(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】誘電特性測定治具、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/26 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
G01R27/26 H
(21)【出願番号】P 2017109406
(22)【出願日】2017-06-01
【審査請求日】2020-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】512307000
【氏名又は名称】住ベリサーチ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】馬路 哲
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-177234(JP,A)
【文献】特開2011-206784(JP,A)
【文献】特開2016-063145(JP,A)
【文献】特開2007-335757(JP,A)
【文献】特開2010-168232(JP,A)
【文献】特開2010-165807(JP,A)
【文献】特開2005-134185(JP,A)
【文献】特開2010-223841(JP,A)
【文献】特開2004-333311(JP,A)
【文献】特開平04-102072(JP,A)
【文献】国際公開第98/025150(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板共振器法により試料の誘電特性を測定するために用いられる測定治具であって、
互いに対向し前記試料を挟持し得る第1の導体および第2の導体と、
前記試料中に設けられる第3の導体と、
前記第1の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第1の固定板と、
前記第2の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第2の固定板と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の範囲内において前記第1の導体と前記第2の導体とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段と、
を有し、
前記導体加圧手段は、
前記第1の導体の外側において、前記第1の固定板と前記第2の固定板とを連結する連結手段と、
前記第1の導体の内側における、前記第1の固定板の前記第1の導体側の面と、前記第2の固定板の前記第2の導体側の面と、の離間距離に比べて、前記第1の導体の外側における、前記第1の固定板の前記第1の導体側の面と、前記第2の固定板の前記第2の導体側の面と、の離間距離が大きくなっている非平面構造と、
を含み、
前記連結手段によって前記第1の固定板と前記第2の固定板とを互いに近づけることにより、前記荷重を加えることを特徴とする誘電特性測定治具。
【請求項2】
円板共振器法により試料の誘電特性を測定するために用いられる測定治具であって、
互いに対向し前記試料を挟持し得る第1の導体および第2の導体と、
前記試料中に設けられ
、平面視形状が円形で、かつ、前記第1の導体および前記第2の導体よりも小さい第3の導体と、
前記第1の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第1の固定板と、
前記第2の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第2の固定板と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の範囲内において前記第1の導体と前記第2の導体とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の外側において、前記第1の固定板と前記第2の固定板とを連結する連結手段と、
を有し、
前記導体加圧手段は、前記第1の固定板から前記第1の導体側に突出することにより、前記第1の導体を押圧する
3個以上の第1部品、を備え
、
前記第1部品は、前記第3の導体の中心と同心の円周上に並んでおり、
前記導体加圧手段が前記荷重を加える位置は、前記第3の導体の外縁よりも内側であることを特徴とする誘電特性測定治具。
【請求項3】
前記第1部品は、前記第1の固定板を貫通し前記第1の導体に接触するとともに、前記第1の固定板に螺合する第1のボルトである請求項2に記載の誘電特性測定治具。
【請求項4】
前記導体加圧手段は、前記第2の固定板から前記第2の導体側に突出することにより、前記第2の導体を押圧する第2部品、を備える請求項2
または3に記載の誘電特性測定治具。
【請求項5】
前記連結手段は、前記第3の導体の中心と同心の円周上の位置で、前記第1の固定板と前記第2の固定板とを連結する請求項2ないし
4のいずれか1項に記載の誘電特性測定治具。
【請求項6】
円板共振器法により試料の誘電特性を測定するために用いられる測定治具であって、
互いに対向し前記試料を挟持し得る第1の導体および第2の導体と、
前記試料中に設けられ
、平面視形状が円形で、かつ、前記第1の導体および前記第2の導体よりも小さい第3の導体と、
前記第1の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第1の固定板と、
前記第2の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第2の固定板と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の範囲内において前記第1の導体と前記第2の導体とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段と、
を有し、
前記導体加圧手段は、
円筒形状をなす第1の当接部を備え、前記第1の当接部が、前記第1の固定板の前記第1の導体とは反対側の面のうち、前記第1の導体の平面視において前記第3の導体の中心が内径側に位置する円環状の領域を押圧することにより、前記荷重を加える
よう構成されており、
前記導体加圧手段が前記荷重を加える位置は、前記第3の導体の外縁よりも内側であることを特徴とする誘電特性測定治具。
【請求項7】
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の誘電特性測定治具を備えることを特徴とする誘電特性測定装置。
【請求項8】
請求項1ないし
6のいずれか1項に記載の誘電特性測定治具を用いて前記試料の誘電特性を測定することを特徴とする誘電特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電特性測定治具、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘電体の比誘電率や誘電正接といった誘電特性を測定する方法としては、例えば、スプリットポスト誘電体(SPDR)共振器法、空胴共振器法、ファブリペロー共振器法、円板共振器法等が知られている。
【0003】
特許文献1には、SPDR共振器法に用いられる測定治具として、SPDR共振器を保持する支持部と、測定試料の少なくとも2か所を保持する保持ユニットと、保持ユニットに保持された測定試料の位置を調整する調整手段と、を備える測定治具が開示されている。この測定治具によれば、フィルム状またはシート状の測定試料に適用した場合でも、再現性の高い測定が可能になる。
【0004】
一方、このSPDR共振器法は、一般に1GHz~20GHz程度のマイクロ波帯における誘電特性の測定に用いられるが、近年、マイクロ波帯よりも高周波の領域であるミリ波帯の電波を活用する取り組みが進んでいる。このため、ミリ波帯における誘電特性の測定においても、再現性の高い測定を可能にする測定治具の実現が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ミリ波帯における誘電特性の測定には、例えば円板共振器法が用いられる。
