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  • 特許-プライマー、及び、防食構造体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】プライマー、及び、防食構造体
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20220407BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220407BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20220407BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20220407BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D5/00 D
C09D5/08
B32B27/26
B32B27/00 101
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021116583
(22)【出願日】2021-07-14
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2021008144
(32)【優先日】2021-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】安藤 洋平
(72)【発明者】
【氏名】桐山 招大
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 智行
(72)【発明者】
【氏名】木内 一之
(72)【発明者】
【氏名】笠松 丈一
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-544807(JP,A)
【文献】特開2017-071762(JP,A)
【文献】特開2014-200997(JP,A)
【文献】特開2020-193282(JP,A)
【文献】特開2017-101310(JP,A)
【文献】特開2018-168455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防食を行う対象物に塗布される防食ペーストとしてのプライマーが用いられ、該プライマーによって形成されているプライマー層と、前記プライマー層に積層される、防食テープで構成された防食層とを備え、
前記プライマーは、主剤と硬化剤とを含み、
前記主剤は、シリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下であり、
前記防食テープは、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドと、を有し、
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である
防食構造体。
【請求項2】
前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物として反応硬化性を有するシリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が25Pa・s以上250Pa・s以下である
請求項に記載の防食構造体。
【請求項3】
前記繊維シートは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が10質量%以下である
請求項1または2に記載の防食構造体。
【請求項4】
前記繊維シートは、坪量が30g/m以上150g/m以下である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の防食構造体。
【請求項5】
前記防食層に積層されるトップコート層をさらに備え、
前記トップコート層は、油分を含むトップコートで形成されており、
前記油分は、シリコーン化合物を含む
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の防食構造体。
【請求項6】
前記トップコートは、23℃における粘度が0.05Pa・s以上100Pa・s以下である
請求項に記載の防食構造体。
【請求項7】
前記トップコートは、錫系触媒をさらに含む
請求項5または6に記載の防食構造体。
【請求項8】
前記プライマー層と前記防食層との間に配され、防食マスチックで形成されている防食マスチック層をさらに備え、
前記防食マスチック層は、シリコーン化合物を含んでいる
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の防食構造体。
【請求項9】
前記防食マスチックは、ちょう度が40以上150以下である
請求項に記載の防食構造体。
【請求項10】
前記防食マスチックは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が20質量%以下である
請求項8または9に記載の防食構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー、及び、該プライマーで形成されたプライマー層を備える防食構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基体上に何らかの層を形成するに際して、プライマー(下塗り材)を用いることが知られている。
【0003】
このようなプライマーは、例えば、防食構造体の作製において、防食層を形成するに際して用いられる(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、金属製部材(例えば、ガス管、水道管、及び、油などの液体原料を輸送するための配管のような金属管など)を基体とし、該基体たる前記金属製部材の表面に前記プライマーを塗布してプライマー層を形成した後、前記プライマー層を形成した前記金属製部材の表面に防食テープを巻き付けて防食層を形成することにより、防食構造体を作製することが示されている。
【0004】
また、前記プライマーとして、主剤と硬化剤とを含むものが知られており、このような、前記主剤と前記硬化剤とを含むプライマーにおいて、耐熱性などを高めるべく、前記主剤にシリコーン化合物を含ませたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-168455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記主剤として前記シリコーン化合物を含むプライマーを前記基体上に塗布してプライマー層を形成するに際して、前記プライマーを作業性良く塗布できるものの、前記プライマーを塗布することによって形成されたプライマー層を高温環境下(例えば、200℃の環境下)に曝したときに前記プライマー層にワレが生じてしまうことがある。すなわち、前記プライマー層が十分な耐熱性を発揮できなくなることがある。
また、前記プライマーを前記基体に塗布することによって形成されたプライマー層が十分な耐熱性を示すものの、前記基体上への前記プライマーの塗布作業性(施工性)が悪くなることがある。
【0007】
しかしながら、プライマーを基体に塗布するときの塗布作業性を良好にしつつ(施工性を確保しつつ)、得られたプライマー層を耐熱性に優れたものとすることについての検討は、未だ十分になされているとは言い難い。
【0008】
そこで、本発明は、基体に塗布するときの塗布作業性が良好となり(施工性を確保でき)、しかも、得られたプライマー層を耐熱性に優れるものとすることができるプライマー、及び、該プライマーによって形成されたプライマー層を備える防食構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討したところ、主剤と硬化剤とを備えるプライマーにおいて、前記主剤を、シリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下のものとすることにより、前記プライマーを基体に塗布するときの塗布作業性が良好となり(施工性を確保でき)、しかも、前記プライマーを塗布することにより得られたプライマー層が、耐熱性に優れるものとなることを見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るプライマーは、
主剤と硬化剤とを備え、
前記主剤は、シリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下である。
【0011】
斯かる構成によれば、前記プライマーは、基体に塗布するときの塗布作業性が良好となり(施工性を確保でき)、しかも、得られたプライマー層を耐熱性に優れるものとすることができる。
【0012】
前記プライマーにおいては、
前記主剤は、IR測定によって得られた赤外吸収スペクトルにおいて、1200cm-1以上1300cm-1以下の範囲、及び、2800cm-1以上2900cm-1以下の範囲にそれぞれ1以上のピークを有し、かつ、2800cm-1以上2900cm-1以下の範囲に現れる最も高いピークの高さhに対する1200cm-1以上1300cm-1以下の範囲に現れる最も高いピークの高さhの比h/hが、25以上250以下である、ことが好ましい。
【0013】
斯かる構成によれば、前記プライマーを塗布することにより得られたプライマー層をより一層耐熱性に優れるものとすることができる。
【0014】
前記プライマーにおいては、
前記硬化剤は、JIS K7371:2000に規定の方法で測定されたpHが、2以上5以下である、ことが好ましい。
【0015】
斯かる構成によれば、前記プライマーは、基体の塗布するときの塗布作業性が良好になり(施工性を確保でき)、しかも、得られたプライマー層を耐熱性に優れるものとすることができることに加えて、前記プライマー層を防食性に優れるものとすることができる。
【0016】
前記プライマーにおいては、
防錆剤をさらに含む、ことが好ましい。
【0017】
斯かる構成によれば、前記プライマーによって形成されたプライマー層を、金属管などのような金属製部材の表面に配したときに、前記金属製部材が錆びることを抑制することができる。
【0018】
前記プライマーにおいては、
防食ペーストとして用いられる、ことが好ましい。
【0019】
斯かる構成によれば、防食ペーストとして用いた前記プライマーを塗布作業性良く(施工性を確保して)基体に塗布できるとともに、前記プライマーを防食ペーストとして用いて形成されたプライマー層を備える防食構造体を耐熱性に優れるものとすることができる。
【0020】
本発明に係る防食構造体は、
防食を行う対象物に塗布される防食ペーストとしてのプライマーが用いられ、該プライマーによって形成されているプライマー層を備え、
前記プライマーは、主剤と硬化剤とを含み、
前記主剤は、シリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下である。
【0021】
斯かる構成によれば、前記プライマーは、基体に塗布するときの塗布作業性が良好となり(施工性を確保でき)、しかも、得られたプライマー層を耐熱性に優れるものとすることができる。
すなわち、塗布作業性良くプライマーを塗布して前記プライマー層を形成しつつ、前記防食構造体を耐熱性に優れるものとすることができる。
【0022】
前記防食構造体においては、
前記プライマー層に積層される、防食テープで構成された防食層をさらに備え、
前記防食テープは、繊維シートと、該繊維シートに担持され、かつ、シリコーン化合物を含むコンパウンドと、を有し、
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下である、ことが好ましい。
【0023】
斯かる構成によれば、前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化反応の促進を抑制でき、これにより、前記防食テープのコンパウンドの硬化が適切に制御されるようになる。
その結果、前記防食構造体をより一層耐熱性に優れるものとすることができる。
【0024】
前記防食構造体においては、
前記コンパウンドは、前記シリコーン化合物として反応硬化性を有するシリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が25Pa・s以上250Pa・s以下である、ことが好ましい。
【0025】
斯かる構成によれば、前記繊維シートの表層部分に担持された前記コンパウンドの硬化の促進をより一層抑制でき、これにより、前記防食テープのコンパウンドの硬化がより一層適切に制御されるようになる。
その結果、前記防食構造体をより一層耐熱性に優れるものとすることができる。
【0026】
前記防食構造体においては、
前記繊維シートは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が10質量%以下である、ことが好ましい。
【0027】
斯かる構成によれば、300℃といった高温下に24時間という長時間曝された場合であっても、金属管などのような金属製部材の表面と前記防食テープとの密着性を維持することができる。
その結果、前記防食構造体をより一層耐熱性に優れるものとすることができる。
【0028】
前記防食構造体においては、
前記繊維シートは、坪量が30g/m以上150g/m以下である、ことが好ましい。
【0029】
斯かる構成によれば、前記繊維シートは、前記コンパウンドを比較的含浸させ易いものとなる。すなわち、前記防食テープは、前記コンパウンドがより十分に含浸されたものとなる。
そのため、金属管などのような金属製部材に巻き付けた状態において、前記防食テープをより一層十分に硬化させて、前記金属製部材と前記防食テープとの間に隙間が生じることをより一層抑制することができる。
これにより、前記防食構造体をより一層耐熱性に優れるものとすることができる。
【0030】
前記防食構造体においては、
前記防食層に積層されるトップコート層をさらに備え、
前記トップコート層は、油分を含むトップコートで形成されており、
前記油分は、シリコーン化合物を含む、ことが好ましい。
【0031】
斯かる構成によれば、前記シリコーン化合物を含む防食テープによって構成された前記防食層に積層された状態において、前記防食層との親和性が比較的高いものとなるとともに、前記防食層に前記油剤を含浸させ易くなる。
すなわち、前記トップコート層と前記防食層との間に隙間が生じ難くなるので、前記防食構造体の防食性をより一層高めることができる。
【0032】
前記防食構造体においては、
前記トップコートは、23℃における粘度が0.05Pa・s以上100Pa・s以下である、ことが好ましい。
【0033】
斯かる構成によれば、前記トップコートは、前記防食層に塗布し易いものとなるので、前記防食構造体において、前記トップコート層を前記防食層上に比較的均一な厚さで形成することができる。
【0034】
前記防食構造体においては、
前記トップコートは、錫系触媒をさらに含む、ことが好ましい。
【0035】
斯かる構成によれば、前記トップコートによって形成されたトップコート層から、前記防食層内に前記錫系触媒を移動させることができるので、前記防食層における硬化反応がより一層進行し易くなる。
【0036】
前記防食構造体においては、
前記プライマー層と前記防食層との間に配され、防食マスチックで形成されている防食マスチック層をさらに備え、
前記防食マスチック層は、シリコーン化合物を含んでいる、ことが好ましい。
【0037】
斯かる構成によれば、前記防食マスチック層を前記プライマー層及び前記防食層に接触させた状態としたときに、前記防食マスチック層と前記プライマー層及び前記防食層との親和性が比較的高いものとなる。
すなわち、前記防食マスチック層と前記プライマー層及び前記防食層との間に隙間が生じ難くなるので、前記防食構造体の防食性をより一層高めることができる。
【0038】
前記防食構造体においては、
前記防食マスチックは、ちょう度が40以上150以下である、ことが好ましい。
【0039】
斯かる構成によれば、前記プライマー層と前記防食層との間に前記防食マスチックを充填して前記防食マスチック層を形成するに際して、比較的充填し易いことに加えて、充填後においては、前記防食マスチック層を比較的十分な保形性を有するものとすることができる。
【0040】
前記防食構造体においては、
前記防食マスチックは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が20質量%以下である、ことが好ましい。
【0041】
斯かる構成によれば、前記プライマー層と前記防食層との間に前記防食マスチックを充填して前記防食マスチック層を形成した後に、前記防食マスチック層を比較的密度の高いものとすることができる。
これにより、前記防食構造体を、より一層耐熱性に優れるものとすることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、基体に塗布するときの塗布作業性が良好となり(施工性を確保でき)、しかも、得られたプライマー層を耐熱性に優れるものとすることができるプライマー、及び、該プライマーによって形成されたプライマー層を備える防食構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態に係る防食構造体の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0045】
[プライマー]
本発明の一実施形態に係るプライマー(以下、本実施形態に係るプライマーともいう)は、主剤と硬化剤とを含む。
前記プライマーは、防食ペーストとして用いられることが好ましい。
そのため、以下では、本実施形態に係るプライマーが、防食ペーストとして用いられる例について説明する。すなわち、本実施形態に係るプライマーが、金属製部材の表面に塗布され、前記金属製部材の表面にプライマー層を形成することにより、前記金属製部材の表面を防食する例について説明する。
【0046】
前記主剤は、シリコーン化合物を含む。前記主剤がシリコーン化合物を含むことによって、前記プライマーは耐熱性に優れるものとなる。
前記シリコーン化合物は、主成分(油分)として、前記プライマーに含まれていることが好ましい。主成分(油分)としての前記シリコーン化合物としては、ストレートシリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが挙げられる。
前記反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、アミン基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、ポリエーテル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、酸無水物基などが付加されたものが挙げられる。
前記非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが付加されたものが挙げられる。
上記したようなシリコーン化合物の市販品としては、YF3800(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3905(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3057(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3807(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3802(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3897(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、KF9701(信越化学社製)、PAM-E(信越化学社製)、KF-8008(信越化学社製)、KF-105(信越化学社製)、KF-2201(信越化学社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK0.65~10(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK20~5,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK100~10,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)、DOWSIL(登録商標)SF 8427 Fluid(ダウ・東レ社製)、DOWSIL(登録商標)BY 16-750 Fluid(ダウ・東レ社製)などが挙げられる。
【0047】
前記主剤は、シリコーン化合物を20質量%以上80質量%以下含んでいることが好ましく、35質量%以上65質量%以下含んでいることがより好ましい。
【0048】
前記主剤は、23℃における粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下であることが重要であり、23℃における粘度が16Pa・s以上150Pa・s以下であることがより重要である。
23℃における主剤の粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下であることにより、前記主剤を含むプライマーが適度な粘度を示すようになるので、前記主剤を含むプライマーを基体(例えば、金属製部材)に塗布するときに、施工可能となること(施工性を確保できること)に加えて、前記プライマーを塗布することにより形成されたプライマー層を高温環境下(例えば、200℃の環境下)に曝したときに、前記プライマー層にワレが生じることを抑制することができる。すなわち、前記プライマー層は耐熱性に優れるものとなる。
これにより、前記プライマーを基体に塗布するときに、塗布作業性を良好にしつつ(施工性を確保しつつ)、得られたプライマー層を耐熱性に優れたものとすることができる。
また、23℃における主剤の粘度が16Pa・s以上150Pa・s以下であることにより、前記主剤を含むプライマーがより適度な粘度を示すようになるので、前記主剤を含むプライマーを基体(例えば、金属製部材)に塗布するときの塗布作業性がより一層良好となることに加えて、前記プライマーを塗布することにより形成されたプライマー層を高温環境下(例えば、200℃の環境下)に曝したときに、前記プライマー層にワレが生じることを抑制することができる。すなわち、前記プライマー層は耐熱性に優れるものとなる。
これにより、前記プライマーを基体に塗布するときの塗布作業性をより一層良好にしつつ、得られたプライマー層を耐熱性に優れたものとすることができる。
また、このようなプライマー層を備える防食構造体も十分な耐熱性を示すものとすることができる。
さらに、前記プライマー層に、防食テープを巻き付けて防食層を形成することにより、防食構造体を得たときに、前記防食構造体において、前記プライマー層を介した前記金属製部材への前記防食層の密着性を十分に確保することができ、前記防食層と前記金属製部材との隙間を十分に小さくすることができる。
これにより、前記防食構造体により一層十分な耐熱性を発揮させ得る。
【0049】
23℃における粘度の測定は、測定装置として、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件にて行うことができる。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定する。

