IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 艾科睿控股公司の特許一覧

特許7054528プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用
<>
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図1
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図2
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図3
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図4
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図5
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図6
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図7
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図8
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図9
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図10
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図11
  • 特許-プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】プロテインキナーゼ活性を抑制する化合物の結晶形態、及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20220407BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 25/32 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 25/34 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/12
A61K31/501
A61P35/00
A61P35/02
A61P17/00
A61P25/00
A61P25/18
A61P3/04
A61P3/10
A61P9/00
A61P25/24
A61P25/30
A61P25/32
A61P25/34
A61P25/36
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2018563619
(86)(22)【出願日】2017-06-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2017086760
(87)【国際公開番号】W WO2017206924
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/084300
(32)【優先日】2016-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518424947
【氏名又は名称】エクスカバリー ホールディングス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】XCOVERY HOLDINGS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁従新
(72)【発明者】
【氏名】馬勇斌
(72)【発明者】
【氏名】何偉
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-524905(JP,A)
【文献】特開2007-153893(JP,A)
【文献】特表2003-528101(JP,A)
【文献】特表2013-539765(JP,A)
【文献】芹澤一英,医薬品の多形現象と晶析の化学,2002年,p.273,278,305-17
【文献】平山令明編,有機化合物結晶作製ハンドブック -原理とノウハウ-,丸善株式会社,2008年07月25日,p.57-84
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/00 - 421/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物結晶であって、
【化1】
前記結晶のX線粉末回折パターンが4.9±0.2°、10.0±0.2°及び19.3±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項2】
前記結晶のX線粉末回折パターンが4.9±0.2°、10.0±0.2°、14.7±0.2°、16.9±0.2°、19.3±0.2°及び20.3±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する、請求項1に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項3】
前記結晶のX線粉末回折パターンが4.9±0.2°、10.0±0.2°、14.7±0.2°、16.9±0.2°、19.3±0.2°、20.3±0.2°、25.5±0.2°及び30.7±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する、請求項1又は2に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項4】
式Iの化合物の二水和物の結晶である、請求項1~3のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項5】
式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶であって、
【化2】
前記結晶のX線粉末回折パターンが10.5±0.2°、17.4±0.2°及び21.1±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項6】
前記結晶のX線粉末回折パターンが10.5±0.2°、17.4±0.2°、19.7±0.2°、21.1±0.2°、23.9±0.2°及び25.5±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する、請求項5に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項7】
前記結晶のX線粉末回折パターンが10.5±0.2°、17.4±0.2°、19.7±0.2°、21.1±0.2°、21.5±0.2°、23.9±0.2°、25.2±0.2°及び25.5±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する、請求項5又は6に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項8】
式Iの化合物の三水和物の結晶である、請求項5~7のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項9】
85%以上の純度を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶。
【請求項10】
95%以上の純度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶
【請求項11】
99%以上の純度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶。
【請求項12】
治療有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶と、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバント及び/又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項13】
治療有効量の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を、他の活性成分の少なくとも1つと組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項14】
経口製剤の形態である、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
錠剤又はカプセルの形態である、請求項12~14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
20mg~150mgの請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶が、少なくとも1つの賦形剤、アジュバント及び/又は担体とともに、50mg~500mgの総量まで配合されている、請求項12~15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記賦形剤、アジュバント及び/又は担体が、微結晶性セルロース、マンニトール、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウムセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はステアリン酸である、請求項12、14~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
0.01重量%~99重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
0.1重量%~70重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を含む、請求項12~18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
1重量%~70重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を含む、請求項12~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
1重量%~50重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を含む、請求項12~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
