IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高麗大学校産学協力団の特許一覧

特許7054544再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム
<>
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図1
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図2
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図3
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図4
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図5
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図6
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図7
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図8
  • 特許-再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
   F25B 15/00 20060101AFI20220407BHJP
   F25B 15/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
F25B15/00 301B
F25B15/00 B
F25B15/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020134884
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2021143816
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0029323
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日2019年8月26日,ICR 2019 the 25th IIR International Congress of Refrigeration, August 24-30,2019 Montreal,Quebec,Canada(159 Saint-Antoine St.West,Montreal,Quebec,H2Z 1H2 Canada) [刊行物等] 開催日2019年11月22日,大韓設備工学会2019年 冬季学術 発表大会 高麗大学校ハナスクエア(大韓民国 02841 ソウル ソンブクク アナムロ 145)
(73)【特許権者】
【識別番号】314000442
【氏名又は名称】高麗大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145, Anam-ro Seongbuk-gu Seoul 02841, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ガン ヨンテ
(72)【発明者】
【氏名】ギム ガブヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハンソル
【審査官】飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-087572(JP,A)
【文献】特開2010-133605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00-15/16,30/04,41/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃熱を利用したハイブリッド吸収式熱ポンプシステムにおいて、
冷媒が溶解されている混合溶液を、廃熱を利用して加熱して冷媒蒸気を生成する再生器と、
前記冷媒蒸気を液状冷媒に液化させ、外部に熱を放出する凝縮器と、
前記液状冷媒を冷媒蒸気に気化させ、外部の熱を吸収する蒸発器と、
前記冷媒蒸気を前記混合溶液に吸収させ、外部に熱を放出する吸収器と、
前記再生器と前記吸収器を往復する前記混合溶液との間の熱を交換する混合溶液熱交換機と、
前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムの動作モードに応じて三方バルブを通じた配管の連結関係を調節することによって、前記再生器および前記吸収器の間での前記混合溶液の移送方向ならびに前記凝縮器および前記蒸発器の間での前記液状冷媒の移送方向を制御するように構成された制御部と、
第1ないし第2膨張バルブおよび第2移送ポンプと、
を含み、
前記混合溶液は、
前記吸収器で前記冷媒蒸気を吸収した後、前記再生器に移送される濃溶液と、
前記再生器で前記冷媒蒸気を排出した後、前記吸収器に移送される希溶液と、
を含み、
前記三方バルブは、第1ないし第10三方バルブを含み、
前記制御部は、前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが冷房モードに作動する時、前記三方バルブを通じた配管の連結状態を調節することによって、前記第1三方バルブ、前記第1膨張バルブ、及び前記第2三方バルブ順に連結される第1ラインを通じて前記凝縮器で液化された前記液状冷媒が前記蒸発器に移送され、前記第3三方バルブ、前記第4三方バルブ、前記第2移送ポンプ、前記混合溶液熱交換機、前記第5三方バルブ、及び前記第6三方バルブ順に連結される第2ラインを通じて前記濃溶液が前記吸収器から前記再生器に移送され、前記第7三方バルブ、前記第8三方バルブ、前記混合溶液熱交換機、前記第2膨張バルブ、前記第9三方バルブ、及び前記第10三方バルブ順に連結される第3ラインを通じて前記希溶液が前記再生器から前記吸収器に移送されるように制御する、ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム。
【請求項2】
さらに、第1移送ポンプと、
を含み、
前記制御部は、前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが暖房モードに作動する時、前記三方バルブを通じた配管の連結状態を調節することによって、前記第1三方バルブ、前記第1移送ポンプ、及び前記第2三方バルブ順に連結される第4ラインを通じて前記凝縮器で液化された液状冷媒が前記蒸発器に移送され、前記第7三方バルブ、前記第4三方バルブ、前記第2移送ポンプ、前記混合溶液熱交換機、前記第5三方バルブ、及び前記第10三方バルブ順に連結される第5ラインを通じて前記希溶液が前記再生器で前記吸収器に移送され、前記第3三方バルブ、前記第8三方バルブ、前記混合溶液熱交換機、前記第2膨張バルブ、前記第9三方バルブ、及び前記第6三方バルブ順に連結される第6ラインを通じて前記濃溶液が前記吸収器から前記再生器に移送されるように制御する、
