(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】物置棚構造
(51)【国際特許分類】
A47F 5/10 20060101AFI20220407BHJP
A47F 5/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A47F5/10 Z
A47F5/00 C
(21)【出願番号】P 2019102205
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2020-12-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 インターツム ケルン国際家具インテリア産業見本市 2019 にて、2019年5月21日から2019年5月24日まで展示
(73)【特許権者】
【識別番号】390013321
【氏名又は名称】株式会社ダイドー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】山田 和義
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-053211(JP,A)
【文献】特開平07-184725(JP,A)
【文献】特開2006-280905(JP,A)
【文献】特開2017-192482(JP,A)
【文献】特開2009-226100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0029209(US,A1)
【文献】特開昭51-056367(JP,A)
【文献】特開2001-231641(JP,A)
【文献】特開2015-093104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00-5/10
A47B 51/00
A47B 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定外枠体(10)と、
レール手段(G)を介して前後水平方向(H
20)(H
20´)に移動可能として上記固定外枠体(10)に取付けられた可動内枠体(20)と、
上記可動内枠体(20)の内側に配設されている載置棚本体(3)と、
上記可動内枠体(20)の前方引出状態で、上記載置棚本体(3)を常時水平姿勢を保ちつつ略鉛直上下方向へ誘導案内する鉛直誘導リンク機構(Y)とを、
具備
し、
上記鉛直誘導リンク機構(Y)は、
平行リンク機構(30)と、
該平行リンク機構(30)により常に水平姿勢を保持するガイド板(31)と、
上記載置棚本体(3)の左右側端面(3A)と上記ガイド板(31)との間に介設されて、上記載置棚本体(3)を上記ガイド板(31)に対して前後水平方向に移動可能として保持するレール機構(32)と、
上記載置棚本体(3)に一端(33A)が枢着されて、上記載置棚本体(3)が前後水平方向に過大に移動するのを規制する拘束バー(33)と、
を備えていることを特徴とする物置棚構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物置棚構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、本出願人は昇降吊り棚に関して複数の特許出願を行っている(例えば、特許文献1参照)。即ち、吊り棚本体を固定筐体に対して、後上方の収納状態から手前下方に引き出した引き出し状態になるように、平行リンク機構を介して、吊り棚本体を取り付けていた。
吊り棚本体は前後寸法に対して上下寸法が大きく、また、固定筐体も(吊り棚本体を収納自在なように)前後寸法よりも上下寸法が大きく、側面視が共に縦長矩形状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記平行リンク機構によって、前後寸法(奥行き寸法)の小さな固定筐体から、前後寸法の同様に小さな吊り棚本体は、上記平行リンク機構によって、手前下方に、側面視円弧運動しつつ、簡単に引き出すことが可能であった。
【0005】
ところが、最近、店舗内に設置されている上下多段の商品陳列棚に於て、人の背よりも高い位置にまで引き出し可能としたいという要望がある。
