IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハタノ製作所の特許一覧

<>
  • 特許-ポータブル型電解水生成装置 図1
  • 特許-ポータブル型電解水生成装置 図2
  • 特許-ポータブル型電解水生成装置 図3
  • 特許-ポータブル型電解水生成装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】ポータブル型電解水生成装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20060101AFI20220407BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20220407BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20220407BHJP
   C25B 11/02 20210101ALI20220407BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
C25B9/00 D
C25B1/26 C
C25B11/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018161485
(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公開番号】P2020032368
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】594107103
【氏名又は名称】株式会社ハタノ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸成
(72)【発明者】
【氏名】田口 正和
(72)【発明者】
【氏名】中野 芳一
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3209817(JP,U)
【文献】国際公開第2017/064967(WO,A1)
【文献】特開2017-205749(JP,A)
【文献】特開2004-243166(JP,A)
【文献】特開平11-342390(JP,A)
【文献】米国特許第4997540(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-41546(KR,A)
【文献】中国実用新案第206511978(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に設置され、かつ吸引口および吐出口を有するケーシングと、前記ケーシング内に水密状に設けられた電装室と、前記ケーシング内の上部に設けられ、かつ前記吸引口および前記吐出口を介してケーシング外の水が出入りする通水室と、前記通水室に設けられた一対の電極と、前記電装室に設けられた給電ユニットとを備え、前記給電ユニットから前記一対の電極に通電されることによって、前記吸引口から前記通水室内に吸引された水の電気分解により電解生成物が生成されるとともに、その電解生成物が前記吐出口を介して前記ケーシング外に吐出されるようにしたポータブル型電解水生成装置であって、
前記ケーシングの上壁の中央に前記吐出口が形成され、
前記ケーシング内の上部に前記吐出口に対応して電極設置台が設けられるとともに、その電極設置台上に前記一対の電極が設置され、
前記ケーシングの周壁における前記電極設置台よりも低位に、前記吸引口が周方向に沿って形成され、
前記ケーシング内に、前記吸引口から前記電極設置台の外周縁部にかけて斜め上向きに傾斜する傾斜ガイド面が設けられ、
前記吸引口から吸引された水が前記傾斜ガイド面に沿って前記一対の電極に導かれる吸引路が形成されるように構成されていることを特徴とするポータブル型電解水生成装置。
【請求項2】
前記吸引口が周方向の延びるスリット状に形成されるとともに、周方向のほぼ全域にわたって形成されている請求項1に記載のポータブル型電解水生成装置
【請求項3】
前記吐出口がスリット状に形成されるとともに、並列に複数配置され、
前記ケーシングにおける複数の前記スリット状吐出口の各間に配置されるスリット仕切片が断面V字状~断面「レ」の字状に形成されることにより、前記スリット仕切片の下面が水平面に対し傾斜する傾斜面に形成されている請求項1または2に記載のポータブル型電解水生成装置。
【請求項4】
浴槽内に設置されるように構成されている請求項1~3のいずれか1項に記載のポータブル型電解水生成装置。
【請求項5】
浴槽水に塩化ナトリウムが溶解されており、
浴槽水の電気分解によって次亜塩素酸が生成されるように構成されている請求項4に記載のポータブル型電解水生成装置。
【請求項6】