1重量%~30重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を含む、請求項12~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
10重量%~30重量%の請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を含む、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
患者における疾患、障害又は病態を治療するための請求項1~11のいずれか一項に記載の式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は請求項12~23のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、該疾患、障害又は病態がc-Met、RON、Axl、CSF1R、EphA2、ROS1又はROS1融合タンパク質、TRKA又はTRKA融合タンパク質、TRKB、TRKC、ALK、ALKATI又はALK融合タンパク質によって媒介される、患者における疾患、障害又は病態を治療するための結晶、その水和物及び/又は溶媒和物又は医薬組成物。
【請求項25】
前記ALK融合タンパク質がEML4-ALK又はNPM-ALKキナーゼである、請求項24に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項26】
前記疾患、障害又は病態が癌及び/又は増殖性疾患である、請求項24又は25に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項27】
前記疾患、障害又は病態が、肺癌、黒色腫、結腸癌、乳癌、肝癌、膵癌、脳癌、腎癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌及び/又は頭頸部扁平上皮癌である、請求項24~26のいずれか一項に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項28】
前記疾患、障害又は病態がクリゾチニブ療法に抵抗性を示す非小細胞肺癌である、請求項24~27のいずれか一項に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項29】
前記疾患、障害又は病態が黒色腫である、請求項24~27のいずれか一項に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項30】
前記疾患、障害又は病態が神経疾患、精神疾患、肥満、糖尿病及び/又は心血管疾患である、請求項24又は25に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項31】
前記精神疾患が統合失調症、欝病、及び/又は薬物嗜癖若しくは乱用である、請求項30に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項32】
前記薬物嗜癖又は乱用が、コカイン、タバコ又はアルコールの嗜癖又は乱用である、請求項31に記載の患者における疾患、障害又は病態を治療するための式Iの化合物結晶、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶又は医薬組成物。
【請求項33】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶を作製する方法であって、
式Iの化合物の非晶質サンプルを遠心分離管に入れ、気密エタノール若しくはアセトニトリル雰囲気中に6日~10日間、室温で保管して前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをエタノールに添加し、4℃~25℃で撹拌し、濾過して前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをエタノールに4℃~25℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液に撹拌下で多量の結晶が観察されるまでn-ヘプタンを添加し、次いで濾過して前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをメチルtert-ブチルエーテル/エタノール若しくはn-ヘプタン/エタノールに55℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液を-20℃で固体が観察されるまで撹拌し、濾過して前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをメタノールに添加し、溶解して透明な溶液を得て、濾過した後、35℃~50℃に曝露して溶媒を蒸発させ、前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをメタノールに添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液にカルボキシメチルセルロースを添加し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、前記結晶を得る工程、
を含む、方法。
【請求項34】
請求項5~8のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶を作製する方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶をメタノール、エタノール若しくは水に添加し、溶解して透明な溶液を得て、濾過した後、室温(20℃)~40℃に曝露して溶媒を蒸発させ、前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶をメタノール/水、メタノール/アセトン、メタノール/酢酸エチル、メタノール/メチルtert-ブチルエーテル、メタノール/テトラヒドロフラン、メタノール/ジクロロメタン、エタノール/水、エタノール/ブタノン、エタノール/酢酸イソプロピル、エタノール/n-ヘプタン、トリフルオロエタノール/水、トリフルオロエタノール/酢酸エチル、トリフルオロエタノール/テトラヒドロフラン、水/メタノール、水/エタノール、水/トリフルオロエタノール、水/イソプロパノール、水/アセトン、水/テトラヒドロフラン若しくは水/アセトニトリルに添加し、溶解して透明な溶液を得た後、該溶液を濾過し、室温(20℃)~40℃に曝露して溶媒を蒸発させ、前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶を低級アルコール、水、ニトロメタン、ブタノン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン若しくはn-ヘプタンに添加して懸濁液を形成した後、該懸濁液を4日~5日間、室温~40℃で撹拌し、遠心分離して前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶を水飽和酢酸エチル層、酢酸エチル飽和水層、エタノール/ジエチルエーテル、トルエン/アセトニトリル、ブタノン/エタノール若しくはトルエン/イソプロピルエーテルに添加して懸濁液を形成した後、該懸濁液を4℃~40℃で4日~5日間撹拌し、遠心分離して前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶をメタノール、アセトン/水(3:1 v/v)若しくはアセトニトリル/水(3:2 v/v)に室温で添加し、溶解して透明な溶液を得た後、該溶液にヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポビドンK30、ポリアリルアミン塩酸塩、カルボキシメチルセルロース若しくはポリビニルアルコールを添加し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶を低級アルコール若しくは水に60℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、4℃で結晶が観察されるまで撹拌し、前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶をアセトン/トリフルオロエタノール、アセトン/水、ジオキサン/水、アセトニトリル/水若しくはメチルtert-ブチルエーテル/n-プロパノールに55℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液を-20℃で結晶が観察されるまで撹拌した後、濾過して前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶をニトロメタン/メタノール、アセトニトリル/メタノール、ブタノン/エタノール、酢酸エチル/エタノール、1,4-ジオキサン/エタノール若しくはテトラヒドロフラン/水に60℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、濾過し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶をメタノール、エタノール、水、トリフルオロエタノール、n-プロパノール若しくはジメチルスルホキシドに室温で添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過し、該濾液にアセトン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、n-ヘプタン、塩化メチレン若しくはクロロホルムを多量の結晶が観察されるまで滴加し、前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶をメタノール若しくはエタノールに室温で添加し、溶解して透明な溶液を得た後、該溶液を濾過して濾液を得て、次いで該濾液にジクロロメタン若しくはテトラヒドロフランを添加し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルを遠心分離管に入れた後、該遠心分離管をn-ブタノール、水、ニトロメタン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム若しくはトルエンの雰囲気中に置いて拡散させ、前記結晶形態を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをn-プロパノール、水、ブタノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アセトン、エステル、酢酸イソプロピル、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、クロロホルム、sec-ブタノール、ニトロメタン若しくはトルエンに添加し、-4℃~-40℃で30分間撹拌した後、濾過して前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをイソプロピルエーテル/メタノール、酢酸エチル/メタノール、1,4-ジオキサン/メタノール、ブタノン/エタノール、アセトニトリル/エタノール、n-ヘプタン/トリフルオロエタノール、ニトロメタン/トリフルオロエタノール、エーテル/トリフルオロエタノール、テトラヒドロフラン/トリフルオロエタノール、アセトン/水、テトラヒドロフラン/水、アセトニトリル/水、メチルtert-ブチルエーテル/イソプロパノール、酢酸イソプロピル/n-プロパノール、メチルシクロヘキサン/n-ブタノール、アセトン/ジメチルスルホキシド、酢酸エチル/ジメチルスルホキシド、アセトニトリル/ジメチルスルホキシド、メチルtert-ブチルエーテル/クロロホルム若しくはトルエン/酢酸エチルに添加して懸濁液を形成し、4℃~40℃で撹拌した後、濾過して前記結晶を得る工程、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルを室温、85%RHの湿度に置いて前記結晶を得る工程、又は、
