(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H03M 13/39 20060101AFI20220407BHJP
H03M 13/25 20060101ALI20220407BHJP
H03M 13/45 20060101ALI20220407BHJP
H03M 13/29 20060101ALI20220407BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
H03M13/39
H03M13/25
H03M13/45
H03M13/29
H04L1/00 B
(21)【出願番号】P 2021554122
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033046
(87)【国際公開番号】W WO2021084890
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019195303
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】星 大樹
(72)【発明者】
【氏名】仲田 樹広
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-5134(JP,A)
【文献】特開2008-136006(JP,A)
【文献】特開2013-168891(JP,A)
【文献】R.Herzog et al.,Iterative decoding and despreading improves CDMA-systems using M-ary orthogonal modulation and FEC,Proceedings of ICC'97 - International Conference on Communications,IEEE,1997年06月12日,pp.909-913
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/39
H03M 13/25
H03M 13/45
H03M 13/29
H04L 1/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から受信装置へ無線により信号を送信する無線通信システムにおいて、
前記送信装置は、
伝送対象の信号に対するRS符号化により得られた情報ビット系列のうち、所定の第1ビットを除く第2ビットに対して畳み込み符号化を行う畳み込み符号化手段と、
前記第1ビットと、前記畳み込み符号化手段により得られた符号化ビットとに対して変調処理を行う変調手段とを備え、
前記受信装置は、
前記送信装置からの受信信号に対して復調処理を行い、前記符号化ビットに対するビット対数尤度比を算出する第1復調手段と、
前記第1復調手段により算出された前記符号化ビットに対するビット対数尤度比と、前記第2ビットの情報ビットに対する第1事前情報とに基づいて、事後確率が最大化するように前記第2ビットの情報ビットの復号を行うと共に、前記第2ビットに対する対数尤度比及び前記第2ビットの情報ビットに対する第2事前情報を算出する最大事後確率復号手段と、
前記受信信号と、前記最大事後確率復号手段により算出された前記第2事前情報と、前記第1ビットの情報ビットに対する第3事前情報とに基づいて、前記第1ビットに対する対数尤度比を算出する第2復調手段と、
前記第2復調手段により算出された前記第1ビットに対する対数尤度比と、前記最大事後確率復号手段により算出された前記第2ビットに対する対数尤度比とに基づいて、前記伝送対象の信号を復号する復号手段と、
前記復号手段から出力される復号結果の情報に基づいて、前記第1事前情報を生成して前記最大事後確率復号手段にフィードバックすると共に、前記第3事前情報を生成して前記第2復調手段にフィードバックする事前情報フィードバック手段とを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記送信装置は、
前記伝送対象の信号を所定の長さの単位でパケット化し、該パケットをRS符号化するRS符号化手段と、
前記RS符号化手段によるRS符号化後の順序を並べ替えて前記情報ビット系列を取得する第1インタリーブ手段とを更に備え、
前記送信装置の前記事前情報フィードバック手段は、
前記復号手段から出力される前記復号結果の情報に対し、前記送信装置の前記第1インタリーブ手段と同じ順序の並べ替えを施す第2インタリーブ手段と、
前記第2インタリーブ手段による並べ替え後の情報を前記第1ビットに対する情報又は前記第2ビットに対する情報に振り分け、前記第1ビットに対する情報を前記第3情報として前記第2復調手段にフィードバックし、前記第2ビットに対する情報を前記第1情報として前記最大事後確率復号手段にフィードバックする事前情報生成手段とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線通信システムにおいて、
前記受信装置の復号手段は、
