(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】回転構造体
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20220407BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
G01D5/12 Q
G01D5/245 110W
(21)【出願番号】P 2018102284
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山西 雄太
(72)【発明者】
【氏名】福田 憲二
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-7984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0309827(US,A1)
【文献】特開平10-199647(JP,A)
【文献】特開昭59-8559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01B 7/00-7/34
B62D 5/00-5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸又は当該回転軸の回転を伝達する伝達部材に設けられた被係合部と係合する係合部を有し、前記回転軸と連動して回転する回転体と、
前記回転体の回転に従って、前記回転軸の回転角を検出する検出部と、
前記回転軸又は前記伝達部材に設けられた被係合部に配置され、前記被係合部と前記回転体の係合部との周方向に沿った隙間を埋める
バネ部とを備え、
前記係合部及び前記被係合部の一方は溝であり、
前記係合部及び前記被係合部の他方は突起であり、
前記溝は、前記周方向の幅が狭い幅狭部と前記周方向の幅が広い幅広部とを有し、
前記幅狭部には前記突起が嵌合され、
前記幅広部と前記突起との間には前記バネ部が位置している回転構造体。
【請求項2】
前記
バネ部は、前記回転軸又は前記伝達部材から前記回転体へ加わる力よりも大きな弾性力を有する
請求項1に記載の回転構造体。
【請求項3】
前記
バネ部は、前記回転軸又は前記伝達部材に対する前記回転体の組み付け方向の上流側に固定端を有し、その固定端から下流側の当接部までの間には、当該当接部に向かう程、前記回転体との間隔が狭くなるガイド部が形成されている
請求項1又は2に記載の回転構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸と一体に回転する回転機構部と、回転軸の回転を検出する検出機構部とを備える回転構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の回転構造体として、特許文献1には、車両のステアリングホイール等の回転体に対して設けられ、回転機構部であるステアリングロールコネクタ(SRC)と、検出機構部であるステアリングアングルセンサ(SAS)とが一体の回転コネクタが開示されている。
【0003】
SRCは、固定側のステータと、そのステータに回動可能に組み付けられたロテータとを備え、ステータのコネクタとロテータのコネクタとの間には、ステアリングホイール側と車体側とを電気接続するフレキシブルフラットケーブルが巻き締め及び巻き緩め可能に設けられている。
【0004】
そして、ロテータをステータに相対回動可能に組み付けるジョイント部材には、ガイド溝が形成され、このガイド溝には、SASの駆動ギヤに形成されたガイド突起が嵌合されている。これにより、ステアリングホイールの回転に連動して、SASの駆動ギヤが回転する。そして、駆動ギヤには従動ギヤが噛合され、この従動ギヤの回転がSASの検出部によって検出されることにより、ステアリングホイールの回転が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガイド溝とガイド突起との間に嵌合の隙間が存在する場合がある。このような場合、回転体の回転に対してSASの駆動ギヤが直ちに追従して回転できず、空走が発生し、舵角の検出精度が低下する。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、回転角の検出精度の向上を可能にした回転構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する回転構造体は、回転軸又は当該回転軸の回転を伝達する伝達部材に設けられた被係合部と係合する係合部を有し、前記回転軸と連動して回転する回転体と、前記回転体の回転に従って、前記回転軸の回転角を検出する検出部と、前記回転軸又は前記伝達部材に設けられた被係合部に配置され、前記被係合部と前記回転体の係合部との周方向に沿った隙間を埋める補填部とを備える。