・Vが100Pa・s以下(V≦100)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
・Vが100Pa・sを上回り、250Pa・s以下(100<V≦150)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:4rpm
・Vが250Pa・sを上回り、1000Pa・s以下(250<V≦1000)の場合
使用するロータの番号:No.7、ロータの回転数:4rpm
【0050】
前記主剤は、IR測定によって得られた赤外吸収スペクトルにおいて、1200cm-1以上1300cm-1以下の範囲、及び、2800cm-1以上2900cm-1以下の範囲に、それぞれ1以上のピークを有していることが好ましい。
また、前記主剤は、2800cm-1以上2900cm-1以下の範囲に現れる最も高いピークの高さhに対する1200cm-1以上1300cm-1以下の範囲に現れる最も高いピークの高さhの比h/hが、25以上250以下であることが好ましい。
/hが、25以上250以下であることにより、前記プライマーによって形成されたプライマー層をより一層十分な耐熱性を示すものとすることができる。
【0051】
前記主剤のIR測定は、測定装置としてサーモフィッシャーサイエンティフィック社製のNicolet iS10を用い、以下の測定条件を採用することにより求めることができる。
なお、前記主剤が固形分を含んでいる場合には、該固形分を予め遠心分離して除去した上で、前記主剤のIR測定を行う。遠心分離は、himac社製のCS100GXを用い、47000rpmで15分処理するという条件を採用することができる。

