(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】バルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造とその開閉位置設定方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20220407BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
F16K31/04 K
F16K37/00 D
(21)【出願番号】P 2018090643
(22)【出願日】2018-05-09
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】唐沢 仁
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125554(JP,A)
【文献】特開2013-249810(JP,A)
【文献】特開2011-074935(JP,A)
【文献】特開2009-162366(JP,A)
【文献】特開2006-115610(JP,A)
【文献】特開2001-099347(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104089024(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの回転が減速歯車列を介して出力軸に伝達されるアクチュエータと、このアクチュエータの出力軸に弁体のステムが接続されて回転駆動されるバルブとの開閉位置を設定するための開閉位置設定構造であって、前記出力軸と同軸に設けられた制御軸の回転角度を計測するロータリーエンコーダと、前記出力軸側のバルブの固定位置に着脱自在に固定されて前記出力軸をバルブ開閉位置に回転規制する治具とが設けられ、この治具で前記出力軸の回転が規制されたときの前記制御軸の状態を前記ロータリーエンコーダで計測して前記アクチュエータのバルブ開閉位置が設定されることを特徴とするバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造。
【請求項2】
前記治具は、前記アクチュエータに形成されたバルブ固定用の雌螺子に挿着可能な突起部を有し、この突起部を介して前記アクチュエータのバルブ取付け位置に固定される請求項1に記載のバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造。
【請求項3】
前記治具は、前記アクチュエータへの取付け用の取付部材を有し、この取付部材に形成された規制溝に対して回転する回転部材が取付けられ、この回転部材は、前記出力軸の端部に形成された凹状溝に凹凸嵌合して前記出力軸と同軸に回転させる嵌合部を有し、この嵌合部の遠心方向に突出して形成された規制部が前記規制溝のバルブ開閉位置で当接して前記出力軸を前記ステムの回転角度に規制する状態に設けられた請求項1又は2に記載のバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造。
【請求項4】
前記規制溝が略90°或は略180°に形成された請求項3に記載のバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造。
【請求項5】
前記ロータリーエンコーダは、非接触のエンコーダICを有し、このエンコーダICに対向して前記制御軸の上端側に被検出体が一体に装着された請求項1乃至4の何れか1項に記載のバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造。
【請求項6】
電動モータの回転が減速歯車列を介して出力軸に伝達されるアクチュエータと、このアクチュエータの出力軸に弁体のステムが接続されて回転駆動されるバルブとの開閉位置を設定する開閉位置設定方法であって、前記出力軸と同軸に設けられた制御軸にその回転角度を計測するロータリーエンコーダを設けると共に、前記出力軸側のバルブ固定位置に前記出力軸をバルブ開閉位置に規制する治具を着脱自在に固定し、この治具で前記出力軸の回転を規制したときの前記制御軸の状態を前記ロータリーエンコーダで計測し、前記アクチュエータのバルブ開閉位置を設定するようにしたことを特徴とするバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定方法。
【請求項7】
前記治具を前記アクチュエータから取外し、この治具の取付け位置にバルブを接続してこのバルブのステムを前記出力軸と同軸に回転させるようにした請求項6に記載のバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定方法。
【請求項8】
前記出力軸が前記治具で規制される直前で、前記出力軸の回転を減速させるようにした請求項6又は7に記載のバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ用電動アクチュエータの開閉位置を設定する構造に関し、特に、ボール弁等の回転弁の開閉位置を設定する場合に適した開閉位置設定構造とその開閉位置設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ボール弁等の回転弁に電動アクチュエータを搭載する場合、このバルブを正確に回転制御するためには、電動アクチュエータの出力軸に連結したバルブのステム(弁体)の動作角度を調整する必要がある。この場合、一般には、アクチュエータの出力軸をバルブの全開及び全閉位置となるように調整し、これによりアクチュエータ駆動時に、バルブを全開、全閉、及び任意の中間開度に流量制御することが可能になっている。