前記第2復調手段により算出された前記第1ビットに対する対数尤度比と、前記最大事後確率復号手段により算出された前記第2ビットに対する対数尤度比の順序を並べ替える対数尤度比並べ替え手段と、
前記対数尤度比並べ替え手段による並べ替え後の対数尤度比を硬判定し、復号結果を算出する硬判定手段と、
前記対数尤度比並べ替え手段による並べ替え後の対数尤度比を信頼度に変換する変換手段と、
前記硬判定手段による復号結果と前記変換手段による変換結果のそれぞれに対して、前記送信装置の前記第1インタリーブ手段とは逆順の並べ替えを施すデインタリーブ手段と、
前記デインタリーブ手段による並べ替え後の復号結果をパケット化し、パケット内における信頼度が低い順にNパターン(Nは複数)でパケット内の信号を消失させる消失手段と、
前記消失手段により得られたNパターンのパケットの各々に対してRS復号を行うRS復号手段と、
前記RS復号手段により復号されたN個のパケットの各々に対してシンドロームを計算し、正しく復号できたパケットであるか、誤りが残留したパケットであるかを判断するシンドローム計算手段と、
前記シンドローム計算手段による判断結果に基づいて、前記RS復号手段により復号されたN個のパケットの中から復号結果として出力するパケットを選択する選択手段とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
請求項1に記載の無線通信システムにおいて、
前記最大事後確率復号手段は、BCJR復号処理を行うBCJR復号手段、または、SOVA復号処理を行うSOVA復号手段であることを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
送信装置から受信装置へ無線により信号を送信する無線通信方法において、
前記送信装置が、
伝送対象の信号に対するRS符号化により得られた情報ビット系列のうち、所定の第1ビットを除く第2ビットに対して畳み込み符号化を行い、
前記第1ビットと、前記畳み込み符号化により得られた符号化ビットとに対して変調処理を行い、
前記受信装置が、
前記送信装置からの受信信号に対して復調処理を行い、前記符号化ビットに対するビット対数尤度比を算出し、
前記算出された前記符号化ビットに対するビット対数尤度比と、前記第2ビットの情報ビットに対する第1事前情報とに基づいて、事後確率が最大化するように前記第2ビットの情報ビットの復号を行うと共に、前記第2ビットに対する対数尤度比及び前記第2ビットの情報ビットに対する第2事前情報を算出し、
前記受信信号と、前記算出された前記第2事前情報と、前記第1ビットの情報ビットに対する第3事前情報とに基づいて、前記第1ビットに対する対数尤度比を算出し、
前記前記第1ビットに対する対数尤度比と、前記算出された前記第2ビットに対する対数尤度比とに基づいて、前記伝送対象の信号を復号し、
前記復号の結果を示す情報に基づいて、前記1事前情報を生成して前記第2ビットの情報ビットの復号用にフィードバックすると共に、前記第3事前情報を生成して前記第1ビットに対する対数尤度比の算出用にフィードバックすることを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける繰り返し誤り訂正処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン放送番組素材伝送用の無線伝送装置(FPU:Field Pick-up Unit)では、マイクロ波帯無線伝送方式としてQAM(Quadrature Amplitude Modulation;直交振幅変調)方式が採用されている(例えば、非特許文献1参照)。この無線伝送方式の誤り訂正では、連接符号方式が採用されている。連接符号方式では、外符号としてRS(Reed Solomon)符号、内符号として畳み込み符号が用いられ、これらはインターリーバを介して接続される。受信機側では、復調信号に対して、内符号に対する誤り訂正としてビタビ復号、外符号に対する誤り訂正としてRS復号が用いられている。
【0003】
図1は、非特許文献1に開示された無線伝送方式を採用した無線通信システムの一例を示している。以下の説明において、ブロック11~15の処理は、送信機側で行われ、ブロック17~21の処理は、受信機側で行われる。
【0004】
画像、データなどの伝送対象となる情報信号は、RS符号化部11に入力される。RS符号化部11は、入力された情報信号を所定の長さの単位でパケット化し、当該パケットに対してRS符号化を施す。例えば、FPUで用いられているRS符号は、符号長204バイト、組織長188バイトの(204,188)符号が採用されている。RS符号化部11によるRS符号化後の信号は、受信機での誤り訂正能力を改善するため、インタリーブ部12により順序が並べ替えられる。
【0005】