しかしながら、従来の円板共振器法では、測定試料の形状によって測定誤差が大きくなる場合があるという問題が知られている。このため、かかる問題を解消し、精度の高い測定を可能にすることが求められている。
【0007】
本発明の目的は、誘電特性を高精度に測定し得る誘電特性測定治具、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(8)の本発明により達成される。
(1) 円板共振器法により試料の誘電特性を測定するために用いられる測定治具であって、
互いに対向し前記試料を挟持し得る第1の導体および第2の導体と、
前記試料中に設けられる第3の導体と、
前記第1の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第1の固定板と、
前記第2の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第2の固定板と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の範囲内において前記第1の導体と前記第2の導体とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段と、
を有し、
前記導体加圧手段は、
前記第1の導体の外側において、前記第1の固定板と前記第2の固定板とを連結する連結手段と、
前記第1の導体の内側における、前記第1の固定板の前記第1の導体側の面と、前記第2の固定板の前記第2の導体側の面と、の離間距離に比べて、前記第1の導体の外側における、前記第1の固定板の前記第1の導体側の面と、前記第2の固定板の前記第2の導体側の面と、の離間距離が大きくなっている非平面構造と、
を含み、
前記連結手段によって前記第1の固定板と前記第2の固定板とを互いに近づけることにより、前記荷重を加えることを特徴とする誘電特性測定治具。
(2) 円板共振器法により試料の誘電特性を測定するために用いられる測定治具であって、
互いに対向し前記試料を挟持し得る第1の導体および第2の導体と、
前記試料中に設けられ、平面視形状が円形で、かつ、前記第1の導体および前記第2の導体よりも小さい第3の導体と、
前記第1の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第1の固定板と、
前記第2の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第2の固定板と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の範囲内において前記第1の導体と前記第2の導体とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の外側において、前記第1の固定板と前記第2の固定板とを連結する連結手段と、
を有し、
前記導体加圧手段は、前記第1の固定板から前記第1の導体側に突出することにより、前記第1の導体を押圧する3個以上の第1部品、を備え、
前記第1部品は、前記第3の導体の中心と同心の円周上に並んでおり、
前記導体加圧手段が前記荷重を加える位置は、前記第3の導体の外縁よりも内側であることを特徴とする誘電特性測定治具。
【0009】
(3) 前記第1部品は、前記第1の固定板を貫通し前記第1の導体に接触するとともに、前記第1の固定板に螺合する第1のボルトである上記(2)に記載の誘電特性測定治具。
【0012】
(4) 前記導体加圧手段は、前記第2の固定板から前記第2の導体側に突出することにより、前記第2の導体を押圧する第2部品、を備える上記(2)または(3)に記載の誘電特性測定治具。
(5) 前記連結手段は、前記第3の導体の中心と同心の円周上の位置で、前記第1の固定板と前記第2の固定板とを連結する上記(2)ないし(4)のいずれかに記載の誘電特性測定治具。
【0013】
(6) 円板共振器法により試料の誘電特性を測定するために用いられる測定治具であって、
互いに対向し前記試料を挟持し得る第1の導体および第2の導体と、
前記試料中に設けられ、平面視形状が円形で、かつ、前記第1の導体および前記第2の導体よりも小さい第3の導体と、
前記第1の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第1の固定板と、
前記第2の導体の前記試料側とは反対側に設けられる第2の固定板と、
前記第1の導体の平面視における前記第1の導体の範囲内において前記第1の導体と前記第2の導体とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段と、
を有し、
前記導体加圧手段は、円筒形状をなす第1の当接部を備え、前記第1の当接部が、前記第1の固定板の前記第1の導体とは反対側の面のうち、前記第1の導体の平面視において前記第3の導体の中心が内径側に位置する円環状の領域を押圧することにより、前記荷重を加えるよう構成されており、
前記導体加圧手段が前記荷重を加える位置は、前記第3の導体の外縁よりも内側であることを特徴とする誘電特性測定治具。
【0014】
(7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の誘電特性測定治具を備えることを特徴とする誘電特性測定装置。
【0015】
(8) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の誘電特性測定治具を用いて前記試料の誘電特性を測定することを特徴とする誘電特性測定方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘電特性を高精度に測定することができる。
また、本発明によれば、誘電特性を高精度に測定し得る誘電特性測定治具および誘電特性測定装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の誘電特性測定治具の第1実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す誘電特性測定治具の平面図である。
【
図3】
図2に示す誘電特性測定治具の変形例である。
【
図4】
図2に示す誘電特性測定治具の変形例である。
【
図5】本発明の誘電特性測定治具の第2実施形態を示す断面図である。
【
図6】
図5に示す誘電特性測定治具の変形例を示す平面図である。
【
図7】本発明の誘電特性測定治具の第3実施形態を示す断面図である。
【
図8】
図7に示す誘電特性測定治具の変形例を示す平面図である。
【
図9】本発明の誘電特性測定治具の第4実施形態を示す断面図であって、導体に荷重を加えていない状態を表す図である。
【
図10】
図9に示す誘電特性測定治具のうち導体加圧手段を示す図である。
【
図11】本発明の誘電特性測定治具の第4実施形態を示す断面図であって、導体に荷重を加えている状態を表す図である。
【
図12】
図9に示す誘電特性測定治具の変形例である。
【
図13】
図9に示す誘電特性測定治具の変形例である。
【
図14】本発明の誘電特性測定装置の実施形態を示す図である。
【
図15】従来の誘電特性測定治具の一例を示す断面図であって、導体に荷重を加えていない状態を表す図である。
【
図16】従来の誘電特性測定治具の一例を示す断面図であって、導体に荷重を加えている状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の誘電特性測定治具、誘電特性測定装置および誘電特性測定方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[誘電特性測定治具]
本発明の誘電特性測定治具は、円板共振器法により試料の誘電特性を測定する際に用いられる治具である。なお、この誘電特性測定治具は、特にマイクロ波帯やミリ波帯の周波数で平板試料の面に対する電界の向きが垂直である場合の誘電特性の測定において好適に用いられる。
【0020】
このような誘電特性測定治具は、従来、測定対象試料の形状によっては測定誤差が大きくなる場合があるという課題を抱えていた。具体的には、測定対象試料が薄板状をなしている場合、比誘電率の測定値が真値に比べて小さくなってしまう傾向がある。
