(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】プロテクター
(51)【国際特許分類】
A63B 71/12 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
A63B71/12 A
(21)【出願番号】P 2020196074
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390040165
【氏名又は名称】株式会社二子商事
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(72)【発明者】
【氏名】西本 充晶
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-16528(JP,A)
【文献】国際公開第2018/185452(WO,A1)
【文献】国際公開第94/24893(WO,A1)
【文献】国際公開第01/87102(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0108800(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第2171893(GB,A)
【文献】英国特許出願公開第2328859(GB,A)
【文献】米国特許第4525875(US,A)
【文献】米国特許第6182299(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/12
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の胸部及び前腹部を保護する中央領域保護部(1)と、人体の横腹部を保護する左右一対の側方保護部(2)とを、有し、
上記中央領域保護部(1)は、表て面側にボールの衝撃を緩和する所定厚さの
鉛直状の衝撃緩和構造体(3)と、人体に沿って密接状に装着される
鉛直状の裏皮(4)とを、備え、
上記衝撃緩和構造体(3)は、上下複数枚の横長状衝撃吸収部材(5)を、しころ状に重ねて構成され、
上記衝撃吸収部材(5)は、
各々、鉛直状の上記裏皮(4)に対して前方下方(R)を向く帯状前面壁部(6)と、該前面壁部(6)の下端縁(7)から後方へ折曲状に連設された起立突出壁部(8)と、該起立突出壁部(8)の下端縁(9)から下方へ折曲状に連設された鉛直状後面壁部(10)と、を有し、
下側の前面壁部(6)の上端縁(15)の後面(21)を、直上の前面壁部(6)の下端縁(7)の前面(22)と、スライド自在に当接状として、上記後面壁部(10)を、上記裏皮(4)に固着したことを特徴とするプロテクター。
【請求項2】
上記衝撃吸収部材(5)
が、表て面皮(12)と、裏面皮(13)と、上記表て面皮(12)と裏面皮(13)との間に配設された発泡樹脂層(14)とから成る三層構造である請求項1記載のプロテクター。
【請求項3】
上記衝撃吸収部材(5)が、
一層のエラストマーから成形されている請求
項1記載のプロテクター
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、野球用のプロテクターは、キャッチャー(人体)の胸部及び前腹部を保護する中央保護部材と、人体の横腹部を保護する左右一対の側方保護部材とを、有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1記載のプロテクターは、中央保護部材が前方を向いた垂直面状なので、ボールが当たった際、プロテクターにて跳ね返って、キャッチャーの足元から遠く離れた位置に落下するという問題があった。また、表皮と裏皮との間に、(発泡樹脂製の)ブロック体が介在したので、製造工程が複雑となるという欠点があった。
【0005】
そこで、本発明は、プロテクターに当たったボールをキャッチャーの足元近くに落下させることができるプロテクターを提供することを目的とする。また、キャッチャーが、上半身を容易に曲げることができるプロテクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るプロテクターは、人体の胸部及び前腹部を保護する中央領域保護部と、人体の横腹部を保護する左右一対の側方保護部とを、有し、上記中央領域保護部は、表て面側にボールの衝撃を緩和する所定厚さの鉛直状の衝撃緩和構造体と、人体に沿って密接状に装着される鉛直状の裏皮とを、備え、上記衝撃緩和構造体は、上下複数枚の横長状衝撃吸収部材を、しころ状に重ねて構成され、上記衝撃吸収部材は、各々、鉛直状の上記裏皮に対して前方下方を向く帯状前面壁部と、該前面壁部の下端縁から後方へ折曲状に連設された起立突出壁部と、該起立突出壁部の下端縁から下方へ折曲状に連設された鉛直状後面壁部と、を有し、下側の前面壁部の上端縁の後面を、直上の前面壁部の下端縁の前面と、スライド自在に当接状として、上記後面壁部を、上記裏皮に固着したものである。
【0007】
また、上記衝撃吸収部材が、表て面皮と、裏面皮と、上記表て面皮と裏面皮との間に配設された発泡樹脂層とから成る三層構造である。
また、上記衝撃吸収部材が、一層のエラストマーから成形されているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプロテクターによれば、プロテクターに当たったボールは直ちに下方向へ撥ね返り、キャッチャーの足元近くに落下する。従ってキャッチャーがボールの処理を迅速に行い得る。キャッチャーが、プロテクターを装着した状態で、上半身を容易に曲げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】最上部に配設される衝撃吸収部材を示す斜視図である。
【
図4】最上部以外に配設される衝撃吸収部材を示す斜視図である。
【
図5】最上部に配設される衝撃吸収部材の他例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1・