インタリーブ部12による並べ替え後の信号は、S/P変換部13により(m-1)ビットのパラレルデータに変換される。mは、1送信シンボル当たりに載せるビット数を示している。例えば、m=4の場合は、16QAM方式(16値直交振幅変調方式)、m=6の場合は、64QAM方式(64値直交振幅変調方式)などのデジタル多値変調方式となる。パラレルデータに変換する際、パラレルデータの内の下位の1ビット(以下、「下位ビット」と称する)と、残りの(m-2)ビット(以下、「上位ビット」と称する)に振り分け、下位ビットは畳み込み符号化部14に入力され、上位ビットは変調部15に入力される。
【0006】
畳み込み符号化部14では、情報ビット系列の所定の位置の組み合わせに対して排他的論理和を演算することにより、畳み込み符号化が行われる。変調部15では、上位ビットと、畳み込み符号化部14による畳み込み符号化後の信号2ビットのデータとが、2m QAM変調方式に従って無線信号に変換される。非特許文献1では二次変調方式にシングルキャリア方式を用いているが、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing;直交波周波数分割多重)などの変調方式を用いることも可能であり、本発明では本質的には変調方式に制約はない。
【0007】
変調部15で変調された信号は、伝搬路16を経由して、復調部17に入力される。復調部17では、変調部15での変調に対応する復調処理を行う。復調部17は、復調結果として、上位ビットに対する情報ビットLLR(Log Likelihood Ratio;対数尤度比)に対応する硬判定復号結果をP/S部19に出力し、下位ビットに対する符号化ビットLLRをビタビ復号部18に出力する。情報ビットLLRは、上位ビットに対する情報ビットの信頼度情報である。符号化ビットLLRは、下位ビットに対する符号化ビットの信頼度情報である。
【0008】
ビタビ復号部18では、復調部17で得られた符号化ビットLLRをトレリスダイアグラム上に展開して、最尤のLLR系列を選択し、その系列に対応する硬判定復号結果をP/S変換部19に出力する。P/S変換部19では上位ビットに対する硬判定復号結果と下位ビットに対する硬判定復号結果をデインタリーブ部20に出力する。P/S変換部19から出力される信号は、デインタリーブ部20によりインタリーブ部12とは逆の並べ替えが行われ、順序が元に戻される。デインタリーブ部20の結果はRS復号部21に入力され、RS復号処理が施される。(204,188)符号の場合には、RS復号前のビット誤り率が2×10-4 以下であれば、RS復号により疑似エラーフリーとすることができ、伝送誤りのない素材伝送が可能となる。
【0009】
QAM方式における繰り返し誤り訂正処理技術に関し、これまでに種々の発明が提案されている。例えば、特許文献1に開示された発明では、送信装置側において、シリアル/パラレル変換した送信データの内、1ビットの信号を畳み込み符号器に入力し、その出力の2ビットと畳み込み符号器に入力しなかった他の信号との組み合わせにより、それぞれ実数部・虚数部に分け、それぞれ独立に送信する信号点を決める。受信装置側において、実数部・虚数部独立に領域判定、メトリック設定を行い、ビタビ復号の結果を送信装置側の符号器と同構成の畳み込み符号器に入力して、その出力と領域判定の情報から送信データを復号する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【文献】ARIB STD-B11 2.2版、「テレビジョン放送番組素材伝送用可搬形マイクロ波帯デジタル無線伝送システム」、一般社団法人電波産業会
【文献】特許庁:標準技術集[技術分類]3-3-2 MIMO周辺技術/誤り制御技術/誤り訂正復号化技術,<https://www.jpo.go.jp/resources/report/sonota/document/hyoujun_gijutsu/h29_mimo.pdf>.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
FPUは、受信レベルが低くCNR(Carrier to Noise power Ratio:搬送波電力対雑音電力比)が低下しているような環境で受信が行われることも多い。このような劣悪な環境では、ビット誤り率が多くなり、ビタビ復号後の誤り率が2×10-4 を上回ってしまい、正しい視聴ができなくなってしまうことがある。正しく伝送するために必要な(外復号後のビット誤り率が0となる)CNRは、所要CNRと称される。誤り訂正能力を改善することにより所要CNRを改善することは、無線機の恒久的な課題の一つである。
【0013】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、送信装置から受信装置へ無線により信号を送信する無線通信システムの所要CNRを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、上記の目的を達成するために、送信装置から受信装置へ無線により信号を送信する無線通信システムを以下のように構成した。
すなわち、送信装置において、以下のような処理を行う。畳み込み符号化手段が、伝送対象の信号に対するRS符号化により得られた情報ビット系列のうち、所定の第1ビットを除く第2ビットに対して畳み込み符号化を行う。変調手段が、第1ビットと、畳み込み符号化手段により得られた符号化ビットとに対して変調処理を行う。