【0009】
この構成によれば、回転軸の回転に回転体が追従するため、回転角の検出精度を向上できる。
上記回転構造体について、前記補填部は、前記回転軸又は前記伝達部材から前記回転体へ加わる力よりも大きな弾性力を有することとしてもよい。
【0010】
この構成によれば、回転軸の回転時に補填部の撓みが生じないので、回転軸の回転に回転体を確実に追従させることができる。
上記回転構造体について、前記補填部は、前記回転軸又は前記伝達部材に対する前記回転体の組み付け方向の上流側に固定端を有し、その固定端から下流側の当接部までの間には、当該当接部に向かう程、前記回転体との間隔が狭くなるガイド部が形成されていることとしてもよい。
【0011】
この構成によれば、組み付け時に回転体がガイドされるので組み付けを簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、回転角の検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図5】組み付け状態の駆動ギヤ及びスリーブを裏面側から見た図。
【
図7】ステアリングアングルセンサ(SAS)のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、回転構造体の一実施の形態について説明する。
図1~
図3に示すように、回転構造体の一例である回転コネクタ1は、ステアリングロールコネクタ(SRC)2とステアリングアングルセンサ(SAS)3とを備え、SAS3がSRC2の裏面に配置されている。SRC2は、SRC2において固定側となるステータ4と、ステータ4に回動可能に組み付けられたロテータ5とを備える。ステータ4は、ステータ4の底部を形成するメインステータ6と、ステータ4の壁部を形成する環状のサブステータ7とを組み付けて形成されている。ステータ4及びロテータ5は、環状をなすロテータ5がステータ4に対して軸心L1回りに回動するように同一軸心上に配置されている。
【0015】
SRC2の内部には、ロテータ5に組み付けられる車両のステアリングホイール(図示略)側と車体側とを電気接続するフレキシブルフラットケーブル(図示略)が巻き締め及び巻き緩め可能に収納されている。SRC2のフレキシブルフラットケーブルは、一端がステータ4のコネクタ部8に繋がり、他端がロテータ5のコネクタ9に繋がっている。ロテータ5の上面には、SRC2内のフレキシブルフラットケーブルの状態を目視可能な確認窓10が設けられている。
【0016】
ステータ4及びロテータ5の各々には、同軸上に貫通孔11,12が形成され、この貫通孔11,12にステアリングシャフト13が挿通されている。ロテータ5には、貫通孔12の周囲に沿うように略筒状の内筒部14が形成されている。ロテータ5の内筒部14の内側には、ステアリングホイール(図示略)が係止される位置決め突15が複数(
図1は1つのみ図示)設けられている。ステアリングホイールが回動操作された場合、その操作力がロテータ5に伝達され、ロテータ5及びステアリングホイールが軸心L1回りに同期回動する。ロテータ5は、ステアリングホイールの操作に応じて中立位置を起点に左右に複数周回転する。
【0017】
SRC2は、ロテータ5をステータ4に相対回動可能に組み付けるスリーブ21を備える。スリーブ21は、中央の孔部22にステアリングシャフト13が挿通され、周縁に、例えばスナップフィット構造によってロテータ5に組み付く複数(本例は4つ)の組付片23が立設されている。スリーブ21は、スリーブ21及びロテータ5の内筒部14がメインステータ6を挟み込むようにロテータ5に組み付けられる。また、スリーブ21は、外径がステータ4の貫通孔11の径に合うように形成され、ロテータ5と組み付いた状態のとき、ステータ4とロテータ5との半径方向の移動を制限する。このように、ロテータ5は、スリーブ21によってステータ4に対する回転軸方向及び回転半径方向への相対移動が制限されている。
【0018】
SRC2は、ステータ4及びロテータ5に囲まれた環状の領域により、収容室24が形成されている。収容室24の内部には、ロテータ5に組み付けられるステアリングホイール側と車体側とを電気接続するフレキシブルフラットケーブル(図示略)が巻き締め及び巻き緩め可能に収納されている。
【0019】
SRC2には、ステアリングシャフト13(ステアリングホイール)の回転角を検出するSAS3が一体に組み付けられている。SAS3は、ギヤケース31に収容された環状の駆動ギヤ32を備える。
