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特許7054691表皮水疱症及び関連する結合組織疾患の治療におけるカンナビノイドの局所製剤の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】表皮水疱症及び関連する結合組織疾患の治療におけるカンナビノイドの局所製剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/352 20060101AFI20220407BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20220407BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220407BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
A61K31/352
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/24
A61P17/00
A61P17/00 101
A61P17/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019510730
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 CA2017050546
(87)【国際公開番号】W WO2017190249
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/331,633
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518390815
【氏名又は名称】インメド ファーマシューティカルズ インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100192201
【氏名又は名称】岡部 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】サザド ホセイン
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/111424(WO,A1)
【文献】周産期医学,2014年,Vol.44, No.2,p.243-245
【文献】InMed Provides Update on Progress of Its Development Program for Epidermolysis Bullosa,2015年,https://www.globenewswire.com/news-release/2015/11/04/1136409/0/en/InMed-Provides-Update-on-Progress-of-Its-Development-Program-for-Epidermolysis-Bullosa.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/352
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/24
A61P 17/00
A61P 17/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮水疱症を治療する方法における使用のためのカンナビノールを含む医薬組成物であって、前記方法が、それを必要とする対象の皮膚に治療上有効な量のカンナビノールを局所投与することを含み、その際、前記治療上有効な量は1以上のケラチンの量または活性を調節するのに十分な量である、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記表皮水疱症が単純型表皮水疱症(EBS)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記局所投与が、
局所投与される皮膚の有糸分裂で活性がある基底層にてK15のmRNAもしくはタンパク質のレベルを上げる、またはK5もしくはK14のmRNAもしくはタンパク質のレベルを下げるのに十分な量;または
局所投与される皮膚の有糸分裂で活性がある基底層にてK15のmRNAまたはタンパク質のレベルを上げる、且つK5またはK14のmRNAまたはタンパク質のレベルを下げるのに十分な量;または
局所投与される皮膚の有糸分裂で活性がある基底層にてK15のmRNAまたはタンパク質のレベルを上げる、且つK5及びK14のmRNAまたはタンパク質のレベルを下げるのに十分な量
を局所投与することを含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記局所投与が、創傷治癒及び皮膚再生を促進するのに十分な量;疼痛及び掻痒を軽減するのに十分な量;または感染の発生を低減するのに十分な量を局所投与することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物がさらに、前記組成物の局所投与用の少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬学上許容できるキャリアが、ラブラソール(カプリロカプロイルポリオキシ-8-グリセリド)、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルから成る群から選択される少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアであるか;または
前記薬学上許容できるキャリアが、ラブラソール、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルを含む、
請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記方法がさらに、前記表皮水疱症を治療するための局所抗炎症剤、局所抗菌剤、局所抗真菌剤、局所ステロイド、及び局所抗酸化剤から成る群から選択される追加の治療上活性がある作用物質を局所投与するステップを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記方法がさらに、治療上有効な量のテルペノイドを局所投与するステップを含み、ここで
i)前記カンナビノールと前記テルペノイドとが単一の医薬組成物で投与されるか;または
ii)前記カンナビノールと前記テルペノイドとが別々に投与される、
請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記局所投与が、
(a)皮膚のアンカリング機能を復元すること;
(b)K5及びK14の一方または双方を下方調節すること;
(c)K15を上方調節すること;
(d)E-カドヘリンのTGF-βが誘導する下方調節を救済すること;及び/または
(e)MCP-1の産生を増やすこと
のために十分な量を局所投与することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
表皮水疱症を治療するための医薬の製造におけるカンナビノールの使用であって、前記医薬が
(a)1以上のケラチンの量または活性を調節するのに十分な量である治療上有効な量の前記カンナビノールと
(b)前記医薬の局所投与用の少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアとを含み、
前記医薬が局所製剤である、
前記使用。
【請求項11】
前記表皮水疱症が単純型表皮水疱症(EBS)である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記方法が、局所投与によって組織の有糸分裂で活性がある基底層にてK15のmRNAもしくはタンパク質のレベルを上げる、またはK5もしくはK14のmRNAもしくはタンパク質のレベルを下げるのに十分な量を局所投与することを含むか;または
前記方法が、局所投与される組織の有糸分裂で活性がある基底層にてK15のmRNAまたはタンパク質のレベルを上げる、且つK5またはK14のmRNAまたはタンパク質のレベルを下げるのに十分な量を局所投与することを含むか;または
前記方法が、局所投与される組織の有糸分裂で活性がある基底層にてK15のmRNAまたはタンパク質のレベルを上げる、且つK5及びK14のmRNAまたはタンパク質のレベルを下げるのに十分な量を局所投与することを含むか;または
前記方法が、炎症を軽減すること;創傷治癒及び皮膚再生を促進すること;疼痛及び掻痒を軽減すること;または感染の発生を低減することの少なくとも1つを達成するのに十分な量を局所投与することを含む、
請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬が、
ラブラソール(カプリロカプロイルポリオキシ-8-グリセリド)、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルから成る群から選択される薬学上許容できるキャリア、または
ラブラソール、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルを含む薬学上許容できるキャリア、及び/または
局所抗炎症剤、局所抗菌剤、局所抗真菌剤、局所ステロイド、及び局所抗酸化剤から成る群から選択される追加の治療上活性がある作用物質
を含み、及び/または
治療上有効な量のテルペノイド
をさらに含む、請求項1012のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、その内容があらゆる目的で全体として参照によって本明細書に組み入れられる2016年5月4日に出願された米国仮特許出願番号62/331、633の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、特にカンナビノイドの局所適用を採用する、中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病及び状態の治療にための方法及び組成物を指向する。中間径フィラメントは細胞に機械的な強度を付与する構造的に弾力性のある高分子タンパク質の大きな群である。中間径フィラメントは様々な細胞型で発現される種々のタンパク質で構成される。ケラチンは、皮膚の上皮細胞を含む上皮細胞における中間径フィラメントの主要な構造的成分である。ヒトの皮膚は、2つの主要な層:表皮と呼ばれる最外層及び真皮と呼ばれる下の層から成る。健常な皮膚を持つ個体では、2つの層の間にはそれらが互いから独立して動く(剪断)のを防ぐタンパク質アンカーがある。中間径フィラメント及びそれらを形成するケラチンはそれらのタンパク質アンカーを形成し、安定化し、維持することにおいて不可欠な役割を担う。
【0003】
ケラチン遺伝子における変異及び/またはケラチン発現の異常調節は、表皮水疱症(EB)を含むが、これらに限定されない皮膚及び他の上皮組織の種々の疾病及び状態をもたらし得る。中間径フィラメントの機能障害及び/またはケラチンの機能障害に関連する他の疾病及び状態には、表皮剥離性角質増殖症、シーメンス型水疱性魚鱗癬、掌蹠角皮症、先天性爪甲硬厚症、白色海綿状母斑、複合性脂腺嚢腫、連珠毛、及びミーズマン若年型上皮性角膜ジストロフィー症が挙げられる。
【0004】
EBは、摩擦または外傷から水膨れを作るまたは裂傷を作る極端に壊れやすい皮膚を生じる皮膚における欠陥のあるタンパク質アンカーの共通する兆候を共有する遺伝性の結合組織の疾病の群である。疾病の各型及び亜型は表現型、遺伝様式及び遺伝子型に基づいて分類されている。疾患の原因となることが見いだされている18の遺伝子にてEBでは300を超える変異が特定されている。現在、EBは皮膚にて水膨れが生じる場合に基づいて4つの主要な亜型:(1)単純型表皮水疱症(EBS)(水膨れは表皮内で生じる);(2)接合部型表皮水疱症(JB)(水膨れは透明板内で生じる);(3)ジストロフィー型表皮水疱症(DB)(水膨れは透明板内の下で生じる);及び(4)キンドラー型表皮水疱症(KEB)(水膨れは皮膚の中にて種々のレベルで生じる)に分けられている。疾病の遺伝型に加えて、後天性表皮水疱症と呼ばれる疾病の自己免疫型もある。
【0005】
EBを持って生まれた人々では、2つの皮膚層がそれらを一緒に保持するタンパク質アンカーを欠き、極端に壊れやすい皮膚を生じる。EBは、ケラチン中間径フィラメント、焦点接着、接着斑細胞結合、及び皮膚と粘膜の基底膜領域(BMZ)内で表皮内接着及び真皮表皮アンカリング複合体を形成する半接着斑接着複合体の中での構造タンパク質をコードする少なくとも18の遺伝子が関与する変異が原因で生じる。EBの様々なカテゴリーは、図1に示すように様々な構造タンパク質の機能障害を特徴とする。タンパク質の機能障害の結果、軽微な機械的摩擦(擦ることまたは圧力のような)または外傷でさえ皮膚の層を分離し、水膨れ及び痛みを伴う傷を形成する。EBの患者は傷を3度の火傷と比較している。さらに、慢性の皮膚損傷の合併症として、EBを患っている人々は皮膚の悪性腫瘍(癌)の高いリスクを有する。種々の型のEBに関連する成分及び水疱形成のレベルを示す皮膚の構造的な層及びタンパク質の図を図2に示す。
【0006】
EBの顕著な特徴は機械的な壊れやすさである。これは水膨れの発生と常に関連する。EBのほとんどの形態で、水膨れ(またはびらん)は透明無色の滲出液で満たされ、またはそれらは出血性であってもよい。水疱形成及び傷は痛みを伴い得る。多くの場合、それらは治癒すると瘢痕を残す。傷はゆっくり治癒し、感染し得る。水膨れは手足に生じることが多いが、活動中に摩擦にされられた後、たとえば、臀部または内股のような身体の他の部分で同様に発生することは稀ではない。過剰な発汗は水膨れを悪化させ得る。重度な症例では、小児は1日200までの水膨れを発生し得る。他の主要な知見には、ごく小さな白色丘疹として存在する稗粒腫;厚くなり、黄色くなる、及び時には異常に凸状に曲がった爪;湿った、赤くもろい丘疹として定義される肉芽の過増殖組織;頭皮の脱毛症;皮膚の先天的欠損(CLAS);白色丘疹様病変;または角皮症が挙げられる。二次病変には、萎縮、瘢痕化、色素異常、膜張り、または拘縮が挙げられる。
【0007】
上記に記載されている形態の1つである単純型表皮水疱症(EBS)は些細な機械的外傷に続いて表皮がその完全性を失う稀な遺伝性疾患である。EBSでは、水疱形成は真皮表皮接合部で発生する。EBSはほとんどの症例で、ケラチン5またはケラチン14をコードする遺伝子における変異が原因で生じ;通常これらの変異はミスセンス変異である。
【0008】
EBSは多数の型に分けられてもよい。移動性環状紅斑を伴った単純型表皮水疱症は12q13でのKRT5における変異に関連する。斑状色素沈着を伴った単純型表皮水疱症は12q13でのKRT5における変異に関連し、KRT14における反復突然変異にも関連する。常染色体劣性の単純型表皮水疱症は17q12-q21でのKRT14における変異に関連する。単純型表皮水疱症のKoebner変異体としても知られる全身性単純型表皮水疱症は、手、足及び四肢に好発して出生時から早期乳児で症状が見つかり、手掌足底の角化亢進及びびらんが存在してもよく、それは17q12-q21でのKRT5及び12q13でのKRT14における変異に関連する。全身性単純型表皮水疱症の「Weber-Cockayne症候群」及び 「Weber-Cockayne変異型」としても知られる限局性単純型表皮水疱症は、人生の小児以降での発症を特徴とし、単純型表皮水疱症の最も一般的な変異型であり、17q12-q21でのKRT5及び17q11-qter、12q13でのKRT14における変異に関連する。全身分布があり、多くは乳児期の口腔粘膜の関与と様々な病変を伴って出生時に症状が見つかる「Dowling-Meara単純型表皮水疱症」としても知られる単純型疱疹状表皮水疱症は17q12-q21でのKRT5における変異及び12q13でのKRT14における変異に関連する。筋ジストロフィーを伴う単純型表皮水疱症は稀な臨床実体であり、ケラチン遺伝子における変異に関連しない単純型表皮水疱症のほんのわずかだけの変異型の1つである;それは単純型表皮水疱症のKoebner変異型に類似する全身性の表皮内水疱形成として症状が見つかり、成人発症の筋ジストロフィーにも関連し、8q24でのPLEC1における変異に関連する。8q24でのPLEC1における変異に関連するのはまた、幽門閉鎖症を伴う単純型表皮水疱症及びOgnaの単純型表皮水疱症であり、それは乳児期に発症し、夏季の間での末端部における季節的な水疱形成の症状が見つかる。
【0009】
単純型表皮水疱症は角化細胞の極端な壊れやすさ及び皮膚の水疱形成を特徴とする。KRT5またはKRT14の一方または双方における変異を特徴とする変異型では、ケラチン5(K5)及びケラチン14(K14)をコードする遺伝子におけるミスセンス変異の結果、疾病が生じる。豊富な細胞性タンパク質であるK5及びK14は、表皮及び関連する上皮の基底角化細胞にて通常、共重合し、10~12nm幅の「中間径サイズ」のフィラメントの複雑なネットワークを形成する。EBSは、手足を含む相対的に軽度の水疱形成状態として、または中咽頭、食道及び眼の粘膜に関与する粘膜水疱形成に関連することがある全身性の水疱形成として表してもよい。EBSのさらに重度な形態は、瘢痕化、醜い外観、身体障害及び普通、30歳未満の早期の死亡をもたらす場合もある。
【0010】
EBSの管理は一般に水疱形成から皮膚を保護する対症療法ならびに二次感染の予防及び治療から成る。通常、そのような治療は火傷患者に与えられるものに類似し、それには、非接着性の帯具、包帯及び水膨れの殺菌洗浄、疼痛、掻痒及び炎症のための種々の投薬、ならびに感染のための経口抗生剤の適用が挙げられてもよい。発汗を防止するための塩化アルミニウム及びボツリヌス毒素Aのような予防的治療を使用することができる。EBS患者に利用できる治療の選択肢は創傷治療、疼痛管理及び予防的な包帯法である。EBS患者のためのこれらの治療の選択肢は一時しのぎであり、限られた成功しか有さない。たとえば、スルホラファンの投与または骨髄移植の使用のような他の治療方法が提案されているが、限られた適用しか有さず;特に骨髄移植は遺伝的に適合するドナーを必要とするだけでなく、大規模な水疱形成と皮膚のびらんを伴う患者にて重篤な感染のリスクを劇的に高める強力な免疫抑制剤の投与も必要とする。従って、EBSを治療するための組成物及び方法を開発し、提供することが望ましい。機能障害のタンパク質、特にケラチン5及びケラチン14のせいで失われているアンカリング機能を復元することによって疾患の経過を修正する特定のニーズがある。さらに、疾病の経過中での機械的な摩擦の結果生じる水膨れを治癒させる際に特定の病巣を持つ疾病の症状を治療する特定のニーズがある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病及び状態の治療のための改善された方法及び組成物を提供する。特に、本発明は、そのような疾病及び状態の局所治療のための改善された方法及び組成物を提供する。そのような疾病及び状態には、1以上のケラチンの機能障害に関連する、またはそれが原因で生じるまたはそれによって悪化するものが挙げられるが、これらに限定されない。たとえば、本明細書に記載されている方法及び組成物は、単純型表皮水疱症(EBS)を含むが、これらに限定されない表皮水疱症(EB)の1以上の型を治療するのに使用することができる。
【0012】
理論に束縛されることを望まないで、本発明は、本明細書に記載されているように1以上のカンナビノイドの局所適用がケラチンの合成を調節することができるので、少なくとも部分的に有益な治療を提供すると考えられる。場合によっては、1以上のカンナビノイドの局所適用は、同一のケラチン遺伝子、異なる内在性のケラチン遺伝子、またはケラチンを含有する中間径フィラメントに関連する、それに結合する、またはそれを係留するタンパク質における機能変異の喪失を少なくとも部分的に代償するのに十分な程度に1以上のケラチンの転写、タンパク質合成及び/または活性を高めることができる。場合によっては、1以上のカンナビノイドの局所適用は、異なる内在性のケラチン遺伝子における優性ネガティブ変異を少なくとも部分的に代償するのに十分な程度に1以上のケラチンの転写、タンパク質合成及び/または活性を高めることができる。場合によっては、1以上のカンナビノイドの局所適用は、1以上の、たとえば、優性ネガティブのケラチン変異型の転写、タンパク質合成及び/または活性を低下させることができ、及び/または、たとえば、内在性のケラチン遺伝子における優性ネガティブ変異を少なくとも部分的に代償するのに十分な程度に1以上の野生型ケラチンの転写、タンパク質合成及び/または活性を高めることができる。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書に記載されている方法及び組成物を、疾病または状態の緩和に関連する特定の亜型のケラチンの転写、タンパク質合成及び/または活性の上方調節による、及び/または疾病または状態に関連する他の亜型のケラチンの活性、転写、またはタンパク質合成の下方調節による中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病及び状態の局所治療に使用することができる。場合によっては、例えばテルペノイドのような追加の作用物質を採用することができる。
【0014】
本発明の態様の1つは中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病または状態を治療する方法である。一部の実施形態では、疾病または状態は皮膚の疾病または状態である。一部の実施形態では、疾病または状態は表皮水疱症(EB)である。一部の実施形態では、疾病または状態は単純型表皮水疱症(EBS)である。方法は、EB、EBS、表皮剥離性角質増殖症、シーメンス型水疱性魚鱗癬、掌蹠角皮症、先天性爪甲硬厚症、白色海綿状母斑、複合性脂腺嚢腫、連珠毛、及びミーズマン若年型の上皮性角膜ジストロフィー症から成る群から選択される疾病または状態の患者に治療上有効な量のカンナビノイドを投与し、それによって疾病または状態を治療するステップを含むことができる。通常、方法は、炎症を軽減すること;創傷治癒及び皮膚または角膜の再生を促進すること;疼痛及び掻痒を軽減すること;感染の発生を低減すること;及び角膜嚢胞を軽減することの少なくとも1つを達成する。
【0015】
通常、治療上有効な量のカンナビノイドは、カンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)、カンナビジオール:カンナビノール(0.1:1μM)、及びカンナビジオール:カンナビノール(1:1μM)から成る群から選択されるカンナビジオールとカンナビノールの混合物である。好ましくは、治療上有効な量のカンナビノイドは、カンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)である。別の方法では、他の比を使用することができる。
【0016】
或いは、合成カンナビノイド、エンドカンナビノイド、及びそのようなカンナビノイドの類似体及び誘導体を含む他のカンナビノイドを使用することができる。別の方法の1つでは、カンナビノイドは古典的なカンナビノイド、非古典的なカンナビノイド、アミノアルキルインドール及びエイコサノイドから成る群から選択される。古典的なカンナビノイド、非古典的なカンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドはCB1受容体について選択性であることができる。或いは、古典的なカンナビノイド、非古典的なカンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドはCB1及びCB2のカンナビノイド受容体について非選択性であることができる。
【0017】
カンナビノイドは、組成物の局所投与用の少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアを含む医薬組成物にて投与することができる。好まれる別の方法の1つでは、薬学上許容できるキャリアは、ラブラソール(カプリロカプロイルポリオキシル-8-グリセリド)、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルから成る群から選択される少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアである。さらに高度に好まれる別の方法では、薬学上許容できるキャリアはラブラソール、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルである。
【0018】