請求項に記載のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが冷房モードに作動する時、
前記第1三方バルブは、前記凝縮器と前記第1膨張バルブを連結し、
前記第2三方バルブは、前記第1膨張バルブと前記蒸発器を連結し、
前記第3三方バルブは、前記吸収器と前記第4三方バルブを連結し、
前記第4三方バルブは、前記第3三方バルブと前記第2移送ポンプを連結し、
前記第5三方バルブは、前記混合溶液熱交換機と前記第6三方バルブを連結し、
前記第6三方バルブは、前記第5三方バルブと前記再生器を連結し、
前記第7三方バルブは、前記再生器と前記第8三方バルブを連結し、
前記第8三方バルブは、前記第7三方バルブと前記混合溶液熱交換機を連結し、
前記第9三方バルブは、前記第2膨張バルブと前記第10三方バルブを連結し、
前記第10三方バルブは、前記第9三方バルブと前記吸収器を連結するように制御する、
請求項に記載のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム。
【請求項4】
前記制御部は、前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが暖房モードに作動する時、
前記第1三方バルブは、前記凝縮器と前記第1移送ポンプを連結し、
前記第2三方バルブは、前記第1移送ポンプと前記蒸発器を連結し、
前記第3三方バルブは、前記吸収器と前記第8三方バルブを連結し、
前記第4三方バルブは、前記第7三方バルブと前記第2移送ポンプを連結し、
前記第5三方バルブは、前記混合溶液熱交換機と前記第10三方バルブを連結し、
前記第6三方バルブは、前記第9三方バルブと前記再生器を連結し、
前記第7三方バルブは、前記再生器と前記第4三方バルブを連結し、
前記第8三方バルブは、前記第3三方バルブと前記混合溶液熱交換機を連結し、
前記第9三方バルブは、前記第2膨張バルブと前記第6三方バルブを連結し、
前記第10三方バルブは、前記第5三方バルブと前記吸収器を連結するように制御する、
請求項に記載のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム。
【請求項5】
前記混合溶液は、
外部の熱を吸収する前記冷媒と、
前記冷媒を溶解させて吸収する吸収剤と、
を含み、
前記冷媒は、HFC系列の冷媒またはHFO系列の冷媒のいずれか1つを含み、
前記吸収剤は、有機溶媒またはイオン性溶媒のいずれか1つを含む、
請求項に記載のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム。
【請求項6】
前記冷媒は、HFC系列の冷媒であるR32を含み、
前記吸収剤は、有機溶媒であるDMACまたはイオン性溶媒である[hmim][Tf2N]のいずれか1つを含む、
請求項に記載のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム。
【請求項7】
前記冷媒は、HFO系列の冷媒であるR1234ze(E)またはR1234yfのいずれか1つを含み、
前記吸収剤は、イオン性溶媒である[hmim][Tf2N]を含む、
請求項に記載のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収式熱ポンプシステムに関し、より詳細には新しい冷媒及び吸収剤ペアが適用され、冷房又は暖房モードに変更が可能な再生熱源利用ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
従来には化石発電と原子力発電を通じた電気エネルギーを使用して来たが、化石燃料の埋蔵量の減少や環境汚染の問題などで化石燃料と原子力エネルギーを代替する水素エネルギー源の研究があった。水素エネルギーを積極的に活用することができるシステムには代表的に燃料電池がある。
【0003】
図1のように、燃料電池(Fuel Cell)は都市ガス等を改質して得ることができる水素ガス(H)と空気中の酸素(O)の結合反応によって発電を行うシステムである。正極では負極から溶液中を移動して来た水素イオン(H)と正極で生成された水酸イオン(OH)が反応して水(HO)が生成されると同時に反応熱が発生する。
【0004】
燃料電池の主燃料である水素は改質器(Reformer)を通じて供給され、燃料電池の核心燃料である水素は部分酸化(POX:Partial Oxidation)反応、自熱改質(ATR:Auto-Thermal Reforming)反応及びメタンの水蒸気改質反応(Methane Steam Reforming)等によって生産されている。
【0005】
燃料電池は電解質の種類に応じて高分子電解質燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)、固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)、アルカリ型燃料電池(Alkaline Fuel Cell、AFC)、溶融炭酸塩燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell、MCFC)に区分される。
【0006】
主に家庭用燃料電池では高い電力密度を要求するので、高分子電解質燃料電池PEMFC技術を多く利用しており、最近には効率が高い固体酸化物燃料電池(SOFC)技術も開発がされて適用されている。
【0007】
燃料電池が商用化されて普及した事例としては、近年、日本が代表的である。2011年の東日本大震災事態の後、日本の場合、脱原発政策を採択した。脱原発政策が実行され、すべての原子力発電所が稼動停止され、これによって、電力需要をカバーするために火力発電所が最大稼動された。火力発電所の最大稼働限界に達したことによって、順次的に停止に至り、日本国内で局地的停電が発生した。結局、日本は不足な電力需要を解決しようとエネファーム(ene-farm)(登録商標)を開発供給し始めた。
【0008】
エネファーム(登録商標)は、燃料電池を利用した自家発電システムとして補助電力を担当する。家庭は一般的に最大3kWの電力の供給を受け、エネファーム(登録商標)はこの3kWの電力の中の一部の電力を担当するために、都市ガスの供給を受けて発電する。経済的効用性を考慮した時、エネファーム(登録商標)は0.7kWで1kW級の電力を生産するように開発された。
【0009】
このような燃料電池は発電の時に化学エネルギーを電気エネルギーに変換することによって、熱が発生することになるが、この時に発生する熱は燃料電池の種類に応じて70℃から1100℃に至る。この時、適切な作動温度を維持しなければ、燃料電池効率が低下する。
【0010】
エネファーム(登録商標)の場合燃料電池を通じた発電の時に発生する廃熱を給湯熱として活用しており、これは総エネルギー変換効率95%に至る高効率エネルギー生産システムとして位置づけられている。しかし、熱エネルギーが活用されているところが給湯熱に限定されているので、高い温度範囲を有する燃料電池が好まれており、これは、最終的に廃熱の使用先が限定的であるという限界を示している。
