(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】網膜色素変性症18と網膜色素変性症13の処置のための組成物と方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220407BHJP
C12N 15/33 20060101ALI20220407BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220407BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220407BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
C12N15/113 ZNA
C12N15/33
A61K48/00
A61K31/7105
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2018529240
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(86)【国際出願番号】 US2016066684
(87)【国際公開番号】W WO2017106364
(87)【国際公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-13
(32)【優先日】2015-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504278156
【氏名又は名称】コールド スプリング ハーバー ラボラトリー
(73)【特許権者】
【識別番号】518195690
【氏名又は名称】ストーク セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】アズナレズ,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ,ヒュー エム.
(72)【発明者】
【氏名】クライナー,エイドリアン
【審査官】古閑 一実
(56)【参考文献】
【文献】IOVS,Vol.56,2015年10月,p.6362-6375
【文献】実験医学,2008年,Vol.26, No.10,p.1590-1595
【文献】Human Molecular Genetics,2011年,Vol.20, No.11,p.2116-2130
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 48/00
A61P 1/00-43/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PRPF8タンパク質をコードする保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)であって、
SEQ ID NO:351~353、355、357~360、401、404、409、及び410から選択される配列を含み、
RIC mRNA前駆体は保持されたイントロンを含み、
ASOのRIC mRNA前駆体の標的部分との結合が、RIC mRNA前駆体を発現する細胞内で、保持されたイントロンをRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングさせることにより、細胞内で、PRPF8タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルを増加させ、RIC mRNA前駆体の標的部分は保持されたイントロン内にある、前記ASO。
【請求項2】
保持されたイントロンがイントロン31であり、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロン31の5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロン31の3’スプライス部位に対して-16までの領域内にある、請求項1に記載のASO。
【請求項3】
RIC mRNA前駆体が、SEQ ID NO:4に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を備えた配列を含む、請求項1又は2に記載のASO。
【請求項4】
RIC mRNA前駆体の標的部分が、SEQ ID NO:448の少なくとも8つの隣接する核酸を含む領域に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、又は100%の配列同一性を備えた配列を含む、請求項1~3のいずれかに記載のASO。
【請求項5】
ASOが、
18~50の核酸塩基から成る、請求項1~
4のいずれかに記載のASO。
【請求項6】
ASOが、SEQ ID NO:351~353、355、357~360、401、404、409、及び410から選択される配列から成る、請求項1~4のいずれかに記載のASO。
【請求項7】
PRPF8タンパク質が:
i)同等の野性型タンパク質と比較して、機能が低下した形態;又は
ii)同等の野性型タンパク質と比較して、十分に機能的な形態、
で生成される、請求項1~6のいずれかに記載のASO。
【請求項8】
ASOが、ホスホロチオエート結合若しくはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾;又は修飾された糖部若しくは糖アナログを含み、該修飾された糖部若しくは糖アナログが、必要に応じて、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、請求項1~7のいずれかに記載のASO。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のASOを含むポリヌクレオチドを
連結させたウイルスベクター。
【請求項10】
被験体においてPRPF8タンパク質の量または活性が不足していることを特徴とする疾患又は疾病を処置するための医薬組成物であって、請求項1~
8のいずれか1項に記載のASO又は請求項
9に記載のウイルスベクターを含む、医薬組成物。
【請求項11】
疾患又は疾病が網膜色素変性症13である、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
PRPF8タンパク質の量の不足は、PRPF8タンパク質のハプロ不全によって引き起こされ、ここで被験体は、機能的なPRPF8タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、及びPRPF8タンパク質が生成されない第2の対立遺伝子又は非機能的なPRPF8タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、ASOは、第1の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合する、請求項
10又は
11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
被験体は、
(a)
(i)PRPF8タンパク質が野生型対立遺伝子からの生成と比較して、減少したレベルで生成される、
(ii)PRPF8タンパク質が同等の野性型PRPF8タンパク質と比較して機能が低下した形態で生成される、あるいは、
(iii)PRPF8タンパク質が生成されない、
第1の変異対立遺伝子と、
(b)
(i)PRPF8タンパク質が野生型対立遺伝子からの生成と比較して、減少したレベルで生成される、
(ii)PRPF8タンパク質が同等の野性型PRPF8タンパク質と比較して機能が低下した形態で生成される、あるいは、
(iii)PRPF8タンパク質が生成されない、
第2の変異対立遺伝子とを有し、
ここで、被験体が第1の変異対立遺伝子(a)(iii)を有するとき、第2の変異対立遺伝子は(b)(i)あるいは(b)(ii)であり、被験体が第2の変異対立遺伝子(b)(iii)を有するとき、第1の変異対立遺伝子は(a)(i)あるいは(a)(ii)であり、ここで、RIC mRNA前駆体は、(a)(i)あるいは(a)(ii)である第1の変異対立遺伝子、又は、(b)(i)あるいは(b)(ii)である第2の変異対立遺伝子から転写される、請求項
10~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
くも膜下腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射による投与用である、請求項
10~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2015年12月14日に出願された米国仮特許出願第62/267,261号の利益を主張するものであり、当該文献は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
<配列リストへの言及>
本出願は配列表を包含しており、これは、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出され、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。2016年12月9日に作成されたASCIIのコピーは、47991-709_601_SL.txtのファイル名であり、280,643バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
網膜色素変性症(RP)は、同様の臨床表現型を有し、遺伝学的に異質的な原因に関連付けられる一群の疾患と記されている。RPはしばしば夜間視力の喪失として現れ、トンネル状視野を引き起こす末梢神経性の失明に進行する可能性がある。障害が進行するにつれて、被験体は、視力障害を経験するよりも前に光受容体のかなりの部分を失うことがあり、最終的には完全に失明してしまうことがある。RPに関連する遺伝子PRPF3、PRPF8、PRPF31、およびPAP1は、スプライセオソームの組み立てに関与する。いくつかのRPに関連する遺伝子の機能的特徴は広範に研究されてきたが、遺伝子型と表現型との相関の理解は十分ではない。しかしながら、PRPF3、PRPF8、PRPF31、およびPAP1遺伝子の疾患を引き起こす突然変異には顕性遺伝形式があることが知られている(Berger et al.,2010,Progress in Retinal Eye Research 29,335-375)。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、いくつかの実施形態では、被験体の細胞により標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させることによって被験体の網膜色素変性症18(RP18)と網膜色素変性症13(RP13)を処置する方法が開示され、ここで、該細胞は、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここで、RIC mRNA前駆体は、標的タンパク質または機能的RNAをコードし、該方法は、被験体の細胞を、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させる。
【0005】
同様に、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有している細胞によってPRPF3またはPRPF8である標的タンパク質の発現を増加させる方法であって、該RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、ここで、RIC mRNA前駆体はPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードし、該方法は、細胞を、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、PRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させる。
【0006】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、上記方法がRP18を処置する方法であるとき、標的タンパク質はPRPF3である。前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、上記方法がRP13を処置する方法であるとき、標的タンパク質はPRPF8である。いくつかの実施形態において、標的タンパク質または機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足している標的タンパク質あるいは機能的RNAを機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質あるいは補償機能的RNAである。いくつかの実施形態では、細胞は、PRPF3またはPRPF8タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体内にあるか、または該被験体に由来する。
【0007】
前述の方法のいくつかの実施形態では、標的タンパク質の量の不足は、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされ、ここで、被験体は、機能的な標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、標的タンパク質が産生されない第2の対立遺伝子、または非機能的な標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合する。いくつかの実施形態において、被験体は、標的タンパク質の量または機能の不足に起因する障害により引き起こされた疾病を抱えており、ここで、被験体は、(a)(i)標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生され、(ii)標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で産生され、あるいは、(iii)標的タンパク質が産生されない、第1の変異対立遺伝子と、(b)(i)標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生され、(ii)標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で産生され、あるいは、(iii)標的タンパク質が産生されない、第2の変異対立遺伝子とを有し、ここで、被験体が第1の変異対立遺伝子(a)(iii)を有するとき、第2の変異対立遺伝子は(b)(i)あるいは(b)(ii)であり、ここで、被験体が第2の変異対立遺伝子(b)(iii)を有するとき、第1の変異対立遺伝子は(a)(i)あるいは(a)(ii)であり、ここで、RIC mRNA前駆体は、(a)(i)あるいは(a)(ii)である第1の変異対立遺伝子、および/または、(b)(i)あるいは(b)(ii)である第2の変異対立遺伝子から転写される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、同等の野性型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で産生される。いくつかの実施形態において、標的タンパク質は、同等の野性型タンパク質と比較して十分に機能的な形態で産生される。
【0008】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496までの領域内の保持されたイントロンにある。
【0009】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、標的タンパク質はPRPF3である。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%相補的な配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:447あるいはSEQ ID NO:446の少なくとも8つの隣接する核酸を含む領域に少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:5-323に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:3に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた遺伝子配列によってコードされる。
【0010】
いくつかの実施形態において、標的タンパク質はPRPF8である。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+156から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-156までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%相補的な配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:448の少なくとも8つの隣接する核酸を含む領域に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、ASOは、SEQ ID NO:234-445に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:4に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた遺伝子配列によってコードされる。
【0011】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、以下の内部の保持されたイントロンにある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+100の領域;(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-100の領域。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの保持されたイントロンの5’スプライス部位の約100ヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイントロンの3’スプライス部位の約100ヌクレオチド上流までの領域内にあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、以下の内部の保持されたイントロンにある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域;あるいは、(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域。
【0012】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、機能的RNAまたは標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより、標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体の部分的なスプライシング、または野生型のmRNA前駆体の部分的なスプライシングによって産生された。いくつかの実施形態において、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである。いくつかの実施形態において、産生された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞において産生された標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAの総量は、対照細胞において産生された標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAの総量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍増加する。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞によって産生された標的タンパク質の総量は、対照細胞によって産生された標的タンパク質の総量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍増加する。
【0013】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む。いくつかの実施形態において、それぞれの糖部は修飾された糖部である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基からなる。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である。
【0014】
前述の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、細胞は、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、および、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で最も豊富な保持されたイントロンに結合する。いくつかの実施形態において、最も豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAを産生するためにRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。いくつかの実施形態において、細胞は、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、および、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で2番目に豊富な保持されたイントロンに結合する。いくつかの実施形態において、2番目に豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAを産生するためにRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。いくつかの実施形態では、疾病は疾患または障害である。いくつかの実施形態において、疾患または障害はRP18またはRP13である。いくつかの実施形態において、標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はPRPF3またはPRPF8遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、当該方法はタンパク質発現を評価する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態では、被験体はヒト以外の動物である。いくつかの実施形態において、被験体は胎児、胚、あるいは子供である。いくつかの実施形態では、細胞はエクスビボである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、被験体の硝子体内注射、網膜下注射、局所投与、移植、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射によって投与される。いくつかの実施形態において、5’スプライス部位に隣接するエクソンの-3e~-1eと、保持されたイントロンの+1~+6にある9つのヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンの-15~-1と3’スプライス部位に隣接するエクソンの+1eにある16のヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である。
【0015】
本明細書には、いくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法で使用されるアンチセンスオリゴマーが開示されている。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:5-445のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。
【0016】
さらにいくつかの実施形態では、前述のアンチセンスオリゴマーのいずれかと賦形剤を含む医薬組成物が本明細書で開示される。
【0017】
いくつかの実施形態では、硝子体内注射、網膜下注射、局所投与、移植、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射によって前述の医薬組成物のいずれかを投与することにより、必要としている被験体を処置する方法が本明細書で開示される。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書では、不足しているタンパク質あるいは不足している機能的RNAに関連付けられる被験体のRP18あるいはRP13を処置するために、細胞による標的タンパク質あるいは機能的RNAの発現を増加させる方法で使用されるアンチセンスオリゴマーを含む組成物が開示されており、ここで、不足しているタンパク質または機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足しており、ここで、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の構成的スプライシングを増強し、ここで、標的タンパク質は:不足しているタンパク質;あるいは、被験体において不足しているタンパク質を機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質であり、ここで、機能的RNAは:不足しているRNA;あるいは、被験体の不足している機能的RNAを機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償機能的RNAであり、ここでRIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体からスプライシングされ、それによって、被験体において標的タンパク質または機能的RNAの産生または活性を増加させる。
【0019】
本明細書では、いくつかの実施形態において、被験体においてPRPF3またはPRPF8タンパク質に関連付けられる疾病を処置する方法で使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物が開示され、該方法は、被験体の細胞によってPRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させる工程を含み、ここで、細胞は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含む、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前駆体は、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードし、該方法は、細胞をアンチセンスオリゴマーと接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、PRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させる。いくつかの実施形態において、標的タンパク質PRPF3はNM_004698の配列によってコードされるか、あるいは、PRPF8はNM_006445の配列によってコードされる。いくつかの実施形態では、疾病は疾患または障害である。いくつかの実施形態において、疾患または障害はRP18またはRP13である。いくつかの実施形態において、標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はPRPF3またはPRPF8遺伝子によってコードされる。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、標的タンパク質はPRPF3である。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%相補的な配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:447あるいはSEQ ID NO:446の少なくとも8つの隣接する核酸を含む領域に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:5-323に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:3に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた遺伝子配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、標的タンパク質はPRPF8である。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+156から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-156までの領域内の保持されたイントロンにある。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%相補的な配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:448の少なくとも8つの隣接する核酸を含む領域に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、ASOは、SEQ ID NO:234-445に少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:4に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた配列を含む。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を備えた遺伝子配列によってコードされる。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはRIC mRNA前駆体の一部を標的とし、これは、以下の内部の保持されたイントロンにある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+100の領域;(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-16から-100の領域。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの保持されたイントロンの5’スプライス部位の約100ヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイントロンの3’スプライス部位の約100ヌクレオチド上流までの領域内にあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、以下の内部にある:(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域;あるいは(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2e~-4eの領域。
