(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】操作支援機能付き停止スイッチユニット
(51)【国際特許分類】
H01H 13/62 20060101AFI20220407BHJP
H01H 13/02 20060101ALI20220407BHJP
H01H 3/28 20060101ALI20220407BHJP
H01H 13/20 20060101ALN20220407BHJP
【FI】
H01H13/62
H01H13/02 C
H01H3/28 A
H01H13/20 A
(21)【出願番号】P 2018185271
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000309
【氏名又は名称】IDEC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 繁年
(72)【発明者】
【氏名】前田 育男
(72)【発明者】
【氏名】笠間 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】吉井 英二
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-115703(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101329960(CN,A)
【文献】特開2001-229773(JP,A)
【文献】登録実用新案第3053295(JP,U)
【文献】特開2003-197065(JP,A)
【文献】国際公開第2014/056021(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/00 - 13/88
H01H 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作支援機能付き
停止スイッチユニットであって、
接触状態に置かれた第1、第2の接点を
手動により開離
操作可能、かつ開離状態の前記第1、第2の接点を手動のみにより前記接触状態に復帰操作可能な停止スイッチと、
前記
停止スイッチ
に対する遠隔操作を検知する検知部と、
前記検知部で検知された前記遠隔操作に基づいて前記
停止スイッチ
の前記第1、第2の接点を
前記接触状態から前記開離状態へ移行させる前記開離操作のみを行わせる作動部と、
前記第1、第2の接点を開離方向に付勢する開離付勢手段とを備え
、
前記作動部の作動による前記停止スイッチの前記開離操作後の前記第1、第2の接点の前記開離状態は、手動による前記復帰操作がなされない限り維持されている、
ことを特徴とする操作支援機能付き
停止スイッチユニット。
【請求項2】
請求項1において、
前記作動部の作動による前記停止スイッチの前記開離状態は、前記作動部の作動が停止した場合でも、停止後に前記作動部が再作動して停止した場合でも、維持されている、
ことを特徴とする操作支援機能付き
停止スイッチユニット。
【請求項3】
請求項1において、
前記接触状態では前記停止スイッチを当該接触状態に保持し、手動および前記作動部による前記開離操作時には前記停止スイッチの当該開離操作を許容し、かつ手動による前記復帰操作時には前記停止スイッチの当該復帰操作を許容する保持部をさらに備えた、
ことを特徴とする操作支援機能付き
停止スイッチユニット。
【請求項4】
請求項1において、
前記作動部が電磁ソレノイドから構成されており、前記電磁ソレノイドの作動による前記停止スイッチの前記開離状態は、当該電磁ソレノイドへの電流供給時のみならず電流供給停止時においても、維持されている、
ことを特徴とする操作支援機能付き
停止スイッチユニット。
【請求項5】
請求項1において、
当該操作支援機能付き停止スイッチユニットが、作業者と協働して作業を行う協働ロボットまたは無人搬送車を停止するためのものである、
ことを特徴とする操作支援機能付き
停止スイッチユニット。
【請求項6】
請求項1において、
前記停止スイッチが非常停止スイッチである、
ことを特徴とする操作支援機能付き
停止スイッチユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停止スイッチの操作支援を行える操作支援機能付き停止スイッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、非常停止スイッチは、操作者が押し込み操作可能な押しボタン(
停止スイッチ)と、押しボタンの押し込み操作によりスライド移動する操作軸と、操作軸の移動に応じて接断される接点とを備えている(特開2001-35302号公報の
図1参照)。非常停止スイッチの操作時には、操作軸の移動により接点がOFF状態となることで装置の電気回路が遮断されて、装置が緊急停止するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の非常停止スイッチは、押しボタン操作の際に操作者が非常停止スイッチのすぐ近くにいる必要があり、非常停止スイッチから離れた場所からでは操作できなかった。そのため、非常停止スイッチから離れた場所からでも操作を行える操作支援機能付きの非常停止スイッチの要請があった。その一方、非常停止スイッチにおいては、万一スイッチが破損した場合であっても、接点が再び接触状態に戻ることは安全性の観点から回避されるべきである。
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、停止スイッチの操作支援を行うことにより、操作性を向上でき、安全性を向上できるだけでなく、万一スイッチが破損した場合においても安全性を確保することにより、安全性を一層向上できる操作支援機能付き停止スイッチユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る操作支援機能付き停止スイッチユニットは、接触状態に置かれた第1、第2の接点を手動により開離操作可能、かつ開離状態の第1、第2の接点を手動のみにより接触状態に復帰操作可能な停止スイッチと、停止スイッチに対する遠隔操作を検知する検知部と、検知部で検知された遠隔操作に基づいて停止スイッチの第1、第2の接点を接触状態から開離状態へ移行させる開離操作のみを行わせる作動部と、第1、第2の接点を開離方向に付勢する開離付勢手段とを備え、作動部の作動による停止スイッチの開離操作後の第1、第2の接点の開離状態は、手動による復帰操作がなされない限り維持されている。
【0006】
本発明においては、停止スイッチに対してなされた遠隔操作は、検知部で検知される。すると、作動部が、検知部で検知された遠隔操作に基づいて停止スイッチを作動させ、接触状態に置かれていた第1、第2の接点を開離させる。これにより、停止スイッチから離れた場所からでも操作を行うことができ、停止スイッチの操作支援を行えるようになる。その結果、操作性を向上でき、安全性を向上できる。しかも、本発明においては、開離付勢手段により、停止スイッチの第1、第2の接点が開離方向に付勢されているので、万一スイッチが破損した場合でも、第1、第2の接点を開離状態におくことができ、これにより、安全性を確保できる。このようにして、本発明によれば、安全性を一層向上できるようになる。
【0007】
本発明においては、作動部の作動による停止スイッチの開離状態は、作動部の作動が停止した場合でも、停止後に作動部が再作動して停止した場合でも、維持されている。
【0008】
本発明においては、接触状態では停止スイッチを当該接触状態に保持し、手動および作動部による開離操作時には停止スイッチの当該開離操作を許容し、かつ手動による復帰操作時には停止スイッチの当該復帰操作を許容する保持部をさらに備えている。
【0009】
本発明においては、作動部が電磁ソレノイドから構成されており、電磁ソレノイドの作動による停止スイッチの開離状態は、当該電磁ソレノイドへの電流供給時のみならず電流供給停止時においても、維持されている。
【0010】
本発明においては、当該操作支援機能付き停止スイッチユニットが、作業者と協働して作業を行う協働ロボットまたは無人搬送車を停止するためのものである。
【0011】