【0011】
水素エネルギーのみならず、その他の再生熱源としては、太陽光がある。太陽熱は量と持続性をみると、無限であるため、脚光を浴びているが、集熱した時の温度が高くなく、個々の蓄熱システムが難しいので、その活用先が適当ではない。
【0012】
冷暖房のために使用される熱ポンプは、圧縮式サイクルを利用する圧縮式熱ポンプと吸収式サイクルを利用する吸収式熱ポンプの2つの方式がある。どちらの方式も冷媒の蒸発潜熱と凝縮潜熱を利用する。
【0013】
圧縮式サイクルでは冷媒を低圧から高圧に変換させる過程の駆動エネルギーで圧縮器の仕事Wが要求される。反面、吸収式サイクルでは吸収器、移送ポンプ、再生器によって冷媒を低圧から高圧に変換させる駆動エネルギーが熱という点が異なる。
【0014】
一般的に家庭用は駆動エネルギーとして電気を使用する圧縮式熱ポンプを利用して冷暖房をしている。これに反して、吸収式熱ポンプは熱を駆動エネルギーとして使用するので、前記言及された廃熱を活用するには非常に適切である。但し、既存の吸収式システムは、性能は優れているが、冷房のみに焦点が合わせられた臭化リチウム-水ペアに限定された作動流体を使用していた。作動流体である臭化リチウム-水ペアは慢性的な問題として耐腐蝕性の問題があり、高温輸送体としての制限があり、低温冷凍が不可能であり、結晶化の問題がある。また、最近リチウム電池需要増加に応じるリチウム価額高騰で商業的吸収式システムの限界に達したことも事実である。
【0015】
即ち、前記問題を解決するための代替冷媒-吸収剤ペアの開発が要求される。
【0016】
熱ポンプに使用される既存の冷媒(R-22、R410a、R134aなどのHFC系列)の場合、高い地球温暖化指数(Global Warming Potential、GWP)によって規制が強化されているので、Low GWPを有する冷媒を使用することが要求される実情である。
【0017】
Low GWP冷媒を使用する場合、毒性、可燃性、爆発性、GWPが低いので、冷媒規制に即刻的な対応が可能であり、低い圧力でも駆動可能であるという長所があるが、冷媒の吸収剤として使用される有機溶媒はアンモニア/水を利用する場合より吸収率が低いので、吸収率を増加させることができる組合せを見つけることが不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】国際公開第2014-045998号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は新しい冷媒及び吸収剤ペアと配管構造を通じて低温廃熱の活用が可能であり、冷房及び暖房モードの転換が可能なハイブリッド吸収式熱ポンプシステムを提供することにある。
【0020】
一方、本発明で達成しようとする技術的課題は以上で言及した技術的課題に制限されなく、言及しないその他の技術的課題は下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムは廃熱を利用したハイブリッド吸収式熱ポンプシステムにおいて、冷媒が溶解されている混合溶液を、廃熱を利用して加熱して冷媒蒸気を生成する再生器と、前記再生器で生成された冷媒蒸気を液状冷媒に液化させ、外部に熱を放出する凝縮器と、前記凝縮器で生成された液状冷媒を冷媒蒸気に気化させ、外部の熱を吸収する蒸発器と、前記蒸発器で生成された冷媒蒸気を前記混合溶液に吸収させ、外部に熱を放出する吸収器と、前記再生器と前記吸収器を往復する混合溶液との間の熱を交換する混合溶液熱交換機と、前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムの動作モードに応じて三方バルブを通じた配管の連結関係を調節することによって、前記再生器と前記吸収器との間での前記混合溶液の移送方向と、前記凝縮器と前記蒸発器との間での前記液状冷媒の移送方向を制御するように構成された制御部と、を含む。
【0022】
前記混合溶液は、前記吸収器で冷媒蒸気を吸収した後、前記再生器に移送される濃溶液と、前記再生器で冷媒蒸気を排出した後、前記吸収器に移送される希溶液と、を含むことができる。
【0023】
前記制御部は前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが冷房モードに作動する時、前記三方バルブを通じた配管の連結状態を調節することによって、第1三方バルブ、第1膨張バルブ、及び第2三方バルブ順に連結される第1ラインを通じて前記凝縮器から液化された液状冷媒が前記蒸発器に移送され、第3三方バルブ、第4三方バルブ、第2移送ポンプ、混合溶液熱交換機、第5三方バルブ、及び第6三方バルブ順に連結される第2ラインを通じて前記濃溶液が前記吸収器から前記再生器に移送され、第7三方バルブ、第8三方バルブ、混合溶液熱交換機、第2膨張バルブ、第9三方バルブ及び第10三方バルブ順に連結される第3ラインを通じて前記希溶液が前記再生器から前記吸収器に移送されるように制御することができる。
【0024】
前記制御部は前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが暖房モードに作動する時、前記三方バルブを通じた配管の連結状態を調節することによって、第1三方バルブ、第1移送ポンプ及び第2三方バルブ順に連結される第4ラインを通じて前記凝縮器から液化された液状冷媒が前記蒸発器に移送され、第7三方バルブ、第4三方バルブ、第2移送ポンプ、混合溶液熱交換機、第5三方バルブ、及び第10三方バルブ順に連結される第5ラインを通じて前記希溶液が前記再生器から前記吸収器に移送され、第3三方バルブ、第8三方バルブ、混合溶液熱交換機、第2膨張バルブ、第9三方バルブ、及び第6三方バルブ順に連結される第6ラインを通じて前記濃溶液が前記吸収器から前記再生器に移送されるように制御することができる。
【0025】
前記制御部は前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが冷房モードに作動する時、前記第1三方バルブは凝縮器と第1膨張バルブを連結し、前記第2三方バルブは第1膨張バルブと蒸発器を連結し、前記第3三方バルブは吸収器と第4三方バルブを連結し、前記第4三方バルブは第3三方バルブと第2移送ポンプを連結し、前記第5三方バルブは混合溶液熱交換機と第6三方バルブを連結し、前記第6三方バルブは第5三方バルブと再生器を連結し、前記第7三方バルブは再生器と第8三方バルブを連結し、前記第8三方バルブは第7三方バルブと混合溶液熱交換機を連結し、前記第9三方バルブは第2膨張バルブと第10三方バルブを連結し、前記第10三方バルブは第9三方バルブと吸収器を連結するように制御することができる。
【0026】