<測定条件>
測定方法:ATR法
使用窓材:Diamond
分解能:4cm-1
積算回数:64回
【0052】
前記主剤は、前記シリコーン化合物に加えて、樹脂成分、防錆剤、無機充填剤、及び、増粘剤を含んでいてもよい。
【0053】
前記樹脂成分としては、例えば、シラン化合物が挙げられる。
前記シラン化合物としては、側鎖や末端にメトキシ基やエトキシ基を有するポリアルコキシシラン化合物やシリケートオリゴマー、エポキシ基や酸無水物等で修飾されたシランカップリング剤等が挙げられる。
前記シラン化合物の市販品としては、例えば、XR31-B2733(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、XR31-B2230(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、メチルシリケート51(コルコート社製)、メチルシリケート53(コルコート社製)、エチルシリケート48(コルコート社製)、シリケート45(多摩化学工業社製)、WACKER(登録商標)SILANE M1-TRIMETHOXY(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WACKER(登録商標)SILANE M2-DIMETHOXY(旭化成ワッカーシリコーン社製)、KBM-13(信越化学社製)、KBM-22(信越化学社製)、XIAMETER(登録商標)OFS-6388 Silane(ダウ・ケミカル日本社製)、DOWSIL(登録商標)Z-6329 Silane(ダウ・東レ社製)等が挙げられる。
【0054】
前記主剤が、前記樹脂成分を含んでいる場合、その含有量は、1質量%以上80質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
防錆剤としては、無機系防錆剤、有機系防錆剤が挙げられる。
前記無機系防錆剤としては、例えば、クロム酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、リン酸塩、トリポリリン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、リン化合物、酸化亜鉛、酸化鉄、亜鉛、雲母状酸化鉄などが挙げられる。
これらの中でも、リン酸塩、トリポリリン酸塩、亜リン酸塩、酸化亜鉛などを用いることが好ましい。
前記有機系防錆剤としては、例えば、タンニン酸、カルボン酸(オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸など)、カルボン酸金属石鹸(ラノリンCa、ナフテンZn、酸化ワックスCa、酸化ワックスBaなど)、スルフォン酸塩(Naスルフォネート、Caスルフォネート、Baスルフォネートなど)、アミン塩、エステル(高級脂肪酸とグリセリンとが反応して得られたエステル、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレートなど)が挙げられる。
防錆剤の市販品としては、K-WHITE#82(テイカ社製)、K-WHITE#105(テイカ社製)、K-WHITE#108(テイカ社製)、EXPERT NP-530(東邦顔料工業社製)、EXPERT-1530(東邦顔料工業社製)、EXPERT-1600(東邦顔料工業社製)、Heucophos ZPA(ホイバッハジャパン社製)、Heucophos ZAM-PLUS(ホイバッハジャパン社製)などが挙げられる。
【0056】
前記主剤が、前記防錆剤を含んでいる場合、その含有量は、0.1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
前記無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、雲母状酸化鉄、金属粉などが挙げられる。
【0058】
前記主剤が、前記無機充填剤を含んでいる場合、その含有量は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましい。
【0059】
前記増粘剤としては、ケイ酸塩を主成分とする鉱物が挙げられる。
このような鉱物としては、セピオライト、アタパルジャイト、ヒュームドシリカ、ベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、モンモリロナイトなどが挙げられる。
また、これらの鉱物を有機化学修飾したものが用いられてもよい。
前記増粘剤の市販品としては、LAPONITE-EP(BYK社製)、LAPONITE-B(BYK社製)、アエロジル(登録商標)130(Evonik社製)、アエロジル(登録商標)200(Evonik社製)、アエロジル(登録商標)R972(Evonik社製)、エスベンN-400(ホージュン社製)、PANSIL(TOLSA社製)、PANSIL 100(TOLSA社製)、PANSIL 400(TOLSA社製)などが挙げられる。
【0060】
前記主剤が、前記増粘剤を含んでいる場合、その含有量は、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0061】
前記硬化剤は、触媒を含む。前記触媒としては、前記主剤に含まれる前記シリコーン化合物どうしの脱水縮合を促進したり、後述するような、シリコーン化合物と架橋剤とを含む防食テープにおいて、前記シリコーン化合物どうしや前記シリコーン化合物と前記架橋剤との脱水縮合を促進したりする触媒能を有するものが挙げられる。
前記触媒としては、例えば、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラノルマルブトキシド、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート等の有機チタン化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシジアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムアシレート、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムオクトエート、ジルコニル(2-エチルヘキサノエート)、ジルコニウム(2-エチルヘキソエート)等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2-エチルヘキサノエート)等の有機錫化合物;ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、及び、その塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機珪素化合物等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの触媒の中でも、前記シリコーン化合物どうしの脱水縮合や前記シリコーン化合物と前記架橋剤との脱水縮合をより進行させ易くなる観点から、有機錫化合物、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫などの錫系触媒を用いることが特に好ましい。
前記錫系触媒の市販品としては、CE621(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE611(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE601(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、ネオスタン U-303(日東化成社製)、ネオスタン U-810(日東化成社製)などが挙げられる。
【0062】
前記硬化剤は、前記触媒を3質量%以上80質量%以下含んでいることが好ましく、7質量%以上40質量%以下含んでいることがより好ましい。
【0063】
前記硬化剤が錫系触媒のような触媒を含んでいることにより、金属製部材の表面全体に本実施形態に係るプライマーを塗布して形成されるプライマー層と、該プライマー層に、反応硬化性を有する化合物(例えば、シリコーン化合物)を含むコンパウンドを繊維シートに担持させた防食テープを巻き付けて形成される防食層と、を備える防食構造体において、前記プライマー層から前記防食層に前記錫系触媒を移動させることができる。
これにより、前記防食層における反応硬化性を有する化合物の硬化反応をより一層進行させ易くなる。
【0064】
前記硬化剤は、前記触媒に加えて、前記硬化剤のpHを調整するためのpH調整剤を含んでいることが好ましい。
前記pH調整剤としては、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸;フタル酸、酒石酸、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸などの有機酸;酸無水物系シランカップリング剤、酸無水物系シリコーンオイルなどの酸性を示す添加剤などが挙げられる。
前記酸無水物系シランカップリング剤の市販品としては、X-12-967C(信越化学社製)が挙げられ、前記酸無水物系シリコーンオイルの市販品としては、X-22-168AS(信越化学社製)、X-22-168A(信越化学社製)、X-22-168B(信越化学社製)、X-22-168P5-B(信越化学社製)などが挙げられる。
【0065】
前記硬化剤が、前記触媒に加えて、前記硬化剤のpHを調整するためのpH調整剤を含んでいる場合には、前記主剤に前記硬化剤を添加してプライマーを得るに際して、前記触媒及び前記pH調整剤を前記主剤に別々に添加することが好ましく、前記pH調整剤を添加した後に、前記硬化剤を添加することがより好ましい。
上記のごとく、前記触媒及び前記pH調整剤を前記主剤に別々に添加することにより、後述の実施例の項で示すように、金属製部材(例えば、ガス管のような金属管)の表面がNaClなどの無機塩によって腐食されることをより一層抑制することができる。
【0066】
前記硬化剤のpHは2以上5以下であることが好ましい。
前記硬化剤のpHが2以上5以下であることにより、前記プライマーによって形成されたプライマー層に積層された防食層において、シリコーン化合物の硬化をより十分に進行させることができる。
その結果、前記プライマー層を介した前記金属製部材の表面への前記防食層の密着性を十分に確保でき、前記防食層と前記金属製部材との隙間を十分に小さくできる。
これにより、前記プライマー層と該プライマー層に積層された防食層とを備える防食構造体に、十分な耐熱性を発揮させることができる。
【0067】
前記硬化剤のpHは、以下のようにして測定することができる。