【0020】
前述の組成物のいずれかのいくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより、標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、機能的RNAまたは機能的タンパク質の量を増加させない。いくつかの実施形態において、RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体、または野生型のmRNA前駆体の部分的なスプライシングによって産生された。いくつかの実施形態において、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである。いくつかの実施形態において、産生された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンは律速イントロンである。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンは上記RIC mRNA前駆体で最も豊富な保持されたイントロンである。いくつかの実施形態において、保持されたイントロンは上記RIC mRNA前駆体で2番目に豊富な保持されたイントロンである。
【0021】
前述の組成物のいずれかのいくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。いくつかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む。いくつかの実施形態において、それぞれの糖部は修飾された糖部である。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、あるいは12~15の核酸塩基からなる。いくつかの実施形態において、アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である。
【0022】
いくつかの実施形態では、前述の組成物のいずれかのアンチセンスオリゴマーと賦形剤を含む医薬組成物が本明細書で開示される。
【0023】
いくつかの実施形態では、被験体の硝子体内注射、網膜下注射、局所投与、移植、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射によって前述の医薬組成物のいずれかを投与することにより、必要としている被験体を処置する方法が本明細書で開示される。
【0024】
本明細書には、幾つかの実施形態において、医薬組成物が開示され、該医薬組成物は、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズするアンチセンスオリゴマーであって、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物が保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーが、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物からの保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、アンチセンスオリゴマー;および薬学的に許容可能な賦形剤を含む。幾つかの実施形態では、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物は、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物である。幾つかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイントロンにおいて、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-500までの領域内にある。幾つかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。幾つかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:3-4のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの修飾された糖部を含む。アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、または12~15の核酸塩基を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。幾つかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:446-447から選択される配列内にある。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:5-323から選択されるヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射または静脈内注射のために製剤される。
【0025】
本明細書には、幾つかの実施形態において、医薬組成物が開示され、該医薬組成物は、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズするアンチセンスオリゴマーであって、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物が保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーが、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物からの保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、アンチセンスオリゴマー;および薬学的に許容可能な賦形剤を含む。幾つかの実施形態では、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物は、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物である。幾つかの実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイントロンにおいて、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-500までの領域内にある。幾つかの実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:2に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる。幾つかの実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:3-4のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する配列を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、ホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、または2’-O-メトキシエチル部分を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの修飾された糖部を含む。アンチセンスオリゴマーは、8~50の核酸塩基、8~40の核酸塩基、8~35の核酸塩基、8~30の核酸塩基、8~25の核酸塩基、8~20の核酸塩基、8~15の核酸塩基、9~50の核酸塩基、9~40の核酸塩基、9~35の核酸塩基、9~30の核酸塩基、9~25の核酸塩基、9~20の核酸塩基、9~15の核酸塩基、10~50の核酸塩基、10~40の核酸塩基、10~35の核酸塩基、10~30の核酸塩基、10~25の核酸塩基、10~20の核酸塩基、10~15の核酸塩基、11~50の核酸塩基、11~40の核酸塩基、11~35の核酸塩基、11~30の核酸塩基、11~25の核酸塩基、11~20の核酸塩基、11~15の核酸塩基、12~50の核酸塩基、12~40の核酸塩基、12~35の核酸塩基、12~30の核酸塩基、12~25の核酸塩基、12~20の核酸塩基、または12~15の核酸塩基を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%相補的である。幾つかの実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:448から選択される配列内にある。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%配列同一性であるヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:324-445から選択されるヌクレオチド配列を含む。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、硝子体内注射、網膜下注射、局所投与、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射のために製剤される。
【0026】
本明細書には、幾つかの実施形態において、PRPF3タンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたPRPF3 mRNAの転写産物を産生するために、保持されたイントロンの除去を促進するように不足しているPRPF3 mRNAの転写産物の処理を誘発する方法が開示され、該方法は、(a)アンチセンスオリゴマーを被験体の標的細胞と接触させる工程;(b)アンチセンスオリゴマーを不足しているPRPF3 mRNAの転写産物にハイブリダイズする工程であって、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物が、PRPF3タンパク質の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工程;(c)PRPF3タンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたPRPF3 mRNAの転写産物を産生するために、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物から少なくとも1つの保持されたイントロンを除去する工程;および(d)十分に処理されたPRPF3 mRNAの転写産物からPRPF3タンパク質の機能形態を翻訳する工程を含む。幾つかの実施形態では、保持されたイントロンは、保持されたイントロン全体である。幾つかの実施形態では、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物は、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物である。
【0027】
本明細書には、幾つかの実施形態において、PRPF3タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体を処置する方法が開示され、該方法は、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に投与する工程を含む。
【0028】
本明細書には、幾つかの実施形態において、PRPF8タンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたPRPF8 mRNAの転写産物を産生するために、保持されたイントロンの除去を促進するように不足しているPRPF8 mRNAの転写産物の処理を誘発する方法が開示され、該方法は、(a)アンチセンスオリゴマーを被験体の標的細胞と接触させる工程;(b)アンチセンスオリゴマーを不足しているPRPF8 mRNAの転写産物にハイブリダイズする工程であって、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物が、PRPF8タンパク質の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工程;(c)PRPF8タンパク質の機能形態をコードする十分に処理されたPRPF8 mRNAの転写産物を産生するために、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物から少なくとも1つの保持されたイントロンを除去する工程;および(d)十分に処理されたPRPF8 mRNAの転写産物からPRPF8タンパク質の機能形態を翻訳する工程を含む。幾つかの実施形態では、保持されたイントロンは、保持されたイントロン全体である。幾つかの実施形態では、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物は、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物である。
【0029】
本明細書には、幾つかの実施形態において、PRPF8タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体を処置する方法が開示され、該方法は、SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に投与する工程を含む。
【0030】
<引用による組み込み>
本明細書で言及されるすべての公報、特許、および特許出願は、個々の公報、特許、特許出願が引用によって組み込まれるように具体的且つ個々に示される程度まで、引用によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の新規な特徴は、特に添付の請求項に明記されている。本発明の原則が利用される例示の実施形態について説明する以下の詳細な記載と、添付の図面を参照することで、本発明の特徴および利点についてのよりよい理解が得られるであろう。
【0032】
【
図1】
図1は、典型的な保持されたイントロン含有(RIC)mRNA前駆体の転写産物の概略図を示す。5’スプライス部位コンセンサス配列は、-3eから-1eおよび+1から+6(「e」と標識された数字はエクソンであり、標識されていない数字はイントロンである)まで下線を引かれた文字(文字はヌクレオチドである;大文字:エクソン部分、および小文字:イントロン部分)で示されている。3’スプライス部位コンセンサス配列は、-15から-1および+1e(「e」と標識された数字はエクソンであり、標識されていない数字はイントロンである)まで下線を引かれた文字(文字はヌクレオチドである;大文字:エクソン部分、および小文字:イントロン部分)で示されている。ASOスクリ-ニングのためのイントロン標的領域は、保持されたイントロンの5’スプライス部位(左の矢印)に対するヌクレオチド+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位(右の矢印)に対するヌクレオチド-16までを含む。実施形態では、ASOスクリ-ニングのためのイントロン標的領域は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド+6から+100、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に対するヌクレオチド-16から-100を含む。エクソン標的部位は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4e、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンにおける+2eから-4eのヌクレオチドを含む。「n」または「N」はヌクレオチドを表し、「y」はピリミジンを表す。図示された配列は、哺乳動物のスプライス部位に対するコンセンサス配列を表わし、個々のイントロンおよびエクソンは、すべての位置でコンセンサス配列に一致する必要はなない。
【
図2A】
図2Aは、核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)の典型的な概略図を示す。
図2Aは、核と細胞質の区画に分割された細胞を示す。核内では、エクソン(長方形)およびイントロン(接続線)から成る標的遺伝子のmRNA前駆体の転写産物が、mRNAを産生するためにスプライシングを受け、このmRNAは、細胞質に輸送され、標的タンパク質に翻訳される。この標的遺伝子に関して、イントロン1のスプライシングは非効率的であり、保持されたイントロン含有(RIC)mRNA前駆体は、主として核内に蓄積し、細胞質に輸送された場合は劣化し、標的タンパク質の産生にはつながらない。
【
図2B】
図2Bは、核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)の典型的な概略図を示す。
図2Bは、核と細胞質の区画に分割された
図2Aと同じ細胞の一例を示す。アンチセンスオリゴマー(ASO)での処置は、イントロン1のスプライシングを促進し、結果としてmRNAの増加をもたらし、これは順に、高レベルの標的タンパク質に翻訳される。
【
図3】
図3は、イントロン12を有するPRPF3遺伝子中のイントロン保持を詳細に(detail)示す。RNA配列決定(RNAseq)を使用するPRPF3遺伝子中のイントロン保持事象の特定は、UCSCゲノムブラウザにおいて視覚化されて示される。上のパネルは、ARPE-19(網膜上皮)細胞において発現され、細胞質(上)または核分画(下)のいずれかにおいて局在化された、PRPF3転写産物に対応する読み取り密度を示す。このパネルの下部には、PRPF3遺伝子のグラフ表示が、縮尺を合わせて示されている。読み取り密度は、ピークとして示される。最も高い読み取り密度は、エクソン(ブラックボックス)に対応し、一方で、細胞分画のいずれにおいてもイントロンの大多数(矢印の先端を有する線)に対する読み取りは観察されていない。細胞質分画と比較してより高い読み取り密度が、核分画のイントロン12(矢印によって示される)に対して検知され、これはイントロン12のスプライシング効率が低く、結果としてイントロン保持をもたらすことを示している。保持されたイントロン含有mRNA前駆体の転写産物は、核内に保持され、細胞質には輸送されない。腎臓の上皮細胞中のイントロン12の読み取り密度は、下のパネルに詳細に示される。
【
図4】
図4は、2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、5’スプライス部位のすぐ下流または3’スプライス部位の上流にあるPRPF3 IVS 12標的配列に対して実施されたASOウォーク(walk)のグラフ表示を例示する。ASOは、(ASO P3-IVS12+28を例外として)5つのヌクレオチドを一度にシフトすることによって、これらの領域をカバーするように設計された。PRPF3エクソン-イントロン構造は、縮尺を合わせて描かれている。
【
図5】
図5は、イントロン13を有するPRPF3遺伝子中のイントロン保持を示す。PRPF3遺伝子内のイントロン保持は、本明細書で実施例において記載されるように、UCSCゲノムブラウザにおいて視覚化されて、RNA配列決定(RNAseq)によって特定された。ARPE-19細胞中のイントロン13の読み取り密度は、下のパネルに詳細に示される。
【
図6】
図6は、2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、5’スプライス部位のすぐ下流または3’スプライス部位の上流にあるPRPF3 IVS 13標的配列に対して実施されたASOウォークのグラフ表示を例示する。ASOは、(ASO P3-IVS13+15、P3-IVS13+31、およびP3-IVS13-47を例外として)5つのヌクレオチドを一度にシフトすることによって、これらの領域をカバーするように設計された。PRPF3エクソン-イントロン構造は、縮尺を合わせて描かれている。
【
図7】
図7は、イントロン31の詳細を有するPRPF8遺伝子中のイントロン保持を詳細に示す。RNA配列決定(RNAseq)を使用するPRPF8遺伝子中のイントロン保持事象の特定は、UCSCゲノムブラウザにおいて視覚化されて示される。上のパネルは、ARPE-19(網膜上皮)細胞において発現され、細胞質(上)または核分画(下)のいずれかにおいて局在化された、PRPF8転写産物に対応する読み取り密度を示す。このパネルの下部には、PRPF8遺伝子のグラフ表示が、縮尺を合わせて示されている。読み取り密度は、ピークとして示される。最も高い読み取り密度は、エクソン(ブラックボックス)に対応し、一方で、細胞分画のいずれにおいてもイントロンの大多数(矢印の先端を有する線)に対する読み取りは観察されていない。細胞質分画と比較してより高い読み取り密度が、核分画のイントロン31(矢印によって示される)に対して検知され、これはイントロン31のスプライシング効率が低く、結果としてイントロン保持をもたらすことを示している。保持されたイントロン含有mRNA前駆体の転写産物は、核内に保持され、細胞質には輸送されない。腎臓の上皮細胞中のイントロン31の読み取り密度は、下のパネルに詳細に示される。
【
図8】
図8は、2’-OMe ASO、PS骨格を使用して、5’スプライス部位のすぐ下流または3’スプライス部位の上流にあるPRPF3 IVS 31標的配列に対して実施されたASOウォークのグラフ表示を例示する。ASOは、5つのヌクレオチドを一度でシフトすることによって、これらの領域をカバーするように設計された。PRPF8エクソン-イントロン構造は、縮尺を合わせて描かれている。
【
図9】
図9は、NM_004698に対応するPRPF3に対するRefSeq遺伝子の概略図を示す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【
図10】
図10は、偽処理した細胞と比較した、80nMの示されたASOで24時間処置されたARPE-19細胞におけるイントロン12なしでのPRPF3 mRNAの発現レベルの平均(n=3)倍率変化を示して描かれる典型的なグラフを示す。データはRPL32発現に正規化される。
【
図11】
図11は、NM_004698に対応するPRPF3に対するRefSeq遺伝子の概略図を示す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【
図12】
図12は、偽処理した細胞と比較した、80nMの示されたASOで24時間処置されたARPE-19細胞におけるイントロン13なしでのPRPF3 mRNAの発現レベルの平均(n=3)倍率変化を示す典型的なグラフを示す。データはRPL32発現に正規化される。
【
図13】
図13は、NM_006445に対応するPRPF8に対するRefSeq遺伝子の概略図を示す。円で囲んだイントロンのイントロン保持率(PIR)が示される。
【
図14】
図14は、偽処理した細胞と比較した、80nMの示されたASOで24時間処置されたARPE-19細胞におけるイントロン31なしでのPRPF8 mRNAの発現レベルの平均(n=3)倍率変化を示して描かれる典型的なグラフを示す。データはRPL32発現に正規化される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1つを超えるイントロンを有するタンパク質コード遺伝子の一次転写産物における個々のイントロンは、異なる効率性を有する一次転写産物からスプライシングされる。ほとんどの場合、完全にスプライシングされたmRNAだけが、続く細胞質での翻訳のために核膜孔を通って輸送される。スプライシングされていない及び部分的にスプライシングされた転写産物は、核内で検出可能である。完全にスプライシングされていない転写産物の核内蓄積が、タンパク質に翻訳され得る細胞質中の有害である可能性のあるmRNAの蓄積を防ぐメカニズムであると一般的に考えられる。幾つかの遺伝子に関して、最も効率性の低いイントロンのスプライシングは、細胞質中での翻訳に先立つ、遺伝子発現における転写後の律速の工程である。
【0034】
RP18が不足しているPRPF3タンパク質およびRP13が不足しているPRPF8タンパク質をコードする、それぞれ、PRPF3およびPRPF8の遺伝子の相当なレベルの部分的にスプライシングされた転写産物が、ヒト細胞の核内で発見された。これらのPRPF3およびPRPF8のmRNA前駆体の種は、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む。本発明は、完全にスプライシングされた成熟mRNAの安定した状態の産生を増加させる、およびそれ故、翻訳されたPRPF3またはPRPF8のタンパク質レベルを増加させるために、遺伝子発現の核段階に対して律速的である、それぞれ、1つ以上の保持されたPRPF3またはPRPF8のイントロンのスプライシングをアップレギュレートするための組成物および方法を提供する。これらの組成物および方法は、核内に蓄積する保持されたイントロン含有PRPF3またはPRPF8 mRNA前駆体のイントロンスプライス部位で構成的スプライシングを促進するアンチセンスオリゴマー(ASO)を活用する。したがって、実施形態では、PRPF3またはPRPF8のタンパク質不足によって引き起こされた疾病を処置するために本発明の方法を使用して、PRPF3またはPRPF8のタンパク質が増加される。他の実施形態では、本発明の方法は、必要とする被験体の症状を処置するためにPRPF3またはPRPF8の産生を増大させるために使用される。実施形態では、被験体は、PRPF3またはPRPF8が野性型と比べて必ずしも不足していない疾病を有するが、その場合、PRPF3またはPRPF8の増加は、それにもかかわらず疾病を軽減する。実施形態では、疾病は、PRPF3またはPRPF8のハプロ不全によって引き起こされる。
【0035】
<網膜色素変性症>
網膜色素変性症(RP)は、PRPF3タンパク質の不足によって引き起こされたRP18およびPRPF8タンパク質の不足によって引き起こされたRP13を含む、眼疾患の衰弱した群について説明するものである。RPを有する被験体は、眼疾患の初期において夜間視力の損失を経験する。時間とともに、視力の損失が生じ始め、これは最終的にトンネル状視野につながる。この視力の損失は、杆体視細胞系における機能不全に起因し得る。眼疾患が進行するにつれ、罹患した患者は、視力の低下を経験する前に、錐体視細胞の大部分を失うかもしれない(Berger et al., 2010)。
【0036】
RP疾患の全体的な有病率は、約1:3500であると推測される。40を超える遺伝子の突然変異が、遺伝の以下の3つのパターンを介してRP疾患の発生率に相関した:常染色体優性、常染色体劣性、およびX連鎖。RP疾患の進行に関係した遺伝子は、以下の5つの主要なカテゴリーに分類され得る:i)光伝達、ii)網膜代謝、iii)組織の発達および維持、iv)細胞構造、およびv)スプライシング。スプライシングカテゴリー(PRPF3、PRPF8、PRP31およびPAP1)を含む遺伝子は、mRNA前駆体からイントロン配列を除去する役割のあるスプライソソームタンパク質複合体のアセンブリの要因である。試験は、RPの少なくとも幾つかのケースの進行がハプロ不全が原因であることを示唆し、これは、単一の機能障害の対立遺伝子の存在が、対応するタンパク質の発現の縮小を結果としてもたらすことを意味している(Berger et al., 2010)。
【0037】
<PRPF3>
16のエクソンに及び、1q21.1に位置する、PRPF3遺伝子は、mRNA前駆体プロセシング因子3(PRPF3)のタンパク質をコードする。PRPF3の基準mRNAの配列は、NCBI基準配列NM_004698で明記される。PRPF3は、スプライソソームのアセンブリに関係する、77kD、682のアミノ酸タンパク質である。PRPF3の機能不全は、RP18の進行に関係している。網膜に特異的なスプライシング要素が、PRPF3と相互作用し、杆体視細胞に特異的な表現型を産生し得ることが推測された。PRPF3のミスセンス変異P493SおよびT494Mが両方とも、RP18表現型を表示することが示され、これによって、PRPF3の機能不全は、RP18表現型に関連付けられる(Berger et al., 2010)。RP18およびPRPF3遺伝子は、例えば、OMIM#613095(Online Mendelian Inheritance in Man, Johns Hopkins University, 1966-2015)によって記載され、これは引用により本明細書に組み込まれる。
【0038】
<PRPF8>
42のエクソンに及び、17p13.3に位置する、PRPF8遺伝子は、mRNA前駆体プロセシング因子8(PRPF8)のタンパク質をコードする。PRPF8の基準mRNAの配列は、NCBI基準配列NM_006445で明記される。PRPF8は、スプライソソームのアセンブリに関係する、220kD、2,334のアミノ酸タンパク質である。PRPF8の機能不全は、RP13の進行に関係している。PRPF8変異体H2309P、H2309R、R2310K、P2301T、F2304L、R2310GおよびF2314Lは、RP13の臨床表現型に結果的につながることが分かり、これによって、PRPF8の機能不全は、RP13に関連付けられる(Berger et al., 2010)。RP13およびPRPF8遺伝子は、例えば、OMIM#600059(Online Mendelian Inheritance in Man, Johns Hopkins University, 1966-2015)によって記載され、これは引用により本明細書に組み込まれる。
【0039】
<保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)>