【0021】
図15は、従来の誘電特性測定治具の一例を示す断面図であって、導体に荷重を加えていない状態を表す図である。また、
図16は、従来の誘電特性測定治具の一例を示す断面図であって、導体に荷重を加えている状態を表す図である。
【0022】
図15に示すように、従来の誘電特性測定治具9は、互いに対向し試料101、102を挟持する上導体921および下導体922と、試料101と試料102との間に設けられる中導体923と、上導体921の上側に設けられる上固定板931と、下導体922の下側に設けられる下固定板932と、を有している。
【0023】
また、
図15に示す誘電特性測定治具9は、上固定板931と下固定板932とを互いに締結する締結手段94を備えている。この締結手段94は、上固定板931および下固定板932に連続して挿通された棒ねじ941と、棒ねじ941の両端部にそれぞれ螺合したナット942と、を備えている。棒ねじ941の両端部に設けたナット942同士を近づけるように締めることで、試料101、102に対して、前述した上導体921、下導体922および中導体923を固定することができる。
【0024】
また、
図15に示す誘電特性測定治具9は、上固定板931および上導体921を貫通するように設けられ試料101、102を励振する送信アンテナ951、および、下固定板932および下導体922を貫通するように設けられ試料101、102を透過した電磁波を受信する受信アンテナ952を備えている。
【0025】
送信アンテナ951には、図示しない同軸ケーブルの一端が接続されている。一方、この同軸ケーブルの他端は、図示しないネットワークアナライザー等の電磁波発生手段の出力ポートに接続されている。
【0026】
また、受信アンテナ952にも、図示しない同軸ケーブルの一端が接続されている。一方、この同軸ケーブルの他端は、図示しないネットワークアナライザー等の電磁波検出手段の入力ポートに接続されている。
【0027】
電磁波発生手段から送信アンテナ951に印加された電磁波は、試料101、102を透過し、受信アンテナ952から取り出されて電磁波検出手段によって検出される。このようにして検出された電磁波を有限要素法やモード整合法等の解析手法によって解析することにより、試料101、102の比誘電率や誘電正接等の誘電特性を求めることができる。
【0028】
ここで、試料101、102の誘電特性を測定する際には、前述したように、締結手段94を用いて試料101、102を上導体921と下導体922との間に挟み込む。また、試料101と試料102との間には、中導体923が介挿され、試料内電極として作用する。
【0029】
ところが、本発明者が鋭意検討した結果、従来の誘電特性測定治具9では、締結手段94によって上固定板931と下固定板932との間を締結すると、上固定板931および下固定板932の意図しない歪みを招くことが明らかとなった。
【0030】
具体的には、
図16に示すように、上固定板931のうち、締結手段94によって締結されている部分が下方へ曲がるように歪む。一方、下固定板932のうち、締結手段94によって締結されている部分は上方へ曲がるように歪む。
【0031】
また、このような上固定板931の歪みにつられて、上導体921は上に凸の形状に湾曲する。一方、下固定板932の歪みにつられて、下導体922は下に凸の形状に湾曲する。このような湾曲が生じると、上導体921の中央部が盛り上がって、上導体921と試料101との間に、
図16に示すような隙間991が生じる。また、下導体922の中央部が下がって、下導体922と試料102との間に、
図16に示すような隙間992が生じる。
【0032】
このような隙間991、992は、試料101、102に対する電界の印加経路を阻害することになるため、求められる試料101、102の誘電特性が真値から乖離することとなる。すなわち、測定される誘電特性の精度が低下することとなる。
【0033】
かかる課題に鑑み、本発明者は、さらに検討を重ね、上導体921と下導体922とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段を追加することによって課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0034】
<第1実施形態>
図1は、本発明の誘電特性測定治具の第1実施形態を示す断面図である。また、
図2は、
図1に示す誘電特性測定治具の平面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図1中の上方を「上」、下方を「下」という。また、
図1は、
図2に示すA-A線断面図に相当する。また、
図2では、透視される上導体21および中導体23の外縁を破線で示している。
【0035】
図1に示す誘電特性測定治具1は、互いに対向する電極対であって試料101、102を挟持する上導体21(第1の導体)および下導体22(第2の導体)と、試料101と試料102との間(試料中)に設けられる中導体23(第3の導体)と、上導体21の上側(試料101側とは反対側)に設けられる上固定板31(第1の固定板)と、下導体22の下側(試料102側とは反対側)に設けられる下固定板32(第2の固定板)と、を有している。
【0036】
このうち、上導体21、下導体22および中導体23は、それぞれ板状または箔状をなしている。なお、以下の説明では、上導体21の主面の法線上からこの主面を見る視界のことを単に「平面視」という。
【0037】
上固定板31および下固定板32の平面視形状は、特に限定されず、円形や多角形等であってもよいが、本実施形態では四角形である。また、上導体21および下導体22の平面視形状も、特に限定されず、円形や多角形等であってもよいが、本実施形態では四角形である。
【0038】
また、上導体21は上固定板31よりも小さく、下導体22は下固定板32よりも小さくなっている。このため、平面視において、上固定板31は上導体21より外側にはみ出し、下固定板32は下導体22より外側にはみ出すこととなる。その結果、このはみ出した部分を、後述する締結手段4によって締結することにより、上固定板31と下固定板32との間に、上導体21、下導体22および中導体23を挟み込むとともに、試料101、102を挟持することができる。
【0039】
一方、中導体23の平面視形状は、特に限定されないが、本実施形態では円形である。
また、中導体23は上導体21や下導体22よりも小さくなっている。そして、後述する送信アンテナ51と受信アンテナ52とを結ぶ線上に中導体23の中心が一致するように配置されている。
【0040】
また、
図1に示す誘電特性測定治具1は、上固定板31と下固定板32とを互いに締結する締結手段4を備えている。この締結手段4は、上固定板31および下固定板32に連続して挿通された棒ねじ41と、棒ねじ41の両端部にそれぞれ螺合したナット42と、を備えている。棒ねじ41の両端部に設けたナット42同士を近づけるように締めることで、上固定板31と下固定板32との距離が縮まるため、試料101、102に対して、前述した上導体21、下導体22および中導体23を固定することができる。
【0041】
なお、上固定板31は貫通孔311を備え、下固定板32は貫通孔321を備えている。棒ねじ41は、これらの貫通孔311と貫通孔321とに連続して挿通されることにより、ナット42を伴って上固定板31と下固定板32との距離を規制することができる。
【0042】
また、締結手段4の数は、特に限定されないが、2個以上であるのが好ましく、3個以上16個以下であるのがより好ましい。このような複数の箇所において締結することにより、締結部位が均等になるため、上固定板31と下固定板32との距離をより均等に規制することができる。
【0043】
また、締結手段4の配置は、平面視において、送信アンテナ51を中心にしたときの同一円周上の位置であるのが好ましく、送信アンテナ51を中心にした回転対称の関係を満たす位置であるのがより好ましい。これにより、締結部位がより均等になるため、上固定板31と下固定板32との距離をさらに均等に規制することができる。
【0044】
また、