本発明においては、停止スイッチが非常停止スイッチである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、停止スイッチから離れた場所からでも操作を行うことができ、停止スイッチの操作支援を行えるようになるので、操作性を向上でき、安全性を向上できる。さらに、本発明によれば、万一スイッチが破損した場合でも、開離付勢手段により第1、第2の接点を開離状態におくことができるので、安全性を確保できる。このようにして、安全性を一層向上できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施例による操作支援機能付き操作スイッチユニットとしての非常停止スイッチを備えた操作支援システムの一例を示す全体斜視図である。
【
図2】前記操作支援システム(
図1)の平面図である。
【
図3】前記操作支援システム(
図1)の側面図である。
【
図4】前記非常停止スイッチ(
図1)の縦断面概略構成図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図5】前記非常停止スイッチ(
図1)の縦断面概略構成図であって、非常停止スイッチの操作時(手動操作時および遠隔操作時)の状態を示している。
【
図6】前記操作支援システム(
図1)の概略ブロック構成図である。
【
図7】前記非常停止スイッチ(
図4)の第1の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図8】前記非常停止スイッチ(
図4)の第1の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの操作時(手動操作時および遠隔操作時)の状態を示している。
【
図9】前記非常停止スイッチ(
図4)の第2の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図10】前記非常停止スイッチ(
図4)の第2の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの操作時(手動操作時および遠隔操作時)の状態を示している。
【
図11】前記非常停止スイッチ(
図4)の第3の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図11A】前記非常停止スイッチ(
図5)の第3の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの手動操作時の状態を示している。
【
図11B】前記非常停止スイッチ(
図5)の第3の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの遠隔操作時の状態を示している。
【
図12】前記非常停止スイッチ(
図4)の第4の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図12A】前記非常停止スイッチ(
図5)の第4の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの手動操作時の状態を示している。
【
図12B】前記非常停止スイッチ(
図5)の第4の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの遠隔操作時の状態を示している。
【
図13】前記非常停止スイッチ(
図4)の第5の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図13A】前記非常停止スイッチ(
図5)の第5の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの手動操作時の状態を示している。
【
図13B】前記非常停止スイッチ(
図5)の第5の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの遠隔操作時の状態を示している。
【
図14】前記非常停止スイッチ(
図4)の第6の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの非操作時の状態を示している。
【
図14A】前記非常停止スイッチ(
図5)の第6の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの手動操作時の状態を示している。
【
図14B】前記非常停止スイッチ(
図5)の第6の変形例を示す図であって、非常停止スイッチの遠隔操作時の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし
図6は、本発明の一実施例による操作支援機能付き非常停止スイッチ(操作スイッチユニット)およびこれを備えた操作支援システムを説明するための図である。
図1ないし
図3は操作支援システム全体を示し、
図4および
図5は非常停止スイッチの概略構造を示し、
図6は操作支援システムのブロック構成を示している。
【0017】
図1ないし
図3に示すように、この操作支援システム1は、ロボットRを備えている。ロボットRの近くには作業者(操作者)Pが位置しており、ロボットRは、作業者Pと協調(協働)して作業を行う協調(協働)ロボットである。ロボットRは、稼動時には、たとえばサブテーブルT’上のワークWをロボットアームRaの先端のハンドによりピックアップし、それを作業テーブルTの上に載置されたトレイt内の所定の位置に順次入れていくといった作業を行う。一方、作業者Pは、ロボットRの稼動時には、たとえばワークWをサブテーブルT’上の空いた位置に順次配置していくといった作業を行う。
【0018】
作業テーブルT上には、たとえばプログラマブル表示器50が配置されている。プログラマブル表示器50は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のディスプレイを有し、ロボットRの制御プログラムを格納している。テーブルTの側面たとえば左右の各側面および背面には、それぞれセーフティレーザスキャナ51が配置されている。各レーザスキャナ51は、作業者Pやその他の人の接近を検知するためのものである。テーブルTの前面には、ロボットRを緊急停止させるための非常停止スイッチ2が配置されている。作業者Pの一方の腕の手首には、携帯型(ウェアラブル)無線端末(遠隔操作部)4が装着されている。無線端末4は、作業者Pが非常停止スイッチ2を遠隔操作するためのものであって、作業者Pがもう一方の指や手で操作可能な押しボタン40と、押しボタン40を保持しつつ、作業者Pの手首の周りに巻回されるバンド45とを備えている。テーブルTの近傍には、グラフィカルライト53が設置されている。グラフィカルライト53は、ロボットアームRaの先端のハンドが次に移動してくる場所に光を照射することで、作業者PにロボットR側の予告情報を知らせるためのものである。サブテーブルT’上には、ワークWに付されたワーク情報である2次元コードを読み取るための2次元コードスキャナ54が配置されている。
【0019】
次に、非常停止スイッチ2の内部構造について、
図4および
図5を用いて説明する。
図4は非常停止スイッチの非操作時の状態を、
図5は非常停止スイッチの操作時の状態をそれぞれ示している。これらの図では、図示の便宜上ハッチングを省略している。
【0020】
図4および
図5に示すように、非常停止スイッチ2は、ケース(筐体)20と、ケース20の一端側に設けられ、ケース20に軸方向スライド可能に支持されるとともに、作業者Pが押し込み操作(手動操作)するための押圧面(手動操作面)21aを有する非常停止ボタン(操作スイッチ)21と、非常停止ボタン21の押圧面21aと逆側の裏面に連結され、ケース20の内部において軸方向に延びる軸部(操作軸)22と、軸部22の略中央に取り付けられ、軸部22とともに移動する可動接点(第1の接点)23と、ケース20の内壁面に固定され、可動接点23に対向配置されかつ可動接点23に接触する固定接点(第2の接点)24と、ケース20の内部においてケース20の他端側に設けられ、軸部22が挿通するとともに軸部22を軸方向に移動させるための電磁ソレノイド(作動部)3と、ケース20の外壁面に取り付けられ、無線端末4からの遠隔信号を受信する(すなわち遠隔操作を検知する)受信部(検知部)32と、受信部32に受信(検知)された遠隔信号に基づいてソレノイド3の駆動を制御する制御回路33とを備えている。制御回路33は、リード線34によりソレノイド3に接続されている。
【0021】
軸部22は、その略中央において外周側に張り出すフランジ部22aを有しており、フランジ部22aにはコイルばね(開離付勢手段)25の一端が当接することで係止されている。コイルばね25の他端はケース20の内壁面から内周側に張り出す張出し部20aに当接することでケース20の側に係止されている。コイルばね25は、張出し部20aおよびフランジ部22a間の軸方向スペースに圧縮状態で配設されており、張出し部20aおよびフランジ部22aに対して弾性反発力(付勢力)を作用させている。この弾性反発力により、可動接点23は固定接点24から離れる方向(接点開離方向つまり