前記吸引口が前記通水室の最下端位置に対応して配置されている請求項1~5のいずれか1項に記載のポータブル型電解水生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴槽等の水中に設置され、水を電気分解することによって電解水を生成するようにしたポータブル型電解水生成装置に関する。
【0002】
なお本発明において、「水」は広義の意味で用いられており、直接触れても人体に悪影響がないような水溶液も含み、例えば塩化ナトリウムが少量溶解した希薄な塩水等も含むものである。
【背景技術】
【0003】
近年、水素水等の電解水を用いて、健康や美容の増進や、疾病の治療を行う技術について、数多くの研究がなされ、話題にもなっている。例えば水素水を風呂に利用する、いわゆる水素風呂は、健康や美容等の様々な効果が得られるとして人気が高まっている。
【0004】
このような風呂用の水素水は、浴槽内の湯水(浴槽水)を電気分解することによって生成した水素ガスを浴槽水に溶解させて得る方法が周知である。
【0005】
例えば下記特許文献1は、浴槽内に浸漬して使用するようにした水中設置型の浴槽用水素発生装置を開示している。この水素発生装置は、吸引口および吐出口を介して浴槽内の湯水が出入りする通水室と、水密された電装室とを備え、通水室内に一対の電極が配置されるとともに、電装室内に給電ユニットが配置されている。そして給電ユニットから一対の電極に通電することで、吸引口から通水室に吸引された電極周辺の浴槽水を電気分解して水素を生成し、その水素を湯水に溶解しつつ吐出口から吐出させて水素水を浴槽内に供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録第3209817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示すような水中設置型の水素発生装置等の電解水生成装置においては、通水室に出入りする水の流れによって性能が大きく左右されることになる。例えば通水室内に吸引された水が電極周辺で滞ってしまうような場合、あるいは通水室内に吸引された水が電極周辺を通らずに吐出口から吐出されてしまうような場合には、電極で水素等の電解生成物が効率良く生成されなかったり、生成する電解生成物が素早く溶解せずに水素水等の電解水が浴槽内に十分に供給されなくなってしまい、満足な性能を得ることができないという課題が生じるおそれがある。
【0008】
そこで従来より、上記のような水中設置型の電解水生成装置においては、通水室に出入りする水の流れを適切にコントロールすることによって、水を効率良くスムーズに電気分解できて電解水を十分に供給することができるような技術の開発が切望されている。
【0009】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、水を効率良くスムーズに電気分解できて十分な電解水を供給することができるポータブル型電解水生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0011】
[1]水中に設置され、かつ吸引口および吐出口を有するケーシングと、前記ケーシング内に水密状に設けられた電装室と、前記ケーシング内の上部に設けられ、かつ前記吸引口および前記吐出口を介してケーシング外の水が出入りする通水室と、前記通水室に設けられた一対の電極と、前記電装室に設けられた給電ユニットとを備え、前記給電ユニットから前記一対の電極に通電されることによって、前記吸引口から前記通水室内に吸引された水の電気分解により電解生成物が生成されるとともに、その電解生成物が前記吐出口を介して前記ケーシング外に吐出されるようにしたポータブル型電解水生成装置であって、
前記ケーシングの上壁の中央に前記吐出口が形成され、
前記ケーシング内の上部に前記吐出口に対応して電極設置台が設けられるとともに、その電極設置台上に前記一対の電極が設置され、
前記ケーシングの周壁における前記電極設置台よりも低位に、前記吸引口が周方向に沿って形成され、
前記ケーシング内に、前記吸引口から前記電極設置台の外周縁部にかけて斜め上向きに傾斜する傾斜ガイド面が設けられ、
前記吸引口から吸引された水が前記傾斜ガイド面に沿って前記一対の電極に導かれる吸引路が形成されるように構成されていることを特徴とするポータブル型電解水生成装置。
【0012】
[2]前記吸引口が周方向の延びるスリット状に形成されるとともに、周方向のほぼ全域にわたって形成されている前項1に記載のポータブル型電解水生成装置
[3]前記吐出口がスリット状に形成されるとともに、並列に複数配置され、
前記ケーシングにおける複数の前記スリット状吐出口の各間に配置されるスリット仕切片が断面V字状~断面「レ」の字状に形成されることにより、前記スリット仕切片の下面が水平面に対し傾斜する傾斜面に形成されている前項1または2に記載のポータブル型電解水生成装置。
【0013】
[4]浴槽内に設置されるように構成されている前項1~3のいずれか1項に記載のポータブル型電解水生成装置。
【0014】
