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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】シリカ粒子分散液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/141 20060101AFI20220407BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220407BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20220407BHJP
【FI】
C01B33/141
H01L21/304 622B
B24B37/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018006498
(22)【出願日】2018-01-18
(65)【公開番号】P2018118901
(43)【公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2017008999
(32)【優先日】2017-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】江上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 光章
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
(72)【発明者】
【氏名】平井 俊晴
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-149493(JP,A)
【文献】特開2009-155180(JP,A)
【文献】国際公開第2016/159167(WO,A1)
【文献】特開2012-006781(JP,A)
【文献】特開2012-101953(JP,A)
【文献】特開2012-031045(JP,A)
【文献】特開2013-032276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に有機溶媒からなる液Iを準備する工程と、
前記液Iに下記式[1]で表されるシリコンアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加して、前記シリコンアルコキシドを加水分解及び重縮合させて、一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子を含む分散液を製造する工程とを含み、
添加終了時の反応系中のシリカ濃度の70%の濃度に到達するまでの添加開始からの期間を、全添加期間の20%以下とすることを特徴とするシリカ粒子の分散液の製造方法。
Si(OR)4 - n [1]
(式中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を表し、nは0~3の整数を表す。)
【請求項2】
前記液Iの量が、前記液A及び前記液Bの総添加量に対して、30質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の分散液の製造方法。
【請求項3】
前記反応系の温度が、0~65℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の分散液の製造方法。
【請求項4】
前記添加終了時の前記反応系中のシリカ濃度が、5質量%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか記載の分散液の製造方法。
【請求項5】
前記一次粒子の平均粒子径(d)が5~300nmである前記異形シリカ粒子を10%以上含み、未反応物の含有量が200ppm以下である分散液を製造することを特徴とする請求項1~4のいずれか記載の分散液の製造方法。
【請求項6】
前記シリカ粒子のU、Thの各々の含有量が0.3ppb未満、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満であり、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれか記載の分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形状のシリカ粒子を含む分散液の製造方法に関し、詳しくは、半導体集積回路における金属配線層の形成時の研磨等に用いる研磨材に有用な異形状のシリカ粒子を含む分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピューター、各種電子機器には、各種の集積回路が用いられており、これらの小型化、高性能化に伴い、回路の高密度化と高性能化が求められている。
例えば、半導体集積回路は、シリコンウエハー等の基材上に配線層間膜(絶縁膜)を成膜し、その配線層間膜(絶縁膜)上に金属配線用の溝パターンを形成し、必要に応じてスパッタリング法などによって窒化タンタル(TaN)等のバリアメタル層を形成し、ついで金属配線用の銅を化学蒸着(CVD)法等により成膜する。ここで、TaN等のバリアメタル層を設けた場合には層間絶縁膜への銅や不純物などの拡散や侵食に伴う層間絶縁膜の絶縁性の低下などを防止することができ、また層間絶縁膜と銅の接着性を高めることができる。
次いで、溝内以外に成膜された不要な銅及びバリアメタル(犠牲層ということがある)を化学機械研磨(CMP)法により研磨して除去するとともに上部表面を可能な限り平坦化して、溝内にのみ金属膜を残して銅の配線・回路パターンを形成する。
【0003】
このCMP法で使用される研磨材は、通常、シリカ等の金属酸化物からなる平均粒子径が5~300nm程度の球状の研磨用粒子を含む分散液に、配線・回路用金属の研磨速度を早めるための酸化剤、有機酸等の添加剤を添加して製造される。