図1に示す誘電特性測定治具1は、上固定板31および上導体21をそれぞれ貫通するように設けられた送信アンテナ51、および、下固定板32および下導体22をそれぞれ貫通するように設けられた受信アンテナ52を備えている。
【0045】
すなわち、
図1に示す上固定板31は、送信アンテナ51を貫通するアンテナ挿入孔312を備えており、このアンテナ挿入孔312に送信アンテナ51が挿入されている。また、
図1に示す上導体21も、送信アンテナ51を貫通するアンテナ挿入孔211を備えており、このアンテナ挿入孔211に送信アンテナ51が挿入されている。
【0046】
一方、
図1に示す下固定板32は、受信アンテナ52を貫通するアンテナ挿入孔322を備えており、このアンテナ挿入孔322に受信アンテナ52が挿入されている。また、
図1に示す下導体22も、受信アンテナ52を貫通するアンテナ挿入孔221を備えており、このアンテナ挿入孔221に受信アンテナ52が挿入されている。
【0047】
送信アンテナ51は、上導体21を介して試料101、102を励振させ、受信アンテナ52は、下導体22を介して試料101、102を透過した電磁波を受信する。
【0048】
なお、送信アンテナ51の先端は、試料101の上面に接していてもよいし、上面から離れていてもよい。
【0049】
同様に、受信アンテナ52の先端は、試料102の下面に接していてもよいし、下面から離れていてもよい。
【0050】
送信アンテナ51には、図示しない同軸ケーブルの一端が接続されている。一方、この同軸ケーブルの他端は、図示しない電磁波発生手段(例えばネットワークアナライザー等)に接続されている。
【0051】
また、受信アンテナ52にも、図示しない同軸ケーブルの一端が接続されている。一方、この同軸ケーブルの他端は、図示しない電磁波検出手段(例えばネットワークアナライザー等)に接続されている。
【0052】
電磁波発生手段から上導体21に印加された電磁波は、試料101、102を透過し、受信アンテナ52から取り出されて電磁波検出手段によって検出される。このようにして検出された電磁波を有限要素法やモード整合法等の解析手法によって解析することにより、試料101、102の比誘電率や誘電正接等の誘電特性を求めることができる。
【0053】
ここで、
図1に示す誘電特性測定治具1は、上固定板31を貫通する
第1部品である上ボルト61(第1のボルト)と、下固定板32を貫通する
第2部品である下ボルト62(第2のボルト)と、を備えている。上ボルト61は、上固定板31を貫通する貫通孔に対して螺合し、下ボルト62は、下固定板32を貫通する貫通孔に対して螺合している。上ボルト61を上固定板31から下方へ突出させることにより、上導体21を下方に向かって押圧することができる。同様に、下ボルト62を下固定板32から上方へ突出させることにより、下導体22を上方に向かって押圧することができる。このような上ボルト61および下ボルト62は、それらを介して上導体21と下導体22とを互いに近づける方向に荷重を加える導体加圧手段6となる。
【0054】
すなわち、
図1に示す誘電特性測定治具1は、上ボルト61および下ボルト62を備える導体加圧手段6を有している。このような誘電特性測定治具1によれば、上導体21および下導体22の歪みを抑制することができる。その結果、隙間が生じるのを抑制することができ、前述した従来の誘電特性測定治具9が抱える課題を解決することができる。すなわち、誘電特性測定治具1によれば、試料101、102の誘電特性を高精度に測定することができる。また、上ボルト61および下ボルト62によって荷重を加えるようにすれば、簡単な手順で上導体21および下導体22に荷重を加えることができるので、測定作業の効率化を図ることができる。
【0055】
なお、これらの上ボルト61および下ボルト62は、平面視における上導体21の範囲内(内側)に設けられている。換言すれば、上ボルト61の上導体21に対する作用点および下ボルト62の下導体22に対する作用点は、それぞれ平面視における上導体21の範囲内に位置している。このため、従来の誘電特性測定治具9において隙間991、992が生じ易い部分に対し、導体加圧手段6によって的確に荷重を加えることができる。その結果、この部分において上導体21および下導体22の歪みを抑制することができ、ひいては隙間991、992が生じるのを確実に抑制することができる。
【0056】
なお、「平面視における上導体21の範囲内」とは、上ボルト61の先端面の少なくとも一部または下ボルト62の先端面の少なくとも一部が、平面視において上導体21の外縁の内側にある状態を指す。
【0057】
また、導体加圧手段6によって荷重を加える位置は、平面視における中導体23の範囲内(外縁の内側)であるのが好ましい。これにより、上述した効果をより確実に得ることができる。
【0058】
また、上ボルト61の位置と下ボルト62の位置は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、荷重の加え方が均等になるため、誘電特性をより精度よく測定することができる。なお、位置が同じとは、平面視において、上ボルト61の先端面の位置と下ボルト62の先端面の位置とが重なっている状態を指す。
【0059】
上ボルト61および下ボルト62の数は、特に限定されないが、それぞれ2個以上であるのが好ましく、3個以上16個以下であるのがより好ましい。このような複数の箇所において荷重を加えることにより、荷重の加え方がより均等になるため、誘電特性をさらに精度よく測定することができる。
【0060】
また、上ボルト61の位置は、特に限定されず、いかなる位置であってもよいが、一例として
図2に示すように送信アンテナ51を中心にした円周上にあることが好ましく、隣り合う上ボルト61同士の距離が同じになるように設定されるのがより好ましい。例えば
図2の場合、8個の上ボルト61が送信アンテナ51を中心にした円周上において等間隔に並んでいる。このように配置することによって、荷重の加え方がさらに均等になる。
【0061】
同様に、下ボルト62の位置は、特に限定されず、いかなる位置であってもよいが、一例として上ボルト61の位置と同様に設定される。
【0062】
なお、上述した「円周上」や「等間隔」という用語の概念は、それぞれ、誘電特性測定治具1の製造誤差程度の位置ずれを許容する概念である。
【0063】
また、
図1、2に示す上ボルト61および下ボルト62は、いわゆる六角ボルトであるが、ボルトの種類はこれに限定されず、いかなるボルトであってもよい。
【0064】
さらに、これらのボルトは、同様の機能を有する他の部品、例えばクランプ等のロック機構で代替されてもよい。また、その場合、上ボルト61および下ボルト62のいずれか一方のみが代替されてもよく、双方が代替されてもよい。
また、上ボルト61および下ボルト62は、いずれか一方が省略されていてもよい。
【0065】
なお、上固定板31および下固定板32の構成材料は、それぞれ十分な機械的強度を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、耐熱鋼、工具鋼、機械構造用合金鋼のようなFe系合金、真鍮のようなCu系合金、アルミニウム合金等の金属材料、アルミナ、ジルコニアのようなセラミックス材料等が挙げられる。また、上固定板31の構成材料と下固定板32の構成材料は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。
【0066】
また、上導体21、下導体22および中導体23の構成材料は、それぞれ十分な導電性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、銅単体または銅合金、アルミニウム単体またはアルミニウム合金、銀合金、ニッケル合金等が挙げられる。なお、銅単体は、特に誘電正接が小さい試料101、102の測定に適している。また、アルミニウム合金やニッケル合金は、高温下や加湿下における試料101、102の測定に適している。この他、絶縁性の基材の表面に前述した導電性を有する材料の被膜(めっき膜等)を形成した複合材料を用いるようにしてもよい。
【0067】
また、上導体21の構成材料、下導体22の構成材料および中導体23の構成材料は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。