前記制御部は前記ハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが暖房モードに作動する時、前記第1三方バルブは凝縮器と第1移送ポンプを連結し、前記第2三方バルブは第1移送ポンプと蒸発器を連結し、前記第3三方バルブは吸収器と第8三方バルブを連結し、前記第4三方バルブは第7三方バルブと第2移送ポンプを連結し、前記第5三方バルブは混合溶液熱交換機と第10三方バルブを連結し、前記第6三方バルブは第9三方バルブと再生器を連結し、前記第7三方バルブは再生器と第4三方バルブを連結し、前記第8三方バルブは第3三方バルブと混合溶液熱交換機を連結し、前記第9三方バルブは第2膨張バルブと第6三方バルブを連結し、前記第10三方バルブは第5三方バルブと吸収器を連結するように制御することができる。
【0027】
前記混合溶液は、外部の熱を吸収する冷媒と、前記冷媒を溶解させて吸収する吸収剤と、を含み、前記冷媒はHFC系列の冷媒またはHFO系列の冷媒のいずれか1つを含み、前記吸収剤は有機溶媒またはイオン性溶媒のいずれか1つを含むことができる。
【0028】
前記冷媒はHFC系列の冷媒であるR32を含み、前記吸収剤は有機溶媒であるDMACまたはイオン性溶媒である[hmim][Tf2N]の中でいずれか1つを含むことができる。
【0029】
前記冷媒はHFO系列の冷媒であるR1234ze(E)またはR1234yfの中でいずれか1つを含み、前記吸収剤はイオン性溶媒である[hmim][Tf2N]を含むことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムは新しい冷媒及び吸収剤ペアと配管構造を通じて低温廃熱の活用が可能であり、冷房及び暖房モードの転換が可能である。
【0031】
一方、本発明で得ることができる効果は以上で言及した効果によって制限されなく、言及しないその他の効果は下の記載から本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】燃料電池のエネルギー変換過程を示した図面である。
図2】既存の第1種吸収式熱ポンプシステムの概略図である。
図3】既存の第2種吸収式熱ポンプシステムの概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムの概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが冷房モードに動作する時を示した概略図である。
図6】本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが暖房モードに動作する時を示した概略図である。
図7】本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムに使用される冷媒及び吸収剤ペアに対する冷房性能比較図である。
図8】本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムに使用される冷媒及び吸収剤ペアに対する暖房性能比較図である。
図9】本発明の他の実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステム作動方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の他の長所及び特徴、そしてそれらを達成する方法は添付される図面と共に詳細に後述される実施形態を参照すれば明確になる。しかし、本発明は以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現されることができ、本実施形態は単に本発明の開示を完全にするようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0034】
もし定義されてなくても、ここで使用されるすべての用語(技術或いは科学用語を含む)はこの発明が属する従来技術で普遍的な技術によって一般的に意味することと同一な意味を有する。一般的な辞書によって定義された用語は関連した技術及び/或いは本出願の本文に意味することと同一な意味を有することと解釈されることができ、そしてここで明確に定義された表現がなくても概念化されるか、或いは過度に形式的に解釈されないものである。
【0035】
本明細書で使用された用語は実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。本明細書で、単数形は文句で特別に言及しない限り、複数形も含む。明細書で使用される‘含む’及び/又はこの動詞の様々な活用形、例えば‘含む’、‘含み’、等は言及された組成、成分、構成要素、段階、動作及び/又は素子は1つ以上の他の組成、成分、構成要素、段階、動作及び/又は素子の存在又は追加を排除しない。本明細書で‘及び/又は’という用語は羅列された構成の各々又はこれらの様々な組合を示す。
【0036】
以下、本明細書の添付された図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0037】
吸収式熱ポンプシステムは基本的に再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器で構成される。吸収式熱ポンプシステムは吸収器と再生器での熱の吸収と放出によって平衡状態の変化に応じた沸点の分離を通じた冷媒の吸収と再生が行われる。再生作用を通じて発生した高圧高エンタルピーの冷媒は凝縮器に移送される。吸収器と再生器は熱エネルギーで駆動され、油類やガスを利用して直接加熱するか、或いは廃熱を熱源として活用するか、又は発電所で排出される廃熱を活用することができる。
【0038】
吸収式熱ポンプシステムは第1種吸収式システムと第2種吸収式システムに区分される。
【0039】
図2は既存の第1種吸収式熱ポンプシステムの概略図である。
【0040】
図2を参照すれば、第1種吸収式熱ポンプシステムは冷房が目的であり、吸収式システムの最も基本的な形態である。濃溶液は移送ポンプ(solution pump)によって吸収器(absorber)から再生器(generator)に移送された後、高圧部である再生器(generator)で外部から熱を受けて冷媒を再生させ、冷媒が再生され、残りの希溶液は吸収器(absorber)に回収される。再生された冷媒は凝縮器(condenser)で完全凝縮されて蒸発器(evaporator)で蒸発し、冷房目標から熱を奪い、吸収器で回収される。
【0041】
図3は既存の第2種吸収式熱ポンプシステムの概略図である。
【0042】
図3を参照すれば、第2種吸収式熱ポンプシステムはさらに高い高温を得て給湯又は暖房をすることが目的である。第1種吸収式熱ポンプシステムと目立つ違いは、再生器(generator)から吸収器(absorber)に移送ポンプ(solution pump)が配置されて再生器(generator)で冷媒を再生し、残りの希溶液を吸収器(absorber)に移送させることによって、再生器(generator)が低圧部になり、吸収器(absorber)が高圧部になる。凝縮器(condenser)で凝縮された冷媒は膨張バルブ(expansion valve)を経由せずに移送ポンプ(solution pump)によって蒸発器(evaporator)に移送される。蒸発器(evaporator)から再生器(generator)に供給し、残りの残熱を回収した冷媒は吸収器(absorber)を通じて目標に熱を供給する。