(1)錫触媒の質量が1gとなる量の測定試料をビーカーに入れて、測定試料を秤量する。
(2)測定試料が入っているビーカーにNaCl水溶液(NaCl濃度10g/L)50mLを加えて、前記測定試料と前記NaCl水溶液とがよく混和するように撹拌する。
(3)撹拌後10分間静置した後、水層を採取し、採取した水層について、JIS K7371:2000に規定された方法でpHを測定する。
【0068】
[防食構造体]
次に、本発明の一実施形態に係る防食構造体(以下、本実施形態に係る防食構造体ともいう)について説明する。
本実施形態に係る防食構造体は、2以上の層を有する。
また、図1に示すように、本実施形態に係る防食構造体100は、金属製部材10の表面に接し、対象物を防食するための防食ペーストとしての本実施形態に係るプライマーによって形成されたプライマー層1と、防食テープによって形成された防食層2と、を備える。
さらに、本実施形態に係る防食構造体100は、防食層2よりも外側(プライマー層1側とは反対側)に、保護層形成組成物で形成されている保護層(トップコート層3)をさらに備える。
また、本実施形態に係る防食構造体100は、プライマー層1と防食層2との間に配され、かつ、防食マスチックによって形成されている防食マスチック層4をさらに備える。
【0069】
金属製部材10は、流体物を輸送するパイプラインとして用いられる。金属製部材10は、フランジ部11を有する円筒状の管を複数備えており、管どうしがフランジ部11で接続されて構成されている。隣接する管のフランジ部11どうしは、ボルト12及びナット13で固定されている。すなわち、金属製部材10は、円筒状となっており、また、フランジ部11、ボルト12、ナット13などによって外表面に凹凸が形成されている。
【0070】
本実施形態に係る防食構造体100は、プライマー層1を有することにより、防食層2と金属製部材10との間の隙間を埋めることができ、金属製部材10の腐食を抑制することができる。
プライマー層1は、円筒状の金属製部材10の外表面の全体に、本実施形態に係るプライマーを薄く塗布することにより形成される。そのため、プライマー層1の外表面には、金属製部材10に形成された凹凸によって、凹凸が形成されている。
また、プライマー層1に錫系触媒などのような触媒が含まれている場合には、前記触媒を防食層2内に移動させることができる。
そして、防食層2が、後述するように、コンパウンドとしてシリコーン化合物を含んでいる場合には、錫系触媒などのような触媒を防食層2内に移動させることにより、前記シリコーン化合物の硬化反応を促進させることができる。
【0071】
本実施形態に係る防食構造体100において、防食層2は、防食テープによって形成されている。
【0072】
防食層2を構成する防食テープとしては、繊維シートと、該繊維シートに担持されたコンパウンドと、を有するものを使用することができる。
【0073】
前記繊維シートとしては、ポリエチレンテレフタレート繊維(PET繊維)、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維(PPS繊維)、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(PBO繊維)、ポリテトラフルオロエチレン繊維(PTFE繊維)、ナイロン繊維などを用いて構成されたものが挙げられる。
前記繊維シートとしては、不織布を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不織布は、フェルトを含む概念である。
前記不織布としては、坪量(単位面積当たりの質量)が、30g/m以上150g/m以下のものを用いることが好ましい。
前記不織布は、太さが1.5デシテックス以上4デシテックス以下の繊維を用いて形成されていることが好ましい。
【0074】
前記不織布としては、スパンボンド、ケミカルボンド、ニードルパンチ、ステッチボンドなどといった各種公知の方法で作製されたものを採用することができる。
上記各種手法で作製された不織布の中でも、繊維シートの長手方向における強度を優れたものとし得る観点から、スパンレース不織布を用いることが好ましく、スパンレース不織布の中でもクロスレイヤー方式で製造されたスパンレース不織布を用いることがより好ましい。
【0075】
前記繊維シートは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が10質量%以下であることが好ましい。
前記繊維シートとして、上記の特性を有するものを用いることにより、前記防食テープをより耐熱性に優れるものとすることができ、延いては、防食構造体において、前記防食テープによって形成される防食層をより耐熱性に優れるものとすることができる。
前記繊維シートの質量減少率は、300℃に曝す前の前記繊維シートの質量に対する300℃に24時間曝した後の前記繊維シートの質量の減少比率を意味する。
【0076】
前記コンパウンドは、反応硬化性を有している。前記コンパウンドは、反応硬化性を有する化合物を含むことにより、反応硬化性を有するものとすることができる。
前記コンパウンドが前記反応硬化性を有する化合物を含む場合、前記反応硬化性を有する化合物を架橋させるための架橋剤を含んでいることが好ましい。
前記コンパウンドは、前記反応硬化性を有する化合物として、反応硬化性を有するシリコーン化合物を含んでいることが好ましい。
このようなシリコーン化合物としては、ストレートシリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが挙げられる。
前記反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、アミン基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、ポリエーテル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、酸無水物基などが付加されたものが挙げられる。
前記非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが付加されたものが挙げられる。
上記したようなシリコーン化合物の市販品としては、YF3800(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3905(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3057(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3807(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3802(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3897(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、KF9701(信越化学社製)、PAM-E(信越化学社製)、KF-8008(信越化学社製)、KF-105(信越化学社製)、KF-2201(信越化学社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK0.65~10(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK20~5,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK100~10,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)、DOWSIL(登録商標)SF 8427 Fluid(ダウ・東レ社製)、DOWSIL(登録商標)BY 16-750 Fluid(ダウ・東レ社製)などが挙げられる。
【0077】
前記コンパウンドは、室温(23±1℃)においても良好に硬化反応を進行させる観点から、縮合反応によって硬化する物質であることが好ましい。そのため、前記シリコーン化合物は、反応基としてシラノール基を備えるか、あるいは、加水分解によってシラノール基となるアルコキシシリル基を備えることが好ましい。
前記シリコーン化合物は、具体的には、複数の水酸基を分子中に有する鎖状構造または分岐構造を有するシリコーンオイルであることが好ましく、ポリジメチルシロキサンジオールのような両末端に水酸基を有する鎖状シリコーンオイルであることが特に好ましい。
前記シリコーンオイルは、JIS K2283「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」によって測定される25℃における動粘度が1000mm/s以上5000mm/s以下であることが好ましい。
【0078】
前記架橋剤としては、上記したポリジメチルシロキサンジオールなどと脱アルコールによって縮合するシリコーン化合物が挙げられる。
このようなシリコーン化合物としては、側鎖や末端にメトキシ基やエトキシ基を有するポリアルコキシシラン化合物やシリケートオリゴマー、エポキシ基や酸無水物などで修飾されたシランカップリング剤などが挙げられる。
このようなシリコーン化合物の市販品としては、XR31-B2733(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、XR31-B2230(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)、メチルシリケート51(コルコート社製)、メチルシリケート53(コルコート社製)、メチルシリケート48(コルコート社製)、シリケート45(多摩化学工業社製)、WACKER(登録商標)SILANE M1-TRIMETHOXY(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WACKER(登録商標)SILANE M2-DIMETHOXY(旭化成ワッカーシリコーン社製)、KBM-13(信越化学社製)、KBM-22(信越化学社製)、XIAMETER(登録商標)OFS-6383 Silane(ダウ・ケミカル日本社製)、DOWSIL(登録商標)Z-6329 Silane(ダウ・東レ社製)などが挙げられる。
【0079】
このようなシリコーン化合物としては、1以上のアルコキシ基を有するものが好適である。
上記した鎖状構造を有するシリコーンオイルを架橋させるための架橋剤としては、下記一般式(1)で表されるポリアルコキシポリシロキサンを用いることが好ましい。
下記一般式(1)で表されるポリアルコキシポリシロキサンの中でも、エチルシリケートを用いることが特に好ましい。
【0080】
【化1】
(なお、式(1)中のRは、同一の又は異なる炭素数のアルキル基であり、nは1以上100以下の整数である)
【0081】
前記架橋剤の具体名としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;メチルトリプロペノキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、フェニルトリ(ブタノキシム)シラン、プロピルトリ(ブタノキシム)シラン、テトラ(ブタノキシム)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、3-クロロプロピルトリ(ブタノキシム)シラン、メチルトリ(プロパノキシム)シラン、メチルトリ(ペンタノキシム)シラン、メチルトリ(イソペンタノキシム)シラン、ビニルトリ(シクロペンタノキシム)シラン、メチルトリ(シクロヘキサノキシム)シランなどが挙げられる。
前記架橋剤は、メチルポリシロキサンやエチルポリシロキサンなどのアルキルポリシロキサンであってもよい。
【0082】
前記架橋剤として、シランカップリング剤が用いられてもよい。シランカップリング剤としては、アミノ基を有するものが好適に用いられる。
前記シランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0083】
前記コンパウンドが前記架橋剤を含んでいる場合、その含有量は、前記シリコーン化合物の100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上7質量部以下であることがより好ましい。
【0084】
前記架橋剤のアルコキシ基(-OR)と前記シリコーンオイルの水酸基(-OH)などとのモル比(-OR:-OH)は、通常、1:100~100:10の範囲とされ、1:10~10:1の範囲とされることが好ましい。
【0085】
前記コンパウンドは、無機充填剤を含んでいてもよい。
【0086】
前記無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、雲母状酸化鉄、金属粉などが挙げられる。
前記コンパウンドは、前記無機充填剤として、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含んでいることが好ましい。
前記コンパウンドが前記無機充填剤を含んでいる場合、その含有量は、前記シリコーン化合物の100質量部に対して、50質量部以上400質量部以下であることが好ましい。
また、前記コンパウンドが、前記無機充填剤として、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウムを含んでいる場合、水酸化アルミニウムの含有量に対する炭酸カルシウムの含有量の比(炭酸カルシウムの含有量/水酸化アルミニウムの含有量)は、1以上5以下であることが好ましい。
【0087】
また、前記シリコーンオイルと前記無機充填剤とは、質量比率(シリコーンオイル:無機フィラー)が20:80~40:60となるようにコンパウンドに含まれていることが好ましい。
前記シリコーンオイルと前記無機充填剤との合計質量比率は、前記コンパウンドの50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0088】
前記コンパウンドは、含水率が1000ppm以下であることが好ましい。
前記コンパウンドの含水率が1000ppm以下であることにより、金属製部材10の表面にプライマーを塗布することにより形成されるプライマー層1に、防食テープを巻き付けて防食層2を形成し、コンパウンドを硬化させるときに、防食テープのコンパウンドの硬化を適切に制御することができる。
その結果、防食構造体100に十分な耐熱性を発揮させることができることに加えて、十分な防食性も発揮させることができる。
その理由について、本発明者らは以下のように考えている。
【0089】
本発明者らの鋭意検討の結果、シリコーン化合物を含むコンパウンドの含水率が比較的高いと(1000ppmを超えるような含水率であると)、前記繊維シートに担持されたコンパウンドのうち、前記繊維シートの内部に担持されたコンパウンドよりも、前記繊維シートの表層部分に担持されたコンパウンドの硬化が速く進行して、前記繊維シートの内部に担持されたコンパウンドの硬化が十分に進行し難くなる。
このような現象は、本実施形態に係る防食構造体100のように、防食層2の一方側に、プライマー層1が積層され、他方側に、トップコート層3が積層されている場合には、これらの層に含まれる触媒が防食層2に移動するときに、より顕著となる。具体的には、防食層2の表層部において生じた硬化反応によって防食層2の表層部分が硬化することにより、防食層2の内部に前記触媒が十分に移動できなくなって、防食層2の表層部分が選択的に硬化されるようになる。
しかしながら、前記コンパウンドの含水率を1000ppm以下という比較的小さい値となっていると、前記繊維シートの表層部分に担持されたコンパウンドの硬化が促進されることを抑制できていると考えられる。
また、上記のように、プライマー層1及びトップコート層3から、防食層2に前記触媒が移動する場合にも、前記繊維シートの表層部分に担持されたコンパウンドの硬化が促進されることを抑制できており、前記繊維シートの内部に担持されたコンパウンドまで前記触媒を十分に移動させることができていると考えられる。
上記により、本発明者らは、本実施形態に係る防食構造体100では、繊維シートに担持された前記コンパウンドの硬化が適切に制御されるので、十分な耐熱性に加えて、十分な防食性をも発揮し得るものになっていると考えている。
【0090】
前記コンパウンドの含水率の測定は、カールフィッシャー滴定法により行うことができる。測定装置および測定条件の詳細は、以下の通りである。