図4右側)に付勢されている。したがって、コイルばね25の一端は、軸部22の移動とともに移動するようになっている。
【0022】
この例では、コイルばね25の軸線は軸部22の軸線と一致しており、コイルばね25の弾性反発力は、非常停止ボタン21の押し込み方向に作用するとともに、軸部22に対するソレノイド3の作動方向に作用している。また、
図4に示す非常停止スイッチ2の非操作時においては、コイルばね25は張出し部20aおよびフランジ部22a間で最大圧縮された状態におかれており、コイルばね25の弾性反発力は最大であって、最大の弾性エネルギーを保有している。これに対して、
図5に示す非常停止スイッチ2の操作時においては、コイルばね25は
図4の状態から軸方向に伸びていて、コイルばね25の弾性反発力は減少しており、コイルばね25が保有する弾性エネルギーも減少している。
【0023】
軸部22は、非常停止ボタン21の近傍において外周側に突出する突部22bを有している。突部22bは縦断面が台形形状をしており、一対の傾斜面を有している。一方、ケース20の内部には、一対の係合部材26が設けられている。各係合部材26は、突部22bの各傾斜面と係合し得る一対の傾斜面を有している。各係合部材26は、ケース20の内部に配設されたばね27の弾性反発力により、対応する各突部22bの側に付勢されている。
図4に示す非操作時の状態では、突部22bの図示右側の傾斜面に係合部材26の図示左側の傾斜面が係合しており、
図5に示す操作時の状態では、突部22bの図示左側の傾斜面に係合部材26の図示右側の傾斜面が係合している。
【0024】
軸部22の先端には、被係合部22Aが設けられている。被係合部22Aは、この例では、軸部22よりも大径の円柱形状を有している。ソレノイド3のソレノイド本体(電磁コイル部)30の内部には、プランジャ31がスライド自在に挿通しており、プランジャ31は軸部22と同心に配置されている。プランジャ31の一端には、軸部22の被係合部22Aに係合し得る係合部31Aが設けられている。係合部31Aは、この例では、プランジャ31よりも大径の円筒形状を有している。軸部22の先端の被係合部22Aは、プランジャ31の係合部31Aの内部の穴に挿入されて係合している。この構成により、軸部22およびプランジャ31は連結されており、両者が一体となって移動するようになっている。
【0025】
次に、操作支援システム1の概略ブロック構成を
図6に示す。
同図に示すように、操作支援システム1は、各種プログラミングやデータ入力、出力表示等を行うパソコン(PC)100およびこれに接続されたプログラマブルコントローラ(PLC)101と、PLC101に接続されたプログラマブル表示器(PDD)50とを備えている。PLC101/PDD50には、ロボット制御プログラムが格納されている。また、PLC101およびPDD50には、レーザスキャナ(LS)51、2次元コードスキャナ54、非常停止スイッチ2、アクチュエータやモータを含むロボット駆動部102、グラフィカルライト53、および非常停止ランプ/ブザー103が接続されている。なお、本発明による操作支援システムの構成はこれに限定されず、PC100、PLC101またはPDD50のいずれかを省略するようにしてもよい。
【0026】
無線端末4は、この例では、複数の無線端末4
1、4
2…から構成されている(
図6では2つの無線端末4
1、4
2のみ図示)。無線端末4
1はたとえば無線モジュールを内蔵しており、当該無線モジュールは、押しボタン40
1と、送信部41
1と、受信部42
1と、表示部43
1と、これらが接続された制御回路44
1とを備えている。同様に、無線端末4
2に内蔵された無線モジュールは、押しボタン40
2と、送信部41
2と、受信部42
2と、表示部43
2と、これらが接続された制御回路44
2とを備えている。無線端末4
1、4
2は、たとえばいずれもロボットRの近くで作業する作業者P
1、P
2によりそれぞれ所持されるか、あるいは、無線端末4
1は、たとえばロボットRの近くで作業する作業者Pにより所持され、無線端末4
2は、たとえばロボットRから離れた位置で作業者Pを監督する監督者により所持される。
【0027】
送信部411、412は、押しボタン401、402が押し込まれた際に、非常停止スイッチ2を無線で操作するための操作(停止)信号を送信するためのものであり、それぞれ非常停止スイッチ2の受信部32に対して無線で通信可能に設けられている。受信部421(または422)は、別の無線端末42(または41)の送信部412(または411)から送信された停止信号を受信するためのものである。すなわち、無線端末41、42の各送信部411、412および各受信部421、422は、無線で相互に通信可能に設けられている。表示部431、432は、押しボタン401、402を押した際の照光(たとえば点灯)表示や、他者が先にボタンを押し込んだ際の照光(たとえば点滅)表示、電波強度のレベルの表示、バッテリー切れの際や無線通信不可時のアラーム表示等を行うためのものである。なお、本実施例で用いられる無線の種類としては、たとえば、Wi-Fi(登録商標)通信、BLUETOOTH(登録商標)通信、ZIGBEE(登録商標)通信、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信、WiMAX(登録商標)通信、赤外線通信等がある。
【0028】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
ロボットRの稼動時には、ロボットRは、PLC101/PDD50に格納されたロボット制御プログラムにしたがって運転される。作業者Pは、所定の手順にしたがってワークWをサブテーブルT’上に載せる等の作業を行い、ロボットRは作業者Pと協調作業を行う。このとき、非常停止スイッチ2は、
図4に示すように、非常停止ボタン21が押し込まれておらず非操作時の状態にあって、可動接点23および固定接点24は接触している。
【0029】
ロボットRの稼動中に作業者Pが非常停止スイッチ2の非常停止ボタン21を押し込み操作(手動操作)すると、非常停止ボタン21とともに(つまり非常停止ボタン21の操作に連動して)軸部22が押し込まれる。軸部22の移動にともない、軸部22の突部22bの一方の傾斜面がこれと係合する係合部材26の一方の傾斜面をばね27の弾性反発力に抗して乗り越え、
図4に示す状態から
図5に示す状態に移行する。このとき、軸部22の突部22bの他方の傾斜面が係合部材26の他方の傾斜面と係合している。また、軸部22とともに可動接点23が移動することにより、可動接点23が固定接点24から開離し、その結果、ロボットRの運転が停止する。
【0030】
この場合、非常停止ボタン21の押し込み操作の際には、軸部22の先端に連結されたプランジャ31も同様に押し込まれるが、このとき、ソレノイド本体30には電流が供給されておらず、そのため、プランジャ31の移動の際の摺動抵抗はなく、プランジャ31の移動はスムーズに(すなわち、負荷なく)行われる。したがって、作業者Pによる非常停止スイッチ2の押し込み操作の際には、ソレノイド3を備えていない従来の非常停止スイッチの操作と全く同様にして行うことが可能である。また、
図5に示す状態から
図4に示す状態に戻す復帰動作の際には、作業者Pが非常停止ボタン21を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより行う。なお、復帰動作に関しては、たとえばプッシュロック・ターンリセット機構のようなロック機構を採用することにより、非常停止ボタン21の押し込み操作時に内部のロック機構(図示せず)により保持されたロック状態が非常停止ボタン21をたとえばひねる(つまり回転させる)ことにより解除されるようにしてよい。
【0031】
その一方、ロボットRの稼動中に作業者Pが無線端末4(4
1または4
2)の押しボタン40(40
1または40
2)を押し込み操作すると、無線端末4(4
1または4
2)の送信部(41
1または41
2)から操作(停止)信号が送信される(
図6参照)。無線端末4(4
1または4
2)から送信された操作信号は、非常停止スイッチ2の受信部32により受信され、制御回路33に入力される。すると、制御回路33からソレノイド3のソレノイド本体30に電流が供給され、これにより、