[5]浴槽水に塩化ナトリウムが溶解されており、
浴槽水の電気分解によって次亜塩素酸が生成されるように構成されている前項4に記載のポータブル型電解水生成装置。
【0015】
[6]前記吸引口が前記通水室の最下端位置に対応して配置されている前項1~5のいずれか1項に記載のポータブル型電解水生成装置。
【発明の効果】
【0016】
発明[1]のポータブル型電解水生成装置によれば、通水室内において、外ケーシングの周壁に設けられた吸引口と、外ケーシングの上壁の吐出口に対応して設置される一対の電極との間に、吸引口から電極に向かって上り傾斜する傾斜ガイド面が設けられるとともに、その傾斜ガイド面に沿って吸引路が形成されるように構成されているため、吸引口から吸引された水は、吸引路を通ってスムーズに電極まで導かれて効率良く電気分解されるとともに、その電気分解による電解生成物が吐出口から吐出されることにより、十分な電解水を確実に供給することができる。
【0017】
発明[2]のポータブル型電解水生成装置によれば、スリット状の吸引口が周方向のほぼ全域にわたって形成されているため、ケーシング外の水を周方向の全域から通水室内に効率良く吸引することができる。
【0018】
発明[3]のポータブル型電解水生成装置によれば、吐出口を構成する複数のスリット間のスリット仕切片を断面V字状等に形成して、スリット仕切片の下面を傾斜面に形成しているため、電極で生成して上昇した電解生成物による気泡がスリット仕切片の下面に当接したとしても、下面に付着せず下面の傾斜に沿って上方に移動していき、小さい気泡のままで吐出口からケーシング外に吐出されるので、電解生成物を確実に水に溶解できて電解水をより一層効率良く供給することができる。
【0019】
発明[4]のポータブル型電解水生成装置によれば、一般家庭の浴槽等において所望の電解生成物を生成させることができる。
【0020】
発明[5]のポータブル型電解水生成装置によれば、浴槽内に次亜塩素酸を生成させるものであるため、その次亜塩素酸によって浴槽内を除菌することができる。
【0021】
発明[5]のポータブル型電解水生成装置によれば、吸引口が通水室の最下端位置に対応して配置されているため、水中から引き上げた際に、通水室内の水が吸引口から自重によって確実に排出されるので、使用後の水抜き処理や水切り処理を効率良くスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1はこの発明の実施形態であるポータブル型電解水生成装置が適用された浴槽用除菌装置を示す正面断面図である。
図2図2は実施形態の浴槽用除菌装置を示す図であって、図(a)は正面図、図(b)は側面図、図(c)は平面図である。
図3図3は実施形態の浴槽用除菌装置を分解して示す斜視図である。
図4図4は実施形態の浴槽用除菌装置において上蓋部材を取り外した状態で示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1および図2はこの発明の実施形態であるポータブル型電解水生成装置が適用された浴槽用除菌装置を示す図、図3はその浴槽用除菌装置を分解して示す斜視図、図4は実施形態の浴槽用除菌装置において上蓋部材を取り外した状態で示す平面図である。
【0024】
これらの図に示すように本実施形態の浴槽用除菌装置は、浴槽の湯水の中に浸漬した状態で使用する水中設置型であり、後述するように電気分解に基づいて次亜塩素酸を生成し、その次亜塩素酸による殺菌、滅菌効果によって浴槽内の湯水の除菌を行えるように構成されている。
【0025】
本実施形態の浴槽用除菌装置は、装置全体を覆うケーシング1を備え、そのケーシング1内に主要部品として、一対の電極2と、仕切部材3と、制御基板4と、バッテリーパック5とが組み込まれている。
【0026】
ケーシング1は、ケーシング1の底壁を構成する底壁部材11と、周壁を構成する周壁部材12と、蓋(上壁)を構成する蓋部材13とを備えている。
【0027】
底壁部材11は、平面視が楕円形状に形成されており、外周縁部が少し上方に立ち上がるように形成された皿状に形成されている。
【0028】
周壁部材12は、平面視が上記底壁部材11の外周形状に倣って楕円形状に形成されており、全体として軸心方向(高さ方向)の寸法が短い楕円筒状に形成されている。
【0029】
蓋部材13は、平面視が上記周壁部材12の外周形状に倣って楕円形状に形成されており、全体として中央部が上方に膨らむようなドーム状に形成されている。この蓋部材13の中央部には、長軸方向に延び、かつ単軸方向に等間隔おきに並列に配置される複数のスリット状の吐出口131が形成されている。
【0030】
ここで本実施形態においては図1に示すように、複数のスリット状吐出口131の各間に配置されるスリット仕切片132は、下側が先鋭な断面V字状に形成されている。従って、スリット仕切片132は、その下面133が水平面に対し傾斜するように形成されており、後述するようにこの下面133に沿って、電気分解によって生成される塩素ガス等による気泡が効率良くスムーズに吐出口131に導かれて上方に吐出されるように構成されている。