【0015】
また、受信装置において、以下のような処理を行う。第1復調手段が、送信装置からの受信信号に対して復調処理を行い、符号化ビットに対するビット対数尤度比を算出する。最大事後確率復号手段が、第1復調手段により算出された符号化ビットに対するビット対数尤度比と、第2ビットの情報ビットに対する第1事前情報とに基づいて、事後確率が最大化するように第2ビットの情報ビットの復号を行うと共に、第2ビットに対する対数尤度比及び第2ビットの情報ビットに対する第2事前情報を算出する。第2復調手段が、受信信号と、最大事後確率復号手段により算出された第2事前情報と、第1ビットの情報ビットに対する第3事前情報とに基づいて、第1ビットに対する対数尤度比を算出する。復号手段が、第2復調手段により算出された第1ビットに対する対数尤度比と、最大事後確率復号手段により算出された第2ビットに対する対数尤度比とに基づいて、伝送対象の信号を復号する。事前情報フィードバック手段が、復号手段から出力される復号結果の情報に基づいて、第1事前情報を生成して最大事後確率復号手段にフィードバックすると共に、第3事前情報を生成して第2復調手段にフィードバックする。
【0016】
このような構成によれば、受信装置において、最大事後確率復号とRS復号が反復的に繰り返されることになる。その結果、各々の誤り訂正能力を徐々に改善できるので、所定の反復回数を経た後には大きな改善効果を得ることができる。したがって、所要CNRを改善できる無線通信システムを提供することができる。
【0017】
ここで、一構成例として、送信装置において、更に以下のような処理を行う。すなわち、RS符号化手段が、伝送対象の信号を所定の長さの単位でパケット化し、該パケットをRS符号化する。第1インタリーブ手段が、RS符号化手段によるRS符号化後の順序を並べ替えて情報ビット系列を取得する。第1インタリーブ手段により取得された情報ビット系列は、第1ビット部分が変調手段に入力され、第2ビット部分が畳み込み符号化手段に入力される。
【0018】
また、受信装置の事前情報フィードバック手段において、以下のような処理を行う。第2インタリーブ手段が、復号手段から出力される復号結果の情報に対し、送信装置の第1インタリーブ手段と同じ順序の並べ替えを施す。事前情報生成手段が、第2インタリーブ手段による並べ替え後の情報を第1ビットに対する情報又は第2ビットに対する情報に振り分け、第1ビットに対する情報を第3情報として第2復調手段にフィードバックし、第2ビットに対する情報を第1情報として最大事後確率復号手段にフィードバックする。
【0019】
また、受信装置の復号手段において、以下のような処理を行う。対数尤度比並べ替え手段が、第2復調手段により算出された第1ビットに対する対数尤度比と、最大事後確率復号手段により算出された第2ビットに対する対数尤度比の順序を並べ替える。硬判定手段が、対数尤度比並べ替え手段による並べ替え後の対数尤度比を硬判定し、復号結果を算出する。変換手段が、対数尤度比並べ替え手段による並べ替え後の対数尤度比を信頼度に変換する。デインタリーブ手段が、硬判定手段による復号結果と前記変換手段による変換結果のそれぞれに対して、送信装置の第2インタリーブ手段とは逆順の並べ替えを施す。消失手段が、デインタリーブ手段による並べ替え後の復号結果をパケット化し、パケット内における信頼度が低い順にNパターン(Nは複数)でパケット内の信号を消失させる。復号手段が、消失手段により得られたNパターンのパケットの各々に対してRS復号を行う。シンドローム計算手段が、RS復号手段により復号されたN個のパケットの各々に対してシンドロームを計算し、正しく復号できたパケットであるか、誤りが残留したパケットであるかを判断する。選択手段が、シンドローム計算手段による判断結果に基づいて、RS復号手段により復号されたN個のパケットの中から復号結果として出力するパケットを選択する。
【0020】
このような構成によれば、受信信号の復号を繰り返すうちに、第1ビット(例えば、上位ビット)に対する対数尤度比の信頼度と第2ビット(例えば、下位ビット)に対する対数尤度比の信頼度を徐々に向上させることができ、所定の反復回数を経た後には大きな改善効果を得ることができる。
【0021】
なお、最大事後確率復号手段としては、例えば、BCJR(Bahl-Cocke-Jelinek-Raviv)復号処理を行うBCJR復号手段を用いることができる。また、別の例として、SOVA(Soft Output Viterbi Algorithm)復号処理を行うSOVA復号手段を用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、送信装置から受信装置へ無線により信号を送信する無線通信システムの所要CNRを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの受信機の構成例を示す図である。
【
図3】RS復号前のCNR対ビット誤り特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの受信機の構成について、