・測定装置:電量滴定式水分測定装置(三菱ケミカルアナリテック社製、CA-200型)、加熱気化装置(三菱ケミカルアナリテック社製、VA-200型)
・測定条件:加熱気化法(150℃加熱)
・陽極液:アクアミクロンAKX(三菱化学社製)
・陰極液:アクアミクロンCXU(三菱化学社製)
【0091】
前記コンパウンドは、23℃における粘度が25Pa・s以上250Pa・s以下であることが好ましい。
【0092】
23℃における粘度の測定は、測定装置として、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件にて行うことができる。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定する。

・Vが100Pa・s以下(V≦100)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
・Vが100Pa・sを上回り、250Pa・s以下(100<V≦150)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:4rpm
・Vが250Pa・sを上回り、1000Pa・s以下(250<V≦1000)の場合
使用するロータの番号:No.7、ロータの回転数:4rpm
【0093】
トップコート層3は、トップコートを防食層2の表面に塗布することにより形成することができる。
前記トップコートは、主成分(油分)を含み、前記主成分(油分)はシリコーン化合物を含んでいる。前記主成分(油分)としては、シリコーンオイルを用いることが好ましい。
前記シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルや非反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられ、非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖や片末端、あるいは両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フロロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪族アミドなどが付加されたシリコーンオイルが挙げられる。
シリコーンオイルの市販品としては、信越化学工業社製の商品名「KF96-50cp」や、商品名「KF96-1000cp」などが挙げられる。
【0094】
前記トップコートは、触媒を含んでいることが好ましい。前記触媒としては、前記主剤に含まれる前記シリコーン化合物どうしの脱水縮合を促進したり、後述するような、シリコーン化合物と架橋剤とを含む防食テープにおいて、前記シリコーン化合物どうしや前記シリコーン化合物と前記架橋剤との脱水縮合を促進したりする触媒能を有するものが挙げられる。
前記触媒としては、例えば、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラノルマルブトキシド、ブチルチタネートダイマー、チタンアセチルアセトナート、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート等の有機チタン化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシジアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド、ジルコニウムアシレート、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムオクトエート、ジルコニル(2-エチルヘキサノエート)、ジルコニウム(2-エチルヘキソエート)等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2-エチルヘキサノエート)等の有機錫化合物;ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛などの有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、及び、その塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機珪素化合物等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの触媒の中でも、前記シリコーン化合物どうしの脱水縮合や前記シリコーン化合物と前記架橋剤との脱水縮合をより進行させ易くなる観点から、有機錫化合物、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ブチル酸錫、ジブチル錫、オクチル錫、ジオクチル錫などの錫系触媒を用いることが特に好ましい。
前記錫系触媒の市販品としては、CE621(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE611(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、CE601(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、ネオスタン U-303(日東化成社製)、ネオスタン U-810(日東化成社製)などが挙げられる。
【0095】
前記トップコートが錫系触媒のような触媒を含んでいることにより、前記トップコートによって形成されたトップコート層3から、防食層2に錫系触媒のような触媒を移動させることができる。
これにより、防食層2における反応硬化性を有する化合物の硬化反応をより一層進行させ易くなる。
【0096】
前記トップコートは、着色剤、増粘剤などを含んでいてもよい。着色剤の市販品としては、東洋アルミ社製の商品名「アルペースト」を挙げることができ、増粘剤の市販品としては、日本アエロジル社製の商品名「アエロジル(登録商標)130」を挙げることができる。
【0097】
前記トップコートは、23℃における粘度が0.05Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましい。
前記トップコートの粘度が上記数値範囲内であることにより、前記トップコートを防食層2に塗布し易くなる。
そのため防食構造体100において、トップコート層3を防食層2上に比較的均一な厚さで形成することができる。
【0098】
23℃における粘度の測定は、測定装置として、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件にて行うことができる。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定する。

・Vが4Pa・s以下(V≦4)の場合
使用するロータの番号:No.2、ロータの回転数:10rpm
・Vが4Pa・sを上回り、10Pa・s以下(4<V≦10)の場合
使用するロータの番号:No.3、ロータの回転数:10rpm
・Vが10Pa・sを上回り、50Pa・s以下(10<V≦50)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:20rpm
・Vが50Pa・sを上回り、100Pa・s以下(50<V≦100)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
【0099】
防食マスチック層4は、プライマー層1の凹凸を小さくすべく、プライマー層1の凹部に防食マスチックを充填することにより形成されている。
本実施形態に係る防食構造体100では、防食マスチック層4は、プライマー層1と防食層2との間の隙間に、前記防食マスチックを充填することにより形成されている。これにより、本実施形態に係る防食構造体100では、金属製部材10の腐食がより一層抑制されている。
【0100】
前記防食マスチックは、主成分(油分)を含んでおり、前記主成分(油分)は、シリコーン化合物を含んでいる。前記主成分(油分)としては、シリコーンオイルを用いることが好ましい。
前記シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイル、反応性の変性シリコーンオイル、非反応性の変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどが挙げられる。
前記反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、アミン基、エポキシ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシル基、メタクリル基、ポリエーテル基、フェノール基、シラノール基、アクリル基、酸無水物基などが付加されたものが挙げられる。
前記非反応性の変性シリコーンオイルとしては、側鎖、片末端、両末端に、ポリエーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどが付加されたものが挙げられる。
上記したようなシリコーン化合物の市販品としては、YF3800(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3905(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3057(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3807(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3802(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、YF3897(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)、KF9701(信越化学社製)、PAM-E(信越化学社製)、KF-8008(信越化学社製)、KF-105(信越化学社製)、KF-2201(信越化学社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK0.65~10(旭化成ワッカーシリコーン社製)、WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK20~5,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)WAXKER(登録商標)SILICONE FLUID AK100~10,000(旭化成ワッカーシリコーン社製)、DOWSIL(登録商標)SF 8427 Fluid(ダウ・東レ社製)、DOWSIL(登録商標)BY 16-750 Fluid(ダウ・東レ社製)などが挙げられる。
【0101】
前記防食マスチックは、無機充填剤を含んでいてもよい。前記無機充填剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、タルク、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、雲母状酸化鉄、金属粉などが挙げられる。
前記防食マスチックは、軽量化剤や難燃剤を含んでいてもよい。前記軽量化剤としては、シリカバルーンが挙げられ、前記難燃剤としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0102】
前記防食マスチックは、ちょう度が40以上150以下であることが好ましい。
これにより、プライマー層1と防食層2との間に前記防食マスチックを充填して防食マスチック層4を形成するに際して、比較的充填し易いことに加えて、充填後においては、防食マスチック層4を比較的十分な保形性を有するものとすることができる。
前記防食マスチックのちょう度は、JIS K2235-1991「石油ワックス 5.10ちょう度試験方法」に基づいて、23℃にて測定される値を意味する。
【0103】
前記防食マスチックは、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率が20質量%以下であることが好ましい。
質量減少率が20質量%以下であることにより、プライマー層1と防食層2との間に前記防食マスチックを充填して防食マスチック層4を形成した後に、防食マスチック層4を比較的密度の高いものとすることができる。
これにより、防食構造体100をより一層耐熱性に優れるものとすることができる。
前記防食マスチックの質量減少率は、300℃に曝す前の前記防食マスチックの質量に対する300℃に24時間曝した後の前記防食マスチックの質量の減少比率を意味する。
【0104】
なお、本発明に係るプライマー及び防食構造体は、前記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るプライマー及び防食構造体は、前記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係るプライマー及び防食構造体は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0105】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0106】
<プライマー主剤>
シリコーン化合物A(主成分(油分))、樹脂としてのシラン化合物A、防錆剤、無機充填剤としての炭酸カルシウム、及び、増粘剤を、下記表1Aに示した質量比率で室温(23±1℃)にて混練して、プライマー主剤A~Lを調製した。
また、プライマー主剤Jを40℃の恒温槽内に入れて3カ月間保持したものを、プライマー主剤J’として調製し、プライマー主剤Kを40℃の恒温槽内に入れて3カ月間保持したものを、プライマー主剤K’として調製した(下記表1B参照)。
すなわち、プライマー主剤J’及びプライマー主剤K’は、保存促進させるようにして調製したものである。
プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’の特性として、23℃における粘度を測定した。
プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’の23℃における粘度は、以下のようにして測定した。
具体的には、測定装置として、トキメック社製のBH型粘度計を用いて、温度23±1℃の条件にて行った。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定した。