医薬組成物は少なくとも1つの賦形剤を含むことができる。通常、賦形剤は、保存剤;増粘剤;緩衝液;液体キャリア;等張剤;湿潤剤、可溶化剤、及び乳化剤;、酸性化剤;抗酸化剤;アルカリ化剤;運搬剤;キレート剤;錯化剤;溶媒;懸濁剤または粘度上昇剤;油;透過増強剤;ポリマー;硬化剤;タンパク質;炭水化物;及び増量剤から成る群から選択される。
【0019】
組成物はさらに、局所抗炎症剤、局所抗菌剤、局所抗真菌剤、局所ステロイド、または局所抗酸化剤を含むことができる。
【0020】
一部の実施形態では、方法はさらに、疾病または状態を治療するための治療上活性がある追加の作用物質を局所投与するステップを含むことができる。治療上活性がある追加の作用物質は、局所抗炎症剤、局所抗菌剤、局所抗真菌剤、局所ステロイド、及び局所抗酸化剤から成る群から選択され得る。
【0021】
一部の実施形態では、方法はさらに、治療上有効な量のテルペノイドを局所投与するステップを含む。少なくとも1つの古典的なカンナビノイド、非古典的なカンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドと、少なくとも1つのテルペノイドとを単一の医薬組成物で投与することができ;或いは、カンナビノイド及びテルペノイドは別々に投与することができる。古典的なカンナビノイド、非古典的なカンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドとの組み合わせで使用することができるテルペノイドの種々の組み合わせが記載されて具体的な治療効果を達成する。
【0022】
本発明の別の態様は、
疾病または状態(たとえば、単純型表皮水疱症(EBS))を治療するために
(1)治療上有効な量のカンナビノイドと、
(2)局所投与用の少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアと、を含む、
中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病または状態(たとえば、EBS)を治療するための局所医薬組成物である。
【0023】
通常、組成物の投与は、炎症を軽減すること;創傷治癒及び皮膚または角膜の再生を促進すること;疼痛及び掻痒を軽減すること;感染の発生を低減すること;及び角膜嚢胞を軽減することの少なくとも1つを達成する。
【0024】
好まれるカンナビノイドには、カンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)、カンナビジオール:カンナビノール(0.1:1μM)、カンナビジオール:カンナビノール(1:1μM)から成る群から選択される1以上のカンナビジオールとカンナビノールの混合物が挙げられる。本発明に係る組成物にてカンナビノイドの特に好まれる組み合わせはカンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)である。他の比のカンナビジオールとカンナビノールを採用することができる。合成カンナビノイド、エンドカンナビノイド、及び本発明に係る方法に関して上記に記載されているようなカンナビノイドの類似体及び誘導体を含む他のカンナビノイド。
【0025】
組成物の局所投与用の好適な薬学上許容できるキャリアには、本発明に係る方法に関して上記に記載されているようなものが挙げられる。上記で言及されたように、特に好まれる薬学上許容できるキャリアは、ラブラソール、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルである。
【0026】
本発明に係る医薬組成物はさらに、本発明に係る方法に関して上記に記載されている賦形剤の1つのような少なくとも1つの賦形剤を含むことができる。通常、賦形剤は、上記に記載されているような保存剤;増粘剤;緩衝液;液体キャリア;等張剤;湿潤剤、可溶化剤、及び乳化剤;酸性化剤;抗酸化剤;アルカリ化剤;運搬剤;キレート剤;錯化剤;溶媒;懸濁剤または粘度上昇剤;油;透過増強剤;ポリマー;硬化剤;タンパク質;炭水化物;及び増量剤から成る群から選択される。
【0027】
一部の実施形態では、本発明に係る医薬組成物はさらに、本発明に係る方法に関して上記に記載されているような局所皮膚軟化剤、局所抗炎症剤、局所抗菌剤、局所抗真菌剤、局所ステロイド、または局所抗酸化剤を含むことができる。
【0028】
一部の実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、本発明に係る方法に関して本明細書に記載されているようなカンナビノイドとテルペノイドの組み合わせを含むことができる。
【0029】
一部の実施形態では、カンナビノイドとテルペノイドの特に好まれる組み合わせは、組成物の治療活性を参照して本明細書に記載されている。
【0030】
参照による組み込み
本明細書で言及されている出版物、特許及び特許出願はすべて、各個々の出版物、特許または特許出願が、参照により組み込まれることを具体的に且つ個々に示した場合と同じ程度に本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】表皮水疱症(EB)の様々なカテゴリー及び具体的な機能障害タンパク質とのその関連を示す表である。
図2】種々の型のEBに関連する成分及び水疱形成のレベルを示す皮膚の構造層とタンパク質を示す図である。
図3】EBS疾病の顕著な特徴と、本明細書に記載されている方法における前記顕著な特徴の治療に好適な及び本明細書に記載されている医薬組成物で好適な示されたフィトカンナビノイドとテルペノイドとを含有する対応する例となる組成物を説明する表である。
図4】HaCaT角化細胞におけるK5、K14、K15及びK16の発現に対する個々のカンナビノイドの効果を示す表である。
図5A】ケラチンの発現プロファイルに対する10:1比でのCBD:CBNの様々な濃度の効果を示す表である。
図5B】qPCR(内部対照はPPIAである)によって測定されるようなCBD:CBNの様々な濃度によるHaCaT角化細胞における様々なケラチンの相対的な発現を示す表である。
図5C】ケラチンの発現プロファイルに対する10:1比でのCBD:CBNの様々な濃度の効果を示す表である(内部対照はβ-アクチンである)。
図6】定量的ウエスタンブロット解析によるヒト表皮(HaCaT)角化細胞におけるケラチンの発現に対するカンナビジオールとカンナビノールの10:1比での混合物の効果を示す。左のパネルはIFNγ/TNFαによる前処理のない結果を示し、右のパネルはIFNγ/TNFαによって前処理した結果を示す。
図7】ヒト表皮(HaCaT)角化細胞におけるケラチンK5、K14及びK15の発現に対するカンナビジオールとカンナビノールの10:1比での混合物の効果を示す。混合物は、他のケラチンの発現を有意に上昇させることなくK15の発現を有意に高める(左のパネル、増殖段階での細胞;右のパネル、分化段階での細胞)。
図8】カンナビジオールとカンナビノイドの様々な比(INM-750は1:0.1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの10:1の比であり;INM-751は0.1:1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの1:10の混合物であり;INM-752は各1μMでのカンナビジオールとカンナビノールの1:1の混合物である)がHaCaT細胞にてK5及びK14ではなくK15の合成を上方調節することを示す。
図9】電気的細胞・基質インピーダンスセンシング(ECIS)システムによって創傷を導入する2時間前にHaCaT細胞を前処理する試験管内急性創傷治癒測定を示す。創傷治癒過程に対する様々な比のカンナビジオールとカンナビノールの効果を40時間測定した。「基準抵抗」は傷害の後、電極を超えた細胞の被覆比率の測定単位である。「INM750」は1:0.1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの10:1比であり、「INM751」は0.1:1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの1:10の混合物である。
図10】電気的細胞・基質インピーダンスセンシング(ECIS)創傷アッセイによって細胞の創傷と治療が同時に適用される、HaCaT細胞における試験管内の慢性創傷治癒過程の測定を示す。創傷治癒過程を2つの部分:傷縫合とバリア機能の復元に分ける。以下の組成物:1:0.1μMの比での10:1比のカンナビジオールとカンナビノール(「INM-750」)、0.1:1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの1:10混合物(「INM-751」)及び各1μMでのカンナビジオールとカンナビノールの1:1混合物(「INM-752」)を調べた。
図11】ヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導するCCL2/MCP-1産生の上方調節に対する種々のカンナビノイドの効果を示すグラフである;IFNγ/TNFαが誘導するCCL2/MCP-1産生の上方調節は皮膚の防御及び再生を高める。
図12】カンナビノイドが試験管内で増殖しているヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導するCCL2/MCP-1産生を上方調節することを示す要約グラフである。
図13】炎症に対するカンナビノイドの強力な阻害効果を表す。(左)ヒト角化細胞にて炎症誘発剤によって誘導されたIL-6の産生に対してカンナビノイドが強力な阻害効果を示すことを示すグラフ。(右)カンナビノイドが炎症の生体マーカーである基礎IL-8も阻害することを示すグラフ。
図14】ラブラソール、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピル含む製剤における0.6%カンナビノイドを用いてブタ皮膚を介したカンナビノイド透過の有効性を測定するための実験設定を示す図である。
図15図14の透過実験の結果を示すグラフである(◆6時間;■9時間;▲12時間)。
図16】Levenberg-Marquardtの適合を用いた図15の結果に基づく皮膚を横切るカンナビノイド拡散の数学モデルを示す図である。
図17】アラントイン(上のパネル)及びカンナビジオール(下のパネル)についての曲線下面積を示すグラフである。
図18】皮膚及び皮膚透過プロファイルを表す。(上のパネル)皮膚の模式図(LC:ランゲルハンス細胞;DC:樹状細胞;毛細血管網)。(下左のパネル)アラントインの皮膚透過プロファイル(x軸、皮膚の深さ、μm;y軸、アラントインの濃度、μg/皮膚のcm)。(下右のパネル)カンナビジオールの皮膚透過プロファイル(x軸、皮膚の深さ、μm;y軸、カンナビジオールの濃度、μg/皮膚のcm)。
図19】本明細書に記載されている実験結果に従って開発したモデルを示す図である。モデルは、エンドカンナビノイドシステム及び皮膚を説明し;エンドカンナビノイドとカンナビノイド受容体は皮膚における複数の調節系にて本明細書に記載されているように関与する。
図20】II型(K5、K6、及びK14)及びI型(K15、K16、K17)のケラチンの発現に対するINM-505(カンナビジオール)及びINM-517(カンナビノール)の様々な混合物の効果を示すグラフである。INM-505及びINM-517は単独でまたは組み合わせで(INM-505:INM-517)一般に分化後のヒト角化細胞におけるK5、K14、K15、K16及びK17タンパク質の発現を高める(濃度依存性の効果)。
図21】エキストラドメインA(EDA)・フィブロネクチンを上方調節することによる創傷治癒におけるカンナビノイドの活性を示す(左のパネル)。E-カドヘリンのTGF-β誘導の阻害はカンナビノイドによって救済される(右のパネル)。
図22】TGFβ1はヒト線維芽細胞によるCB1受容体の発現を抑制し、CB1/CB2の合成アンタゴニストAM251(N-(ピペリジン-1-イル)-5-(4-ヨードフェニル)-1-(2、4-ジクロロフェニル)-4-メチル-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)及びAM630(6-ヨードプラバドリン)はTGFβ1に対する細胞の応答性を改変することを示す。上のパネルはCB1受容体の発現を示すウエスタンブロットを示し、下のパネルはCB1受容体/HSP90の比を示し、HSP90は負荷対照である。
図23】CB1受容体アンタゴニストAM251はαSMAの発現を上方調節することによってヒト線維芽細胞のTGFβ1への応答性を高めることを示す。上のパネルはαSMAの発現を示すウエスタンブロットを示し、下のパネルはαSMA/HSP90の比を示し、HSP90は負荷対照である。
図24】INM-750が、ヒト角化細胞によるE-カドヘリンのTGFβ1が誘導する阻害の救済を介して皮膚の物理的完全性を増強することを示す図である。上のパネルはE-カドヘリン及び負荷対照としてのβ-チューブリンについてのウエスタンブロットを示し、下のパネルはE-カドヘリン/β-チューブリンの比を示す。
図25】INM-750が、ヒト角化細胞による細胞保護フィブロネクチン・EDAのTGFβ1が誘導する発現を維持することによって創傷治癒過程を強化することを示す。上のパネルはフィブロネクチン・EDA及び負荷対照としてのβ-チューブリンについてのウエスタンブロットを示し、下のパネルはフィブロネクチン・EDA/β-チューブリンの比を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、中間径フィラメント、特に上皮細胞またはそのような上皮細胞を含有する組織の中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病及び状態の治療のための方法を提供する。そのような疾病及び状態には、特定のケラチンの異常調節された転写、タンパク質合成及び/または活性が原因で生じるもの(たとえば、自己免疫または遺伝性疾患による)が挙げられる。そのような疾病及び状態には、単純型表皮水疱症(EBS)を含む表皮水疱症(EB)の亜型、表皮剥離性角質増殖症、シーメンス型水疱性魚鱗癬、掌蹠角皮症、先天性爪甲硬厚症、白色海綿状母斑、複合性脂腺嚢腫、連珠毛、及びミーズマン若年型上皮性角膜ジストロフィー症が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、カンナビノイドがK5、K14及びK15をコードする遺伝子を含むケラチン遺伝子の発現を治療上関連する程度まで調節することができるという驚くべき発見に少なくともある程度基づく。
【0033】
定義
本明細書で使用されるとき、用語「1以上のケラチンの量または活性を調節する」は、1以上のケラチン遺伝子または遺伝子産物のmRNA量、タンパク質量または中間径フィラメントの形成活性における変化(たとえば、増加または低下)を指す。
【0034】
カンナビノイド及びその混合物について以下の専門用語が本明細書で使用される:「INM-750」は1:0.1μMでのカンナビジオールとカンナビノールの10:1比である。「INM-751」は0.1:1μMでのカンナビジオールとカンナビノールの1:10混合物である。「INM-752」は1:1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの1:1混合物である。「INM-505」はカンナビジオールである(INM-505CはCyman Pharmaceuticalsに由来するカンナビジオール(CBD)の合成版であり、「INM-505E」はEacho Pharmaceuticalsに由来する天然のカンナビノイド抽出物から抽出される)。「INM-506」はカンナビジオール酸である。「INM-509」はカンナビクロメン(CBC)である。「INM-513」はカンナビゲロール(CBG)である。「INM-517」はカンナビノールである。前述のINM組成物のそれぞれは、デルタ-9-テトラヒドロカンナビノールを含まない、または実質的に(>99.9%)含まない。好まれる実施形態では、カンナビノイドすべて及びそれらの混合物は精神活性のあるカンナビノイドを含まない、または実質的に(>99.9%)含まない。別の実施形態では、カンナビノイドすべて及びそれらの混合物は、対象に投与した場合、または治療用量で対象に投与した場合、または対象に局所投与した(たとえば、治療用量)場合、認識できる精神活性効果を提供する量を下回る量の精神活性のあるカンナビノイドを含有する。
【0035】
「アルキル」は示された数の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルは、たとえば、C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6及びC5-6のような任意の数の炭素を含むことができる。たとえば、C1-6アルキルには、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。アルキルはまた、たとえば、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等のような、しかしこれらに限定されない20までの炭素原子を有するアルキル基を指すことができる。アルキル基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「低級アルキル」又は同等の用語は、さらに限定することなく、C1-6の基を指し、たとえば、メチルが含まれる。用語「低級アルキル」はさらに、たとえば、「C2-6の低級アルキル」のように限定され、メチルを排除することができる。用語「低級アルキル」はさらに限定しない限り、直鎖及び分岐鎖のアルキル基の双方を指す。これらの低級アルキル基は以下に記載されているように、非置換であることができ、または置換することができる。
【0037】
「アルキレン」は示された数の炭素原子を有し、且つ少なくとも2つの他の基、すなわち、二価の炭化水素ラジカルを連結する直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキレンに連結される2つの部分はアルキレン基の同一の原子または異なる原子に連結することができる。たとえば、直鎖アルキレンは-(CH-の二価のラジカルであることができ、nは1、2、3、4、5または6である。代表的なアルキレン基には、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、sec-ブチレン、ペンチレン及びヘキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。アルキレン基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0038】
「アルケニル」は少なくとも2つの炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素を指す。アルケニルは、たとえば、C、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C、C3-4、C3-5、C3-6、C、C4-5、C4-6、C、C5-6、及びCのような任意の数の炭素を含むことができる。アルケニル基は1、2、3、4、5以上を含むが、これらに限定されない好適な数の二重結合を有することができる。アルケニル基の例には、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニル、または1,3,5-ヘキサトリエニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニル基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0039】
「アルケニレン」は少なくとも2つの他の基、すなわち、二価の炭化水素ラジカルを連結する、上記で定義されたようなアルケニル基を指す。アルケニレンに連結される2つの部分はアルケニレンの同一の原子または異なる原子に連結することができる。アルケニレン基には、エテニレン、プロペニレン、イソプロペニレン、ブテニレン、イソブテニレン、sec-ブテニレン、ペンテニレン及びヘキセニレンが挙げられるが、これらに限定されない。アルケニレン基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0040】
{アルキニル」は少なくとも2つの炭素原子及び少なくとも1つの三重結合を有する直鎖または分岐鎖の炭化水素を指す。アルキニルは、たとえば、C、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C、C3-4、C3-5、C3-6、C、C4-5、C4-6、C、C5-6、及びCのような任意の数の炭素を含むことができる。アルキニル基の例には、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、イソブチニル、sec-ブチニル、ブタジニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3-ペンタジニル、1,4-ペンタジニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、1,3-ヘキサジニル、1,4-ヘキサジニル、1,5-ヘキサジニル、2,4-ヘキサジニル、または1,3,5-ヘキサトリニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0041】
「アルキニレン」は少なくとも2つの他の基、すなわち、二価の炭化水素ラジカルを連結する、上記で定義されたようなアルキニル基を指す。アルキニレンに連結される2つの部分はアルキニレンの同一の原子または異なる原子に連結することができる。アルキニレン基には、エチニレン、プロピニレン、ブチニレン、sec-ブチニレン、ペンチニレン及びヘキシニレンが挙げられるが、これらに限定されない。アルキニレン基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0042】
「アルコキシ」は連結点でアルキル基を接続する酸素原子を有するアルキル基:アルキル-O-を指す。アルキル基に関しては、アルコキシ基はたとえば、C1-6のような好適な数の炭素原子を有することができる。アルコキシ基には、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソ-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ等が挙げられる。アルコキシ基はさらに範囲内に記載されている種々の置換基で置換することができる。アルコキシ基は置換することができ、または非置換であることができる。用語「低級アルコキシ」はアルコキシ基のアルキル部分がC-Cであるアルコキシ基を指す。
【0043】
「アルキルヒドロキシ」は水素原子の少なくとも1つがヒドロキシ基で置き換えられる、上記で定義されたようなアルキル基を指す。アルキル基に関しては、アルキルヒドロキシ基はたとえば、C1-6のような好適な数の炭素原子を有することができる。例となるアルキルヒドロキシ基には、ヒドロキシ-メチル、ヒドロキシエチル(ヒドロキシが1位または2位にある)、ヒドロキシプロピル(ヒドロキシが1位、2位または3位にある)、ヒドロキシブチル(ヒドロキシが1位、2位、3位または4位にある)、ヒドロキシペンチル(ヒドロキシが1位、2位、3位、4位または5位にある)、ヒドロキシペンチル(ヒドロキシが1位、2位、3位、4位、5位または6位にある)、1,2-ジヒドロキシエチル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「ヘテロアルキル」は、好適な長さの、且つたとえば、N、O及びSのような1~3のヘテロ原子を有するアルキル基を指す。B、Al、Si及びPを含むが、これらに限定されない追加のヘテロ原子も有用であることができる。ヘテロ原子は、たとえば、-S(O)-及び-S(O)-のように、しかし、これらに限定されずに、酸化することもできる。たとえば、ヘテロアルキルはエーテル、チオエーテル及びアルキル-アミンを含むことができる。ヘテロアルキルのヘテロ原子部分はアルキル基の水素を置き換えてヒドロキシ基、チオ基またはアミン基を形成することができる。或いは、ヘテロ原子部分は接続する原子であることができ、または2つの炭素原子の間に挿入することができる。
【0045】
「ヘテロアルキレン」は2つの他の基を連結する、上記で定義されたようなヘテロアルキル基を指す。ヘテロアルキニレンに連結される2つの部分はヘテロアルキニレンの同一の原子または異なる原子に連結することができる。
【0046】