【0004】
この研磨用粒子を含む分散液(シリカゾル)中に、シリコンアルコキシドのオリゴマー等の未反応物(副生成物)が存在すると、反応性に富むオリゴマー等の未反応物の影響のためか、シリカゾルとして十分な安定性が得られなかった。さらに、研磨材として使用する際に混合される添加剤の影響で、増粘、凝集、白濁、沈降性ゲル発生等が生じることがあった。このような研磨材を用いると、凝集物によりスクラッチが発生したり、また、研磨後の基板上にシリカ成分が残存して問題が生じることがあった(例えば、特許文献1~3参照)。また、研磨特性向上のための添加剤を吸着してしまい、添加剤の効果を低減させることがあった。
【0005】
このようなオリゴマー等の未反応物の生成を抑制したシリカゾルの製造方法として、例えば、テトラメトキシシランを含む有機溶媒と、アルカリ触媒及び水を含む溶媒とを、アルカリ触媒及び水を含む有機溶媒に添加することによりテトラメトキシシランを加水分解及び重縮合させてシリカゾルを製造する工程(a)と、シリカゾルの分散媒を水の沸点に達するまで加熱して水で置換する工程(b)とを含む方法が提案されている(特許文献4参照)。
【0006】
一方、研磨材として用いるシリカ粒子としては、真球状のものと異形状のものが製造されている。異形状のシリカ粒子は、研磨速度を求める研磨剤に好適に用いられる。
例えば、上記特許文献4記載の方法によれば、二次粒子の平均粒子径が一次粒子の平均粒子径の1.5~3.0倍の異形状のシリカ粒子が得られるとされている。
【0007】
また、異形状シリカ粒子の他の製造方法として、ケイ酸メチル、又はケイ酸メチルとメタノールとの混合物を、水、メタノール及びアンモニア、又は水、メタノール、アンモニア及びアンモニウム塩からなる混合溶媒中に、この溶媒中のアンモニウムイオンの含量が、この溶媒の全重量に基づいて0.5~3重量%で、反応が10~30℃の温度で行われるように、撹拌下10~40分間で滴下し、ケイ酸メチルと水とを反応させる方法が提案されている(特許文献5参照)。この方法によれば、10~200nmの短径と1.4~2.2の長径/短径比を有するコロイダルシリカを生成できるとされている。
【0008】
また、アンモニウムイオンを含む水性溶媒中に、テトラアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランと水混和性有機溶剤との混合物を原料として連続的に添加し、加水分解、縮合させるに際し、これら原料の総添加量を、反応初期の段階における2個の単一シリカ粒子の合着までに要する原料添加量の2.0~6.0倍の範囲になるように制御する落花生様双子型コロイダルシリカ粒子の製造方法が提案されている(特許文献6参照)。
【0009】
さらに、アルコキシシランの縮合体又はその水性溶媒溶液をアンモニア若しくはアンモニウム塩の水溶液又はアンモニア若しくはアンモニウム塩と水性溶媒を含む水溶液中に滴下しながらアルコキシシランを加水分解する繭型コロイダルシリカの製造方法が提案されている(特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2015-124231号公報 段落[0002],[0006]
【文献】特開2012-156393号公報 段落[0006]
【文献】特開2014-154707号公報 段落[0007]
【文献】特開2005-060217号公報
【文献】特開平11-060232号公報
【文献】特開2004-203638号公報
【文献】WO2004/074180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献4記載の方法は、生産性よく高純度のシリカ粒子を製造するものであるが、工程(a)においては、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないシリコンアルコキシドのオリゴマー等の未反応物が生成され、これを除去する工程(b)が必須となっており、生産の効率性、コストの点等から問題がある。
【0012】
また、特許文献5の方法も同様に、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないシリコンアルコキシドのオリゴマー等の未反応物が生成される問題がある。また、製造されるシリカ粒子分散液のシリカ粒子の濃度も極めて低い。さらに、一次粒子が5個以上連結するものは球状になり、鎖状とはならない(段落[0011])。
【0013】
また、特許文献6及び7の方法も同様に、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないシリコンアルコキシドのオリゴマー等の未反応物が生成される問題がある。さらに、特許文献7の方法は、シリコンアルコキシドの縮合体を原料とする特殊な方法である。
【0014】
本発明は、目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成を抑制して、一次粒子が連結した異形のシリカ粒子を含む分散液を効率よく製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
反応の初期段階において、表面が活性な一次粒子を数多く形成させ、この一次粒子同士を効率よく接触させ合着させることで、一次粒子が連結(合着)した異形シリカ粒子を効率的に製造できる。すなわち、予め容器に準備された液Iの量を少なくして、反応初期の系内のシリコンアルコキシド濃度を高めることにより、反応初期の期間に、系中の活性なシリカ粒子(一次粒子)の濃度を急速に高められる。これにより、一次粒子の合着が促され、一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子を効率的に製造できる。