【0020】
図4に示すように、駆動ギヤ32は、外周面一帯に形成された歯部33と、内周面から半径方向内側に突出した嵌合突起34と、内周面において嵌合突起34と向かい合う位置から半径方向内側に突出したガイド突起35とを備える。一方、スリーブ21は、嵌合突起34が嵌合される嵌合溝36と、ガイド突起35が嵌合されるガイド溝37とを備える。スリーブ21及び駆動ギヤ32は、嵌合突起34及び嵌合溝36を組み付けるとともに、ガイド突起35及びガイド溝37を組み付けることにより、組み付け位置が位置決めされている。駆動ギヤ32のガイド突起35が係合部の一例に相当し、スリーブ21のガイド溝37が被係合部の一例に相当する。
図3を参照して、ギヤケース31は、片側開口形状をなし、駆動ギヤ32等が収容された後、カバー38が組み付けられてSAS3を構成する。このSAS3が
図3の下方からSRC2に組み付けられる際に、上記の通り、スリーブ21及び駆動ギヤ32が位置決めされる。SAS3がSRC2に組み付いた状態のとき、ステアリングシャフト13の回転に連動して、駆動ギヤ32がスリーブ21と一体回転する。ギヤケース31には、スリーブ21を遊嵌する孔部39が形成されている。
【0021】
図5及び
図6に示すように、スリーブ21のガイド溝37には、駆動ギヤ32のガイド突起35との周方向に沿った隙間を埋める一対のバネ片40a,40bが形成されている。各バネ片40a,40bは、スリーブ21に対する駆動ギヤ32の組み付け方向の上流側(
図6を参照して上側)に固定端41a,41bを有している。そして、固定端41a,41bから下流側の当接部42a,42bまでの間には、当該当接部42a,42bに向かう程、駆動ギヤ32のガイド突起35との間隔が狭くなるガイド部43a,43bが形成されている。これら一対のバネ片40a,40bによってバネ部40が構成され、バネ部40は、バネ片40a,40bの協働により、スリーブ21から駆動ギヤ32へ加わる力よりも大きな弾性力を有している。これにより、ステアリングシャフト13の回転時には、バネ片40a,40bの撓みによる回転方向のガタの発生はなく、スリーブ21及び駆動ギヤ32が一体回転する。本例のスリーブ21は、回転軸であるステアリングシャフト13の回転を駆動ギヤ32に伝達する伝達部材の一例に相当する。また、実施の形態におけるバネ部40は、補填部の一例に相当する。
【0022】
ギヤケース31には、駆動ギヤ32の他、駆動ギヤ32に噛み合う第1従動ギヤ54及び第1従動ギヤ54に噛み合う第2従動ギヤ55が収容されている。これらのギヤ32,54,55によって、ステアリングシャフト13と連動して回転する回転体の一例が構成される。
【0023】
図7に示すように、SAS3は、第1従動ギヤ54の回転を検出する第1センサ51と、第2従動ギヤ55の回転を検出する第2センサ52と、第1センサ51及び第2センサ52の出力からステアリングシャフト13の回転角を求める回転角演算部53とを備える。これらは、例えばギヤケース31或いは別のケースの内部に収納された基板に実装されている。第1センサ51及び第2センサ52は、回転体の回転に従って、ステアリングシャフト13の回転角を検出する検出部の一例に相当し、例えば光学センサや磁気センサなど、どのようなセンサを使用してもよい。回転角演算部53は、第1センサ51の出力と第2センサ52の出力との値の組み合わせから、ステアリングシャフト13(ステアリングホイール)の左右複数周回転の中立位置を起点にして、左右それぞれの操舵角(絶対角)を求める。
【0024】
次に、回転コネクタ1の作用について説明する。
ステアリングホイール(図示略)が回転操作された場合、ステアリングシャフト13と一体にロテータ5及びスリーブ21が回転し、スリーブ21から駆動ギヤ32へと動力が伝達される。
図5及び
図6に示すように、スリーブ21のガイド溝37には、一対のバネ片40a,40bが形成され、これらバネ片40a,40bによって、ガイド溝37と駆動ギヤ32のガイド突起35との周方向に沿った隙間が埋められている。このため、ステアリングシャフト13の回転に対してSAS3の駆動ギヤ32が直ちに追従して回転し、しかも、バネ片40a,40bの協働により、スリーブ21から駆動ギヤ32へ加わる力よりも大きな弾性力を有しているため、バネ片40a,40bの撓みによるガタが発生しない。したがって、本例の回転コネクタ1では、ステアリングシャフト13の回転時に空走をなくすことが可能となる。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)ステアリングシャフト13の回転を駆動ギヤ32に伝達するスリーブ21にバネ片40a,40bを設けたことで、ステアリングシャフト13の回転に駆動ギヤ32が追従するため、回転角の検出精度を向上できる。