図2は、本発明の実施の一形態を示す。人体の胸部及び前腹部を保護する中央領域保護部1と、人体の横腹部を保護する左右一対の側方保護部2とを、有する。中央領域保護部1は、表て面側にボールの衝撃を緩和する所定厚さの衝撃緩和構造体3と、人体に沿って密接状に装着される裏皮4とを、備える。衝撃緩和構造体3は、上下複数枚の横長状衝撃吸収部材5を、しころ状(錣状)に重ねて構成される。裏皮4は、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の発泡体から成る衝撃吸収材、及び、裏生地等を積層したものが、好ましい。
【0011】
図2~
図4に示すように、衝撃吸収部材5は、前方下方Rを向く帯状前面壁部6と、前面壁部6の下端縁7から後方へ折曲状に連設された起立突出壁部8と、起立突出壁部8の下端縁9から下方へ折曲状に連設された鉛直状後面壁部10と、を有する。後面壁部10が、裏皮4に固着(縫着)される。衝撃吸収部材5と裏皮4との間に、横長状空隙部11が形成される。下側の前面壁部6の上端縁15の後面21が、直上の前面壁部6の下端縁7の前面22と、スライド自在に当接状である。
【0012】
図3は、衝撃緩和構造体3を構成する衝撃吸収部材5のうち、最上部に配設される衝撃吸収部材5Aを示す。
図4は、衝撃緩和構造体3を構成する衝撃吸収部材5のうち、最上部の衝撃吸収部材5A以外の衝撃吸収部材5Bを示す。最上部に配設される衝撃吸収部材5Aが、前面壁部6の上端縁15から後方へ折曲状に連設された起立突出壁部16と、起立突出壁部16の上端縁17から上方へ折曲状に連設された鉛直状後面壁部18と、を有する。
【0013】
衝撃吸収部材5が、表て面皮12と、裏面皮13と、表て面皮12と裏面皮13との間に配設された発泡樹脂層14とから成る三層構造である。表て面皮12は、例えば、人工皮革、合成皮革、ポリエステル生地、ナイロン生地等から成る。裏面皮13は、例えば、人工皮革、合成皮革、ポリエステル生地、ナイロン生地等から成る。発泡樹脂層14は、例えば、低反発ポリウレタン発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、エチレン酢酸共重合体発泡体等から成る。特に、ボール等の衝撃が加わっても跳ねない素材である低反発ポリウレタン発泡体が、好ましい。
【0014】
図5は、衝撃緩和構造体3を構成する衝撃吸収部材5のうち最上部に配設される衝撃吸収部材5Aの他例を示す。最上部に配設される衝撃吸収部材5Aが、(左右一対の)側面壁部19と、周囲後面壁部20を有する。
【0015】
上述のプロテクターの衝撃吸収部材5の製法について説明する。表て面皮12と、フィルム状のホットメルトと、発泡樹脂層14と、フィルム状のホットメルトと、裏面皮13とを、順次重ねて、加熱により融着して積層体を作製する。金型内に積層体を設置して、ホットプレス又はコールドプレスにて、上記所定形状に成型する。
【0016】
なお、各々のコーナー(例えば、帯状前面壁部6と起立突出壁部8との連接部)は、角張らないようアール形状とする。また、側方保護部材2は、従来と同様であっても良い。
【0017】
本発明は、設計変更可能であって、例えば、衝撃吸収部材5が、一層のエラストマーから成形されるも良い。また、衝撃吸収部材5を、表て面皮12と、表て面皮12の裏面に積層された発泡樹脂層14とから成る二重構造とするも良い。
【0018】
以上のように、本発明は、人体の胸部及び前腹部を保護する中央領域保護部1と、人体の横腹部を保護する左右一対の側方保護部2とを、有し、上記中央領域保護部1は、表て面側にボールの衝撃を緩和する所定厚さの衝撃緩和構造体3と、人体に沿って密接状に装着される裏皮4とを、備え、上記衝撃緩和構造体3は、上下複数枚の横長状衝撃吸収部材5を、しころ状(錣状)に重ねて構成され、上記衝撃吸収部材5は、前方下方Rを向く帯状前面壁部6と、該前面壁部6の下端縁7から後方へ折曲状に連設された起立突出壁部8と、該起立突出壁部8の下端縁9から下方へ折曲状に連設された鉛直状後面壁部10と、を有し、上記後面壁部10を、上記裏皮4に固着したので、プロテクターに当たったボールをキャッチャーの足元近くに落下するので、キャッチャーのボール処理を、迅速かつ正確に行うことができる。また、キャッチャーが、プロテクターを装着した状態で、上半身を容易に曲げることができる。さらに、衝撃吸収部材5は、(上半身前面全体にわたる部材を製造する場合と比較して、)小さな金型にて製造することができる。
【0019】
また、上記衝撃吸収部材5と、上記裏皮4との間に、横長状空隙部11を形成したので、ボールの衝撃を空隙部11にて効率良く吸収することができる。
【0020】
また、上記衝撃吸収部材5が、表て面皮12と、裏面皮13と、上記表て面皮12と裏面皮13との間に配設された発泡樹脂層14とから成る三層構造であるので、発泡樹脂層14の劣化を防止しつつ、発泡樹脂層14によって、効率良くボールの衝撃を緩和することができる。
【0021】
また、上記衝撃吸収部材5が、一層のエラストマーから成形されているので、容易に製造することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 中央領域保護部
2 側方保護部
3 衝撃緩和構造体
4 裏皮
5 衝撃吸収部材
6 (帯状)前面壁部
7 下端縁
8 起立突出壁部
9 下端縁
10 鉛直状後面壁部
12 表て面皮
13 裏面皮
14 発泡樹脂層
R 前方下方
【要約】
【課題】プロテクターに当たったボールをキャッチャーの足元近くに落下させることができるプロテクターを提供する。
【解決手段】人体の胸部及び前腹部を保護する中央領域保護部1と、人体の横腹部を保護する左右一対の側方保護部とを、有する。中央領域保護部1は、表て面側にボールの衝撃を緩和する所定厚さの衝撃緩和構造体3と、人体に沿って密接状に装着される裏皮4とを、備える。衝撃緩和構造体3は、上下複数枚の横長状衝撃吸収部材5を、しころ状に重ねて構成され、衝撃吸収部材5は、前方下方Rを向く帯状前面壁部6と、前面壁部6の下端縁7から後方へ折曲状に連設された起立突出壁部8と、起立突出壁部8の下端縁9から下方へ折曲状に連設された鉛直状後面壁部10と、を有する。後面壁部10が、裏皮4に固着される。
【選択図】
図2