【0068】
また、上ボルト61および下ボルト62の構成材料も、それぞれ十分な機械的強度を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、上固定板31や下固定板32の構成材料として挙げた材料から適宜選択される。
【0069】
また、前述した締結手段4は必要に応じて設けられればよく、例えば上固定板31に十分な質量があり、その自重によって上導体21等を固定することができる場合や、ボルト以外の手段で固定することができる場合等には省略されてもよい。また、締結手段4も、前述した棒ねじ41とナット42とを用いた手段に限定されず、例えばクランプ等のロック機構、ゴムやばね等の弾性材料を用いた緊縛手段等で代替されてもよい。
【0070】
試料101、102の形状は、特に限定されないが、例えば平板状とされる。
試料101、102を構成する材料も、特に限定されないが、例えば樹脂材料、セラミックス材料、ガラス材料、またはこれらを含む複合材料等が挙げられる。
【0071】
また、
図3は、
図2に示す誘電特性測定治具の変形例である。なお、
図3では、透視される上導体21および中導体23の外縁を破線で示している。
【0072】
図3に示す誘電特性測定治具1は、上ボルト61の数が異なる以外、
図2に示す誘電特性測定治具1と同様である。
【0073】
すなわち、
図3に示す上ボルト61は、4個の上ボルト61が送信アンテナ51を中心にした円周上において等間隔に並んでいる。また、
図3に示す各上ボルト61は、最も近い位置にある棒ねじ41との離間距離と、その棒ねじ41に隣り合う棒ねじ41との離間距離と、が同じになる位置に設けられている。換言すれば、
図3に示す各上ボルト61は、隣り合う2つの棒ねじ41、41の垂直二等分線上に位置している。このような位置関係が満たされることにより、締結手段4によって荷重が付加される位置と、導体加圧手段6によって荷重が付加される位置と、のバランスが最適化される。すなわち、締結手段4による締結によって多少は隙間991、992の高さ(厚さ)を低減することができる場合もあるため、その作用と、導体加圧手段6による作用と、のバランスが最適化される。その結果、荷重の加え方がより均等になり、誘電特性をさらに精度よく測定することができる。
なお、下ボルト62についても、上ボルト61と同様に配置されている。
【0074】
また、上述した「円周上」、「等間隔」および「垂直二等分線上」という用語の概念は、それぞれ、誘電特性測定治具1の製造誤差程度の位置ずれを許容する概念である。
【0075】
また、
図4も、
図2に示す誘電特性測定治具の変形例である。なお、
図4では、透視される上導体21および中導体23の外縁を破線で示している。
【0076】
図4に示す誘電特性測定治具1は、上ボルト61の数および配置が異なる以外、
図2に示す誘電特性測定治具1と同様である。
【0077】
すなわち、
図4に示す誘電特性測定治具1では、送信アンテナ51に近い位置ほど配置密度が高くなるように上ボルト61が設けられている。より具体的には、送信アンテナ51に近い位置には、送信アンテナ51を中心とする円周上において等間隔に配置された6個の上ボルト61が設けられている。また、これら6個の上ボルト61よりも外側の位置には、送信アンテナ51を中心とする円周上において等間隔に配置された3個の上ボルト61が設けられている。その結果、
図4には、全部で9個の上ボルト61が設けられている。
【0078】
このような上ボルト61の配置パターンは、送信アンテナ51に近づくほど上ボルト61の配置密度が高いパターンであるといえる。このような配置パターンを採用することにより、送信アンテナ51に近いほど大きな荷重を加えることができる。これにより、荷重の加え方がより均等になり、誘電特性をさらに精度よく測定することができる。
【0079】
なお、下ボルト62についても、上ボルト61と同様に配置されていてもよく、異なった配置であってもよい。
【0080】
また、上述した「円周上」および「等間隔」という用語の概念は、それぞれ、誘電特性測定治具1の製造誤差程度の位置ずれを許容する概念である。
【0081】
<第2実施形態>
次に、本発明の誘電特性測定治具の第2実施形態について説明する。
【0082】
図5は、本発明の誘電特性測定治具の第2実施形態を示す断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図5中の上方を「上」、下方を「下」という。
【0083】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図5において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0084】
図5に示す誘電特性測定治具1は、導体加圧手段6の構成が異なる以外、
図1に示す誘電特性測定治具1と同様である。
【0085】
すなわち、
図5に示す導体加圧手段6は、上固定板31の上面に当接する上加圧体63(第1の当接部)と、下固定板32の下面に当接する下加圧体64(第2の当接部)と、を備えている。換言すれば、
図5に示す上加圧体63および下加圧体64は、それぞれ円筒形状をなしており、
図1に示す上ボルト61および下ボルト62を代替している。
【0086】
上加圧体63は、上固定板31の上面(上導体21側とは反対側の面)のうち、上導体21の内側に対応する部分に荷重を加える機能を有する。具体的には、上加圧体63の上面には降下部71が当接しており、この降下部71が図示しない荷重発生機構によって下方に移動させられることにより(
図5の矢印参照)、上加圧体63が押し下げられる。これにより、上加圧体63を介して上固定板31に荷重を加えることができる。
【0087】
一方、下加圧体64は、下固定板32の下面(下導体22側とは反対側の面)のうち、上導体21の内側に対応する部分に荷重を加える機能を有する。具体的には、下加圧体64の下面にはステージ72が当接しており、このステージ72は固定されている。このため、上述したようにして降下部71が下降すると、降下部71とステージ72との距離が縮まり、上加圧体63および下加圧体64を介して、上導体21と下導体22とを互いに近づける方向に荷重を加えることができる。
【0088】
すなわち、上述した降下部71とステージ72とによって上導体21と下導体22とを互いに近づける方向に荷重を加える固定板押圧手段が構成されている。
【0089】
図5に示す上加圧体63(第1の当接部)は、前述したように円筒形状をなしており、円筒の内側に送信アンテナ51が挿通されている。これにより、送信アンテナ51に干渉することなく、上固定板31の上面に対して均等に荷重を加えることができる。
【0090】
以上のように、本実施形態は、上固定板31の上面(上導体21側とは反対側の面)のうち、上導体21の内側に対応する部分を少なくとも押圧することにより、上導体21と下導体22とを互いに近づける方向に荷重を加える固定板押圧手段を備えている。
【0091】
このような固定板押圧手段によれば、上導体21および下導体22の歪みを抑制することができる。その結果、隙間が生じるのを抑制することができ、誘電特性をより高精度に測定することができる。また、下固定板32を支持しつつ、上固定板31の上面を単に押圧するのみで効果を得ることができるため、構造の簡素化と作業の容易性という観点から有用である。
【0092】
また、本実施形態に係る固定板押圧手段は、さらに上加圧体63(第1の当接部)を含んでおり、これを介して荷重を加えるように構成されている。上固定板31の上面のうち、上導体21の内側に対応する部分に荷重を加えるように接触し得る上加圧体63を用いることにより、上固定板31に対してより均等に荷重を加えることができる。このため、試料101、102に付与される圧力の分布も均等になり、誘電特性をさらに高精度に測定することができる。
【0093】
一方、
図5に示す下加圧体64(第2の当接部)も、前述したように円筒形状をなしており、円筒の内側に受信アンテナ52が挿通されている。これにより、受信アンテナ52に干渉することなく、下固定板32の下面に対して均等に荷重を加えることができる。