実施形態では、本発明の方法は、細胞核内のPRPF3またはPRPF8の遺伝子から転写された、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の存在を活用する。成熟した完全にスプライシングされたmRNAを産出するための特定されたRIC mRNA前駆体の種のスプライシングは、保持されたイントロンのスプライシングアウトを刺激するASOを使用して誘発される。結果として生じる成熟mRNAは、細胞質に輸送されて、翻訳され得、それによって患者の細胞中のPRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質の量が増加し、それぞれ、RP18またはRP13の症状が緩和される。以下にさらに詳述されるこの方法は、核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)として知られている。
【0040】
<PRPF3の核転写産物>
本明細書で実施例において記載されるように、PRPF3遺伝子は、イントロン保持事象のために分析され、イントロン、例えばイントロン12および13の保持が観察された。UCSCゲノムブラウザによって視覚化されたRNA配列決定(RNAseq)は、ARPE-19細胞において発現された及び細胞質または核分画のいずれかにおいて局在化されたPRPF3転写産物を示した。いずれの分画においても、大多数のイントロンに対して読み取り観察されなかった。しかしながら、細胞質分画と比較して、核分画におけるイントロン12および13に対してより高い読み取り密度が検知され、これは、イントロン12および13のスプライシング効率が低く、結果としてイントロン保持をもたらすことを示している。保持されたイントロン含有mRNA前駆体の転写産物は、主として核内に蓄積し、PRPF3タンパク質には翻訳されない。イントロン12および13に対する読み取り密度は、それぞれ、26%および33%のイントロン保持を示した。イントロン12に対するイントロン保持率(PIR)の値は、4つの値(37、35、16、および15)を平均することによって得られた。イントロン13に対するPIR値は、同様に、4つの値、34、33、34、および31を平均することによって得られた。各値は、4つの異なるアルゴリズムのうちの1つを使用して、ARPE-19(網膜色素上皮)細胞において決定された。
【0041】
幾つかの実施形態では、PRPF3イントロン番号は、NM_004698でのmRNA配列に対応している。幾つかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の標的部分は、イントロン12及び/又は13内にある。実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の標的部位へのASOのハイブリダイゼーションは、結果として、保持されたPRPF3のイントロン12または13のスプライス部位(5’スプライス部位または3’スプライス部位)でのスプライシングの増強をもたらし、続いてPRPF3タンパク質産生を増加させる。イントロンの番号付けが、異なるPRPF3アイソフォーム配列を参照することで変化し得ることが理解される。当業者は、本明細書で提供されるイントロン配列に基づいて、あるいはNM_004698でのmRNA配列を参照して提供されるイントロン番号を使用することで、あらゆるPRPF3アイソフォームにおいて対応するイントロン番号を決定することができる。当業者はまた、本明細書で提供されるイントロン配列に基づいて、あるいはNM_004698でのmRNA配列を参照して提供されるイントロン番号を使用することで、本発明の方法を使用して標的とするための、あらゆるPRPF3アイソフォームにおける隣接しているエクソンの配列を決定することができる。実施形態では、本発明の組成物および方法は、例えば、Gene ID 9129でのNCBI Gene IDのデータベース(National Center for Biotechnology Information, National Library Medicine, 8600 Rockville Pike, Bethesda,MD USA 20894によって運用されている、生物学的且つ科学的な情報のNCBIリポジトリ)に記載されるような、既知のPRPF3アイソフォームの発現を増大させるために使用され、これは引用によって本明細書に組み込まれる。
【0042】
いくつかの実施形態では、PRPF8イントロンの番号付けはNM_006445におけるmRNA配列に相当する。実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部位はイントロン31にある。実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部位へのASOのハイブリダイゼーションは、結果として、保持されたPRPF8イントロン31の少なくとも1つのスプライス部位(5’スプライス部位あるいは3’スプライス部位)におけるスプライシングの増強と、その後のPRPF8タンパク質産生の増大をもたらした。異なるPRPF8アイソフォーム配列を参照することで、イントロンの番号付けは変化しうると解される。当業者であれば、本明細書で提供されるイントロン配列に基づき、またはNM_006445におけるmRNA配列を参照して得られるイントロン番号を使用することで、任意のPRPF8アイソフォームにおける対応するイントロン番号を判定することができる。当業者はさらに、本明細書で提供されるイントロン配列に基づき、またはNM_006445におけるmRNA配列を参照して得られるイントロン番号を使用することで、本発明の方法を使用して標的化のための任意のPRPF8アイソフォームにおける隣接するエクソンの配列を判定することができる。実施形態では、本発明の組成物および方法は、例えば、遺伝子ID10594(生体情報および科学情報のNCBIリポジトリ)のNCBI遺伝子IDデータベースにおいて記載されるように、任意の既知のPRPF8アイソフォームの発現を増大させるために使用され、引用によって本明細書に組み込まれる
【0043】
<PRPF3>
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、PRPF3のゲノム配列(PRPF3 RIC mRNA前駆体)から転写されたRIC mRNA前駆体を標的とする。いくつかの実施形態では、PRPF3のゲノム配列はSEQ ID NO:1である。いくつかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体はSEQ ID NO:3である。
【0044】
<PRPF3:保持されたイントロン>
いくつかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物は、保持されたイントロン12を含む。いくつかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物が保持されたイントロン12を含むとき、本明細書に開示されるASOはSEQ ID NO:447を標的とする。いくつかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物が保持されたイントロン12を含むとき、ASOはSEQ ID NO:5-239のいずれか1つにかかる配列を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、PRPF3 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。
【0045】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体のエクソン12を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(あるいは5’)のエクソン12配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(あるいは5’)の、約4~約94の間のヌクレオチドのエクソン配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:5-23のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体中のイントロン12を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(あるいは3’)のイントロン12配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(あるいは3’)の、約6~約498の間のヌクレオチドのイントロン12配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:24-121のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(あるいは5’)のイントロン12配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(あるいは5’)の、約16~約496の間のヌクレオチドのイントロン12配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:122-218のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体中のエクソン13を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(あるいは3’)のエクソン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン12を含むPKD2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(あるいは3’)の、約2~約102の間のヌクレオチドのエクソン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:219-239のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0049】
<PRPF3:保持されたイントロン13>
いくつかの実施形態では、PRPF3RIC mRNA前駆体の転写産物は、保持されたイントロン13を含む。いくつかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物が保持されたイントロン13を含むとき、本明細書に開示されるASOはSEQ ID NO:446を標的とする。いくつかの実施形態では、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物が保持されたイントロン13を含むとき、ASOはSEQ ID NO:240-323のいずれか1つにかかる配列を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、PRPF3 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。
【0050】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体のエクソン13を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(あるいは5’)のエクソン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(あるいは5’)の、約4~約99の間のヌクレオチドのエクソン配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:240-259のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体中のイントロン13を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(あるいは3’)のイントロン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(あるいは3’)の、約6~約146の間のヌクレオチドのイントロン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:260-286のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(あるいは5’)のイントロン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(あるいは5’)の、約16~約146の間のヌクレオチドのイントロン13配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:287-310のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体中のエクソン14を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPRPF3 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(あるいは3’)のエクソン14配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン13を含むPKD2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(あるいは3’)の、約2~約67の間のヌクレオチドのエクソン14配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:311-323のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0054】
<PRPF8>
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、PRPF8のゲノム配列(PRPF8 RIC mRNA前駆体)から転写されたRIC mRNA前駆体を標的とする。いくつかの実施形態では、PRPF8のゲノム配列はSEQ ID NO:2である。いくつかの実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体はSEQ ID NO:4である。
【0055】
<PRPF8:保持されたイントロン31>
いくつかの実施形態では、PRPF8RIC mRNA前駆体の転写産物は、保持されたイントロン31を含む。いくつかの実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物が保持されたイントロン31を含むとき、本明細書に開示されるASOはSEQ ID NO:448を標的とする。いくつかの実施形態では、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物が保持されたイントロン31を含むとき、ASOはSEQ ID NO:324-445のいずれか1つにかかる配列を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるASOは、PRPF8 RIC mRNA前駆体の配列を標的とする。
【0056】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体のエクソン31を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(あるいは5’)のエクソン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から上流(あるいは5’)の、約4~約144の間のヌクレオチドのエクソン配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:324-350のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体中のイントロン31を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(あるいは3’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体の5’スプライス部位から下流(あるいは3’)の、約6~約156の間のヌクレオチドのイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:351-381のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(あるいは5’)のイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から上流(あるいは5’)の、約16~約156の間のヌクレオチドのイントロン31配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:382-410のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体中のエクソン32を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPRPF8 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(あるいは3’)のエクソン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロン31を含むPKD2 RIC mRNA前駆体の3’スプライス部位から下流(あるいは3’)の、約2~約172の間のヌクレオチドのエクソン32配列を標的とする。いくつかの実施形態では、ASOは、SEQ ID NO:411-445のいずれか1つにかかる配列を有する。
【0060】
<タンパク質の発現>
上記したように、RP疾患におけるPRPF3とPRPF8の突然変異は全タンパク質にわたって広まる。いくつかの実施形態では、本明細書において記載される方法が、機能的PRPF3タンパク質の産生を増加させるために使用される。他の実施形態では、本明細書において記載される方法が、機能的PRPF8タンパク質の産生を増加させるために使用される。他の実施形態では、本明細書において記載される方法が、機能的PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質の産生を増加させるために使用される。本明細書で使用されるように、用語「機能的な(functional)」は、RP疾患の1つ以上の疾病を除去するのに必要とされるPRPF3もしくはRPF8のタンパク質の活性、または機能の量に言及している。いくつかの実施形態では、部分的に機能的なPRPF3タンパク質の産生を増加させるために、前記方法が使用される。他の実施形態では、部分的に機能的なPRPF8タンパク質の産生を増加させるために、前記方法が使用される。他の実施形態では、部分的に機能的なPRPF3またはPRPF8タンパク質の産生を増加させるために、前記方法が使用される。本明細書で使用されるように、用語「部分的に機能的な(partially functional)」は、疾患の1つ以上の疾病を除去する又は防ぐのに必要とされる活性または機能の量未満である、PRPF3またはPRPF8のタンパク質の活性または機能の量に言及している。いくつかの実施形態では、部分的に機能的なタンパク質またはRNAは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、85%、少なくとも90%、または少なくとも95%の、完全な機能的タンパク質またはRNAに比してより小さな活性を持つだろう。
【0061】
複数の実施形態では、該方法は、PRPF3タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を有する被験体の細胞によって、PRPF3タンパク質の発現を増大させる方法であり、ここで、被験体は、PRPF3タンパク質の活性量の不足に起因するRP疾患を有し、そのPRPF3タンパク質の量の不足は、PRPF3タンパク質のハプロ不全によって引き起こされる。そのような実施形態では、被験体は、機能的PRPF3タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、PRPF3タンパク質を産生しない第2の対立遺伝子とを有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的PRPF3タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、非機能的PRPF3タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的PRPF3タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、部分的に機能的なPRPF3タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。これらの実施形態のいずれの場合でも、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子(機能的PRPF3タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位に結合し、それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、かつ、機能的PRPF3タンパク質をコードする成熟mRNA量の増加と、被検体の細胞中のPRPF3タンパク質発現の増加をもたらす。
【0062】
複数の実施形態では、該方法は、PRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を有する被験体の細胞によって、PRPF8タンパク質の発現を増加させる方法であり、ここで、被験体は、PRPF8タンパク質の活性量の不足に起因するRP疾患を有し、そのPRPF8タンパク質の量の不足は、PRPF8タンパク質のハプロ不全によって引き起こされる。そのような実施形態では、被験体は、機能的PRPF8 タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、PRPF8タンパク質を産生しない第2の対立遺伝子とを有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的PRPF8タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、非機能的PRPF8タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。別のそのような実施形態では、被験体は、機能的PRPF8タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、部分的に機能的なPRPF8タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有する。これらの実施形態のいずれの場合でも、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子(機能的PRPF8タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位に結合し、それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、かつ、機能的PRPF8タンパク質をコードする成熟mRNA量の増加と、被検体の細胞中のPRPF8タンパク質発現の増加をもたらす。
【0063】
いくつかの実施形態では、被験体は、機能的PRPF3タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、部分的に機能的なPRPF3タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、第1の対立遺伝子(機能的PRPF3タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位、あるいは第2の対立遺伝子(部分的に機能的なPRPF3タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位に、アンチセンスオリゴマーが結合する。それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、PRPF3タンパク質をコードする成熟mRNA量の増加と、被検体の細胞中の機能的あるいは部分的に機能的なPRPF3タンパク質発現の増加をもたらす。
【0064】
他の実施形態では、被験体は、機能的PRPF8タンパク質をコードする第1の対立遺伝子と、部分的に機能的なPRPF8タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、第1の対立遺伝子(機能的PRPF8タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位、あるいは第2の対立遺伝子(部分的に機能的なPRPF8タンパク質をコードする)から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位に、アンチセンスオリゴマーが結合する。それによって、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、PRPF8タンパク質をコードする成熟mRNA量の増加と、被検体の細胞中の機能的あるいは部分的に機能的なPRPF8タンパク質発現の増加をもたらす。
【0065】
関連する実施形態では、前記方法は、タンパク質あるいは機能的RNAの発現を増加させるためにASOを用いる方法である。実施形態では、PRPF3タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を有する被験体の細胞中のPRPF3タンパク質発現を増加させるためにASOを用い、ここでその被験体は、例えばRP18のようなPRPF3タンパク質の量または機能が不足している。
【0066】
他の関連する実施形態では、前記方法は、タンパク質あるいは機能的RNAの発現を増加させるためにASOを用いる方法である。実施形態では、PRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を有する被験体の細胞中のPRPF8タンパク質発現を増加させるために、ASOを用い、ここでその被験体は、例えばRP13のようなPRPF8タンパク質の量または機能が不足している。
【0067】
実施形態では、疾患を引き起こすタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物は、本明細書に記載されるASOによって標的化される。いくつかの実施形態では、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物は、ASOの標的とされる疾患の原因ではない。例えば、特定の経路における第1のタンパク質の突然変異または不足がもたらす疾患は、第2のタンパク質をコードするRIC mRNA前駆体を標的とし、それによって第2のタンパク質産生が増加することで、改善しうる。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質の機能は、第1のタンパク質の突然変異または不足(それは疾患または疾病の原因である)を補うことができる。
【0068】
実施形態では、被験体は、
a.第1の変異対立遺伝子であって、そこから、
i)PRPF3タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生される、
ii)PRPF3タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、低下した機能を有する形態で産生される、または
iii)PRPF3タンパク質あるいは機能的なRNAが産生されない、第1の変異対立遺伝子;および
b.第2の変異対立遺伝子であって、そこから、
i)PRPF3タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生される、
ii)PRPF3タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、低下した機能を有する形態で産生される、または
iii)PRPF3タンパク質が産生されない、第2の変異対立遺伝子を有し、
ここでRIC mRNA前駆体は、第1の対立遺伝子および/または第2の対立遺伝子から転写される。これらの実施形態では、ASOは、第1の対立遺伝子または第2の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位に結合することで、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、PRPF3タンパク質をコードするmRNAレベルの増加を引き起こし、被験体の細胞中の標的タンパク質または機能的なRNAの発現の増加をもたらす。これらの実施形態では、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングの結果として、発現レベルの増加した標的タンパク質あるいは機能的なRNAは、同等の野性型タンパク質(部分的に機能的な)と比較して機能が低い、あるいは同等の野性型タンパク質(完全に機能的な)と比較して十分な機能を有する、いずれの形態もありうる。
【0069】
実施形態では、被験体は、
a.第1の変異対立遺伝子であって、そこから、
i)PRPF8タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生される、
ii)PRPF8タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、低下した機能を有する形態で産生される、または
iii)PRPF8タンパク質あるいは機能的なRNAが産生されない、第1の変異対立遺伝子;および
b.第2の変異対立遺伝子であって、そこから、
iv)PRPF8タンパク質が、野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生される、
v)PRPF8タンパク質が、同等の野生型タンパク質と比較して、低下した機能を有する形態で産生される、または
vi)PRPF8タンパク質が産生されない、第2の変異対立遺伝子を有し、