しかしながら、このような商品陳列棚は、前後寸法が大きいと共に収納空間の上下寸法が小さい。従って、平行リンク機構による円弧運動をもって人の背よりも高い位置の棚を、手前下方へ移動させることができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点を解決して、人の背よりも高い位置の載置棚本体を、スムーズに手前に引き出すことができると共に、直ちに略鉛直下方へ移動させて、人の目で見易い高さ位置にて、商品等をチェックできると共に、取り出したり、再び商品等を載置でき、その後は簡単かつスムーズに、載置棚本体を元の上方奥部へ戻すことができる物置棚構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明は、固定外枠体と、レール手段を介して前後水平方向に移動可能として上記固定外枠体に取付けられた可動内枠体と、上記可動内枠体の内側に配設されている載置棚本体と、上記可動内枠体の前方引出状態で、上記載置棚本体を常時水平姿勢を保ちつつ略鉛直上下方向へ誘導案内する鉛直誘導リンク機構とを、具備し、上記鉛直誘導リンク機構は、平行リンク機構と、該平行リンク機構により常に水平姿勢を保持するガイド板と、上記載置棚本体の左右側端面と上記ガイド板との間に介設されて、上記載置棚本体を上記ガイド板に対して前後水平方向に移動可能として保持するレール機構と、上記載置棚本体に一端が枢着されて、上記載置棚本体が前後水平方向に過大に移動するのを規制する拘束バーと、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、載置棚本体が人の背丈以上の高所にあったとしても、容易に前方へ引出し、直ちに、下方へ移動させることができて、低い位置で、商品やその他の物品を、チェックしたり、載置する等の取り扱いが容易である。さらに、載置棚本体の引出し状態で、通路等の邪魔となる前後寸法を小さいままで、降下と上昇を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の物置棚構造の用途を示す図であって、(A)は商品陳列棚の場合の側面図、(B)は高所の物入れの場合の側面図である。
【
図2】本発明の実施の一形態を示す図であって、(A)は収納状態の右側面図、(B)は収納状態の一部断面で示した右側面図である。
【
図3】引出状態を示す図であって、(A)は右側面図、(B)は一部断面で示した右側面図である。
【
図5】最下降状態を一部断面で示す右側面図である。
【
図6】収納状態を一部断面で示した図であって、(A)は左側面図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図7】引出状態を一部断面で示した図であって、(A)は左側面図、(B)は(A)の要部拡大図である。
【
図8】最下降状態を一部断面で示した左側面図である。
【
図9】引出状態を一部断面で示した右側面図である。
【
図10】下降途中の状態を一部断面で示した右側面図である。
【
図11】最下降状態を一部断面で示した右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図1(A)に於て、1は、各種専門店、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の店舗内に設置された上下複数段の商品陳列棚(ショーケース)であって、人2の背よりも高い位置に在る載置棚本体3を、人2の目で見易い2点鎖線にて示した位置まで移動自在である。
即ち、載置棚本体3を、前方へ矢印H
3のように引出し可能であると共に、さらに、矢印K
3のように、略鉛直下方向へ降下可能とする物置棚構造Zを備えている。
【0011】
上下複数段の載置棚の最上段の一枚(個)、あるいは、(図示省略するが)最上段とその一つ下の2番目の段の両方を、前記矢印H3,K3の如く移動可能とするも好ましい。後者の場合には、物置棚構造Zを、上下に2個配設する。
【0012】
また、
図1(B)に示すように、クローゼット等の部屋の壁面5における高い位置4に付設されている固定棚の上に、載置棚本体3を設けた場合であっても、この載置棚本体3を、一旦前方H
3へ引出し可能であると共に、鉛直下方向K
3へ降下可能とする物置棚構造Zを、設けるも好ましい。
【0013】
次に、
図2~
図5、
図6~
図8に於て、本発明に係る物置棚構造Zを具体的に例示し、かつ、その作動を図示している。
即ち、10は固定外枠体であって、商品陳列棚1のフレーム1F(
図2参照)、あるいは、収納用凹部4の内面等に、ビス等の固着具等にて固定される。あるいは、
図2(A)(B)に示すように、商品陳列棚1の後方柱部(フレーム1F)に上下所定ピッチで形成された縦長矩形の係止孔に引掛ける横倒L字形引掛爪片11が、上記固定外枠体10の後面に突出状に設けられている。このような引掛爪片11と係止孔をもって、固定外枠体10を固着するも好ましい。
【0014】
そして、20は可動内枠体であって、レール手段Gを介して、前後水平方向H20,H20´に移動可能として、固定外枠体10に取付けられている。