図2を用いて詳細に説明する。なお、送信機側は
図1で示した構成と同様であるため、詳細な説明は省略する。
図1で説明したように、送信機側で誤り訂正符号化及び変調処理がなされた信号が伝搬路16に送出され、受信機に到達する。
【0025】
受信機で受信された信号は、上位ビットLLR算出部34と符号化ビットLLR算出部32に入力される。
受信機側での誤り訂正復号について説明する前に、誤り訂正符号と変復調の対応付けについて説明する。送信機側の畳み込み符号化部14の出力である符号化ビットは‘0’と‘1’であるが、変復調や軟判定誤り訂正処理では、ビット‘0’を+1、ビット‘1’を-1に置き換えている。
【0026】
符号化ビットLLR算出部32では、受信信号y
j に基づいて、(式1)に示す、送信側の畳み込み符号化部14の出力である符号化ビットに対する符号化LLR L
j
c(a),BCJR を算出する。ここで、jは順序番号を示している。
【数1】
【0027】
Lj
c(a),BCJR の算出方法は、ZF(Zero Forcing)やMMSE(Minimum Mean Square Error)といった波形等化を行った後に、等化後の信号からLj
c(a),BCJR を算出する方法や、MLD(Maximum Likelihood Detection)のように受信信号レプリカを算出して、受信信号とのユークリッド二乗距離に基づいてLj
c(a),BCJR を算出する方法などがある。本発明は、Lj
c(a),BCJR の算出方式に依存しないため、詳細な説明は省略する。
復調器21で得られた符号化LLR Lj
c(a),BCJR は、BCJR復号部33に入力される。BCJRの名称は発明者であるBahl,Cocke,Jelinek,Ravivの頭文字から命名されている。
【0028】
以下に、BCJRアルゴリズムに基づいた最大事後確率復号について説明する。詳細な説明は、非特許文献2等を参照されたい。畳み込み符号化部14に対応するトレリス線図において、時刻jの状態をS
j 、時刻j+1の状態をS
j+1 とすると、畳み込み符号化部14への入力情報ビットu
j は、S
j からS
j+1 への状態遷移に対応している。そのため、受信系列yに対する情報ビットの事後確率p(u
j |y)は、(式2)となる。
【数2】
ここで、y
1~j-1 は、1~j-1までの受信系列、y
j+1~J は、j+1~Jまでの受信系列を示している。
【0029】
この(式2)に対して、以下の置換を行う。
【数3】
【0030】
(式3)を(式2)に代入して書き換えると、(式4)となる。
【数4】
【0031】
ここで、α(S
j-1 )は前向きメトリック、β(S
j )は後向きメトリックと称されることが多い。このα(S
j-1 )、β(S
j )は、(式5)、(式6)のように再帰的に表現される。
【数5】
【数6】
【0032】
(式5)、(式6)に対して対数をとると、(式7)、(式8)となる。
【数7】
【数8】
【0033】
また、演算量を削減するために、(式5)、(式6)のΣ( )の処理を最大値選択max( )に置き換えて、(式9)、(式10)としても、大きな特性劣化は生じない。
【数9】
【数10】
【0034】
また、(式3)の2番目の式に対して対数をとると、(式11)となる。
【数11】
【0035】
ここで、Γ(S
j-1 ,S
j )は、(式12)で表される。
【数12】
L
j
c(a),BCJR は、(式1)で示した符号化ビットに対する対数尤度比であり、L
j
u(a,l),BCJR は、下位ビットに対する情報ビットu
l の事前情報である。
【0036】
以上の処理により、BCJR復号部33では、上記のBCJRアルゴリズムに従ってMax-Log-MAP復号と呼ばれる最大事後確率復号に近似の復号処理を行い、情報ビットu
l の事後情報L
j
u(p,l),BCJR を出力する。事後情報L
j
u(p,l),BCJR は、BCJR復号結果である情報ビットu
l の信頼度を示している。
【数13】
【0037】
本発明の目的は、BCJR復号部33とRS復号部43の結果をインタリーブ46を介して反復処理することにより、所要CNRの改善を図ることにあるが、反復処理の初回では下位ビットに対する情報ビットu
l の知見が得られていないため、事前情報L
j
u(a,l),BCJR は0となり、(式12)に対応するΓ(S
j-1 ,S
j )は(式14)となる。
【数14】
【0038】
また、BCJR復号部33では、下位ビットの符号化ビットに対する外部情報L
j
c(e),BCJR を(式15)で求める。
【数15】
外部情報L
j
c(e),BCJR は、下位ビットに対する情報ビットu
l の事前情報L
j
u(a,l),MLD として上位ビットLLR算出部34に出力される。
【0039】
上位ビットLLR算出部34では、受信信号yj と、BCJR復号部33からの下位ビットに対する情報ビットul の事前情報Lj
u(a,l),MLD と、事前情報生成部48からの上位ビットに対する情報ビットuh の事前情報Lj