ここでRIC mRNA前駆体は、第1の対立遺伝子および/または第2の対立遺伝子から転写される。これらの実施形態では、ASOは、第1の対立遺伝子または第2の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部位に結合することで、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングを誘発し、PRPF8タンパク質をコードするmRNAレベルの増加を引き起こし、被験体の細胞中の標的タンパク質または機能的なRNAの発現の増加をもたらす。これらの実施形態では、RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングの結果として、発現レベルの増加した標的タンパク質あるいは機能的なRNAは、同等の野性型タンパク質(部分的に機能的な)と比較して機能が低い、あるいは同等の野性型タンパク質(完全に機能的な)と比較して十分な機能を有する、いずれの形態もありうる。
【0070】
実施形態では、PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAのレベルは、例えば、アンチセンスオリゴマーで処置されない、あるいはPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部位と結合しないアンチセンスオリゴマーによって処置された対照細胞中で産生されたPRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAのレベルと比較した場合、1.1倍から10倍に増加する。
【0071】
実施形態では、PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質の量あるいは活性の不足に起因する疾病は、ASOが標的とする保持されたイントロンの選択的スプライシングあるいは異常スプライシングに起因する疾病ではない。実施形態では、PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質の量あるいは活性の不足に起因する疾病は、PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体中の保持されたイントロンの選択的スプライシングあるいは異常スプライシングに起因する疾病ではない。
【0072】
実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子から部分的に機能的なPRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質を発現する。その部分的に機能的なPRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質は、フレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、あるいは部分的な遺伝子欠失によってもたらされる。実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子から非機能的なPRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質を発現する。その非機能的なPRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質は、1つの対立遺伝子中のフレームシフト変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、あるいは部分的な遺伝子欠失によってもたらされる。実施形態では、本発明の方法を使用して処置された被験体は、1つの対立遺伝子にPRPF3またはPRPF8の全遺伝子欠失を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、被験体はP493SおよびT494Mから選択されたPRPF3ミスセンス変異を有する。他の実施形態において、被験体は、H2309P、H2309R、R2310K、P2301T、F2304L、R2310GおよびF2314Lから選択されたPRPF8ミスセンス変異を有する。実施形態では、当技術分野において既知の、あるいは、例えば先に参照したMcKie et al 2001の文献に記載された任意の突然変異を有する被験体が、本発明の方法および組成物を用いて処置される。
【0074】
<タンパク質発現を増加させるためのTANGOの使用>
前述したように、実施形態では、核内遺伝子出力の標的とされた増強(TANGO)は、PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質の発現を増加させるために、本発明の方法において使用される。これらの実施形態では、PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質をコードする保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)は、細胞の核内にある。保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接するエクソン、および3’スプライス部位に隣接するエクソンは、PRPF3タンパク質またはPRPF8タンパク質をコードし、これらを含むPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体を有する細胞は、RIC mRNA前駆体の標的部位に対して相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させられる。RIC mRNA前駆体の標的部位とハイブリダイズするASOは、保持されたイントロンのスプライス部位(5’スプライス部位あるいは3’スプライス部位)のスプライシングを強化し、その後の標的タンパク質産生を増加させる。
【0075】
「mRNA前駆体」と「mRNA前駆体の転写産物」の用語は、交換可能に使用され、少なくとも1つのイントロンを含む任意のmRNA前駆体種を指す。実施形態では、mRNA前駆体またはmRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャップ、および/またはポリA末端を含む。実施形態では、mRNA前駆体またはmRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャップおよびポリA末端の両方を含む。いくつかの実施形態では、mRNA前駆体の転写産物は、5’-7-メチルグアノシンキャップ、および/またはポリA末端を含まない。タンパク質に翻訳されない場合(あるいは核から細胞質へと輸送される場合)、mRNA前駆体の転写産物は非増殖性のメッセンジャーRNA(mRNA)分子である。
【0076】
明細書において使用されるように、「保持されたイントロン含有mRNA前駆体」(「RIC mRNA前駆体」)は、少なくとも1つの保持されたイントロンを含むmRNA前駆体の転写産物である。RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソンを含み、標的タンパク質をコードする。「標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体」は、完全にスプライシングされた場合に、標的タンパク質をコードすると解される。「保持されたイントロン」は、同じ遺伝子によってコードされた、隣接するイントロンのような1つ以上のイントロンが、同じmRNA前駆体の転写産物からスプライシングアウトされた場合に、mRNA前駆体の転写産物に存在する任意のイントロンである。いくつかの実施形態では、保持されたイントロンは、標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体中に最も豊富なイントロンである。実施形態では、保持されたイントロンは、細胞中の標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体集団に最も豊富なイントロンであり、そのRIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含む。実施形態では、標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団に最も豊富なイントロンを標的とするアンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーが標的にする、あるいは結合する保持されたイントロンを含む、集団中の2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。実施形態では、標的タンパク質をコードする成熟mRNAは、それにより産生される。「成熟mRNA」および「完全にスプライシングされたmRNA」の用語は、標的タンパク質をコードする完全に処理されたmRNA(例えば、核から細胞質へと輸送され、標的タンパク質に翻訳されるmRNA)、あるいは完全に処理された機能的なRNAを指し、本明細書において区別なく使用される。「増殖性mRNA」の用語もまた、標的タンパク質をコードする完全に処理されたmRNAを指して使用することができる。実施形態では、標的領域は、PRPF3タンパク質および/またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体に最も豊富に存在する保持されたイントロン中にある。実施形態では、PRPF3タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団に最も保持されるイントロンは、イントロン12である。実施形態では、PRPF3タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団に最も保持されるイントロンは、イントロン13である。いくつかの実施形態では、PRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体集団に最も保持されるイントロンは、イントロン31である。
【0077】
実施形態では、保持されたイントロンは、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、あるいは少なくとも約50%の保定の保持率に基づき、保持されたイントロンとして特定されたイントロンである。実施形態では、保持されたイントロンはすなわち、約5%~約100%、約5%~約95%、約5%~約90%、約5%~約85%、約5%~約80%、約5%~約75%、約5%~約70%、約5%~約65%、約5%~約60%、約5%~約65%、約5%~約60%、約5%~約55%、約5%~約50%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約10%~約100%、約10%~約95%、約10%~約90%、約10%~約85%、約10%~約80%、約10%~約75%、約10%~約70%、約10%~約65%、約10%~約60%、約10%~約65%、約10%~約60%、約10%~約55%、約10%~約50%、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約15%~約100%、約15%~約95%、約15%~約90%、約15%~約85%、約15%~約80%、約15%~約75%、約15%~約70%、約15%~約65%、約15%~約60%、約15%~約65%、約15%~約60%、約15%~約55%、約15%~約50%、約15%~約45%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約20%~約100%、約20%~約95%、約20%~約90%、約20%~約85%、約20%~約80%、約20%~約75%、約20%~約70%、約20%~約65%、約20%~約60%、約20%~約65%、約20%~約60%、約20%~約55%、約20%~約50%、約20%~約45%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約25%~約100%、約25%~約95%、約25%~約90%、約25%~約85%、約25%~約80%、約25%~約75%、約25%~約70%、約25%~約65%、約25%~約60%、約25%~約65%、約25%~約60%、約25%~約55%、約25%~約50%、約25%~約45%、約25%~約40%、あるいは約25%~約35%の保定の保持率に基づき、保持されたイントロンとして特定されたイントロンである。ENCODEデータ(例えば、Tilgner,et al.,2012,「Deep sequencing of subcellular RNA fractions shows splicing to be predominantly co-transcriptional in the human genome but inefficient for lncRNAs」Genome Research 22(9):1616-25に記載される)は、保持されたイントロンの特定の補助のために使用され得る。
【0078】
本明細書で使用されるように、用語「含む(comprise)」、あるいは「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」等の変化形は、詳細に言及された特徴(例えば、アンチセンスオリゴマーの場合は、定義された核酸塩基配列)を含むが、他のいかなる特徴をも排除するものではないと解される。したがって、本明細書で使用されるように、用語「含んでいる」は包括的であり、詳細に言及されていない追加の特徴(例えば、アンチセンスオリゴマーの場合、詳細に言及されていない追加の核酸塩基の存在)を除外しない。
【0079】
本明細書で提供される組成物及び方法の何れかの実施形態において、「含んでいる」は、「~から実質的に成る(consisting essentially of)」または「~から成る(consisting of)」と置き換えられ得る。「~から実質的に成る」という句は、請求項に係る発明の形質や機能に実質的に影響しない特徴と同様、特定の特徴(例えば核酸塩基配列)を要するように本明細書において使用される。本明細書で使用されるように、「成る」という用語は、詳細に言及された特徴(例えば核酸塩基配列)のみの存在を示すために使用される(よって、特定の核酸塩基配列から成るアンチセンスオリゴマーの場合には、詳細に言及されていない追加の核酸塩基の存在は除外される)。
【0080】
実施形態では、標的領域は、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の集団において2番目に豊富に存在するイントロンである、保持されたイントロン中にある。例えば、2番目に豊富な保持されたイントロンのヌクレオチド配列の独自性、特定のヌクレオチド配列を標的とするASO設計の容易さ、及び/又はASOを持つイントロンの標的化から結果として生じるタンパク質産生の増加の量により、最も豊富な保持されたイントロンではなく、2番目に豊富な保持されたイントロンが標的とされ得る。実施形態では、保持されたイントロンは、細胞中の標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団中において2番目に豊富なイントロンであり、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含む。実施形態では、標的タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の集団において2番目に豊富なアンチセンスオリゴマーに標的とされるアンチセンスオリゴマーは、アンチセンスオリゴマーが標的とされるまたは結合する保持されたイントロンを含む集団において、2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する。実施形態では、それにより標的タンパク質をコードする完全にスプライシングされた(成熟)RNAが産生される。実施形態では、PRPF3タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の集団において2番目に豊富に存在する保持されたイントロンは、イントロン12である。実施形態では、PRPF3タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の集団において2番目に豊富に存在する保持されたイントロンは、イントロン13である。
【0081】
実施形態において、ASOは、RIC mRNA前駆体中の保持されていないイントロン内にある、標的とされた領域に相補的である。実施形態では、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されていないイントロンの5’スプライス部位に対して+6~+100の領域;または保持されていないイントロンの3’スプライス部位に対して-16~-100の領域内にある。実施形態において、RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されていないイントロンの5’スプライス部位に対して+100から、保持されていないイントロンの3’スプライス部位に対して-100の領域内にある。領域または配列の場所を特定するために使用されるように、「内(within)」は、列挙された位置に残基を含むと理解される。例えば、+6~+100の領域は、+6および+100の位置に残基を含む。実施形態では、それにより標的タンパク質をコードする完全にスプライシングされた(成熟)RNAが産生される。
【0082】
実施形態では、RIC mRNA前駆体の保持されたイントロンは非効率的にスプライシングされたイントロンである。本明細書で使用されるように「非効率的にスプライシングされた」は、RIC mRNA前駆体における別のスプライス部位でのスプライシングの頻度と比較して、保持されたイントロン(5’スプライス部位または3’スプライス部位)に隣接しているスプライス部位での比較的少ない頻度のスプライシングを指し得る。用語「非効率的にスプライシングされた」はまた、スプライス部位でのスプライシングの相対速度または動力学を指し、ここでは、「非効率的にスプライシングされた」イントロンは、RIC mRNA前駆体における別のイントロンと比較して遅い速度でスプライシングまたは除去され得る。
【0083】
実施形態において、5’スプライス部位、および保持されたイントロンの+1~+6に隣接するエクソンの-3e~-1eでの9つのヌクレオチド配列は、対応する野生型の配列と同一である。実施形態において、保持されたイントロンの-15~-1、及び3’スプライス部位に隣接するエクソンの+1eでの16のヌクレオチド配列は、対応する野生型の配列と同一である。本明細書で使用されるように、「野生型の配列」は、生物学および科学情報のNCBIリポジトリに寄託される公開された参照ゲノムにおけるPRPF3またはPRPF8遺伝子のヌクレオチド配列を指す。本明細書で使用されるように、「野生型のPRPF3配列」はNCBI遺伝子ID9129で利用可能な正準配列を指す。本明細書で使用されるように、「野生型のPRPF8配列」はNCBI遺伝子ID10594で利用可能な正準配列を指す。本明細書で使用されるように、「e」で表わされたヌクレオチド位置は、ヌクレオチドがエクソン(例えば5’スプライス部位に隣接するエクソンまたは3’スプライス部位に隣接するエクソン)の配列に存在することを示す。
【0084】
該方法は、細胞を、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNA前駆体の一部に相補的なASOと接触させることを含み、その結果、PRPF3またはPRPF8タンパク質それぞれの発現の増加がもたらされる。本明細書で使用されるように、細胞に「接触させること」または投与することは、ASOと細胞が相互に作用するように細胞に最も近づいた状態でASOを提供する方法を指す。ASOと接触される細胞は、細胞を取り入れ、または細胞にASOを運ぶ。該方法は、疾病または疾患に関連した或いは疾病または疾患に関係する細胞を、本明細書に記載のASOのいずれかと接触させる工程を含む。幾つかの実施形態では、ASOは更に修飾され、または別の分子と結合(例えば、共有結合)されることで細胞型に対しASOを標的とし、ASOと疾病または疾患に関連した或いは疾病または疾患に関係する細胞との接触を向上させ、またはASOの取り込みを向上させ得る。
【0085】
本明細書で使用されるように、用語「タンパク質産生を増加する」または「標的タンパク質の発現を増加する」は、細胞中のmRNAから翻訳されるタンパク質の量を増強することを意味する。「標的タンパク質」は発現/産生の増加が望まれる任意のタンパク質でもよい。
【0086】
PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体を発現する細胞を、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に相補的なASOと接触させた結果、mRNA前駆体によりコードされるPRPF3またはPRPF8タンパク質(例えば標的タンパク質)の量の測定可能な増加がもたらされる。タンパク質の産生を測定または検出する方法は、当業者に明白であり、例えば、ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査、及びELISAといった既知の方法を含む。
【0087】
実施形態では、細胞を、PRPF3及び/又はPRPF8 RIC前駆体の転写産物の標的部分に相補的なASOと接触させた結果、ASOの欠如/処置の欠如下における細胞により産生されたタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%の、産生されたPRPF3及び/又はPRPF8タンパク質の量の増加がもたらされる。実施形態では、アンチセンスオリゴマーが接触される細胞により産生されたPRPF3またはPRPF8タンパク質の総量は、対照化合物により産生される標的タンパク質の量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍、増加する。対照化合物は、例えば、RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的でないオリゴヌクレオチドでもよい。
【0088】
幾つかの実施形態では、細胞を、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に相補的なASOと接触させた結果、標的タンパク質をコードする成熟mRNAを含むPRPF3またはPRPF8をコードするmRNAの量の増加がもたらされる。幾つかの実施形態では、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAの量、或いはPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードする成熟mRNAの量は、ASOの欠如/処置の欠如下における細胞により産生されたタンパク質の量と比較して、少なくとも10、20、30、40、50、60、80、100、150、200、250、300、350、400、450、500、または1000%増加される。実施形態では、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAの総量、或いはアンチセンスオリゴマーが接触された細胞において産生されたPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードする成熟mRNAの総量は、未処置の細胞、例えば未処置の細胞または対照化合物で処置した細胞において産生される成熟RNAの量と比較して、約1.1~約10倍、約1.5~約10倍、約2~約10倍、約3~約10倍、約4~約10倍、約1.1~約5倍、約1.1~約6倍、約1.1~約7倍、約1.1~約8倍、約1.1~約9倍、約2~約5倍、約2~約6倍、約2~約7倍、約2~約8倍、約2~約9倍、約3~約6倍、約3~約7倍、約3~約8倍、約3~約9倍、約4~約7倍、約4~約8倍、約4~約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍、増加する。対照化合物は、例えば、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的でないオリゴヌクレオチドでもよい。
【0089】
<RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシング>
本明細書で提供される方法とアンチセンスオリゴヌクレオチドの組成物は、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNA、或いはPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルの増加により、細胞、例えば、PRPF3またはPRPF8タンパク質の量または活性の不足により引き起こされるRPを患う被験体において、PRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させるのに有用である。特に、本明細書に記載されるような方法と組成物は、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物からの保持されたイントロンの構成的なスプライシングを誘発し、それにより、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAのレベル、或いはPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードする成熟mRNAのレベルを増加させ、且つPRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させる。
【0090】
RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的なスプライシングは、RIC mRNA前駆体から保持されたイントロンを正しく除去し、ここで、保持されたイントロンには野生型スプライス配列がある。本明細書で使用されるように、構成的スプライシングは、遺伝子または対立遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシング或いは異常スプライシングを引き起こす突然変異を伴う、遺伝子または対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体からの、保持されたイントロンのスプライシングを包含しない。例えば、保持されたイントロンの構成的スプライシングは、本明細書で提供される方法とアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して誘発されるように、mRNA前駆体の異常スプライシングを調整せず、又はその選択的スプライシングに影響せず、その結果、標的タンパク質または機能的RNAの発現の増加がもたらされる。
【0091】
実施形態では、構成的スプライシングは、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体から保持されたイントロンを正しく除去し、ここで、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体は、完全に機能的な標的タンパク質または機能的RNAをコードする、野生型遺伝子または対立遺伝子、或いは多型遺伝子または対立遺伝子から転写され、及び、遺伝子または対立遺伝子には、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異がない。
【0092】
幾つかの実施形態では、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体からの保持されたイントロンの構成的スプライシングは、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体から保持されたイントロンを正しく除去し、ここで、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体は、標的遺伝子または機能的RNAが野生型対立遺伝子からの産生と比較して減少したレベルで産生される遺伝子または対立遺伝子から転写され、および、遺伝子または対立遺伝子には、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異がない。これら実施形態では、構成的にスプライシングされた保持されたイントロンの正確な除去の結果、同等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較した時に機能的である標的タンパク質または機能的RNAの産生がもたらされる。
【0093】
他の実施形態では、構成的スプライシングは、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体から保持されたイントロンを正確に除去し、ここで、PRPF3またはPRPF8RIC mRNA前駆体は、同等な野生型タンパク質または機能的RNAと比較して機能が低下した形態で産生される、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子または対立遺伝子から転写され、及び、遺伝子または対立遺伝子には、保持されたイントロンの選択的スプライシングまたは異常スプライシングを引き起こす突然変異がない。これら実施形態では、構成的にスプライシングされた保持されたイントロンの正確な除去の結果、部分的に機能的な標的タンパク質、または、同等の野生型タンパク質または機能的RNAと比較した時に部分的に機能的である機能的RNAの産生がもたらされる。
【0094】
構成的なスプライシングによる保持されたイントロンの「正確な除去」は、エクソンのいかなる部分の除去も行わない、イントロン全体の除去を指す。
【0095】
実施形態において、本明細書に記載されるような、または本明細書に記載される任意の方法で使用されるアンチセンスオリゴマーは、PRPF3またはPRPF8遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングまたは異常スプライシングの調節により、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAの量、或いはPRPF3またはPRPF8タンパク質の量を増加しない。選択的スプライシングまたは異常スプライシングの調節は、例えばRT-PCRによりRNA種の配列と長さを分析する既知の方法により、および本明細書と文献の中で別記された方法を使用して、測定され得る。実施形態では、選択的または異常なスプライシングの調節は、少なくとも10%または1.1倍の対象のスプライシングされた種の量の増加或いは減少に基づいて決定される。実施形態では、調節は、本発明の方法でPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAの増加の決定に関して本明細書に記載されるように、少なくとも10%から100%または1.1から10倍であるレベルでの増加または減少に基づいて決定される。