請求項1~4のいずれか一項に記載の式Iの化合物の結晶を水若しくはメタノールに溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液を回転蒸発させて乾燥させ、前記結晶を得る工程、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化合物{5-[(1R)-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エトキシ]-6-アミノピリダジン-3-イル}-N-{4-[((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジニル)カルボニル]フェニル}カルボキサミド塩酸塩、及びその水和物又は溶媒和物の新たな結晶に関する。本発明は、上記化合物及び結晶の作製方法、関連中間体、記載の化合物を含む医薬組成物、並びにプロテインキナーゼ(PK)の活性の阻害におけるそれらの使用に更に関する。本発明は、プロテインキナーゼの変調と関連する疾患、障害又は病態を治療するために、上記の化合物又は結晶及び医薬組成物の少なくとも1つを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、タンパク質のリン酸化を触媒する酵素であり、大抵の場合、リン酸化はタンパク質のセリン(ser)、トレオニン(thr)及びチロシン(tyr)残基で起こる。細胞寿命の多くの局面(細胞成長、分化、増殖、細胞周期及び生存等)がプロテインキナーゼの活性に依存する。さらに、プロテインキナーゼの異常活性は、癌及び炎症等の多くの障害と関連する。
【0003】
500種を超えるプロテインキナーゼがこれまでに発見されている。これらは、基質タンパク質がリン酸化されるアミノ酸残基の種類に応じて以下の5つのカテゴリーに分けることができる:1.セリン/トレオニン(Ser/Thr)プロテインキナーゼ:タンパク質のヒドロキシルがリン酸化される;2.チロシン(Tyr)プロテインキナーゼ:タンパク質のフェノール性ヒドロキシルがリン受容体として働く;3.ヒスチジンプロテインキナーゼ:タンパク質のヒスチジン、アルギニン又はリシンの塩基性基がリン酸化される;4.トリプトファンプロテインキナーゼ:タンパク質トリプトファン残基がリン受容体として働く;5.アスパルチル/グルタミルプロテインキナーゼ:タンパク質のアシル基がリン酸受容体として働く。
【0004】
タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)は、100を超えるファミリーメンバーが現在発見されており、細胞分化、成長及び活性化の調節において重要な役割を果たす。PTKは、それらの構造に応じて受容体型及び非受容体型の2つのカテゴリーに分けることができ、前者は膜貫通PTKとして知られ、後者は細胞内PTKとして知られる。
【0005】
ヒト腫瘍の発生及び成長は、一連の癌遺伝子の活性化及び腫瘍抑制遺伝子の不活性化に依存する。上皮性腫瘍の研究において、受容体チロシンキナーゼ(RTK)の膜貫通タンパク質が細胞成長、分化及び生存の調節において基本的な役割を果たし、腫瘍の発生及び成長において極めて重要な役割を果たすことが見出されている。
【0006】
RTKのMET癌原遺伝子サブファミリーは、MET及びRON(receptor d'origine nantais)の2つのメンバーを有する。
【0007】
C-Met癌原遺伝子は、Met受容体チロシンキナーゼをコードする。190KDaのグリコシル化二量体複合体であるMet受容体は、145KDaのβ鎖にジスルフィド結合した50KDaのα鎖からなる。α鎖は細胞外に見出され、β鎖は膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む。Metは腫瘍形成及び転移において役割を果たし、Metは、そのリガンド肝細胞増殖因子(HGF)の発現により転換、腫瘍形成及び転移を生じる(非特許文献1、非特許文献2)。C-Metは、かなりの割合のヒト癌において過剰発現されており、原発腫瘍と転移との間の移行時に増幅される。多くの研究により、C-Met及び/又はHGF/SFの発現と種々のタイプの癌の進行とが関連付けられている。加えて、C-Met又はHGFの過剰発現は、様々な主要ヒト癌(肺癌、肝癌、胃癌及び乳癌を含む)における予後不良及び疾患の予後と相関することが示されている。C-Metは膵癌、神経膠腫及び肝細胞癌等の治療に成功していない癌にも直接関与する。
【0008】
RONのホモログにはStk(マウス)及びSea(ニワトリ)が含まれる。そのリガンドは、HGFと相同の血清タンパク質であるマクロファージ刺激タンパク質(MSP)である。RON遺伝子はヒト染色体3p21上に位置し、20個のエクソン及び19個のイントロンを含む。成熟RONタンパク質は、分子量が約185KDaのαサブユニット及びβサブユニットから構成されるヘテロ二量体である。RON遺伝子産物は、様々な正常ヒト組織において検出することができる。RONはヒト上皮細胞、顆粒球、単核マクロファージ、巨核球、破骨細胞、扁桃胚層(tonsillar germinal layer)、小腸、結腸、腎臓、肺及び骨髄細胞において発現される。近年、消化器系、泌尿器系、肺及び乳房を含む多くのヒト原発腫瘍及び腫瘍細胞株において、RONの発現が品質及び量の点で顕著に変化することが研究により示されている。RONの発癌活性はキナーゼの活性と相関し、RONキナーゼ活性は細胞の悪性転換、成長及び移動を引き起こす過剰発現、突然変異及び切断機構によって顕著に上方調節される可能性がある。RONは、単独又は他の因子と共同で腫瘍浸潤及び転移を生じるように働く可能性もある(非特許文献3)。
【0009】
C-fmsとしても知られるCSF1R(コロニー刺激因子1受容体)は、一本鎖膜貫通受容体チロシンキナーゼであり、免疫グロブリン(Ig)モチーフを含有するRTKファミリーのメンバーである。CSF1Rは、単球系の細胞並びに女性生殖管及び胎盤の細胞で主に発現される。CSF1Rが皮膚のランゲルハンス細胞、平滑筋細胞のサブグループ、B細胞及び小膠細胞において発現されることも見出されている。CSF1Rシグナル伝達の主な生物学的効果は、単球系の前駆体マクロファージ及び破骨細胞の分化、増殖、遊走及び生存により生じる。
【0010】
Axlは、Tyro 3及びMerも含む受容体チロシンキナーゼのサブファミリーに属する。Axlの過剰発現は、多くのヒト癌において報告されており、肺癌、前立腺癌、乳癌、胃癌、腎細胞癌及び膠芽腫における感染及び転移と関連する。最近の研究から、「チロシンキナーゼスイッチ」を介したAxlの過剰発現が消化管間質腫瘍におけるイマチニブ耐性を生じることが示されている。Axlの発現は化学療法薬によって誘導され、Axlの過剰発現は急性骨髄性白血病における耐性を引き起こし、Axlが腫瘍形成の様々な局面の調節に関与し得ることが示唆される(非特許文献4)。
【0011】
EphA2は受容体チロシンキナーゼの最大のサブグループEPH RTKに属し、EphA2が腫瘍を含む病的状態の一連の調節と関連することが研究により示されている(非特許文献5)。近年、EphA2遮断が肺癌において獲得されたEGFRキナーゼ阻害剤の耐性を克服し得ることが研究により示されている(非特許文献6)。
【0012】
ROS1は、インスリン受容体ファミリーのメンバーである。近年、ROS1再構成が少数の肺癌患者において見出された。また、ROS1の阻害剤であるkazolinibがこれらの患者の治療に極めて効果的である(非特許文献7)。
【0013】
腫瘍形成能及び薬物感受性を有するNTRK1再構成も肺癌において見出されている(非特許文献8)。NTRK1遺伝子は、高親和性神経成長因子受容体(TRKA)タンパク質をコードする。
【0014】
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)は、RTKスーパーファミリーに属する。異所性t2染色体のために、発癌性の構成的活性型ALK融合タンパク質が未分化大細胞リンパ腫(ALCL)及び炎症性筋繊維芽細胞性腫瘍(IMT)において発現される。ALKは近年、非小細胞肺癌及び神経細胞腫のごく一部の癌原遺伝子と考えられている(非特許文献9、非特許文献10)。
【0015】
近年、ALKの新たなアイソタイプが黒色腫及び他の散発性ヒト癌型の11%で発現されるが、正常組織では発現されないことが見出された(非特許文献11)。新たなALK転写産物は、ALKATIとして知られるALK19のイントロンの代替転写開始(alternative transcription initiation;ATI)を開始する。
【0016】
ALKは神経系疾患にも関与する。ALKが成人の脳において前頭皮質及び海馬の機能を調節することが示されており、精神科的症状(統合失調症、欝病及び薬物(コカイン)嗜癖等)の新たな標的としてALKが同定されている。
【0017】
クリゾチニブがHGF受容体チロシンキナーゼ(C-Met)及びALKの効果的な阻害剤として報告されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【化1】
【0018】
クリゾチニブの第I相臨床試験では、64%の奏効率(ORR)が達成され、90%が疾患管理状態に達した(非特許文献12)。残念なことに、クリゾチニブに対する強烈な応答は一時的なものに過ぎない。殆どの患者が治療の6ヶ月~18ヶ月後に耐性及び疾患の進行を生じる。特に、かなりの割合の患者がクリゾチニブによって治療されない脳転移を有する。
【0019】
先の特許文献(特許文献4、特許文献5、特許文献6)は、プロテインキナーゼ阻害剤として置換ピリダジンカルボキシアミド化合物を記載しており、その殆どがc-Met及びALKを100nM未満のIC50で効果的に阻害する。キナーゼ媒介性疾患の治療の選択において依然として満たされていない必要性があることから、患者の医学的必要性を満たすために置換ピリダジンカルボキシアミド化合物の多形体を更にスクリーニングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公開第2004076412号