レール手段Gは、一般に事務機器(キャビネット)等で使用される、外レールと内レールを滑り自在に嵌合した構造、あるいは、さらにボールや滑り部材を介在させて前後方向への移動抵抗を低減した構造である。
【0015】
望ましくは、レール手段Gとして、短縮状態下で外レールと内レールを(走行しないように)ロックする機能を付加する。
図2~
図8に於て示した小レバー7は、ロックを解除するための解除用レバーであって、例えば、内レールと外レールを相互に摩擦抵抗にて停止させる偏心形状の摩擦カムを、小レバー7の揺動によって解除する。あるいは、ロック機能として、ロック孔とロックピンを使用すると共に、前記小レバー7の揺動にてロックピンをロック孔から抜き去って解除するよう構成している。
【0016】
そして、
図2,
図6に示した収納状態、及び、
図3,
図7に示した前後水平方向H
20,H
20´への移動中、及び、前方引出(直後)状態下では、可動内枠体20の内側に載置棚本体3が、配設されている。
言い換えると、載置棚本体3は、収納状態(
図2,
図6参照)から前方引出(直後)状態(
図3,
図7参照)までの間は、可動内枠体20の内側(内部空間内)に配設され、一体状に停止と前後水平方向移動を行う。
【0017】
そして、可動内枠体20の前方引出状態(
図3,
図7参照)で、載置棚本体3を、
図4,
図5,
図8に示す如く、常時水平姿勢を保ちつつ、略鉛直上下方向へ誘導案内する鉛直誘導リンク機構Yを有している。
前記鉛直誘導リンク機構Yは、
図4,
図5,
図8、及び、
図9,
図10,
図11に示すように、平行リンク機構30と、この平行リンク機構30によって常に水平姿勢を保持するガイド板31と、載置棚本体3をガイド板31に対して前後水平方向に移動可能として保持するレール機構32と、載置棚本体3が前後水平方向に過大に移動するのを規制する拘束バー33とを、具備している。
拘束バー33の一端33Aは、載置棚本体3に枢着され、他端33Bは、平行リンク機構30の一部材に枢着される。
【0018】
前記レール機構32は、(具体例では、)載置棚本体3の左右側端面3Aと、ガイド板31との間に介設される。即ち、レール機構32は、相互に摺動自在に組合された内レール32Aと外レール32Bとから成り、内レール32Aを(例えば)ガイド板31に固着し、外レール32Bを載置棚本体3の側端面3Aに固着する(
図10,
図11参照)。
要するに、鉛直誘導リンク機構Yは、平行リンク機構30と、ガイド板31と、レール機構32と、拘束バー33と、を備えている。
【0019】
ここで、平行リンク機構30につき、具体的に、以下、説明する。
まず、平行リンク機構30を構成する4個の枢結ピンの軸心点O1,O2,O3,O4を図中に示す。また、41は第1リンク部材、42は第1リンク部材41に対して常に平行を保つ第2リンク部材である。
軸心点O1とO3とO4とO2を順次結ぶ直線(辺)によって、平行四辺形が構成される。
【0020】
第1リンク部材41は、点O1に於て可動内枠体20に枢結され、かつ、点O3に於てガイド板31に枢結されている。
第2リンク部材42は、点O2に於て可動内枠体20に枢結され、かつ、点O4に於てガイド板31に枢結されている。
従って、常に水平姿勢の可動内枠体20に対して、ガイド板31及びこれに保持された載置棚本体3は常に平行を維持して、水平姿勢を保つ。
【0021】
ところで、第1リンク部材41は、第2リンク部材42よりも十分に長く、人の手による操作ハンドル44として用いられる。左右の第1リンク部材41,41の先端を連結する横杆45を人の手で握って、第1リンク部材41を水平状(
図9参照)から、約45°の
図10の中間姿勢を経て、
図11に示す約90°の鉛直姿勢まで、揺動操作できる。
【0022】
ところで、左右の第1リンク部材41,41に左右橋絡状に固着された上記横杆45の近傍に平行状として、可動杆(ロック解除バー)48が付設され、前述した小レバー7を、
図6(A)(B)に示したように上方へ揺動させ、レール手段Gを走行(伸縮)しないようにロックする機能を、解除できる。
【0023】
具体的には、
図6,
図7に示すように、ピン49廻りに揺動可能として第1リンク部材41(操作ハンドル44)の先端に枢着された(左右一対の)揺動片50,50に、左右橋絡状として可動杆48を固着する。しかも、
図6に示すように、小レバー7に対して、揺動接触する当り部材が47が、揺動片50に固着されている。
【0024】
従って、
図6(A)(B)に示したように、横杆45に対して可動杆48が接近するように、(片手で)握れば、当り部材47が左右一対の小レバー7を同時に上方揺動させて、(前述した)レール手段Gの外レールと内レールが走行しないようにロックする機能を解除して、
図2,
図6の収納状態から、
図3,