・Vが100Pa・s以下(V≦100)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
・Vが100Pa・sを上回り、250Pa・s以下(100<V≦250)
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:4rpm
・Vが250Pa・sを上回り、1000Pa・s以下(250<V≦1000)
使用するロータの番号:No.7、ロータの回転数:4rpm
【0107】
また、プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’について、IR測定を行い、得られた赤外吸収スペクトルにおいて、1200cm-1以上1300cm-1以下の範囲に現れる最も高いピークの高さhの値(1258cm-1に現れるピークの高さ)、及び、2800cm-1以上2900cm-1以下の範囲に現れる最も高いピークの高さhの値(2840cm-1に現れるピークの高さ)を求めるとともに、hの値に対するhの値の比を求めた。
プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’のIR測定は、以下のようにして行った。
具体的には、測定装置としてサーモフィッシャーサイエンティフィック社製のNicolet iS10を用い、以下の測定条件を採用することにより求めた。
なお、前記主剤が固形分を含んでいる場合には、該固形分を予め遠心分離して除去した上で、前記主剤のIR測定を行った。遠心分離は、himac社製のCS100GXを用い、47000rpmで15分処理するという条件を採用した。

<測定条件>
測定方法:ATR法
使用窓材:Diamond
分解能:4cm-1
積算回数:64回
【0108】
さらに、プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’の塗布性について評価した。
プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’の塗布性は、基体(SPCC-SB(平面寸法150mm×75mm、厚み3.2mm)の片面(塗布面)をサンドブラストにて算術平均粗さRaを2μm以上10μm以下に調整したもの)の片面に、塗布量が300g/mとなるように、各プライマー主剤を指で塗布したときの施工性を以下の基準で判断することにより行った。

5点:プライマー主剤を基体に指で塗布するときに、極めて掬い取り易く、極めて塗り易いので施工性は極めて良好。そのため、塗布後の表面が均一に仕上がる。
4点:プライマー主剤を基体に指で塗布するときに、比較的掬い取り易く、比較的塗り広げ易いので施工性は良好。一方で、塗布後の表面の均一性については、5点のものにはやや劣る。
3点:プライマー主剤を基体に指で塗布するときに、やや粘度が高いためやや掬い取り難く、塗り広げるときの抵抗はやや有るものの、施工性は比較的良好。
2点:プライマー主剤を基体に指で塗布するときに、粘度が高いため掬い取り難く、塗り広げるときの抵抗が大きいものの、十分に施工は可能。
1点:プライマー主剤を基体に指で塗布するときに、粘度が極めて高いため極めて掬い取り難く、塗り広げるときの抵抗が極めて大きく塗布することが不可。すなわち、施工することができない。あるいは、塗り広げるときの抵抗は小さいものの、プライマー主剤が基体から垂れ落ちる。
【0109】
また、プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’について、塗布後のワレ(以下、単にワレともいう)について評価した。
プライマー主剤A~L、プライマー主剤J’、及び、プライマー主剤K’のワレは、基体(SPCC-SB(平面寸法150mm×75mm、厚み3.2mm)の片面(塗布面)をサンドブラストにて算術平均粗さRaを2μm以上10μm以下に調整したもの)の片面に、塗布量が300g/mとなるように、各プライマー主剤を指で塗布した後、室温(23±1℃)で24時間乾燥させ、その後、200℃の乾燥機内に1カ月間放置した後に前記基体を前記乾燥機から取り出して、該基体の表面(プライマーの塗布面)を目視にて評価することにより行った。
そして、目視にて、塗布後のプライマー主剤にワレが認めらないものについては、“優”と評価し、ワレが認められたものについては、“不可”と評価した。
【0110】
下記表1Aに、プライマー主剤A~Lについての、23℃における粘度の測定結果、hの値、hの値、h/hの値、塗布性の評価結果、及び、ワレの評価結果を示した。
また、下記表1Bに、プライマー主剤J’及びプライマー主剤K’についての、23℃における粘度の測定結果、h/hの値、塗布性の評価結果、及び、ワレの評価結果を示した。
なお、下記表1A及び1Bにおいて、シリコーン化合物Aは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「YF3807」であり、シラン化合物Aは、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「XR31-B2733」であり、防錆剤は、テイカ社製の商品名「K-WHITE#82」であり、増粘剤は、Evonik社製の商品名「アエロジル(登録商標)130」である。
【0111】
【表1A】
【0112】
【表1B】
【0113】
表1Aより、プライマー主剤B~プライマー主剤Gについては、いずれも、塗布性の評価は5点であり、ワレの評価は、“優”であった。
また、プライマー主剤H及びプライマー主剤Iについては、いずれも、塗布性の評価は4点であり、ワレの評価は、“優”であった。
さらに、プライマー主剤J及びプライマー主剤Kについては、いずれも、塗布性の評価は3点であり、ワレの評価は、“優”であった。
また、表1Bより、プライマー主剤J’及びプライマー主剤K’については、いずれも、塗布性の評価は2点であり、ワレの評価は、“優”であった。
これらの結果から、プライマー主剤B~プライマー主剤Iについては、塗布性の評価が極めて優れているとともに、ワレの評価も優れていることが分かる。
また、プライマー主剤J及びプライマー主剤Kについては、塗布性の評価が比較的優れているとともに、ワレの評価も優れていることが分かる。
さらに、プライマー主剤J’及びプライマー主剤K’については、塗布性は、十分に施工可能との評価であり、ワレの評価が優れていることが分かる。
以上から、23℃におけるプライマー主剤の粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下であることにより、塗布性については十分に施工可能との評価となり、ワレについては優れるという評価となることが分かるとともに、特に、23℃における粘度が16Pa・s以上150Pa・s以下であることにより、塗布性については、極めて優れるか、または、比較的優れるとの評価となり、ワレについても優れるという評価となることが分かる。
これに対し、プライマー主剤Aについては、塗布性の評価は5点であって、極めて優れるとの評価であるものの、ワレの評価が“不可”であって、不良との評価であることが分かるとともに、プライマー主剤Lについては、ワレの評価が“優”であって、優れるとの評価ではあるものの、塗布性の評価が1点であって、施工不可の評価であることが分かる。
プライマー主剤Aのワレの評価が“不可”であったのは、プライマー主剤Aが、架橋反応に寄与する官能基が多いシラン化合物Aを、架橋反応に寄与する官能基が少ないシリコーン化合物Aに比べて大過剰量含んでいるため、架橋反応が過度に進行したことが原因であると考えられる。
一方で、プライマー主剤Lは、シラン化合物Aに比べてシリコーン化合物Aを大過剰量含んでいるため、架橋反応が過度に進行することが抑制されて、ワレの評価が“優”になったと考えられる。
また、プライマー主剤Lについて、塗布性の評価が1点であったのは、プライマー主剤Lの粘度が600Pa・sを上回る高い値(750Pa・s)であったため、塗り広げるときの抵抗が大きくなったことが原因であると考えられる。
【0114】
<プライマー硬化剤>
下記表2に示すように、pH調整剤を用いて触媒を所定のpHに調整することにより、硬化剤A~Kを得た。
硬化剤A~KのpHは、以下のようにして測定した。

(1)錫触媒の質量が1gとなる量の測定試料をビーカーに入れて、測定試料を秤量する。
(2)測定試料が入っているビーカーにNaCl水溶液(NaCl濃度10g/L)50mLを加えて、前記測定試料と前記NaCl水溶液とがよく混和するように撹拌する。
(3)撹拌後10分間静置した後、水層を採取し、採取した水層について、JIS K7371:2000に規定された方法でpHを測定する。

下記表2に、硬化剤A~Kについての、pHの測定結果を示した。
【0115】
【表2】
【0116】
まず、硬化剤種を固定し、主剤種を変えて、実施例1~12に係るプライマー、及び、比較例2及び3に係るプライマーを作製し、それらのプライマーの特性の違いについて評価した。
また、比較例1に係るプライマーについては、合成油系樹脂を用いて作製した。合成油系樹脂としては、日東電工社製の商品名「ニトハルマックXG XG-P」を用いた。
【0117】
[実施例1]
上記表1Aに示した主剤Bと、上記表2に示した硬化剤Eと、を組み合わせて、実施例1に係るプライマーを作製した。
なお、実施例1では、主剤Bに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例1に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
【0118】
塗布性については、上記したプライマー主剤の塗布性と同様にして評価した。
【0119】
耐熱性については、基体である鉄板(平面寸法15cm×7cm、厚さ3.2mm)に、実施例1に係るプライマーを塗布量300g/mで塗布し、室温(23±1℃)で24時間養生して前記基体上にプライマー層を形成し、プライマー層が形成された基体を250℃の環境下で3カ月放置した後に、前記プライマー層の表面状態を目視で観察して、以下の基準で評価することにより行った。

優:プライマー層の表面にワレが認められない。
可:プライマー層の表面全体にワレが認められる。
不可:プライマー層の表面が粉化された状態が認められる(加熱により熱分解)。
【0120】
塩水板での腐食性については、以下のようにして評価した。