「ハロゲン」、「ハロ基」等はフッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0047】
「ハロアルキル」は水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置き換えられる、上記で定義されたようなアルキルを指す。アルキル基に関しては、ハロアルキル基はたとえば、C1-6のような好適な数の炭素原子を有することができる。たとえば、ハロアルキルには、トリフルオロメチル、フルオロメチル等が挙げられる。ある場合には、用語「パーフルオロ」を用いて水素すべてがフッ素で置き換えられる化合物またはラジカルを定義することができる。たとえは、パーフルオロメチルは1,1,1-トリフルオロメチルを指す。
【0048】
「ハロアルコキシ」は水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置き換えられるアルコキシ基を指す。アルキル基に関しては、ハロアルコキシ基はたとえば、C1-6のような好適な数の炭素原子を有することができる。アルコキシ基は1、2、3以上のハロゲンによって置換することができる。水素すべてがハロゲン、たとえば、フッ素で置換される場合、化合物は過置換され、たとえば、過フッ素化される。ハロアルコキシにはトリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、パーフルオロエトキシ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
「シクロアルキル」は3~12の環原子または示された数の原子を含有する飽和のまたは部分不飽和の単環式、縮合二環式または架橋多環式の環集合を指す。シクロアルキルは、たとえば、C3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11、及びC3-12のような任意の数の炭素を含むことができる。飽和の単環式シクロアルキル環には、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロオクチルが挙げられる。飽和の二環式及び多環式のシクロアルキル環には、たとえば、ノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン及びアダマンタンが挙げられる。環にて1以上の二重結合または三重結合を有するシクロアルキル環は部分的に不飽和であることもできる。部分的に不飽和である代表的なシクロアルキル環には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-及び1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン(1,3-、1,4-及び1,5-異性体)、ノルボルネン、及びノルボルナジエンが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式C3-8シクロアルキルである場合、例となる基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式C3-6シクロアルキルである場合、例となる基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロアルキル基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0050】
「シクロアルキレン」は示された数の炭素原子を有し、且つ少なくとも2つの他の基、すなわち、二価のラジカルを連結するシクロアルキル基を指す。シクロアルキレンに連結される2つの部分はシクロアルキレン基の同一の原子または異なる原子に連結することができる。シクロアルキレン環の例には、とりわけ、シクロプロピレン、シクロブチレン、シクロペンチレン、及びシクロヘキシレンが挙げられる。シクロアルキレン基は連結された1,1、1,2、1,3または1,4であることができる。シクロヘキシレン環は、たとえば、ボート及びチェア立体構造を含む多数の立体構造を採用することができる。シクロヘキシレンのチェア立体構造は軸または赤道の配向で置換基を有することができる。シクロアルキレンの二価の性質はシス及びトランスの形成を生じ、シスはシクロアルキレン環の同一側(上又は下)にある双方の置換基を指し、トランスはシクロアルキレン環の対向側にある置換基を指す。たとえば、シス-1,2-及びシス-1,4-シクロヘキシレンは軸配向における一方の置換基と赤道配向における他方の置換基とを有することができる一方で、トランス-1,2-及びトランス-1,4-シクロヘキシレンは軸配向または赤道配向における双方の置換基を有することができる。シス-1,3-シクロヘキシレンは軸配向または赤道配向における双方の置換基を有することができ、トランス-1,3-シクロヘキシレンは軸配向における一方の置換基と赤道配向における他方の置換基とを有することができる。シクロアルキレン基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0051】
「ヘテロシクロアルキル」は3~12の環員及び1~4のN、O及びSのヘテロ原子を有する飽和環系を指す。B、Al、Si及びPを含むが、これらに限定されない追加のヘテロ原子も有用であることができる。ヘテロ原子は、たとえば、-S(O)-及び-S(O)-のように、しかし、これらに限定されずに、酸化することができる。ヘテロシクロアルキル基は、たとえば、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、または3~12の環員のような任意の数の環原子を含むことができる。たとえば、1、2、3、または4、または1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、または3~4のような好適な数のヘテロ原子がヘテロシクロアルキル基に含まれ得る。ヘテロシクロアルキル基には、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1.3-及び1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジオキサン、またはジチアンのような基を挙げることができる。ヘテロシクロアルキル基は芳香族または非芳香族の環系に縮合して、インドリンを含むが、これらに限定されないメンバーを形成することもできる。ヘテロシクロアルキル基は置換することができ、または非置換であることができる。たとえば、ヘテロシクロアルキル基は、とりわけ、C1-6アルキルまたはオキソ(=O)によって置換することができる。
【0052】
ヘテロシクロアルキル基は環上の任意の位置を介して連結することができる。たとえば、アジリジンは1-または2-アジリジンであることができ、アゼチジンは1-または2-アゼチジンであることができ、ピロリジンは1-、2-または3-ピロリジンであることができ、ピペリジンは1-、2-、3-または4-ピペリジンであることができ、ピラゾリジンは1-、2-、3-、または4-ピラゾリジンであることができ、イミダゾリジンは1-、2-、3-または4-イミダゾリジンであることができ、ピペラジンは1-、2-、3-または4-ピペラジンであることができ、テトラヒドロフランは1-または2-テトラヒドロフランであることができ、オキサゾリジンは2-、3-、4-または5-オキサゾリジンであることができ、イソオキサゾリジンは2-、3-、4-または5-イソオキサゾリジンであることができ、チアゾリジンは2-、3-、4-または5-チアゾリジンであることができ、イソチアゾリジンは2-、3-、4-または5-イソチアゾリジンであることができ、及びモルフォリンは2-、3-または4-モルフォリンであることができる。
【0053】
ヘテロシクロアルキルが3~8の環員及び1~3のヘテロ原子を含む場合、代表的なメンバーには、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、オキサン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、モルフォリン、チオモルフォリン、ジオキサン及びジチアンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルは5~6の環員及び1~2のヘテロ原子を有する環を形成することもでき、代表的なメンバーには、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、及びモルフォリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
「ヘテロシクロアルキレン」は少なくとも2つの他の基を連結する、上記で定義されたようなヘテロシクロアルキル基を指す。ヘテロシクロアルキレンに連結される2つの部分はヘテロシクロアルキレンの同一の原子または異なる原子に連結することができる。ヘテロシクロアルキレン基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0055】
「アリール」は好適な数の環原子及び好適な数の環を有する芳香族の環系を指す。アリール基は、たとえば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16の環原子のような任意の好適な数の環原子、と同様に6~10、6~12、または6~14の環員を含むことができる。アリール基は、単環式であることができ、縮合して二環式もしくは三環式の基を形成することができ、結合によって連結されてビアリール基を形成することができる。代表的なアリール基にはフェニル、ナフチル及びビフェニルが挙げられる。他のアリール基にはメチレン連結基を有するベンジルが挙げられる。たとえば、フェニル、ナフチルまたはビフェニルのような一部のアリール基は6~12の環員を有する。たとえば、フェニルまたはナフチルのような他のアリール基は6~10の環員を有する。たとえば、フェニルのような一部の他のアリール基は6環員を有する。アリール基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0056】
「ヘテロアリール」は5~16の環原子を含有する単環式または縮合二環式または三環式の芳香族環集合を指し、その際、環原子の1~5はN、OまたはSのようなヘテロ原子である。B、Al、Si及びPを含むが、これらに限定されない追加のヘテロ原子も有用であることができる。ヘテロ原子は、たとえば、-S(O)-及び-S(O)-のように、しかし、これらの限定されずに、酸化することができる。ヘテロアリール基は、たとえば、3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、または3~12の環員のような任意の数の環原子を含むことができる。たとえば、1、2、3、4、または5、または1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、または3~5のような好適な数のヘテロ原子がヘテロアリール基に含まれ得る。ヘテロアリール基は、5~8の環員及び1~4のヘテロ原子、または5~8の環員及び1~3のヘテロ原子、または5~6の環員及び1~4のヘテロ原子、または5~6の環員及び1~3のヘテロ原子を有することができる。ヘテロアリール基には、たとえば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソオキサゾールのような基を挙げることができる。ヘテロアリール基は、たとえば、フェニル環のような芳香族環系に縮合させて、インドール及びイソインドールのようなベンゾピロール、キノリン及びイソキノリンのようなベンゾピリジン、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、フタラジン及びシンノリンのようなベンゾピリダジン、ベンゾチオフェン、及びベンゾフランを含むが、これらに限定されないメンバーを形成することもできる。他のヘテロアリール基には、たとえば、ビピリジンのような結合によって連結されたヘテロアリール環が挙げられる。ヘテロアリール基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0057】
ヘテロアリール基は環上の任意の位置を介して連結することができる。たとえば、ピロールは1-、2-及び3-ピロールを含み、ピリジンは2-、3-及び4-ピリジンを含み、イミダゾールは1-、2-、4-及び5-イミダゾールを含み、ピラゾールは1-、3-、4-及び5-ピラゾールを含み、トリアゾールは1-、4-及び5-トリアゾールを含み、テトラゾールは1-及び5-テトラゾールを含み、ピリミジンは2-、4-、5-及び6-ピリミジンを含み、ピリダジンは3-及び4-ピリダジンを含み、1、2、3-トリアジンは4-及び5-トリアジンを含み、1、2、4-トリアジンは3-、5-及び6-トリアジンを含み、1、3、5-トリアジンは2-トリアジンを含み、チオフェンは2-及び3-チオフェンを含み、フランは2-及び3-フランを含み、チアゾールは2-、4-及び5-チアゾールを含み、イソチアゾールは3-、4-及び5-イソチアゾールを含み、オキサゾールは2-、4-及び5-オキサゾールを含み、イソオキサゾールは3-、4-及び5-イソオキサゾールを含み、インドールは1-、2-及び3-インドールを含み、イソインドールは1-及び2-イソインドールを含み、キノリンは2-、3-及び4-キノリンを含み、イソキノリンは1-、3-及び4-イソキノリンを含み、キナゾリンは2-及び4-キナゾリンを含み、シンノリンは3-及び4-シンノリンを含み、ベンゾチオフェンは2-及び3-ベンゾチオフェンを含み、及びベンゾフランは2-及び3-ベンゾフランを含む。
【0058】
一部のヘテロアリール基には、5~10の環員ならびにN、O及びSを含む1~3の環原子を有するもの、たとえば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン及びベンゾフランが挙げられる。他のヘテロアリール基には、5~8の環員及び1~3のヘテロ原子を有するもの、たとえば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソオキサゾールが挙げられる。一部の他のヘテロアリール基には、9~12の環員及び1~3のヘテロ原子を有するもの、たとえば、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン及びビピリジンが挙げられる。さらに他のヘテロアリール基には、5~6の環員及び1~2のN、OまたはSを含む環原子を有するもの、たとえば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チオフェン、フラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、及びイソオキサゾールが挙げられる。
【0059】
たとえば、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、インドール、イソインドール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、及びシンノリンのような一部のヘテロアリール基は5~10の環員及び窒素のみのヘテロ原子を含む。たとえば、フラン及びベンゾフランのような他のヘテロアリール基は5~10の環員及び酸素のみのヘテロ原子を含む。たとえば、チオフェン及びベンゾチオフェンのような一部の他のヘテロアリール基は5~10の環員及びイオウのみのヘテロ原子を含む。たとえば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-及び1,3,5-異性体)、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、及びシンノリンのようなさらに他のヘテロアリール基は5~10の環員及び少なくとも2つのヘテロ原子を含む。
【0060】
「ヘテロアリーレン」は少なくとも2つの他の基を連結する、上記で定義されたようなヘテロアリール基を指す。ヘテロアリールに連結される2つの部分はヘテロアリールの異なる原子に連結される。ヘテロアリーレン基は置換することができ、または非置換であることができる。
【0061】
本明細書で使用されるとき、「アシル」は、カルボニル炭素原子の2つの利用できる価数位置で連結されるアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはアリールアルキルのラジカルを含む基を包含し、ヘテロアシルは、カルボニル炭素以外の少なくとも1つの炭素がN、O及びSから選択されるヘテロ原子によって置き換えられている相当する基を指す。
【0062】
「アミン」または「アミノ」は、R基が、とりわけ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであることができる-N(R)基を指す。R基は同一であることができ、または異なることができる。アミノ基は1級(各Rが水素である)、2級(Rの1つが水素である)または3級(各Rが水素以外である)であることができる。
【0063】
「アルキルアミン」は1以上のアミノ基を有する範囲内で定義されるようなアルキル基を指す。アミノ基は1級、2級または3級であることができる。アルキルアミンはさらにヒドロキシ基で置換されてアミノ-ヒドロキシ基を形成することができる。本発明で有用なアルキルアミンにはエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン及びエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。アミノ基は、化合物の残りとの連結点にアルキルアミンを連結することができ、アルキル基のオメガ位にあることができ、またはアルキル基の少なくとも2つの炭素原子にて一緒に連結することができる。当業者は他のアルキルアミンが本発明で有用であることを十分に理解するであろう。
【0064】
「カルボキシ」は式-C(O)OHまたは-COHのカルボン酸基を指す。「カルボキシアルキル」は上記に記載されているようにアルキルに連結され、且つ一般に式-C1-8アルキル-C(O)OHを有するカルボキシ基を指す。任意の好適なアルキル鎖が有用である。
【0065】
本明細書で使用されるとき、用語「スルホ」はスルホン酸(-SOH)置換基を指す。本明細書で使用されるとき、用語「スルファモイル」は構造-S(O)NHによる置換基を指し、その際、基のNH部分の窒素は本明細書に記載されているように任意で置換され得る。本明細書で使用されるとき、用語「カルバミル」は構造-C(O)NHの基を指し、その際、基のNH部分の窒素は本明細書に記載されているように任意で置換することができる。本明細書で使用されるとき、用語「モノアルキルアミノアルキル」及び「ジアルキルアミノアルキル」は構造-Alk-NH-Alk及び-Alk-N(Alk)(Alk)の基を指し、その際、Alk、Alk及びAlkは本明細書に記載されているようなアルキル基を指す。
【0066】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキルスルホニル」は構造-S(O)-Alkの基を指し、その際、Alkは本明細書に記載されているようなアルキル基を指す。用語「アルケニルスルホニル」及び「アルキニルスルホニル」はそれぞれアルケニル基及びアルキニル基に共有結合したスルホニル基を類似して指す。用語「アリールスルホニル」は構造-S(O)-Arの基を指し、その際、Arは本明細書に記載されているようなアリール基を指す。用語「アリールオキシアルキルスルホニル」は構造-S(O)-Alk-O-Arの基を指し、その際、Alkは本明細書に記載されているようなアルキル基であり、Arは本明細書に記載されているようなアリール基である。用語「アリールアルキルスルホニル」は構造-S(O)-AlkArの基を指し、その際、Alkは本明細書に記載されているようなアルキル基であり、Arは本明細書に記載されているようなアリール基である。
【0067】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキルオキシカルボニル」は、カルボニル炭素が分子への連結点であるアルキル基を含むエステル置換基を指す。例はCHCHOC(O)-であるエトキシカルボニルである。同様に、用語「アルケニルオキシカルボニル」、「アルキニルオキシカルボニル」及び「シクロアルキルカルボニル」はそれぞれアルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を含む類似のエステル置換基を指す。同様に、用語「アリールオキシカルボニル」はカルボニル炭素が分子への連結点であるアリール基を含むエステル置換基を指す。同様に、用語「アリールオキシアルキルカルボニル」はアルキル基自体がアリールオキシ基によって置換されるアルキル基を含むエステル置換基を指す。
【0068】
置換基の他の組み合わせは、当該技術で既知であり、たとえば、Jungらへの米国特許第8、344、162号に記載されている。たとえば、用語「チオカルボニル」及び「チオカルボニル」を含む置換基の組み合わせは、二重結合したイオウが基における通常の二重結合した酸素に取って代わるカルボニル基を含む。用語「アルキリデン」及び類似の専門用語は、基が構造の残りに二重結合するように単一の炭素原子から取り外された2つの水素を有する、規定されたようなアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはシクロアルキル基を指す。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロ原子」は、たとえば、窒素、酸素またはイオウのような、炭素または水素ではない任意の原子を指す。それが鎖または環の主鎖または骨格の一部である場合、ヘテロ原子は少なくとも二価でなければならず、通常N、O、P及びSから選択されるであろう。
【0070】
たとえば、以下に記載されているカンナビノイド及び/またはテルペノイド化合物に存在するもののような、上記で定義された基は好適な数及び種類の置換基によって任意で置換することができる。代表的な置換基には、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシ、-OR’、=O、-OC(O)R’、-(O)R’、-OR’、-ONR’R”、-OC(O)NR’R”、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’ -(O)NR”R”’、-NR”C(O)OR’、-NH-(NH)=NH、-NR’C(NH)=NH、-NH-(NH)=NR’、-SR’、-S(O)R’、-S(O)R’、-S(O)NR’R”、-NR’S(O)R”、-N及び-NOが挙げられるが、これらに限定されない。R’、R”及びR”’はそれぞれ独立して水素、非置換のアルキル、たとえば、非置換のC1-6アルキルを指す。或いは、R’とR”またはR”とR”’は同一窒素に連結されると、それらが連結される窒素と組み合わせられて上記で定義したようなヘテロシクロアルキル環またはヘテロアリール環を形成する。これはさらなる任意の置換の可能性を限定するように解釈することはできない。潜在的な追加の任意での置換のさらなる記載は以下で提供されている。任意の置換は通常、それらが存在する化合物の活性または化合物の安定性、特に、本明細書に記載されているような医薬組成物に存在する化合物の活性または安定性を実質的に低下させない。場合によっては、任意の置換は、本明細書に記載されているような医薬組成物に存在する化合物の活性、安定性、可溶性及び/または生体利用効率を高める。
【0071】
本明細書に記載されている化合物は1以上のキラル中心及び/または二重結合を含有してもよいので、立体異性体として、たとえば、二重結合異性体(すなわち、E及びZのような幾何異性体)、エナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在してもよい。本発明は、単離された立体異性体形態(たとえば、エナンチオマーで純粋な異性体、E及びZ異性体、及び立体異性体の他の代替)と同様にラセミ混合物、ジアステレオマーの混合物、及びE異性体とZ異性体の混合物を含む、様々な程度のキラル純度またはE及びZの比率での立体異性体の混合物のそれぞれを含む。従って、本明細書で示される化学構造は、立体異性体で純粋な形態(たとえば、幾何異性体で純粋、エナンチオマーで純粋、またはジアステレオマーで純粋)及びエナンチオマーと立体異性体の混合物を含む説明された化合物の考えられるエナンチオマー及び立体異性体のすべてを包含する。エナンチオマーと立体異性体の混合物は、技量のある熟練者に周知の分離法またはキラル合成法を用いてそれらの成分エナンチオマーまたは立体異性体に分割することができる。本発明は、単離された立体異性体形態と同様にラセミ混合物を含む、様々な程度のキラル純度での立体異性体の混合物のそれぞれを含む。それはまた、種々のジアステレオマーも包含する。他の構造は具体的な異性体を描くと思われてもよいが、それは単に便宜上であって、描かれた異性体に本発明を限定するようには意図されない。化学名が化合物の異性体形態を特定しない場合、それは、化合物の考えられる異性体形態またはそれら異性体形態の混合物のいずれか1つを意味する。化合物は幾つかの互変異性体の形態で存在してもよく、互変異性体1つの本明細書での描写は便宜上のみであり、示される形態の他の互変異性体を包含することも理解される。従って、本明細書で描かれる化学構造は説明される化合物の考えられる互変異性体形態すべてを包含する。用語「互変異性体」は本明細書で使用されるとき、それらが平衡で一緒に存在できるように非常に簡単に互いに変化する異性体を指し;平衡は安定性の検討に依存して互変異性体の一方を強く好んでもよい。たとえば、ケトン及びエノールは1つの化合物の2つの互変異性体の形態である。