【文献】国際公開第2006021881号
【文献】国際公開第2006021886号
【文献】国際公開第2009/154769号
【文献】国際公開第2012/048259号
【文献】中国特許第103298806号
【非特許文献】
【0021】
【文献】Jefferson, M. et al, Oncogene 1996, 13, 853-856
【文献】Michieli, P. et al, Oncogene 1999, 18, 5221-5231
【文献】International Journal of Pathology and Clinical Medic, 2005, 25(5):441-443
【文献】Oncogene, 2009, 28:3442
【文献】Pasquale EB. Eph receptors and ephrins in cancer: bidirectional signaling and beyond. Nat Rev Cancer 2010;10:165-80
【文献】Amato et al. Cancer Res 2016; 76(2); 305-18
【文献】Bergethon et al. J. Clin. Oncol. 2012; 30(8), 863
【文献】Vaishnavi1 et al. Nature Medicine 2013; 19(11), 1469
【文献】Choi et al, Cancer Res 2008;68:(13)
【文献】Webb et al, Expert Rev. Anticancer Ther. 2009; 9(3),331-356
【文献】Wiesner et al. Nature 2015; 526, 453
【文献】J Clin Oncology 2010; 28: 7S, Suppl; abstr3
【発明の概要】
【0022】
本発明は、式I:
【化2】
の{5-[(1R)-1-(2,6-ジクロロ-3-フルオロフェニル)エトキシ]-6-アミノピリダジン-3-イル}-N-{4-[((3S,5R)-3,5-ジメチルピペラジニル)カルボニル]フェニル}カルボキサミド塩酸塩を提供することを目的とする。
【0023】
本発明は、様々なほぼ純粋な式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶にも関する。
【0024】
本発明において、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶は1つ以上の結晶で存在する。
【0025】
本発明は第一に、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶を提供するが、そのX線粉末回折パターンは4.9±0.2°、10.0±0.2°及び19.3±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する。便宜上、本発明は結晶Aとみなされる。
【0026】
第二に、本発明は上記の結晶Aの好ましい実施の形態を更に提供する。
【0027】
上記の結晶AのX線粉末回折パターンは4.9±0.2°、10.0±0.2°、14.7±0.2°、16.9±0.2°、19.3±0.2°及び20.3±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0028】
晶AのX線粉末回折パターンは4.9±0.2°、10.0±0.2°、14.7±0.2°、16.9±0.2°、19.3±0.2°、20.3±0.2°、25.5±0.2°及び30.7±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0029】
上記の結晶Aは、おおよそ図1に示されるようなX線粉末回折パターンを有するのが好ましい。
【0030】
本発明では、表1に示すように結晶形態AのX線粉末回折パターンがまとめられる。
【0031】
【表1】
【0032】
晶Aは、85%以上の純度を有するのが好ましい。
【0033】
晶Aは、95%以上の純度を有するのが好ましい。
【0034】
晶Aは、99%以上の純度を有するのが好ましい。
【0035】
晶Aは、99.5%以上の純度を有するのが好ましい。
【0036】
晶Aは、二水和物であるのが好ましい。
【0037】
本発明は、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の別の結晶を更に提供するが、そのX線粉末回折パターンは10.5±0.2°、17.4±0.2°及び21.1±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する。便宜上、本発明は結晶形Bと称する。
【0038】
本発明は上記の結晶Bの好ましい実施の形態を更に提供する。
【0039】
上記の結晶BのX線粉末回折パターンは10.5±0.2°、17.4±0.2°、19.7±0.2°、21.1±0.2°、23.9±0.2°及び25.5±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0040】
上記の結晶BのX線粉末回折パターンは10.5±0.2°、17.4±0.2°、19.7±0.2°、21.1±0.2°、21.5±0.2°、23.9±0.2°、25.2±0.2°及び25.5±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0041】
上記の結晶Bは、おおよそ図2に示されるようなX線粉末回折パターンを有するのが好ましい。
【0042】
本発明では、表2に示すように結晶BのX線粉末回折パターンがまとめられる。
【0043】
【表2】
【0044】
晶Bは、85%以上の純度を有するのが好ましい。
【0045】
晶Bは、95%以上の純度を有するのが好ましい。
【0046】
晶Bは、99%以上の純度を有するのが好ましい。
【0047】
晶Bは、99.5%以上の純度を有するのが好ましい。
【0048】
晶Bは、三水和物であるのが好ましい。
【0049】
本発明は、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の別の結晶を更に提供するが、そのX線粉末回折パターンは10.2±0.2°、20.6±0.2°及び21.8±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する。便宜上、本発明は結晶Cと称する。
【0050】
第二に、本発明は上記の結晶Cの好ましい実施の形態を更に提供する。
【0051】
上記の結晶CのX線粉末回折パターンは10.2±0.2°、14.7±0.2°、19.4±0.2°、20.6±0.2°、21.8±0.2°及び24.5±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0052】
上記の結晶CのX線粉末回折パターンは8.7±0.2°、10.2±0.2°、14.7±0.2°、19.4±0.2°、20.6±0.2°、21.8±0.2°、24.5±0.2°及び25.9±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0053】
上記の結晶Cは、おおよそ図3に示されるようなX線粉末回折パターンを有するのが好ましい。
【0054】
本発明では、表3に示すように結晶CのX線粉末回折パターンがまとめられる。
【0055】
【表3】
【0056】
晶Cは、85%以上の純度を有するのが好ましい。
【0057】
晶Cは、95%以上の純度を有するのが好ましい。
【0058】
晶Cは、99%以上の純度を有するのが好ましい。
【0059】
晶Cは、99.5%以上の純度を有するのが好ましい。
【0060】
晶Cは、メタノール溶媒和物(solvent compound)であるのが好ましい。
【0061】
本発明は、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の別の結晶を更に提供するが、そのX線粉末回折パターンは9.2±0.2°、18.0±0.2°及び18.5±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する。便宜上、本発明は結晶Dとみなされる。
【0062】
第二に、本発明は上記の結晶Dの好ましい実施の形態を更に提供する。
【0063】
上記の結晶DのX線粉末回折パターンは4.5±0.2°、9.2±0.2°、18.0±0.2°、18.5±0.2°、19.5±0.2°及び20.1±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0064】
上記の結晶DのX線粉末回折パターンは4.5±0.2°、9.2±0.2°、18.0±0.2°、18.5±0.2°、19.5±0.2°、20.1±0.2°、22.3±0.2°及び23.1±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0065】
上記の結晶Dは、おおよそ図4に示されるようなX線粉末回折パターンを有するのが好ましい。
【0066】
本発明では、表4に示すように結晶DのX線粉末回折パターンがまとめられる。
【0067】
【表4】
【0068】
晶Dは、85%以上の純度を有するのが好ましい。
【0069】
晶Dは、95%以上の純度を有するのが好ましい。
【0070】
晶Dは、99%以上の純度を有するのが好ましい。
【0071】
晶Dは、99.5%以上の純度を有するのが好ましい。
【0072】
晶Dは、ジメチルスルホキシド溶媒和物であるのが好ましい。
【0073】
本発明は、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の別の結晶を更に提供するが、そのX線粉末回折パターンは4.8±0.2°、9.6±0.2°及び25.8±0.2°の回折角2θで特性ピークを有する。便宜上、本発明は結晶Eと称する。
【0074】
第二に、本発明は上記の結晶Eの好ましい実施の形態を更に提供する。
【0075】
上記の結晶EのX線粉末回折パターンは4.8±0.2°、9.6±0.2°、16.3±0.2°、18.1±0.2°、20.8±0.2°及び25.8±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0076】
上記の結晶EのX線粉末回折パターンは4.8±0.2°、9.6±0.2°、16.3±0.2°、18.1±0.2°、19.3±0.2°、20.8±0.2°、25.8±0.2°及び26.7±0.2°の回折角2θで特性ピークを有するのが好ましい。
【0077】
上記の結晶Eは、おおよそ図5に示されるようなX線粉末回折パターンを有するのが好ましい。
【0078】
本発明では、表5に示すように結晶EのX線粉末回折パターンがまとめられる。