【0094】
なお、上加圧体63および下加圧体64の構成材料は、それぞれ十分な機械的強度を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、耐熱鋼、工具鋼、機械構造用合金鋼のようなFe系合金、真鍮のようなCu系合金、アルミニウム合金等の金属材料、アルミナ、ジルコニアのようなセラミックス材料等が挙げられる。また、上加圧体63の構成材料と下加圧体64の構成材料は、互いに異なっていても、同じであってもよい。
【0095】
また、上加圧体63および下加圧体64の形状は、円筒形状に限定されず、上導体21の範囲内に荷重を加えられる形状であれば、いかなる形状であってもよい。また、上加圧体63および下加圧体64は、それぞれ複数個の部材の集合体であってもよい。
【0096】
また、本実施形態に係る締結手段4は必要に応じて設けられればよく、例えば上述した固定板押圧手段が締結手段4の機能(上導体21等を固定する機能)を併せ持つ場合等には省略されてもよい。
【0097】
さらに、上記の場合には、締結手段4に加えて上固定板31および下固定板32についても省略されてもよい。
【0098】
また、
図6も、
図5に示す誘電特性測定治具の変形例を示す平面図である。なお、
図6では、透視される上導体21および中導体23の外縁を破線で示すとともに、上加圧体63にドットを付している。
【0099】
図6に示す上加圧体63は、
図5に示す上加圧体63よりも送信アンテナ51側に位置している。すなわち、
図6に示す上加圧体63は、
図5に示す上加圧体63よりも内径および外径が小さくなっている。このため、
図6に示す上加圧体63では、より送信アンテナ51側に近い領域においてより大きな荷重を加えられるようになっている。これにより、荷重の加え方がより均等になり、誘電特性をさらに精度よく測定することができる。
【0100】
この場合、送信アンテナ51の中心からの距離をできるだけ近くするのが好ましいが、具体的には、送信アンテナ51の中心から上加圧体63の外縁までの距離Lが、中導体23の外縁までの距離の70%以下であるのが好ましく、50%以下であるのがより好ましい。
【0101】
なお、上加圧体63の下面は、上固定板31の上面と平行であってもよく、非平行であってもよい。
【0102】
また、下加圧体64の形状は、上加圧体63の形状と同様であってもよく、異なっていてもよい。
このような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0103】
<第3実施形態>
次に、本発明の誘電特性測定治具の第3実施形態について説明する。
【0104】
図7は、本発明の誘電特性測定治具の第3実施形態を示す断面図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図7中の上方を「上」、下方を「下」という。
【0105】
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図7において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0106】
図7に示す誘電特性測定治具1は、導体加圧手段6の構成が異なる以外、
図1に示す誘電特性測定治具1と同様である。
【0107】
すなわち、
図7に示す導体加圧手段6は、前記実施形態と同様、上固定板31の上面を押圧する固定板押圧手段を備えているが、この固定板押圧手段が
図7に示す万力66である。
【0108】
万力66とは、対象物を2つの口金661、662の間に挟んで固定する工具である。このような万力66によれば、1つの部材(工具)であるにもかかわらず、上固定板31の上面と下固定板32の下面との間に荷重を加えることができ、ひいては、上導体21と下導体22とを互いに近づける方向に荷重を加えることができる。このため、荷重を加える作業をより容易に行うことができ、測定作業の効率化を図ることができる。
【0109】
誘電特性測定治具1が備える万力66の個数は、特に限定されないが、2個以上であるのが好ましく、3個以上16個以下であるのがより好ましい。このような複数の箇所において荷重を加えることにより、荷重の加え方がより均等になるため、誘電特性をさらに精度よく測定することができる。
【0110】
万力66の口金661の配置は、特に限定されないが、例えば第1実施形態の上ボルト61と同様の位置に設けられる。同様に、万力66の口金662の配置も、特に限定されないが、例えば第1実施形態の下ボルト62と同様の位置に設けられる。
【0111】
なお、万力66には、対象物を挟み込む力を発生させる原理として、ねじ、ばね等が挙げられるが、これらの原理は特に限定されない。
【0112】
また、万力66は、対象物を挟んで固定するその他の工具で代替されてもよい。
また、本実施形態に係る締結手段4は必要に応じて設けられればよく、例えば上述した固定板押圧手段が締結手段4の機能(上導体21等を固定する機能)を併せ持つ場合等には省略されてもよい。
【0113】
さらに、上記の場合には、締結手段4に加えて上固定板31および下固定板32についても省略されてもよい。
【0114】
また、
図8も、
図7に示す誘電特性測定治具の変形例を示す平面図である。なお、
図8では、透視される上導体21および中導体23の外縁を破線で示すとともに、万力66の口金661にドットを付している。
【0115】
図8に示す口金661は、
図7に示す口金661よりも送信アンテナ51側に位置している。すなわち、
図8に示す口金661は、
図7に示す口金661とは荷重印加面の形状が異なっている。具体的には、
図8に示す口金661の荷重印加面は、送信アンテナ51に近いほど幅が広い二等辺三角形をなしている。換言すれば、
図8に示す口金661の荷重印加面は、送信アンテナ51を中心にした仮想円周が重なる長さを指標とするとき、送信アンテナ51に近いほどこの指標が大きくなるような形状をなしている。
【0116】
このような形状をなす口金661では、より送信アンテナ51側に近い領域においてより大きな荷重を加えられるようになっている。これにより、荷重の加え方がより均等になり、誘電特性をさらに精度よく測定することができる。
【0117】
この場合、口金661の形状は、図示した二等辺三角形に限定されず、例えば二等辺三角形の辺が湾曲した形状や扇形等であってもよい。
【0118】
なお、口金662の形状は、口金661の形状と同様であってもよく、異なっていてもよい。
このような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0119】
<第4実施形態>
次に、本発明の誘電特性測定治具の第4実施形態について説明する。
【0120】
図9は、本発明の誘電特性測定治具の第4実施形態を示す断面図であって、導体に荷重を加えていない状態を表す図である。また、
図10は、
図9に示す誘電特性測定治具のうち導体加圧手段を示す図である。また、
図11は、本発明の誘電特性測定治具の第4実施形態を示す断面図であって、導体に荷重を加えている状態を表す図である。なお、以下の説明では、説明の便宜上、
図9~11中の上方を「上」、下方を「下」という。
【0121】
以下、第4実施形態について説明するが、以下の説明では、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図9~11において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0122】
図9~11に示す誘電特性測定治具1は、導体加圧手段6の構成が異なる以外、
図1に示す誘電特性測定治具1と同様である。
【0123】
すなわち、
図9、10に示す導体加圧手段6は、平面視における上導体21の外側において、上固定板31と下固定板32とを締結する締結手段4(連結手段)と、下に凸の形状をなす上固定板31(第1の固定板)の下面310、および、上に凸の形状をなす下固定板32(第2の固定板)の上面320を備える非平面構造と、を含んでいる。このような上固定板31の下面310および下固定板32の上面320は、互いの離間距離が部分的に異なっているため、その離間距離の差に基づいて目的とする部分に対して確実に荷重を加えることができる。