さらに、水やアルカリ触媒を含まない液Iに対して、シリコンアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bを添加して反応を進めることで、反応期間中、シリコンアルコキシドの加水分解に大きな影響を与える水及びアルカリ触媒の量が、シリコンアルコキシドに対してほぼ一定となる。この結果、逐次添加されるシリコンアルコキシドが常に同じ条件で加水分解され、目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成が抑制される。
【0016】
具体的には、実質的に有機溶媒からなる液Iを準備する工程と、この液Iにシリコンアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加することにより、シリコンアルコキシドを加水分解及び重縮合させて、一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子を含む分散液を製造する工程とを含む。この時、添加終了時(反応終了時)の反応系中のシリカ濃度の70%の濃度に到達するまでの添加開始(反応開始)からの期間を、全添加期間(全反応期間)の20%以下とする。
【0017】
この液Iの量は、液A及び液Bの総添加量に対して、30質量%以下が好ましい。また、添加開始(反応開始)から終了までの期間、反応系におけるシリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比の初期値に対する変化率が0.90~1.10で、かつ、反応系におけるシリコンアルコキシドに対する水のモル比の初期値に対する変化率が0.90~1.10が好ましい。さらに、添加開始(反応開始)から終了までの期間、反応系におけるシリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比が常時0.20以上で、かつ、シリコンアルコキシドに対する水のモル比が常時2.0以上が好ましい。反応系の温度は、0~65℃が好ましい。添加終了時(反応終了時)の反応系中のシリカ濃度は、5質量%以上が好ましい。
【0018】
また、シリカ粒子分散液は、平均粒子径(d)が5~300nmの一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子を10%以上含み、未反応物の含有量が200ppm以下である。
このシリカ粒子分散液は、シリカ粒子中のU、Thの各々の含有量が0.3ppb未満、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満であり、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満が好ましい。
【発明の効果】
【0019】
目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成を抑制して、一次粒子が連結した異形シリカ粒子を含む分散液を効率よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明における平均粒子径(d)の算出方法を説明する図である。黒塗り部は粒子間の接合部のイメージであり、接合部は空間を含んでいてもよい。
図2】実施例1における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図3】実施例1における系内シリカ濃度の変化を示す図である。
図4】実施例2における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図5】実施例2における系内シリカ濃度の変化を示す図である。
図6】実施例3における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図7】実施例3における系内シリカ濃度の変化を示す図である。
図8】実施例4における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図9】実施例4における系内シリカ濃度の変化を示す図である。
図10】比較例1における触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を示す図である。
図11】比較例1における系内シリカ濃度の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[シリカ粒子分散液の製造方法]
本発明のシリカ粒子分散液の製造方法は、実質的に有機溶媒からなる液Iを準備する工程と、この液Iにシリコンアルコキシドを含有する液Aと、アルカリ触媒及び水を含有する液Bとを同時に添加して、シリコンアルコキシドを加水分解及び重縮合させ、一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子を含む分散液を製造する工程を含む。この時、添加終了時(反応終了時)の反応系(分散液)中のシリカ濃度の70%の濃度に到達するまでの添加開始(反応開始)からの期間を、全添加期間(全反応期間)の20%以下とする。
【0022】
これにより、反応初期に、系中の活性なシリカ粒子(一次粒子)の濃度が急速に高められ、一次粒子の積極的な合着が促されるので、一次粒子が合着した異形のシリカ粒子を効率的に製造できる。
添加終了時(反応終了時)の系中シリカ濃度の70%の濃度に到達するまでの添加開始(反応開始)からの期間は、全添加期間(全反応期間)の15%以下が好ましい。
【0023】
ここで、一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子とは、球状又は真球状の1つの粒子として把握される粒子(一次粒子)が2個以上、好ましくは2~10個連結した鎖状の粒子をいう(図1参照)。
また、系中シリカ濃度の測定は、10分毎にサンプルを採取し、サンプル5gを1000℃で1時間乾燥させ、乾燥前後の質量から求める(下記式)。