【0079】
【表5】
【0080】
晶Eは、85%以上の純度を有するのが好ましい。
【0081】
晶Eは、95%以上の純度を有するのが好ましい。
【0082】
晶Eは、99%以上の純度を有するのが好ましい。
【0083】
晶Eは、99.5%以上の純度を有するのが好ましい。
【0084】
晶Eは、二水和物であるのが好ましい。
【0085】
本発明は、おおよそ図6に示されるようなX線粉末回折パターンを有する式Iの化合、その水和物及び/又は溶媒和物の非晶質を更に提供する。
【0086】
本発明は、治療有効量の上記の結晶A及び/又は結晶Bを含む医薬組成物を更に提供する。
【0087】
本発明は、上記の医薬組成物の好ましい実施の形態も提供する。
【0088】
医薬組成物は、治療有効量の本明細書に提示される結晶A又は結晶Bと、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバント又は担体とを含むのが好ましい。
【0089】
医薬組成物は、治療有効量の本明細書に提示される結晶A及び結晶Bと、薬学的に許容可能な賦形剤、アジュバント又は担体とを含むのが好ましい。
【0090】
医薬組成物は、治療有効量の本発明の結晶A又は結晶Bを、少なくとも1つの他の有効成分と組み合わせて含むのが好ましい。
【0091】
医薬組成物は、治療有効量の本発明の結晶A及び結晶Bを、少なくとも1つの他の有効成分と組み合わせて含むのが好ましい。
【0092】
医薬組成物は、経口製剤の形態であるのが好ましい。
【0093】
医薬組成物は、錠剤又はカプセルの形態であるのが好ましい。
【0094】
医薬組成物は、20mg~150mgの結晶A及び/又は結晶Bを含み、少なくとも1つの賦形剤、アジュバント及び/又は担体で約50mg~500mgの総量に配合されるのが好ましい。
【0095】
医薬組成物中の賦形剤、アジュバント及び/又は担体は微結晶性セルロース、マンニトール、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ナトリウムカルボキシメチルデンプン、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はステアリン酸であるのが好ましい。
【0096】
医薬組成物は、0.01wt%~99wt%の結晶A又は結晶Bを含むのが好ましい。
【0097】
医薬組成物は、0.01wt%~99wt%の結晶A及び結晶Bを含むのが好ましい。
【0098】
医薬組成物は、0.1wt%~70wt%の結晶A又は結晶Bを含むのが好ましい。
【0099】
医薬組成物は、0.1wt%~70wt%の結晶A及び結晶Bを含むのが好ましい。
【0100】
医薬組成物は、1wt%~70wt%の結晶A又は結晶Bを含むのが好ましい。
【0101】
医薬組成物は、1wt%~70wt%の結晶A及び結晶Bを含むのが好ましい。
【0102】
医薬組成物は、1wt%~50wt%の結晶A又は結晶Bを含むのが好ましい。
【0103】
医薬組成物は、1wt%~50wt%の結晶A及び結晶Bを含むのが好ましい。
【0104】
医薬組成物は、1wt%~30wt%の結晶A又は結晶Bを含むのが好ましい。
【0105】
医薬組成物は、1wt%~30wt%の結晶A及び結晶Bを含むのが好ましい。
【0106】
医薬組成物は、10wt%~30wt%の結晶A又は結晶Bを含むのが好ましい。
【0107】
医薬組成物は、10wt%~30wt%の結晶A及び結晶Bを含むのが好ましい。
【0108】
本発明は、患者における疾患、障害又は病態を治療する薬剤の製造における結晶A及び/又は結晶Bの使用であって、該疾患、障害又は病態がc-Met、RON、Axl、CSF1R、EphA2、ROS1又はROS1融合タンパク質、TRKA又はTRKA融合タンパク質、TRKB、TRKC、ALK、ALKATI又はALK融合タンパク質によって媒介される、使用も提供する。
【0109】
本発明は、結晶A及び/又は結晶Bの上記の使用の好ましい実施の形態も提供する。
【0110】
ALK融合タンパク質はEML4-ALK又はNPM-ALKキナーゼであるのが好ましい。
【0111】
上記疾患、障害又は病態は癌及び/又は増殖性疾患であるのが好ましい。
【0112】
上記疾患、障害又は病態は肺癌、黒色腫、結腸癌、乳癌、肝癌、膵癌、脳癌、腎癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌及び/又は頭頸部扁平上皮癌であるのが好ましい。
【0113】
上記疾患、障害又は病態はクリゾチニブ療法に抵抗性を示す非小細胞肺癌(NSCLC)であるのが好ましい。
【0114】
上記疾患、障害又は病態は黒色腫であるのが好ましい。
【0115】
上記疾患、障害又は病態は神経疾患、精神疾患、肥満、糖尿病及び/又は心血管疾患であるのが好ましい。
【0116】
上記精神疾患は統合失調症、欝病、及び/又は薬物嗜癖若しくは薬物乱用であるのが好ましい。
【0117】
上記薬物嗜癖又は乱用はコカイン、タバコ又はアルコールの嗜癖又は乱用であるのが好ましい。
【0118】
本発明は、本明細書に提示される結晶A及び/又は結晶Bを患者に投与することによって疾病、病症又は病状を治療する方法も提供する。
【0119】
本発明は、結晶A及び/又は結晶Bを用いて患者の疾患、障害又は病態を治療する上記の方法の好ましい実施の形態を更に提供する。
【0120】
上記疾患、障害又は病態はc-Met、RON、Ax1、CSF1R、EphA2、ROS1又はROS1融合タンパク質、TRKA又はTRKA融合タンパク質、TRKB、TRKC、ALK、ALKATI又はALK融合タンパク質によって媒介されるのが好ましい。
【0121】
ALK融合タンパク質はEML4-ALK又はNPM-ALKキナーゼであるのが好ましい。
【0122】
上記疾患、障害又は病態は癌及び/又は増殖性疾患であるのが好ましい。
【0123】
上記疾患、障害又は病態は肺癌、黒色腫、結腸癌、乳癌、肝癌、膵癌、脳癌、腎癌、卵巣癌、胃癌、皮膚癌、骨癌、神経膠腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、肝細胞癌、乳頭状腎細胞癌及び/又は頭頸部扁平上皮癌であるのが好ましい。
【0124】
上記疾患、障害又は病態はクリゾチニブ療法に抵抗性を示す非小細胞肺癌(NSCLC)であるのが好ましい。
【0125】
上記疾患、障害又は病態は黒色腫であるのが好ましい。
【0126】
上記疾患、障害又は病態は神経疾患、精神疾患、肥満、糖尿病及び/又は心血管疾患であるのが好ましい。
【0127】
上記精神疾患は統合失調症、欝病、及び/又は薬物嗜癖若しくは乱用であるのが好ましい。
【0128】
上記薬物嗜癖又は乱用はコカイン、タバコ又はアルコールの嗜癖又は乱用であるのが好ましい。
【0129】
本発明は、以下のような式Iの化合物の作製方法を更に提供する。
方法1:
【化3】
方法2:
【化4】
方法3:
【化5】
【0130】
本発明は、以下のような式Iの化合物の作製における中間体を更に提供する。
【化6】
【0131】
本発明は、式Iの化合物、その水和物及び/又は溶媒和物の結晶A及び結晶Bを作製する方法を更に提供する。
【0132】
ここで、結晶Aは、以下のように調製される:
式Iの化合物の非晶質サンプルを遠心分離管に入れ、気密エタノール若しくはアセトニトリル雰囲気中に6日~10日間、室温で保管して結晶Aを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをエタノールに添加し、4℃~25℃で撹拌し、濾過して結晶Aを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをエタノールに4℃~25℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液に撹拌下で多量の結晶が観察されるまでn-ヘプタンを添加し、次いで濾過して結晶Aを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをメチルtert-ブチルエーテル/エタノール若しくはn-ヘプタン/エタノールに55℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液を-20℃で固体が観察されるまで撹拌し、濾過して結晶Aを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをsec-ブチルアルコールに添加し、溶解して透明な溶液を得て、濾過した後、35℃~50℃に曝露して溶媒を蒸発させ、結晶Aを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをメタノールに添加し、溶解して透明な溶液を得て、該溶液を濾過して濾液を得た後、該濾液にカルボキシメチルセルロースを添加し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、結晶Aを得る。
【0133】
ここで、結晶Bを作製する方法は以下の通りである:
晶Aをメタノール、エタノール若しくは水に添加し、溶解して透明な溶液を得て、濾過した後、室温(20℃)~40℃に曝露して溶媒を蒸発させ、結晶Bを得る、又は、
晶Aをメタノール/水、メタノール/アセトン、メタノール/酢酸エチル、メタノール/メチルtert-ブチルエーテル、メタノール/テトラヒドロフラン、メタノール/ジクロロメタン、エタノール/水、エタノール/ブタノン、エタノール/酢酸イソプロピル、エタノール/n-ヘプタン、トリフルオロエタノール/水、トリフルオロエタノール/酢酸エチル、トリフルオロエタノール/テトラヒドロフラン、水/メタノール、水/エタノール、水/トリフルオロエタノール、水/イソプロパノール、水/アセトン、水/テトラヒドロフラン若しくは水/アセトニトリルに添加し、溶解して透明な溶液を得た後、溶液を濾過し、室温(20℃)~40℃に曝露して溶媒を蒸発させ、結晶Bを得る、又は、
晶Aを低級アルコール、水、ニトロメタン、ブタノン、エチルエーテル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン若しくはn-ヘプタンに添加して懸濁液を形成した後、懸濁液を4日~5日間室温~40℃で撹拌し、遠心分離して結晶Bを得る、又は、
晶Aを水飽和酢酸エチル層、酢酸エチルの飽和水層、エタノール/ジエチルエーテル、トルエン/アセトニトリル、ブタノン/エタノール若しくはトルエン/イソプロピルエーテルに添加して懸濁液を形成した後、懸濁液を4℃~40℃で4日~5日間撹拌し、遠心分離して結晶Bを得る、又は、
晶Aをメタノール、アセトン/水(3:1 v/v)若しくはアセトニトリル/水(3:2 v/v)に室温で添加し、溶解して透明な溶液を得た後、溶液にヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポビドンK30、ポリアリルアミン塩酸塩、カルボキシメチルセルロース若しくはポリビニルアルコールを添加し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、結晶Bを得る、又は、