【0096】
実施形態では、該方法は、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体が、野生型PRPF3またはPRPF8 mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された方法である。実施形態では、方法は、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体が、全長の野生型PRPF3またはPRPF8 mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された方法である。実施形態では、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体は、全長のPRPF3またはPRPF8 mRNA前駆体の部分的スプライシングによって産生された。これらの実施形態では、全長のPRPF3またはPRPF8 mRNA前駆体は、野生型スプライス部位配列を有する保持されたイントロンのスプライシングと比較して、保持されたイントロンの正しいスプライシングを損なわない保持されたイントロンのスプライス部位に多型を有し得る。
【0097】
実施形態では、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAは、全長の成熟mRNAまたは野生型成熟mRNAである。これらの実施形態では、全長の成熟mRNAは、野生型成熟mRNAによってコードされたPRPF3またはPRPF8タンパク質の活性と比較して、成熟mRNAによってコードされた標的タンパク質または機能的RNAの活性に影響しない多型を有し得る。
【0098】
<アンチセンスオリゴマー>
本開示の一態様は、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に結合することによってスプライシングを増強するアンチセンスオリゴマーを含む組成物である。本明細書で使用されるように、用語「ASO」および「アンチセンスオリゴマー」は、交換可能に使用され、ワトソン・クリック塩基対またはゆらぎ塩基対(G-U)によって標的核酸(例えば、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体)配列にハイブリダイズする、核酸塩基を含む、ポリヌクレオチドなどのオリゴマーを指す。ASOは、標的配列に相補的な又はほぼ相補的(例えば、標的配列に結合し、スプライス部位でスプライシングを増強させるのに十分な相補性)である正確な配列を有し得る。ASOは、標的核酸(例えば、mRNA前駆体の転写産物の標的部分)に結合し(ハイブリダイズし)、生理学的条件下でハイブリダイズされたままであるように設計されている。典型的に、ASOは、意図した(標的とされた)核酸配列以外の部位にハイブリダイズする場合、標的核酸でない限られた数の配列に(標的核酸以外の少数の部位に)ハイブリダイズする。ASOの設計は、mRNA前駆体の転写産物の標的部分の核酸配列、或いはゲノムまたは細胞のmRNA前駆体またはトランスクリプトームにおける他の場所での十分に類似した核酸配列の発生を考慮に入れることができ、その結果、ASOが他の部位に結合し「オフターゲット」効果を引き起こす可能性は限定される。例えば、発明の名称「Reducing Nonsense-Mediated mRNA Decay」のWO2015/035091として公開されたPCT国際出願番号PCT/US2014/054151におけるものなどの、当業者に既知のアンチセンスオリゴマーは、本明細書に記載される方法を実施するために使用され得る。
【0099】
幾つかの実施形態では、ASOは、標的核酸またはRIC mRNA前駆体の標的部分に「特異的にハイブリダイズする」または「特異的」である。典型的に、そのようなハイブリダイゼーションは、37℃より実質的に高い融解温度(Tm)で、好ましくは少なくとも50℃で、および典型的に60℃からおよそ90℃の間で生じる。そのようなハイブリダイゼーションは、好ましくは、厳しいハイブリダイゼーション条件に対応している。与えられたイオン強度およびpHで、Tmは、標的配列の50%が相補的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。
【0100】
オリゴヌクレオチドなどのオリゴマーは、ハイブリダイゼーションが2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の逆平行構成で生じるときに、互いに「相補的」である。二本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが第1のポリヌクレオチドの鎖の1つと第2のポリヌクレオチドの鎖の1つとの間に生じる場合に、別のポリヌクレオチドに「相補的」であり得る。相補性(1つのポリヌクレオチドが別のポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般に容認された塩基対合則に従って、互いに水素結合を形成すると予期される対向する鎖における塩基の割合(例えばパーセンテージ)の点から数量化できる。アンチセンスオリゴマー(ASO)の配列は、ハイブリダイズするその標的核酸の配列に100%相補的である必要はない。特定の実施形態では、ASOは、標的とされる標的核酸配列内の標的部位に対する、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相補性を含むことができる。例えば、オリゴマー化合物の20の核酸塩基のうちの18が標的部位に相補的であり、それ故、特異的にハイブリダイズするASOは、90パーセントの相補性を表わす。この例において、残りの相補的でない核酸塩基は、ともにクラスター化され得るか、または相補的な核酸塩基と分散され(interspersed)、互いに又は相補的な核酸塩基に隣接している必要はない。ASOの標的核酸の領域とのパーセント相補性は、BLASTプログラム(基礎的なローカルアライメント検索ツール)および当該技術分野で既知のPowerBLASTプログラム(Altschul et al.,J.Mol.Biol.,1990,215,403-410;Zhang and Madden,Genome Res.,1997,7,649-656)を慣例的に使用して判定され得る。
【0101】
ASOは、標的配列におけるすべての核酸塩基にハイブリダイズする必要はなく、それがハイブリダイズする核酸塩基は、隣接しているか又は隣接していないかもしれない。ASOは、mRNA前駆体の転写産物の1つ以上のセグメントにわたってハイブリダイズし得、その結果、介在する又は隣接するセグメントは、ハイブリダイゼーション事象に関係しない(例えば、ループ構造またはヘアピン構造が形成され得る)。特定の実施形態では、ASOは、標的mRNA前駆体の転写産物において隣接していない核酸塩基にハイブリダイズする。例えば、ASOは、ASOがハイブリダイズしない1つ以上の核酸塩基によって分離される、mRNA前駆体の転写産物における核酸塩基にハイブリダイズすることができる。
【0102】
本明細書に記載されるASOは、RIC mRNA前駆体の標的部分に存在する核酸塩基に相補的である核酸塩基を含む。用語「ASO」は、オリゴヌクレオチド、および標的mRNA上の相補的な核酸塩基にハイブリダイズすることができる核酸塩基を含むが、ペプチド核酸(PNA)などの糖部を含まない、他のオリゴマー分子を具体化する。ASOは、自然発生のヌクレオチド、ヌクレオチドアナログ、修飾されたヌクレオチド、またはそれらの2つ又は3つの任意の組み合わせを含み得る。用語「自然発生のヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドを含む。用語「修飾されたヌクレオチド」は、修飾された又は置換された糖類及び/又は修飾された骨格を有するヌクレオチドを含む。幾つかの実施形態では、ASOのヌクレオチドのすべてが、修飾されたヌクレオチドである。本明細書に記載される方法および組成物と適合性のあるASOの化学修飾およびASOの成分は、当業者に明白であり、例えば、米国特許第8,258,109号B2、米国特許第5,656,612号、米国特許公開番号2012/0190728、およびDias and Stein,Mol.Cancer Ther.2002,347-355で見ることができ、それら全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0103】
ASOの核酸塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシルなどの自然発生の未修飾の核酸塩基、または標的mRNA前駆体上に存在する核酸塩基との水素結合が可能であるように未修飾の核酸塩基に十分に類似している合成または修飾された核酸塩基であり得る。修飾された核酸塩基の例としては、限定されないが、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、および5-ヒドロキシメチルシトシンが挙げられる。
【0104】
本明細書に記載されるASOはまた、オリゴマーの成分に結合する骨格構造を含む。用語「骨格構造」および「オリゴマー結合」は、交換可能に使用され、ASOの単量体間の結合を指し得る。自然発生のオリゴヌクレオチドでは、骨格は、オリゴマーの糖部を結合する3’-5’ホスホジエステル結合を含む。本明細書に記載されるASOの骨格構造またはオリゴマー結合は、(限定されないが)ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホラニラデート(phosphoraniladate)、ホスホラミデート(phosphoramidate)などを含む。例えば、LaPlanche et al.,Nucleic Acids Res.14:9081(1986);Stec et al.,J.Am.Chem.Soc.106:6077(1984),Stein et al.,Nucleic Acids Res.16:3209(1988),Zon et al.,Anti Cancer Drug Design 6:539 1991;Zon et al.,Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,pp.87-108(F.Eckstein,Ed.,Oxford University Press,Oxford England(1991));Stec et al.,米国特許第5,151,510号;Uhlmann and Peyman,Chemical Reviews 90:543(1990)を参照。幾つかの実施形態では、ASOの骨格構造は、亜リン酸を含有していないが、例えば、ペプチド核酸(PNA)、またはカルバミン酸塩、アミド、および直鎖および環式の炭化水素基を含む連結基において、ペプチド結合を含有している。幾つかの実施形態では、骨格修飾は、ホスホチオエート(phosphothioate)結合である。幾つかの実施形態では、骨格修飾は、ホスホラミデート結合である。
【0105】
実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間の結合の各々での立体化学は、ランダムである。実施形態では、ASO骨格のリンヌクレオチド間の結合の各々での立体化学は、制御され、ランダムではない。例えば、米国特許出願公開第2014/0194610「Methods for the Synthesis of Functionalized Nucleic Acids」は、核酸オリゴマーにおいて各リン原子でキラリティーの掌性(handedness)を独立して選択する方法について記載している。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、ランダムでないリンヌクレオチド間の結合を有するASOを含む。実施形態では、本発明の方法に使用される組成物は、純粋なジアステレオマーASOを含む。実施形態では、本発明の方法に使用される組成物は、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、約100%、約90%から約100%、約91%から約100%、約92%から約100%、約93%から約100%、約94%から約100%、約95%から約100%、約96%から約100%、約97%から約100%、約98%から約100%、または約99%から約100%のジアステレオマー純度を有するASOを含む。
【0106】
実施形態では、ASOは、そのリンヌクレオチド間の結合でRpおよびSpの構成のランダムでない混合物を有している。例えば、良好な活性とヌクレアーゼの安定性のバランスを達成するために、RpとSpの混合がアンチセンスオリゴヌクレオチドに求められることが示唆されてきた(Wan,et al.,2014,「Synthesis,biophysical properties and biological activity of second generation antisense oligonucleotides containing chiral phosphorothioate linkages」Nucleic Acids Research 42(22):13456-13468,参照により本明細書に組み込まれる)。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約5~100%のRp、少なくとも約5%のRp、少なくとも約10%のRp、少なくとも約15%のRp、少なくとも約20%のRp、少なくとも約25%のRp、少なくとも約30%のRp、少なくとも約35%のRp、少なくとも約40%のRp、少なくとも約45%のRp、少なくとも約50%のRp、少なくとも約55%のRp、少なくとも約60%のRp、少なくとも約65%のRp、少なくとも約70%のRp、少なくとも約75%のRp、少なくとも約80%のRp、少なくとも約85%のRp、少なくとも約90%のRp、または少なくとも約95%のRpと、残りのsp、或いは、約100%のRpを含む。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約10%から約100%のRp、約15%から約100%のRp、約20%から約100%のRp、約25%から約100%のRp、約30%から約100%のRp、約35%から約100%のRp、約40%から約100%のRp、約45%から約100%のRp、約50%から約100%のRp、約55%から約100%のRp、約60%から約100%のRp、約65%から約100%のRp、約70%から約100%のRp、約75%から約100%のRp、約80%から約100%のRp、約85%から約100%のRp、約90%約100%のRp、または約95%から約100%のRp、約20%から約80%のRp、約25%から約75%のRp、約30%から約70%のRp、約40%から約60%のRp、または約45%から約55%のRpと、残りのSpを含む。
【0107】
実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約5~100%のSp、少なくとも約5%のSp、少なくとも約10%のSp、少なくとも約15%のSp、少なくとも約20%のSp、少なくとも約25%のSp、少なくとも約30%のSp、少なくとも約35%のSp、少なくとも約40%のSp、少なくとも約45%のSp、少なくとも約50%のSp、少なくとも約55%のSp、少なくとも約60%のSp、少なくとも約65%のSp、少なくとも約70%のSp、少なくとも約75%のSp、少なくとも約80%のSp、少なくとも約85%のSp、少なくとも約90%のSp、または少なくとも約95%のSpと、残りのRp、あるいは約100%のSpを含む。実施形態では、限定されないが、本明細書で表1に明記されるASOのいずれかを含む、本発明の方法に使用されるASOは、約10%から約100%のSp、約15%から約100%のSp、約20%から約100%のSp、約25%から約100%のSp、約30%から約100%のSp、約35%から約100%のSp、約40%から約100%のSp、約45%から約100%のSp、約50%から約100%のSp、約55%から約100%のSp、約60%から約100%のSp、約65%から約100%のSp、約70%から約100%のSp、約75%から約100%のSp、約80%から約100%のSp、約85%から約100%のSp、約90%から約100%のSp、または約95%から約100%のSp、約20%から約80%のSp、約25%から約75%のSp、約30%から約70%のSp、約40%から約60%のSp、または約45%から約55%のSpと、残りのRpを含む。
【0108】
本明細書に記載されるASOのいずれかは、自然発生のヌクレオチド中に存在するような、リボースまたはデオキシリボースを含む糖部、あるいはモルホリン環を含む、修飾された糖部または糖アナログを含有し得る。修飾された糖部の限定しない例は、2’-O-メチル(2’-O-Me)、2’-O-メトキシエチル(2’MOE)、2’-O-アミノエチル、2’F;N3’->P5’ホスホラミデート、2’ジメチルアミノオキシエトキシ、2’ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’-グアニジニウム(guanidinidium)、2’-O-グアニジニウムエチル、カルバミン酸塩修飾した糖、および二環式修飾した糖などの、2’置換基が挙げられる。幾つかの実施形態では、糖部修飾は、2’-O-Me、2’F、および2’MOEから選択される。幾つかの実施形態では、糖部修飾は、ロックド核酸(LNA)におけるような追加の架橋結合である。幾つかの実施形態では、糖アナログは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)などのモルホリン環を含有している。幾つかの実施形態では、糖部は、リボフラノシルまたは2’デオキシリボフラノシルの修飾を含む。幾つかの実施形態では、糖部は、2’4’抑制された(constrained)2’O-メチルオキシエチル(cMOE)修飾を含む。幾つかの実施形態では、糖部は、cEt 2’,4抑制された2’-OエチルBNA修飾を含む。幾つかの実施形態では、糖部は、トリシクロDNA(tcDNA)修飾を含む。幾つかの実施形態では、糖部は、エチレン核酸(ENA)修飾を含む。幾つかの実施形態では、糖部は、MCE修飾を含む。修飾は当該技術分野で既知であり、文献、例えば、Jarver,et al.,2014「A Chemical View of Oligonucleotides for Exon Skipping and Related Drug Applications」Nucleic Acid Therapeutics 24(1):37-47に記載され、これは、この目的のための引用によって本明細書に組み込まれる。
【0109】
幾つかの例では、ASOの各単量体は、同じ方法で修飾され、例えば、ASOの骨格の各結合はホスホロチオエート結合を含み、または各リボース糖部は2’O-メチル修飾を含む。ASOの単量体成分の各々の上に存在する、そのような修飾は、「均一な修飾」と呼ばれる。幾つかの例では、異なる修飾の組み合わせが望まれ得、例えば、ASOは、ホスホロジアミデート結合とモルホリン環を含む糖部(モルホリノ)との組み合わせを含み得る。ASOへの異なる修飾の組み合わせは、「混合修飾」または「混合化学作用」と呼ばれる。
【0110】
幾つかの実施形態では、ASOは、1つ以上の骨格修飾を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、1つ以上の糖部修飾を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、1つ以上の骨格修飾および1つ以上の糖部修飾を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、2’MOE修飾およびホスホロチオエート骨格を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、ホスホロジアミデートモルホリノ(PMO)を含む。幾つかの実施形態では、ASOは、ペプチド核酸(PNA)を含む。本明細書に記載されるASOのいずれか又はASOの成分(例えば、核酸塩基、糖部、骨格)は、ASOの望ましい特性または活性を達成するために或いはASOの望ましくない特性または活性を減少させるために修飾されてもよい。例えば、ASOまたは任意のASOの1つ以上の成分は、mRNA前駆体の転写産物上の標的配列への結合親和性を増強する;非標的配列への結合を減少させる;細胞のヌクレアーゼ(つまり、RNase H)による分解を減少させる;細胞および/または細胞の核へのASOの取り込みを改善する;ASOの薬物動態(pharmacokinetics)または薬力(pharmacodynamics)を変更する;およびASOの半減期を調節するために修飾され得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、ASOは、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ホスホロチオエート修飾されたヌクレオチドで構成される。そのようなヌクレオチドで構成されたASOは、特に、本明細書で開示される方法によく適しており、そのような修飾を有しているオリゴマーは、ヌクレアーゼ分解に対する著しく増強された耐性および増加したバイオアベイラビリティを有すると示されており、これによって、例えば、本明細書に記載される幾つかの実施形態における経口送達に適するようになる。例えば、Geary et al.,J Pharmacol Exp Ther.2001;296(3):890-7;Geary et al.,J Pharmacol Exp Ther.2001;296(3):898-904を参照。
【0112】
ASOを合成する方法は当業者に既知である。代替的に又は加えて、ASOは商用源から得られ得る。
【0113】
他に明記されない限り、一本鎖核酸(例えば、mRNA前駆体の転写産物、オリゴヌクレオチド、ASOなど)配列の左端は、5’末端であり、一本鎖または二本鎖の核酸配列の左方向は、5’方向と呼ばれる。同様に、核酸配列(一本鎖または二本鎖)の右端または右方向は、3’末端または3’方向である。一般に、核酸中の基準点に対する5’にある領域または配列は、「上流」として言及され、核酸中の基準点に対する3’にある領域または配列は、「下流」として言及される。一般に、mRNAの5’方向または5’末端は、開始コドン(initiation or start codon)が位置する場所であり、一方で、3’末端または3’方向は、終止コドンが位置する場所である。幾つかの態様では、核酸中の基準点の上流にあるヌクレオチドは、負の数によって指定され、基準点の下流にあるヌクレオチドは、正の数によって指定され得る。例えば、基準点(例えば、mRNA中のエクソン-エクソン連結)は「ゼロ」部位として指定され得、基準点に直接隣接し且つその上流にあるヌクレオチドは、「マイナス1」、例えば「-1」と指定され、一方で、基準点に直接隣接し且つその下流にあるヌクレオチドは、「プラス1」、例えば「+1」と指定される。
【0114】
他の実施形態では、ASOは、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体において保持されたイントロンの5’スプライス部位の下流(3’の方向)であるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分(例えば、5’スプライス部位に対して、正の数で示された方向)に対して相補的である(および、結合する)(
図1)。いくつかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して、+6から約+100の領域内にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、ASOは、5’スプライス部位に対して+1から+5までのヌクレオチド(5’スプライス部位の下流に位置付けられた最初の5つのヌクレオチド)に対して相補的でない。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から+50のヌクレオチドの領域内にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的であり得る。幾つかの態様では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+6から+90、+6から+80、+6から+70、+6から+60、+6から+50、+6から+40、+6から+30、または+6から+20の領域内にある標的部分に相補的である。
【0115】
幾つかの実施形態では、ASOは、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体において保持されたイントロンの3’スプライス部位の上流(5’の方向)にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的領域(例えば負の数で指定された方向)に対して相補的である(
図1)。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16から-50の領域内にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、ASOは、3’スプライス部位に対して-1から-15までのヌクレオチド(3’スプライス部位の上流に位置付けられた最初の15のヌクレオチド)に対して相補的でない。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16から-50の領域内にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの態様では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16から-90、-16から-80、-16から-70、-16から-60、-16から-50、-16から-40、または-16から-30の領域内にある標的部分に相補的である。
【0116】
実施形態において、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対する+100から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対する-100までの領域内に存在する。
【0117】
幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン内(上流)にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である(
図1)。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソンにおける+2eから-4eの領域内にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド-1eから-3eに相補的ではない。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して、-4eから-100e、-4eから-90e、-4eから-80e、-4eから-70e、-4eから-60e、-4eから-50e、-4eから-40e、-4eから-30e、または-4eから-20eの領域内にある、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。
【0118】
幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン内(下流)にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である(
図1)。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソンにおける+2eから-4eの領域内にあるPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対するヌクレオチド+1eに相補的ではない。幾つかの実施形態では、ASOは、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して、+2eから+100e、+2eから+90e、+2eから+80e、+2eから+70e、+2eから+60e、+2eから+50e、+2eから+40e、+2eから+30e、または+2eから+20eの領域内にある、PRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体の標的部分に相補的である。ASOは、スプライシングの特異的結合および効果的な増強作用に適する任意の長さでもよい。幾つかの実施形態では、ASOは8から50の核酸塩基から成る。例えば、ASOは、長さが8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、45または50の核酸塩基であってもよい。幾つかの実施形態では、ASOは50よりも多い核酸塩基から成る。アンチセンスオリゴマーは、8から50の核酸塩基、8から40の核酸塩基、8から35の核酸塩基、8から30の核酸塩基、8から25の核酸塩基、8から20の核酸塩基、8から15の核酸塩基、9から50の核酸塩基、9から40の核酸塩基、9から35の核酸塩基、9から30の核酸塩基、9から25の核酸塩基、9から20の核酸塩基、9から15の核酸塩基、10から50の核酸塩基、10から40の核酸塩基、10から35の核酸塩基、10から30の核酸塩基、10から25の核酸塩基、10から20の核酸塩基、10から15の核酸塩基、11から50の核酸塩基、11から40の核酸塩基、11から35の核酸塩基、11から30の核酸塩基、11から25の核酸塩基、11から20の核酸塩基、11から15の核酸塩基、12から50の核酸塩基、12から40の核酸塩基、12から35の核酸塩基、12から30の核酸塩基、12から25の核酸塩基、12から20の核酸塩基、または12から15の核酸塩基、13から50の核酸塩基、13から40の核酸塩基、13から35の核酸塩基、13から30の核酸塩基、13から25の核酸塩基、13から20の核酸塩基、14から50の核酸塩基、14から40の核酸塩基、14から35の核酸塩基、14から30の核酸塩基、14から25の核酸塩基、14から20の核酸塩基、15から50の核酸塩基、15から40の核酸塩基、15から35の核酸塩基、15から30の核酸塩基、15から25の核酸塩基、15から20の核酸塩基、20から50の核酸塩基、20から40の核酸塩基、20から35の核酸塩基、20から30の核酸塩基、20から25の核酸塩基、25から50の核酸塩基、25から40の核酸塩基、25から35の核酸塩基、または25から30の核酸塩基の長さである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが18のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが15のヌクレオチドである。幾つかの実施形態では、ASOは長さが25のヌクレオチドである。