【0003】
このようなアクチュエータの開閉位置の設定を実施する場合、マイクロスイッチとカムとによる接触型の位置検出装置や、光学式や磁気式などのロータリーエンコーダによる非接触型の位置検出装置を利用して調整することが多く、或はステッピングモータを用いて出力軸の回転角度を制御する技術も知られている。
【0004】
このうち、接触型の位置検出装置を用いた位置調整の場合、全閉、全開の各停止位置を正確に設定するためには、特にカムの位置調整に多大な時間と工数が必要となる。これに加えて、シロキサンガス等のガスの発生する環境下でバルブを使用すると、接点部に絶縁物の生成付着や接点部金属の酸化、腐食により接点障害などが発生して位置検出が不正確になり、寿命も低下しやすくなるという問題も有している。
一方、ステッピングモータを用いて出力軸の回転を制御する場合、ステッピングモータの搭載によりアクチュエータ全体が大型化し、しかも、ステッピングモータが高価であることから汎用的ではない。
これらに比較して、非接触型の位置検出装置を用いる場合、汎用的な直流モータを使用して全体のコンパクト性を確保しつつアクチュエータを構成し、接触型の位置検出装置の問題を解消した状態で出力軸の回転制御が可能になっている。
【0005】
この種の非接触型の位置検出装置を用いてバルブを回転制御するものとして、例えば、特許文献1におけるバルブ用アクチュエータが開示されている。このバルブ用アクチュエータの全閉位置設定装置では、位置検出装置として非接触型のロータリーエンコーダが用いられ、このロータリーエンコーダで出力軸の回転角度を計測し、バルブの全閉時の角度のずれを補正することで、バルブの開放角度を指令角度に近づけようとするものである。
このようにロータリーエンコーダでアクチュエータの出力軸を回転制御する場合には、ロータリーエンコーダが設置された出力軸をバルブのステムの開閉状態に調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のアクチュエータの場合、出力軸を全閉・全開状態に調整する際に、この出力軸には回転が規制されていない状態のバルブステムが接続されるため、出力軸が全閉及び全開位置以上に回転するようになっている。このため、ステムを開閉状態に正確に合わせた状態にしつつ、出力軸を介してアクチュエータをバルブ開閉位置に調整する必要があり、正確に設定するためには手間がかかる。
【0008】
さらには、アクチュエータ内の減速歯車列のバックラッシによって出力軸の回転にずれが生じたり、或は直流モータを動力としたときにその電機子の慣性モーメントが高くなったりモータ自体の回転数が多くなって停止時にオーバーランが生じることもあるため、出力軸の調整がより困難になって微調整の必要が生じる。
上記の出力軸の位置調整は、弁種やバルブの個体差などに応じてバルブごとに実施する必要があるため、その都度、バルブにアクチュエータを搭載してステムに連結した状態の出力軸を調整することになる。
【0009】
これに加えて、特許文献1のアクチュエータでは、出力軸の計測用として、いわゆるアブソリュート形と呼ばれる絶対角度計測用のロータリーエンコーダが用いられている。このタイプのエンコーダを用いた場合、出力軸のゼロ合わせをするために微細な調整が必要になり、アクチュエータ内部の構造が複雑になってアクチュエータ全体の大型化することになる。
【0010】
アブソリュート形を用いる場合、高精度、高分解能で出力軸を設定するためには光学式ロータリーエンコーダを用いることが多く、この光学式ロータリーエンコーダは、ガスによる生成物の付着、粉塵や油分などの汚染に弱いことから微調整が一層難しくなり、高分解能化するためには光学系や内部機構が複雑になってエンコーダ全体が大型化したり高価格化にもつながる。
一方、光学式に比較して簡易型である磁気式のロータリーエンコーダを使用しようとしても、その精度が光学式よりも劣ることから、アクチュエータ出力軸の全閉及び全開位置の設定が難しくなり設定時間も長くなる。
【0011】
本発明は、従来の課題を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、バルブ用電動アクチュエータの出力軸をバルブのステムの開閉位置に調整する設定構造であり、アクチュエータの大型化や内部構造の複雑化を防ぎつつ、出力軸側を全閉又は全開状態に高精度に規制して出力軸のバルブ開閉状態を正確かつ簡便に調整でき、しかも、バルブを必要とすることなくアクチュエータ単独で開閉位置を調整できるバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造とその開閉位置設定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、電動モータの回転が減速歯車列を介して出力軸に伝達されるアクチュエータと、このアクチュエータの出力軸に弁体のステムが接続されて回転駆動されるバルブとの開閉位置を設定するための開閉位置設定構造であって、出力軸と同軸に設けられた制御軸の回転角度を計測するロータリーエンコーダと、出力軸側のバルブの固定位置に着脱自在に固定されて出力軸をバルブ開閉位置に回転規制する治具とが設けられ、この治具で出力軸の回転が規制されたときの制御軸の状態をロータリーエンコーダで計測してアクチュエータのバルブ開閉位置が設定されるバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造である。