【0072】
「塩」は本発明の方法で使用される化合物の酸塩または塩基塩を指す。薬学上許容できる塩の説明に役立つ例は、鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸等)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、クエン酸等)の塩、四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル等の塩である。薬学上許容できる塩は毒性ではないことが理解される。好適な薬学上許容できる塩に関する追加の情報は、参照によって本明細書に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences、17th ed.、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、1985に見いだすことができる。
【0073】
本明細書で使用されるとき、用語「溶媒和物」は、溶媒和(溶媒分子の溶質の分子またはイオンとの組み合わせ)によって形成される化合物、または溶質のイオンもしくは分子、すなわち、1以上の溶媒分子を伴った本発明の化合物から成る凝集体を意味する。水が溶媒である場合、相当する溶媒和物は「水和物」である。水和物の例には、ヘミ水和物、一水和物、二水和物、三水和物、六水和物及び他の水含有種が挙げられるが、これらに限定されない。本化合物の薬学上許容できる塩及び/またはプロドラッグは溶媒和物の形態で存在してもよいことが当業者によって理解されるべきである。溶媒和物は通常、本化合物の調製の一部である、または本発明の無水化合物の自然な水分吸収を介する水和によって形成される。一般に、物理的形態はすべて本発明の範囲内にあるように意図される。
【0074】
従って、たとえば、カンナビノイドまたはテルペノイドのような、しかし、これらに限定されない、本発明に係る方法で使用される、または本発明に係る組成物に含まれる治療上活性がある作用物質が十分に酸性の、十分に塩基性の、または十分に酸性で且つ十分に塩基性の官能基を持つ場合、これらの基(単数)または基(複数)は従って多数の無機または有機の塩基及び無機及び有機の酸のいずれかと反応して薬学上許容できる塩を形成することができる。例となる薬学上許容できる塩には、薬理学的に活性がある化合物の鉱酸または有機酸または無機塩基との反応によって調製されるそれらの塩、たとえば、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタン-スルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩を含む塩が挙げられる。薬理学的に活性がある化合物が1以上の塩基性の官能基を有するのであれば、所望の薬学上許容できる塩は、当該技術で利用できる好適な方法によって、たとえば、遊離の塩基の、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等のような無機酸による、または、たとえば、または酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸のような有機酸、グルクロン酸またはガラクツロン酸のようなピラノシジル酸、クエン酸または酒石酸のようなアルファ-ヒドロキシ酸、アスパラギン酸またはグルタミン酸のようなアミノ酸、安息香酸または桂皮酸のような芳香族酸、p-トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸のようなスルホン酸、等による処理によって調製されてもよい。薬理学的に活性がある化合物が1以上の酸性の官能基を有するのであれば、所望の薬学上許容できる塩は、当該技術で利用できる好適な方法によって、たとえば、遊離の酸の無機または有機の塩基、たとえば、アミン(1級、2級または3級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物、等による処理によって調製されてもよい。好適な塩の説明に役立つ例には、たとえば、グリシン及びアルギニンのようなアミノ酸、アンモニア、1級、2級及び3級のアミン
たとえば、ピペリジン、モルフォリン及びピペラジンのような環状アミンに由来する有機塩、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムに由来する無機塩が挙げられる。
【0075】
「組成物」は本明細書で使用されるとき、指定された量で指定された成分を含む製品と同様に指定された量での指定された成分の組み合わせから生じる製品を包含するように意図される。「薬学上許容できる」によってキャリア、希釈剤または賦形剤が製剤の他の成分と相溶性でなければならず、そのレシピエントに対して有害でなければならないことを意味する。
【0076】
「薬学上許容できる賦形剤」は対象への活性剤の投与及び対象による吸収を補助する物質を指す。本発明で有用な医薬賦形剤には、結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味剤、風味剤及び染料が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は他の医薬賦形剤が本発明で有用であることを認識するであろう。
【0077】
場合によっては、本発明に係る方法または本発明に係る組成物で使用される化合物に保護基を含めることができる。そのような保護基の使用は、その後に続く加水分解または生体で発生することができ、化合物を分解することができる他の反応を防ぐことである。保護され得る基には、アルコール、アミン、カルボニル、カルボン酸、リン酸塩、及び末端アルキンが挙げられる。アルコールを保護するのに有用な保護基には、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、β-メトキシエトキシエチルエーテル、ジメトキシトリチル、メトキシメチルエーテル、メトキシトリチル、p-メトキシベンジルエーテル、メチルチオメチル エーテル、ピバロイル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラン、トリチル、シリルエーテル、メチルエーテル、及びエトキシエチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。アミンを保護するのに有用な保護基には、カルボベンジルオキシ、p-メトキシベンジルカルボニル、t-ブチロキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、カルバメート、p-メトキシベンジル、3、4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、トシル、クロロギ酸トリクロロエチル、及びスルホンアミドが挙げられる。カルボニルを保護するのに有用な保護基には、アセタール、ケタール、アシラール、及びジチアンが挙げられる。カルボン酸を保護するのに有用な保護基には、メチルエステル、ベンジルエステル、t-ブチルエステル、2,6-二置換フェノールエステル、シリルエステル、オルソエステル、及びオキサゾリンが挙げられる。リン酸基を保護するのに有用な保護基には、2-シアノエチル及びメチルが挙げられる。末端アルキンを保護するのに有用な保護基には、プロパルギルアルコール及びシリル基が挙げられる。他の保護基は当該技術で知られている。
【0078】
本明細書で使用されるとき、用語「プロドラッグ」は、投与に続いて何らかの化学的または生理的な過程を介して生体内で生物学的に活性がある化合物を放出する前駆体化合物を指す(たとえば、生理的pHに達するとまたは酵素作用を介してプロドラッグは生物学的に活性がある化合物に変換される)。プロドラッグ自体は所望の生物活性を欠いてもよいし、またはそれを持ってもよい。従って、用語「プロドラッグ」は薬学上許容できる生物学的に活性がある化合物の前駆体を指す。特定の場合、プロドラッグはプロドラッグが由来する親化合物に比べて改善された物性及び/または送達特性を有する。プロドラッグは哺乳類生物において溶解性、組織適合性または遅延放出の利点を提供することが多い(H.Bundgard、Design of Prodrugs(Elsevier、Amsterdam、1988)、pp.7-9、21-24)。プロドラッグの考察は、T.Higuchi、et al.、“Pro-Drugs as Novel Delivery Systems、”ACS Symposium Series、Vol.14及びin E.B.Roche、ed.、Bioreversible Carriers in Drug Design(American Pharmaceutical Association & Pergamon Press、1987)にて提供されている。プロドラッグの例となる利点には、たとえば、長期保存についての薬剤の向上した安定性のような物性を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0079】
用語「プロドラッグ」はまた、プロドラッグが対象に投与されると生体内で活性がある化合物を放出する共有結合したキャリアを含むことにする。本明細書に記載されているような治療上活性がある化合物のプロドラッグは、カンナビノイド、テルペノイドを含む治療上活性がある化合物、及び本発明に係る方法で使用されるまたは本発明に係る組成物に含まれる他の治療上活性がある化合物に存在する1以上の官能基を、修飾が日常の操作または生体内で切断されて親の治療上活性がある化合物を生じるような方法で修飾することによって調製することができる。プロドラッグには、活性化合物のプロドラッグが対象に投与されると開裂してそれぞれ遊離のヒドロキシ基、遊離のアミノ基または遊離のメルカプト基を形成する任意の基にヒドロキシ基、アミノ基またはメルカプト基が共有結合する化合物が含まれる。プロドラッグの例には、アルコールまたはアセトアミドのギ酸誘導体または安息香酸誘導体、反応に利用できるアミン官能基を持つ治療上活性がある作用物質のホルムアミド誘導体またはベンズアミド誘導体、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
たとえば、治療上活性がある作用物質または治療上活性がある作用物質の薬学上許容できる形態がカルボン酸官能基を含有する場合、プロドラッグは、カルボン酸基の水素原子の、たとえば、C1-8アルキル、C2-12アルカノイルオキシメチル、4~9の炭素原子を有する1-(アルカノイルオキシ)エチル、5~10の炭素原子を有する1-メチル1-(アルカノイルオキシ)エチル、3~6の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4~7の炭素原子を有する1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5~8の炭素原子を有する1-メチル1-(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3~9の炭素原子を有するN-(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4~10の炭素原子を有する1-(N-(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3-フタリジル、4-クロトノラクトニル、ガンマ-ブチロラクトン-4-イル、ジ-N、N(C-C)アルキルアミノ(C-C)アルキル(たとえば、(3-ジメチルアミノエチル)、カルバモイル-(C-C)アルキル、N、N-ジ(C-C)アルキルカルバモイル-(C-C)アルキル及びピペリジノ-、ピロリジノ-、またはモルフォリノ(C-C)アルキルのような基による置換によって形成されるエステルを含むことができる。
【0081】
同様に、開示されている化合物または該化合物の薬学上許容できる形態がアルコール官能基を含有するのであれば、プロドラッグは、アルコール基の水素原子の、たとえば、(C-C)アルカノイルオキシメチル、1-((C-C))アルカノイルオキシ)エチル、1-メチル1-((C-C)アルカノイルオキシ)エチル(C-C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N(C-C)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C-C)アルカノイル、α-アミノ(C-C)アルカノイル、アリールアシル及びα-アミノアシル、またはα-アミノアシル-α-アミノアシルのような基による置換によって形成されることができ、その際、各α-アミノアシル基は独立して天然に存在するL-アミノ酸、P(O)(OH)、P(O)(O(C-C)アルキル)またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基の取り外しの結果生じるラジカル)から選択される。
【0082】
開示されている化合物または該化合物の薬学上許容できる形態がアミン官能基を組み込むのであれば、プロドラッグは、アミン基における水素原子の、たとえば、R-カルボニル、RO-カルボニル、NRR’-カルボニルのような基による置換によって形成されることができ、その際、R及びR’はそれぞれ独立して(C-C10)アルキル、(C-C)シクロアルキル、ベンジルであり、またはR-カルボニルは天然のα-アミノアシルまたは天然のα-アミノアシル-天然のα-アミノアシル、YがH、(C-C)アルキルまたはベンジルであるC(OH)C(O)OY、Yが(C-C)アルキルであり、且つYが(C-C)アルキル、カルボキシ(C-C)アルキル、アミノ(C-C)アルキルまたはモノ-Nまたはジ-N、N(C-C)アルキルアミノアルキルであるC(OY)Y、YがHもしくはメチルであり、且つYがモノ-Nもしくはジ-N、N(C-C)アルキルアミノ、モルフォリノ、ピペリジン-1-イルまたはピロリジン-1-イルであるC(Y)Yである。
【0083】
プロドラッグシステムの使用は、T.Jarvinen、et al.、“Design and Pharmaceutical Applications of Prodrugs”in Drug Discovery Handbook(S.C.Gad、ed.、Wiley-Interscience、Hoboken、NJ、2005)、ch.17、pp.733-796に記載されている。プロドラッグの構成及び使用の他の選択肢は当該技術で既知である。本発明に係る方法または医薬組成物がカンナビノイド、テルペノイドまたは他の治療上活性がある作用物質を使用するまたは含む場合、化合物のプロドラッグ及び活性がある代謝産物は当該技術で既知の日常の技法を用いて特定されてもよい。たとえば、Bertolini、et al.、J.Med.Chem.、40、2011-2016(1997);Shan、et al.、J.Pharm.Sci.、86(7)、765-767;Bagshawe、Drug Dev.Res.、34、220-230(1995);Bodor、Advances in Drug Res.、13、224-331(1984);Bundgaard、Design of Prodrugs(Elsevier Press 1985);Larsen、Design and Application of Prodrugs、Drug Design and Development(Krogsgaard-Larsen、et al.、eds.、Harwood Academic Publishers、1991);Dear、et al.、J.Chromatogr.B、748、281-293(2000);Spraul、et al.、J.Pharmaceutical & Biomedical Analysis、10、601-605(1992);及びProx、et al.、Xenobiol.、3、103-112(1992)を参照のこと。
【0084】
本明細書で使用されるとき、用語「治療すること」、「治療」及び類似の用語は、本発明に係る組成物が投与された対象について中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病または状態(たとえば、EBS)が原因で生じたまたはそれに関連する病態における主観的であれ、客観的であれ、検出可能な改善を指す。たとえば、用語「治療すること」、「治療」及び類似の用語は、疼痛の減少、水疱形成の減少、瘢痕化の減少、二次感染の頻度と重症度の低下、中咽頭、食道及び眼粘膜に関与する粘膜水疱形成のような全身性の合併症の減少、創傷治癒の改善、掻痒の減少、角膜嚢胞の減少、認識される幸福と健康の心理的感覚の上昇、または他の主観的なもしくは客観的な基準を指すことができる。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床成績には、検出可能であろうと、検出不能であろうと、症状の緩和、疾病の程度の低下、疾病の安定化した(すなわち、悪化しない)状況、疾病の進行の遅延または鈍化、病状の改善または緩和、及び寛解(部分的であろうと、全体的であろうと)が挙げられるが、これらに限定されない。治療の成績は当該技術で既知の方法によって判定することができる。用語「治療すること」、「治療」及び類似の用語は、治療される疾病または状態の治癒を意味しない。本出願の目的では、治療は、治療される疾病、疾患または状態に関連する改善している症状の1以上を観察することによって、または上記で記載されているように治療される疾病、疾患または状態に関連する改善している臨床パラメータの1以上を観察することによって、モニターすることができる。
【0085】
本明細書で使用されるとき、用語「治療上有効な量」または「治療上有効な用量」は、それが投与されるものに対して治療効果を生じる本明細書に記載されている1以上の組成物の用量を指す。正確な用量は治療の目的に左右されるであろうし、既知の技法を用いて当業者によって解明可能であろう(たとえば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(vols.1-3、1992);Lloyd、The Art、Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy、20th Edition、2003、Gennaro、Ed.、Lippincott、Williams & Wilkinsを参照のこと)。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「カンナビジオール(単数)」、「CBD」または「カンナビジオール(複数)」は以下の化合物の1以上を指し、他の立体異性体(単数)または立体異性体(複数)が特定されない限り、化合物「Δ-カンナビジオール」を含む。これらの化合物は、(1)Δ-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル5-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);(2)Δ-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル4-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);(3)Δ-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル3-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);(4)Δ3、7-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチレンシクロヘックス-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);(5)Δ-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル2-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);(6)Δ-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル1-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール);及び(7)Δ-カンナビジオール(2-(6-イソプロペニル-3-メチル6-シクロヘキセン-1-イル)-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)である。
【0087】
これらの化合物は以下で言及されるように1以上のキラル中心と2以上の立体異性体とを有する:(1)Δ-カンナビジオールは2つのキラル中心及び4つの立体異性体を有する;(2)Δ-カンナビジオールは3つのキラル中心及び8つの立体異性体を有する;(3)Δ-カンナビジオールは2つのキラル中心及び4つの立体異性体を有する;(4)Δ3、7-カンナビジオールは2つのキラル中心及び4つの異性体を有する;(5)Δ-カンナビジオールは2つのキラル中心及び4つの立体異性体を有する;(6)Δ-カンナビジオールは2つのキラル中心及び4つの立体異性体を有する;ならびに(7)Δ-カンナビジオールは1つのキラル中心及び2つの立体異性体を有する。好まれる実施形態では、カンナビジオールは具体的にはΔ-カンナビジオールである。具体的に言及されない限り、「カンナビジオール(単数)」、「CBD」または「カンナビジオール(複数)」または上記で呼ばれたような具体的なカンナビジオール化合物(1)~(7)に対する言及には、参照によって含められる化合物すべての考えられる立体異性体すべてが含まれる。一実施形態では、「Δ-カンナビジオール」は、たとえば、Cannabis sativa、Cannabis indicaまたはCannabis属の別の植物のような植物またはその抽出物に存在するΔ-カンナビジオールの立体異性体の混合物であることができる。別の実施形態では、「Δ-カンナビジオール」は、たとえば、Cannabis sativa、Cannabis indicaまたはCannabis属の別の植物のような植物またはその抽出物に存在するΔ-カンナビジオールの立体異性体の混合物であり、その際、立体異性体の前記混合物は異性体の天然に存在する比であり、またはおよそその比である。別の実施形態では、「Δ-カンナビジオール」は単一の立体異性体である。
【0088】
本明細書で使用されるとき、用語「カルビノール」または「CBN」は6,6,9-トリメチル-3-ペンチルベンゾ[c]クロメン-1-オールを指す。CBNは二重結合の異性体も立体異性体も有さない。
【0089】
ケラチン
ケラチンは約30タンパク質のファミリーであり;それらは上皮細胞の細胞質で最も豊富な構造タンパク質であり、それらは10~12nm幅の中間径フィラメント(IF)のネットワークを形成する。ケラチンタンパク質は、IFをコードする遺伝子のI型とII型の亜群に区分けするヒトのゲノムにて約54を番号付ける保存された遺伝子の大きなファミリーによってコードされている。それぞれ1つのポリペプチド鎖をコードする28のI型(K9~K28、K31~K40)及び26のII型(K1~K8、K71~K86)がある。I型タンパク質は、さらに大きく(52~70kDa)、塩基性~中性で(pI約5.4~8.4)あるII型タンパク質よりも小さく(40~64kDa)、さらに酸性(約4.7~6.1)である傾向がある。I型ケラチンはK9~K20を含み、II型はK1~K8を含む。
【0090】