u(a,h),MLD とに基づいて、上位ビットに対する事後情報ビットLLR Lj
u(p,h),MLD を算出する。Lj
u(p,h),MLD の算出方法は、ZFといった波形等化を行った後に、等化後の信号から算出する方法や、MLDのように受信信号レプリカを算出して、受信信号と比較することで直接算出する方法などがある。以下、MLD法を用いる場合を例に説明するが、ZF法やMMSE法を用いる場合も同様である。
【0040】
上位ビットLLR算出部34では、受信候補点に従い、受信信号y
j のレプリカである受信信号レプリカy
j^ を算出する。そして、受信信号y
j と、受信信号レプリカy
j^ と、受信雑音電力の推定結果σ
2^ とに基づいて、ビットLLR L
j
u(p,h),MLD を算出して出力する。ビットLLR L
j
u(p,h),MLD の各成分L
j
u(p),MLD (b
q )の算出は、例えば、(式16)による。
【数16】
ここで、インデックスqは、受信候補点番号でq=1,・・・,Qであり、受信候補点数をQとしたとき、r^ =[r
1^
,・・・,r
Q^
]である。b
q は、受信候補点番号qの受信候補点を構成するビットのインデックスである。b
q (r
q^ )は、受信候補点r
q^ を構成する信号点ベクトルのq番目のビット(‘0’または‘1’)である。
【0041】
ここで、(式17)の近似式を用いると、(式16)は(式18)となる。
【数17】
【数18】
【0042】
LLR並べ替え部35は、上位ビットLLR算出部34から出力された上位ビットLLR Lj
u(p,h),MLD と、BCJR復号部33から出力された下位ビットLLR Lj
u(p,l),BCJRとに対し、送信側で所定の順序に並べ替えたものを元の順序に戻す処理を行い、元の順序に戻した事後情報LLR Lj
u(p) を硬判定部36へ出力する。
【0043】
硬判定器36は、事後情報LLR Lj
u(p) の符号が正の場合には情報ビット‘0’を出力し、負の場合には情報ビット‘1’を出力する。これは、前述した誤り訂正符号と変復調の対応付けによるものである。
硬判定の結果は、S/P変換器38に入力される。S/P変換器38は、硬判定の結果のシリアルビットをRS符号に応じたビット数(一般的には1バイト=8ビット)にパラレル変換する。
【0044】
また、事後情報LLR L
j
u(p) は、LLR/確率変換部37にも入力される。LLR/確率変換部37は、事後情報LLR L
j
u(p) を用いて、(式19)に示す演算を行う。
【数19】
これは、L
j
u(p) =ln{P(u=+1)/P(u=-1)}を逆変換して導出している。このLLR/確率変換器37の出力P
u,j は、情報ビットuに関する誤り確率である。
【0045】
なお、演算処理のダイナミックレンジを低減するために、(式20)に示す変換であってもよい。
【数20】
【0046】
この情報ビット確率P
u,j は、バイト確率変換器39に入力される。バイト確率変換器39は、(式21)に従い、情報ビット確率P
u,j をバイト単位の確率P
u_byte に変換する。
【数21】
【0047】
また、演算処理のダイナミックレンジを低減するために、(式22)を用いることで、積を和に変換してもよい。
【数22】
【0048】
これらバイト確率Pu_byte は、そのバイトの信頼性を示し、値が小さいほど信頼性が低く、誤りが生じている可能性が高いことを示している。
S/P変換38により得られたバイト単位の情報信号は、デインタリーブ部40-1に入力、バイト確率変換器39により得られたバイト確率Pu_byte は、デインタリーブ部40-2に入力される。これらデインタリーブ部40-1,40-2は、入力に対してインタリーブ部12の並び替えと逆の並び替えを行い、元の順序に戻す。
【0049】
デインタリーブ部40-2によるバイト確率Pu_byte のデインタリーブ結果は、昇順並べ替え部41に入力される。昇順並べ替え部41は、RS復号器で処理するRSパケット内のバイト確率が小さい順にその位置を把握する。
【0050】
消失部42では、後続する複数のRS復号部43に対する消失パターンを算出するが、消失部42の処理を説明する前に、消失復号の簡単な説明を行っておく。
前述したRS(204,188)符号の最小距離dmin は、dmin =204-188=16である。
【0051】
RS復号の特徴として、(式23)であれば正しい復号が可能となる。
【数23】
ここで、eは、誤りの位置が予め分かっている場合の消失訂正バイト数を示しており、tは、誤り位置が不明な場合の誤り訂正バイト数を示している。
【0052】
全ての誤りの位置が不明な場合には、(式23)を満たすためにはt≦8であり、RSパケット(204バイト)中の8バイトまで誤り訂正が可能となる。また、全ての誤り位置が分かっている場合には、e≦16であり、16バイトまで訂正可能である。このように、誤り位置をRS復号部に提示することで、提示しない場合と比較して誤り訂正能力は最大2倍まで増加する。
【0053】