【0013】
請求項2に係る発明は、治具は、アクチュエータに形成されたバルブ固定用の雌螺子に挿着可能な突起部を有し、この突起部を介してアクチュエータのバルブ取付け位置に固定されるバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造である。
【0014】
請求項3に係る発明は、治具は、アクチュエータへの取付け用の取付部材を有し、この取付部材に形成された規制溝に対して回転する回転部材が取付けられ、この回転部材は、出力軸の端部に形成された凹状溝に凹凸嵌合して出力軸と同軸に回転させる嵌合部を有し、この嵌合部の遠心方向に突出して形成された規制部が規制溝のバルブ開閉位置で当接して出力軸をステムの回転角度に規制する状態に設けられたバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造である。
【0015】
請求項4に係る発明は、規制溝が略90°或は略180°に形成されたバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造である。
【0016】
請求項5に係る発明は、ロータリーエンコーダは、非接触のエンコーダICを有し、このエンコーダICに対向して制御軸の上端側に被検出体が一体に装着されたバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造である。
【0017】
請求項6に係る発明は、電動モータの回転が減速歯車列を介して出力軸に伝達されるアクチュエータと、このアクチュエータの出力軸に弁体のステムが接続されて回転駆動されるバルブとの開閉位置を設定する開閉位置設定方法であって、出力軸と同軸に設けられた制御軸にその回転角度を計測するロータリーエンコーダを設けると共に、出力軸側のバルブ固定位置に出力軸をバルブ開閉位置に規制する治具を着脱自在に固定し、この治具で出力軸の回転を規制したときの制御軸の状態をロータリーエンコーダで計測し、アクチュエータのバルブ開閉位置を設定するようにしたバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定方法である。
【0018】
請求項7に係る発明は、治具をアクチュエータから取外し、この治具の取付け位置にバルブを接続してこのバルブのステムを出力軸と同軸に回転させるようにしたバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定方法である。
【0019】
請求項8に係る発明は、出力軸が治具で規制される直前で、出力軸の回転を減速させるようにしたバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定方法である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によると、ロータリーエンコーダと治具とを用いてバルブ用電動アクチュエータの出力軸をバルブのステムの開閉位置に調整でき、アクチュエータの大型化や内部構造の複雑化を防ぎつつ、出力軸側のバルブ固定位置に固定した治具を介して出力軸を全閉又は全開状態に高精度に規制した状態で、この出力軸と同軸の制御軸の回転をロータリーエンコーダで計測して出力軸のバルブ開閉状態の調整を正確かつ簡便に実施可能となる。この場合、治具で出力軸の回転を規制していることで、バルブに搭載することなくアクチュエータ単独で開閉位置を調整できる。
【0021】
請求項2に係る発明によると、突起部をバルブ固定用の雌螺子に挿着することで、アクチュエータのバルブ固定位置に治具を固定した状態で、この治具によりアクチュエータの出力軸の回転を規制できる。このため、出力軸を雌螺子に固定されるバルブの開閉角度に正確に規制でき、この出力軸の開閉状態をロータリーエンコーダで調整可能になる。
【0022】
請求項3に係る発明によると、取付部材の規制溝を回転部材が回転し、この回転部材の嵌合部がアクチュエータの出力軸の凹状溝に凹凸嵌合しつつ、規制部が規制溝のバルブ開閉位置で当接して出力軸をステムの回転角度に規制することにより、治具を装着するのみで出力軸の回転角度をバルブの開閉状態に強制的かつ正確に合わせて出力軸を高精度に位置合わせできる。
【0023】
請求項4に係る発明によると、規制溝を略90°に設けることでバルブを装着することなく二方型のボール弁の全閉及び全開位置に合わせて出力軸を正確に調整でき、また、規制溝を略180°に設けることで出力軸を三方切換式のボール弁の流路に合わせて切換え可能になる。
【0024】
請求項5に係る発明によると、非接触のロータリーエンコーダと被検出体とを有するロータリーエンコーダを用いることにより、構成を簡略化して全体をコンパクト化でき、ガスの発生環境下であってもこのガスによる悪影響を抑えた状態で位置検出し、長期に渡って正確に開閉制御できる。被検出体をマグネットとし、エンコーダICを磁気式エンコーダICとし、マグネットを装着した制御軸と磁気式エンコーダICとの相対的角度を検出するインクリメンタル形とすることで、出力軸のゼロ合わせをおこなうことなく、開閉位置の調整の手間を省いて自動化を図れるため調整工数を大幅に削減でき、また、製造も容易となる。ロータリーエンコーダの小型化を図りながら、微細に調整して正確に開閉制御できる。
【0025】
請求項6に係る発明によると、ロータリーエンコーダと治具とを用いてバルブ用電動アクチュエータの出力軸をバルブのステムの開閉位置に調整でき、アクチュエータの大型化や内部構造の複雑化を防ぎつつ、治具を介して出力軸を全閉又は全開状態に高精度に規制した状態で、この出力軸のバルブ開閉状態の調整を正確かつ簡便に実施可能となる。しかも、アクチュエータに対して治具を容易に着脱可能であり、この治具で出力軸の回転を規制していることで、バルブに搭載することなくアクチュエータ単独で開閉位置を調整できる。