晶Aを低級アルコール若しくは水に60℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、4℃で結晶が観察されるまで撹拌し、結晶Bを得る、又は、
晶Aをアセトン/トリフルオロエタノール、アセトン/水、ジオキサン/水、アセトニトリル/水若しくはメチルt-ブチルエーテル/n-プロパノールに55℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、溶液を濾過して濾液を得た後、濾液を-20℃で結晶が観察されるまで撹拌した後、濾過して結晶Bを得る、又は、
晶Aをニトロメタン/メタノール、アセトニトリル/メタノール、ブタノン/エタノール、酢酸エチル/エタノール、1,4-ジオキサン/エタノール若しくはテトラヒドロフラン/水に60℃~70℃で添加し、溶解して透明な溶液を得て、濾過し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、結晶Bを得る、又は、
晶Aをメタノール、エタノール、水、トリフルオロエタノール、n-プロパノール若しくはジメチルスルホキシドに室温で添加し、溶解して透明な溶液を得て、溶液を濾過し、濾液にアセトン、酢酸エチル、メチルt-ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、n-ヘプタン、ジクロロメタン若しくはクロロホルムを多量の結晶が観察されるまで滴加し、結晶Bを得る、又は、
晶Aをメタノール若しくはエタノールに室温で添加し、溶解して透明な溶液を得た後、溶液を濾過して濾液を得て、次いで濾液にジクロロメタン若しくはテトラヒドロフランを撹拌下で添加し、室温に曝露して溶媒を蒸発させ、結晶Bを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルを遠心分離管に入れた後、遠心分離管をn-ブタノール、水、ニトロメタン、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム若しくはトルエンの雰囲気中に置いて拡散させ、結晶Bを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをn-プロパノール、水、ブタノン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、アセトン、エチルエーテル、酢酸イソプロピル、1,4-ジオキサン、アセトニトリル、クロロホルム、sec-ブタノール、ニトロメタン若しくはトルエンに添加し、4℃~40℃で30分間撹拌した後、濾過して結晶Bを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルをイソプロピルエーテル/メタノール、酢酸エチル/メタノール、1,4-ジオキサン/メタノール、ブタノン/エタノール、アセトニトリル/エタノール、n-ヘプタン/エタノール、ニトロメタン/トリフルオロエタノール、エーテル/トリフルオロエタノール、テトラヒドロフラン/トリフルオロエタノール、アセトン/水、テトラヒドロフラン/水、アセトニトリル/水、メチルtert-ブチルエーテル/イソプロパノール、酢酸イソプロピル/n-プロパノール、メチルシクロヘキサン/n-ブタノール、アセトン/ジメチルスルホキシド、酢酸エチル/ジメチルスルホキシド、アセトニトリル/ジメチルスルホキシド、メチルtert-ブチルエーテル/クロロホルム若しくはトルエン/酢酸エチルに添加して懸濁液を形成し、4℃~40℃で撹拌した後、濾過して結晶Bを得る、又は、
式Iの化合物の非晶質サンプルを室温、85%RHの湿度で10日間置いて結晶Bを得る、又は、
晶Aを水若しくはメタノールに添加し、溶解して透明な溶液を得て、溶液を濾過して濾液を得た後、濾液を回転蒸発させて40℃~60℃で乾燥させ、結晶Bを得る。
【0134】
本発明の結晶は、ほぼ純粋である。
【0135】
本明細書で使用される「ほぼ純粋な」という用語は、式Iに示される化合物の少なくとも85wt%、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは少なくとも99wt%、最も好ましくは少なくとも99.5wt%が本発明の結晶、特に結晶A及び/又は結晶Bで存在することを指す。
【0136】
上記の結晶には主ピークのみをまとめる。主要ピークは再現可能であり、誤差限界(±0.2)内である。
【0137】
本発明において、「図1に示されるX線粉末回折パターン」又は「図2に示されるX線粉末回折パターン」は、図1又は図2に見られるような主ピークを示すX線粉末回折パターンを指し、ここで主ピークは、図1又は図2中の最高ピーク(その相対強度を100%と指定する)に対して10%を超える、好ましくは30%を超える相対強度を有するピークを指す。
【0138】
本発明において、結晶形態A又は結晶形態Bを作製する方法に関わる「メタノール/アセトンに添加する」は、該方法においてメタノールを初めに添加し、次いでアセトンを添加したことを意味する。同様に、「エタノール/水」はエタノールを初めに添加し、次いで水を添加したことを意味し、「トリフルオロエタノール/酢酸エチル」は、トリフルオロエタノールを初めに添加し、次いで酢酸エチルを添加したことを意味する。同様に、例えば「溶媒1/溶媒2」は溶媒1を初めに添加し、次いで溶媒2を添加したことを意味し、「溶媒2/溶媒1」は溶媒2を初めに添加し、次いで溶媒1を添加したことを意味する。
【0139】
本発明において、「治療有効量」という用語は、疾患、又は疾患若しくは障害の臨床症状の少なくとも1つを治療するために被験体に投与した場合に、かかる疾患、障害又は症状の治療に影響を及ぼすのに十分な化合物の量を指す。「治療有効量」は化合物、疾患、障害、及び/又は疾患若しくは障害の症状、疾患、障害及び/又は疾患若しくは障害の症状の重症度、治療される被験体の年齢、及び/又は治療される被験体の体重により変化し得る。任意の所与の場合に適切な量は当業者に明らかであり得るか、又は常用の実験によって決定することができる。併用療法の場合、「治療有効量」は疾患、障害又は病態の効果的な治療のための併用対象の総量を指す。
【0140】
本発明の医薬組成物の全ての配合物は、薬学分野の従来の方法によって作製することができる。例えば、活性成分を1つ以上の賦形剤と混合した後、所望の配合物とすることができる。
【0141】
「薬学的に許容可能な担体」は、所望の医薬配合物に好適な従来の医薬担体、例えば水、様々な有機溶媒等のような希釈剤、賦形剤;デンプン、スクロース等のような充填剤;セルロース誘導体、アルギネート、ゼラチン及びポリビニルピロリドン(PVP)等の結合剤;グリセロール等の湿潤剤;寒天、炭酸カルシウム及び重炭酸ナトリウム等の崩壊剤;第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤;ヘキサデカノール等の界面活性剤;カオリン及びベントナイト(soap clay)等の吸収担体;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール等のような滑沢剤を指す。加えて、医薬組成物は分散剤(decentralized agent)、安定剤、増粘剤、錯化剤、緩衝剤、浸透促進剤、ポリマー、香料、甘味料及び染料等の他の薬学的に許容可能な賦形剤を更に含む。賦形剤は所望の配合物及び投与タイプに好適であるのが好ましい。
【0142】
「疾患」又は「障害」又は「病態」という用語は任意の疾患、不快感、病気、症状又は適応症を指す。
【図面の簡単な説明】
【0143】
図1】式Iに示される化合物の結晶形態AのX線粉末回折パターンを示す図である。
図2】式Iに示される化合物の結晶形態BのX線粉末回折パターンを示す図である。
図3】式Iに示される化合物の結晶形態CのX線粉末回折パターンを示す図である。
図4】式Iに示される化合物の結晶形態DのX線粉末回折パターンを示す図である。
図5】式Iに示される化合物の結晶形態EのX線粉末回折パターンを示す図である。
図6】式Iに示される化合物の非晶質サンプルのX線粉末回折パターンを示す図である。
図7】式Iに示される化合物の結晶形態Aの動的水吸着パターンを示す図である。
図8】式Iに示される化合物の結晶形態Bの動的水吸着パターンを示す図である。
図9】式Iに示される化合物の非晶質サンプルの動的水吸着パターンを示す図である。
図10】式Iに示される化合物の結晶形態Aの示差熱分析を示す図である。
図11】式Iに示される化合物の結晶形態Bの示差熱分析を示す図である。
図12】式Iに示される化合物の非晶質サンプルの示差熱分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0144】
図1図6に示されるX線粉末回折パターンの検出装置及び方法を表6にまとめる。
【0145】
図7図9に示される動的水吸着パターンの検出装置及び方法を表7にまとめる。
【0146】
図10図12に示される走査パターンの示差熱分析の検出装置及び方法を表8にまとめる。
【0147】
【表6】
【0148】
【表7】
【0149】
【表8】
【実施例
【0150】
本発明を説明する以下の実施例によって本発明を更に例証するが、本発明は以下の実施例に限定されない。本発明の実施例において、技法又は方法は明記しない限り、当該技術分野における従来の技法又は方法である。
【0151】
略語:
Boc:ブトキシカルボニル;
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド;
DCM:ジクロロメタン;
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン;
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン;
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド;
EDCI:1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩;
HATU:2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;
HOBT:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール;
IPA:イソプロピルアルコール;
MeOH:メタノール;
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル;
NMM:N-メチルモルホリン;
N:mol/L;
TFA:トリフルオロアセテート;
THF:テトラヒドロフラン。
【0152】
実施例1:式Iの化合物の合成:
化合物M1の合成:
8.57g(0.024mol、1.00当量)の化合物SM1を85.7mLの無水メタノールに溶解し、5%パラジウム炭素(0.86g)を窒素下で添加した。混合物を水素で3回置き換え、水素雰囲気中で3時間反応させた。原料の反応が完了した時点で、濾液を濾過によって収集した後、固体になるまで濃縮し、真空下で乾燥させて、化合物M1である白色の固体を100%の収率及び97.32%の純度で得た。
LC-MS[M+H]:334。
【0153】
化合物M2の合成:
9.60g(0.017mol、1.00当量)の化合物SM2を53mLのTHFに溶解し、反応混合物を-5℃~5℃まで冷却した。1N KOH水溶液(1.40gのKOH及び25mLの水)を滴加し、混合物を1℃~10℃でインキュベートし、4時間撹拌した。1N希塩酸を添加してpH値を約5に調整した。混合物を酢酸エチル(50mL×2)で2回抽出した。有機層を合わせ、飽和塩水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で1時間乾燥させ、続いて濾過し、真空下で濃縮して粘性の油を得て、23mLのジクロロメタンを添加して上記の粘性の油を溶解した後、真空下で濃縮して再び高粘度の油を得た。69mLのジクロロメタンを添加して高粘度の油を再び溶解し、真空下で濃縮して、9.10gの中間体M2を黄色の固体として99.7%の収率で得た。
LC-MS[M+H]:546。
【0154】
化合物M2の合成:
9.60g(0.017mol、1.00当量)の化合物SM2を53mLのTHFに溶解し、反応混合物を0℃~10℃まで冷却した。1N LiOH水溶液(1.05gのLiOH+25mLの水)を滴加した。添加の30分後に、温度を室温まで徐々上昇させ、反応混合物を一晩撹拌した。反応を完了させ、真空下で濃縮した。得られる残渣を100mLの水に溶解し、50mLのメチルtert-ブチルエーテルを添加し、撹拌し、分離した。pH値を約5に調整するために1N希塩酸を水相に滴加した。混合物を酢酸エチル(50mL×2)で2回抽出した。有機層を合わせ、飽和塩水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で1時間乾燥させた。混合物を濾過し、真空下で蒸発させて、8.58gの中間体M2を黄色の固体として得た。収率は94%であった。
LC-MS[M+H]:546。
【0155】
化合物M3の合成:
8.23g(0.015mol、1.15当量)の化合物M2を66mLのジクロロメタンに溶解し、10℃~20℃まで冷却した。4.30g(0.013mol、1.00当量)の化合物M1、3.00g(0.022mol、1.69当量)のヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、4.58g(0.024mol、1.85当量)の1-エチル-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)及び6.90g(0.068mol、5.23当量)のN-メチルモルホリン(NMM)を順に添加した。混合物をインキュベートし、20℃~30℃で16時間撹拌し、16mLの水を反応混合物に添加し、10分間~15分間撹拌し、静置して液体を分離し、16mLの1N希塩酸を有機層に添加し、5分間撹拌し、静置して液体を分離し、有機層を16mLの1N希塩酸、5mLの1N KOH水溶液及び30mLの飽和塩水のそれぞれによって洗浄し、静置して液体を分離した。有機相を無水硫酸ナトリウムによって乾燥させ、続いて濾過し、真空中で濃縮した。得られる残渣をメチルtert-ブチルエーテル(20mL+20mL+6mL)で3回洗浄し、濾過して固体を収集し、固体を乾燥させて、7.95gの黄色がかった(yellow-like)固体を化合物M3として71.6%の収率で得た。
LC-MS[M+H]:861。
【0156】
化合物M3の合成:
7.96g(0.015mol、1.15当量)の化合物M2を40mLのDMFに溶解し、これに5.23g(0.014mol、1.08当量)のHATU、4.17g(0.013mol、1.00当量)の化合物M1及び2.17mLのジイソプロピルエチルアミンを添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。50mLの飽和炭酸ナトリウム水溶液を反応系に添加し、続いて撹拌し、濾過した。得られる固体を60mLの水で叩解した(beaten)後、濾過した。固体を30mLのジクロロメタンに溶解し、水で2回洗浄し、有機相を乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮し、乾燥させて、10.03gの化合物M3を褐色の固体として93.2%の収率で得た。
LC-MS[M+H]:861。
【0157】
化合物M3の合成:
9.77g(0.018mol、1.20当量)の化合物M2を75mLのジクロロメタンに溶解し、これに6.21g(0.030mol、2.00当量)のジシクロヘキシルカルボジイミド、0.96g(0.0079mol、0.53当量)のDMAP及び5.00g(0.015mol、1.00当量)の化合物M1を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。20mLの水を反応系に添加し、撹拌し、静置して液体を分離した。20mLの1N希塩酸を有機相に添加し、5分間撹拌し、静置して液体を分離した。有機層を20mLの希塩酸、6mLの1N KOH水溶液及び35mLの飽和塩水のそれぞれによって洗浄し、静置して液体を分離した。有機相を無水硫酸ナトリウムによって乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られる残渣を、メチルtert-ブチルエーテル(25mL+25mL+8mL)を添加することによって3回洗浄した。濾過して固体を収集し、固体を乾燥させて、10.62gの褐色の固体を化合物M3として82.3%の収率で得た。
LC-MS[M+H]:861。
【0158】
式Iの化合物の合成:
7.95g(0.092mol)の化合物M3を30mLのジクロロメタンに溶解し、反応溶液を-5℃~5℃まで冷却し、これに15mLのトリフルオロアセテートを撹拌しながら室温で2時間かけて滴下した。混合物を10℃~20℃まで冷却した後、この反応混合物に60mLの飽和炭酸カリウム水溶液をゆっくりと添加し、続いて撹拌し、静置成層(static stratification)を行った。有機層を飽和塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、続いて濾過し、濃縮した。得られる残渣を41.2gのイソプロパノールに溶解し、その後(after)、混合物を10℃~20℃まで冷却し、この反応混合物に5mLの濃塩酸を室温で撹拌しながら添加した。濾過して固体を収集し、固体をイソプロパノールによって洗浄し、真空中で乾燥させて5.75gの式Iの化合物を得た。
LC-MS[M+H]:561。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=1.25~1.43(m,6H)、1.91(d,3H)、3.15~3.48(m,4H)、3.66~3.89(m,0.5H)、4.55~4.78(m,0.5H)、5.49(s,2H)、6.26(q,1H)、7.10(t,1H)、7.33~7.44(m,4H)、7.78(d,2H)、9.93(s,1H)。
【0159】
実施例2:結晶Aの調製方法
晶Aの調製方法1
約5mg~10mgの式Iの非晶質化合物をsec-ブタノールに溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、溶液を40℃に曝露して結晶Aを得た。
【0160】
晶Aの調製方法2
約10mgの式Iの非晶質化合物をメタノールに溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、これに1mgのカルボキシメチルセルロースを添加した。混合物を室温に曝露して結晶Aを得た。
【0161】
晶Aの調製方法3及び4
対応する温度で、約10mgの式Iの非晶質化合物を溶媒2に添加し、続いて溶媒1に添加して透明な溶液を得た後、濾過し、-20℃下で撹拌して固体を沈殿させた。沈殿物を濾過によって収集して結晶Aを得た。
【0162】
【表9】
【0163】
晶Aの調製方法5
室温で約10mgの式Iの非晶質化合物をエタノールに溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行った。n-ヘプタンを溶液に撹拌下で多量の固体が観察されるまで滴下し、濾過し、結晶Aを回収した。
【0164】
晶Aの調製方法6及び7
およそ10mgの式Iの非晶質化合物を2.0mL容の遠心分離管に入れ、対応する閉鎖溶媒雰囲気中で6日間室温に曝露した。結晶Aが得られた。
【0165】
【表10】
【0166】
晶Aの調製方法8
およそ15mgの式Iの非晶質化合物を0.2mLのエタノールに4℃で添加し、混合物を対応する温度で30分間撹拌し、濾過して結晶Aを得た。
【0167】
実施例3:結晶Bの調製方法
第1の実験方法
約5mg~10mgの結晶Aを適切な溶媒に溶解して透明な溶液を得た後、濾過した。混合物を揮発のために対応する温度に曝露して結晶Bを得た。
【0168】
【表11】
【0169】
第2の実験方法
約10mgの結晶Aを溶媒1に添加し、続いて溶媒2に添加して透明な溶液を得て、濾過した後、揮発のために対応する温度に曝露して結晶Bを得た。
【0170】
【表12】
【0171】
第3の実験方法
約15mg~30mgの結晶Aを対応する溶媒に添加して懸濁液を形成し、室温で5日間撹拌し、濾過して結晶Bを得た。
【0172】
【表13】
【0173】
第4の実験方法
約15mg~20mgの結晶Aを対応する溶媒に添加して懸濁液を形成し、40℃で5日間撹拌し、濾過して結晶Bを得た。
【0174】
【表14】
【0175】
第5の実験方法
約15mg~40mgの結晶Aを初めに溶媒2に添加し、次いで溶媒1に添加して懸濁液を形成し、対応する温度で4日間撹拌し、濾過して結晶Bを得た。
【0176】
【表15】
【0177】
第6の実験方法
約10mgの結晶Aをアセトン:水=3:1(体積比)、アセトニトリル:水=3:2(体積比)の対応する溶媒に添加し、超音波により透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、これに1mgのポリマーを添加した。混合物を揮発のために室温に曝露して結晶Bを得た。
【0178】
【表16】
【0179】
第7の実験方法
約15mg~50mgの結晶Aを対応する溶媒に対応する温度で溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、撹拌を維持しながら固体が観察されるまで濾液を4℃に置き、濾過して結晶Bを得た。中でも、イソプロパノール中では結晶が4℃で撹拌により観察されないため、次いで揮発のために室温に曝露して結晶Bを得た。
【0180】
【表17】
【0181】
第8の実験方法