I型とII型のケラチンのほとんどの組み合わせは試験管内で共重合することができることが知られている;しかしながら、ケラチンは分化経路に独特である生体内での特定のペアとして同時発現されることが多い。ケラチンの重合はI型とII型のタンパク質を含むコイルドコイルヘテロ二量体の形成で義務的に開始する。これは細胞骨格の構造及び強度に寄与する。ケラチン遺伝子の調節は個々にまたはペアとして上皮の種類、細胞分化の段階及び背景(たとえば、疾病)に左右される。フィラメント構築の間に、各型の1つである2つのケラチンポリペプチドは先ず平行なヘテロ二量体を形成し、その中でロッドドメインがコイルドコイル構造に集合し、次いで他の二量体とのさらなる会合を受け、四量体を生じる。四量体の会合は原フィラメントを生じ、最終的には成熟フィラメントを生じる。理論によって束縛されることを望まないで、本発明者らは、特定の背景では、細胞または組織で通常発現されない1以上のケラチンを含む前記細胞または組織における1以上のケラチンの遺伝子転写、タンパク質合成及び/または活性の調節が中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病または状態を治療することができることを発見した。
【0091】
有糸分裂で活性がある基底層における角化細胞は常にK5、K14及びK15を発現している。分化に関与する際、それらはK5/K14/K15の転写を下方調節し、重層組織の間で変化する新しいセットのケラチンペアの発現を活性化する。たとえば、皮膚及び歯肉を覆うもののような角化上皮では、分化している角化細胞はK1/K10を発現する。K6、K16及びK17は、環境負荷(たとえば、組織の損傷、UV曝露、ウイルス感染)の条件下で毛包間表皮の有糸分裂後の層にて一般に他のケラチンを犠牲にして誘導される。
【0092】
図1は、表皮水疱症(EB)の様々なカテゴリー及び具体的な機能障害タンパク質とのその関連を示す表である。図2は、種々の型のEBに関連する成分及び水疱形成のレベルを示す皮膚の構造層及びタンパク質を示す図である。本明細書に記載されているように、任意で他の薬学上活性がある化合物との併用での適当なカンナビノイドまたはカンナビノイドの組み合わせの使用、種々のケラチンの転写、タンパク質合成及び/または活性を治療効果のために調節することができる。特に、本明細書に記載されているように、カンナビノイドまたはカンナビノイドの組み合わせ、特にCBIアンタゴニストまたは部分アゴニストの使用を用いてK14の転写を下方調節することができ、及び/またはK15の転写を上方調節することができる。
【0093】
カンナビノイド
カンナビノイドは、皮膚を含むヒトの身体全体にわたって細胞にてカンナビノイド受容体を活性化することが知られる化学物質の群である。フィトカンナビノイドは大麻植物に由来するカンナビノイドである。それらは植物から単離することができ、または合成で製造することができる。エンドカンナビノイドはヒトの身体で見いだされる内在性のカンナビノイドである。
【0094】
カンナビノイドは細胞の表面に存在するカンナビノイド受容体と相互作用することによってその効果を発揮する。今日まで、2種類のカンナビノイド受容体、CB1受容体及びCB2受容体が特定されている。これら2つの受容体は約48%のアミノ酸配列同一性を共有し、異なる組織に分布し、また異なるシグナル伝達メカニズムを有する。それらはアゴニスト及びアンタゴニストに対するその感度でも異なる。本明細書に記載されているように、特定のカンナビノイドはCB1エンドカンナビノイド受容体のアンタゴニストであり、変異したK14及びK5の過剰発現をもたらす経路を調節してもよく、表皮・真皮接合部の(再)確立をもたらすK15の生産に影響を与えてもよい。それらはまた、たとえば、抗炎症、創傷治癒及び皮膚再生、疼痛及び掻痒の軽減、及び抗菌特性のようなより良い治療選択肢のためにEBSのような中間径フィラメントに関連する疾病の顕著な特徴も調節する。
【0095】
従って、以下の基準:(1)代償性ケラチンを上方調節し、及び/または変異したケラチンの産生を下方調節することによって中間径フィラメントの機能障害に関連する疾病または状態(たとえば、EBS)を有する患者について皮膚の構造的完全性を復元する古典的カンナビノイド、非古典的カンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドを含むカンナビノイドまたはカンナビノイドの誘導体もしくは類似体;(2)電気的細胞・基質インピーダンスセンシング(ECIS)創傷治癒アッセイで見えるような有効性に与えられる優先性で創傷治癒及び皮膚または角膜の再生を刺激する(慢性モデル)古典的カンナビノイド、非古典的カンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドを含むカンナビノイドまたはカンナビノイドの誘導体もしくは類似体;(3)抗炎症効果を提供する古典的カンナビノイド、非古典的カンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドを含むカンナビノイドまたはカンナビノイドの誘導体もしくは類似体;または(4)疼痛軽減を提供する古典的カンナビノイド、非古典的カンナビノイド、アミノアルキルインドールまたはエイコサノイドを含むカンナビノイドまたはカンナビノイドの誘導体もしくは類似体;を満たす薬剤の組み合わせをスクリーニングし、特定するために試験管内及び生体内の方法が本明細書に記載されている。(1)の好まれる実施形態では、代償性ケラチンK15を上方調節し、及び/または変異したケラチンK14の産生を下方調節することによってEB(たとえば、EBS)のような疾病または状態を有する患者について、薬剤の組み合わせは皮膚の構造的完全性を復元する。
【0096】
通常、方法は、これら4つの目的:炎症を軽減すること;創傷治癒及び皮膚再生を促進すること;疼痛及び掻痒を軽減すること;ならびに感染の発生を低減することの1以上を達成する。また、通常、以下の治療活性:(a)皮膚または他の上皮構造のアンカリング機能を復元すること;(b)K5及びK14の一方または双方を下方調節すること;(c)K15を上方調節すること;(d)E-カドヘリンのTGF-βが誘導する下方調節を救済すること;及び(e)MCP-1の産生を増やすこと;の1以上を方法が達成し、または組成物が提供することができる。これらの基準の1以上を満たす個々のカンナビノイドまたはカンナビノイドの組み合わせが以下に記載されている。
【0097】
通常、カンナビノイドの治療上有効な組成物は、カンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)、カンナビジオール:カンナビノール(0.1:1μM)、及びカンナビジオール:カンナビノール(1:1μM)、または0.1:10~10:0.1、好ましくは1:10~10:1、または1:5~5:1、1:4~4:1、1:3~3:1、1:2~2:1、または1:1のカンナビジオール:カンナビノールのモル比から成る群から選択されるカンナビジオールとカンナビノールの混合物である。好ましくはカンナビノイドの治療上有効な量はカンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)である。特に好まれるカンナビジオールは本明細書に記載されているようなΔ-カンナビジオールであり;これはカンナビジオールの天然に存在する形態であるが、非芳香族6員環における二重結合の位置が異なる他の位置異性体を代わりに使用することができる。
【0098】
或いは、本発明に係る方法にて他のカンナビノイドを使用することができる。本明細書に記載されている方法を用いてそのようなカンナビノイドをスクリーニングし、好まれるカンナビノイド及びその組み合わせを特定することができる。これらのカンナビノイドには、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、合成のカンナビノイドHU-210(6aR,10aR)-9-(ヒドロキシメチル)-6,6-ジメチル-3-(2-メチルオクタン-2-イル)-6H,6aH,7H,10H,10aH-ベンゾ[c]イソクロメン1-オール)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメバリン(CBCV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロバリン(CBGV)、カンナビエルソイン(CBE)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビバリン(CBV)、及びカンナビトリオール(CBT)が挙げられるが、これらに限定されない。テトラヒドロカンナビバリン(THCV)及びカンナビゲロールモノメチルエーテル(CBGM)を含むさらに他のカンナビノイドを使用することができる。カンナビクロメン酸(CBCA)、Δ-テトラヒドロカンナビノール酸(THCA);及びカンナビジオール酸(CBDA)を含む追加のカンナビノイドが存在し、使用することができ;これらの追加のカンナビノイドはその構造におけるカルボン酸基の存在を特徴とする。さらに他のカンナビノイドには、ナビロン、リモナバント、JWH-018(ナフタレン-1-イル-(1-ペンチルインドール-3-イル)メタノン)、JWH-073ナフタレン-1-イル-(1-ブチルインドール-3-イル)メタノン、CP-55940(2-[(1R,2R,5R)-5-ヒドロキシ-2-(3-ヒドロキシプロピル)シクロヘキシル]-5-(2-メチルオクタン-2-イル)フェノール)、ジメチルヘプチルピラン、HU-331(3-ヒドロキシ-2-[(1R)-6-イソプロペニル-3-メチルシクロヘックス-2-エン-1-イル]-5-ペンチル-1、4-ベンゾキノン)、SR144528(5-(4-クロロ-3-メチルフェニル)-1-[(4-メチルフェニル)メチル]-N-[(1S,2S,4R)-1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)、WIN55,212-2((11R)-2-メチル11-[(モルフォリン-4-イル)メチル]-3-(ナフタレン-1-カルボニル)-9-オキサ-1-アザトリシクロ[6.3.1.012]ドデカ-2,4(12),5,7-テトラエン)、JWH-133((6aR,10aR)-3-(1,1-ジメチルブチル)-6a,7,10,10a-テトラヒドロ-6,6,9-トリメチル6H-ジベンゾ[b,d]ピラン)、レボナトラドール、及びAM-2201(1-[(5-フルオロペンチル)-1H-インドール-3-イル]-(ナフタレン-1-イル)メタノン)が挙げられる。他のカンナビノイドには、Δ-テトラヒドロカンナビノール(Δ-THC)、11-ヒドロキシ-Δ-テトラヒドロカンナビノール、Δ11-テトラヒドロカンナビノール、及び11-ヒドロキシ-テトラカンナビノールが挙げられる。別の選択肢では、これらカンナビノイドの類似体または誘導体を以下にさらに記載されているように使用することができる。
【0099】
合成のカンナビノイドも、Attalaらへの米国特許第9,394,267号;Herkenrothらへの米国特許第9,376,367号;Gijsenらへの米国特許第9,284,303号;Travisへの米国特許第9,173,867号;Fulpらへの米国特許第9,133,128号;Jonesらへの米国特許第8,778,950号;Adam-Worrallらへの米国特許第7,700,634号;Davidsonらへの米国特許第7,504,522号;Barthらへの米国特許第7,294,645号;Kruseらへの米国特許第7,109,216号;Thomasらへの米国特許第6,825,209号;及びMittendorfらへの米国特許第6,284,788号にて開示されている。
【0100】
Attalaらへの米国特許第9,394,267号は、式(C-I)
【化1】
の合成カンナビノイドを開示しており、式中、
(1)RはNH、NHR、及びNRから成る群から選択され、その任意の炭素原子は任意で置換されてもよく;
(2)Rは水素、アリール、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、及びアルキニルから成る群から選択され、その任意の炭素原子は任意で置換されてもよく;
(3)Rは水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから成る群から選択され、その任意の炭素原子は任意で置換されてもよく;
(4)R及びRは独立して変化し、且つアリール、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、及びアルキニルから成る群から選択され、その任意の炭素原子は任意で置換されてもよい。
【0101】
Attalaらへの米国特許第9,394,267号は、式(C-II)
【化2】
の合成カンナビノイドも開示しており、式中、
(1)RはNH、NHR、及びNRから成る群から選択され、その任意の炭素原子は任意で置換されてもよく;
(2)Rは水素、アリール、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、及びアルキニルから成る群から選択され、その任意の炭素原子は任意で置換されてもよく;
(3)R及びRは独立して水素、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから成る群から選択され;
(4)R及びRは独立してアリール、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル、及びアルキニルから成る群から選択され;
(5)Rが水素である場合、Rはt-ブチル、ブロモ、メトキシ、または部分式(C-II(a))の部分ではない。
【化3】
【0102】
Herkenrothらへの米国特許第9,376,367号はカンナビノイドカルボン酸及びカンナビノイドカルボン酸の塩を開示している。
【0103】
Gijsenらへの米国特許第9,284,303号は置換された複素環基を持つベンズイミダゾールカンナビノイドアゴニストを開示している。
【0104】
Travisへの米国特許第9,173,867号は、式(C-III):
【化4】
のカンナビノイド誘導体を開示しており、式中、
(1)R及びRはそれぞれ水素であり;
(2)Rは(W)-Y-(Z)であり、その際、(a)WはC-C12直鎖または分岐鎖のアルキルであり;(b)Yは原子価結合であり;(c)ZはC-C12アルキルであり;及び(d)m及びnは異なり、且つそれぞれ0または1のいずれかであり;
(3)R及びR6’はそれぞれメチルであり;
(4)Rはメチルであり;
(5)QはOであり;
(6)環Cの破線はΔ8-9での二重結合を表す。
【0105】
Fulpらへの米国特許第9,133,128号は、式(C-IV):
【化5】
のN-ピペリジン含有カンナビノイド類似体を開示しており、式中、
(1)R及びRは、Cl、F、Br、OH、任意で置換されたC-C10アルキル、任意で置換されたC-C10アルコキシ、任意で置換されたC-Cアルケニル、任意で置換されたC-Cアルキニル、NR1011、NHCOR10、NHCO10、CHOR10、CONR1011、CO10、CN、CF、NO、N、C-Cアルキルthio、R10SO、R10SO、CFS、及びCFSOから成る群から独立して選択される置換基であり;
(2)RはHまたはC-Cアルキルであり;
(3)R及びRはそれらが連結されるNと一緒になってピペリジン環を形成し、それは4位にてNR1011、NR10COR11、NR10SO11、NHCONR1011、NR10COOR11;及びCONR1011から成る群から選択される少なくとも1つの置換基で置換され;
(4)R10及びR11は独立してH及びC-C10アルキルから選択され;
(5)a及びbはそれぞれ独立して0~5の整数である。
【0106】
Jonesらへの米国特許第8,778,950号は,(1aS,5aS)-2-ピラジン-2-イル-1a,2,5,5a-テトラヒドロ-1H-2,3-ジアザ-シクロプロパ[a]ペンタレン-4-カルボン酸((S)-1-ヒドロキシメチル2,2-ジメチルプロピル)-アミド及び(1aS,5aS)-2-(4-オキシ-ピラジン-2-イル)-1a,2,5,5a-テトラヒドロ-1H-2,3-ジアザ-シクロプロパ[a]ペンタレン-4-カルボン酸((S)-1-ヒドロキシメチル2,2-ジメチルプロピル)-アミドを含むピラジン誘導体を開示している。
【0107】
Adam-Worrallらへの米国特許第7,700,634号は、7-クロロ-3-(5-{[N-エチル-N-(2-メトキシエチル)アミノ]メチル}-[1,2,4]-チアジアゾール-3-イル)-1-(テトラヒドロピラン-4-イル)メチル-1H-インドール;7-クロロ-3-{5-[(ピロリジン-1-イル)メチル]-[1,2,4]-チアジアゾール-3-イル}-1-(テトラヒドロピラン-4-イル)メチル-1H-インドール;7-クロロ-3-(5-{[N-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミノ]メチル}-[1,2,4]-チアジアゾール-3-イル)-1-(テトラヒドロピラン-4-イル)メチル-1H-インドール;7-クロロ-3-(4-{[N-(2-ヒドロキシエチル)-N-イソプロピルアミノ]メチル}-[1,3]-チアゾール-2-イル)-1-(テトラヒドロピラン-4-イル)メチル-1H-インドール;7-クロロ-3-(4-{[N-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミノ]メチル}-[1,3]-チアゾール-2-イル)-1-(テトラヒドロピラン-4-イル)メチル-1H-インドール;7-クロロ-3-(4-{[N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアミノ]メチル}-[1,3]-チアゾール-2-イル)-1-(テトラヒドロピラン-4-イル)メチル-1H-インドール;及び7-クロロ-3-{5-[(2,2-ジメチルピロリジン-1-イル)メチル]-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル}-1-(テトラヒドロピラン-4-イル)メチル-1H-インドールを含むインドリル-3-イルカンナビノイド類似体を開示している。
【0108】
Davidsonらへの米国特許第7,504,522号は式(C-V):
【化6】
のアゼチジンカルボキサミンカンナビノイド誘導体を開示しており、式中、
(1)R及びRはそれぞれ独立してアリールから選択され;
(2)Rは水素またはアルキルであり;
その際、R及びRの少なくとも一方がオルソ位または[--CH-O--]基への連結点に関連した位置で非水素置換基を有する。
【0109】
Barthらへの米国特許第7,294,645号は、式(C-VI):
【化7】
のカンナビノイド類似体としてのN’-(1、5-ジフェニル-1H-ピラゾール-イル)スルホンアミドの誘導体を開示しており、式中、
(1)Rは(C-C)アルキル;非置換のまたは(C-C)アルキル基で1回もしくは数回置換される(C-C)シクロアルキル;非置換のまたは炭素環上にて(C-C)アルキルによって1回もしくは数回置換される(C-C)シクロアルキルメチル;非置換のまたはハロゲン原子、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、シアノ、トリフルオロメチルラジカル、トリフルオロメトキシラジカル、S(O)Alk基、(C-C)アルキルカルボニル基、フェニルから独立して選択される置換基によって一置換、二置換または三置換されるフェニル;非置換のまたはハロゲン原子、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシから独立して選択される置換基によって一置換または二置換されるベンジル;トリフルオロメチルラジカル;非置換のまたはハロゲン原子もしくはイソオキサゾリルで置換されるチエニルを表し;
(2)Rは水素原子または(C-C)アルキルを表し;
(3)Rは水素原子または(C-C)アルキルを表し;
(4)R、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、トリフルオロメチルラジカルまたはS(O)Alk基を表し;
(5)nは0、1または2を表し;
(6)Alkは(C-C)アルキルを表す。
【0110】
Kruseらへの米国特許第7,109,216号は式(C-VII):
【化8】
の1H-イミダゾール誘導体であるカンナビノイド類似体を開示しており、式中、
(1)Rは、フェニル、チエニル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルまたはトリアジニルを表し、その基は、同一であることができ、もしくはそれとは異なることができる基C-Cアルキルもしくはアルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメトキシ、ニトロ、アミノ、モノ-またはジアルキル(C-C)-アミノ、モノ-またはジアルキル(C-C)-アミド、(C-C)-アルコキシカルボニル、カルボキシル、シアノ、カルバモイル及びアセチルに由来する1、2、3または4の置換基Yによって置換されてもよく、または、Rが4-ピリジニルである場合、Rはハロゲン原子またはシアノ、カルバモイル、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、フルオロアセチル、プロピオニル、スルファモイル、メタンスルホニル、メチルスルファニルまたは分岐鎖のもしくは非分岐鎖C-Cアルキル基を表すという条件で、Rはナフチルを表し、そのC-Cアルキル基は1~3のフルオロ原子またはブロモ、クロロ、ヨード、シアノもしくはヒドロキシの基で置換されてもよく;
(2)Rはフェニルまたはピリジニルを表し、その基は1~4の置換基Yで置換されてもよく、それは同一であることができ、もしくは異なることができ、その際、Yは上述された意味を有し、またはRは、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルもしくはトリアジニルを表し、その基は1もしくは2の置換基Yで置換されてもよく、それは同一であることができ、もしくは異なることができ、またはRは基(N,O,S)に由来する1または2のヘテロ原子を有する5員環芳香族複素環を表し、そのヘテロ原子は同一であることができ、もしくは異なることができ、その5員環芳香族複素環は同一であることができ、もしくは異なることができる1 2置換基Yで置換されてもよく、またはRはナフチルを表し;
(3)RはH、分岐鎖のまたは非分岐鎖のC-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルケニル、C-Cシクロアルケニルを表し、その基はイオウ原子、酸素原子または窒素原子を含有してもよく;
(4)Rは分岐鎖のまたは非分岐鎖のC-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cシクロアルキルオキシ、C-Cシクロアルキル、C-Cビシクロアルキル、C-C10トリシクロアルキル、C-CアルケニルC-Cシクロアルケニルを表し、それらの基は任意で基(O、N、S)に由来する1以上のヘテロ原子を含有してもよく、且つそれらの基はヒドロキシ基もしくは1もしくは2のC-Cアルキル基もしくは1~3のフルオロ原子によって置換されてもよく、またはRはベンジルもしくはフェネチル基を表し、その芳香環は、同一であることができ、もしくは異なることができる、基C-Cアルキルもしくはアルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、トリフルオロメチル、トリフルオロメチルチオ、トリフルオロメトキシ、ニトロ、アミノ、モノ-もしくはジアルキル(C-C)-アミノ、モノ-もしくはジアルキル(C-C)-アミド、(C-C)-アルキルスルホニル、ジメチルスルフアミド、C-C-アルコキシカルボニル、カルボキシル、トリフルオロメチルスルホニル、シアノ、カルバモイル、スルファモイル及びアセチルに由来する1~5の置換基Zで置換されてもよく、またはRはフェニル基もしくはピリジニル基を表し、その基は1~4の置換基Zで置換され、その際、Zは上記で示されたような意味を有し、またはRはピリジニル基を表し、または、Rがハロゲン原子もしくはシアノ、カルバモイル、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、フルオロアセチル、プロピオニル、スルファモイル、メタンスルホニル、メチルスルファニルもしくはC-Cアルキル基を表し、そのC-Cアルキル基が1~3のフルオロ原子もしくはブロモ、クロロ、ヨード、シアノもしくはヒドロキシ基で置換されてもよいという条件でRはフェニル基を表し、または、Rが水素原子もしくはメチル基を表すという条件でRは基NRを表し、その際、R及びRは同一であり、もしくは異なっており、分岐鎖のもしくは非分岐鎖のC-Cアルキルを表し、またはR及びRはそれらが連結される窒素原子と一緒になって4~10の環原子を有する飽和もしくは不飽和の、単環式もしくは二環式の複素環基を形成し、その複素環基は基(N,O,S)に由来する1もしくは2のヘテロ原子を含有し、そのヘテロ原子は同一であることができ、もしくは異なることができ、その複素環基は、C-Cアルキル基もしくはヒドロキシ基で置換されてもよく、またはR及びRはそれらが連結される窒素原子と一緒になって4~10の環原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環基を形成し、その複素環基は基(N,O,S)に由来する1もしくは2のヘテロ原子を含有し、そのヘテロ原子は同一であることができ、もしくは異なることができ、その複素環基はC-Cアルキル基もしくはヒドロキシ基で置換されてもよく;