【0026】
請求項7に係る発明によると、治具を用いてアクチュエータ出力軸の全開及び全閉位置を正確に調整した後に、バルブを接続して出力軸からの回転量を正確にステムを介して伝達して開閉位置を高精度に制御可能となる。一つの治具で多数のアクチュエータのバルブ開閉位置の設定をおこなうこともき、治具の着脱も容易であるため、設定作業も容易になる。
【0027】
請求項8に係る発明によると、出力軸等の内部部品や治具の消耗及び損傷を防ぎ、バルブの開閉位置を正確に制御可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】アクチュエータに治具を装着する前の状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1の要部拡大斜視図である。(b)は治具を装着した状態を示す斜視図である。
【
図3】(a)は、
図1における治具を示す斜視図である。(b)は、治具の他例を示す斜視図である。
【
図5】(a)は、アクチュエータのカバーを外した状態を示す一部切欠き正面図である。(b)は、(a)の要部拡大図である。
【
図6】磁気式エンコーダの動作状態を示す模式図である。
【
図7】アクチュエータをバルブに搭載した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明におけるバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造とその開閉位置設定方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、アクチュエータに治具を装着する前の状態を示し、
図2は、治具装着部付近の要部拡大図を示している。本発明は、アクチュエータとこのアクチュエータで回転するバルブとの開閉位置を設定するための開閉位置設定構造であり、治具を用いてアクチュエータの開閉位置を正確に設定するものである。
【0030】
図1において、バルブ用電動アクチュエータ(以下、アクチュエータという)1は、電動モータ2、減速歯車列3、出力軸4、制御用基板5、内部を覆うためのカバー7を有し、このアクチュエータ1に治具6が取付けられる。出力軸4には、ボール弁よりなるバルブ10の弁体11のステム12が接続可能に設けられる。
【0031】
図5において、アクチュエータ1は円形枠状の基台15を有し、この基台15の内部に減速歯車列3が収容され、この減速歯車列3の上方に円板状の仕切板16が取付けられ、この仕切板16の上面から柱状のスペーサ17が適宜間隔で複数箇所に立設され、このスペーサ17に基板5が固定されている。これにより、基板5は、仕切板16から所定間隔で配置される。
図1に示すように、基台15の底面には、
図7のバルブ10の取付フランジ13をネジ19で固定するための2つの雌螺子14が所定間隔で設けられている。
【0032】
電動モータ2は、一般的な構造のDC(直流)ブラシレスモータよりなり、仕切板16の上面に固定される。電動モータをDCブラシレスモータとした場合、機械的に摺動する接点部分がなく、整流時に火花やアーク放電の発生を回避して絶縁物の生成を抑え、動作時のデッドポイントを防止する。これにより、開閉位置を調整した出力軸をその回転範囲で高精度に回転させ、信頼性の高い電動バルブを提供可能になる。また、絶縁低下を防いで長期に渡って動作を高精度に維持する。電動モータ2には、アクチュエータ1の外部からケーブル18が接続可能に設けられ、このケーブル18並びに制御用基板5を介して図示しない外部電源から電圧が供給されて回転するようになっている。
【0033】
図5において、減速歯車列3は、図示しない入力軸と、出力軸4とを有し、電動モータ2からの回転が入力軸に入力され、その減速回転が出力軸4にトルクが増幅された状態で伝達される。
【0034】
出力軸4は、基台15の底面から突出して設けられ、その下端部には凹状溝20が形成される。この凹状溝20には、バルブ10のステム12の上端に形成された平行二面部21が嵌合可能に設けられ、これら凹状溝20と平行二面部21との凹凸嵌合により、出力軸4にステム12が接続される。これらの接続により、減速歯車列3により減速された電動モータ2の回転は、出力軸4からステム12に伝達され、このステム12に接続された弁体11が回転駆動される。
その際に、本発明のアクチュエータの開閉位置設定構造によって、アクチュエータ1の出力軸4とバルブ10との開閉位置が設定される。
【0035】
出力軸4には、同軸に制御軸22が設けられ、この制御軸22が出力軸4と一体に連動して回転する。制御軸22は、その上端側が仕切板16から突出して基板5に対向するように配置され、これら基板5と制御軸22との間にロータリーエンコーダ30が設けられる。
【0036】
ロータリーエンコーダ30は、制御軸22(出力軸4)の回転角度を計測するために設けられ、本例では、非接触の磁気式からなり、非接触の磁気式のエンコーダIC31、このエンコーダICより検出される被検出体であるマグネット32を有している。ロータリーエンコーダは、被接触式であれば磁気式に限ることはなく、例えば光学式を用いるようにしてもよい。
【0037】
図5、