【0043】
即ち、第1種吸収式熱ポンプシステムと第2種吸収式熱ポンプシステムは構成する要素が同一であるが、第1種吸収式熱ポンプシステムは混合溶液が吸収器(absorber)から再生器(generator)に移送され、第2種吸収式熱ポンプシステムは混合溶液が再生器(generator)から吸収器(absorber)に移送される。
【0044】
ここで、混合溶液は冷媒と吸収剤が混合された溶液を言う。混合溶液は濃溶液と希溶液に区分されるが、濃溶液は冷媒の濃度が高い溶液を言い、前記希溶液は冷媒の濃度が低い溶液を言う。
【0045】
既存の吸収式熱ポンプシステムの冷媒及び吸収剤ペアとしてはアンモニア-水又は水-臭化リチウムが主流を成した。しかし、この冷媒及び吸収剤ペアの短所として毒性、耐腐蝕性の問題、70℃以下で結晶化の問題及び水の凝固点による低温氷結の問題がある。また、水-臭化リチウムで構成された吸収式冷凍機の冷媒吸収剤は単価の約20%を占めるほど、その割合が大きいが、最近のリチウムイオン電池の需要増加に応じるリチウム価額の高騰による吸収剤価額負担の問題で代替材に対する需要が確認された。
【0046】
既存のアンモニア-水、水-臭化リチウムを代替する吸収式熱ポンプシステムに適用する作動冷媒としては相対的に低いGWPを有するR32をはじめとするHFC系列冷媒、R1234ze(E)、R1234yf等のHFO系列冷媒又はHC系列冷媒であるR290、R600等が考慮されており、吸収剤としては揮発性が少なく、吸収率が良い有機溶媒とイオン性溶液に関する研究が進められた。イオン性溶液というのは常温常圧で溶融塩の形態に存在する陽イオンと陰イオンの組合体を意味する。イオン性溶液は低い蒸気圧力、優れる化学的安定性及び様々な冷媒を溶かすことができる長所がある。
【0047】
先行技術の場合、結晶化地点(70℃)を避けようと90℃以上の熱源で作動する水-臭化リチウム吸収式熱ポンプシステムに関する技術が主流を成し、冷凍システムと加熱システムが分離されたモデルに関する研究を進めたが、本発明では新しい冷媒及び吸収剤ペアを利用して低温熱源である80℃以下で動作が可能であり、動作モードを冷房モード及び暖房モードに動作モードを変更することができるハイブリッド吸収式熱ポンプシステムを提案する。
【0048】
図4は本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムの概略図である。
【0049】
図4を参照すれば、本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステム10は再生器(Generator)100、凝縮器(Condenser)200、蒸発器(Evaporator)300、吸収器(Absorber)400、混合溶液熱交換機(Solution Heat Exchanger)500、膨張バルブ610~620、移送ポンプ710~720、三方バルブ(threeway valve)801~810、及び制御部(図示せず)を含む。
【0050】
再生器100は濃溶液の中で冷媒を蒸発させる蒸気発生器として機能する。
【0051】
具体的に再生器100は廃熱を利用して前記濃溶液を加熱して冷媒蒸気を発生させ、これを、配管を通じて凝縮器200に移送する。
【0052】
前記廃熱は燃料電池スタックで発生して捨てられる熱である。この時、燃料電池は高分子電解質燃料電池PEMFCである。高分子電解質燃料電池PEMFCは水素イオン伝導性高分子膜を電解質として使用する燃料電池として他の種類の燃料電池と比較して低温で運転されるので、理論発電効率が高く、電流密度と出力密度が大きく、稼動及び停止が容易である長所がある。また、電池構造設計に柔軟性を有するので、電池の小型化にも有利である。1kW級高分子電解質燃料電池PEMFCスタックで発生する熱量は最大1.2Wであり、それにしたがう温度は約70℃乃至90℃である。前記燃料電池スタックは前記高分子電解質燃料電池PEMFCのみならず、固体酸化物燃料電池等の廃熱源を発生させ、電力生産の効果を出す燃料電池を全て含むことができる。
【0053】
但し、前記廃熱は燃料電池で発生されて捨てられる熱に限定されなく、発電過程で発生されるが、使用されずに捨てられる熱源であれば、制限無しで本発明に適用されることができる。
【0054】
冷媒蒸気発生のために、再生器100に移送される混合溶液は冷媒が多く溶解されている濃溶液に該当する。濃溶液に含まれた冷媒の濃度は再生器100で冷媒蒸気が発生するほど、徐々に減少し、この過程で希溶液に変化する。濃溶液で冷媒蒸気が発生し、生成された希溶液は配管を通じて混合溶液熱交換機500に移送される。
【0055】
凝縮器200は前記冷媒蒸気を凝縮させて液状冷媒に液化する。
【0056】
具体的に凝縮器200は混合溶液が移動する配管とは異なる別の高温の冷却水配管を含む。前記冷媒は前記高温の冷却水配管に接触して液状の冷媒に転換される。凝縮器200は蒸気状態の冷媒が液化され、放出する熱を吸収する。凝縮器200で吸収した熱は暖房に利用することができる。凝縮器200で生成された液状の冷媒は配管を通じて蒸発器300に移送される。
【0057】
蒸発器300は凝縮器200で生成された液状の冷媒を蒸発させる。
【0058】
具体的に蒸発器300は液状冷媒を内部の熱交換機を通じて低温冷却水配管表面に接触させる。前記低温冷却水配管に接触した冷媒は蒸発して吸収器400に移送される。蒸発器300で冷媒が蒸発しながら、吸収式熱ポンプシステム10が冷房モードに動作する時には外気を冷却させ、暖房モードに動作する時には再生器に供給され、残りの廃熱を吸収する。
【0059】
吸収器400は蒸発器300で生成された冷媒蒸気を希溶液に吸収させる。
【0060】
具体的に、吸収器400は蒸発器300から移送された冷媒蒸気を希溶液に吸収させるほど、冷媒蒸気を吸収した希溶液は冷媒濃度が濃くなって濃溶液になる。この時、吸収器400に存在する希溶液は配管を通じて再生器100から移送されて混合溶液熱交換機500を経て流入されたものである。吸収器400は希溶液が冷媒蒸気を吸収しながら、発生する熱を内部の熱交換機を通じて高温冷却水配管を利用して排出し、当該熱は暖房に使用されることができる。
【0061】
熱力学的なサイクルによって動作する吸収式システムの特徴は各設置場所毎に異なる廃熱使用条件を有するので、使用条件を綿密に検討した後に、吸収式熱平衡サイクルを(Heat Balance)考慮して設計される。
【0062】
1kW級高分子電解質燃料電池PEMFCスタックで発生する熱量は最大1.2Wであり、それにしたがう温度は約70℃乃至90℃である。したがって、燃料電池スタックで放出される廃熱の温度を考慮する時、再生器100の作動温度範囲は40℃以上80℃以下、凝縮器200の作動温度範囲は20℃以上60℃以下、蒸発器300の作動温度範囲は-10℃以上50℃以下、吸収器400の作動温度範囲は30℃以上55℃以下であることが好ましい。但し、具体的な作動条件に応じて変更されることができる。
【0063】
混合溶液熱交換機500は再生器100から出る希溶液と吸収器400から出る濃溶液を相互熱交換させる。