(5)Rは水素原子またはハロゲン原子またはシアノ、カルバモイル、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、フルオロアセチル、プロピオニル、スルファモイル、メタンスルホニル、メチルスルファニルまたは分岐鎖のまたは非分岐鎖のC-Cアルキル基を表し、そのC-Cアルキル基は、1~3のフルオロ原子またはブロモ、クロロ、ヨード、シアノまたはヒドロキシ基で置換されてもよい。
【0111】
Thomasらへの米国特許第6,825,209号は、アミド類似体であり、式(C-VIII):
【化9】
の化合物を含むカンナビノイドの類似体を開示しており、式中、Rは、7~12炭素の直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基またはN-ピペリジニルである。
【0112】
Mittendorfらへの米国特許第6,284,788号は、古典的なカンナビノイド、非古典的なカンナビノイド、アミノアルキルインドール及びエイコサノイドを含む多数のカンナビノイドの誘導体及び類似体を開示している。
【0113】
別の選択肢では、カンナビノイドはエンドカンナビノイドまたはその誘導体または類似体であることができる。エンドカンナビノイドには、アナンダミド、2-アラキドノイルグリセロール、2-アラキドニルグリセリルエーテル、N-アラキドノイルドーパミン、及びビローダミンが挙げられるが、これらに限定されない。7,10,13,16-ドコサテトラエノイルエタノールアミド-オレアミド、ステアロイルエタノールアミドを含むエンドカンナビノイドの多数の類似体が知られており、及びホモ-γ-リノレノイルエタノールアミンも知られている。
【0114】
一般に、本発明に係る方法及び組成物での使用に好適なカンナビノイドは、CB2カンナビノイド受容体について選択性である、または2つのカンナビノイド受容体について選択性ではなく、CB1カンナビノイド受容体もしくはCB2カンナビノイド受容体のいずれかに結合する。好ましくは、本発明に係る方法及び組成物での使用に好適なカンナビノイドは、CB2カンナビノイド受容体について選択性である。場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB2のアンタゴニスト(たとえば、選択性または非選択性のアンタゴニスト)である。
【0115】
場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB2のアンタゴニスト(たとえば、選択性または非選択性のアンタゴニスト)である。カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB2の逆アゴニスト(たとえば、選択性または非選択性の逆アゴニスト)である。場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB2の中性アンタゴニスト(たとえば、選択性または非選択性の中性アンタゴニスト)である。場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB2の部分アゴニスト(たとえば、選択性または非選択性の中性アゴニスト)である。
【0116】
一部の実施形態では、本発明に係る方法及び組成物での使用に好適なカンナビノイドは、CB1カンナビノイド受容体について選択性である。場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB1のアンタゴニスト(たとえば、選択性または非選択性のアンタゴニスト)である。場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB1の逆アゴニスト(たとえば、選択性または非選択性の逆アゴニスト)である。場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB1の中性アンタゴニスト(たとえば、選択性または非選択性の中性アンタゴニスト)である。場合によっては、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物におけるカンナビノイドの1つはCB1の部分アゴニスト(たとえば、選択性または非選択性の中性アゴニスト)である。
【0117】
通常、カンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物は任意で1以上のテルペノイドを含む医薬組成物で投与される。医薬組成物には、(1)治療上有効な量のカンナビノイドまたはカンナビノイドの混合物と、(2)組成物の局所投与用の少なくとも1つの薬学上許容できるキャリアとが含まれる。好適な薬学上許容できるキャリアには、ラブラソール(カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド)、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルが挙げられる。好まれる医薬組成物には薬学上許容できるキャリアとしてラブラソール、ポロキサマー407、レシチン及びパルミチン酸イソプロピルが含まれる。薬学上許容できるキャリアまたは薬学上許容できるキャリアの組み合わせについてのさらなる選択肢は本明細書に記載されている。
【0118】
テルペノイド
テルペノイドは独力でカンナビノイド活性を有さず、カンナビノイド受容体に結合しないけれども、それはカンナビノイドの活性と相互作用し、それを強化する。一部の実施形態では、方法はさらに、同一のまたは異なる医薬組成物での治療上有効な量のテルペノイドの同時または逐次の投与を含むことができる。
【0119】
投与されるカンナビノイドが、CBD(カンナビジオール)、CBG(カンナビゲロール)またはCBN(カンナビノール)である場合、好適なテルペノイドには、ボルネオール、カルボフィレン、1,8-シネオール、p-シメン、フェンコン、α-フムレン、ケンペロール、リモネン、リノール酸、α-リノレン酸、ルテオリン、β-ミルセン、オレイン酸、オリエンチン、α-ピネン、フィトール、クエルセチン、セリネン、シトステロール、テルピネノール-4、N-トランス-カフェオイルチラミン、N-トランス-クマロイルチラミン、N-トランス-フェルロイルチラミン、及びビテキシンが挙げられるが、これらに限定されない。カンナビノイドとテルペノイドのこの組み合わせは抗炎症活性を促進することにおいて特に効果的である。
【0120】
投与されるカンナビノイドがCBC(カンナビクロメン)、CBD、CBGまたはCBNである場合、好適なテルペノイドには、酸化カリオフィレン、カンフェン、1,8-シネオール、p-シメン、ケンペロール、リモネン、リナロール、ネロリドール、α-ピネン、β-ピネン、フィトール、β-シトステロール、及びN-トランス-カフェオイルチラミンが挙げられるが、これらに限定されない。カンナビノイドとテルペノイドのこの組み合わせは抗菌活性を促進することにおいて特に効果的である。
【0121】
投与されるカンナビノイドがCBDまたはΔ-THC(Δ-テトラヒドロカンナビノール)である場合、好適なテルペノイドには、アピゲニン、カリオフィレン、リノール酸、ルテオリン、クエルセチン、及びフィトールが挙げられるが、これらに限定されない。カンナビノイドとテルペノイドのこの組み合わせは抗掻痒活性を促進することにおいて特に効果的である。
【0122】
カンナビノイドがCBC、CBD、CBG、CBN、またはΔ-THC(Δ-テトラヒドロカンナビノール)である場合、好適なテルペノイドには、ボルネオール、カリオフィレン、p-シメン、リナロール、β-シトステロール、及びビテキシンが挙げられるが、これらに限定されない。カンナビノイドとテルペノイドのこの組み合わせは抗疼痛活性を促進することにおいて特に効果的である。
【0123】
カンナビノイドがCBD、CBG、CBN、Δ-THC、またはΔ-THCである場合、好適なテルペノイドには、ボルネオール、リナロール、及びケンペロールが挙げられるが、これらに限定されない。カンナビノイドとテルペノイドのこの組み合わせは創傷治癒活性を促進することにおいて特に効果的である。
【0124】
医薬組成物
本発明に係る医薬組成物は1以上の賦形剤を含むことができる。皮膚への塗布を対象とする局所組成物での使用に好適であるそのような賦形剤には、保存剤;増粘剤;緩衝液;等張剤;湿潤剤、可溶化剤及び乳化剤;酸性化剤;抗酸化剤;アルカリ化剤;運搬剤;キレート剤;錯化剤;溶媒;懸濁剤または粘度上昇剤;油;透過増強剤;ポリマー;硬化剤;タンパク質;炭水化物;及び増量剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
医薬製剤の技術分野で一般に知られるように、特定の賦形剤は、賦形剤の濃度、組成物における他の賦形剤、組成物の物理的形態、組成物における活性がある作用物質の濃度、組成物の投与の意図される経路及び他の因子に応じて、特定の医薬組成物におけるこれらの機能の1以上を満たすことができる。以下のカテゴリーにおける特定の賦形剤の引用は別のカテゴリー(単数)またはカテゴリー(複数)における賦形剤の考えられる使用を排除するようには意図されない。
【0126】
液体キャリアは、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、グリセロール、及びエタノールから成る群から選択される液体キャリアであることができるが、これらに限定されない。
【0127】
増粘剤は、グリセロール及びプロピレングリコールから成る群から選択される増粘剤であることができるが、これらに限定されない。
【0128】
等張剤は、マンニトール及びソルビトールから成る群から選択される多価アルコール;塩化ナトリウム;及び塩化カリウムであることができるが、これらに限定されない。
【0129】
湿潤剤、可溶化剤または乳化剤は一般に界面活性剤である。通常、界面活性剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ドクサートナトリウム、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポロキサマー、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40、水素添加ヒマシ油、ステアリン酸ポリオキシル50、ポリオキシル10-オレイルエーテル、ポリオキシル20、セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンモノラウリン酸、ソルビタンモノオレイン酸、ソルビタンモノパルミチン酸、ソルビタンモノステアリン酸、チロキサポール、アラビアゴム、コレステロール、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール、レシチン、モノ-及びジ-グリセリド、モノエタノールアミン(補助剤)、オレイン酸(補助剤)、オレイルアルコール(安定剤)、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素添加ヒマシ油、ポリオキシル10-オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、プロピレングリコール二酢酸、プロピレングリコールモノステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ソルビタンモノラウリン酸、ソルビタンモノオレイン酸、ソルビタンモノパルミチン酸、ソルビタンモノステアリン酸、ステアリン酸、トリエタノールアミン、乳化剤ワックス、セトマクロゴール、及びセチルアルコールから成る群から選択される。
【0130】
局所適用用の医薬組成物は皮膚軟化剤を含むことができる。本明細書で使用されるとき、用語「皮膚軟化剤」は皮膚または他の粘膜を軟化し、滑らかにし、その液体量を改善する疎水性の作用物質を指す。使用に好適な皮膚軟化剤の例には、イソステアリン酸誘導体、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン油、ダイマー酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、ジメチルイソソルビド、マレイン酸化ダイズ油、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、セチルアルコール、乳酸セチル、リシノール酸セチル、酢酸トコフェリル、アセチル化ラノリンアルコール、酢酸セチル、フェニルトリメチコン、オレイン酸グリセリル、リノール酸トコフェリル、コムギ胚芽グリセリド、プロピオン酸アラキジル、乳酸ミリスチル、デシル-オレイン酸、プロピレングリコールリシノール酸、ラノリン酸イソプロピル、テトラステアリン酸ペンタエリスリチル、ネオペンチルグリコールジカプリル酸/ジカプリン酸、水素添加ココ-グリセリド、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、クエン酸トリイソセチル、オクチルドデカノール、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ブドウ種子油、1以上のセラミド、シクロメチコン、及びそれらの混合物が挙げられる。他の好適な皮膚軟化剤の他の例は、Cosmetic Bench Reference,pp.1.19-1.22(1996)にも見いだすことができる。当業者は他の皮膚軟化剤が本発明で有用であることを十分に理解するであろう。
【0131】
保存剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム溶液、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、デヒドロ酢酸、ジアゾリジニル尿素、エチルパラベン、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、フェノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、及びチモールから成る群から選択され得る。
【0132】
組成物は、酢酸、炭酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸、クエン酸カリウム、メタリン酸カリウム、リン酸カリウム一塩基、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウムの溶液、二塩基リン酸ナトリウム、一塩基リン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、Tris(Tris(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、MOPS(3-(N-モルフォリノ)プロパンスルホン酸)、HEPES(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)、ACES(2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)アミノ]エタンスルホン酸)、ADA(N-(2-アセトアミド)2-イミノジ酢酸)、AMPSO(3-[(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-プロパンスルホン酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、ビシン(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチルグリシン)、ビス-Tris(ビス(2-ヒドロキシエチル)イミノ-tris(ヒドロキシメチル)メタン、CAPS(3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸)、CAPSO(3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)、CHES(2-(N-シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)、DIPSO(3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ]-2-ヒドロキシ-プロパンスルホン酸)、HEPPS(N-(2-ヒドロキシエチルピペラジン)-N’-(3-プロパンスルホン酸)、HEPPSO(N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、MES(2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸)、トリエタノールアミン、イミダゾール、グリシン、エタノールアミン、リン酸塩、MOPSO(3-(N-モルフォリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、POPSO(ピペラジン-N,N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)、TAPS(N-tris[ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸)、TAPSO(3-[N-tris(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシ-プロパンスルホン酸)、TES(N-tris(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、トリシン(N-tris(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールから成る群から選択される緩衝液を含むことができる。
【0133】
通常、酸性化剤は、酢酸、クエン酸、フマル酸、ヒドロ塩素酸、希釈ヒドロ塩素酸、リンゴ酸、硝酸、リン酸、希釈リン酸、硫酸、及び酒石酸から成る群から選択される。
【0134】
通常、抗酸化剤は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化イオウ、及びトコフェロールから成る群から選択される。
【0135】
通常、アルカリ化剤は、強アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、及びトロラミンから成る群から選択される。
【0136】
運搬剤は、コーン油、鉱物油、ピーナツ油、ゴマ油、静菌性塩化ナトリウム及び静菌性水から成る群から選択することができる。
【0137】
キレート剤は、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、及びサリチル酸塩から成る群から選択することができる。
【0138】
錯化剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸の塩、ゲンチジン酸エタノールアミド、及び硫酸オキシキノリンから成る群から選択することができる。
【0139】
溶媒は、アセトン、エタノール、希釈アルコール、アミレン水和物、安息香酸ベンジル、ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロホルム、コーン油、綿実油、酢酸エチル、グリセロール、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、鉱物油、オレイン酸、ピーナツ油、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、プロピレングリコール、ゴマ油、水、無菌水、及び精製水から成る群から選択することができる。
【0140】
通常、懸濁剤及び/または粘度上昇剤は、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、精製ベントナイト、マグマベントナイト、カルボマー、カルボマー934p、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム12、カラーギーナン、微細結晶性及びカルボキシメチルセルロースナトリウムセルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、珪酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、ペクチン、酸化ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化珪素、コロイド状二酸化珪素、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、ビーガム、及びキサンタンゴムから成る群から選択される。
【0141】
通常、油は、ラッカセイ油、鉱物油、オリーブ油、ゴマ油、綿実油、ベニバナ油、コーン油、及びダイズ油から成る群から選択される。
【0142】
通常、透過増強剤は、モノヒドロキシまたはポリヒドロキシアルコール、一価または多価アルコール、飽和または不飽和脂肪アルコール、飽和または不飽和脂肪エステル、飽和または不飽和のジカルボン酸、精油、ホスファチジル誘導体、セファリン、テルペン、アミド、エーテル、ケトン、及び尿素から成る群から選択される。
【0143】
通常、ポリマーは、セルロースアセテート、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アクリルポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリ無水物から成る群から選択される。
【0144】
通常、硬化剤は、水素添加ヒマシ油、セトステアリルエーテルアリールアルコール、セチルアルコール、セチルエステルワックス、硬脂、パラフィン、ポリエチレン賦形剤、ステアリルアルコール、乳化ワックス、白色ワックス、及び黄色ワックスから成る群から選択される。
【0145】
通常、タンパク質は、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、及びカゼインから成る群から選択される。
【0146】
通常、炭水化物は、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオース、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール、及びミオイノシトールから成る群から選択される。
【0147】
通常、増量剤は、ポリペプチド及びアミノ酸から成る群から選択される。
【0148】
組成物はさらに、皮膚用局所緩和剤、局所抗炎症剤、局所抗菌剤、局所抗真菌剤、局所ステロイド及び局所抗酸化剤を含むことができる。
【0149】
皮膚用局所緩和剤には通常カモミール及びアロエが挙げられ、他の局所緩和剤は当該技術で既知であり、使用することができる。
【0150】
局所抗炎症剤には通常、ジクロフェナク、ケトプロフェン、イブプロフェン、ピロキシカム、及びインドメタシンが挙げられ、他の局所抗炎症剤は当該技術で既知であり、使用することができる。
【0151】
局所抗菌剤には通常、バシトラシン、ポリミキシンB、エリスロマイシン、ナトリウムスルファセタミド、銀スルファジアジン、レタパムリン、ムピロシン、ネオマイシン、及びプラモキシンが挙げられ、他の局所抗菌剤は当該技術で既知であり、使用することができる。
【0152】
局所抗真菌剤には通常、安息香酸、サリチル酸、ウンデシレン酸、ケトコナゾール、ニスタチン、ナフチフィン、トルナフテート、ミコナゾール、エコナゾール、シクロピロックス、オキソキシコナゾール、セルタコナゾール、エフィナコナゾール、テルビナフィン、タバボロール、クロトリマゾール、スルコナゾール、及びブテナフィンが挙げられ、他の局所抗真菌剤は当該技術で既知であり、使用することができる。
【0153】