系中シリカ濃度(質量%)=(乾燥後の質量/乾燥前の質量)×100
【0024】
添加終了時(反応終了時)の系中シリカ濃度の70%の濃度に到達するまでの添加開始(反応開始)からの期間を、全添加期間(全反応期間)の20%以下とする方法としては、液Iの量を少なくすることや、反応初期のシリコンアルコキシドの添加濃度、添加速度を高める方法を挙げることができる。
【0025】
<液I(予め容器に準備された液)>
液Iは、実質的に有機溶媒からなる。有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル、グリコール、エステルなどが挙げられる。中でも、シリコンアルコキシドを拡散しやすく加水分解を均一かつ迅速に進めることができる点から、アルコールが好ましい。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステルが挙げられる。これらの中でも、メタノール又はエタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0026】
ここで、「実質的に有機溶媒からなる」とは、有機溶媒の製造過程から不可避的に含まれる不純物等は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味する。例えば、有機溶媒が99質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以上である。
【0027】
液Iの量としては、液A及び液Bの総添加量に対して、30質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、0.1~10質量%が更に好ましい。このように液Iの量を少量とすることにより、反応初期に、系中の活性なシリカ粒子(一次粒子)の濃度を急速に高めることができ、一次粒子の合着が促進される。
【0028】
なお、従来の反応系では、液Iにアルカリ触媒や水を入れておくため、添加開始時(反応開始時)から、系内の組成が逐次変化するため、シリコンアルコキシドの加水分解条件が一定ではなく、未反応物が発生しやすい。また、添加開始時(反応開始時)のpHは高いが、その後pHが低下していく傾向にあり、追加するアルカリ触媒が不足した場合、添加終了時(反応終了時)のpHが11を下回ることが多いため、未反応物が発生しやすい。
【0029】
これに対して、本発明では、実質的に有機溶媒からなる液Iを用いるため、添加開始(反応開始)から終了までの反応期間中、シリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒及び水の量を一定にできる。これにより、逐次添加されるシリコンアルコキシドが常に同じ条件で加水分解されるので、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成が抑制される。また、一次粒子径の揃った粒子を製造することが可能となる。
【0030】
<液A>
液Aは、シリコンアルコキシドを含有するものであり、好ましくは、さらに有機溶媒を含有する。通常は、実質的にシリコンアルコキシドからなるか、実質的にシリコンアルコキシド及び有機溶媒の2成分からなる。なお、「実質的にシリコンアルコキシドからなる」、「実質的に2成分からなる」とは、上記同様、シリコンアルコキシドや有機溶媒の製造過程から不可避的に含まれる不純物等は含まれ得るが、それ以外は含まないことを意味し、例えば、99質量%以上であり、好ましくは99.5質量%以上である。
【0031】
シリコンアルコキシドとしては、下記式[1]で表されるものが挙げられる。
【0032】
Si(OR)4-n ・・・[1]
【0033】
式中、Xは水素原子、フッ素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を示し、Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはビニル基を示し、nは0~3の整数である。
【0034】
上記式[1]で表されるシリコンアルコキシドとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン以外に、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラオクトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリイソプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジフルオロジメトキシシラン、ジフルオロジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0035】
これらのシリコンアルコキシドのうち、特に、テトラメトキシシラン(TMOS)やテトラエトキシシラン(TEOS)といった、上記式[1]のnが0で、かつRのアルキル鎖が短いものを使用することが好ましい。これらを使用する場合、加水分解速度が速くなり、シリカ粒子の初期濃度を迅速に高めることができ、また、未反応物が残りにくい傾向にある。中でも好ましいのは、アルキル鎖が短いテトラメトキシシラン(TMOS)である。
【0036】
液Aの有機溶媒としては、上記液Iで例示したものを用いることが可能であるが、液Iと同一組成の有機溶媒を用いることが好ましい。すなわち、液Iにメタノールを用いる場合には、液Aにおいてもメタノールを用いることが好ましい。
【0037】
ここで、液Aが有機溶媒を含む場合、有機溶媒に対するシリコンアルコキシドの濃度としては、例えば、1.5~6.4mol/Lであり、2.0~6.0mol/Lであることが好ましい。
【0038】
<液B>
液Bは、アルカリ触媒及び水を含有するものであり、通常、実質的に2成分からなる。なお、「実質的に2成分からなる」とは、上記液Aで説明したのと同様の意味である。