図5に示すように、ソレノイド3のプランジャ31が引き込まれて図示右側に移動する。その結果、プランジャ31に連結された軸部22も同様に図示右側に移動して(このとき、突部22bの傾斜面と係合部材26の傾斜面との協働関係は非常停止ボタン21の押し込み操作の場合と同様)、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離し、ロボットRの運転が停止する。
【0032】
このとき、非常停止ボタン21は、軸部22とともに移動することで押し込まれた状態にあり、作業者Pが非常停止ボタン21を押し込み操作して作動させた場合と全く同じ状態におかれている。なお、
図5に示す状態から
図4に示す状態に戻す復帰動作の際には、ソレノイド3への電流供給を停止した後、非常停止ボタン21の押し込み操作の場合と同様に、作業者Pが非常停止ボタン21を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより行う。あるいは、上述したように、プッシュロック・ターンリセット機構のようなロック機構を採用することにより、非常停止ボタン21の押し込み操作時に内部のロック機構により保持されたロック状態が非常停止ボタン21をたとえばひねる(つまり回転させる)ことにより解除されるようにしてよい。
【0033】
このような本実施例によれば、無線端末4による非常停止スイッチ2に対する遠隔操作が非常停止スイッチ2の受信部32で検知され、その遠隔操作に基づいて非常停止スイッチ2が作動して(すなわち、非常停止ボタン21が押し込まれて)、接触状態に置かれていた可動接点23および固定接点24を開離させるので、非常停止スイッチ2から離れた場所からでも非常停止ボタン21を操作することができる。これにより、作業者Pが非常停止ボタン21を直接押すことができない状況下において、非常停止ボタン21の操作支援を行えるようになって、操作性を向上でき、安全性を向上できる。
【0034】
しかも、本実施例によれば、コイルばね25が常時(すなわち、非常停止スイッチ2の操作前後において)可動接点23を固定接点24から開離する側に付勢している。したがって、非常停止スイッチ2のとくに操作後において、非常停止スイッチ2が万一故障して可動接点23が固定接点24に対して接触状態に戻るような異常が発生した場合でも、コイルばね25の弾性反発力の作用により両接点23、24が開離方向に付勢されることで両接点23、24を開離状態に維持することができるので、両接点23、24が接触することはなく、安全性を確保できる。このようにして、本実施例によれば、安全性を一層向上できる。
【0035】
さらに、本実施例によれば、コイルばね25による弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向に作用しているので、非常停止ボタン21の押し込み操作により可動接点23が固定接点24から強制的に開離される際、コイルばね25の弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向と同じ方向に作用し、その結果、より確実に可動接点23を固定接点24から開離させることができる。また、コイルばね25による弾性反発力が、軸部22に対するソレノイド3の作動方向(すなわち、プランジャ31の引張方向)に作用しているので、ソレノイド3が非常停止ボタン21を作動させる際の負荷を軽減でき、その結果、ソレノイド3の出力を低減でき、コストを低減できる。
【0036】
また、本実施例によれば、非常停止ボタン21の操作後におけるコイルばね25の弾性反発力が、非常停止ボタン21の操作前におけるコイルばね25の弾性反発力よりも減少している。これにより、非常停止ボタン21の操作後は、コイルばね25が所有していた弾性エネルギーが低下しており、コイルばね25の接点開離後の弾性エネルギーは接点開離前の弾性エネルギーよりも小さくなっている。その結果、非常停止ボタン21の操作後に万一スイッチが破損した場合でも、可動接点23および固定接点24が再び接触状態に戻ることはなく、これにより、安全性を一層向上できる。
【0037】
前記実施例においては、最も好ましい例として、コイルばね25による弾性反発力の作用方向がソレノイド3の作動方向と一致している例を示したが、両方向は完全に一致していなくてもよい。たとえば、コイルばね25の弾性反発力がソレノイド3の作動方向に対して角度をなして斜めに作用している場合であっても、当該弾性反発力の軸方向成分がソレノイド3の作動方向と一致することになるので、ある程度の効果は期待できる。同様に、前記実施例では、最も好ましい例として、コイルばね25による弾性反発力の作用方向が非常停止ボタン21の押し込み方向と一致している例を示したが、両方向は完全に一致していなくてもよい。たとえば、コイルばね25の弾性反発力が軸部22の軸方向に対して角度をなして斜めに作用している場合であっても、当該弾性反発力の軸方向成分が非常停止ボタン21の押し込み方向と一致することになるので、ある程度の効果は期待できる。
【0038】
前記実施例においては、プランジャ31が軸部22とは別体に設けられた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。両部材は一体物でもよい。この場合、たとえば、軸部22をソレノイド3側に延設することにより、軸部22の先端側部分をプランジャとして使用するようにすればよい。
【0039】
前記実施例においては、可動接点23および固定接点24の接点溶着等が原因で、ソレノイド本体30によりプランジャ31を吸引できない万一の場合に備えて、ブザーやスピーカー、表示灯を設置し、音声や光により周囲の作業者に知らせるようにしてもよい。
【0040】
前記実施例においては、コイルばね25が両接点23、24の前方、すなわち両接点23、24と非常停止ボタン21との間に配置された例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。コイルばね25は両接点23、24の後方、すなわち両接点23、24と軸部22の被係合部22Aとの間に配置するようにしてもよい。以下の第1、第2の変形例はそれぞれこのような例を示している。
【0041】
〔第1の変形例〕
図7、
図8は、本発明による非常停止スイッチの第1の変形例を示しており、
図7は非常停止スイッチの非操作時の状態を、
図8は非常停止スイッチの操作時(手動操作時および遠隔操作時)の状態をそれぞれ示している。これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0042】
図7、
図8に示すように、軸部22の外周側に張り出すフランジ部22aは、軸部22の可動接点23の後方(各図右方)に設けられている。同様に、ケース20の内壁面から内周側に張り出す張出し部20aは、可動接点23の後方に設けられている。フランジ部22aおよび張出し部20aは対向配置されており、これらの間の軸方向スペースにコイルばね25が圧縮状態で配設されている。コイルばね25の一端はフランジ部22aに当接することで係止されており、他端は張出し部20aに当接することでケース20の側に係止されている。コイルばね25は、張出し部20aおよびフランジ部22aに対して弾性反発力(付勢力)を作用させており、この弾性反発力により、可動接点23は固定接点24から離れる方向(接点開離方向つまり
図7、
図8右方)に付勢されている。
【0043】
この第1の変形例による作用効果は前記第1の実施例と同様であるが、さらに、この場合には、コイルばね25が軸部22の先端寄りの位置に配置されるので、コイルばね25の交換等のメンテナンスが比較的容易に行える。
【0044】
〔第2の変形例〕
図9、
図10は、本発明による非常停止スイッチの第2の変形例を示しており、
図9は非常停止スイッチの非操作時の状態を、
図10は非常停止スイッチの操作時(手動操作時および遠隔操作時)の状態をそれぞれ示している。これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0045】
図9、