【0119】
幾つかの実施形態では、異なる化学的性質を有するが、RIC mRNA前駆体の同じ標的部分に相補的である2つ以上のASOが使用される。幾つかの実施形態では、RIC mRNA前駆体の異なる標的部分に相補的である2つ以上のASOが使用される。
【0120】
実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の部分または抱合体、例えば、オリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する標的部分または他の抱合体に化学的に連結される。そのような部分は、限定されないが、例えば、コレステロール部分、コレステリル部分のような脂質部分、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシルの残留物、ポリアミン鎖もしくはポリエチレングリコール鎖、あるいはアダマンタン酢酸を含む。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよび調製方法は、公開された文献に記載されている。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、例えばN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GluNAc)、またはマンノース(例えばマンノース6-リン酸)、脂質、またはポリ炭化水素化合物を含む部分と結合する。抱合体は、例えばリンカーを使用して、当技術分野において理解され、文献中に記載されるように、糖、塩基またはリン酸基上の幾つかの位置のいずれかでアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドの1つ以上に連結され得る。リンカーは二価または三価の分枝リンカーを含み得る。実施形態では、抱合体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に結合される。オリゴヌクレオチド抱合体を調製する方法は、例えば、米国特許第8,450,467号「Carbohydrate conjugates as delivery agents for oligonucleotides」に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0121】
幾つかの実施形態では、ASOによって標的とされる核酸は、真核細胞などの細胞内に発現したPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体である。幾つかの実施形態では、用語「細胞」は、細胞の集団を指し得る。幾つかの実施形態では、細胞は被験体内に存在する。幾つかの実施形態では、細胞は被験体から分離されている。幾つかの実施形態では、細胞はエクスビボにある。幾つかの実施形態では、細胞は、疾病または疾患関連の細胞または細胞株である。幾つかの実施形態では、細胞はインビトロに(例えば、細胞培養液中に)ある。
【0122】
<医薬組成物>
記載された組成物のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含み、上記方法のいずれかにおいて使用するための医薬組成物または医薬製剤は、医薬品産業において周知の従来技術に従って調製することができ、且つ公開文献にも記載されている。実施形態では、被験体を処置するための医薬組成物または製剤は、上述のような有効量のアンチセンスオリゴマー、あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、水和物、またはエステル、および薬学的に許容可能な希釈剤を含む。医薬製剤のアンチセンスオリゴマーはさらに、薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤または担体を含み得る。
【0123】
薬学的に許容可能な塩は、過度の毒性反応、刺激反応、アレルギー反応等を持たないヒトおよび下等動物の組織に接する使用に適しており、かつ適切なベネフィット・リスク比に相応している(例えば、この目的のための参照によって本明細書に組み込まれた、S.M.Berge,et al.,J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19 (1977)を参照)。その塩は、化合物の最終的な分離および精製中に、または別々に遊離塩基の官能基を適切な有機酸と反応させることによって、インサイチュで調製され得る。薬学的に許容可能で無毒な酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機酸か、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸などの有機酸か、またはイオン交換などの他の文書で立証された方法を用いることによって形成されたアミノ基の塩である。他の薬学的に許容可能な塩は、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などを含む。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属の塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを含む。さらに薬学的に許容可能な塩は、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルのスルホン酸塩、およびアリールスルホン酸塩などの対イオンを使用して形成された、無毒なアンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンのカチオンを含む。
【0124】
実施形態において、組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、ソフトゲル、坐剤、および浣腸剤などの多くの考えられる剤形のいずれかに製剤される。実施形態において、組成物は、水性培地、非水性培地、または混合培地状の懸濁液として製剤される。水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(ソルビトールおよび/またはデキストラン)を含む懸濁液の粘度を増加させる物質をさらに含むこともある。その懸濁液は、安定化剤も含むこともある。実施形態において、本発明の医薬製剤または医薬組成物は、限定されないが、溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、発泡体またはリポソーム含有製剤(例えばカチオンリポソームまたは非カチオンリポソーム)を含む。
【0125】
本発明の医薬組成物または医薬製剤は、当業者にとって適当でありかつ周知である、または公開文献に記載されている、1つ以上の透過促進剤、担体、賦形剤、または他の活性成分あるいは非活性成分を含むこともある。実施形態において、リポソームは立体的に安定したリポソーム、例えば1つ以上の特定の脂質を含むリポソームも含む。これらの特定の脂質は、循環寿命が増強されたリポソームを結果としてもたらす。実施形態において、立体的に安定したリポソームは、1つ以上の糖脂質を含むか、またはポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つ以上の親油性ポリマーを用いて誘導体化される。実施形態において、界面活性剤は医薬製剤または医薬組成物中に含まれる。薬物製品、製剤およびエマルジョンにおける界面活性剤の使用は、当技術分野においてよく知られている。実施形態では、本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの効率的な送達を達成する、例えば、細胞膜にわたる拡散を助ける及び/又は脂溶性薬物の浸透性を増強するために、浸透促進剤を利用する。実施形態では、浸透促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、または非キレート性の非界面活性剤である。
【0126】
実施形態において、医薬製剤は複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは他の薬物または治療剤と組み合わせて投与される。実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当技術分野において既知の任意の方法によって、血液脳関門を介する対象のアンチセンスオリゴヌクレオチドの浸透を促進することができる1つ以上の薬剤と共に投与される。例えば、筋組織内の運動ニューロンへアデノウイルスベクターを投与することによる薬剤の送達は、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,632,427号「Adenoviral-vector-mediated gene transfer into medullary motor neurons」に記載されている。脳、例えば、線条体、視床、海馬、または黒質への直接のベクターの送達は、例えば、引用によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,756,523号「Adenovirus vectors for the transfer of foreign genes into cells of the central nervous system particularly in brain」に記載される。
【0127】
実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、望ましい薬理学的性質または薬力学的性質を提供する薬剤に結合されるか抱合される。実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、血液脳関門を介する浸透または輸送を促進すると当技術分野において知られている物質、例えばトランスフェリン受容体の抗体に結合される。実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンス化合物をより効果的にするために、または血液脳関門を介する輸送を増加させるためにウイルスベクターに結合される。実施形態では、浸透性の血液脳関門の破壊は、糖、例えば、メソ-エリトリトール、キシリトール、D(+)ガラクトース、D(+)ラクトース、D(+)キシロース、ズルシトール、ミオイノシトール、L(-)フルクトース、D(-)マンニトール、D(+)グルコース、D(+)アラビノース、D(-)アラビノース、セロビオース、D(+)マルトース、D(+)ラフィノース、L(+)ラムノース、D(+)メリビオース、D(-)リボース、アドニトール、D(+)アラビトール、L(-)アラビトール、D(+)フコース、L(-)フコース、D(-)リキソース、L(+)リキソース、およびL(-)リキソース、あるいは、例えばグルタミン、リジン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、バリン、およびタウリンなどのアミノ酸、の注入によって助けられる。血液脳関門浸透を増強する方法および材料は、例えば、それぞれが引用により本明細書に組み込まれた、米国特許第4,866,042号「Method for the delivery of genetic material across the blood brain barrier」、米国特許第6,294,520号「Material for passage through the blood-brain barrier」、および米国特許第6,936,589号「Parenteral delivery systems」に記載されている。
【0128】
実施形態では、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、1つ以上の部分または抱合体、例えば、オリゴヌクレオチドの活性または細胞取り込みを増強する標的部分または他の抱合体に化学的に連結される。そのような部分は、限定されないが、例えば、コレステロール部分、コレステリル部分のような脂質部分、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシルの残留物、ポリアミン鎖もしくはポリエチレングリコール鎖、あるいはアダマンタン酢酸を含む。親油性部分を含むオリゴヌクレオチドおよび調製方法は、公開された文献に記載されている。実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、限定されないが、脱塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、例えばN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)、N-Ac-グルコサミン(GluNAc)、またはマンノース(例えばマンノース6-リン酸)、脂質、またはポリ炭化水素化合物を含む部分と結合する。抱合体は、例えばリンカーを使用して、当技術分野において理解され、文献中に記載されるように、糖、塩基またはリン酸基上の幾つかの位置のいずれかでアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドの1つ以上に連結され得る。リンカーは二価または三価の分枝リンカーを含み得る。実施形態では、抱合体は、アンチセンスオリゴヌクレオチドの3’末端に結合される。オリゴヌクレオチド抱合体を調製する方法は、例えば、米国特許第8,450,467号「Carbohydrate conjugates as delivery agents for oligonucleotides」に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0129】
<被験体の処置>
本明細書に提供される組成物のうちのいずれかが個体に投与されうる。「個体」は、「被験体」または「患者」と交換可能に使用されてもよい。個体は哺乳動物でもよく、例えば人間、または、人類以外の霊長類、げっ歯類、ウサギ、ラット、マウス、馬、ロバ、ヤギ、猫、犬、雌牛、ブタ、あるいは羊などの動物である。実施形態では、個体はヒトである。実施形態では、個体は胎児、胚、または小児である。他の実施形態では、個体は植物などの別の真核生物であってもよい。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は細胞にエクスビボで投与される。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される組成物は、疾病または障害を処置する方法として個体に投与される。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記述された疾病のいずれかなどの遺伝病を有する。いくつかの実施形態では、個体は、本明細書に記述された疾病のいずれかなどの疾病を有するリスクがある。いくつかの実施形態では、個体は、不十分な量のタンパク質または不十分な活性のタンパク質により引き起こされる疾病または障害を有するリスクが増大している。個体が、不十分な量のタンパク質または不十分な活性のタンパク質により引き起こされる疾病または障害を有するリスクが増大している場合、方法は防止的または予防的な処置を含む。例えば、個体は、その疾病の家族健康歴のために、そのような疾病または障害を有するリスクが増大している場合がある。典型的には、そのような疾病または障害を有するリスクが増大している個体は、予防的処置(例えば、疾病または障害の発症または悪化を予防するかまたは遅らせることによる)から利益を受ける。
【0131】
本発明のASOの投与に適切な経路は、ASOの送達が所望される細胞型に応じて変わりうる。目はRP13とRP18の最も著しく影響を受ける組織である。したがって、本発明のASOは、硝子体内注射、網膜下注射、または眼への局所適用によって被験体に投与することができる。実施形態では、本発明のASOは、インプラント、例えば、眼に埋め込まれるカプセル化された薬物、を介して被験体に投与される。実施形態では、本発明のASOでエクスビボで処置されたRPE細胞は、例えば、カプセル化された形態で眼に埋め込まれる。実施形態では、治療は、例えば、経口アセタゾラミド、カルシウムチャンネルブロッカー、ルテインまたはゼアキサンチン、経口バルプロ酸、または免疫抑制剤などRPの既存の処置と併せて投与される。実施形態では、ASOは非経口的に投与される。実施形態では、本発明のASOは、経口的に、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、または静脈内注射によって、被験体に投与されてもよい。実施形態では、胎児は、例えば胎児にASO組成物を直接的または間接的に(例えば母親を介して)投与することによって、子宮内で処置される。
【0132】
実施形態では、本方法および組成物を用いて処置された被験体は、当該技術分野で公知および記載されている任意の方法を用いて症状の改善について評価される。
【0133】
<スプライシングを増強する追加のASOを特定する方法>
本発明の範囲内にはまた、特異的に標的イントロンでのPRPF3またはPRPF8 RIC mRNA前駆体のスプライシングを増強する追加のASOを特定する(判定する)方法がある。mRNA前駆体の標的領域内で様々なヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするASOは、標的イントロンのスプライシングの速度および/または程度を改善するASOを特定する(判定する)ためにスクリーニングされてもよい。いくつかの実施形態では、ASOはスプライシング抑制因子/サイレンサーの結合部位をブロックまたは妨害することがある。当該技術分野において既知の任意の方法が、イントロンの標的領域にハイブリダイズされた時に所望の効果(例えばスプライシング、タンパク質または機能的なRNA生産の向上)をもたらすASOを特定する(判定する)ために使用されてもよい。これらの方法はまた、保持されたイントロンに隣接するエクソン中、または保持されていないイントロン中の標的領域へ結合することにより、保持されたイントロンのスプライシングを増強するASOの特定のために使用することができる。使用されうる方法の一例が下記に提供される。
【0134】
mRNA前駆体の標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを用いて、ASO「ウォーク」(walk)と呼ばれる、一ラウンドのスクリーニングを行いうる。例えば、ASOウォークに使用されるASOは、保持されたイントロンの5’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド上流(例えば、標的とされた/保持されたイントロンの上流に位置するエクソンの配列の一部)から、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド下流まで、および/または、保持されたイントロンの3’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド上流から、標的とされた/保持されたイントロンの3’スプライス部位のおよそ100ヌクレオチド下流(例えば、標的とされた/保持されたイントロンの下流に位置するエクソンの配列の一部)まで、5つのヌクレオチドごとに敷き詰められ得る。例えば、15ヌクレオチドの長さの第1のASOは、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位に対しヌクレオチド+6から+20に特異的にハイブリダイズするように設計され得る。第2のASOは、標的とされた/保持されたイントロンの5’スプライス部位に対するヌクレオチド+11から+25に特異的にハイブリダイズするように設計されている。ASOは、mRNA前駆体の標的領域に及ぶように設計されている。実施形態では、ASOは、より密に、例えば、1、2、3、または4つのヌクレオチドごとに敷き詰められ得る。さらに、ASOは、5’スプライス部位の100ヌクレオチド下流から、3’スプライス部位の100ヌクレオチド上流まで敷き詰められ得る。
【0135】
1つ以上のASO、または1つの対照ASO(標的領域にハイブリダイズするとは予期されていない配列である、スクランブル配列を有するASO)は、例えばトランスフェクションによって、標的mRNA前駆体(例えば、本明細書で別記されるRIC mRNA前駆体)を発現する疾患関連の細胞株へと送達される。ASOの各々のスプライシングを誘発する効果は、本明細書で記載されるように、当該技術分野で既知の方法、例えば、スプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用する逆転写酵素(RT)-PCRによって評価され得る(「イントロン保持事象の特定」を参照)。対照ASO処理された細胞と比較して、ASO処理された細胞におけるスプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用して産生されたRT-PCR産物が減少または欠如することは、標的イントロンのスプライシングが増強されたことを示している。いくつかの実施形態では、スプライシング効率、スプライシングされていないmRNA前駆体に対するスプライシングされたmRNA前駆体の割合、スプライシングの速度、またはスプライシングの程度は、本明細書に記載されるASOを使用して改善され得る。標的mRNA前駆体によってコードされるタンパク質または機能的RNAの量も、各ASOが所望の効果(例えば、タンパク質産生の増加)を達成したかどうかを判定するために評価され得る。ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およびELISAなどの、タンパク質産生を評価し及び/又は定量するための、当該技術分野で既知の方法も使用することができる。
【0136】
ASO「ミクロウォーク」(micro-walk)と呼ばれる第2ラウンドのスクリーニングは、mRNA前駆体の標的領域にハイブリダイズするように設計されたASOを使用して実行され得る。ASOミクロウォークに使用されるASOは、ASOでハイブリダイズされたときに結果的にスプライシングを増強させるmRNA前駆体のヌクレオチド酸配列をさらに改良する(refine)ために、1つのヌクレオチドごとに敷き詰められる。
【0137】
標的イントロンのスプライシングを促進するASOによって定義される領域は、1-ntステップ(1-nt steps)で配置されたASO、ならびに、典型的には18-25ntである、より長いASOを含む、ASO「ミクロウォーク」によって、より詳細に調査される。
【0138】
上記でASOウォークに関して記載されたように、1つ以上のASO、または対照ASO(標的領域にハイブリダイズすると予期されていない配列である、スクランブル配列を有するASO)を、例えばトランスフェクションによって、標的mRNA前駆体を発現する疾患関連細胞株へと送達することにより、ASOミクロウォークが実行される。ASOの各々のスプライシングを誘発する効果は、本明細書で記載されるように、当該技術分野で既知の方法、例えば、スプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用する逆転写酵素(RT)-PCRによって評価され得る(「イントロン保持事象の特定」を参照)。対照ASO処理された細胞と比較して、ASO処理された細胞におけるスプライスジャンクションに及ぶプライマーを使用して産生されたRT-PCR産物が減少または欠如することは、標的イントロンのスプライシングが増強されたことを示している。いくつかの実施形態では、スプライシング効率、スプライシングされていないmRNA前駆体に対するスプライシングされたmRNA前駆体の割合、スプライシングの速度、またはスプライシングの程度は、本明細書に記載されるASOを使用して改善され得る。標的mRNA前駆体によってコードされるタンパク質または機能的RNAの量も、各ASOが所望の効果(例えば、タンパク質産生の増加)を達成したかどうかを判定するために評価され得る。ウェスタンブロッティング、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡検査法、およびELISAなどの、タンパク質産生を評価し及び/又は定量するための、当該技術分野で既知の方法も使用することができる。
【0139】
mRNA前駆体の領域にハイブリダイズされたときに、結果的にスプライシングを増強させ、タンパク質産生を増加させるASOは、動物モデル、例えば、全長ヒト遺伝子がノックインされたトランスジェニックマウスモデルまたは疾患のヒト化マウスモデルを使用して、インビボで試験され得る。ASOの投与に適した経路は、ASOの送達が望まれる疾患及び/又は細胞型に応じて変化し得る。したがって、本発明のASOは、硝子体内注射、網膜下注射、眼への局所適用、または、眼に埋め込まれるカプセル化された薬物、によって被験体に投与することができる。投与後に、モデル動物の細胞、組織、及び/又は臓器は、当該技術分野に既知の方法および本明細書に記載される方法によって、例えば、スプライシング(効率、速度、程度)およびタンパク質産生を評価することにより、ASO処置の効果を判定するために評価され得る。動物モデルはまた、疾患または疾患重症度の表現型の徴候または行動的な徴候であり得る。
【0140】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され記載された一方、そのような実施形態が一例としてのみ提供されていることは当業者にとって明白である。多くの変更、変化および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者の心に思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用され得ることを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその同等物の範囲内の方法および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
本明細書は、発明の以下の態様を包含する。
[1]
被験体の細胞により標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させることによって被験体の網膜色素変性症18(RP18)または網膜色素変性症13(RP13)を処置する方法であって、
ここで、前記細胞は、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、RIC mRNA前駆体は、標的タンパク質または機能的RNAをコードし、
前記方法は、
被験体の細胞を、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAのレベルを増加させ、標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させる、方法。
[2]
保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有している細胞によって、PRPF3またはPRPF8である標的タンパク質の発現を増加させる方法であって、
RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、RIC mRNA前駆体はPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードし、
前記方法は、
細胞を、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に相補的なアンチセンスオリゴマー(ASO)と接触させる工程を含み、それによって、保持されたイントロンは、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体から構成的にスプライシングされ、それにより、細胞内で、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、PRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させる、方法。
[3]
RP18を処置する方法であって標的タンパク質がPRPF3である、またはRP13を処置する方法であって、標的タンパク質がPRPF8である、[1]に記載の方法。
[4]
標的タンパク質または機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足している標的タンパク質あるいは機能的RNAを機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質あるいは補償機能的RNAである、[1]に記載の方法。
[5]
細胞は、PRPF3またはPRPF8タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体内にあるか又は被験体に由来する、[2]に記載の方法。
[6]
標的タンパク質の量の不足は、標的タンパク質のハプロ不全によって引き起こされ、ここで、被験体は、機能的な標的タンパク質をコードする第1の対立遺伝子、標的タンパク質が産生されない第2の対立遺伝子、または非機能的な標的タンパク質をコードする第2の対立遺伝子を有し、アンチセンスオリゴマーは、第1の対立遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の標的部分に結合する、[1]-[5]のいずれか1つに記載の方法。
[7]
被験体は、標的タンパク質の量または機能の不足に起因する障害により引き起こされた疾病を抱えており、
ここで、被験体は、
a.
i.標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生され、
ii.標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で産生され、あるいは、
iii.標的タンパク質が産生されない、
第1の変異対立遺伝子と、
b.