【0031】
なお本実施形態においては、スリット仕切片132を断面V字状に形成するようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、スリット仕切片132を断面「レ」の字状に形成するようにしても良い。すなわち本実施形態においては、各スリット仕切片132を断面V字状に形成することによって、各スリット仕切片132の下面133を2つの傾斜面によって形成しているが、それだけに限られず本発明においては、スリット仕切片132を断面「レ」の字状に形成して、スリット仕切片132の下面133を1つの傾斜面によって形成するようにしても良い。さらに本発明において、断面V字状には、断面U字状や断面円弧状も含まれるものである。
【0032】
また蓋部材13の外周縁部下端には、周方向に間隔をおいて複数のスペーサ部134が下方に突出するように形成されている。このスペーサ部134は、蓋部材13を後述するように周壁部材12の上端に組み付けた際に、蓋部材13の外周縁部下端と周壁部材12の上端との間に介在され、それによって、両部材12,13間にスリット状の吸引口15が周方向のほぼ全周に形成されるように構成されている。
【0033】
なお図3に示すように蓋部材13の一端部には、スイッチ25を操作するためのスイッチ操作孔135が形成されている。
【0034】
仕切部材3は、平面視が上記底壁部材11の外周形状に倣って楕円形状に形成されており、下端が開口された断面逆U字状のドーム状~逆向き椀状に形成されている。
【0035】
仕切部材3の外周縁部下端は、嵌合部31として構成されている。この嵌合部31の外周面形状は、ケーシング1の底壁部材11における外周縁部上端の内周面形状に対応して形成されており、仕切部材3の嵌合部31を底壁部材11の外周縁部上端内に適合状態に嵌合できるように構成されている。
【0036】
さらに仕切部材3における嵌合部31よりも上側には外周壁部32が設けられている。この外周壁部32は、嵌合部31よりも外径寸法が一回り大きく形成されており、外周壁部32の下端面を底壁部材11の外周縁部の上端面に載置できるように構成されている。さらに仕切部材3の外周壁部32の外周面形状は、ケーシング1の周壁部材12における内周面形状に対応して形成されており、仕切部材3の外周壁部32の外側にケーシング1の周壁部材12を適合状態に外嵌できるように構成されている。
【0037】
また仕切部材3の外周壁部32よりも上側の部分は、楕円錐台形状に形成されている。すなわち仕切部材3の上壁部中央には、外周壁部32よりも外径寸法が小さい平面視楕円形状の電極設置台33が設けられている。この電極設置台33は、水平面に対し平行に配置される平坦面によって構成されている。さらに仕切部材3における外周壁部32の上端から電極設置台33にかけての領域は、外周側から電極設置台33に向けて上り傾斜する傾斜ガイド面34に形成されている。
【0038】
なおこの仕切部材3の上壁部における一端部には、スイッチ25を取り付けるためのスイッチ取付孔35が形成されている(図3参照)。
【0039】
以上の構成における仕切部材3の嵌合部31がパッキン18(図1参照)を介してケーシング1の底壁部材11の外周縁部に適合状態に嵌め込まれるとともに、仕切部材3の外周壁部32がケーシング1の底壁部材11の外周縁部上端面に載置された状態で、仕切部材3が底壁部材11の上側に取り付けられている。仕切部材3は、底壁部材11に対し水密状態に取り付けられており、底壁部材11上における仕切部材3の内部に浴槽内の湯水が浸入しないように構成されている。本実施形態においては、底壁部材11上における仕切部材3の内部が電装室30として構成されている。
【0040】
電装室30内には、制御基板4およびバッテリーパック5が収容されている。すなわち、底壁部材11の底面上にバッテリーパック5が配置されるとともに、そのバッテリーパック5が押え具51によって下方に押え込まれた状態で押え具51がねじ留め等によって底壁部材11に固定される。これによりバッテリーパック5が電装室30内に取り付けられている。なお図3に示すように押え具51とバッテリーパック5との間には、合成樹脂の発泡体によって構成され、かつ弾力性および柔軟性を有するスポンジ等の緩衝部材52が圧縮状態で介在されている。
【0041】
また押え具51の上面には、制御基板4が取り付けられるとともに、この制御基板4とバッテリーパック5とは電気的に接続されている。
【0042】
なお本実施形態においては、制御基板4およびバッテリーパック5によって給電ユニットが構成されている。
【0043】
仕切部材3における電極設置台33上には複数の電極支持突起21が取り付けられている。この電極支持突起21を介して電極設置台33上に一対の電極2が取り付けられている。一対の電極2は、渦巻き状の陽極電極端子と、渦巻き状の陰極電極端子とが2重渦巻き状に並列に配置されるようにして形成されている。