図7のように前水平方向H
20へ引出すことが可能となる。
片手でもってロック解除できるため、他方の手が(荷物等で)塞がっている場合等に使い勝手が良いという利点がある。
【0025】
ところで、
図3(B)及び
図5に示すように、固定外枠体10の前端位置に、4半円形状(円弧状)の係止用ガイド溝15が形成されており、さらに、第1リンク部材41の内端(上端)には、係止用回転ローラ16が付設され、(
図2から)
図3(B)のように可動内枠体20が前方への引出状態となると、ローラ16は、円弧状ガイド溝15の入口に到達する。
【0026】
この状態下で、第1リンク部材41が下方へ揺動開始すると、ローラ16は円弧状ガイド溝15に侵入し、ローラ16は円弧状ガイド溝15に係止状態となって可動内枠体20が水平前後方向に動かないよう停止状態となる。
即ち、平行リンク機構30によって、載置棚本体3が下降を開始すると、可動内枠体20が前後方向に固定保持された状態となり、載置棚本体3が不意に、前後水平方向に動くことを規制できて、安定した鉛直上下作動が行われる。
【0027】
次に、拘束バー33について説明する。拘束バー33の一端33Aは、載置棚本体3に軸35にて枢結され、かつ、他端33Bは、軸36にて、第1リンク部材41に枢結されている。図例では、第1リンク部材41には、前方への突片41Aが(軸心点O1の近傍に)形成されている。この突片41Aに軸36をもって、揺動自在に、枢結されている。突片41Aに枢結することによって拘束バー33の全長が短くて済む。
【0028】
この拘束バー33によって、
図4に示すように、
図3に示した前方引出状態から、操作ハンドル44の下方への揺動に伴う載置棚本体3の前方又は後方への移動量ΔEは、小さくできる。即ち、ΔEが小さくなって、載置棚本体3が前後水平方向に過大に移動せず、従って、
図1(A)に示したような商品陳列棚1に於て、人2の後方を、他の人が通過する邪魔とならず、逆に、引出して下降する載置棚本体3が下方の棚の前端縁や、その上の物品に、接触する虞れもなくなる。また、
図1(B)に示した室内の収納用凹部4から載置棚本体3を引出して下降させる場合も、室内のスペースを余分に必要とせずに済む。クローゼット内のスペースが狭くとも良くなるという利点がある。
【0029】
なお、(図示省略するが、)渦巻バネ及びダンパーを、平行リンク機構30等の可動部に設けて、急激な下降、急激な上昇を抑制し、小さな力でスムーズかつ安全に、載置棚本体3が昇降作動するようにするのが望ましい。
なお、本発明は、図示の実施形態に限定されず、設計変更自由であって、例えば、拘束バー33の他端33Bを、平行リンク機構30の他のリンクに枢着し、又は、可動内枠体20に枢着するも、自由である。
【0030】
本発明は、以上詳述したように、固定外枠体10と、レール手段Gを介して前後水平方向H
20,H
20´に移動可能として上記固定外枠体10に取付けられた可動内枠体20と、上記可動内枠体20の内側に配設されている載置棚本体3と、上記可動内枠体20の前方引出状態で、上記載置棚本体3を常時水平姿勢を保ちつつ略鉛直上下方向へ誘導案内する鉛直誘導リンク機構Yとを、具備する構成であるので、高所の載置棚本体に載った商品等の物品を、簡便に下方へ移動させ、チェックしたり、載置したり、取出すことが容易であり、商品陳列棚(
図1参照)や壁面収納庫やクローゼット等に好適である。さらに、載置棚本体3を前方かつ下方へ引出した状態下で、通路やクローゼット等のスペースを大きく占めることがなく、使い勝手が良好である。特に、載置棚本体3として、前後寸法が大きく、しかも、上下の収納棚の上下間隔(
図1(A)参照)、又は、収納用凹部4(
図1(B)参照)が小さい場合にも、本発明に係る物置棚構造を設置(利用)できる。
【0031】
また、上記鉛直誘導リンク機構Yは、平行リンク機構30と、該平行リンク機構30により常に水平姿勢を保持するガイド板31と、上記載置棚本体3の左右側端面3Aと上記ガイド板31との間に介設されて、上記載置棚本体3を上記ガイド板31に対して前後水平方向に移動可能として保持するレール機構32と、上記載置棚本体3に一端33Aが枢着されて、上記載置棚本体3が前後水平方向に過大に移動するのを規制する拘束バー33と、を備えている構成であるので、構造が簡素でありながらも、載置棚本体3を円滑に略鉛直上下方向に、水平を保ったままで移動できる。従って、故障も発生しにくく、軽量でありながらも耐久性に優れる。
【符号の説明】
【0032】
3 載置棚本体
3A 左右側端面
10 固定外枠体
20 可動内枠体
30 平行リンク機構
31 ガイド板
32 レール機構
33 拘束バー
33A 一端
G レール手段
Y 鉛直誘導リンク機構
H20 前水平方向
H20´ 後水平方向