【0124】
具体的には、上固定板31のうち、上導体21(第1の導体)側に位置する下面310は、下に凸の形状をなしているが、この「下に凸の形状」とは、平面視における中央部が最も下方に位置し、外縁部に向かうにつれて徐々に上方に変位する非平面のことをいう。なお、この非平面は、互いに傾きが異なる面同士を連結させた不連続面であってもよいし、傾きが連続的に変化してなる湾曲面であってもよい。
【0125】
また、下固定板32のうち、下導体22(第2の導体)側に位置する上面320は、上に凸の形状をなしているが、この「上に凸の形状」とは、平面視における中央部が最も上方に位置し、外縁部に向かうにつれて徐々に下方に変位する非平面のことをいう。なお、この非平面は、互いに傾きが異なる面同士を連結させた不連続面であってもよいし、傾きが連続的に変化してなる湾曲面であってもよい。
【0126】
このような上固定板31の下面310と下固定板32の上面320とを対向させると、これらの面同士の離間距離は部分的に異なることとなる。すなわち、上導体21の内側における上固定板31の下面310と下固定板32の上面320との離間距離S1に比べて、上導体21の外側における上固定板31の下面310と下固定板32の上面320との離間距離S2が大きくなっている(
図10参照)。
【0127】
このような非平面構造は、上導体21の内側に対して確実に荷重を加えることができる。すなわち、
図9に示す上固定板31の下面310および下固定板32の上面320は、締結手段4で締結される前の状態を示しているが、この状態における下面310および上面320は、締結に伴う歪みを加味した形状にあらかじめ設定されている。つまり、締結手段4の締結によって上固定板31や下固定板32が歪むことを踏まえ、歪んだ後の下面310および上面320がそれぞれ
図11に示すような平面になるように、歪み量を加味した形状に下面310および上面320があらかじめ設定されている。このため、従来のように試料101、102と導体との間に隙間が生じてしまうことが抑制され、誘電特性の測定値が真値から著しく乖離するのを防止することができる。
【0128】
なお、締結によって歪んだ後の下面310および上面320は、必ずしも平面でなくてもよい。例えば、変位量は相対的に少なくなる(例えば湾曲面の曲率が小さくなる)ものの、締結によって歪んだ後も依然として前述した非平面を維持する(締結後も依然として湾曲面である)ように設定されていてもよい。
【0129】
離間距離S2は、好ましくは離間距離S1の100.01~105%程度とされ、より好ましくは100.05~103%程度とされる。これにより、締結手段4によって締結されても上導体21や下導体22の歪みを抑えつつ、上導体21および下導体22をより確実に固定することができる。
【0130】
なお、離間距離S2が前記下限値を下回ると、上固定板31や下固定板32の剛性によってはそれらの歪みに伴う上導体21および下導体22の歪みが生じるおそれがある。その結果、測定値の精度が低下するおそれがある。一方、離間距離S2が前記上限値を上回ると、締結手段4による締結が不安定になり易いため、上導体21や下導体22の固定が不安定になって測定値の精度が低下するおそれがある。
【0131】
以上のことから、本実施形態に係る導体加圧手段6は、上固定板31の下面310および下固定板32の上面320の形状を工夫することによって、第1~第3実施形態と同様の効果を奏する。したがって、より簡素な構造で取り扱いが容易な誘電特性測定治具1が得られる。このため、誘電特性測定治具1の低コスト化を図りつつ、測定作業の効率化を図ることができる。
【0132】
ここで、
図12、13は、それぞれ
図9に示す誘電特性測定治具1の変形例である。
図12に示す誘電特性測定治具1は、上固定板31と下固定板32の離間距離を規制するスペーサー81をさらに備えている。
【0133】
このようなスペーサー81を設けることにより、締結手段4によって締結されたときに、上固定板31と下固定板32の離間距離が必要以上に狭まるのを防止することができる。これにより、上固定板31および下固定板32の意図しない歪みが防止され、試料101と上導体21の中央部との間や試料102と下導体22の中央部との間に隙間が生じることが抑制される。その結果、誘電特性の測定値が真値から著しく乖離するのを防止することができる。
【0134】
なお、スペーサー81の配置は、特に限定されないが、平面視において上導体21の外側であるのが好ましい。これにより、締結手段4の締結に伴って歪み易い部位の歪みを規制することができるので、上述した効果をより確実に享受することができる。
【0135】
また、スペーサー81の形状も、特に限定されないが、本実施形態では円筒形状である。これにより、例えば締結手段4に含まれる棒ねじ41を挿通させるようにしてスペーサー81を配置することが可能になる。その結果、スペーサー81の位置ずれを容易に防止して、その機能を確実に発揮させることができる。また、スペーサー81を含む誘電特性測定治具1の組み立ても容易になる。
【0136】
スペーサー81の構成材料は、十分な剛性を有する材料であれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、耐熱鋼、工具鋼、機械構造用合金鋼のようなFe系合金、真鍮のようなCu系合金、アルミニウム合金等の金属材料、アルミナ、ジルコニアのようなセラミックス材料等が挙げられる。
【0137】
また、スペーサー81の長さは、特に限定されないが、下導体22、試料102、中導体23、試料101および上導体21の5つの部材を積み重ねたときの厚さの総和より短くなるように設定されるのが好ましい。具体的には、スペーサー81の長さは、5つの部材の厚さの総和の95~99.999%程度であるのが好ましく、97~99.99%程度であるのがより好ましい。スペーサー81の長さをこのような範囲に設定することにより、締結手段4がその締結機能を発揮するのに必要なスペースを確保する一方、締結に伴う上固定板31や下固定板32の歪み量が大きくなり過ぎて前述した隙間が生じてしまうのを抑制することができる。その結果、熟練者でなくても、適度な荷重を加えつつ、高精度な測定を可能にするための作業を容易に行うことができる。
【0138】
また、
図13に示す誘電特性測定治具1は、スペーサー81と上固定板31の離間距離を規制する調整板82をさらに備えている。この調整板82は、上固定板31と下固定板32との間に介挿される装着状態と、介挿されない非装着状態と、を容易に選択し得るように設けられる。調整板82が装着された場合と装着されない場合とで、上固定板31と下固定板32の離間距離の規制長を容易に調整することができる。このため、試料101、102の厚さに応じて規制長を容易に最適化することができ、試料101、102を頻繁に取り換える場合でも誘電特性を高精度に測定することが可能になる。
【0139】
なお、
図13では、調整板82をスペーサー81と上固定板31との間に介挿しているが、介挿位置は特に限定されず、スペーサー81と下固定板32との間であってもよいし、双方であってもよい。
【0140】
また、調整板82の形状は、特に限定されないが、本実施形態では平板状である。これにより、スペーサー81と上固定板31との間に調整板82を差し込むのみで、前述した装着状態をとることができ、またその後、調整板82を引き抜くだけで、前述した非装着状態をとることができる。
【0141】
また、調整板82が挿入される隙間の高さは、スペーサー81の長さに応じて適宜設定されるが、スペーサー81の長さの1/50以下であるのが好ましく、1/10000以上1/30以下であるのがより好ましい。隙間の高さを前記範囲内に設定することにより、締結手段4がその締結機能を発揮するのに必要なスペースが確保される一方、締結に伴う上固定板31や下固定板32の歪み量が大きくなり過ぎてしまうことによる前述した不具合の発生を抑制することができる。その結果、熟練者でなくても、適度な荷重を加えつつ、高精度な測定を可能にするための作業を容易に行うことができる。また、この隙間の分だけ、対応可能な試料101、102の厚さに幅を持たせられるため、誘電特性測定治具1は、様々な厚さの試料101、102の高精度測定に対応可能なものとなる。