図6において、エンコーダIC31は、基板5の制御軸22との対向側に配置され、マグネット(被検出体)32の回転角度を検出可能な情報が記録されている。マグネット32は、例えば、φ8mm~φ10mm程度の略円筒形状の永久磁石からなり、N極とS極とが厚み方向に二極面着磁され、制御軸22の上端側に保持用ホルダ33を介して装着される。
【0038】
図5(b)に示すように、ホルダ33は略円筒状に形成され、このホルダ33の上部と下部には切欠溝34が軸方向に沿って交互に設けられ、この切欠溝34によりホルダ33は径方向に拡縮変形可能に設けられる。ホルダ33は切欠溝34を介して、上部にマグネット32が装着された状態で、その下部が制御軸22の上端部に固定される。このホルダ33を介して、マグネット32が制御軸22に任意の着磁角度で取付けられ、制御軸22が回転したときには、この制御軸22と一体にマグネット32が回転する。マグネットはエンコーダIC31から数ミリ程度の間隙を介して対向状態で配置される。
【0039】
制御軸22(出力軸4)の回転角度の検出は、マグネット32のN極とS極とによる漏洩磁束をエンコーダIC31に鎖交させて、このエンコーダIC31の内部に配置された図示しないホール素子からの出力電圧より連続してベクトル演算して角度アナログ信号を得た後、この角度アナログ信号をデジタル信号に変換することで得られる。
【0040】
この場合、エンコーダIC31の角度アナログ信号は、高速シリアル通信によりMPUに基板上の銅箔パターンを通じてデジタル信号に伝達され、これによって出力軸の正確な回転角度のデータが得られる。
【0041】
このように、エンコーダIC31を介して、制御軸22のマグネット32の回転を信号として後述のMPU(中央演算処理装置)40に取り込むことで、アクチュエータ1の出力開度の絶対値をデジタル値として得るようにし、制御軸22の回転状態を計測する。前述のマグネット32は、ホルダ33により制御軸22(出力軸4)の軸心と一致した状態で取付けられて制御軸22(出力軸4)と同軸に回転する。このマグネット32の回転を非接触式のエンコーダIC31で計測することで、電子式無接点の状態になって接点障害が防がれている。
【0042】
このようにして、
図6に示すエンコーダIC31とマグネット32との関係において、例えば、
図6(a)から
図6(d)までの何れの制御軸22(マグネット32)の回転状態であっても、エンコーダIC31により高精度に計測可能となる。
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)、
図6(d)は、制御軸22がそれぞれ、0°、90°、180°、270°回転したときのマグネット32の極性を示しており、バルブ10が90°開閉式の2方ボール弁の場合には、
図6(a)を弁閉状態、
図6(b)を弁開状態とすればよい。また、3方ボール弁の場合、制御軸22が、
図6(a)から
図6(c)までの180°回転するときのマグネット32の極性により回転状態を計測可能になっている。
【0043】
図1~
図3において、治具6は、アクチュエータ1への取付け用の取付部材41と、この取付部材41に回転自在に装着される回転部材42を有している。
【0044】
取付部材41は、コンパクトな矩形状に形成され、アクチュエータ1への取付け側に2つの小円柱状の突起部43が形成される。突起部43は、アクチュエータ1(基台15)のバルブ10固定用の2つの雌螺子14に対応する位置に形成され、この雌螺子14に挿着可能に設けられる。治具6は、突起部の43雌螺子14への挿着を介して、アクチュエータ1の所定のバルブ取付け位置にずれを防いだ状態で固定可能となる。
【0045】
取付部材41の取付け面側には、略扇状で有底の規制溝45が形成される。
図3(a)において、規制溝45は、バルブ10の開閉角度である90°或は開閉時のあそびを含めた90°以上に形成され、この規制溝45に回転部材42が取付けられる。また、
図3(b)においては、規制溝の他例を示しており、この規制溝46は、180°或は開閉時のあそびを含めた180°以上に形成された状態を示している。
【0046】
このように、規制溝は、略90°或は略180°に形成され、或はこれら以外の角度に形成されていてもよい。
図3(a)における規制溝45、
図3(b)における規制溝46の各両端側には、規制端面47がそれぞれ形成され、この各規制端面47に回転部材42が当接可能になっている。
【0047】
図2に示す回転部材42は、回転軸部50、嵌合部51を有し、回転軸部50の端部に矩形状の嵌合部51が一体に形成される。回転軸部50は、回転部材42を規制溝45(46)に取付けたときの回転中心であり、出力軸4と同軸となる位置に設けられる。嵌合部51は、出力軸4の凹状溝20に凹凸嵌合可能な幅に形成され、これら嵌合部51、凹状溝20の凹凸嵌合を介して回転部材42が出力軸4と同軸に回転するように取付けられる。嵌合部51の遠心方向には、この嵌合部51と一体に規制部52が突出して形成される。
【0048】
回転部材42は、嵌合部51が凹状溝20に装着された状態で規制溝45に回転可能に取付けられ、規制部52が規制溝45のバルブ開閉位置となる規制端面47、47に当接することで、回転部材42に接続される出力軸4がステム12の回転角度に規制される。図示しないが、嵌合部51はくさび状に形成されていてもよく、この場合、嵌合部51が凹状溝20に食い込むように嵌合し、回転部材42が出力軸4に対してガタの無い状態で一体に回転する。
【0049】
図1~
図3において、治具6は、突起部43の雌螺子14への挿着により出力軸4側のバルブ10の固定位置に着脱自在に固定され、この状態で出力軸4がバルブ10の開閉位置に回転規制される。この治具6を用いて出力軸4の回転を所定の開閉状態に強制的に規制し、このときの制御軸22の回転状態をロータリーエンコーダ30で計測することで、アクチュエータ1のバルブ開閉位置を設定可能に設けている。