局所ステロイドには通常、ハイドロコルチゾン、トリアムシノロン、フルオシノロン、プレドニカルベート、デソニド、ベタメタゾン、ハルシノニド、ジフルオラゾン、フルオシノロン、クロベタゾール、デソキシメタゾン、モメタゾン、クロコルトロン、フルチカゾン、フルオシノニド、フルランドレノリド、アルクロメタゾン、及びハロベタゾールが挙げられ、他の局所ステロイドは当該技術で既知であり、使用することができる。
【0154】
局所抗酸化剤には通常、ビタミンC、ビタミンE、及びL-セレノメチオニンが挙げられ、他の局所抗酸化剤は当該技術で既知であり、使用することができる。
【0155】
他の活性がある作用物質を含むことができる。別の方法では、たとえば、局所抗炎症剤、局所抗菌剤、局所抗真菌剤、局所ステロイド及び局所抗酸化剤のような多数のこれらの追加の作用物質は、上記に記載されているような1以上の賦形剤を含む、たとえば、1以上の追加の医薬組成物にて別々に投与することができる。
【0156】
上記に記載されているようなプロドラッグの使用を含む一部の別の方法では、カンナビノイド及びテルペノイドを含むが、これらに限定されない本発明に係る方法及び組成物で使用される治療上活性がある化合物は、1以上の共役相手を治療上活性がある化合物に共有結合で架橋することによって形成される。官能基の多くの組み合わせを架橋するのに好適な試薬は当該技術で既知である。
【0157】
たとえば、求電子基は、タンパク質またはポリペプチドに存在するものを含む多数の官能基と反応することができる。反応性アミノ酸と求電子試薬の種々の組み合わせが当該技術で既知であり、使用することができる。たとえば、チオール基を含有するN末端のシステインはハロゲンまたはマレイミドと反応することができる。チオール基は、たとえば、アルキルハロゲン化合物、ハロアセチル誘導体、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体、たとえば、アリールハロゲン化合物のようなアリール化剤、等のような多数のカップリング剤との反応性を有することが知られている。これらは、G.T.Hermanson,“Bioconjugate Techniques”(Academic Press,San Diego,1996),pp.146-150に記載されている。
【0158】
システイン残基の反応性は近隣のアミノ酸残基の適当な選択によって最適化することができる。たとえば、システイン残基に隣接するヒスチジン残基はシステイン残基の反応性を高めるであろう。反応性アミノ酸と求電子試薬との他の組み合わせは当該技術で既知である。たとえば、マレイミドは特に高いpH範囲でリシンの側鎖のε-アミノ基のようなアミノ基と反応することができる。アリールハロゲン化合物もそのようなアミノ基と反応することができる。ハロアセチル誘導体は、ヒスチジンのイミダゾリル側鎖の窒素、メチオニンの側鎖のチオエーテル基、及びリシンの側鎖のイプシロン-アミノ基と反応することができる。イソチオシアネート、イソシアネート、アジ化アシル、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、塩化スルホニル、エトポキシド、オキシラン、カーボネート、イミドエステル、カルボジイミド、及び無水物を含むが、これらに限定されない、リシンの側鎖のε-アミノ基と反応するであろう多数の他の求電子試薬が知られている。これらは、G.T.Hermanson,“Bioconjugate Techniques”(Academic Press,San Diego,1996),pp.137-146に記載されている。
【0159】
さらに、たとえば、アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩のもののようなカルボン酸側鎖と反応するであろう、たとえば、ジアゾアルカン及びジアゾアセチル化合物、カルボニジルミダゾール、及びカルボジイミドのような求電子試薬が知られている。これらは、G.T.Hermanson,“Bioconjugate Techniques”(Academic Press,San Diego,1996),pp.152-154に記載されている。さらに、セリン及びスレオニンの側鎖のもののようなヒドロキシル鎖と反応するであろう、反応性ハロアルカン誘導体を含む求電子試薬が知られている。これらは、G.T.Hermanson,“Bioconjugate Techniques”(Academic Press,San Diego,1996),pp.154-158に記載されている。別の代替の実施形態では、求電子試薬と求核試薬(すなわち、求電子試薬と反応性である分子)の相対的な位置は、タンパク質が求核試薬と反応する求電子基を伴うアミノ酸残基を有し、且つ標的分子がその中に求核基を含むように反転される。これは、上述のアルデヒド(求電子試薬)のヒドロキシルアミン(求核試薬)との反応を含むが、その反応よりさらに一般的であり;他の基を求電子試薬及び求核試薬として使用することができる。好適な基は有機化学にて周知であり、さらに詳細に記載する必要はない。
【0160】
架橋のための反応基の追加の組み合わせは当該技術で既知である。たとえば、アミノ基は、イソチオシアネート、イソシアネート、アジ化アシル、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、塩化スルホニル、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アルキル化剤、イミドエステル、カルボジイミド、及び無水物と反応することができる。チオール基は酸化及び混合ジスルフィドの形成を手段として、ハロアセチルまたはアルキルハロゲン化合物誘導体、マレイミド、アジリジン、アクリロイル誘導体、アシル化剤、または他のチオール基と反応することができる。カルボキシ基は、ジアゾアルカン、ジアゾアセチル化合物、カルボニルジイミダゾール、カルボジイミドと反応することができる。ヒドロキシル基は、エポキシド、オキシラン、カルボニルジイミダゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート、N-ヒドロキシスクシンイミジルクロロギ酸、過ヨード酸塩(酸化用)、アルキルハロゲン、またはイソシアネートと反応することができる。アルデヒド基及びケトン基は、ヒドラジン、Schiff塩基を形成する試薬、及び還元性アミノ化反応またはMannich縮合反応における他の基と反応することができる。架橋反応に好適なさらに他の反応は当該技術で既知である。そのような架橋試薬及び反応は、G.T.Hermanson,“Bioconjugate Techniques”(Academic Press,San Diego,1996)に記載されている。
【0161】
本発明に係る医薬組成物の単位用量に含まれる、上記に記載されているようなカンナビノイドまたはテルペノイドのような、しかし、これらに限定されない所与の治療上活性がある作用物質の量は、たとえば、特定の化合物、病状及びその重症度、治療を必要とする対象の固有性(たとえば、体重)のような因子に応じて変化するであろうが、それでもなお、当業者によって日常的に決定することができる。選択される投与量のレベルは、特定の治療剤の活性、採用される特定の化合物の投与の経路、投与の時間、排泄の速度、対象に影響している状態の重症度、他の健康配慮、及び対象の肝臓及び腎臓の機能の状況を含む種々の薬物動態因子に左右される。
【0162】
それはまた、治療の持続期間、採用される特定の治療剤との併用で使用される他の薬剤、化合物及び/または物質、と同様に治療される対象の年齢、体重、状態、全体的な健康及び既往歴、等の因子にも左右される。最適な投与量を決定する方法は、当該技術、たとえば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20th ed.,2000に記載されている。与えられた状態についての最適な投与量は、作用物質に関する実験データを考慮して従来の投与量決定試験を用いて当業者によって確かめられ得る。
【0163】
本発明の組成物または本発明に従って採用される組成物は、医薬組成物を調製するために一般に知られている技法を用いて、たとえば、混合すること、溶解すること、造粒すること、糖衣錠を作ること、浮遊させること、乳化すること、カプセル化すること、封入すること、または凍結乾燥することのような従来の技法によって製造されてもよい。医薬組成物は、活性化合物の製剤への加工を促す賦形剤及び補助剤から選択されてもよい1以上の生理的に許容できるキャリアを用いて従来の方法で製剤化されてもよい。
【0164】
本発明に係る医薬組成物は普通、複数の場合に対象に投与される。単回投与間の間隔は、週1回、月1回または年1回であることができる。間隔はまた、治療応答によってまたは当該技術で周知の他のパラメータによって示されるように不規則であることもできる。或いは、医薬組成物は持続放出製剤として投与することができ、その場合、さほど頻繁な投与は必要とされない。投与量及び頻度は、医薬組成物に含まれる薬理学的に活性がある作用物質の対象における半減期に応じて変化する。投与量及び投与の頻度は、処置が予防上なのか、または治療上なのかに応じて変化することができる。
【0165】
予防上の適用では、相対的に低い投与量が相対的に頻繁ではない間隔で長期間にわたって投与される。一部の対象はその余生の間、治療を受け続けてもよい。治療上の適用では、相対的に短い間隔での相対的に高い投与量が、疾病の進行が低減するまたは停止するまで、好ましくは対象が疾病の症状の部分的なまたは完全な改善を示すまで、必要とされることがある。その後、対象は予防投薬計画を投与され得る。
【0166】
癌を含む多数の疾病及び状態を治療することにおける種々の薬理学的に活性がある作用物質及び医薬組成物の使用方法、及びそのような薬理学的に活性がある作用物質及び医薬組成物の治療上の有効性を判定する方法を開示しているNardellaへの米国特許第6,573,292号、Nardellaへの米国特許第6,921,722号、Chaoらへの米国特許第7,314,886号、及びChaoらへの米国特許第7,446,122号はすべて参照によって本明細書に組み入れられる。
【0167】
参考文献
以下の出版物はこの参照によって本明細書に組み入れられる。これらの出版物は以下で提供される番号によって本明細書で参照される。出版物のこのリストにおける出版物の包含は本明細書で参照される出版物が従来技術であるという承認として解釈されるべきではない。
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【実施例
【0168】
実施例1:HaCat細胞におけるケラチンの発現はカンナビノイドによって調節される
調べた物質は、フィト-カンナビノイド、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビノール(CBN)、カンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)、カンナビジオール:カンナビノール(0.1:1μM)、及びカンナビジオール:カンナビノール(1:1μM)であった。
【0169】
細胞培養は以下のように行った:それぞれ10(V/V)%ウシ胎児血清(FBS;Life Technologies Hungary Ltd.)及び抗生剤混合物(1:100でのペニシリン及びストレプトマイシン;PAA Laboratories GmbH,Pasching,Austria)及びFungizone(登録商標)抗有糸分裂剤(1:200にて;Life Technologies Hungary Ltd.)によって補完したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM;Life Technologies Hungary Ltd.)にてヒト不死化角化細胞株であるHaCatを培養した。
【0170】
加湿した5%COを含有する雰囲気にて37℃で細胞を培養し、2日に1回培地を交換し、すべての場合で70~80%の集密にて細胞を継代した。薬剤処理については培地を毎日交換した。
【0171】
定量的リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(qPCR)は、5’ヌクレアーゼアッセイを用いてRoche Light Cycler 480 QPCRシステム(Roche Applied Sciences)にて以前記載されたように行った。qPCRは、S.A.Bustin et al.,“The MIQE Guidelines: Minimum Information for Publication of Quantitative Real-Time PCR Experiments,”Clin.Chem.55:611-622(2008)に記載されている。TRIzol(LifeTechnologies)を用いて全RNAを単離し、製造元のプロトコールに従ってDNA分解酵素処理を行い、Life Technologies CorporationのHigh Capacity cDNAキットを用いて1μgのRNAをcDNAに逆転写した。TapManのプライマー及びプローブ(アッセイID:ケラチン5についてはHs00361185_m1、ケラチン14についてはHs00265033_m1、ケラチン15についてはHs00267035_m1)を用いてPCR増幅を行った。
【0172】
内部対照として、ペプチジル-プロリルイソメラーゼA(PPIA),グリセロアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)及びアクチンβ(ACTB)の発現を測定した(アッセイID:PPIAについてはHs99999904_m1、GAPDHについてはHs99999905_m1及びACTBについてはHs99999903_m1)。ΔCT法を用いて、転写物の量をハウスキーピング遺伝子の量に対して基準化した。示されれば、次いで結果を溶媒対照またはLTA処理培養の発現に対して基準化し(ΔΔCT法)、3つの技術的反復の平均値±SDとしてプロットした。
【0173】
ウエスタンブロットを用いてHaCat細胞におけるケラチンの発現を測定した。当初の細胞数は、1.5mLの培養培地(FBS(10%)、抗生剤、抗真菌剤で補完したDMEM)中にて「小型」(d=35mm)ペトリ皿当たり2×10個だった。以下の段階:集密前(増殖している)及び集密後(分化している)で細胞を回収した。ウエスタンブロットで採用した組み合わせは、カンナビジオール:カンナビノール(1:0.1μM)、カンナビジオール:カンナビノール(0.1:1μM)、及びカンナビジオール:カンナビノール(1:1μM)だった。ウエスタンブロットによってその発現を調べた遺伝子は、内部対照としてのGAPDHまたはβ-アクチン及び(K1)、K5、K6、(K10)、K14、K15、K16、及びK17だった。タンパク質試料は5μ/ウェルで使用した。使用した標準はPageRuler Plus Prestained(Pierce)だった。電気泳動は100ボルトだった。
【0174】
Trans-Blot(登録商標)Turbo(商標)Transfer System(1.3A,25V,7分)を用いて移行を行った。一次抗体は5%ミルク含有PBSにて4℃で、一晩1:100で使用した;一次抗体は、モルモット抗ヒトケラチン:抗ヒトケラチン1、ケラチン5、ケラチン6、ケラチン14、ケラチン15、ケラチン16、ケラチン17(Lutz Langbein;予測されたバンド:約67kDa、約58kDa、約56kDa、約56.5kDa、50kDa、45kDa、48kDa、46kDa)だった。二次抗体は、ミルク含有PBSにて室温で1時間、1:1000で使用した;二次抗体はHRPを結合したヤギ抗モルモットIgG(Santa Cruz)だった。負荷対照は、5%のミルク含有PBSにおけるウサギ抗ヒトGAPDH(Novus Biologicals;カタログ番号:NB300-322;予測されたバンド:約37kDa)または抗ヒトβ-アクチン(Sigma-Aldrich;カタログ番号:A2668;予測されたバンド:約42kDa)1:1000だった。HRPを結合したヤギ抗ウサギIgGFc断片(BioRad、170-6515;1:1000)を使用した。
【0175】
統計解析については、Origin Pro Plus 6.0ソフトウエア(Microcal,Northampton,MA,USA)を用い、スチューデントの両側二試料t検定を用いることによってデータを解析し、グラフをプロットし、p<0.05の値を有意差と見なした。
【0176】
創傷治癒解析におけるウエスタンブロットについては、上皮・間葉転換(EMT)が上皮の生物学、癌の発生及び線維形成の決定的な要素である。皮膚におけるTGF-βシグナル伝達の慢性的な活性化は最終的に線維形成(ケロイド)をもたらす。角化細胞のEMTは正常な創傷治癒過程における適応反応である。それは、E-カドヘリン(角化細胞の完全性及び密着結合の形成に重要な要素)発現の低下、細胞性フィブロネクチン(フィブロネクチン・EDA)産生の上方調節を特徴とする。後者は粘膜組織修復の間で上皮細胞の非常に重要な保護要素である。乾癬における角化細胞の慢性的なEMTは疾病の病態形成の重要な要素であることが示されている。
【0177】
様々な時間で同期化したHaCaT細胞から全タンパク質抽出物を調製した。ヒトE-カドヘリンの細胞外ドメインに対して向けられたマウスのモノクローナル抗体(1μg/ml;クローンSHE78-7,Zymed,San Francisco,CA)及び1:200希釈での細胞性フィブロネクチンのヒトエキストラドメイン(EDA配列)に特異的なマウスのモノクローナル抗体(ICN Biochemicals)をこのアッセイで使用した。β-チューブリンを陽性対照として使用した。
【0178】
結果を図21に示す。図21に示す結果によれば、フィブロネクチン・EDAは創傷治癒の間にTGF-βによって誘導され、細胞の移動(傷縫合)及び接着に重要である。INM-750はヒト角化細胞にてTGF-βが誘導したフィブロネクチンの発現を変化させない。E-カドヘリンは上皮の完全性を保つのに重要な成分である。TGF-βを介した創傷治癒の間、E-カドヘリンは抑制される。INM-750はTGF-βが誘導するヒト角化細胞によるE-カドヘリンの下方調節を救済するので、表皮の完全性に寄与する。
【0179】
定量的リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(qPCR)を用い、ヒト表皮角化細胞(HaCaT)細胞株を用いたK5、K14及びK15の発現に対する10:1比のカンナビジオール(CBD)(特にΔ-カンナビジオール)とカンナビノール(CBN)の混合物の効果を解析した。細胞培養及びqRT-PCRは参考文献(33)及び(34)によって記載されたプロトコールに従って行った。細胞性応答の評価はRT-qPCRを用いて行った(mRNAレベル)。信頼の高い結果を得るために、角化細胞の3つの異なるハウスキーピングタンパク質(PPIA、GAPDH、ACTB)を内部対照として使用した。異なる濃度での混合物の2つの活性成分をこの試験で使用した(0.1:0.1μM、0.1:1μM及び1:0.1μM)。
【0180】
結果(図4)は、集密前(増殖している)及び集密後(分化している)の角化細胞で回収した細胞にてカンナビジオールとカンナビノールの10:1比の混合物はK14を下方調節し、同時にK15の発現を上方調節するのに対して混合物は集密後(分化している)の段階でK17を上方調節することを示している。INM-750の双方の活性成分は0.1:0.1μMの比でK15及びK17の発現を促進する一方で、K14の発現を抑制する。
【0181】
図5AはqPCRによって測定したとき、INM-750の様々な濃度でのHaCaT角化細胞における様々なケラチンの相対的な発現を示す表である。図5BはqPCRによって測定したとき(内部対照はPPIAである)、CBD:CBNの様々な濃度でのHaCaT角化細胞における様々なケラチンの相対的な発現を示す表である。図5Cはケラチンの発現プロファイル(内部対照はβ-アクチンである)に対する10:1比でのCBD:CBNの様々な濃度の効果を示す表である。1:0.1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの10:1比の混合物の2つの活性成分は集密後(分化している)段階の間、K6及びK17の発現を促進する一方で、集密前(増殖している)段階ではK15の発現を上方調節する。
【0182】
ウエスタンブロット解析を用いたカンナビジオールとカンナビノールの10:1比の混合物の2つの活性成分または混合物の2つの個々の成分のHaCaT角化細胞におけるK15の発現に対する効果を測定した;結果を図6に示す。図6はK15の発現に対するフィトカンナビノイドCBD及び/またはCBNの効果を示す。図6では、「INM-505」はカンナビジオールであり、「INM-517」はカンナビノールであり、「INM-750」はカンナビジオールとカンナビノールの10:1比の混合物(1:0.1μM)であり、「INM-751」はカンナビジオールとカンナビノールの1:10混合物であり、「INM-752」は各1μMでのカンナビジオールとカンナビノールの1:1混合物(「INM-752」)である。
【0183】
調べたカンナビノイドはどれもK15の発現に対して影響を示さない。しかしながら、細胞が炎症誘発性の作用物質(IFNγ/TNFα)で前処理されていたならば、CBD及びCBNは個々にまたは組み合わせでK15の発現を促進する。左のパネルはIFNγ/TNFαの前処理がない結果を示し;右のパネルはIFNγ/TNFαの前処理による結果を示す。調べたカンナビノイドはどれもK15の発現に対して影響を示さない。しかしながら、HaCaT角化細胞が炎症誘発性の作用物質(IFNγ/TNFα)で前処理されていたならば、INM-750の2つの活性成分の1:10比が使用されたINM-752を除いてINM-750の双方の成分は個々にまたは組み合わせでK15の発現を促進する。3つの独立した免疫ブロットの濃度測定データ(図7)はヒト角化細胞株(HaCaT細胞)の試験管内培養にてINM-750がケラチン5及び14タンパク質ではなくケラチン15を強く上方調節することも示した。
【0184】
図7は、ヒト表皮(HaCaT)角化細胞におけるケラチンK5、K14及びK15の発現に対するカンナビジオールとカンナビノールの10:1比の混合物の効果を示す。混合物は他のケラチンの発現を有意に高めることなくK15の発現を有意に高める(左のパネル:増殖段階の細胞;右のパネル:分化段階の細胞)。
【0185】
図8はカンナビノイドの様々な組み合わせが様々な効果を有したことを説明している。カンナビジオールとカンナビノールの10:1比(「INM-750」)は、ヒト角化細胞株(HaCaT細胞)の試験管内培養にてケラチン5及び14タンパク質ではなくケラチン15を強く上方調節する。3つの独立した免疫ブロットの代表の1つに由来する濃度測定データを図8に示す。カンナビジオールとカンナビノールの1:10混合物(0.1:1μM)(「INM-751)及び各1μMでのカンナビジオールとカンナビノールの1:1混合物(「INM-752」)についての結果も図8に示す。
【0186】
検討した角化細胞の遺伝子にはK5、K6、K14、K15、K16及びK17が挙げられる。これらの遺伝子の調節はEBSに対して潜在的な有益な効果を有してもよい。K14遺伝子は10μMのカンナビノールで処理した細胞にて下方調節されたが、これは定量的リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(qPCR)の結果と一致する。カンナビジオールとカンナビノール(0.1-0.1μM)処理の混合物の2つの活性成分の組み合わせが適用された場合、K6及びK17の遺伝子は集密後(分化している)段階で上方調節された。
【0187】
後者は定量的リアルタイムポリメラーゼ鎖反応(qPCR)の結果の本明細書で報告された知見に一致する。注目すべき点は、0.1-1μMまたは1-0.1μMの比のレベルでのカンナビジオールとカンナビノールの混合物の2つの活性成分がEBSにて有益な効果を発揮してもよい集密前(増殖している)段階でK5の発現(図4)を下方調節することである。qPCR及びウエスタンブロット(図5A~C及び6)の結果に基づいてINM-750(1:0.1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの10:1比)の組み合わせがEBSについて最も有望な選択であると思われる。カンナビノイド化合物による様々な角化細胞遺伝子の調節の重要性は、創傷治癒過程の間、バリア機能の復元は必須であり、この過程への主要な寄与は皮膚の再上皮形成―角化細胞の創傷部位への移動及びそれに続く新しい重層表皮の樹立であるという事実にある。本明細書で報告された結果は、CBD:CBNの処理がK15を上方調節するだけでなく、K6及びK17も上方調節することを示しているので、様々な角化細胞遺伝子のこの上方調節は、たとえば、EBSのような中間径フィラメントの機能障害に関連するまたはそれが原因で生じる1以上の疾病または状態に有益に影響を及ぼす強力な潜在力を有すると考えられる。