【0142】
なお、調整板82が挿入される隙間とは、スペーサー81と上固定板31との間の隙間と、スペーサー81と下固定板32との間の隙間と、の合計をいう。
このような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0143】
[誘電特性測定装置]
次に、本発明の誘電特性測定装置の実施形態について説明する。
【0144】
本実施形態に係る誘電特性測定装置は、前述した実施形態に係る誘電特性測定治具を備える。
【0145】
図14は、本発明の誘電特性測定装置の実施形態を示す図である。なお、
図14において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0146】
図14に示す誘電特性測定装置10は、誘電特性測定治具1と、ネットワークアナライザー11と、パーソナルコンピューター12と、を有する。誘電特性測定治具1とネットワークアナライザー11との間は、同軸ケーブル等を介して電気的に接続されている。また、ネットワークアナライザー11とパーソナルコンピューター12との間は、相互に通信可能になっている。
【0147】
ネットワークアナライザー11は、その出力ポートから誘電特性測定治具1に対して電磁波を出力可能になっている。
【0148】
誘電特性測定治具1では、電磁波の入力に応答して、所定のモードの電磁波が励振する。このようにして励振した電磁波は、ネットワークアナライザー11の入力ポートに入力され、検出されるようになっている。
【0149】
ネットワークアナライザー11では、検出した電磁波をデジタル処理することによって、共振周波数、挿入損失、電力半値幅等のデータを取得し、これらのデータをパーソナルコンピューター12に出力するように構成されている。
【0150】
パーソナルコンピューター12では、これらのデータや試料101、102に関する初期条件、誘電特性測定治具1に関する初期条件、温度、湿度等の環境条件等に基づいて、試料101、102の比誘電率、誘電正接等の誘電特性を算出する。
【0151】
この算出は、例えば有限要素法やモード整合法等の公知の解析手法(例えば特開2004-177234号公報等に開示)によって行われる。
【0152】
以上のような誘電特性測定装置10によれば、試料101、102の誘電特性を高精度に測定することができる。
【0153】
なお、誘電特性測定装置10は、特にミリ波(30~300GHz)という高周波帯において試料101、102の表面に垂直な方向における特性の測定を高精度に行うことができる点で有用である。このようなミリ波帯は、ミリ波レーダーのようなセンシング用途、高速通信、大容量通信のような通信用途、ミリ波カメラのようなセキュリティー用途への適用が今後拡大すると予想されている。そのような用途に用いられるデバイスの開発にあたっては、ミリ波帯においても高い性能を有する誘電体材料が求められているが、その誘電体材料の誘電特性を高精度に評価する際、誘電特性測定治具1および誘電特性測定装置10が有用である。
【0154】
[誘電特性測定方法]
次に、本発明の誘電特性測定方法の実施形態について説明する。
【0155】
本実施形態に係る誘電特性測定方法は、前述した実施形態に係る誘電特性測定治具を用いて誘電特性を測定する方法である。
【0156】
具体的には、誘電特性測定治具1に取り付けられた試料101、102に対してネットワークアナライザー11の出力ポートから電磁波を入力する工程と、誘電特性測定治具1から出力された電磁波をネットワークアナライザー11の入力ポートに入力する工程と、検出した電磁波に関するデータをパーソナルコンピューター12に出力する工程と、電磁波に関するデータや初期条件等に基づいて誘電特性を算出する工程と、を有する。
【0157】
以上のような誘電特性測定方法によれば、例えば薄板状の試料101、102であっても、その誘電特性を高精度に測定することができる。
【0158】
以上、本発明を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0159】
例えば、本発明の誘電特性測定治具および誘電特性測定装置は、前記実施形態に任意の要素が付加されたものであってもよいし、前記実施形態の要素が同様の機能を有する別の要素で代替されたものであってもよい。
【0160】
また、本発明の誘電特性測定方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。
【実施例】
【0161】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.試料の誘電特性の測定
(実施例1)
図1に示す誘電特性測定治具を用いて周波数13GHzにおける試料の誘電特性を測定した。なお、治具および試料の条件は以下の通りである。
【0162】
<誘電特性測定治具の条件>
・上導体および下導体
構成材料 :銅単体
厚さ :6mm
大きさ :100mm×100mm(正方形)
【0163】
・中導体
構成材料 :銅単体
厚さ :0.02mm
大きさ :直径30mm(真円)
【0164】
・六角ボルト
構成材料 :ステンレス鋼
先端面の直径 :5mm
【0165】
・締結手段
締め付けトルク:8N・m
【0166】
<試料の条件>
形態 :樹脂フィルム
厚さ :111μm
大きさ :50mm×50mm(正方形)
【0167】
(実施例2)
図5に示す誘電特性測定治具を用いて試料の誘電特性を測定した。なお、実施例1で使用した治具と異なる条件のみ、以下に記載する。
【0168】
<誘電特性測定治具の条件>
・上加圧体および下加圧体
構成材料 :真鍮
形状 :円筒形
大きさ :外径20mm
【0169】
(実施例3)
図7に示す誘電特性測定治具を用いて試料の誘電特性を測定した。なお、実施例1で使用した治具と異なる条件のみ、以下に記載する。
【0170】
<誘電特性測定治具の条件>
・万力
口金の形状 :真円
口金の大きさ :直径10mm
万力の数 :4個
【0171】
(実施例4)
図9に示す誘電特性測定治具を用いて試料の誘電特性を測定した。なお、実施例1で使用した治具と異なる条件のみ、以下に記載する。
【0172】
<誘電特性測定治具の条件>
離間距離S1に対する離間距離S2の割合 :100.5%
【0173】
(比較例)
図15に示す誘電特性測定治具を用いて試料の誘電特性を測定した。なお、実施例1で使用した治具と異なる条件のみ、以下に記載する。
【0174】
<誘電特性測定治具の条件>
六角ボルト(導体加圧手段)なし
【0175】
(参考例)
空胴共振器法により試料の誘電特性を測定した。
【0176】
2.測定結果
各実施例、比較例および参考例の各測定方法で測定した比誘電率(誘電特性)を比較した。
【0177】
その結果、各実施例および参考例の各測定方法で測定した比誘電率は、3.79±0.01の範囲内に収まっていた。
これに対し、比較例の測定方法で測定した比誘電率は、3.38であった。
【0178】
以上のことから、本発明によれば、フィルムのような薄板試料であっても、誘電特性を高精度に測定し得ることが認められた。
【符号の説明】
【0179】
1 誘電特性測定治具
4 締結手段
6 導体加圧手段
9 誘電特性測定治具
10 誘電特性測定装置
11 ネットワークアナライザー
12 パーソナルコンピューター
21 上導体
22 下導体
23 中導体
31 上固定板
32 下固定板
41 棒ねじ
42 ナット
51 送信アンテナ
52 受信アンテナ
61 上ボルト
62 下ボルト
63 上加圧体
64 下加圧体
66 万力
71 降下部
72 ステージ
81 スペーサー
82 調整板
94 締結手段
101 試料
102 試料
211 アンテナ挿入孔
221 アンテナ挿入孔
310 下面
311 貫通孔
312 アンテナ挿入孔
320 上面
321 貫通孔
322 アンテナ挿入孔
661 口金
662 口金
921 上導体
922 下導体
923 中導体
931 上固定板
932 下固定板
941 棒ねじ
942 ナット
951 送信アンテナ
952 受信アンテナ
991 隙間
992 隙間
S1 離間距離
S2 離間距離