【0039】
アルカリ触媒としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第4級アンモニウム化合物、アミン系カップリング剤など、塩基性を示す化合物を用いることができ、アンモニアを用いることが好ましい。
【0040】
ここで、水に対するアルカリ触媒の濃度としては、例えば、1~24mol/Lであり、3~15mol/Lが好ましい。
【0041】
<反応条件等>
シリカ粒子分散液の製造方法は、次の2つの条件を満足することが好ましい。
(1)液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間(添加開始(反応開始)から終了までの期間)の反応系におけるシリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比の初期値に対する変化率(触媒割合変化率)が、0.90~1.10であり、
(2)液A及び液Bの添加を開始してから終了するまでの期間(添加開始(反応開始)から終了までの期間)の反応系におけるシリコンアルコキシドに対する水のモル比の初期値に対する変化率(水割合変化率)が、0.90~1.10である。
【0042】
すなわち、添加開始(反応開始)から終了までの期間において、触媒割合変化率及び水割合変化率を極力減らして、一定にしようとするものである。その具体的な態様としては、上記のように、液Iに含まれるアルカリ触媒及び水の量を極力低くしておくことにより、触媒割合変化率及び水割合変化率を抑制する方法が挙げられる。また、添加開始(反応開始)から終了までの期間において、液A及び液Bの添加速度等の添加条件をできる限り一定にして触媒割合変化率及び水割合変化率を抑制する方法が挙げられる。例えば、高精度のポンプを使用することにより、液A及び液Bの添加速度の変化を抑制できる。
【0043】
これにより、逐次添加されるシリコンアルコキシドが常に同じ条件で加水分解され、製造目的とするシリカ粒子まで成長しないオリゴマー等の未反応物の生成が抑制される。このため、未反応物を除去する工程を省略することが可能となり、シリカ粒子分散液を効率的に製造できる。また、この製造されたシリカ粒子分散液は、オリゴマー等の未反応物をほとんど含まない。このため、シリカ粒子分散液及び研磨材としての安定性に優れ、良好な研磨特性を有する研磨材が得られる。さらに、一次粒子径の揃った粒子を製造できる。
【0044】
ここで、シリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比(アルカリ触媒/シリコンアルコキシド)、及びシリコンアルコキシドに対する水のモル比(水/シリコンアルコキシド)は、それぞれ添加重量実測値を基に算出される。この時、シリコンアルコキシドの加水分解及び重縮合の反応は瞬時に起こるもの、アルカリ触媒は系外への放出はないものと仮定した。触媒割合変化率及び水割合変化率は、所定時間毎(例えば10分毎)に、添加重量実測値から反応系内のモル比を算出し、初期のモル比で除した数値により算出する。なお、初期値とは、液A及び液Bの添加直後のモル比(理論値)をいう。
【0045】
この触媒割合変化率は、上記のように、0.90~1.10が好ましく、0.95~1.05がより好ましく、0.98~1.02が更に好ましい。
【0046】
この水割合変化率は、上記のように、0.90~1.10が好ましく、0.95~1.05がより好ましく、0.98~1.02が更に好ましい。
【0047】
また、シリコンアルコキシドの添加速度は、添加開始(反応開始)から終了までの期間、0.005mol/分以上が好ましく、0.01mol/分以上がより好ましく、0.02mol/分以上が更に好ましい。このような速度でシリコンアルコキシドを添加することにより、目的とするシリカ粒子まで成長しないシリコンアルコキシドのオリゴマー等の未反応物の生成を抑制できる。また、反応の初期段階において、表面が活性な一次粒子を数多く形成し、この一次粒子同士を接触させ合着させることができると共に、その合着粒子をシード粒子としてさらに成長させることができる。
【0048】
さらに、添加開始(反応開始)から終了までの期間の反応系では、シリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比が常時0.20以上で、かつ、シリコンアルコキシドに対する水のモル比が常時2.0以上が好ましい。すなわち、添加の間(反応中)、シリコンアルコキシドに対してアルカリ触媒及び水を所定量以上に保持することが好ましい。このようにアルカリ触媒及び水を所定量以上に保持して反応させることにより、十分に加水分解を進めることができ、未反応のシリコンアルコキシドの残存や、未反応物の発生を抑制できる。
【0049】
なお、シリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比、及びシリコンアルコキシドに対する水のモル比は、上記同様、それぞれ添加重量実測値に基づき算出したものをいう。
【0050】
ここで、添加開始(反応開始)から終了までの期間の反応系では、シリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒のモル比は、上記のように0.20以上が好ましく、0.30以上がより好ましく、0.50~1.00が更に好ましい。
【0051】
また、添加開始(反応開始)から終了までの期間の反応系では、シリコンアルコキシドに対する水のモル比は、上記のように、2.0以上が好ましく、3.0以上がより好ましく、3.5~15.0が更に好ましい。
【0052】
また、添加終了時(反応終了時)の反応系では、pHが11以上が好ましく、11.2以上がより好ましい。液Iにアルカリ触媒を入れておく従来の反応系では、反応終了時にpHが11を下回ることが多く、未反応物が発生する要因となっていた。本発明では、上記のように、シリコンアルコキシドに対するアルカリ触媒量や水量を一定にして添加することにより、反応終了時のpHを11以上にできる。