【0064】
膨張バルブ610~620は流体を低圧に減圧し、流量を調節する。
【0065】
移送ポンプ710~720は移送速度調節を通じて流体の流量を調節する。
【0066】
三方バルブ801~810は3つの方向に流体の移送方向を調節することができるバルブを言い、本発明の三方バルブ800は第1三方バルブ801乃至第10三方バルブ810を含む。
【0067】
第1三方バルブ801は凝縮器200、第1膨張バルブ610、及び第1移送ポンプ710の間の液状の冷媒の移送方向を調節する。
【0068】
第2三方バルブ802は第1膨張バルブ610、第1移送ポンプ710、及び蒸発器300の間の液状の冷媒の移送方向を調節する。
【0069】
第3三方バルブ803は吸収器400、第4三方バルブ804、及び第8三方バルブ808の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0070】
第4三方バルブ804は第3三方バルブ803、第7三方バルブ807、第2移送ポンプ720の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0071】
第5三方バルブ805は混合溶液熱交換機500、第6三方バルブ806、第10三方バルブ810の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0072】
第6三方バルブ806は第5三方バルブ805、第9三方バルブ809、及び再生器100の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0073】
第7三方バルブ807は再生器100、第8三方バルブ808、及び第4三方バルブ804の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0074】
第8三方バルブ808は第7三方バルブ807、第3三方バルブ803、及び混合溶液熱交換機500の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0075】
第9三方バルブ809は第2膨張バルブ620、第10三方バルブ810、及び第6三方バルブ806の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0076】
第10三方バルブ810は第9三方バルブ809、第5三方バルブ805、及び吸収器400の間の混合溶液の移送方向を調節する。
【0077】
制御部(図示せず)はハイブリッド吸収式熱ポンプシステムの動作モードに応じて三方バルブ801~810を通じた配管の連結関係を調節することによって、再生器100と吸収器400との間での混合溶液の移送方向と、凝縮器200と蒸発器300との間での液状冷媒の移送方向と、を制御するように構成される。
【0078】
図5は本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが冷房モードに動作する時を示した概略図である。
【0079】
図5を参照すれば、冷房モードの時、液状の冷媒は第1ラインに沿って凝縮器200から蒸発器300に移送され、濃溶液は第2移送ポンプ720によって第2ラインに沿って吸収器400から再生器100に移送され、希溶液は第3ラインに沿って再生器100から吸収器400に移送される。
【0080】
冷房モードの時、液状の冷媒が凝縮器200から蒸発器300に移送される第1ラインは第1三方バルブ801、第1膨張バルブ610、及び第2三方バルブ802順に連結されるラインを言う。
【0081】
具体的に言えば、冷房モードの時、第1三方バルブ801は凝縮器200と第1膨張バルブ610を連結する。第1膨張バルブ610は前記液状の冷媒の圧力と温度を降下させ、冷凍負荷の変動に対応できるように前記液状冷媒の流量を調節する。したがって、前記液状の冷媒は蒸発による熱吸収作用が容易に起こることができる。第1膨張バルブ610で膨張された液状冷媒は配管を通じて第2三方バルブ802に移送される。第2三方バルブ802は第1膨張バルブ610と蒸発器300を連結する。
【0082】
冷房モードの時、濃溶液が第2移送ポンプ720によって吸収器400から再生器100に移送される第2ラインは第3三方バルブ803、第4三方バルブ804、第2移送ポンプ720、混合溶液熱交換機500、第5三方バルブ805、及び第6三方バルブ806順に連結されるラインを言う。
【0083】
具体的に言えば、冷房モードの時、第3三方バルブ803は吸収器400と第4三方バルブ804を連結する。第4三方バルブ804は第3三方バルブ803と第2移送ポンプ720を連結する。第2移送ポンプ720は再生器100に流入される燃料電池廃熱の温度に応じて吸収器400から再生器100に移送される濃溶液の流量を調節することができ、これのため、第2移送ポンプ720の速度を制御するための流量制御部(図示せず)をさらに含むことができる。混合溶液熱交換機500は第2移送ポンプ720によって吸収器400から移送される濃溶液と再生器100から移送される希溶液相互間の熱を交換する。第5三方バルブ805は混合溶液熱交換機500と第6三方バルブ806を連結する。第6三方バルブ806は第5三方バルブ805と再生器100を連結する。
【0084】
冷房モードの時、希溶液が再生器100から吸収器400に移送される第3ラインは第7三方バルブ807、第8三方バルブ808、混合溶液熱交換機500、第2膨張バルブ620、第9三方バルブ809、及び第10三方バルブ810順に連結されるラインを言う。
【0085】
具体的に言えば、冷房モードの時、第7三方バルブ807は再生器100と第8三方バルブ808を連結する。第8三方バルブ808は第7三方バルブ807と混合溶液熱交換機500を連結する。混合溶液熱交換機500は再生器100で移送される希溶液と吸収器400から移送される濃溶液相互間の熱を交換する。第2膨張バルブ620は希溶液を低圧に減圧し、流量を調節する。第9三方バルブ809は第2膨張バルブ620と第10三方バルブ810を連結する。第10三方バルブ810は第9三方バルブ809と吸収器400を連結する。
【0086】
このような三方バルブ800を通じた配管の連結関係調節は制御部(図示せず)を通じて成される。
【0087】
制御部(図示せず)はハイブリッド吸収式熱ポンプシステム10が冷房モードに作動する時、三方バルブ801~810を通じた配管の連結状態を調節することによって、第1三方バルブ801、第1膨張バルブ610、及び第2三方バルブ802順に連結される第1ラインを通じて凝縮器200から液化された液状冷媒が蒸発器300に移送されるように制御する。
【0088】
また、第3三方バルブ803、第4三方バルブ804、第2移送ポンプ720、混合溶液熱交換機500、第5三方バルブ805、及び第6三方バルブ806順に連結される第2ラインを通じて濃溶液が吸収器400から再生器100に移送されるように制御する。
【0089】
最後に、第7三方バルブ807、第8三方バルブ808、混合溶液熱交換機500、第2膨張バルブ620、第9三方バルブ809、及び第10三方バルブ810順に連結される第3ラインを通じて希溶液が再生器100から吸収器400に移送されるように制御する。