i.標的タンパク質が野生型対立遺伝子からの産生と比較して、減少したレベルで産生され、
ii.標的タンパク質が同等の野性型タンパク質と比較して機能が低下した形態で産生され、あるいは、
iii.標的タンパク質が産生されない、
第2の変異対立遺伝子とを有し、
ここで、被験体が第1の変異対立遺伝子a.iii.を有するとき、第2の変異対立遺伝子はb.i.あるいはb.ii.であり、ここで、被験体が第2の変異対立遺伝子b.iii.を有するとき、第1の変異対立遺伝子はa.i.あるいはa.ii.であり、ここで、RIC mRNA前駆体は、a.i.あるいはa.ii.である第1の変異対立遺伝子、および/または、b.i.あるいはb.ii.である第2の変異対立遺伝子から転写される、[1]-[5]のいずれか1つに記載の方法。
[8]
標的タンパク質は、同等の野性型タンパク質と比較して、機能が低下した形態で産生される、[7]に記載の方法。
[9]
標的タンパク質は、同等な野性型タンパク質と比較して、十分に機能的な形態で産生される、[7]に記載の方法。
[10]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにある、[1]-[9]のいずれか1つに記載の方法。
[11]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496までの領域内の保持されたイントロンにある、[1]-[9]のいずれか1つに記載の方法。
[12]
標的タンパク質はPRPF3である、[1]-[11]のいずれか1つに記載の方法。
[13]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496までの領域内の保持されたイントロンにある、[12]に記載の方法。
[14]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または100%相補的である配列を含む、[12]または[13]に記載の方法。
[15]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:447またはSEQ ID NO:446の少なくとも8の隣接する核酸を含む領域に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、[12]-[14]のいずれか1つに記載の方法。
[16]
ASOは、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、[12]-[15]のいずれか1つに記載の方法。
[17]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:3に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を有する配列を含む、[13]-[16]のいずれか1つに記載の方法。
[18]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、[13]-[17]のいずれか1つに記載の方法。
[19]
標的タンパク質がPRPF8である、[1]-[11]のいずれか1つに記載の方法。
[20]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+156から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-156までの領域内の保持されたイントロンにある、[19]に記載の方法。
[21]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または100%相補的である配列を含む、[19]または[20]に記載の方法。
[22]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:448の少なくとも8の隣接する核酸に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する配列を含む、[19]-[21]のいずれか1つに記載の方法。
[23]
ASOは、SEQ ID NO:234-445のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、[19]-[22]のいずれか1つに記載の方法。
[24]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:4に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を有する配列を含む、[20]-[23]のいずれか1つに記載の方法。
[25]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、[20]-[24]のいずれか1つに記載の方法。
[26]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から+100の領域、あるいは、
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16から-100の領域、の内部の保持されたイントロンにある、[1]-[9]および[12]-[25]のいずれか1つに記載の方法。
[27]
アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの保持されたイントロンの5’スプライス部位の約100ヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイントロンの3’スプライス部位の約100ヌクレオチド上流の領域内にあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする、[1]-[9]および[12]-[25]のいずれか1つに記載の方法。
[28]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2eから-4eの領域、あるいは、
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2eから-4eの領域、
の内部の保持されたイントロンである、[1]-[9]および[12]-[25]のいずれか1つに記載の方法。
[29]
アンチセンスオリゴマーは、機能的RNAまたは標的タンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより、標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない、[1]-[28]のいずれか1つに記載の方法。
[30]
アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない、[1]-[29]のいずれか1つに記載の方法。
[31]
RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体の部分的なスプライシング、または野生型のmRNA前駆体の部分的なスプライシングによって産生された、[1]-[30]のいずれか1つに記載の方法。
[32]
標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである、[1]-[31]のいずれか1つに記載の方法。
[33]
産生された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である、[1]-[32]のいずれか1つに記載の方法。
[34]
アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞において産生された標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAの総量は、対照細胞において産生された標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAの総量と比較して、約1.1から約10倍、約1.5から約10倍、約2から約10倍、約3から約10倍、約4から約10倍、約1.1から約5倍、約1.1から約6倍、約1.1から約7倍、約1.1から約8倍、約1.1から約9倍、約2から約5倍、約2から約6倍、約2から約7倍、約2から約8倍、約2から約9倍、約3から約6倍、約3から約7倍、約3から約8倍、約3から約9倍、約4から約7倍、約4から約8倍、約4から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍増加する、[1]-[33]のいずれか1つに記載の方法。
[35]
アンチセンスオリゴマーと接触させた細胞によって産生された標的タンパク質の総量は、対照細胞によって産生された標的タンパク質の総量と比較して、約1.1から約10倍、約1.5から約10倍、約2から約10倍、約3から約10倍、約4から約10倍、約1.1から約5倍、約1.1から約6倍、約1.1から約7倍、約1.1から約8倍、約1.1から約9倍、約2から約5倍、約2から約6倍、約2から約7倍、約2から約8倍、約2から約9倍、約3から約6倍、約3から約7倍、約3から約8倍、約3から約9倍、約4から約7倍、約4から約8倍、約4から約9倍、少なくとも約1.1倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約3.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、あるいは少なくとも約10倍増加する、[1]-[34]のいずれか1つに記載の方法。
[36]
アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、[1]-[35]のいずれか1つに記載の方法。
[37]
アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、[1]-[36]のいずれか1つに記載の方法。
[38]
アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの修飾された糖部を含む、[1]-[37]のいずれか1つに記載の方法。
[39]
それぞれの糖部は修飾された糖部である、[38]に記載の方法。
[40]
アンチセンスオリゴマーは、8から50の核酸塩基、8から40の核酸塩基、8から35の核酸塩基、8から30の核酸塩基、8から25の核酸塩基、8から20の核酸塩基、8から15の核酸塩基、9から50の核酸塩基、9から40の核酸塩基、9から35の核酸塩基、9から30の核酸塩基、9から25の核酸塩基、9から20の核酸塩基、9から15の核酸塩基、10から50の核酸塩基、10から40の核酸塩基、10から35の核酸塩基、10から30の核酸塩基、10から25の核酸塩基、10から20の核酸塩基、10から15の核酸塩基、11から50の核酸塩基、11から40の核酸塩基、11から35の核酸塩基、11から30の核酸塩基、11から25の核酸塩基、11から20の核酸塩基、11から15の核酸塩基、12から50の核酸塩基、12から40の核酸塩基、12から35の核酸塩基、12から30の核酸塩基、12から25の核酸塩基、12から20の核酸塩基、あるいは12から15の核酸塩基からなる、[1]-[39]のいずれか1つに記載の方法。
[41]
アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である、[1]-[40]のいずれか1つに記載の方法。
[42]
細胞は、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、および、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で最も豊富な保持されたイントロンに結合する、[1]-[41]のいずれか1つに記載の方法。
[43]
最も豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAを産生するRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、[46]に記載の方法。
[44]
細胞は、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたRIC mRNA前駆体の集団を含み、ここで、RIC mRNA前駆体の集団は2つ以上の保持されたイントロンを含み、および、ここで、アンチセンスオリゴマーは、RIC mRNA前駆体の集団で2番目に豊富な保持されたイントロンに結合する、[1]-[41]のいずれか1つに記載の方法。
[45]
2番目に豊富な保持されたイントロンに対するアンチセンスオリゴマーの結合は、標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAを産生するためにRIC mRNA前駆体の集団からの2つ以上の保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、[44]に記載の方法。
[46]
疾病は疾患または障害である、[5]-[45]のいずれか1つに記載の方法。
[47]
疾患または障害はRP18またはRP13である、[46]に記載の方法。
[48]
標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はPRPF3遺伝子またはPRPF8遺伝子によってコードされる、[47]に記載の方法。
[49]
前記方法はタンパク質発現を評価する工程をさらに含む、[1]-[48]のいずれか1つに記載の方法。
[50]
被験体はヒトである、[1]-[49]のいずれか1つに記載の方法。
[51]
被験体はヒト以外の動物である、[1]-[49]のいずれか1つに記載の方法。
[52]
被験体は胎児、胚、あるいは子供である、[1]-[50]のいずれか1つに記載の方法。
[53]
細胞はエクスビボである、[1]-[51]のいずれか1つに記載の方法。
[54]
アンチセンスオリゴマーは、被験体の硝子体内注射、網膜下注射、局所投与、移植、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射によって投与される、[1]-[51]のいずれか1つに記載の方法。
[55]
5’スプライス部位に隣接するエクソンの-3eから-1eと、保持されたイントロンの+1から+6にある9つのヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である、[1]-[54]のいずれか1つに記載の方法。
[56]
保持されたイントロンの-15から-1と3’スプライス部位に隣接するエクソンの+1eにある16のヌクレオチドは、対応する野性型配列と同一である、[1]-[55]のいずれか1つに記載の方法。
[57]
[1]-[56]のいずれか1つの方法に使用されるアンチセンスオリゴマー。
[58]
SEQ ID NO:5-445のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、あるいは100%の配列同一性を有する配列を含むアンチセンスオリゴマー。
[59]
[57]または[58]のアンチセンスオリゴマーと賦形剤を含む医薬組成物。
[60]
硝子体注射、網膜下注射、局所投与、移植、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射により、[58]記載の医薬組成物を投与することによって、必要としている被験体を処置する方法。
[61]
不足しているタンパク質または不足している機能的RNAに関係する、必要としている被験体のRP18またはRP13を処置するために細胞によって標的タンパク質または機能的RNAの発現を増加させる方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、
ここで、不足しているタンパク質または機能的RNAは、被験体において量あるいは活性が不足しており、ここで、アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)の構成的スプライシングを増強し、
ここで、標的タンパク質は、
(a)不足しているタンパク質、あるいは、
(b)被験体において不足しているタンパク質を機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償タンパク質であり、
ここで、機能的RNAは、
(a)不足しているRNA、あるいは、
(b)被験体において不足している機能的RNAを機能的に増大させるか、これに取って代わる、補償機能的RNAであり、
ここで、RIC mRNA前駆体は、保持されたイントロン、5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含み、保持されたイントロンは、標的タンパク質または機能的RNAをコードするRIC mRNA前駆体からスプライシングされ、それによって、被験体において標的タンパク質または機能的RNAの産生または活性を増加させる、組成物。
[62]
必要としている被験体においてPRPF3またはPRPF8タンパク質に関係する疾病を処置する方法に使用するためのアンチセンスオリゴマーを含む組成物であって、
該方法は、被験体の細胞によってPRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させる工程であって、細胞が保持されたイントロン、保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接しているエクソン、および保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接しているエクソンを含む、保持されたイントロン含有mRNA前駆体(RIC mRNA前駆体)を有し、RIC mRNA前駆体がPRPF3またはPRPF8タンパク質をコードする、工程と、細胞をアンチセンスオリゴマーと接触させる工程であって、それによって、保持されたイントロンは、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の転写産物から構成的にスプライシングされ、それにより、被験体の細胞内で、PRPF3またはPRPF8タンパク質をコードするmRNAのレベルを増加させ、PRPF3またはPRPF8タンパク質の発現を増加させる、工程を含む、組成物。
[63]
標的タンパク質PRPF3は、NM_004698の配列によってコードされる、またはPRPF8はNM_006445の配列によってコードされる、[62]に記載の組成物。
[64]
疾病は疾患または障害である、[62]または[63]に記載の組成物。
[65]
疾患または障害はRP18またはRP13である、[65]に記載の組成物。
[66]
標的タンパク質とRIC mRNA前駆体はPRPF3またはPRPF8遺伝子によってコードされる、[65]に記載の組成物。
[67]
アンチセンスオリゴマーは、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16までの領域内の保持されたイントロンにあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする、[61]-[66]のいずれか1つに記載の組成物。
[68]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496の領域内の保持されたイントロンにある、[61]-[67]のいずれか1つに記載の組成物。
[69]
標的タンパク質はPRPF3である、[61]-[68]のいずれか1つに記載の組成物。
[70]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+498から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-496の領域内の保持されたイントロンにある、[69]に記載の組成物。
[71]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または100%相補的である配列を含む、[69]または[70]に記載の組成物。
[72]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:447またはSEQ ID NO:446の少なくとも8つの隣接する核酸を含む領域に対し、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する配列を含む、[69]-[72]のいずれか1つに記載の組成物。
[73]
ASOは、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する配列を含む、[69]-[70]のいずれか1つに記載の組成物。
[74]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:3に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する配列を含む、[70]-[73]のいずれか1つに記載の組成物。
[75]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、[70]-[74]のいずれか1つに記載の組成物。
[76]
標的タンパク質はPRPF8である、[61]-[68]のいずれか1つに記載の組成物。
[77]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+156から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-156の領域内の保持されたイントロンにある、[76]に記載の組成物。
[78]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%、または100%相補的な配列を含む、[76]または[77]に記載の組成物。
[79]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、SEQ ID NO:448の少なくとも8の隣接する核酸を含む領域に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する配列を含む、[76]-[78]のいずれか1つに記載の組成物。
[80]
ASOは、SEQ ID NO:234-445のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する配列を含む、[76]-[79]のいずれか1つに記載の組成物。
[81]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:4に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する配列を含む、[77]-[80]のいずれか1つに記載の組成物。
[82]
RIC mRNA前駆体は、SEQ ID NO:2に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、97%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、[77]-[81]のいずれか1つに記載の組成物。
[83]
アンチセンスオリゴマーはRIC mRNA前駆体の一部を標的とし、これは、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+6から+100の領域、あるいは
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-16から-100の領域、の内部の保持されたイントロンにある、[61]-[66]および[69]-[82]のいずれか1つに記載の組成物。
[84]
アンチセンスオリゴマーは、少なくとも1つの保持されたイントロンの5’スプライス部位の約100ヌクレオチド下流から、少なくとも1つの保持されたイントロンの3’スプライス部位の約100ヌクレオチド上流までの領域内にあるRIC mRNA前駆体の一部を標的とする、[61]-[66]および[69]-[82]のいずれか1つに記載の組成物。
[85]
RIC mRNA前駆体の標的部分は、
(a)保持されたイントロンの5’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2eから-4eの領域、あるいは、
(b)保持されたイントロンの3’スプライス部位に隣接するエクソン中の+2eから-4eの領域、
の内部にある、[61]-[66]および[69]-[82]のいずれか1つに記載の組成物。
[86]
アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子から転写されたmRNA前駆体の選択的スプライシングを調節することにより標的タンパク質または機能的RNAの量を増加させない、[61]-[85]のいずれか1つに記載の組成物。
[87]
アンチセンスオリゴマーは、標的タンパク質または機能的RNAをコードする遺伝子の突然変異に起因する異常なスプライシングを調節することにより、機能的RNAまたは機能的タンパク質の量を増加させない、[61]-[86]のいずれか1つに記載の組成物。
[88]
RIC mRNA前駆体は、全長のmRNA前駆体、または野生型のmRNA前駆体の部分的なスプライシングによって産生された、[61]-[87]のいずれか1つに記載の組成物。
[89]
標的タンパク質または機能的RNAをコードするmRNAは、全長の成熟mRNA、あるいは野生型の成熟mRNAである、[61]-[88]のいずれか1つに記載の組成物。
[90]
産生された標的タンパク質は全長のタンパク質あるいは野生型のタンパク質である、[61]-[89]のいずれか1つに記載の組成物。
[91]
保持されたイントロンは律速イントロンである、[61]から[90]のいずれか1つに記載の組成物。
[92]
前記保持されたイントロンは前記RIC mRNA前駆体で最も豊富な保持されたイントロンである、[61]-[91]のいずれか1つに記載の組成物。
[93]
保持されたイントロンは前記RIC mRNA前駆体で2番目に豊富な保持されたイントロンである、[61]-[91]のいずれか1つに記載の組成物。
[94]
アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、[61]-[93]のいずれか1つに記載の組成物。
[95]
前記アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、[61]-[94]のいずれか1つに記載の組成物。
[96]
アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、[61]-[95]のいずれか1つに記載の組成物。
[97]
アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む、[61]-[96]のいずれか1つに記載の組成物。
[98]
それぞれの糖部は修飾された糖部である、[97]に記載の組成物。
[99]