【0050】
図4において、前述の基板5には、エンコーダIC31以外にも、モータ駆動回路60、モータ回生制動回路61、モータトルク制御回路62、自動角度設定機能選択スイッチ63、入出力インターフェース回路64、電源回路65、モード設定回路66が設けられ、これらはそれぞれ前述したMPU40に接続される。
【0051】
MPU40は、基板5上の回路に接続され、アクチュエータ1全体の制御をおこなうようになっている。MPU40の内部にはEEPROM70が内蔵され、このEEPROM70には、制御軸22を所定の開閉角度に制御するための制御角度データが格納(記録)されている。
【0052】
モータ駆動回路60は、電動モータ2駆動用の回路として電動モータ2に接続される。モータ回生制動回路61は、電動モータ2に制動を加えるために設けられる。このモータ回生制動回路61を、慣性モーメントの低いエンコーダIC31及びDCブラシレスモータ(電動モータ)2に組み合わせることで、惰走量を抑えて精度の高い位置検出を可能にし、ステム12回転時のトルクの増減変化の影響を受けることなく、バルブ10を安定してタイトシャット、フルオープン動作させる。
【0053】
モータトルク制御回路62は、治具6で出力軸4を全閉から全開位置までの回転範囲に規制するときに、減速歯車列3、出力軸4、電動モータ2、モータ駆動回路60、電源回路65へのストレスを抑えるために、電動モータ2の最大出力トルク値の低減用として設けられる。一方、治具6の非装着状態で回転の規制が必要でない場合には、アクチュエータ1の許容最大トルク値以上のトルクの発生を抑えるために、電流制限をおこなうようになっている。
【0054】
自動角度設定機能選択スイッチ63は、アクチュエータ1の自動角度を切替える機能を備えている。このスイッチ63により、本実施形態では、「自動角度設定モード」、或は「通常動作モード」の各モードに切替え可能になっており、MPU40の内部に備えられたファームウェア(ソフトウェア)のフローを切替えることで各モードを選択可能になっている。「自動角度設定モード」は、アクチュエータ1の開閉位置設定方法で出力軸4の開閉位置を設定するときに使用する運転モードであり、一方、「通常動作モード」は、開閉位置の設定後にアクチュエータ1にバルブ10を取付け、このバルブ10を通常時に開閉制御するときの運転モードを表している。
【0055】
入出力インターフェース回路64は、アクチュエータ1の開閉指令入力信号、開閉出力信号をユーザ回路と整合させるために設けられる。電源回路65は、図示しない電源供給端子から供給される電力を、アクチュエータ1内部で使用するモータ用電源、制御用電源の仕様に整合させて電力を供給するために設けられる。モード設定回路66は、アクチュエータ1を180°開閉動作時のモードを設定するために設けられる。
【0056】
続いて、バルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定方法並びに作用を述べる。
図1~
図5において、アクチュエータ1の開閉位置を、90°開閉のボール弁よりなるバルブ10の動作角度に設定する場合、制御軸22にロータリーエンコーダ30(エンコーダIC31、マグネットからなる被検出体32)を設けると共に、出力軸4側のバルブ固定位置に治具6を固定し、この治具6により規制される出力軸4と一体に回転する制御軸22をロータリーエンコーダ30で計測することによりバルブ開閉位置を設定する。
【0057】
この場合、モータトルク制御回路62により低トルク駆動モードを設定し、この低トルク駆動モードで出力軸4が治具6で回転規制される直前で、出力軸4の回転を減速させるようにしている。このように電動モータ2のトルクを低減し、この状態で出力軸4(制御軸22)に接続された回転部材42の規制部52を規制端面47に当接させて位置規制することで高精度に調整可能になって信頼性も向上する。以下に、開閉位置設定方法の手順を詳述する。
【0058】
アクチュエータ1の開閉角度を設定する場合、前述の「自動角度設定モード」により、以下の(1)~(12)の手順で実施する。
【0059】
(1)外部電源をオフにして電圧を供給していない状態で、自動角度設定機能選択スイッチ62を「自動角度調整モード」に切替える。
【0060】
(2)アクチュエータ1を上下逆向きとした状態で、凹状溝20に嵌合部51を凹凸嵌合させつつ、2箇所の雌螺子14、14に突起部43、43をそれぞれ挿着させて基台15の底面に所定の向きで治具6を固定する。これによって、治具6により出力軸4(制御軸22)を回転規制可能となる。
【0061】
(3)この状態で外部電源をオンにすると、MPU40内に備えられたソフトウェアが「自動角度調整モード」に切り替わると同時に、モータトルク制御回路62が低トルク駆動モードとなり、電動モータ2を全閉方向に回転させる。
【0062】
(4)電動モータ2の回転することで出力軸4が全閉方向に回転する。回転部材42の規制部52が規制溝45の全閉側の規制端面47に当接したときに回転が停止し、出力軸4が全閉状態となる。その際、モータトルク制御回路62の低トルク駆動モードにより、減速歯車列3、出力軸4、制御軸22が最低限のトルクで回転するように抑制している。このため、出力軸4と一体回転する規制部52が規制端面47に当接したときに、減速歯車列3、出力軸4、制御軸22、電動モータ2、図示しないモータ駆動回路等が破損や故障するおそれがない。
【0063】