【0188】
カンナビジオールのカンナビノールに対する10:1比でのカンナビジオールとカンナビノールの混合物は創傷治癒過程も加速する。早めた創傷治癒という点で、本発明者らは、CB1アゴニストを用い、KRT6Bの発現を低下させることによって角化細胞の移動及び創傷治癒を助けるという仮説を立てた。当初の実験結果は、カンナビジオールのカンナビノールに対する10:1比でのカンナビジオールとカンナビノールの混合物がKRT6B遺伝子の活性化を抑制し、角化細胞移動の増加によって創傷治癒を改善することを示している。カンナビジオールのカンナビノールに対する10:1比でのカンナビジオールとカンナビノールの混合物の有効性を創傷治癒アッセイにて実証された。
【0189】
創傷治癒に対するカンナビノイドの効果の解析では、電気的細胞・基質インピーダンスセンシング(ECIS)創傷アッセイが従来の「引っ掻き傷」または「擦り傷」のアッセイに取って代わる。爪楊枝、針またはピペットの先端で機械的に細胞層を壊し、傷を「治癒させる」細胞の移動を顕微鏡で追う代わりに、ECISは電気シグナルを採用して傷つけ、且つ治癒過程をモニターする。ECIS電気的創傷は、直径250μmの活性ECIS電極と接触した細胞の小さな集団のみに向けられ、ECISの測定及び生体染色の双方によって検証することができるきちんと定められた250μmの傷を作る。
【0190】
従来の擦り傷法とは異なって、ECISの傷に伴うタンパク質のコーティングは電流によって影響を受けず、完全にインタクトのままである。いったんECISが細胞を傷つけると、細胞が内部に移動し、殺傷された細胞に取って代わるので、それは正常モードに戻り、直ちに健常な近隣の細胞を追う。このアッセイを用いて急性及び慢性双方の創傷治癒について創傷治癒に対する個々のカンナビノイドの効果を調べた。
【0191】
急性の傷モデルでは、HaCaT細胞を懸濁液にて種々の比率のカンナビジオール、カンナビノール、及びHU-210(6aR,10aR)-9-(ヒドロキシメチル)-6,6-ジメチル3-(2-メチルオクタン-2-イル)-6H,6aH,7H,10H,10aH-ベンゾ[c]イソクロメン1-オール)(1μMにて;合成THC類似体)で2時間処理し、アレイチップのチャンバーに入れた。個々のHaCaT培養にて電気的細胞・基質インピーダンスセンシング(ECIS)システム(Applied Biophysics,Troy,NY)を用いて電極抵抗を測定することによって、細胞単層の修復(設定)及びバリアの機能を40時間モニターした(図9)。図9は電気的細胞・基質インピーダンスセンシング(ECIS)システムによって創傷を導入する前にHaCaT細胞を前処理する試験管内の急性創傷治癒の測定を示す。創傷治癒過程に対する種々の比率のカンナビジオールとカンナビノールの効果を40時間測定した。「基準抵抗」は損傷後、電極上の細胞のパーセント対象範囲の測定単位である。「INM-750」は1:0.1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの10:1比であり、「INM-751」は0.1:1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの1:10混合物である。
【0192】
慢性の創傷治癒はEBS治療の最も代表的なモデルである。このモデルでは、創傷及び治療はHaCaT細胞のインキュベートの18時間後に同時に適用され、細胞の移動及び傷縫合を模倣する細胞単層の抵抗及び皮膚再生に対するカンナビジオールとカンナビノールの混合物の様々な組み合わせの有効性を測定した(図10)。結果はEBS治療のためのカンナビノイドの2つの活性成分の最適な比率を見いだす必要性を示している。皮膚のエンドカンナビノイド系が介在する機能の多面的な性質と強い細胞型依存性のために、それはカンナビノイド化合物の選択最適な組み合わせ及び比率に関して慎重な判断を要する。上記で言及したように、EBSの治療の最適な有効性については、セクションの基準は疾病の4つの顕著な特徴における有効性に基づく。
【0193】
図10は、細胞の創傷及び治療が電気的細胞・基質インピーダンスセンシング(ECIS)創傷アッセイによって同時に適用されるHaCaT細胞における試験管内の慢性創傷治癒過程の測定を示す。創傷治癒過程は2つの部分:傷縫合とバリア機能の復元に分けられる。以下の組成物:1:0.1μMの比での10:1比のカンナビジオールとカンナビノール(「INM-750」)、カンナビジオールとカンナビノールの1:10混合物(「INM-751」)及びカンナビジオールとカンナビノールの1:1混合物(「INM-752」)を調べた。
【0194】
さらに、カンナビジオールとカンナビノールの混合物は試験管内でのヒト角化細胞によるCCL2/MCP-1の産生を調節する(図11)。マクロファージ走化性タンパク質1(MCP-1)としても知られるケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)は皮膚の炎症及び修復過程で決定的な役割を担うケモカインである(参考文献(29))。CCL2は、皮膚の傷領域にマクロファージを引き付け、皮膚創傷治癒の再生段階の間、皮膚幹細胞及びランゲルハンス細胞の輸送を調節する(参考文献(30))。最新の研究は皮膚の恒常性及び自然免疫におけるCCL2の重要な役割を示している(参考文献(31))。CCL2の発現はIL-1β、TNF-α及びIFN-γのような炎症誘発性サイトカインによって強く誘導され、それは、未知の病態機構によってEBSにおける表皮により豊富に産生される(参考文献(32))。
【0195】
カンナビノイドはヒト血液白血球に対する潜在的な抗炎症作用で知られている。しかしながら、ヒト角化細胞による基礎的な及び炎症が誘導するCCL2産生に対するその効果は研究されていない。Δ-テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオール、カンナビゲロール、HU-210、及びSR144528(5-(4-クロロ-3-メチルフェニル)-1-[(4-メチルフェニル)メチル]-N-[(1S,2S,4R)-1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド;CB2逆アゴニスト)の効果は、試験管内の培養におけるヒト角化細胞(HaCaT)による基礎的な及び炎症誘発性サイトカインが誘導するCCL2の産生に関して研究された。
【0196】
CB1/CB2アゴニストのスクリーニングのための試験管内モデルとして不死化したヒト皮膚角化細胞(HaCaT)を使用した。10%FBS及び抗生剤/抗真菌剤で補完したDMEM細胞培養培地にてHaCaT細胞を24穴プレートに播き(1×10個/ウェル/ml)、24時間で集密に近い培養物を形成させた。実験の前に、細胞培養培地を1%FBS及び抗生剤/抗真菌剤で補完したDMEMに置き換え、上記で言及したカンナビノイド(すべて1mM濃度で、Cayman Chemical,Ann Arbor,MI)を単独で、またはヒト組換えインターフェロン(IFN)γ及び腫瘍壊死因子(TNF)α(双方とも10ng/ml濃度で、PeproTech,Rocky Hill,NJ)と共に加え、HaCaT細胞を72時間培養した。溶媒対照としてDMSOを使用した。72時間後、細胞培養上清を回収し、遠心分離によって清澄化し、アッセイの前に-80℃で保存した。
【0197】
CCL2/MCP-1の濃度は、組換えヒトMCP-1を標準として、1%ウシ血清アルブミンを伴ったPBSを希釈緩衝液として、及びNUNCのMaxiSorb平底96穴マイクロプレートを担体として用いたサンドイッチELISAによって測定した。2つの独立した実験を2つ組で行った。GraphPad Prism 6.01ソフトウエアによる統計解析には多重比較の一元配置ANOVAを使用した。確率値はそれが0.05未満であれば有意であると見なした。
【0198】
結果は、CCL2/MCP-1産生が刺激の72時間後ヒト角化細胞(HaCaT)にて炎症誘発性サイトカインIFNγ/TNFαによって強く誘導されることを示している。調べたカンナビノイド化合物は基礎的なCCL2産生に対して有意な効果を有さないが、カンナビジオール、カンナビゲロール及び最も強力なHU-210は調べた濃度で、HaCaT細胞によるIFNγ/TNFαが誘導したCCL2の産生を上方調節した。
【0199】
ΔテトラヒドロカンナビノールはDMSOで処理した対照(Ctrl)に比べて1μMの濃度にて基礎的な及びIFNγ/TNFαが誘導したCCL2の産生双方に対して有意な効果を有さない。CB2の逆アゴニストであるSR144528はHaCaT細胞による基礎的な及びIFNγ/TNFαが誘導したCCL2の産生を有意に変化させなかった(図11及び12)。上述のカンナビジオールとカンナビノールの混合物の活性成分であるカンナビジオールはヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導したCCL2/MCP-1の産生を上方調節することによって皮膚の防御と再生を高める。
【0200】
結果を図11及び図12に示す。図11はヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導したCCL2/MCP-1産生の上方調節に対する種々のカンナビノイドの効果を示すグラフであり;IFNγ/TNFαが誘導したCCL2/MCP-1産生の上方調節は皮膚の防御と再生を高める。図12は試験管内で増殖しているヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導したCCL2/MCP-1産生をカンナビノイドが上方調節することを示す要約グラフである。
【0201】
この結果は、カンナビノイド化合物が試験管内でのヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導したCCL2/MCP-1の発現を調節することができることを示している。CB1/CB2受容体アゴニストであるHU-210が72時間の曝露後観察された最高の効果を生じたのでCB1受容体及びCB2受容体の双方がこの作用に関与すると思われる。SR144528はHaCaT角化細胞の基礎的な及びIFNγ/TNFαが誘導したCCL2の産生の双方を調節しなかったので、CB2受容体の構成的な活性化は試験管内でのこれらの効果に関与しない。カンナビジオール及びカンナビゲロールの双方はヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導したCCL2/MCP-1の産生を上方調節することによって皮膚の防御及び再生を高める。
【0202】
上記に記載されているカンナビジオールとカンナビノールの混合物の抗炎症特性も実証した。本明細書で提示されたデータは、カンナビジオール及びHU-210はヒト皮膚上皮細胞(角化細胞)を増殖させることによってMCP-1産生を高めるので、ヒト角化細胞によるIFNγ/TNFαが誘導したCCL2/MCP-1の産生を上方調節することによって皮膚の防御及び再生を高めることを示している。
【0203】
抗炎症活性という点で、カンナビジオールは肥満細胞上のCB2受容体を活性化し、これらの細胞による炎症誘発性のメディエータの放出を低下させる。IL-8は血液好中球に対する最も強力な化学誘引物質であり、血管形成の重要なメディエータである。皮膚における慢性的なIL-8及び好中球の活性化は皮膚の病理で好ましくない要素である。カンナビジオールはヒト角化細胞によるIL-8産生に対する高度に選択性の阻害効果を示した。Il-6は炎症誘発性のサイトカインであり、IFNγ/TNFαによって刺激することができる。本明細書で提示されたデータは、カンナビジオールがIFNγ/TNFαによるIL-6の産生を減衰させることを示している。抗炎症活性を図13に示す。
【0204】
図13の左は1:0.1μMの比でのカンナビジオールとカンナビノールの10:1比がIL-8の産生を阻害することを示すグラフである。図13右はカンナビノイドが基礎的なIL-8産生も阻害することを示すグラフである。IL-8産生及びIFNγ/TNFαが誘導するIL-6産生の双方は炎症の生体マーカーである。
【0205】
実施例2:局所カンナビノイド製剤及び皮膚への透過
本明細書に記載されている製剤の皮膚への透過は以下の手順に従って測定された:製剤はラブラソール、プロ-ゲル(ポロキサマー407、レシチン、パルミチン酸イソプロピル)だった。製剤を円の中心部に塗布し、外科用メスを用いて皮膚に擦り付ける。皮膚の外層を上に向けて試料をフランツ拡散セルの上に装着する。フランツセルのレセプター媒体はリン酸緩衝液で満たす。セルのキャップを装着し、締める。この構築物を32℃で18時間インキュベータ/シェーカーの中に入れる(図14)。図15図14の透過実験の結果を示す(◆、6時間;■、9時間;▲、12時間)。
【0206】
図16は、Levenberg-Marquardt適合を用いた図15の結果に基づいた皮膚を横切るカンナビノイドの拡散の数学的モデルを示す。図17はアラントイン(左のパネル)及びカンナビジオール(右のパネル)についての曲線下面積を示す。図18は18時間後カンナビノイド分子のほとんどが角化細胞及び基底細胞に局在することを示す。皮膚に塗布した薬剤(カンナビジオール)の総量は400μgだった。アラントインは対照として使用した。
【0207】
実施例3:カンナビノイド及び創傷治癒
図19は本明細書に記載されている実験結果に従って開発されたモデルの図である。モデルは皮膚における複数の調節系に関与するエンドカンナビノイド及びカンナビノイド受容体を説明している。
【0208】
図20は、II型(K5、K6、及びK14)及びI型(K15、K16、K17)のケラチンの発現に対するINM-505(カンナビジオール)とINM-517(カンナビノール)の様々な混合物の効果を示すグラフである。INM-505及びINM-517は単独でまたは組み合わせ(INM-505:INM-517)で一般に分化後のヒト角化細胞にてK5、14、15、16及び17のタンパク質の発現を高める(濃度依存性の効果)。
【0209】
図21は、エキストラドメインA(EDA)・フィブロネクチンを上方調節することによる創傷治癒におけるカンナビノイドの活性を示す(左のパネル)。E-カドヘリンのTGF-βが誘導する阻害はカンナビノイドによって救済される(右のパネル)。
【0210】
形質転換増殖因子(TGFβ1)は皮膚の正常な治癒及び病的な線維増殖性過程の優れた制御因子である。皮膚線維芽細胞における過剰なTGFβ経路の活性化は、コラーゲンを含み、ケロイドとして知られる皮膚の高密度の線維性形質転換を形成するECMタンパク質の異常な蓄積をもたらす。加えて活性化された線維芽細胞はTGF-β1を含む多くのメディエータを産生する筋線維芽細胞に分化する。後者は、傷縫合の決定的な過程である上皮・間葉転換(EMT)及び皮膚角化細胞による再生に重要な因子である。EMTがいったん誇張されると、過程は病的になり、正常な皮膚の治癒を劇的に妨害する。
【0211】
カンナビノイド(CBD)はヒト血液の白血球に対する潜在的な抗炎症作用で知られている。しかしながら、ヒトの角化細胞及び皮膚間葉細胞におけるTGF-βが誘導するシグナル伝達に対するその効果は現在知られていない。その結果が図22~25として以下で報告されている実験の目的は、試験管内での培養におけるTGF-βのシグナル伝達活性化のマーカーとしての基礎的な及びTGF-β1が誘導する平滑筋アクチン(αSMA)及びヒト線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化及び不死化ヒト角化細胞株におけるEMTに対するINM-501、INM-509、INM-505、INM-506、INM-513(カンナビゲロール(CBG))、INM-517、及び合成CBD HU-210及びSR144528(5-(4-クロロ-3-メチルフェニル)-1-[(4-メチルフェニル)メチル]-N-[(1S、2S、4R)-1,3,3-トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル]-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)の効果を判定することである。
【0212】
実験計画
1%FBS及び抗生剤/抗真菌剤で補完したDMEM中でINM-501、INM-509、INM-505、INM-506、INM-513(カンナビゲロール(CBG))、INM-517、HU-210((6aR,10aR)-9-(ヒドロキシメチル)-6,6-ジメチル3-(2-メチルオクタン-2-イル)-6H,6aH,7H,10H,10aH-ベンゾ[c]イソクロメン1-オール))、及びSR144528(すべて1μM濃度にて、EchoPharmaceuticals,AT Nijmegen,The Netherlands,Cayman Chemical,Ann Arbor,MI)の単独での存在下、または10及び20ng/ml濃度での同時に加えたヒト組換えTGFβ1を伴った存在下で24穴プレート(1×10個の細胞/ウェル/mL)にてHaCaT細胞及びHFL-1細胞を72時間培養した。細胞培養の上清を取り除き、プロテイナーゼ/ホスファターゼ阻害剤のカクテルで補完した細胞タンパク質抽出緩衝液で細胞を溶解した。細胞タンパク質抽出物(CPE)を遠心分離によって清澄化し、アッセイの前に-80℃で保った。
【0213】
アッセイ手順
角化細胞におけるTGFβ1によって誘導されるEMTをヒトE-カドヘリン(E-CDH)及び細胞性フィブロネクチン(FBN-EDA)の発現によって解析した。線維芽細胞の活性化及び分化はαSMAの発現によって判定した。E-CDH、FBN-EDA及びαSMAのタンパク質は、抗ヒトE-CDH、FBN-EDA及びαSMAのマウスモノクローナル抗体を用いたSDS-PAGE及び免疫ブロットによって測定した。HSP90及びβ-チューブリンを負荷対照として使用した。検出は、LI-COR赤外線画像化システム及びIR700/IR800二次抗体(LI-COR Biosciences,Lincoln,NE)によって行った。バンドの密度は、Odysseyソフトウエア2.1(LI-COR Biosciences)を用いて独立して2つの赤外線チャンネルで定量した。結果はタンパク質/β-チューブリン/HSP90の密度比として表す。
【0214】
形質転換増殖因子(TGF)-β経路の活性化は、皮膚における正常な創傷治癒及び病的な線維増殖性過程の重要な要素である。TGFβ1はヒト線維芽細胞によるCB1受容体の発現を抑制し、CB1/CB2合成アンタゴニストはTGFβ1への細胞の応答性を変更する。図22は、TGFβ1がヒト線維芽細胞によるCB1受容体の発現を抑制し、CB1/CB2合成アンタゴニストAM251及びM630がTGFβ1への細胞の応答性を変更することを示している。CB1受容体の発現は、負荷対照としてのHSP90と共にCB1受容体/HSP90の比として示される。これらのデータはヒト間葉にてTGFβのシグナル伝達とエンドカンナビノイド系との間にクロストークがあることを実証している。TGFβ1はヒト線維芽細胞にてCB1Rの発現を下方調節し、CB1/CB2活性化の阻害性フィードバック機構を抑制する。
【0215】
CB1受容体アンタゴニストAM210はαSMAの発現を上方調節することによってヒト線維芽細胞のTGFβ1応答性を高める。図23は、CB1受容体アンタゴニストAM251がαSMAの発現を上方調節することによってヒト線維芽細胞のTGFβ1応答性を高めることを示している。上のパネルはαSMAの発現を示すウエスタンブロットを示し、下のパネルは負荷対照としてのHSP90と共にαSMA/HSP90の比を示す。CB1受容体ブロッカーであるAM210はTGFβ1が誘導する、筋線維芽細胞の分化の重要なマーカーであるαSMAの発現、TGFβのシグナル伝達の活性化及び線維形成を促進する。これらのデータは、組織リモデリング及び線維形成の調節因子としてのCB1受容体のアゴニスト活性と共にカンナビノイドアゴニストまたはカンナビノイドアゴニストの混合物についての潜在的な役割を示唆している。
【0216】
本明細書で「INM-750」と呼ばれるアゴニストの混合物は、ヒト角化細胞によるTGFβ1が誘導した細胞保護性のフィブロネクチン・EDAの発現を維持することによって創傷治癒過程を促進する。図24は、INM-750がヒト角化細胞によるTGFβ1が誘導したE-カドヘリンの阻害を救済することを介して皮膚の物理的完全性を高めることを示している。上のパネルはE-カドヘリン及び負荷対照としてのβ-チューブリンについてのウエスタンブロットを示し、下のパネルはE-カドヘリン/β-チューブリンの比を示す。上皮・間葉転換(EMT)は上皮の生物学、癌の発生及び線維形成の決定的な要素である。皮膚におけるTGFβシグナル伝達の慢性的な活性化は最終的に線維形成(ケロイド)をもたらす。角化細胞のEMTは正常な創傷治癒過程における適応反応である。
【0217】
それは、E-カドヘリン(角化細胞の完全性及び密着結合の形成の重要な要素)発現の低下及び細胞性フィブロネクチン(フィブロネクチン・EDA)産生の上方調節を特徴とする。後者は粘膜組織修復の間での上皮細胞の非常に重要な保護的要素である。乾癬における角化細胞の慢性的なEMTは疾病の病態形成の重要な要素であると示されている。EMTがEBSの病態形成に関与するかどうかは未だに分かっていない。しかしながら、TGFβのシグナル伝達の上方調節がEBSに関連する慢性創傷に存在することは予測される。従って、過剰なTGFβの調節は皮膚の角化細胞に影響を与え、線維芽細胞はEBSの治療プログラムにおける有益な選択肢である。INM-517は、TGFβへの曝露の後のE-カドヘリンの救済に対して強力で効き目のある効果を示す一方で、フィブロネクチン・EDAの産生を維持する(双方の効果は皮膚の傷縫合/創傷治癒に有益である)。図25は、INM-750がヒト角化細胞による細胞保護性のフィブロネクチン・EDAのTGFβ1が誘導した発現を維持することによって創傷治癒過程を促進することを示している。上のパネルはフィブロネクチン・EDA及び負荷対照としてのβ-チューブリンについてのウエスタンブロットを示し、下のパネルはフィブロネクチン・EDA/β-チューブリンの比を示す。
【0218】
本明細書にて例証して記載されている本発明は、本明細書で具体的に開示されていない要素(単数)または要素(複数)、限定(単数)または限定(複数)の非存在下で好適に実践することができる。従って、たとえば、用語「comprising」、「including」、「containing」等は限定しないで拡張的に読まれるべきである。さらに、本明細書で採用されている用語及び表現は限定ではなく説明の言い回しとして使用されており、将来示され、記載されるものの同等物またはその一部を排除するそのような用語及び表現を使用する意図はなく、種々の修正は請求されている本発明の範囲内で可能であることが認識される。
【0219】
従って、本発明は好まれる実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているけれども、本明細書で開示されている本発明の修正及び変更は当業者によって再区分することができ、そのような修正及び変更は本明細書で開示されている本発明の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。本発明は本明細書にて広く且つ一般的に記載されている。包括的な開示の範囲内に入る狭い種及び亜属のグループ分けのそれぞれもこれら発明の一部を形成する。これには、削除された物質が具体的にその中に存在したかどうかにかかわらず、条件付きでまたは類概念から主題を取り除く否定的な限定で各発明の包括的な記載が含まれる。
【0220】
加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群という点で記載されている場合、当該技術で教育を受けた者は本発明がそれによってマーカッシュ群の個々のメンバーまたはメンバーの亜群という点でも記載されることを認識するであろう。上記の記載は説明に役立つように意図されているのであって、制約するようには意図されないことも理解されるべきである。上記の記載を論評する際、多数の実施形態が当業者に明らかであろう。従って、本発明の範囲は、上記の記載を参照しないで決定されるべきであるが、代わりに添付のクレームが権利を与えられる同等物の完全な範囲と併せてそのようなクレームを参照して決定されるべきである。特許出版物を含む論文及び参考文献すべての開示は参照によって本明細書に組み入れられる。
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