【0053】
この反応は、通常、常圧下で行われる。反応温度としては、使用する溶媒の沸点以下の温度であればよいが、粒子の析出を速めるために、0~65℃が好ましく、10~50℃がより好ましい。
【0054】
本発明の製造方法により製造されたシリカ粒子分散液は、シリコンアルコキシドのオリゴマー等の未反応物の生成が少ない。このため、従来行われていた加熱熟成処理、加熱除去処理、限外濾過などの精製処理を必ずしも行う必要はない。
【0055】
また、添加終了時(反応終了時)のシリカ粒子分散液(反応系)中のシリカ濃度は、従来の方法で製造されるものよりも高く、例えば、5質量%以上であり、10質量%以上が好ましく、10~25質量%がより好ましい。
【0056】
[シリカ粒子分散液]
本発明のシリカ粒子分散液は、平均粒子径(d)が5~300nmの一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子を10%以上含み、未反応物の含有量が200ppm以下である。シリカ粒子分散液は、上記の製造方法により製造できる。シリカ粒子分散液は、研磨材に有用であり、このまま分散体の状態で用いてもよいし、乾燥して用いてもよい。
【0057】
<未反応物>
未反応物とは、目的とするシリカ粒子まで反応が進んでいない含珪素化合物を意味する。例えば、未反応の原料シリコンアルコキシドやその低分子加水分解物(オリゴマー)、目的とする粒子よりはるかに小さい粒子等である。具体的には、日立工機株式会社製 小型超遠心機CS150GXLを用いて、シリカ粒子水分散液を設定温度10℃、1,370,000rpm(1,000,000G)で30分遠心処理した際の上澄み中に存在する含珪素化合物を意味する。
【0058】
《未反応物の含有量の測定方法》
上記上澄み中に存在する含珪素化合物(未反応物)を、株式会社島津製作所製 ICP発光分析装置ICPS-8100で測定したSiからSiO濃度を求める。
【0059】
シリカ粒子分散液は、オリゴマー等の未反応物をほとんど含まないことから、研磨材に用いた場合、研磨材中での粒子安定性に優れると共に、基板への付着物が減少する。また、研磨材に添加される各種薬品の吸着や各種薬品との反応を抑制して、各種薬品の効果が有効に発揮できる。
【0060】
シリカ粒子分散液に含まれるシリカ粒子は、三次元的重縮合構造をとる。これは、シリコンアルコキシドの加水分解および重縮合がアルカリ性側で行われることで、平面状(二次元的)のみに進行するのではなく、立体的(三次元的)に進行するためである。このような構造をもった粒子を用いた研磨材は、粒子の分散性が高く、充分な研磨速度が得られるので好適である。一方、酸性側で加水分解および重縮合を行うと二次元的に進行し、球状粒子が得られない。
その構造は、透過電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡で確認して、粒子として存在することで判断できる。
【0061】
シリカ粒子分散液に含まれる一次粒子の平均粒子径(d)は、5~300nmであり、要求される研磨速度や研磨精度等によって適宜設定することができる。平均粒子径(d)の算出方法について、図1を用いて説明する。図1は、一次粒子が単独で存在する粒子や複数の一次粒子が連結した粒子を例示している。黒塗り部は粒子間の接合部のイメージであり、接合部は空間を含んでいてもよい。粒子径dは、各粒子の一次粒子の最長径を測定したものである。平均粒子径(d)は、電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、各粒子の一次粒子の最長径dを測定し、その平均値として得る。
ここで、平均粒子径が5nm未満の場合は、シリカ粒子分散液の安定性が不充分となる傾向にあり、また粒子径が小さすぎて充分な研磨速度が得られない。平均粒子径が300nmを超える場合は、研磨材として使用した場合、基板または絶縁膜の種類にもよるが、スクラッチが発生しやすく、充分な平滑性が得られないことがある。平均粒子径は10~200nmが好ましく、15~100nmがより好ましい。
【0062】
シリカ粒子分散液は、上記平均粒子径(d)が5~300nmの一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子を10%以上含むものであり、30%以上含むことが好ましく、50%以上含むことがより好ましい。異形シリカ粒子は、一次粒子が2個以上連結しているものであれば特に制限されるものではないが、好ましくは、2~10個程度連結したものである。
【0063】
ここで、異形シリカ粒子の一次粒子の連結個数や、系中における異形シリカ粒子の割合(異形粒子率)は、電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について観察して求める。
【0064】
シリカ粒子分散液に含まれるシリカ粒子は、U、Thの各々の含有量が0.3ppb未満、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量が0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量が1ppb未満が好ましい。この範囲であれば、配線ノードが40nm以下の高集積なロジックやメモリー及び三次元実装用調製用の研磨砥粒として使用可能である。
これら不純分の金属元素の含有量が上述の範囲を超えて多く存在すると、シリカ粒子を用いて研磨した基板に金属元素が残存するおそれがある。この金属元素が半導体基板に形成された回路の絶縁不良を起こしたり回路を短絡させたりする。これによって、絶縁用に設けた膜(絶縁膜)の誘電率が低下し、金属配線にインピーダンスが増大し、応答速度の遅れ、消費電力の増大等が起きることがある。また、金属元素イオンが移動(拡散)し、使用条件や使用が長期にわたった場合にもこのような不具合を生じることがある。特に、U、Thの場合は、放射線を発生するため、微量でも残存した場合に放射線による半導体の誤作動を引き起こす点で好ましくない。