【0026】
(2)バネ部40は、バネ片40a,40bの協働により、スリーブ21から駆動ギヤ32へ加わる力よりも大きな弾性力を有する。よって、ステアリングシャフト13の回転時にバネ片40a,40bの撓みが生じないので、ステアリングシャフト13の回転に駆動ギヤ32を確実に追従させることができる。
【0027】
(3)各バネ片40a,40bは、スリーブ21に対する駆動ギヤ32の組み付け方向の上流側に固定端41a,41bを有し、その固定端41a,41bから下流側の当接部42a,42bまでの間には、当該当接部42a,42bに向かう程、駆動ギヤ32との間隔が狭くなるガイド部43a,43bが形成されている。これにより、組み付け時に駆動ギヤ32がガイドされるので組み付けを簡単に行うことができる。
【0028】
尚、上記実施の形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施の形態及び以下の変更例は技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
・
図8に示すように、スリーブ21のガイド溝37に単一のバネ部40を形成し、そのバネ部40によってガイド突起35の片側の端面との周方向に沿った隙間を埋めてもよい。この場合、単一のバネ部40が、スリーブ21から駆動ギヤ32へ加わる力よりも大きな弾性力を有し、その弾性力によって、ガイド突起35の反対側の端面が、バネ部40を形成していないガイド溝37の端面に密着される。
【0029】
・バネ部40を形成するガイド溝37の個数は1つに限らず、複数であってもよい。いずれかのバネ部40の機能が損なわれても、他のバネ部40の機能によって上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0030】
・スリーブ21にガイド突起35を形成するとともに、そのガイド突起35にバネ部40を形成し、駆動ギヤ32にガイド溝37を形成してもよい。この場合、駆動ギヤ32のガイド溝37が係合部に相当し、スリーブ21のガイド突起35が被係合部に相当する。
【0031】
・駆動ギヤ32の係合部がステアリングシャフト13の被係合部に係合されることにより駆動ギヤ32がステアリングシャフト13に直結され、ステアリングシャフト13の回転を駆動ギヤ32にダイレクトで伝達する構成において、ステアリングシャフト13の被係合部にバネ部40を設けてもよい。この場合、本発明の回転構造体は、上記実施の形態のSAS3に準じた回転検出装置としても実施可能である。
【0032】
・スリーブ21又はステアリングシャフト13にバネ部40を形成する構成に代えて、スリーブ21又はステアリングシャフト13と駆動ギヤ32との間に、別部材としてバネ部40を設けてもよい。
【0033】
・バネ部40の形状は、上記実施の形態又は変更例に倣い、スリーブ21又はステアリングシャフト13に対する駆動ギヤ32の組み付けを簡単に行える形状であることが望ましいが、スリーブ21又はステアリングシャフト13の被係合部と駆動ギヤ32の係合部との周方向に沿った隙間を埋める他の形状であってもよい。
【0034】
・上記実施の形態におけるSAS3は、第1従動ギヤ54の回転と第2従動ギヤ55の回転とに基づいて、ステアリングシャフト13の回転角を算出していたが、ステアリングシャフト13の回転角を算出する方法は、これに限るものではない。例えば、駆動ギヤ32の回転から直接ステアリングシャフト13の回転角を算出してもよい。この場合、駆動ギヤ32を、光学式、または磁気式、その他の方式におけるロータリーエンコーダの一部の部材として構成してもよい。
【0035】
・本発明の回転構造体を車両に限らず他の機器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…回転コネクタ(回転構造体)、2…ステアリングロールコネクタ(SRC)、3…ステアリングアングルセンサ(SAS)、13…ステアリングシャフト(回転軸)、21…スリーブ(伝達部材)、32…駆動ギヤ(回転体)、35…ガイド突起(係合部)、37…ガイド溝(被係合部)、40…バネ部(補填部)、40a,40b…バネ片、41a,41b…固定端、42a,42b…当接部、43a,43b…ガイド部、51…第1センサ(検出部)、52…第2センサ(検出部)、54…第1従動ギヤ(回転体)、55…第2従動ギヤ(回転体)。