(1)各例に係るプライマーを、塩分を付着させた基体に塗布する(塗布量は、300g/m)。
(2)プライマー塗布後の基体を室温(23±1℃)で24時間放置した後、前記プライマーを200℃で24時間キュアさせて、前記基体上にプライマー層を形成する。
(3)前記プライマー層にクロスカット処理を行う。クロスカット処理は、前記プライマー層の上面に垂直となるようにカッターナイフの刃を当てて、互いに交差する10cm長さの2本の切れ込みを入れることにより実施する。
(4)クロスカット処理後の前記プライマー層に、塩水噴霧装置(スガ試験機社製、型式:STP-90V-4Z)を用いて、塩分を含む水溶液(塩分濃度5wt%、pH6.2~7.2)を72時間噴霧した後に、腐食の進行度合いを目視で観察する。なお、塩分を含む水溶液の噴霧は、35℃環境下で実施し、噴霧量は80cmに対して1.5mL±0.5mLとする。この試験条件は、JIS Z 2371:2015に準拠したものである。
(5)以下の基準にしたがって、“優”、“良”、及び、“不可”を評価する。優:(A~B級) ほぼ錆なし。良:(C~D級) わずかに錆あり。不可:E級 半分以上錆あり。
【0121】
塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した結果について、以下の表3に示した。
【0122】
[実施例2]
主剤を上記表1Aに示した主剤Cとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るプライマーを作製した。
なお、実施例2においても、主剤Cに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例2に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0123】
[実施例3]
主剤を上記表1Aに示した主剤Dとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るプライマーを作製した。
なお、実施例3においても、主剤Dに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例3に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0124】
[実施例4]
主剤を上記表1Aに示した主剤Eとした以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係るプライマーを作製した。
なお、実施例4においても、主剤Eに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例4に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0125】
[実施例5]
主剤を上記表1Aに示した主剤Fとした以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係るプライマーを作製した。
なお、実施例5においても、主剤Fに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例5に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0126】
[実施例6]
主剤を上記表1Aに示した主剤Gとした以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係るプライマーを作製した。
なお、実施例6においても、主剤Gに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例6に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0127】
[実施例7]
主剤を上記表1Aに示した主剤Hとした以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係るプライマーを作製した。
なお、実施例7においても、主剤Hに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例7に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0128】
[実施例8]
主剤を上記表1Aに示した主剤Iとした以外は、実施例1と同様にして、実施例8に係るプライマーを作製した。
なお、実施例8においても、主剤Iに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例8に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0129】
[実施例9]
主剤を上記表1Aに示した主剤Jとした以外は、実施例1と同様にして、実施例9に係るプライマーを作製した。
なお、実施例9においても、主剤Jに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例9に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0130】
[実施例10]
主剤を上記表1Aに示した主剤Kとした以外は、実施例1と同様にして、実施例10に係るプライマーを作製した。
なお、実施例10においても、主剤Kに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例10に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0131】
[実施例11]
主剤を上記表1Bに示した主剤J’とした以外は、実施例1と同様にして、実施例11に係るプライマーを作製した。
なお、実施例11においても、主剤J’に対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例11に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0132】
[実施例12]
主剤を上記表1Bに示した主剤K’とした以外は、実施例1と同様にして、実施例12に係るプライマーを作製した。
なお、実施例12においても、主剤K’に対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例12に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0133】
[比較例1]
合成油系樹脂を用いて、比較例1に係るプライマーを作製した。
比較例1に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0134】
[比較例2]
主剤を上記表1Aに示した主剤Aとした以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るプライマーを作製した。
なお、比較例2においても、主剤Aに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
比較例2に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0135】
[比較例3]
主剤を上記表1Aに示した主剤Lとした以外は、実施例1と同様にして、比較例3に係るプライマーを作製した。
なお、比較例3においても、主剤Lに対して、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
比較例3に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表3に示した。
【0136】
【表3】
【0137】
表3より、各実施例に係るプライマーは、耐熱性及び塩水板での腐食性の項目において、“不可”と評価されるものがないことが分かる。
また、各実施例に係るプライマーは、塗布性の項目において2点以上の評価となっており、十分に施工可能であるものであることが分かる。
さらに、実施例1~8に係るプライマーについては、塗布性の項目において4点以上の評価となっており、特に塗布性に優れるものであることが分かる。
これに対し、各比較例に係るプライマーは、耐熱性及び塩水板での腐食性のいずれかの項目において、“不可”と評価されるものであることが分かる。
また、特に、比較例3に係るプライマーについては、塗布性の項目において1点の評価となっており、施工不可であることが分かる。
【0138】
次に、主剤種を固定し、硬化剤種を変えて、実施例13~22に係るプライマーを作製し、それらのプライマーの特性の違いについて評価した。
【0139】
[実施例13]
上記表1Aに示した主剤Hと、上記表2に示した硬化剤Aと、を組み合わせて、実施例13に係るプライマーを作製した。
なお、実施例13においても、主剤Hに対して、硬化剤Aを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酢酸)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例13に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0140】
[実施例14]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Bを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例14に係るプライマーを作製した。
なお、実施例14においても、主剤Hに対して、硬化剤Bを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酢酸)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例14に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0141】
[実施例15]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Cを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例15に係るプライマーを作製した。
なお、実施例15においても、主剤Hに対して、硬化剤Cを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例15に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0142】
[実施例16]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Dを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例16に係るプライマーを作製した。
なお、実施例16においても、主剤Hに対して、硬化剤Dを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酢酸)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例16に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0143】
[実施例17]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Fを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例17に係るプライマーを作製した。
なお、実施例17においても、主剤Hに対して、硬化剤Fを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例17に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0144】
[実施例18]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Gを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例18に係るプライマーを作製した。
なお、実施例18においても、主剤Hに対して、硬化剤Gを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例18に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0145】
[実施例19]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Hを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例19に係るプライマーを作製した。
なお、実施例19においても、主剤Hに対して、硬化剤Hを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物オイル)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例19に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0146】
[実施例20]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Iを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例20に係るプライマーを作製した。
なお、実施例20においても、主剤Hに対して、硬化剤Iを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物オイル)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例20に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0147】
[実施例21]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Jを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例21に係るプライマーを作製した。
実施例21に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0148】
[実施例22]
硬化剤として上記表2に示した硬化剤Kを用いた以外は、実施例13と同様にして、実施例22に係るプライマーを作製した。
なお、実施例22においても、主剤Hに対して、硬化剤Kを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(アミン系シランカップリング剤)を予め混合しておいた混合物を添加した。
実施例22に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価した。
これらの結果について、以下の表4に示した。
【0149】
【表4】
【0150】
表4より、表2に示されたいずれの硬化剤を用いた場合であっても、すなわち、実施例13~22に係るいずれのプライマーにおいても、塗布性に優れ、かつ、耐熱性に優れるものとなることが分かった。
一方で、硬化剤Aを用いた実施例13に係るプライマー、硬化剤Jを用いた実施例21に係るプライマー、及び、硬化剤Kを用いた実施例22に係るプライマーでは、塩水板での腐食性の評価が“不可”であったのに対し、これ以外の硬化剤を用いた実施例14~20に係るプライマーでは、塩水板での腐食の評価が少なくとも“良”以上となることが分かった。
このことから、pH2以上5以下の硬化剤を含むことにより、プライマーは、塩水板での腐食性に優れるものとなることが分かった。
これは、硬化剤のpHを2以上5以下に調整することにより、金属製部材(例えば、ガス管のような金属管)へのプライマーの密着性が向上することに加え、プライマー主剤の架橋反応が適度な速度で進行するようになったことが一因であると考えられる。
これに対し、pHが2未満の硬化剤、及び、pHが5を超える硬化剤を含むプライマーでは、金属製部材への密着性が低下するようになるので、金属製部材とプライマーによって形成されたプライマー層との隙間から塩水が浸入することにより、金属製部材の表面が塩水により腐食したと考えられる。
【0151】
次に、硬化剤を構成する触媒及びpH調整剤の、プライマー主剤への添加方法を変えて、実施例23に係るプライマーを作製し、プライマーの特性の違いについて評価した。
実施例23に係るプライマーは、上記表1Aに示した主剤Hと、上記表2に示した硬化剤Eとを用い、主剤Hに、硬化剤Eを構成する触媒(錫触媒)及びpH調整剤(酸無水物カップリング剤)を別々に添加することにより作製した。
より具体的には、主剤Hに、まず、硬化剤Eを構成するpH調整剤を添加し、次に、硬化剤Eを構成する触媒を添加することにより、実施例23に係るプライマーを作製した。
実施例23に係るプライマーについて、塗布性、耐熱性、及び、塩水板での腐食性について評価したところ、塗布性の評価は“優”であり、耐熱性の評価は“優”であり、塩水板での腐食性の評価は“優”であった。
すなわち、硬化剤を構成する触媒及びpH調整剤を、プライマー主剤に対して別々に添加することにより作製した実施例23に係るプライマーでは、塩水板での腐食性の評価が特に良好となることが分かった。
これは、硬化剤を構成する触媒及びpH調整剤を、プライマー主剤に対して別々に添加することにより、金属製部材へのプライマーの密着性がより一層向上されたことが一因であると考えられる。
【0152】
<トップコート>
触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤を、下記表5に示した質量比率で室温にて混合して、実施例24~28に係るトップコート、及び、比較例4及び5に係るトップコートを作製した。
実施例24では、触媒として、錫系触媒である「CE611」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製)を用い、主成分(油分)として、シリコーンオイルである「KF96-50cp」(信越化学工業社製)を用い、着色剤として、「アルペースト」(東洋アルミ社製)を用いた。
実施例25では、触媒、主成分(油分)、及び、着色剤としては、実施例24と同じものを用い、増粘剤として、「アエロジル(登録商標)130」(日本アエロジル社製)を用いた。
実施例26では、触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤として、実施例25と同じものを用いた。
実施例27では、触媒、着色剤、及び、増粘剤として、実施例25と同じものを用い、主成分(油分)として、シリコーンオイルである「KF96-1000cp」(信越化学工業社製)を用いた。
実施例28では、触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤として、実施例27と同じものを用いた。
比較例4では、主成分(油分)として、水系樹脂(アクリルエマルション樹脂)を用い、着色剤として、カーボン(大日精化工業社製のBLACK FLTR CONC)及びチタン白(大日精化工業社製のTB807パール)を用いた。
比較例5では、触媒、主成分(油分)、着色剤、及び、増粘剤として、実施例27と同じものを用いた。
【0153】
各例に係るトップコートについて、23℃における粘度を測定した。
各例に係るトップコートの23℃における粘度は、トキメック社製のBH型粘度計を用い、温度23±1℃の条件で測定した。
なお、粘度の値Vに応じて、以下のように、使用するロータの番号及びロータの回転数を選定した。