アンチセンスオリゴマーは、8から50の核酸塩基、8から40の核酸塩基、8から35の核酸塩基、8から30の核酸塩基、8から25の核酸塩基、8から20の核酸塩基、8から15の核酸塩基、9から50の核酸塩基、9から40の核酸塩基、9から35の核酸塩基、9から30の核酸塩基、9から25の核酸塩基、9から20の核酸塩基、9から15の核酸塩基、10から50の核酸塩基、10から40の核酸塩基、10から35の核酸塩基、10から30の核酸塩基、10から25の核酸塩基、10から20の核酸塩基、10から15の核酸塩基、11から50の核酸塩基、11から40の核酸塩基、11から35の核酸塩基、11から30の核酸塩基、11から25の核酸塩基、11から20の核酸塩基、11から15の核酸塩基、12から50の核酸塩基、12から40の核酸塩基、12から35の核酸塩基、12から30の核酸塩基、12から25の核酸塩基、12から20の核酸塩基、あるいは12から15の核酸塩基からなる、[61]-[98]のいずれか1つに記載の組成物。
[100]
アンチセンスオリゴマーは、タンパク質をコードするRIC mRNA前駆体の標的部分に少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である、[61]-[99]のいずれか1つに記載の組成物。
[101]
[61]-[100]に記載の組成物のいずれかのアンチセンスオリゴマーおよび賦形剤を含む医薬組成物。
[102]
被験体の硝子体内注射、網膜下注射、局所投与、移植、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射により、[101]に記載の医薬組成物を投与することによって必要としている被験体を処置する方法。
[103]
不足しているPRPF3 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズするアンチセンスオリゴマーであって、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物が保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーが不足しているPRPF3 mRNAの転写産物からの保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、アンチセンスオリゴマーと、
薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、
医薬組成物。
[104]
不足しているPRPF3 mRNAの転写産物は、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物である、[103]に記載の医薬組成物。
[105]
PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-500までの領域内の保持されたイントロンにある、[103]または[104]に記載の医薬組成物。
[106]
PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:1に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、[103]または[104]に記載の医薬組成物。
[107]
PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:3-4のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を有する配列を含む、[103]-[104]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[108]
アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、[103]に記載の医薬組成物。
[109]
アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、[103]に記載の医薬組成物。
[110]
アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、[103]に記載の医薬組成物。
[111]
アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む、[103]に記載の医薬組成物。
[112]
アンチセンスオリゴマーは、8から50の核酸塩基、8から40の核酸塩基、8から35の核酸塩基、8から30の核酸塩基、8から25の核酸塩基、8から20の核酸塩基、8から15の核酸塩基、9から50の核酸塩基、9から40の核酸塩基、9から35の核酸塩基、9から30の核酸塩基、9から25の核酸塩基、9から20の核酸塩基、9から15の核酸塩基、10から50の核酸塩基、10から40の核酸塩基、10から35の核酸塩基、10から30の核酸塩基、10から25の核酸塩基、10から20の核酸塩基、10から15の核酸塩基、11から50の核酸塩基、11から40の核酸塩基、11から35の核酸塩基、11から30の核酸塩基、11から25の核酸塩基、11から20の核酸塩基、11から15の核酸塩基、12から50の核酸塩基、12から40の核酸塩基、12から35の核酸塩基、12から30の核酸塩基、12から25の核酸塩基、12から20の核酸塩基、あるいは12から15の核酸塩基を含む、[103]に記載の医薬組成物。
[113]
アンチセンスオリゴマーは、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である、[103]または[104]に記載の医薬組成物。
[114]
PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:446-447から選択される配列内にある、[103]または[104]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[115]
アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、[103]に記載の医薬組成物。
[116]
アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:5-323から選択されたヌクレオチド配列を含む、[103]に記載の医薬組成物。
[117]
医薬組成物は、髄腔内注射、脳室内注射、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射のために製剤される、[103]-[116]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[118]
不足しているPRPF8 mRNAの転写産物の標的配列にハイブリダイズするアンチセンスオリゴマーであって、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物が保持されたイントロンを含み、アンチセンスオリゴマーが不足しているPRPF8 mRNAの転写産物からの保持されたイントロンのスプライシングアウトを誘発する、アンチセンスオリゴマーと、
薬学的に許容可能な賦形剤とを含む、
医薬組成物。
[119]
不足しているPRPF8 mRNAの転写産物は、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物である、[118]に記載の医薬組成物。
[120]
PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、保持されたイントロンの5’スプライス部位に対して+500から、保持されたイントロンの3’スプライス部位に対して-500までの領域内の保持されたイントロンにある、[118]または[119]に記載の医薬組成物。
[121]
PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:2に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する遺伝子配列によってコードされる、[118]または[119]に記載の医薬組成物。
[122]
PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物は、SEQ ID NO:3-4のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、あるいは100%の配列同一性を有する配列を含む、[118]または[119]に記載の医薬組成物。
[123]
アンチセンスオリゴマーは、ホスホロチオエート結合またはホスホロジアミデート結合を含む骨格修飾を含む、[118]に記載の医薬組成物。
[124]
アンチセンスオリゴマーはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、に記載の医薬組成物。
[125]
アンチセンスオリゴマーはホスホロジアミデートモルホリノ、ロックド核酸、ペプチド核酸、2’-O-メチル、2’-フルオロ、あるいは2’-O-メトキシエチル部分を含む、[118]に記載の医薬組成物。
[126]
アンチセンスオリゴマーは少なくとも1つの修飾された糖部を含む、[118]に記載の医薬組成物。
[127]
アンチセンスオリゴマーは、8から50の核酸塩基、8から40の核酸塩基、8から35の核酸塩基、8から30の核酸塩基、8から25の核酸塩基、8から20の核酸塩基、8から15の核酸塩基、9から50の核酸塩基、9から40の核酸塩基、9から35の核酸塩基、9から30の核酸塩基、9から25の核酸塩基、9から20の核酸塩基、9から15の核酸塩基、10から50の核酸塩基、10から40の核酸塩基、10から35の核酸塩基、10から30の核酸塩基、10から25の核酸塩基、10から20の核酸塩基、10から15の核酸塩基、11から50の核酸塩基、11から40の核酸塩基、11から35の核酸塩基、11から30の核酸塩基、11から25の核酸塩基、11から20の核酸塩基、11から15の核酸塩基、12から50の核酸塩基、12から40の核酸塩基、12から35の核酸塩基、12から30の核酸塩基、12から25の核酸塩基、12から20の核酸塩基、あるいは12から15の核酸塩基を含む、[118]に記載の医薬組成物。
[128]
アンチセンスオリゴマーは、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、あるいは100%相補的である、[118]または[119]に記載の医薬組成物。
[129]
PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物の標的部分は、SEQ ID NO:448から選択される配列内にある、[118]または[119]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[130]
アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに対して少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、あるいは99%の配列同一性であるヌクレオチド配列を含む、[118]に記載の医薬組成物。
[131]
アンチセンスオリゴマーは、SEQ ID NO:324-445から選択されるヌクレオチド配列を含む、[118]に記載の医薬組成物。
[132]
医薬組成物は、硝子体内注射、網膜下注射、局所投与、移植、腹腔内注射、筋肉内注射、皮下注射、あるいは静脈内注射のために製剤される、[118]から[131]のいずれか1つに記載の医薬組成物。
[133]
PRPF3タンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたPRPF3 mRNA転写産物を産生するべく、保持されたイントロンの除去を促すために不足しているPRPF3 mRNA転写産物の処理を誘発する方法であって、
前記方法は、
(a)被験体の標的細胞へアンチセンスオリゴマーを接触させる工程と、
(b)アンチセンスオリゴマーを不足しているPRPF3 mRNAの転写産物にハイブリダイズする工程であって、不足しているPRPF3 mRNAの転写産物が、PRPF3タンパク質の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工程と、
(c)PRPF3タンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたPRPF3 mRNA転写産物を産生するために不足しているPRPF3 mRNA転写産物から少なくとも1つの保持されたイントロンを除去する工程と、
(d)十分に処理されたPRPF3 mRNAの転写産物からPRPF3タンパク質の機能形態を翻訳する工程を含む、方法。
[134]
保持されたイントロンは保持されたイントロン全体である、[133]に記載の方法。
[135]
不足しているPRPF3 mRNAの転写産物は、PRPF3 RIC mRNA前駆体の転写産物である、[133]または[134]に記載の方法。
[136]
PRPF3タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体を処置する方法であって、
前記方法は、
SEQ ID NO:5-323のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に投与する工程を含む、方法。
[137]
PRPF8タンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたPRPF8 mRNA転写産物を産生するべく、保持されたイントロンの除去を促すために不足しているPRPF8 mRNA転写産物の処理を誘発する方法であって、
前記方法は、
(a)被験体の標的細胞へアンチセンスオリゴマーを接触させる工程と、
(b)アンチセンスオリゴマーを不足しているPRPF8 mRNAの転写産物にハイブリダイズする工程であって、不足しているPRPF8 mRNAの転写産物が、PRPF8タンパク質の機能形態をコードすることができ、少なくとも1つの保持されたイントロンを含む、工程と、
(c)PRPF8タンパク質の機能的な形態をコードする十分に処理されたPRPF8 mRNA転写産物を産生するために不足しているPRPF8 mRNA転写産物から少なくとも1つの保持されたイントロンを除去する工程と、
(d)十分に処理されたPRPF8 mRNAの転写産物からPRPF8タンパク質の機能形態を翻訳する工程を含む、方法。
[138]
保持されたイントロンは保持されたイントロン全体である、[137]に記載の方法。
[139]
不足しているPRPF8 mRNAの転写産物は、PRPF8 RIC mRNA前駆体の転写産物である、[137]または[138]に記載の方法。
[140]
PRPF8タンパク質の量または活性の不足によって引き起こされた疾病を有する被験体を処置する方法であって、
前記方法は、
SEQ ID NO:324-445のいずれか1つに対して、少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むアンチセンスオリゴマーを被験体に投与する工程を含む、方法。
【0141】
<実施例>
本発明は、以下の実施例によってより具体的に例示されるだろう。しかしながら、本発明がどんな方法でもこれらの実施例によって制限されていないことが理解されるべきである。
【0142】
実施例1:次世代配列決定を用いたRNAseqによるPRPF3転写産物のイントロン保持事象の特定
イントロン保持事象を特定するためにPRPF3遺伝子によって産生された転写産物のスナップショットを明らかにするために、次世代配列決定を使用して、全トランスクリプトームのショットガン配列決定を実行した。このために、ARPE-19(網膜上皮)細胞の核および細胞質の分画からのpolyA+RNAを分離し、IlluminaのTruSeq Stranded mRNAライブラリPrepキットを用いてcDNAライブラリを構築した。ライブラリを対末端配列決定(pair-end sequenced)し、結果として、ヒトゲノム(2009年2月、GRCh37/hg19アセンブリ)にマッピングされた100ヌクレオチドの読み取りをもたらした。PRPF3についての配列決定の結果を、
図3に示す。簡潔に言うと、
図3は、(UCSC Genome Informatics Group(Center for Biomolecular Science&Engineering,University of California,Santa Cruz,1156 High Street,Santa Cruz,CA 95064)によって操作され、かつ、例えばRosenbloom,et al.,2015,「The UCSC Genome Browser database: 2015 update」Nucleic Acids Research 43,Database Issue doi:10.1093/nar/gku1177に記載された)UCSCゲノムブラウザを使用して視覚化されたマッピングされた読み取りを示し、読み取りの範囲および数はピーク信号によって推論され得る。ピークの高さは、特定の領域における読み取り密度によって与えられた発現のレベルを示している。ピークをPRPF3エクソン領域およびイントロン領域に一致させられるように、(読み取りシグナルの下に)UCSCゲノムブラウザによってPRPF3の模式図(縮尺通りに描かれている)が提供される。このディスプレイに基づいて、PRPF3中の2つのイントロン(12および13、矢印で示され、NM_004698はイントロン12に、NM_004698はイントロン13に、それぞれ対応する)と、PRPF8における1つのイントロン(31、矢印によって示され、NM_006445に対応する、イントロン31)(
図7)を特定し、これはARPE-19細胞の核分画において高い読み取り密度を有するが、これらの細胞の細胞質分画においては読み込みが非常に低いか無い(
図3の下図のイントロン12、
図5の下図の13、
図5の下図のイントロン31について示されているとおりである)。これは、イントロンが保持されたこと、および、イントロン12、イントロン13、およびイントロン31含有転写産物が核内に残っていることを示し、かつ、これらの保持されたPRPF3およびPRPF8 RIC mRNA前駆体が、細胞質に排出されないので、それぞれ非生産的であることを示唆している。
【0143】
実施例2:保持されたイントロンを標的とするASOウォークの設計
ASOウォークは、本明細書に記載の方法を用いてPRPF3のイントロン12を標的化するように設計された(
図4)。ヌクレオチド+6から+498に及ぶイントロン12の5’スプライス部位のすぐ下流の領域と、ヌクレオチド-16から-496に及ぶイントロン12の3’スプライス部位のすぐ上流の領域とが、2’-O-Me RNA、PS骨格、5ヌクレオチド間隔で移動させた18mer ASO(ASO P3-IVS12+28を除く)で標的とされた。
【0144】
ASOウォークは、本明細書に記述された方法を使用して、PRPF3のイントロン13を標的とするように設計された(
図6)。ヌクレオチド+6から+146に及ぶイントロン13の5’スプライス部位のすぐ下流の領域と、ヌクレオチド-16から-496に及ぶイントロン13の3’スプライス部位のすぐ上流の領域とが、2’-O-Me RNA、PS骨格、5ヌクレオチド間隔でシフトした18mer ASO(ASOs P3-IVS13+15、P3-IVS13+31、および P3-IVS13-47を除く)で標的とされた。
【0145】
ASOウォークは、本明細書に記述された方法を使用して、PRPF8のイントロン31を標的とするように設計された(
図8)。ヌクレオチド+6から+156に及ぶイントロン31の5’スプライス部位のすぐ下流の領域と、ヌクレオチド-16から-156に及ぶイントロン31の3’スプライス部位のすぐ上流の領域とが、2’-O-Me RNA、PS骨格、5ヌクレオチド間隔でシフトした18mer ASOで標的とされた。
【0146】
表1は、設計された例示的なASOおよびそれらの標的配列を列挙する。
【0147】
【0148】
実施例3:PRPF3イントロン12のASO標的化による改善したスプライシング効率は転写レベルを増加させる
標的遺伝子イントロンスプライシング効率の増加がASOで達成できるかどうかを決定するために、本明細書に記載の方法を用いた。ARPE-19細胞、すなわちヒトの網膜の上皮細胞株(American Type Culture Collection (ATCC),USA)を偽トランスフェクト(mock-transfected)し、または表1に記載の標的化ASOでトランスフェクトした。細胞を、供給元の仕様書に従って、Lipofectamine RNAiMaxトランスフェクション試薬(Thermo Fisher)を用いてトランスフェクトする。簡潔に述べると、ASOを96ウェル組織培養プレートに播種し、Opti-MEMで希釈したRNAiMaxと組み合わせる。トリプシンを用いて細胞を剥離し、完全培地に再懸濁し、約25,000個の細胞をASOトランスフェクション混合物に加える。トランスフェクション実験は三通りのプレート複製において実行される。最終的なASO濃度は80nMであった。供給元の仕様書に従って、培地をトランスフェクションの6時間後に交換し、細胞をCells-to-Ct溶解試薬を用い、DNAse(Thermo Fisher)で試薬を補充し、24時間で採取する。供給元の仕様書に従い、cDNAはCells-to-Ct RT試薬(Thermo Fisher)で産生される。対象のイントロンでのスプライシングの量を定量化するために、対応するエクソン-エクソン連結(Thermo Fisher)に及ぶプローブでTaqmanアッセイを用いて、定量PCRを実行する。Taqmanアッセイは、QuantStudio 7Flex Real-Time PCRシステム(Thermo Fisher)上で、供給元の仕様書に従い実行される。標的遺伝子アッセイ値を、RPL32(deltaCt)およびプレート一致偽トランスフェクションサンプル(delta-delta Ct)に対して正規化し、モック定量(2^-(delta-delta Ct)に対して倍率変化を産生する。3つのプレート複製のモック(mock)に対する平均倍率変化をプロットする(
図10)。標的遺伝子発現を増加させるいくつかのASOが特定され、
図10に示される通り、その標的イントロンでのスプライシングの増加が示唆された。標的イントロン(
図9)の保持を確認する全トランスクリプトームデータと共に、これらの結果は、ASOが律速イントロンのスプライシング効率を改善し得ることを確認する。
【0149】
実施例4:PRPF3イントロン13のASO標的化による改善したスプライシング効率は転写レベルを増加させる
標的遺伝子イントロンスプライシング効率の増加がASOで達成できるかどうかを決定するために、本明細書に記載の方法を用いた。ARPE-19細胞、すなわちヒトの網膜の上皮細胞株(American Type Culture Collection (ATCC),USA)を偽トランスフェクト(mock-transfected)し、または表1に記載の標的化ASOでトランスフェクトした。細胞を、供給元の仕様書に従って、Lipofectamine RNAiMaxトランスフェクション試薬(Thermo Fisher)を用いてトランスフェクトする。簡潔に述べると、ASOを96ウェル組織培養プレートに播種し、Opti-MEMで希釈したRNAiMaxと組み合わせる。トリプシンを用いて細胞を剥離し、完全培地に再懸濁し、約25,000個の細胞をASOトランスフェクション混合物に加える。トランスフェクション実験は三通りのプレート複製において実行される。最終的なASO濃度は80nMであった。供給元の仕様書に従って、培地をトランスフェクションの6時間後に交換し、細胞をCells-to-Ct溶解試薬を用い、DNAse(Thermo Fisher)で試薬を補充し、24時間で採取する。供給元の仕様書に従い、cDNAはCells-to-Ct RT試薬(Thermo Fisher)で産生される。対象のイントロンでのスプライシングの量を定量化するために、対応するエクソン-エクソン連結(Thermo Fisher)に及ぶプローブでTaqmanアッセイを用いて、定量PCRを実行する。Taqmanアッセイは、QuantStudio 7Flex Real-Time PCRシステム(Thermo Fisher)上で、供給元の仕様書に従い実行される。標的遺伝子アッセイ値を、RPL32(deltaCt)およびプレート一致偽トランスフェクションサンプル(delta-delta Ct)に対して正規化し、モック定量(2^-(delta-delta Ct)に対して倍率変化を産生する。3つのプレート複製のモック(mock)に対する平均倍率変化をプロットする(
図10、
図12)。標的遺伝子発現を増加させるいくつかのASOが特定され、
図12に示される通り、その標的イントロンでのスプライシングの増加が示唆された。標的イントロン(
図11)の保持を確認する全トランスクリプトームデータと共に、これらの結果は、ASOが律速イントロンのスプライシング効率を改善し得ることを確認する。
【0150】
実施例5:PRPF8イントロン31のASO標的化による改善したスプライシング効率は転写レベルを増加させる
標的遺伝子イントロンスプライシング効率の増加がASOで達成できるかどうかを決定するために、本明細書に記載の方法を用いた。ARPE-19細胞、すなわちヒトの網膜の上皮細胞株(American Type Culture Collection (ATCC),USA)を偽トランスフェクト(mock-transfected)し、または表1に記載の標的化ASOでトランスフェクトした。細胞を、供給元の仕様書に従って、Lipofectamine RNAiMaxトランスフェクション試薬(Thermo Fisher)を用いてトランスフェクトする。簡潔に述べると、ASOを96ウェル組織培養プレートに播種し、Opti-MEMで希釈したRNAiMaxと組み合わせる。トリプシンを用いて細胞を剥離し、完全培地に再懸濁し、約25,000個の細胞をASOトランスフェクション混合物に加える。トランスフェクション実験は三通りのプレート複製において実行される。最終的なASO濃度は80nMであった。供給元の仕様書に従って、培地をトランスフェクションの6時間後に交換し、細胞をCells-to-Ct溶解試薬を用い、DNAse(Thermo Fisher)で試薬を補充し、24時間で採取する。供給元の仕様書に従い、cDNAはCells-to-Ct RT試薬(Thermo Fisher)で産生される。対象のイントロンでのスプライシングの量を定量化するために、対応するエクソン-エクソン連結(Thermo Fisher)に及ぶプローブでTaqmanアッセイを用いて、定量PCRを実行する。Taqmanアッセイは、QuantStudio 7Flex Real-Time PCRシステム(Thermo Fisher)上で、供給元の仕様書に従い実行される。標的遺伝子アッセイ値を、RPL32(deltaCt)およびプレート一致偽トランスフェクションサンプル(delta-delta Ct)に対して正規化し、モック定量(2^-(delta-delta Ct)に対して倍率変化を産生する。3つのプレート複製のモック(mock)に対する平均倍率変化をプロットする(
図14)。標的遺伝子発現を増加させるいくつかのASOが特定され、
図14に示される通り、その標的イントロンでのスプライシングの増加が示唆された。標的イントロン(
図13)の保持を確認する全トランスクリプトームデータと共に、これらの結果は、ASOが律速イントロンのスプライシング効率を改善し得ることを確認する。
【配列表】