(5)出力軸4が全閉位置で停止したときには、エンコーダIC31による角度データ値の変化が停止し、この変化停止状態が予め設定された時間継続したときにバルブの全閉位置として認識され、この状態をMPU40内のEEPROM70に全閉位置データとして記録する。或は、エンコーダIC31にリセット信号を送り、角度データをゼロとし、このゼロの値をEEPROM70に全閉位置データとして記録する。
【0064】
(6)全閉位置の記録後には、電動モータ2への通電がオフとなりその回転が停止する。
【0065】
(7)次いで、モータトルク制御回路62による低トルク駆動モードを維持した状態で、電動モータ2が全開方向に回転駆動する。
【0066】
(8)出力軸4が全開方向に回転し、回転部材42の規制部52が全閉側の規制端面47に当接したときに回転が停止し、出力軸4が全開状態となる。この場合にも、全閉方向の場合と同様に低トルク駆動モードにより、減速歯車列3、出力軸4、制御軸22が最低限のトルクで回転するように抑制している。このため、規制部52が規制端面47に当接したときにも、減速歯車列3、出力軸4、制御軸22、電動モータ2、モータ駆動回路等が破損や故障するおそれがない。
【0067】
(9)出力軸4が全開位置で停止したときには、エンコーダIC31による角度データ値の変化が停止し、この変化停止状態が予め設定された時間継続したときにバルブの全開位置として認識され、この状態をEEPROM70に全開位置データとして記録する。
【0068】
(10)全開位置の記録後には、電動モータ2への通電がオフとなり、その回転が停止する。
【0069】
(11)上述の動作により、「自動角度設定モード」での出力軸4の全閉位置・全開位置が設定が完了となる。これらの完了後には外部電源のオフ状態を確認し、自動角度設定機能選択スイッチ63を「自動角度設定モード」から「通常動作モード」に切り替えるようにする。
【0070】
(12)アクチュエータ1から治具6を持ち上げるようにして取り外す。このとき、嵌合部51、突起部43は、凹状溝20、雌螺子14から簡単に外れるようになっている。
【0071】
上記のアクチュエータ1の開閉位置設定後に、治具6の取付け位置にバルブ10を固定し、バルブ10のステム12を出力軸4に接続してこれらを同軸に回転させることで、バルブ10が高精度に開閉動作する。この場合、前述の「通常動作モード」の運転モードによりバルブが動作する。「通常動作モード」によるバルブの動作設定の一例を以下の(13)~(22)の手順に示す。
【0072】
(13)外部電源を投入し、開閉指令に従って電動モータ2の回転方向を定めてduty100%通電の状態でアクチュエータ1を動作させる。
【0073】
(14)このときのエンコーダIC31からの角度データ値をMPU40で逐次読み取る。
【0074】
(15)開閉指令が全開方向への指令であるときには、EEPROM70に記録された全開位置データとエンコーダIC31からの角度データ読取値とを比較し、全開位置データの数%(例えば3%~5%)手前でモータ駆動回路60のPWM制御により電動モータ2への通電率を低減させ、全開位置データの0.5%以下になったら通電を中止すると共に、モータ回生制動回路61で制動を掛けるようにする。
その際、角度データ読取値が、EEPROM70の全開位置データを超えている場合には、閉方向に電動モータ2を逆回転させ、全開位置データの+0.5%以下に収まったときに通電を中止すると共に、モータ回生制動回路61で制動を掛けるようにする。
【0075】
(16)角度データ読取値が、EEPROM70の全開位置データの93%以上になったときに、入出力インターフェース回路64により、開閉出力信号として全開信号を出力する。このときの閾値である93%は、ファームウェアの設定、もしくは図示しないDIPスイッチの設定で変更するものとする。このように、ロータリーエンコーダ30で読み取る角度データを常時監視し、予め設定した閾値と比較して信号を出力する構成であるため、拡張性を発揮可能であり、閾値を任意に設定することも可能になる。
【0076】
(17)開方向の指令運転において、EEPROM70の全開位置データとエンコーダIC31による角度データ読取値を比較し、予め設定した時間(例えば開閉時間×1.5)を経過しても全開位置データの±0.5%以内に収まらない場合には、電動モータ2への通電をオフとし、入出力インターフェース回路64よりエラー信号を出力する。
【0077】
(18)一方、手順(15)における開閉指令が全閉指令であるときには、EEPROM70に記録された全閉位置データとエンコーダIC31からの角度データ読取値を比較し、全閉位置データの数%(例えば3%~5%)手前でモータ駆動回路60のPWM制御により電動モータ2への通電率を低減させ、全閉位置データの0.5%以下になったら通電を中止すると共に、モータ回生制動回路61で制動を掛けるようにする。
その際、角度データ読取値が、EEPROM70の全閉位置データを超えている場合には、開方向に電動モータ2を逆回転させ、全閉位置データの-0.5%以下に収まったときに通電を中止すると共に、モータ回生制動回路61で制動を掛けるようにする。
【0078】
(19)角度データ読取値が、EEPROM70の全閉位置データの7%以下になったときに、入出力インターフェース回路64より、開閉出力信号として全閉信号を出力する。このときの閾値である7%は、ファームウェアの設定、もしくはDIPスイッチの設定で変更するものとする。
【0079】
(20)閉方向の指令運転において、EEPROM70の全閉位置データとエンコーダIC31による角度データ読取値を比較し、予め設定した時間(例えば開閉時間×1.5)を経過しても全閉位置データの±0.5%以内に収まらない場合には、電動モータ2への通電をオフとし、入出力インターフェース回路64よりエラー信号を出力する。