消失部42では、デインタリーブ部40-1によるデインタリーブ後のバイト単位の情報信号に対し、昇順並替え部41から得られた信号に基づいて、誤り位置を示す消失パターンを複数作成する。具体的には、第一の消失パターンは、消失バイト数eを0とし、誤り位置は無しとする。第二の消失パターンは、例えば、消失バイト数eを2とし、その消失バイトの位置は昇順並べ替え部41の結果の中から最も値の小さいバイト確率Pu_byte となる位置とする。第三の消失パターンは、例えば、消失バイト数eを4とし、昇順並べ替え部41の結果の中からバイト確率Pu_byte が小さい順に3バイトを消失バイトの位置とする。同様に第四の消失パターン以降では、消失バイト数eを6,8,10,12,14とし、消失バイトの位置は昇順並べ替え部41の結果から値が小さい順に割り当てる。
【0054】
消失部42で算出した消失パターンは、第一の消失パターンから順にRS復号部43-1、RS復号部43-2、RS復号部43-3、RS復号部43-4、・・・、RS復号部43-Nに入力される。RS復号部43-1~43-Nは、提示された消失パターンに対してRS復号を実施する。
【0055】
RS復号部43-1~43-Nからの復号結果Dk (k=1~最大消失パターン数)は、それぞれ、シンドローム計算部44-1~44-Nに入力される。シンドローム計算部44では、各復号結果Dk に対してシンドロームSk を計算する。シンドロームは、RS符号部により生成された符号はRS符号生成多項式で除算すると除算結果が0となることを利用して、誤り検出に用いられる。すなわち、RF復号結果からシンドロームSk を計算し、シンドロームSk が0であれば正しく復号されたことを意味しており、シンドロームSk が0でなければ誤りが残留しているものと判断する。
【0056】
各シンドロームSk は、選択部45に入力される。選択部45では、以下に示すように、シンドロームSk に基づいて復号結果Dk を選択する。
選択部45は、シンドローム計算部44-1~44-Nで得られたシンドロームSk がSk =0となるkが存在する場合に、そのパケットの正復号結果Wとして、W=ωを出力すると共に、Sk =0となる復号結果Dk を選択して出力する。ここで、ωは事前情報係数であり、0より大きい所定の係数とし、例えばω=0.8とする。Sk =0となる復号結果が存在しない場合には、正しい復号ができなかったものとして、W=0とする。
【0057】
ここで、(式1)の定義に従い、復号結果Dk を構成するビットが‘0’の場合には+1に置換え、‘1’の場合には-1に置換える。また、その結果に対してパケット全体に正復号結果Wを乗じる。すなわち、正しく復号された結果が無い場合には、0に置き換える。
【0058】
これら処理の具体例について説明する。
正しく復号できた結果Dk が、{“10110010”,“00111100”,・・・}であったとすると、ω=0.8の場合には、置き換えた結果D・Wは、{“-0.8 +0.8 -0.8 -0.8 +0.8 +0.8 -0.8 +0.8”,“+0.8 +0.8 -0.8 -0.8 -0.8 -0.8 +0.8 +0.8”,・・・}となる。また、正しい復号結果が存在しない場合には、そのパケットは全て0{“0 0 0 0 0 0 0 0”,“0 0 0 0 0 0 0 0”,・・・}となる。
【0059】
この結果は、インタリーブ部46に入力される。インタリーブ部46は、送信機側のインタリーブ部23と同様の順序並べ替えを行う。インタリーブされた結果は、P/S変換器47を経由して、バイト単位のパラレル信号からビット単位のシリアル信号に変換され、事前情報生成部48に入力される。
【0060】
事前情報生成部48では、入力されたRS復号可否の情報を変調方式情報に従って上位ビットに対する情報と下位ビットに対する情報とに振り分ける。下位ビットに対するRS復号可否の情報は、BCJR復号部33に事前情報ビットLLR Lj
u(a,l),BCJR として入力される。上位ビットに対するRS復号可否の情報は、上位ビットLLR算出部に事前情報ビットLLR Lj
u(a,h),MLD として入力される。
【0061】
(式12)で述べたように、Γ(Sj-1 ,Sj )は符号化ビットLLR Lj
c(a),BCJR と事前情報ビットLLR Lj
u(a,l),BCJR の和であり、RS復号可否の情報は事前情報ビットLLR Lj
u(a,l),BCJR としてBCJR復号部33に入力される。これら事前情報ビットLLRは、インタリーブ部46によりパケット単位のまとまった信号が分散される。すなわち、正しく復号できなかった場合の事前情報0と正しく復号できた場合の事前情報±ωとが分散されてBCJR復号部33に入力されることになる。
【0062】
これら処理を(式24)で示す。RS復号結果Dと正復号結果Wを乗じた信号に対してインタリーブ関数Π[ ]により並べ替えを行い、その後{ }
P→S によりパラレルシリアル変換して、事前情報ビットLLR L
j
u(a,l),BCJR として加算する。
【数24】
【0063】