図10に示すように、軸部22の外周側に張り出すフランジ部22aは、軸部22の可動接点23の後方(各図右方)に設けられている。同様に、張出し部20aは可動接点23の後方に設けられているが、この第2の変形例では、前記第1の変形例と異なり、張出し部20aは、軸部22の先端寄りの位置においてケース20から前方(各図左方)に向かって延びるステー20bの先端に設けられている。フランジ部22aおよび張出し部20aは対向配置されており、これらの間の軸方向スペースにコイルばね25が圧縮状態で配設されている。コイルばね25の一端はフランジ部22aに当接することで係止されており、他端は張出し部20aに当接することでケース20の側に係止されている。コイルばね25は、張出し部20aおよびフランジ部22aに対して弾性反発力(付勢力)を作用させており、この弾性反発力により、可動接点23は固定接点24から離れる方向(接点開離方向つまり
図9、
図10右方)に付勢されている。
【0046】
この第2の変形例による作用効果は前記第1の実施例と同様であるが、さらに、この場合には、コイルばね25が軸部22の先端寄りの位置に配置されるので、コイルばね25の交換等のメンテナンスが比較的容易に行えるとともに、ステー20bによってコイルばね25の外周に沿ったばね収容空間を形成できるので、コイルばね25を安定して保持できる。
【0047】
前記実施例においては、非常停止ボタン21を作動させる作動部としてソレノイド3を用いた例を示したが、本発明の適用はこれに限定されない。作動部としてソレノイド3以外の機構を採用した例を以下の第3ないし第6の変形例に示す。なお、各変形例において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0048】
〔第3の変形例〕
図11ないし
図11Bは、本発明の第3の変形例による非常停止スイッチを示しており、
図11は非常停止スイッチの非操作時の状態を、
図11Aは非常停止スイッチの手動操作時の状態を、
図11Bは非常停止スイッチの遠隔操作時の状態をそれぞれ示している。これらの図において、前記実施例と同一符号は同一または相当部分を示している。
【0049】
この第3の変形例では、前記実施例のソレノイド3の代わりに電動シリンダを採用している。すなわち、ボールねじ60を出力軸に有するサーボモータ6を用いるとともに、ボールねじ60の先端に筒状のスライダ61の一端61Aを取り付けている。スライダ61は、ボールねじ60のねじ部が螺合するねじ孔をその一端61Aに有している。また、スライダ61の他端61Bには、軸部22が挿通する小径の貫通孔61aが形成されており、軸部22の先端の被係合部22Aはスライダ61の内部空間61bに挿入されて他端61Bと当接している。この構成によって、サーボモータ6の駆動によりボールねじ60が正逆転すると、スライダ61が軸方向に沿って前後方向(各図左右方向)に移動するようになっている。
【0050】
図11に示すように、非常停止スイッチ2の非操作時の状態においては、スライダ61はボールねじ60の先端に位置しており、軸部22の先端の被係合部22Aは、スライダ61の内部空間61bにおいて他端61Bに当接している。このとき、被係合部22Aとボールねじ60の先端との間には、クリアランスSが形成されている。この状態から、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作(手動操作)すると、非常停止ボタン21とともに軸部22が押し込まれ、
図11に示す状態から
図11Aに示す状態に移行する。このとき、軸部22の先端の被係合部22Aは、スライダ61の他端61Bとの間にギャップeを形成しており、ボールねじ60の先端との間のクリアランスはS’(<S)になっている。これにより、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離して、装置の運転が停止する。
【0051】
この場合、非常停止ボタン21の押し込み操作の際には、軸部22の先端の被係合部22Aはスライダ61の内部空間61bを移動するが、このとき、軸部22とスライダ61の他端61Bの貫通孔61aとの摺動抵抗は小さく(しかも、サーボモータ6側の負荷は作用しないので)、軸部22の移動はスムーズに(すなわち、ほとんど負荷なく)行われる。したがって、作業者による非常停止スイッチ2の押し込み操作の際には、従来の非常停止スイッチの操作と全く同様にして行うことが可能である。また、非常停止ボタン21を非操作時の状態に戻す復帰動作の際には、作業者が非常停止ボタン21を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより行う(この点は、以下の第4ないし第6の変形例においても同様)。なお、復帰動作に関しては、たとえばプッシュロック・ターンリセット機構のようなロック機構を採用することにより、非常停止ボタン21の押し込み操作時に内部のロック機構により保持されたロック状態が非常停止ボタン21をたとえばひねる(つまり回転させる)ことにより解除されるようにしてよい(以下の第4ないし第6の変形例においても同様)。
【0052】
また、
図11示す非操作時の状態において、無線端末から操作信号が送信されると、当該操作信号は非常停止スイッチ2の受信部32により受信され、制御回路33に入力される。そして、制御回路33からサーボモータ6に電流が供給されて、ボールねじ60が正方向に回転を開始する。すると、
図11Bに示すように、ボールねじ60と螺合するスライダ61がボールねじ60に沿って後方(同図右方)に移動する。このとき、スライダ61の他端61Bと当接する軸部22の先端の被係合部22Aも同様に図示右側に移動して、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離し、装置の運転が停止する。
【0053】
図11Bにおいては、非常停止ボタン21が軸部22とともに移動することで押し込まれた状態にあり、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作した場合と全く同じ状態におかれている。なお、非常停止ボタン21を非操作時の状態に戻す復帰動作の際には、まず、サーボモータ6を逆方向に回転させ、スライダ61をボールねじ60に沿って前方(
図11B左方)に移動させた後(
図11Aの状態参照)、作業者が非常停止ボタン21を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより行う。
【0054】
このような第3の変形例によれば、前記第1の実施例と同様に、無線端末による非常停止スイッチ2に対する遠隔操作が非常停止スイッチ2の受信部32で検知され、その遠隔操作に基づいて非常停止スイッチ2が作動する(すなわち、非常停止ボタン21が押し込まれる)ので、非常停止スイッチ2から離れた場所からでも非常停止ボタン21の操作を行うことができ、これにより、作業者が非常停止ボタン21を直接押すことができない状況下において、非常停止ボタン21の操作支援を行えるようになって、操作性を向上でき、安全性を向上できる。
【0055】
しかも、コイルばね25が常時(すなわち、非常停止スイッチ2の操作前後において)可動接点23を固定接点24から開離する側に付勢しているので、非常停止スイッチ2のとくに操作後において、非常停止スイッチ2が故障して可動接点23が固定接点24に対して接触状態に戻るような異常が万一発生した場合でも、コイルばね25の弾性反発力の作用により両接点23、24が開離方向に付勢されることで両接点23、24を開離状態に維持することができ、これにより、両接点23、24が接触することはなく、安全性を確保できる。このようにして、安全性を一層向上できる。
【0056】
さらに、コイルばね25による弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向に作用しているので、非常停止ボタン21の押し込み操作により可動接点23が固定接点24から強制的に開離される際、コイルばね25の弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向と同じ方向に作用し、その結果、より確実に可動接点23を固定接点24から開離させることができる。また、コイルばね25による弾性反発力が、軸部22に対するスライダ61の移動方向(すなわち、軸部22の引張方向)に作用しているので、サーボモータ6が非常停止ボタン21を作動させる際の負荷を軽減でき、その結果、サーボモータ6の出力を低減でき、コストを低減できる。
【0057】
また、非常停止ボタン21の操作後におけるコイルばね25の弾性反発力が、非常停止ボタン21の操作前におけるコイルばね25の弾性反発力よりも減少しているので、非常停止ボタン21の操作後は、コイルばね25が所有していた弾性エネルギーが低下しており、コイルばね25の接点開離後の弾性エネルギーは接点開離前の弾性エネルギーよりも小さくなっている。その結果、非常停止ボタン21の操作後に万一スイッチが破損した場合でも、可動接点23および固定接点24が再び接触状態に戻ることはなく、これにより、安全性を一層向上できる。