【0080】
(21)ここで、
図3(b)における略180°の規制溝46を有する治具6を用いて180°の開閉制御或は中間開度に停止させる際には、モード設定回路66で動作モードを設定する。中間開度に設定する場合、EEPROM70に記録された全開・全閉位置データの中心値を中間位置データとしてEEPROM70に演算によりあらたに記録設定し、中間位置でも停止できるようにファームウェアのルーチンを切替えて対応する。
【0081】
(22)中間位置の指令運転において、EEPROM70に記録された中間位置データとエンコーダIC31による角度データ読取値を比較し、予め設定した時間(例えば開閉時間×1.5)を経過しても中間位置データの±0.5%以内に収まらない場合には、電動モータ2への通電をオフとし、入出力インターフェース回路64によりエラー信号を出力する。
【0082】
本発明のバルブ用電動アクチュエータの開閉位置設定構造は、出力軸4と同軸に設けた制御軸22側にロータリーエンコーダ30を設け、ステム12と接続される出力軸4側のバルブ固定位置の基台15の雌螺子14を介して治具6を固定し、この治具6により出力軸4の回転を規制したときに、制御軸22の状態をロータリーエンコーダ30で計測してバルブ開閉位置を設定しているため、マイクロスイッチやカムを用いることなく、アクチュエータ1単独で出力軸4のバルブ開閉位置の調整をおこなうことができる。
【0083】
この場合、ロータリーエンコーダ30が、非接触のエンコーダIC31、マグネット32を有し、エンコーダIC31を基板5に搭載し、このエンコーダIC31に対向してマグネット32を制御軸22の上端にホルダ33を用いて一体に装着していることにより、これらを接触させることなく配置でき、調整工数を削減しつつ簡便かつ正確に取付けできる。このため長寿命を延長でき、マイクロスイッチの接点が中立点に位置する現象による出力信号の不正な発生も防止する。
【0084】
エンコーダIC31、φ8mm~φ10mmによるマグネット32を使用していることで小型化したロータリーエンコーダ30を構成し、アクチュエータ1の高さ寸法を低く抑えて全体のコンパクト化に寄与する。
【0085】
一組のエンコーダIC31とマグネット32とを面実装により配設していることで部品点数を削減でき、アクチュエータ1内部に複雑な配線を必要とすることもなく、これらを細かく位置決め調整しつつ配置する必要もない。
【0086】
電動モータ2への電圧をモータ駆動回路内の半導体(MOS_FET、パワートランジスタ)スイッチでオンオフできることで、機械的接点部によるアーク放電を阻止し、接触抵抗の増加や発熱による各部品の接点部の摩耗、溶け込み、微溶着などによる動作不良を排除できる。これに加えて、電極の溶解を回避することで接点部分の金属転移が無く、復帰不良(ロッキング)の発生も防止する。
さらに、アクチュエータ1の使用環境に硫化ガス等のガスが存在する場合でも、接点部に絶縁物が生成付着することがない。
【0087】
前述のようにエンコーダIC31とマグネット32とが接触していないため、アクチュエータ1が車両などの振動や衝撃が発生しやすい環境下に配置される場合にも、破損、接点障害、誤作動を防いで長寿命化を図ることができる。制御軸22にその回転を検知するための側圧が加わることもないため、長期間の使用後にも制御軸22のガタを抑えて出力軸4の回転角度が変化するおそれもない。
【0088】
バルブ10が、90°開閉の二方型、或は180°回転する三方型の何れのボール弁の場合でも、対応する治具6をアクチュエータ1に装着すれば容易に対応でき、アクチュエータ1の内部機構、ハードウェア、ファームウェアによって「自動角度設定モード」の角度調整時に規制溝の異なる治具6を用いるだけで、必要とするバルブの制御角度に設定できる。さらに、規制溝の角度を変えるようにすれば、任意の動作角度に設定することもできるため汎用性が高い。
【0089】
なお、前述した電動アクチュエータをボール弁以外のバルブに搭載して開閉位置を設定するようにしてもよく、例えば、バタフライ弁に搭載してその開閉位置を設定する場合、そのサイズや弁翼差値などの異なる仕様に応じて、異なる規制溝を有する治具を予め準備するようにすれば、前述の場合と同様に開閉位置の調整を簡単に実施できる。
【0090】
本発明は、ステッピングモータのような高精度のモータを使用したアクチュエータ以外の汎用的なモータで動作するアクチュエータに特に有効であり、制御角度データ格納用としてEEPROMのような不揮発性メモリを使用していれば、簡便な構造にしつつバルブ開閉位置をステッピングモータを使用した場合と同様に正確に設定することができる。
【0091】
上記実施形態では、出力軸(制御軸)の回転状態を計測するためにロータリーエンコーダを用いているが、例えばジャイロセンサのような出力軸の回転角度を計測する装置を用いるようにしてもよい。
【0092】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。
【符号の説明】
【0093】
1 バルブ用電動アクチュエータ
2 DCブラシレスモータ(電動モータ)
3 減速歯車列
4 出力軸
6 治具
10 ボール弁(バルブ)
11 弁体
12 ステム
14 雌螺子
20 凹状溝
22 制御軸
30 ロータリーエンコーダ
31 エンコーダIC
32 マグネット(被検出体)
41 取付部材
42 回転部材
43 突起部
45 規制溝
51 嵌合部
52 規制部