ここで、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを表し、アルカリ土類金属とは、Be,Mg、Ca、Sr,Ba,Raを表す。
【0065】
このような不純分の含有量が少ない高純度シリカ粒子を得るには、粒子を調製する際の装置の材質をこれらの元素を含まず、かつ耐薬品性が高いものにすることが好ましく、具体的には、テフロン(登録商標)、FRP、カーボンファイバー等のプラスチック、無アルカリガラス等が好ましい。
また、使用する原料については、蒸留・イオン交換・フィルター除去で精製することが好ましい。特にアルコキシドの加水分解時に使用するアルコールは、タンク等からの金属不純分や合成時の触媒が残存するおそれがあり、特に精度の高い精製を必要とする場合がある。
【0066】
高純度シリカ粒子を得る方法としては、上述のように、予め不純分の少ない原料を準備したり、粒子調製用の装置からの混入を抑えたりする方法がある。これ以外にも、そのような対策を充分にとらずに調製された粒子から不純分を低減することは可能である。ただし、不純分がシリカ粒子内に取り込まれている場合、イオン交換やフィルター除去で精製することは効率が悪く、高コストになるおそれがある。このため、このような方法で、不純分の含有量が少ないシリカ粒子を得るのは現実的でない。
【0067】
《金属元素含有量の測定》
シリカ粒子中のU、Thの含有量、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの含有量、およびCu、Ni、Crの含有量については、シリカ粒子をフッ酸で溶解し、加熱してフッ酸を除去した後、必要に応じて純水を加え、得られた溶液についてICP誘導結合プラズマ発光分光質量分析装置(例えば、株式会社島津製作所製 ICPM-8500)を用いて測定する。
【実施例
【0068】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
〈シリカ粒子分散液(SA)の製造〉
メタノール(液I)300.0gを50℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシラン(多摩化学工業(株)製、以下同じ)のメタノール溶液(液A)2994.4gと、アンモニア水(液B)800.0gとを同時に5時間かけて添加した。反応終了時のシリカ粒子分散液のシリカ濃度は、14.2質量%であった。添加終了後、さらにこの温度で1時間熟成した。溶媒を純水に置換し、シリカ濃度20質量%のシリカ粒子分散液(SA)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図2に示す。さらに、系内シリカ濃度の変化を図3に示す。
【0070】
《アルカリ触媒及び水のシリコンアルコキシドに対するモル比、及びその変化率》
アルカリ触媒/シリコンアルコキシド、水/シリコンアルコキシドの各モル比は、添加重量実測値を基に、シリコンアルコキシドの加水分解及び重縮合の反応は瞬時に起こるもの、アルカリ触媒は系外への放出はないものと仮定して算出した。液A及び液Bの添加開始10分後から、10分毎の反応系内のモル比を算出した。液A及び液Bの添加直後のモル比(理論値)を初期値として、かかる初期値で除した数値で、系内の各物質モル比の変化を比較した。
【0071】
Si(OR)+4HO → Si(OH)+4ROH
(加水分解時に4モル消費)
Si(OH) → SiO + 2H
(重縮合時に2モル放出)
【0072】
《系中シリカ濃度》
10分毎にサンプルを採取し、サンプル5gを1000℃で1時間乾燥させ、乾燥前後の質量から、系中シリカ濃度を算出した(下記式)。
系中シリカ濃度(質量%)=(乾燥後の質量/乾燥前の質量)×100
【0073】
《未反応物量》
未反応物量は、得られたシリカ濃度20質量%のシリカ粒子分散液を、日立工機株式会社製 小型超遠心機CS150GXLを用いて、設定温度10℃、1,370,000rpm(1,000,000G)で30分遠心処理した際の上澄み中に存在する含珪素化合物(未反応物)を、株式会社島津製作所製 ICP発光分析装置ICPS-8100で測定したSiから求めたSiO濃度で比較した。
【0074】
《一次粒子の平均粒子径》
一次粒子の平均粒子径は、シリカ粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について、図1に例示するように一次粒子の最も径が長い部分(鎖状粒子の短径方向の場合もあり)を測定し、その平均値として得た。
《一次粒子径のCV値》
一次粒子径のCV値は、上記の個々の結果を用い、計算により求めた。
【0075】
《系中における異形シリカ粒子の割合(異形粒子率)》
電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について観察し、一次粒子が2個以上連結した異形シリカ粒子の割合を求めた。
【0076】
《異形シリカ粒子の一次粒子の連結個数》
電子顕微鏡写真を撮影し、任意の100個の粒子について観察し、各粒子の連結個数の平均値を求めた。
【0077】
〈研磨材(SA)の製造〉
実施例1で製造したシリカ粒子を3.0質量%、ヒドロキシエチルセルロース(H E C)を175ppm、アンモニアを225ppm含有する研磨材(SA)を調製した。
【0078】
《研磨材(スラリー)の安定性試験》
研磨材(スラリー)の安定性は、〈研磨材(SA)の製造〉で調製された研磨材(SA)の白濁の有無で評価した。結果を表1に示す。
白濁なし :○
白濁あり :×
【0079】
《研磨試験》