【0090】
図6は本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムが暖房モードに動作する時を示した概略図である。
【0091】
図6を参照すれば、暖房モードの時、液状の冷媒は第1移送ポンプ710によって第4ラインに沿って凝縮器200から蒸発器300に移送され、希溶液は第2移送ポンプ720によって第5ラインに沿って再生器100から吸収器100に移送され、濃溶液は第6ラインに沿って吸収器400から再生器100に移送される。
【0092】
暖房モードの時、液状の冷媒が第1移送ポンプ710によって凝縮器200から蒸発器300に移送される第4ラインは第1三方バルブ801、第1移送ポンプ710、及び第2三方バルブ802順に連結されるラインを言う。
【0093】
具体的に言えば、暖房モードの時、第1三方バルブ801は凝縮器200と第1移送ポンプ710を連結する。第1移送ポンプ710は凝縮器200から蒸発器300に移送される液状冷媒の流量を調節することができ、このため、第1移送ポンプ710の速度を制御するための流量制御部(図示せず)をさらに含むことができる。第2三方バルブ802は第1移送ポンプ710と蒸発器300を連結する。
【0094】
暖房モードの時、希溶液が第2移送ポンプ720によって再生器100から吸収器400に移送される第5ラインは第7三方バルブ807、第4三方バルブ804、第2移送ポンプ720、混合溶液熱交換機500、第5三方バルブ805、及び第10三方バルブ810順に連結されるラインを言う。
【0095】
具体的に言えば、暖房モードの時、第7三方バルブ807は再生器100と第4三方バルブ804を連結する。第4三方バルブ804は第7三方バルブ807と第2移送ポンプ720を連結する。第2移送ポンプ720は再生器100から吸収器400に移送される希溶液の流量を調節することができ、このために第2移送ポンプ720の速度を制御するための流量制御部(図示せず)をさらに含むことができる。混合溶液熱交換機500は第2移送ポンプ720によって再生器100から移送される希溶液と吸収器400で移送される濃溶液相互間の熱を交換する。第5三方バルブ805は混合溶液熱交換機500と第10三方バルブ810を連結する。第10三方バルブ810は第5三方バルブ805と吸収器400を連結する。
【0096】
暖房モードの時、濃溶液が吸収器400から再生器100に移送される第6ラインは第3三方バルブ803、第8三方バルブ808、混合溶液熱交換機500、第2膨張バルブ620、第9三方バルブ809及び第6三方バルブ806順に連結されるラインを言う。
【0097】
具体的に言えば、暖房モードの時、第3三方バルブ803は吸収器400と第8三方バルブ808を連結する。第8三方バルブ808は第3三方バルブ803と混合溶液熱交換機500を連結する。混合溶液熱交換機500は吸収器400から移送される濃溶液と再生器100から移送される希溶液相互間の熱を交換する。第2膨張バルブ620は濃溶液を低圧に減圧し、流量を調節する。第9三方バルブ809は第2膨張バルブ620と第6三方バルブ806を連結する。第6三方バルブ806は第9三方バルブ809と再生器100を連結する。
【0098】
このような三方バルブ800を通じた配管の連結関係調節は制御部(図示せず)を通じて成される。
【0099】
制御部(図示せず)はハイブリッド吸収式熱ポンプシステム10が暖房モードに作動する時、三方バルブ801~810を通じた配管の連結状態を調節することによって、第1三方バルブ801、第1移送ポンプ710、及び第2三方バルブ802順に連結される第4ラインを通じて凝縮器200で液化された液状冷媒が蒸発器300に移送されるように制御する。
【0100】
また、第7三方バルブ807、第4三方バルブ804、第2移送ポンプ720、混合溶液熱交換機500、第5三方バルブ805、及び第10三方バルブ810順に連結される第5ラインを通じて希溶液が再生器100から吸収器400に移送されるように制御する。
【0101】
最後に、第3三方バルブ803、第8三方バルブ808、混合溶液熱交換機500、第2膨張バルブ620、第9三方バルブ809、及び第6三方バルブ806順に連結される第6ラインを通じて濃溶液が吸収器400から再生器100に移送されるように制御する。
【0102】
即ち、本発明のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム10の場合も図5の冷房モードに動作する時の概略図及び図6の暖房モードに動作する時の概略図からわかるように、膨張バルブ610、620及び移送ポンプ710、720を含む。各構成要素の位置又は動作方向を変更する必要無しで制御部(図示せず)を利用して三方バルブ801~810を通じた配管の連結関係を調節することのみで冷房モード及び暖房モードの中でいずれかを選択的に動作させることができる。
【0103】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステム10の場合、新しい冷媒及び吸収剤ペアを適用することができる。
【0104】
前記冷媒はHFC系列の冷媒であるジフルオロメタン(Difluoromethane)を含むことができる。これはR32(HFC-32)と称され、既存に使用される冷媒に比べて低いGWP(Global Warming Potential)を有する。また、前記冷媒はHFO系列の冷媒であるR1234ze(E)またはR1234yfを含むことができる。但し、これに限定されることではなく、再生器100を通過する過程で蒸発がよく起こることができ、Low GWPを有する冷媒をさらに含むことができる。
【0105】
前記吸収剤は有機溶媒またはイオン性溶媒の中でいずれか1つを含むことができる。有機溶媒はDMAC(dimethylacetamide)、DMEDEG(Dimethylether Diethylene Glycol)又はDMETrEG(Dimethylether Triethylene Glycol)を含むことができる。DMACはDMEDEGに比べて相対的に毒性可燃性等が低く、化学的に不揮発性で類推仮定することができるので、熱力学的状態量の予測に容易である。イオン性溶媒とは有機陽イオンと有機又は無機陰イオンで構成されて常温で溶融塩の形態に存在する液体を言い、[hmim][Tf2N](1-Hexyl-3-methylimidazolium bis(trifluormethylsulfonyl)imide)を含むことができる。
【0106】
図7は本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムに使用される各々の冷媒及び吸収剤ペアに対する冷房性能比較図である。
【0107】