【0058】
〔第4の変形例〕
図12ないし
図12Bは、本発明の第4の変形例による非常停止スイッチを示しており、
図12は非常停止スイッチの非操作時の状態を、
図12Aは非常停止スイッチの手動操作時の状態を、
図12Bは非常停止スイッチの遠隔操作時の状態をそれぞれ示している。
【0059】
前記第3の変形例では、ボールねじ60を出力軸に有するサーボモータ6からなる電動シリンダを採用したが、この第4の変形例では、ボールねじがサーボモータの出力軸とは別体に設けられている。
図12に示すように、サーボモータ6の出力軸62には、タイミングギヤ63が取り付けられている。軸部22の左右両側方には、一対のボールねじ60
1、60
2が配設されており、各ボールねじ60
1、60
2の後側端(図示右側端)には、タイミングギヤ64
1、64
2がそれぞれ取り付けられている。各タイミングギヤ63、64
1、64
2にはタイミングベルト65が巻き掛けられている。各ボールねじ60
1、60
2の前側端(図示左側端)には、スライダ61
1、61
2が取り付けられている。スライダ61
1、61
2には、対応する各ボールねじ60
1、60
2が螺合するねじ孔がそれぞれ形成されている。また、各スライダ61
1、61
2はクリアランスEを隔てて対向配置されており、軸部22はクリアランスE内を挿通している。軸部22の先端の被係合部22Aは、各スライダ61
1、61
2と当接している。この構成によって、サーボモータ6の駆動によりタイミングベルト65が回転すると、ボールねじ60
1、60
2が正逆転して、スライダ61
1、61
2が各ボールねじ60
1、60
2の軸方向に沿って前後方向(各図左右方向)に移動するようになっている。
【0060】
図12に示すように、非常停止スイッチ2の非操作時の状態においては、各スライダ61
1、61
2は対応する各ボールねじ60
1、60
2の先端に位置しており、軸部22の先端の被係合部22Aは、各スライダ61
1、61
2に当接している。このとき、被係合部22Aとサーボモータ6の出力軸62との間には、クリアランスSが形成されている。この状態から、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作(手動操作)すると、非常停止ボタン21とともに軸部22が押し込まれ、
図12に示す状態から
図12Aに示す状態に移行する。このとき、軸部22の先端の被係合部22Aは、スライダ61
1、61
2との間にギャップeを形成しており、サーボモータ6の出力軸62との間のクリアランスはS’(<S)になっている。これにより、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離して、装置の運転が停止する。
【0061】
この場合、非常停止ボタン21の押し込み操作の際には、軸部22は各スライダ611、612のクリアランスE内を移動するが、このとき、軸部22と各スライダ611、612との摺動抵抗はほとんどなく(しかも、ボールねじ601、602およびサーボモータ6側の負荷は作用しないので)、軸部22の移動はスムーズに(すなわち、ほとんど負荷なく)行われる。したがって、作業者による非常停止スイッチ2の押し込み操作の際には、従来の非常停止スイッチの操作と全く同様にして行うことが可能である。
【0062】
また、
図12に示す非操作時の状態において、無線端末から操作信号が送信されると、当該操作信号は非常停止スイッチ2の受信部32により受信され、制御回路33に入力される。そして、制御回路33からサーボモータ6に電流が供給されて、各ボールねじ60
1、60
2が正方向に回転を開始する。すると、
図12Bに示すように、各ボールねじ60
1、60
2とそれぞれ螺合する各スライダ61
1、61
2が各ボールねじ60
1、60
2に沿って後方(同図右方)に移動する。このとき、各スライダ61
1、61
2と当接する軸部22の先端の被係合部22Aも同様に図示右側に移動して、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離し、装置の運転が停止する。
【0063】
このとき、非常停止ボタン21は、軸部22とともに移動することで押し込まれた状態にあり、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作した場合と全く同じ状態におかれている。なお、非常停止ボタン21を非操作時の状態に戻す復帰動作の際には、まず、サーボモータ6を逆方向に回転させ、各スライダ61
1、61
2を対応する各ボールねじ60
1、60
2に沿って前方(
図12B左方)に移動させた後(
図12Aの状態参照)、作業者が非常停止ボタン21を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより行う。
【0064】
このような第4の変形例によれば、前記第1の実施例と同様に、無線端末による非常停止スイッチ2に対する遠隔操作が非常停止スイッチ2の受信部32で検知され、その遠隔操作に基づいて非常停止スイッチ2が作動する(すなわち、非常停止ボタン21が押し込まれる)ので、非常停止スイッチ2から離れた場所からでも非常停止ボタン21の操作を行うことができ、これにより、作業者が非常停止ボタン21を直接押すことができない状況下において、非常停止ボタン21の操作支援を行えるようになって、操作性を向上でき、安全性を向上できる。
【0065】
しかも、コイルばね25が常時(すなわち、非常停止スイッチ2の操作前後において)可動接点23を固定接点24から開離する側に付勢しているので、非常停止スイッチ2のとくに操作後において、非常停止スイッチ2が故障して可動接点23が固定接点24に対して接触状態に戻るような異常が万一発生した場合でも、コイルばね25の弾性反発力の作用により両接点23、24が開離方向に付勢されることで両接点23、24を開離状態に維持することができ、これにより、両接点23、24が接触することはなく、安全性を確保できる。このようにして、安全性を一層向上できる。
【0066】
さらに、コイルばね25による弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向に作用しているので、非常停止ボタン21の押し込み操作により可動接点23が固定接点24から強制的に開離される際、コイルばね25の弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向と同じ方向に作用し、その結果、より確実に可動接点23を固定接点24から開離させることができる。また、コイルばね25による弾性反発力が、軸部22に対するスライダ611、612の移動方向(すなわち、軸部22の引張方向)に作用しているので、サーボモータ6が非常停止ボタン21を作動させる際の負荷を軽減でき、その結果、サーボモータ6の出力を低減でき、コストを低減できる。
【0067】
また、非常停止ボタン21の操作後におけるコイルばね25の弾性反発力が、非常停止ボタン21の操作前におけるコイルばね25の弾性反発力よりも減少しているので、非常停止ボタン21の操作後は、コイルばね25が所有していた弾性エネルギーが低下しており、コイルばね25の接点開離後の弾性エネルギーは接点開離前の弾性エネルギーよりも小さくなっている。その結果、非常停止ボタン21の操作後に万一スイッチが破損した場合でも、可動接点23および固定接点24が再び接触状態に戻ることはなく、これにより、安全性を一層向上できる。
【0068】
〔第5の変形例〕
図13ないし
図13Bは、本発明の第5の変形例による非常停止スイッチを示しており、
図13は非常停止スイッチの非操作時の状態を、
図13Aは非常停止スイッチの手動操作時の状態を、
図13Bは非常停止スイッチの遠隔操作時の状態をそれぞれ示している。
【0069】
前記第3の変形例では、スライダ61を移動させるのに電動シリンダを用いたが、この第5の変形例では、ラック・アンド・ピニオンを採用している。
図13に示すように、サーボモータ6の出力軸にはピニオン66が取り付けられており、ピニオン66は、前後方向(図示左右方向)に配設されたラック67と噛合っている。ラック67の前端(図示左側端)には、筒状のスライダ61が設けられている。軸部22の先端の被係合部22Aはスライダ61の内部空間61bに挿入されて他端61Bと当接している。この構成によって、サーボモータ6の駆動によりピニオン66が正逆転すると、ラック67を介してスライダ61が前後方向に移動するようになっている。