【0044】
さらに一対の電極2は、仕切部材3の上壁(電極設置台33)を水密状に貫通する導電端子22を介して制御基板4に電気的に接続されている。
【0045】
また仕切部材3におけるスイッチ取付孔35には、取付板26を介してスイッチ25が押操作可能に取り付けられるとともに、このスイッチ25は制御基板4にスイッチ25の押操作を認識可能な状態に接続されている。そしてスイッチ25の押操作に基づき、制御基板4は、バッテリーパック5から一対の電極2に対する電流の供給/停止を制御できるように構成されている。例えば電流が電極2に供給されていない状態(非通電状態)において、スイッチ25が押操作されると、制御基板4は、バッテリーパック5から一対の電極2に直流電流を供給する一方、電流が供給されている状態(通電状態)において、スイッチ25が押操作されると、制御基板5は、バッテリーパック5から一対の電極2への電流の供給を停止するように構成されている。
【0046】
なお本実施形態のポータブル除菌装置においては、仕切部材3等にLED等の発光体が組み込まれており、通電中は発光体が点灯して電気分解実施状態(通電状態)であることが入浴者等に容易に認識されるとともに、非通電時には発光体が消灯して電気分解停止状態(非通電状態)であることが容易に認識されるように構成されている。
【0047】
本実施形態において、仕切部材3の外周壁部32には、ケーシング1の周壁部材12が外嵌されるとともに、その周壁部材12の上端に、仕切部材3の上方を覆うようにしてケーシング1の蓋部材13が取り付けられる。これにより既述したように、蓋部材13の外周縁部下端に設けられたスペーサ部134が周壁部材12の上端縁部との間に介在されることによって、両部材12,13間に周方向の延びるスリット状吸引口15が周方向のほぼ全域にわたって形成される。この吸引口15は、仕切部材3の電極設置台33に設置された一対の電極2よりも低い位置に配置されるとともに、仕切部材3の傾斜ガイド面34の外周端縁(下端縁)に対応する位置に配置されている。
【0048】
また蓋部材13の吐出口131に真下に対応して、一対の電極2が配置されている。さらに蓋部材13のスイッチ操作孔135に対応して、仕切部材3に設けられたスイッチ25が配置されており、蓋部材13の上方からスイッチ操作孔135を介してスイッチ25を押操作できるように構成されている。
【0049】
ここで本実施形態においては、ケーシング1の内側における仕切部材3よりも上側の部分が通水室10として構成されている。この通水室10内に対しては、ケーシング1の外側の浴槽水が吸引口15および吐出口131を介して出入りできるように構成されている。
【0050】
なお本実施形態において、吸引口15は、通水室10の最下端位置に対応して配置されている。
【0051】
以上のように構成された本実施形態の浴槽用除菌装置は、浴槽の湯水に浸漬した状態で使用するものであるが、使用時には湯水に少量の塩化ナトリウムを溶解させて、湯水を希薄な食塩水等の塩水(塩化ナトリウム水溶液)に設定しておく。そしてその状態でスイッチ25を押操作して、一対の電極2に通電すると、塩水の電気分解よって陽極に塩素が発生して、その塩素ガスが細かい多数の気泡となって電極2から離脱して浮揚していき、蓋部材13の吐出口131を通って浴槽内に吐出されつつ、その塩素ガスが浴槽内の湯水と反応して次亜塩素酸が生成される。こうして生成した次亜塩素酸が浴槽水に溶解し、その電解水(次亜塩素酸水)による殺菌・滅菌効果によって、浴槽内が除菌されることになる。
【0052】
本実施形態の水槽用除菌装置の動作中においては、電気分解に伴って発生する熱によって湯水に上昇流が発生し、その上昇流と共に塩素ガス等の電解生成物が上昇していく。そこで本実施形態においては、一対の電極2の真上に吐出口131を形成しているため、熱による上昇流と共に塩素ガス等の電解生成物が上昇して吐出口131から吐出される。このように本実施形態の除菌装置においては、電極2からその真上の吐出口131にかけて、電解生成物が上昇流と共に上昇して吐出口131に向かう吐出路F2が形成されるため、電解生成物がケーシング1の吐出口131から浴槽内に滞りなくスムーズに供給されることにより、塩素による除菌効果を向上させることができる。
【0053】
さらに本実施形態においては、吐出口131を複数のスリットによって構成するとともに、そのスリット間に配置されるスリット仕切片132の下面133を水平面に対し傾斜する傾斜面に形成しているため、電解生成物を浴槽水内に確実に供給することができる。
【0054】