・Vが4Pa・s以下(V≦4)の場合
使用するロータの番号:No.2、ロータの回転数:10rpm
・Vが4Pa・sを上回り、10Pa・s以下(4<V≦10)の場合
使用するロータの番号:No.3、ロータの回転数:10rpm
・Vが10Pa・sを上回り、50Pa・s以下(10<V≦50)の場合
使用するロータの番号:No.6、ロータの回転数:20rpm
・Vが50Pa・sを上回り、100Pa・s以下(50<V≦100)の場合
使用するローラの番号:No.6、ロータの回転数:10rpm
【0154】
また、各例に係るトップコートについて、テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び、液だれ・液溜り性について評価した。
【0155】
テープの硬化性については、ブラスト板(平面寸法7cm×15cm、厚さ:3.2mm)の一表面の全域にプライマー(プライマー主剤としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「YF3807」を含み、硬化剤としてモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製の「CE611」(錫系触媒)とを含むプライマー)を300g/mで塗布して前記ブラスト板上にプライマー層を形成した後、重なりが生じるように(2重となる部分が生じるように)、防食テープ(前述の実施例1に係る防食テープ)で前記プライマー層の全域を覆い、その後、前記防食テープ上に、各例に係るトップコートを200g/mで塗布して、室温(23±1℃)にて24時間養生することによりトップコート層を形成した後、テープ間が密着しているか否かを目視にて観察することによって評価した。
なお、テープの硬化性は、以下の基準にしたがって評価した。

優:テープ間が密着している。
不可:テープ間が密着していない。
【0156】
レベリング性については、トップコートを基体に塗布することにより形成されたトップコート層の表面の凹凸状況を目視にて確認することにより評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。

優:塗布後凹凸がなくなって表面が平滑化し、かつ、トップコート層の全体が十分に薄層化される。
良:塗布後凹凸がなくなって表面が平滑化されるものの、トップコート層の一部に薄層化されていない箇所がある。
不可:塗布後凹凸がなくならず、表面が平滑にならない。
【0157】
走行性については、刷毛を用いてトップコートを基体に塗布しているときに、作業者がどの程度の抵抗を感じるかと、トップコート層の表面に刷毛によるスジが形成されているか否かを目視にて確認することのより評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。

優:トップコート層の表面に刷毛によるスジが形成されておらず、作業者が感じる抵抗感は軽い(すなわち、塗布性が極めて良好である)。
良:トップコート層の表面に刷毛によるスジは形成されていないものの、作業者が感じる抵抗感はやや重い(すなわち、塗布性がやや良好である)。
不可:トップコート層の表面に刷毛によるスジが形成されており、作業者が感じる抵抗感が極めて重い(すなわち、塗布性にかなり劣る)。
【0158】
液だれ・液溜り性については、トップコートを基体に塗布した後に、液だれや液溜りが生じているか否かを目視にて観察することにより評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。

優:塗布後に液だれや液溜りが発生しない。
良:塗布後に液だれは発生しないものの、局所的に液溜りが発生する。
不可:塗布後に基体からトップコートが滴り落ちる。
【0159】
テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び、液だれ・液溜り性について評価した結果を、以下の表5に示した。
【0160】
【表5】
【0161】
表5より、各実施例に係るトップコートは、テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び、液だれ・液溜り性のいずれかの項目において、“不可”と評価されるものはなかった。
これに対し、各比較例に係るトップコートは、いずれも、テープの硬化性、レベリング性、走行性、及び、液だれ・液溜り性のいずれかの項目において、“不可”と評価されるものがあった。
【0162】
<マスチック>
主成分(油分)、無機充填剤、軽量化剤、及び、難燃剤を、下記表6に示した質量比率で室温にて混合して、実施例29~31に係るマスチック、並びに、比較例6~8に係るマスチックを作製した。
実施例29では、主成分(油分)として、シリコーンオイルである「YF3057」(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同社製。以下、シリコーン化合物Bともいう)を用い、無機充填剤として、焼成シリカ及び炭酸カルシウムを用い、軽量化剤として、シリカバルーンである「グラスバブルスK46」(スリーエム社製)を用い、難燃剤として、水酸化アルミニウムを用いた。
実施例30、実施例31、比較例7、及び、比較例8では、主成分(油分)、無機充填剤、軽量化剤、及び、難燃剤として、実施例29と同じものを用いた。
比較例6では、主成分(油分)として、イソプレン(出光興産社製のpoly ip)を用い、無機充填剤として、炭酸カルシムを用い、難燃剤として、水酸化アルミニウムを用いた。
【0163】
各例に係るマスチックについて、質量減少率及びちょう度を測定した。
また、各例に係るマスチックについて、スランプ試験を行うとともに、見掛け密度の変化を評価した。
【0164】
質量減少率の測定は、300℃で24時間熱処理した後の質量減少率を求めることにより行った。
300℃で24時間熱処理した後の質量減少率は、以下のようにして求めた。

(1)各例に係るマスチックの初期質量を測定する。
(2)内温を300℃に調整したオーブン内に、各例に係るマスチックを入れて、24時間曝した後、各例に係るマスチックの質量を測定する。
(3)各例に係るマスチックについて、初期質量に対する300℃で24時間曝した後の質量の減少比率を算出する。

その結果について、以下の表6に示した。
【0165】
ちょう度の測定は、JIS K2235-1991「石油ワックス 5.10ちょう度試験方法」に基づいて、23℃にて行った。
その結果について、以下の表6に示した。
【0166】
スランプ試験は、以下手順にしたがって行った。

(1)マスチックを、直方体状(平面寸法2.5cm×10cm、厚さ2.5cm)に成形する。
(2)2個のL字鋼を、一面側どうしが対向するように50mm離間させた状態で配置し(一面が鉛直方向に立ち上がるほうに配置し)、直方体状に成形したマスチックを、2個のL字鋼の両方に跨るように載置する。
(3)80℃で24時間加熱した後に、マスチックがどの程度垂れているかを測定する。なお、マスチックの垂れは、L字鋼の一面の上端縁を基準として、どの程度垂れているかを測定する。

その結果について、以下の表6に示した。
【0167】
見掛け密度の変化の評価は、見掛け密度の有無があるか否かを判断することにより行った。
見掛け密度変化の有無は、試験治具に載置したマスチックについて、載置した直後の状態と、載置してから80℃で24時間加熱した後の状態とをそれぞれ写真に撮影し、撮影した写真を比較して、目視上、体積がどの程度変化しているか否かで判断した。
具体的には、載置した直後の体積V1に対して、載置してから80℃で24時間加熱した後の体積V2が2/3以下になっているものを体積変化ありとして「有」と評価し、V1に対してV2の体積が2/3を上回っているものと体積変化なしとして「無」と評価した。
その結果について、以下の表6に示した。
【0168】
【表6】
【0169】
表6より、各実施例に係るマスチックでは、いずれも、見掛け密度の変化が認められず、スランプ試験の結果が、いずれも、10mm以下と良好であった。
これに対し、比較例6に係るマスチックは、スランプ試験の結果は10mm以下と良好であったものの、見掛け密度の変化が認められていた。
また、比較例7及び8に係るマスチックは、見掛け密度の変化は認められなかったものの、スランプ試験を行うための検体(平面寸法2.5cm×10cm、厚さ2.5cm)に成形できなかったため、スランプ試験を行うことすらできなかった。
【符号の説明】
【0170】
1 プライマー層
2 防食層
3 トップコート層
4 防食マスチック層
10 金属製部材
11 フランジ部
12 ボルト
13 ナット
100 防食構造体
【要約】
【課題】本発明は、基体に塗布するときの塗布作業性が良好となり、しかも、得られたプライマー層を耐熱性に優れるものとすることができるプライマー等を提供する。
【解決手段】本発明に係るプライマーは、主剤と硬化剤とを備え、前記主剤は、シリコーン化合物を含み、かつ、23℃における粘度が16Pa・s以上600Pa・s以下である。
【選択図】 なし
図1