約10mg~15mgの結晶Aを初めに溶媒2に添加し、次いで溶媒1に添加して、透明な溶液を対応する温度で得て、続いて濾過を行った後、濾液を-20℃で固体が観察されるまで撹拌し、結晶Bを回収した。中でも、結晶Bの調製方法69~74を用いると結晶が撹拌により観察されないため、濾液を揮発のために室温に曝露して結晶Bを得た。
【0182】
【表18】
【0183】
第9の実験方法
約10mg~15mgの結晶Aを溶媒1に添加して、室温で超音波により透明な溶液を得た後、濾過し、溶媒2に撹拌しながら多量の固体が観察されるまで滴加し、濾過して結晶Bを得た。中でも、結晶Bの調製方法89及び90を用いると固体が観察されないため、次いで混合物を揮発のために室温に曝露して結晶Bを得た。
【0184】
【表19】
【0185】
第10の実験方法
約10mgの式Iの化合物の非晶質サンプルを2.0mL容の遠心分離管に入れた。次いで、遠心分離管を対応する溶媒雰囲気に室温で6日間置き、結晶Bを得た。
【0186】
【表20】
【0187】
第11の実験方法
約15mg~30mgの式Iの化合物の非晶質サンプルを対応する溶媒に対応する温度で添加し、30分間撹拌し、続いて濾過を行って結晶Bを得た。
温度)
【0188】
【表21】
【0189】
第12の実験方法
約15mg~30mgの式Iの化合物の非晶質サンプルを初めに溶媒2に添加し、次いで溶媒1に添加して懸濁液を得て、30分間対応する温度で撹拌し、濾過して結晶Bを得た。
【0190】
【表22】
【0191】
第13の実験方法
晶Bの調製方法142
約10mgの式Iの化合物の非晶質サンプルを85%RH湿度の雰囲気中に10日間室温で置き、結晶Bを得た。
【0192】
第14の実験方法
適切な量のサンプルを対応する溶媒に添加し、超音波により透明な溶液を得て、続いて濾過を行った後、濾液を対応する水浴温度で急速にスピン乾燥させて、結晶Bを得た。
【0193】
【表23】
【0194】
実施例4:結晶Cの調製方法
晶Cの調製方法1:
100mgの式Iの化合物の結晶Aを2.8mLのイソプロピルエーテルに添加し、続いて2.8mLのメタノールに添加して懸濁液を形成した。混合物を4日間室温で撹拌し、真空中で濾過して、73mgの結晶Cを得た。
【0195】
晶Cの調製方法2:
100mgの式Iの化合物の結晶Aを1.0mLのイソプロピルエーテルに添加し、続いて3.0mLのメタノールに添加して懸濁液を形成した。混合物を5日間室温で撹拌し、真空中で濾過して、63mgの結晶Cを得た。
【0196】
晶Cの調製方法3及び4:
約15mgの式Iの化合物の結晶Aを溶媒2に溶解し、続いて溶媒1に溶解して透明な溶液を得て、濾過し、-20℃で固体が観察されるまで撹拌し、結晶Cを回収した。
【0197】
【表24】
【0198】
晶Cの調製方法5:
約10mgの式Iの化合物の結晶Aを2.0mL容の遠心分離管に入れ、4mLのメタノール閉鎖溶媒雰囲気に6日間室温で曝露して結晶Cを得た。
【0199】
実施例5:結晶Dの調製方法
晶Dの調製方法1:
100mgの式Iの化合物の結晶Aを2.0mLの酢酸エチルに添加した後、1.0mLのジメチルスルホキシドに添加して懸濁液を形成した。懸濁液を室温で1日間撹拌して結晶Dを得た。
【0200】
晶Dの調製方法2:
約5mgの式Iの化合物の結晶Aを0.1mLのジメチルスルホキシドに溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、揮発のために40℃に曝露して結晶を得た。
【0201】
晶Dの調製方法3:
約20mgの式Iの化合物の結晶Aを溶媒2に添加した後、溶媒1に添加して懸濁液を形成した。混合物を対応する温度で4日間撹拌して結晶Dを得た。
【0202】
【表25】
【0203】
晶Dの調製方法4及び5:
約15mgの式Iの化合物の結晶Aを溶媒1に添加し、超音波によって室温で透明な溶液を得て、続いて濾過を行った後、溶媒2を溶液に撹拌しながら多量の固体が観察されるまで滴加して、結晶Dを回収した。
【0204】
【表26】
【0205】
実施例6:結晶Eの調製方法
約20mgの式Iの化合物の結晶Aを85%RH湿度の装置内に26日間にわたって室温で置き、結晶Eを得た。
【0206】
実施例7:非晶質(amorphis)の調製方法
非晶質の調製方法1:
200mgの式Iの化合物の結晶Aを0.6mLのトリフルオロエタノールに添加し、超音波により透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、濾液を真空中40℃で急速にスピン乾燥させて非晶質を得た。
【0207】
非晶質の調製方法2:
200mgの式Iの化合物の結晶Aを7.0mLのメタノールに添加し、超音波により透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、真空中40℃で急速にスピン乾燥させて非晶質を得た。
【0208】
非晶質の調製方法3~5:
5mg~10mgの式Iの化合物の結晶Aを対応する溶媒に溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、揮発のために対応する温度に曝露して非晶質を得た。
【0209】
【表27】
【0210】
非晶質の調製方法6~9:
約10mgの式Iの化合物の結晶Aを対応する溶媒に溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、揮発のために対応する温度に曝露して非晶質を得た。
【0211】
【表28】
【0212】
非晶質の調製方法10:
約15mgの式Iの化合物の結晶Aを2.0mLのn-ヘプタンに添加し、混合物を室温で5日間撹拌して非晶質を得た。
【0213】
非晶質の調製方法11及び12:
約10mg~15mgの式Iの化合物の結晶Aを対応する溶媒に溶解し、透明な溶液を対応する温度で得て、続いて濾過を行い、-20℃で固体が観察されるまで撹拌し、非晶質を回収した。
【0214】
【表29】
【0215】
非晶質の調製方法13:
約15mgの式Iの化合物の結晶Aを0.2mLのトリフルオロエタノールに添加し、超音波により室温で透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、1.0mLのイソプロピルエーテルを溶液に撹拌しながら多量の固体が観察されるまで滴加して、非晶質を回収した。
【0216】
非晶質の調製方法14~17:
約10mg~15mgの式Iの化合物の結晶Aを対応する溶媒に溶解して透明な溶液を得て、続いて濾過を行い、濾液を対応する温度で急速にスピン乾燥させて非晶質を得た。
【0217】
【表30】
【0218】
実施例8:結晶の安定性
晶A及びBのサンプルを80℃に24時間、25℃-60%RHに10日間、及び40℃-75%RHに10日間それぞれ置いたが、結晶の変化は見られなかった。
【0219】
晶Cは真空中、室温で一晩乾燥させる条件下で結晶Aへとほぼ完全に転換した。
【0220】
晶Dの大部分が、室温で乾燥させるか又は真空中、室温で乾燥させる条件下で結晶Bに変換されたが、これは安定に存在することができない。
【0221】
晶Eの大部分が、乾燥器内に2日間置く条件下で結晶Aに変換されたが、これは不安定である。
【0222】
実施例9:動的蒸気収着(DVS)アッセイ
晶A:0%RH~80%RHの範囲で約2.3%の重量変化が見られた。結晶Aの水和物は、0%RH乾燥段階で約1.5%の水分を除去し、0%RH~80%RH範囲で約2.3%の水分を吸収した。脱着段階では、1.5%の水分を30%RHの条件下で除去することができ、重量の変化は30%RH~80%RHの範囲で2%未満であった。
【0223】
晶B:0%RH~80%RHの範囲で約2.3%の重量変化が見られた。結晶Bの水和物は、10%RH下で約4%の水分を除去することができ、吸着段階において10%RHの条件下で約4%の水分を吸収し、重量の変化は10%RH~80%RHの範囲で2%未満であった。
【0224】
非晶質:0%RH~80%RHの範囲で約15.7%の重量変化が見られ、極めて吸湿性であった。
【0225】
実施例10:溶解度の決定
式Iに示される化合物の結晶Aの水への溶解度は室温で20mg/mL~100mg/mLであり、式Iに示される化合物の遊離塩基非晶質の水への溶解度は1mg/mL未満である。
【0226】
実施例11. カプセル配合物
経口薬の明示的な実施形態として、約20mg~150mgの実施例1及び/又は実施例2に記載される多形に、微粉微結晶性セルロース及び/又はステアリン酸を配合して、0号カプセルを充填するのに約50mg~500mgの総量を得る。
【0227】
実施例12. 錠剤又はカプセルの配合物
経口薬の明示的な実施形態として、約20mg~150mgの実施例1及び/又は実施例2に記載される多形に、以下の賦形剤:微粉微結晶性セルロース、マンニトール、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はステアリン酸の2つ以上を配合して、約50mg~500mgの総量の錠剤又はカプセルに割り当てる。
【0228】
実施例13:薬物動態データ
6匹の雌性SDラットを、各群3匹のラットの2つの群に分けた。50mg/kgの式Iの化合物の結晶A及び式Iの化合物の遊離塩基非晶質を、胃内強制投与(intragastric gavage)により単一用量で各雌性SDラットにそれぞれ投与した。血液サンプルを、頸静脈を介して指定の時点で採取し、血漿をこれらのサンプルから分離し、冷蔵庫に-80℃で保管した。
【0229】
これらのサンプルからの上記の血漿について、アセトニトリルを用いてタンパク質を沈殿させ、上清を水により3倍希釈した後、LC-MS/MS試験のために5μLの溶液を取った。データを表9に示す。
【0230】
【表31】
【0231】
50mg/kgの式Iに示される化合物の結晶A及び式Iに示される化合物の遊離塩基非晶質をラットに経口投与したが、Tmaxはそれぞれ2.67時間及び4.67時間であり、Cmaxはそれぞれ1440ng/mL及び890ng/mLであり、AUClastはそれぞれ11551時間・ng/mL及び8165時間・ng/mLであった。
【0232】
上記の結果から、式Iに示される化合物の結晶Aがin vivoで式Iに示される化合物の遊離塩基非晶質よりも高い吸収を示したことが示唆される。
【0233】
実施例14:式Iの化合物の生化学的キナーゼ活性
式Iに示される化合物の生化学的キナーゼ活性は、米国ペンシルベニア州モルバーンにあるReaction Biology Corpによって試験された。試験規則は、Anastassiadis et alによるNat Biotechnol. 2011; 29(11):1039-45に記載される。式Iの化合物が以下のキナーゼを潜在的に阻害し得ることが見出された。
【0234】
【表32】
【0235】
本発明をその好ましい実施形態に関して添付の図面を参照して完全に説明したが、様々な変更及び修正が当業者に明らかであることに留意されたい。かかる変更及び修正は本発明の範囲内に含まれることが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12