すなわち仮にスリット仕切片132の下面を水平面に平行な平坦面に形成する場合には、電極2で生成した電解生成物の気泡が上昇して吐出口131から吐出される際に、気泡の一部がスリット仕切片132の平坦な下面に当接すると、その気泡はスリット仕切片132の平坦な下面に付着して滞留してしまい、他の多数の気泡と結合して大きな気泡となってしまう。そうすると、その大きな気泡は浮力が大きいため、吐出口131を通って不用意にも水面まで上昇して消失して、電解生成物が空気中に放出されてしまう。従って電解生成物を浴槽水に確実に溶解できず、効率良く電解水を浴槽内に供給できなくなってしまう。
【0055】
そこで本実施形態においては、スリット仕切片132の下面133を傾斜面に形成しているため、電極2で発生して上昇した気泡がスリット仕切片132の下面133に当接したとしても、下面133に付着せず下面133の傾斜に沿って上方に移動していき、小さい気泡のままで、吐出口131からケーシング1の上方に吐出されるので、浴槽水に確実に溶解することになる。このように本実施形態においては、電極2で発生した電解生成物による電解水を確実に浴槽内に供給できるため、除菌効果等、電解水による効果をより確実に得ることができる。
【0056】
また本実施形態の除菌装置においては、電解生成物としての気泡が湯水と共に吐出口131から吐出されることにより、通水室10内の電極2よりも下側が負圧となり、その負圧によって、ケーシング1の外周におけるスリット状の吸引口15から浴槽内の湯水が通水室10内に吸引される。ここで本実施形態においては、仕切部材3における電極設置台33の外周縁部と、吸引口15に対応する外周壁部32の上端との間の領域を、外周側から電極設置台33に向けて上り傾斜する傾斜ガイド面34に形成しているため、吸引口15から吸引される浴槽内の湯水は、傾斜ガイド面34に沿って流通して電極2の下側に導かれる。このように通水室10内において、湯水が吸引口15から傾斜ガイド面34に沿って電極2の下側に導かれる吸引路F1が形成されるため、吸引口15から流入した湯水は、その吸引路F1を通ってスムーズに電極2まで導かれて電気分解されて、電解生成物としての塩素等が効率良く生成される。
【0057】
従って本実施形態の浴槽用除菌装置においては、浴槽内の湯水を吸引口15から電極2に導く吸引路F1と、電極2から吐出口131に導く吐出路F2とによって、所望の循環路を形成できるため、この循環路F1,F2によって、吸引した湯水を効率良くスムーズに電気分解するとともに、その電解生成物を湯水と共に浴槽内に滞りなく十分に供給でき、除菌効果をより一層向上させることができる。
【0058】
また本実施形態の浴槽用除菌装置においては、浴槽水が満たされる通水室10の最下端位置に対応して吸引口15を配置しているため、入浴後に除菌装置を浴槽から取り出した際に、通水室10内の水を吸引口15から確実に排出することができる。特に本実施形態においては、仕切部材3における傾斜ガイド面34が、通水室10の中央部から吸引口15に向かって下り傾斜するように配置されるため、通水室10内の水が傾斜ガイド面34に沿って自重により確実に流下して吸引口15からスムーズに排出される。このため本実施形態の水槽用除菌装置においては、使用後の排水処理(水抜き処理や水切り処理)を効率良くスムーズに行うことができ、使い勝手が良く利便性を向上できて、製品価値を一層高めることができる。
【0059】
なお上記実施形態においては、浴槽内の湯水に塩化ナトリウムを溶解して、その塩水を電気分解することによって、次亜塩素酸(次亜塩素酸水)等の電解水を生成する場合を例に挙げて説明しているが、それだけに限られず、本発明においては、上水を電気分解して水素ガスを生成して、その水素ガスを溶解した水素水を浴槽内に供給するようにしても良い。
【0060】
また上記実施形態においては、本発明のポータブル型電解水生成装置を、浴槽内に設置するようにした浴槽用除菌装置に適用する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、浴槽以外にも適用することができる。
【0061】
また上記実施形態においては、吸引口15を周方向に延びるスリット状に形成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、吸引口15を周方向に沿って形成すれば良く、例えば複数の円形の吸引口を周方向に沿って所定の間隔おきに形成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明のポータブル型電解水生成装置は、少量の塩化ナトリウムを溶かした浴槽水の電気分解によって生じた塩素を浴槽水内で反応させて次亜塩素酸を生成して浴槽内を除菌するようにした水中設置型の浴槽用除菌装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1:ケーシング
10:通水室
12:周壁部材(周壁)
13:蓋部材(上壁)
131:吐出口
132:スリット仕切片
133:下面
15:吸込口
2:一対の電極
30:電装室
33:電極設置台
34:傾斜ガイド面
4:制御基板(給電ユニット)
5:バッテリーパック(給電ユニット)
F1:吸引路
図1
図2
図3
図4