研磨用基板(結晶構造が1.0.0である単結晶シリコンウエハー)を用い、研磨装置(ナノファクター(株)製 NF300)にセットし、研磨パッドSUBA600、基板加重15kPa、テーブル回転速度50rpm、スピンドル速度60rpmで、上記研磨材(SA)を250ml/分の速度で研磨用基板の研磨を10分間行った。その後、純水にて洗浄し風乾した。
【0080】
その後、得られた研磨基板の研磨表面を観察し、表面の平滑性を以下の基準(スクラッチの程度)で評価した。結果を表1に示す。
スクラッチはほとんど認められない。 :○
スクラッチが僅かに認められる。 :△
スクラッチが広範囲に認められる。 :×
【0081】
研磨基板上のシリカ成分の残存について、レーザー顕微鏡(株式会社キーエンス製 VK-X250)を用いて残存の程度を確認し、下記の評価基準で評価した。結果を表1に示す。
残存はほとんど認められない。 :○
残存が僅かに認められる。 :△
残存が広範囲に認められる。 :×
【0082】
[実施例2]
〈シリカ粒子分散液(SB)の製造〉
メタノール(液I)206.0gを25℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)2003.3gと、アンモニア水(液B)784.0gとを同時に10時間かけて添加した。反応終了時のシリカ粒子分散液のシリカ濃度は、12.9質量%であった。添加終了後、さらにこの温度で1時間熟成した。溶媒を純水に置換し、シリカ濃度20質量%のシリカ粒子分散液(SB)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図4に示す。さらに、系内シリカ濃度の変化を図5に示す。
【0083】
シリカ粒子分散液(SB)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SB)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[実施例3]
〈シリカ粒子分散液(SC)の製造〉
メタノール(液I)150.0gを60℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)2994.4gと、アンモニア水(液B)800.0gとを同時に5時間かけて添加した。反応終了時のシリカ粒子分散液のシリカ濃度は、14.7質量%であった。添加終了後、さらにこの温度で1時間熟成した。溶媒を純水に置換し、シリカ濃度20質量%のシリカ粒子分散液(SC)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図6に示す。さらに、系内シリカ濃度の変化を図7に示す。
【0085】
シリカ粒子分散液(SC)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SC)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0086】
[実施例4]
〈シリカ粒子分散液(SD)の製造〉
メタノール(液I)500.0gを40℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)2794.4gと、アンモニア水(液B)800.0gとを同時に8時間20分(500分間)かけて添加した。反応終了時のシリカ粒子分散液のシリカ濃度は、14.2質量%であった。添加終了後、さらにこの温度で1時間熟成した。溶媒を純水に置換し、シリカ濃度20質量%のシリカ粒子分散液(SD)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図8に示す。さらに、系内シリカ濃度の変化を図9に示す。
【0087】
シリカ粒子分散液(SD)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(SD)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例1]
〈シリカ粒子分散液(RA)の製造〉
メタノール2268.0g、純水337.5g、29%アンモニア水94.5gからなる液Iを40℃に保持し、この液Iに対して、テトラメトキシシランのメタノール溶液(液A)2170.0gを160分かけて添加した。反応終了時のシリカ粒子分散液のシリカ濃度は、14.0質量%であった。添加終了後、さらにこの温度で1時間熟成した。溶媒を純水に置換し、シリカ濃度20質量%のシリカ粒子分散液(RA)を得た。詳細な処理条件、及び各種測定結果を表1に示す。また、触媒割合変化率及び水割合変化率の経時変化を図10に示す。さらに、系内シリカ濃度の変化を図11に示す。
【0089】
シリカ粒子分散液(RA)を用いた以外は実施例1と同様に研磨材(RA)を製造し、実施例1と同様に安定性試験及び研磨試験を行った。結果を表1に示す。
【0090】
なお、いずれの実施例及び比較例においても、シリカ粒子中のU、Thの各々の含有量は0.3ppb未満であり、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの各々の含有量は0.1ppm未満、Cu、Ni、Crの各々の含有量は1ppb未満であった。
【0091】
《金属元素含有量》
シリカ粒子中の各金属元素量の含有量については、シリカ粒子をフッ酸で溶解し、加熱してフッ酸を除去した後、必要に応じて純水を加え、得られた溶液についてICP誘導結合プラズマ発光分光質量分析装置(例えば、株式会社島津製作所製 ICPM-8500)を用いて測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
表1に示すように、実施例1~4で製造されたシリカ粒子分散液は、異形のシリカ粒子が効率的に生成されていることがわかる。また、比較例1と比較して未反応物の生成量が少なく、スラリー安定性や研磨特性の点でも優れていた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11