【0070】
図13に示すように、非常停止スイッチ2の非操作時の状態においては、軸部22の先端の被係合部22Aは、スライダ61の内部空間61bにおいて他端61Bに当接している。このとき、被係合部22Aとスライダ61の一端61Aとの間には、クリアランスSが形成されている。この状態から、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作(手動操作)すると、非常停止ボタン21とともに軸部22が押し込まれ、
図13に示す状態から
図13Aに示す状態に移行する。このとき、軸部22の先端の被係合部22Aは、スライダ61の他端61Bとの間にギャップeを形成しており、一端61Aとの間のクリアランスはS’(<S)になっている。これにより、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離して、装置の運転が停止する。
【0071】
この場合、非常停止ボタン21の押し込み操作の際には、軸部22の先端の被係合部22Aはスライダ61の内部空間61bを移動するが、このとき、軸部22とスライダ61の他端61Bの貫通孔61aとの摺動抵抗は小さく(しかも、サーボモータ6側の負荷は作用しないので)、軸部22の移動はスムーズに(すなわち、ほとんど負荷なく)行われる。したがって、作業者による非常停止スイッチ2の手動操作の際には、従来の非常停止スイッチの操作と全く同様にして行うことが可能である。
【0072】
また、
図13に示す非操作時の状態において、無線端末から操作信号が送信されると、当該操作信号は非常停止スイッチ2の受信部32により受信され、制御回路33に入力される。そして、制御回路33からサーボモータ6に電流が供給されて、ピニオン66が正方向に回転を開始する。すると、
図13Bに示すように、ラック67を介してスライダ61が後方(同図右方)に移動する。このとき、スライダ61の他端61Bと当接する軸部22の被係合部22Aも同様に図示右側に移動して、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離し、装置の運転が停止する。
【0073】
図13Bにおいては、非常停止ボタン21が軸部22とともに移動することで押し込まれた状態にあり、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作した場合と全く同じ状態におかれている。なお、非常停止ボタン21を非操作時の状態に戻す復帰動作の際には、まず、サーボモータ6を駆動してピニオン66を逆方向に回転させ、スライダ61を前方(
図13B左方)に移動させた後(
図13Aの状態参照)、作業者が非常停止ボタン21を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより行う。
【0074】
このような第5の変形例によれば、前記第1の実施例と同様に、無線端末による非常停止スイッチ2に対する遠隔操作が非常停止スイッチ2の受信部32で検知され、その遠隔操作に基づいて非常停止スイッチ2が作動する(すなわち、非常停止ボタン21が押し込まれる)ので、非常停止スイッチ2から離れた場所からでも非常停止ボタン21の操作を行うことができる。これにより、作業者が非常停止ボタン21を直接押すことができない状況下において、非常停止ボタン21の操作支援を行えるようになって、操作性を向上でき、安全性を向上できる。
【0075】
しかも、コイルばね25が常時(すなわち、非常停止スイッチ2の操作前後において)可動接点23を固定接点24から開離する側に付勢しているので、非常停止スイッチ2のとくに操作後において、非常停止スイッチ2が故障して可動接点23が固定接点24に対して接触状態に戻るような異常が万一発生した場合でも、コイルばね25の弾性反発力の作用により両接点23、24が開離方向に付勢されることで両接点23、24を開離状態に維持することができ、これにより、両接点23、24が接触することはなく、安全性を確保できる。このようにして、安全性を一層向上できる。
【0076】
さらに、コイルばね25による弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向に作用しているので、非常停止ボタン21の押し込み操作により可動接点23が固定接点24から強制的に開離される際、コイルばね25の弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向と同じ方向に作用し、その結果、より確実に可動接点23を固定接点24から開離させることができる。また、コイルばね25による弾性反発力が、軸部22に対するスライダ61の移動方向(すなわち、軸部22の引張方向)に作用しているので、サーボモータ6が非常停止ボタン21を作動させる際の負荷を軽減でき、その結果、サーボモータ6の出力を低減でき、コストを低減できる。
【0077】
また、非常停止ボタン21の操作後におけるコイルばね25の弾性反発力が、非常停止ボタン21の操作前におけるコイルばね25の弾性反発力よりも減少しているので、非常停止ボタン21の操作後は、コイルばね25が所有していた弾性エネルギーが低下しており、コイルばね25の接点開離後の弾性エネルギーは接点開離前の弾性エネルギーよりも小さくなっている。その結果、非常停止ボタン21の操作後に万一スイッチが破損した場合でも、可動接点23および固定接点24が再び接触状態に戻ることはなく、これにより、安全性を一層向上できる。
【0078】
〔第6の変形例〕
図14ないし
図14Bは、本発明の第6の変形例による非常停止スイッチを示しており、
図14は非常停止スイッチの非操作時の状態を、
図14Aは非常停止スイッチの手動操作時の状態を、
図14Bは非常停止スイッチの遠隔操作時の状態をそれぞれ示している。
【0079】
この第6の変形例では、スライダ61を移動させるのに、圧縮ばねおよびストッパからなる機構を採用している。
図14に示すように、ケース20内には、筒状のスライダ61が前後方向(同図左右方向)スライド可能に設けられている。スライダ61の一端61Aには、ストッパ68が当接している。ストッパ68は、スライダ61の一端61Aに当接してスライダ61をロックするロック位置(
図14、
図14A)と、スライダ61の一端61Aから退避してスライダ61のロック状態を解除するロック解除位置(
図14B)とをとり得るように移動可能に設けられている。スライダ61の一端61Aにおいてストッパ68の近傍の角部には、傾斜面61cが形成されており、ストッパ68の先端には、スライダ61の傾斜面61cに対応する傾斜面68aが形成されている。ケース20の外部には、ストッパ68を駆動するためのアクチュエータ69が設けられている。アクチュエータ69は、たとえば、モータにラック・アンド・ピニオンを組み合わせたり、シリンダにリンク機構を組み合わせたり、ソレノイド等を用いたりすることにより構成されている。アクチュエータ69は、リード線34を介して制御回路33に接続されている。
【0080】
スライダ61の他端61Bには、前後方向に配設された複数の圧縮コイルばね70の一端が圧接している。各圧縮コイルばね70の他端は、ケース20の内壁面に圧接している。これにより、ロック位置(
図14、
図14A)に配置されたスライダ61には、各圧縮コイルばね70の弾性反発力が作用している。スライダ61の他端61Bは、中央にボス部61Cを有している。ボス部61Cには、軸部22が挿通する小径の貫通孔61aが形成されており、軸部22の先端の被係合部22Aはスライダ61の内部空間61bに挿入されてボス部61Cと当接している。
【0081】
図14に示すように、非常停止スイッチ2の非操作時の状態においては、スライダ61の一端61Aには、ロック位置に配置されたストッパ68が当接しており、スライダ61の内部空間61bにおいて、軸部22の先端の被係合部22Aはスライダ61のボス部61Cに当接している。このとき、被係合部22Aとスライダ61の一端61Aとの間には、クリアランスSが形成されている。この状態から、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作(手動操作)すると、非常停止ボタン21とともに軸部22が押し込まれ、
図14に示す状態から