図7を参照すれば、横軸は再生器100の温度(Generator temperature)を示し、縦軸は性能係数(COPc、Coefficient of performance)を示す。冷房モードの時、性能係数はR32/DMAC、R32/[hmim][Tf2N]、R1234ze(E)/[hmim][Tf2N]及びR1234yf/[hmim][Tf2N]順に高いことと現れた。また、再生器温度が増加することによって性能係数は徐々に増加する傾向性を示した。R1234ze(E)/[hmim][Tf2N]ペアの場合、約98℃の以後に小幅減少する傾向性を示した。R32/DMACペアは最大性能係数0.581、R32/[hmim][Tf2N]ペアは最大性能係数0.498、R1234ze(E)/[hmim][Tf2N]ペアは最大性能係数0.251、R1234yf/[hmim][Tf2N]ペアは最大性能係数0.186を示した。作動温度範囲は理論的に臨界温度の前まで作動が可能であることと確認され、R1234ze(E)/[hmim][Tf2N]ペアが61℃から作動可能であり、最も広い作動温度範囲を有した。作動温度範囲はR1234ze(E)/[hmim][Tf2N]、R1234yf/[hmim][Tf2N]、R32/[hmim][Tf2N]及びR32/DMACの順を示した。R1234yf/[hmim][Tf2N]ペアは約63℃から、R32/DMACペアは63℃から、R32/[hmim][Tf2N]ペアは約59℃から作動可能であることと確認された。
【0108】
図8は本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステムに使用される各々の冷媒及び吸収剤ペアに対する暖房性能比較図である。
【0109】
図8を参照すれば、横軸は再生器100の温度(Generator temperature)を示し、縦軸は性能係数(COPc、Coefficient of performance)を示す。暖房モードの時、再生器温度が増加することに応じてR32/DMACペアは性能係数が増加することと現れた。残りの冷媒/吸収剤ペアは再生器温度が増加することに応じて性能係数が減少することと現れた。再生器温度が70℃である時、性能係数はR32/DMAC、R1234yf/[hmim][Tf2N]、R1234ze(E)/[hmim][Tf2N]及びR32/[hmim][Tf2N]ペアの順に高く、各値は1.383、1.04、0.9779及び0.9335の順に現れた。
【0110】
即ち、図7の冷房性能比較図及び図9の暖房性能比較図で分かるように本発明のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム10は低温熱源である60℃乃至90℃の廃熱源が提供される場合、R32、R1234ze(E)またはR1234yfのいずれか1つの冷媒とDMACまたは[hmim][Tf2N]のいずれか1つの吸収剤を組み合わせて生成された混合溶液で作動が可能である。
【0111】
一般的に使用されている水/臭化リチウムの冷媒/吸収剤ペアの場合、90℃以上の熱源で冷房の時に0.8前後の性能係数を有する。
【0112】
本発明のハイブリッド吸収式熱ポンプシステム10の場合、R32/DMACペア使用の時、60℃乃至90℃の低温廃熱源条件下でも冷房モードで0.5乃至0.6の性能係数を有することによって、低温廃熱源を使用するにも拘らず、高温廃熱源に比べて大きく低下されない性能係数を有することを分かった。
【0113】
また、R32/DMACペアのみならず、R32/[hmim][Tf2N]ペアとLowGWP冷媒を使用した冷媒/吸収剤ペアであるR1234yf/[hmim][Tf2N]またはR1234ze(E)/[hmim][Tf2N]ペアの場合にも60℃乃至90℃の低温廃熱源条件下で作動することを確認することができる。
【0114】
但し、円滑な熱ポンプシステムの動作のために前記言及された冷媒及び吸収剤ペアの沸点の場合、廃熱源である90℃よりは低く提供されなければならない。
【0115】
図9は本発明の一実施形態に係るハイブリッド吸収式熱ポンプシステム作動方法20を示した図面である。
【0116】
図9を参照すれば、本発明の全体サイクルは再生器100、吸収器400、及び再生器100の順序を有する混合溶液サイクルと再生器100、凝縮器200、蒸発器300、吸収器400、及び再生器100の順序を有する冷媒サイクルに区分される。
【0117】
ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム作動方法20は再生器で冷媒が溶解されている混合溶液を廃熱を利用して加熱して冷媒蒸気を生成する段階(S100)、凝縮器で、前記再生器で生成された冷媒蒸気を液状冷媒に液化させ、外部に熱を放出する段階(S200)、蒸発器で、前記凝縮器で生成された液状冷媒を冷媒蒸気に気化させ、外部の熱を吸収する段階(S300)、及び吸収器で、前記蒸発器で生成された冷媒蒸気を前記混合溶液に吸収させ、外部に熱を放出する段階(S400)を含む。
【0118】
S100段階は再生器100で成される。具体的に、第2移送ポンプ720によって吸収器400から移送された濃溶液と燃料電池スタックで発生した廃熱との間の熱交換を通じて前記濃溶液内の気液平衡点が変化するようになる。前記濃溶液の気液平衡点の変化によって冷媒が気化して冷媒蒸気が発生する。前記濃溶液は冷媒の濃度が低くなって希溶液になる。
【0119】
S200段階は凝縮器200で成される。具体的に、再生器100から移送された冷媒蒸気が凝縮されて液状冷媒が生成される。前記冷媒蒸気の液化(Liquefaction)によって熱が排出され、当該熱は室内暖房に活用される。
【0120】
S300段階は蒸発器300で成される。具体的に、凝縮器200で排出された液状冷媒は冷房モードの時には第1膨張バルブ610によって膨張された後、蒸発器300に移送され、暖房モードの時には第1移送ポンプ710によって蒸発器300に移送される。蒸発器300に到達した液状冷媒は外部の熱を吸収し、蒸発するので、これを冷房に活用するか、又は暖房モードの時、さらに多い廃熱を室内に供給する役割を遂行することができる。
【0121】
S400段階は吸収器400で成される。具体的に、蒸発器300から吸収器400に移送されて希溶液に吸収される。希溶液は再生器100から移送されて溶液熱交換機500を経て吸収器400に流入されたものである。ここで、希溶液は冷媒の濃度が高くなって濃溶液になり、この時、放出される熱は暖房に活用するか、又は温水給湯に活用される。吸収器400で生成された濃溶液は溶液熱交換機500を経て再生器100に移送される。
【0122】
以上で実施形態を通じて本発明を説明したが、上の実施形態は単なる本発明の思想を説明するためのものであって、これに限定されない。通常の技術者は前述した実施形態に様々な変形が加えられることを理解する。本発明の範囲は添付された特許請求の範囲の解釈を通じてのみに定まれる。
【符号の説明】
【0123】
10 ハイブリッド吸収式熱ポンプシステム
100 再生器
200 凝縮器
300 蒸発器
400 吸収器
500 混合溶液熱交換機
610、620 膨張バルブ
710、720 移送ポンプ
801~810 三方バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9