム30は、角形鋼管柱10(四角形鋼管12)の外寸dよりも少し大きい内寸Dに成形されるとともに、所定の外寸Dとなるように成形される。外ダイヤフラム30の高さHは、固定される梁20のフランジ21の厚さに応じて設定される。
【0018】
このような寸法関係により角形鋼管柱10(四角形鋼管12)及び外ダイヤフラム30を成形することにより、角形鋼管柱10(四角形鋼管12)の外側面10aと、外ダイヤフラム30の内面との間に間隙Sが生じる。そして、この間隙Sを利用することで、角形鋼管柱10に対する外ダイヤフラム30の外篏を円滑且つ正確に行うことができる。なお、角形鋼管柱10に対する外ダイヤフラム30の溶接接合Gは、外ダイヤフラム30のそれぞれ上下部分に対して突合せ溶接(部分溶け込み溶接)により行うが、これに限定されるものではなく、隅肉溶接等により行っても構わない。
【0019】
外ダイヤフラム30が外篏された角形鋼管柱10は、所望の長さに加工されて、所定本数が建築現場等に搬送され、その下端が図示しない座板等に溶接結合されることにより所定位置に立設される。そして、角形鋼管柱10の仕口部11の外側面10a及び外ダイヤフラム30の外側面30aに梁20の端部を溶接結合によって連結することで、角形鋼管柱10を使用した鉄骨構造物が構成される。
【0020】
次に、外ダイヤフラム30の製造方法について説明する。外ダイヤフラム30は、板厚Tが40mm以上の極厚鋼板40を冷間プレス成形によって最終製品と同等の形状の冷間角形鋼管45に成形し、成形した冷間角形鋼管45を熱間ロール成形によって外ダイヤフラム用角形鋼管65に成形した後、定寸切断装置68によって切断することにより製造される。すなわち、外ダイヤフラム30は、冷間プレス工程と、熱間ロール工程と、の二工程を介して製造される。
【0021】
まず、外ダイヤフラム30の製造方法における冷間プレス工程について説明する。図4に示すように、当該冷間プレス工程においては、極厚鋼板40をレベリング70に導入して連続的に歪みを矯正することにより帯鋼板41を成形する。
【0022】
成形した帯鋼板41を幅決め・開先装置(図示せず)に導入し、帯鋼板41の両側をトリミングカッター(図示せず)によって切断して所要幅に成形するとともに開先加工を施す。開先加工を施した帯鋼板41を鋼板切断装置71に導入し、規格長に切断して一枚鋼板42を形成する。
【0023】
一枚鋼板42を折り曲げ成形プレス装置(図示せず)に導入し、曲げ型によって一枚鋼板42を長手方向に沿って二回折り曲げることにより、断面視略コ字状のみぞ型材43を成形する。ここで、みぞ型材43は、その各コーナー部43aの内面曲率半径が、その板厚の2倍から3倍となるように、均一に成形される。
【0024】
一対のみぞ型材43を溶接装置(図示せず)に導入し、一対のみぞ型材43を向き合わせて両脚縁部43bを相互に突き合わせ、突き合わせ部分を溶接し、四角形状の冷間角形鋼管45を成形する。すなわち、各コーナー部43aの内面曲率半径が均一な一対のみぞ型材43を組み合わせることで、最終製品と同等の形状であり、各コーナー部の内面曲率半径が均一な冷間角形鋼管45を成形する。
【0025】
外ダイヤフラム30の製造方法における熱間ロール工程について説明する。図5に示すように、熱間ロール工程においては、冷間プレス工程において成形された冷間角形鋼管45を加熱手段50に導入する。具体的には、搬入床51の終端部に搬送された冷間角形鋼管45は、ローラコンベヤ52により加熱手段50の加熱炉53に搬入される。冷間角形鋼管45は、加熱炉53内にて搬送経路54上で搬送されながら、各バーナー55、56の燃焼熱によって外面側から徐々に均一的に加熱される。
【0026】
加熱手段50によって加熱された冷間角形鋼管45は、加熱炉53から成形手段60へ搬送され、この成形手段60によって正規の寸法且つ形状に熱間成形されて外ダイヤフラム用角形鋼管65が成形される。具体的には、前後4段(単数段又は複数段)に設けられた各成形手段60が、機枠61側に対して位置調整自在に又は交換自在に設けられた上下一対並びに左右一対の成形ロール62、63等を介して、冷間角形鋼管45を段階的に絞り状に熱間成形する。冷間角形鋼管45は、当該熱間成形により、内寸D及び外寸Dで且つ各コーナー部30bが内面曲率半径R及び外面曲率半径Rである外ダイヤフラム用角形鋼管65に成形される。なお、内面曲率半径Rは、外ダイヤフラム用角形鋼管65の板厚Tの1倍から2倍である。
【0027】
熱間成形された外ダイヤフラム用角形鋼管65は冷却床67に受け取られ、冷却床67上を搬送されながら空冷形式にて徐冷される。冷却床67の終端に達した外ダイヤフラム用角形鋼管65は、図示していない矯正装置、洗浄装置、防錆装置へと搬送され、必要に応じてそれぞれで処理され、この処理の前後において、定寸切断装置68によって定寸Lに切断されて、角形リング状の外ダイヤフラム30に成形される。
【0028】
このように製造される外ダイヤフラム30は、図6に示すように、各コーナー部30bの外面曲率半径Rが、従来の外ダイヤフラム100における各コーナー部100aの外面曲率半径Rより小さくなる。このため、梁20の接合面である外側面30aの平板部分(コーナー部30bの曲率部分を除く平坦な部分)の周方向の長さMが、従来の外ダイヤフラム100の当該平面部分の周方向の長さMより大きくなる。それゆえに、壁90に近接した角形鋼管柱10に梁20を接合させる際に、梁20のフランジ21の一方側を壁90側に寄せて外ダイヤフラム30に溶接接合することができ、従来の角形鋼管柱110と比べて、梁20のフランジ21と壁90との間の隙間Kを狭くすることができる。
【0029】
以上のように、上記方法によれば、断面厚さ(板厚T)が均一であり、且つ、各コーナー部30bの外面曲率半径Rが小さく、梁20の接合面である外側面30aの平板部分(コーナー部30bの曲率部分を除く平坦な部分)が周方向に大きい外ダイヤフラム30を製造することができる。
【0030】
なお、本実施の形態においては、上記冷間プレス工程において成形される冷間角形鋼管45を一対のみぞ型材43を組み合わせることで成形しているが、この方法に限定されるものではなく、最終製品と同等の形状であり、各コーナー部の内面曲率半径が均一な冷間角形鋼管45を成形可能な方法であれば、例えば、一枚鋼板42を四回折り曲げることにより成形される五角形近似断面のワンシーム半成形鋼管を用いて成形しても構わない。
【符号の説明】
【0031】
10 角形鋼管柱
20 梁
30 外ダイヤフラム
30b コーナー部
40 鋼板
45 冷間角形鋼管


図1
図2
図3
図4
図5
図6