図14Aに示す状態に移行する。このとき、軸部22の先端の被係合部22Aは、スライダ61のボス部61Cとの間にギャップeを形成しており、スライダ61の一端61Aとの間のクリアランスはS’(<S)になっている。これにより、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離して、装置の運転が停止する。
【0082】
この場合、非常停止ボタン21の押し込み操作の際には、軸部22の先端の被係合部22Aはスライダ61の内部空間61bを移動するが、このとき、軸部22とスライダ61のボス部61Cの貫通孔61aとの摺動抵抗は小さく(しかも、圧縮コイルばね70の弾性反発力は作用しないので)、軸部22の移動はスムーズに(すなわち、ほとんど負荷なく)行われる。したがって、作業者による非常停止スイッチ2の押し込み操作の際には、従来の非常停止スイッチの操作と全く同様にして行うことが可能である。
【0083】
また、
図14に示す非操作時の状態において、無線端末から操作信号が送信されると、当該操作信号は非常停止スイッチ2の受信部32により受信され、制御回路33に入力される。そして、制御回路33からアクチュエータ69に電流が供給されて駆動されることにより、ストッパ68がロック位置からロック解除位置に移動する(
図14B参照)。すると、
図14Bに示すように、スライダ61が、圧縮コイルばね70の弾性反発力の作用により、後方(同図右方)に移動する。このとき、スライダ61のボス部61Cと当接する軸部22の先端の被係合部22Aも同様に図示右側に移動して、軸部22とともに移動する可動接点23が固定接点24から開離し、装置の運転が停止する。また、このとき、
図14Bに示すように、ストッパ68の傾斜面68aとスライダ61の傾斜面61cとは対向配置されている。
【0084】
図14Bにおいては、非常停止ボタン21が軸部22とともに移動することで押し込まれた状態にあり、作業者が非常停止ボタン21を押し込み操作した場合と全く同じ状態におかれている。なお、非常停止ボタン21を非操作時の状態に戻す復帰動作の際には、アクチュエータ69を駆動してストッパ68をロック解除位置からロック位置に移動させる。このとき、ストッパ68は、その傾斜面68aがスライダ61の傾斜面61cに圧接しつつ移動するので、ストッパ68の移動につれてスライダ61が徐々に前方(
図14B左方)に移動する。そして、ストッパ68がロック位置に移動した後(
図14Aの状態参照)、作業者が非常停止ボタン21を掴んで手前側に引っ張る(すなわち、手動で操作する)ことにより、非常停止ボタン21を元の位置に復帰させる。
【0085】
このような第6の変形例によれば、前記第1の実施例と同様に、無線端末による非常停止スイッチ2に対する遠隔操作が非常停止スイッチ2の受信部32で検知され、その遠隔操作に基づいて非常停止スイッチ2が作動する(すなわち、非常停止ボタン21が押し込まれる)ので、非常停止スイッチ2から離れた場所からでも非常停止ボタン21の操作を行うことができる。これにより、作業者が非常停止ボタン21を直接押すことができない状況下において、非常停止ボタン21の操作支援を行えるようになって、操作性を向上でき、安全性を向上できる。
【0086】
しかも、コイルばね25が常時(すなわち、非常停止スイッチ2の操作前後において)可動接点23を固定接点24から開離する側に付勢しているので、非常停止スイッチ2のとくに操作後において、非常停止スイッチ2が故障して可動接点23が固定接点24に対して接触状態に戻るような異常が万一発生した場合でも、コイルばね25の弾性反発力の作用により両接点23、24が開離方向に付勢されることで両接点23、24を開離状態に維持することができ、これにより、両接点23、24が接触することはなく、安全性を確保できる。このようにして、安全性を一層向上できる。
【0087】
さらに、コイルばね25による弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向に作用しているので、非常停止ボタン21の押し込み操作により可動接点23が固定接点24から強制的に開離される際、コイルばね25の弾性反発力が非常停止ボタン21の押し込み方向と同じ方向に作用し、その結果、より確実に可動接点23を固定接点24から開離させることができる。また、コイルばね25による弾性反発力が、軸部22に対するスライダ61の移動方向(すなわち、軸部22の引張方向)に作用しているので、各圧縮コイルばね70が非常停止ボタン21を作動させる際に軸部22に対する引張力を補助でき、これにより、固定接点24および可動接点23を確実に開離状態に移行させることができる。
【0088】
また、非常停止ボタン21の操作後におけるコイルばね25の弾性反発力が、非常停止ボタン21の操作前におけるコイルばね25の弾性反発力よりも減少しているので、非常停止ボタン21の操作後は、コイルばね25が所有していた弾性エネルギーが低下しており、コイルばね25の接点開離後の弾性エネルギーは接点開離前の弾性エネルギーよりも小さくなっている。その結果、非常停止ボタン21の操作後に万一スイッチが破損した場合でも、可動接点23および固定接点24が再び接触状態に戻ることはなく、これにより、安全性を一層向上できる。
【0089】
〔第7の変形例〕
前実施例では、操作スイッチユニットとして非常停止スイッチを例にとって説明したが、本発明の適用はこれらに限定されるものではなく、一旦停止等のその他の停止スイッチでもよい。また、速度切り替えによる速度制御等を行うセレクタスイッチやレバースイッチ、カムスイッチ、フットスイッチ等の離散値を扱うスイッチでもよい。したがって、無線端末4(41、42)の送信部411、412から送信される信号は、停止信号に限らず、その他の操作信号全般を含む。なお、これらのスイッチ類においては、操作スイッチの作動のみならず復帰に関しても、ソレノイド等を用いて無線で遠隔操作するようにしてもよい。
【0090】
〔第8の変形例〕
前記実施例では、遠隔操作部として無線端末4を、検知部として受信部32をそれぞれ例にとって説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。遠隔操作部および検知部は、以下のような組合せでもよい。すなわち、光信号と光電センサとの組合せ、音声信号とマイクとの組合せ、映像信号とカメラとの組合せ、ワイヤ等の線状/棒状の長尺部材を操作するレバー等の操作器具と長尺部材の先端の動きに追随する可動部材との組合せ、圧搾エアを噴出するノズルとノズルからの圧搾エアを受ける受圧部材、BB弾等の弾丸を発射するガンとガンから発射された弾丸を受ける的部材等。
【0091】
〔その他の変形例〕
上述した各実施例および各変形例はあらゆる点で本発明の単なる例示としてのみみなされるべきものであって、限定的なものではない。本発明が関連する分野の当業者は、本明細書中に明示の記載はなくても、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施例を構築し得る。
【0092】
〔他の適用例〕
前記各実施例および各変形例では、本発明による非常停止スイッチが適用される装置として協調ロボットを例にとって説明したが、本発明は、協調ロボット以外の産業用ロボットにも適用可能である。また、ロボットとしては、垂直多関節ロボットに限定されるものではなく、スカラロボットやパラレルリンクロボット等のその他のロボットでもよく、無人搬送車(AGV:automated guided vehicle)でもよい。さらに、本発明の適用は、FA(ファクトリーオートメーション)の分野(製造業)に限らず、たとえばパワーショベル等の特殊車両を含む産業車両や工事車両の分野(建設・土木業)でもよく、飲食業や食品業、医療、流通の分野でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、操作スイッチの操作支援を行うことができる操作支援機能付き操作スイッチユニットおよび操作支援システムに有用である。
【符号の説明】
【0094】
1: 操作支援システム
2: 非常停止スイッチ(操作スイッチユニット)
20: ケース(筐体)
21: 非常停止ボタン(操作スイッチ)
21a: 押圧面(手動操作面)
22: 軸部(操作軸)
23: 可動接点(第1の接点)
24: 固定接点(第2の接点)
25: コイルばね(開離付勢手段)
3: 電磁ソレノイド(作動部)
32: 受信部(検知部)
4: 無線端末(遠隔操作部)
P: 作業者(操作者)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】
【文献】特開2001-35302号公報(
図1参照)