BCJR復号では、初回の処理では誤った系列推定を行ってしまった場合であっても、(式24)のように事前情報ビットLLR Lj
u(a,l),BCJRを入力することで正しい系列推定を行うことができるようになり、ビット誤り率を低減することができる。
【0064】
以上、説明した処理を複数回繰り返すことにより、BCJR復号部33と上位ビットLLR算出部34とRS復号部43-1~43-Nが反復処理を繰り返す毎に、各々の誤り訂正能力を徐々に改善することで、所定の反復回数を経た後には大きな改善効果を得ることができる。
【0065】
図3は、非特許文献1に開示されている構成において、拘束長7、符号化率1/2の畳み込み符号に対するBCJR復号とRS(204,188)復号を繰り返し処理した場合のRS復号前のCNR対ビット誤り率特性を示した図である。変調方式は32QAMを用いている。前述したように、RS復号前のビット誤り率が2×10
-4 が、後続のRS復号でエラーフリーとなるビット誤り率である。この結果から分かるように、繰り返し処理を行うことで、約7dBの所要CNRの改善を実現することができる。
【0066】
以上説明したように、本例では、送信機および受信機は次のように動作する。
送信機において、RS符号化部11が、伝送対象の信号を所定の長さの単位でパケット化し、該パケットをRS符号化する。インタリーブ部12が、RS符号化部11によるRS符号化後の順序を並べ替えて情報ビット系列を取得する。S/P変換部13が、インタリーブ部12により得られた情報ビット系列を上位ビット(uh )又は下位ビット(ul )に振り分ける。畳み込み符号化部14が、S/P変換部13により振り分けられた下位ビットに対して畳み込み符号化を行う。変調部15が、S/P変換部13により振り分けられた上位ビットと、畳み込み符号化部14により得られた符号化ビットとに対して変調処理を行う。
【0067】
受信機において、符号化ビットLLR算出部32が、送信装置からの受信信号(yj )に対して復調処理を行い、符号化ビットに対するビット対数尤度比(Lj
c(a),BCJR )を算出する。BCJR復号部33が、符号化ビットLLR算出部32により算出された符号化ビットに対するビット対数尤度比(Lj
c(a),BCJR )と、下位ビットの情報ビットに対する事前情報(Lj
u(a,l),BCJR ;第1事前情報)とに基づいて、事後確率が最大化するように下位ビットの情報ビットの復号を行うと共に、下位ビットに対する対数尤度比(Lj
u(p,l),BCJR )及び下位ビットの情報ビットに対する事前情報(Lj
u(a,l),MLD ;第2事前情報)を算出する。上位ビットLLR算出部34が、受信信号(yj )と、BCJR復号部33により算出された事前情報(Lj
u(a,l),MLD ;第2事前情報)と、上位ビットの情報ビットに対する事前情報(Lj
u(a,h),MLD ;第3事前情報)とに基づいて、上位ビットに対する対数尤度比(Lj
u(p,h),MLD )を算出する。
【0068】
その後、受信機は、上位ビットLLR算出部34により算出された上位ビットに対する対数尤度比(Lj
u(p,h),MLD )と、BCJR復号部33により算出された下位ビットに対する対数尤度比(Lj
u(p,l),BCJR )とに基づいて、伝送対象の信号を復号する復号処理を行う。この復号処理では、LLR並べ替え部35が、上位ビットLLR算出部34により算出された上位ビットに対する対数尤度比(Lj
u(p,h),MLD )と、BCJR復号部33により算出された下位ビットに対する対数尤度比(Lj
u(p,l),BCJR )の順序を並べ替える。硬判定部36が、LLR並べ替え部35による並べ替え後の対数尤度比を硬判定し、復号結果を算出する。LLR/確率変換部37が、LLR並べ替え部35による並べ替え後の対数尤度比を信頼度に変換する。デインタリーブ部40-1,40-2が、硬判定部36による復号結果とLLR/確率変換部37による変換結果のそれぞれに対して、送信機のインタリーブ部12とは逆順の並べ替えを施す。消失部42が、デインタリーブ部40-1による並べ替え後の復号結果をパケット化し、パケット内における信頼度が低い順にNパターン(Nは複数)でパケット内の信号を消失させる。RS復号部43-1-Nが、消失部42により得られたNパターンのパケットの各々に対してRS復号を行う。シンドローム計算部44-1~44-Nが、RS復号部43-Nにより復号されたN個のパケットの各々に対してシンドロームを計算し、正しく復号できたパケットであるか、誤りが残留したパケットであるかを判断する。選択部45が、シンドローム計算部44-1~44-Nによる判断結果に基づいて、RS復号部43-1~43-Nにより復号されたN個のパケットの中から復号結果として出力するパケットを選択する。
【0069】
また、受信機は、選択部45から出力される復号結果の情報(D・W)に基づいて、下位ビットの情報ビットに対する事前情報(Lj
u(a,l),BCJR ;第1事前情報)を生成してBCJR復号部33にフィードバックすると共に、上位ビットの情報ビットに対する事前情報(Lj
u(a,h),MLD ;第3事前情報)を生成して上位ビットLLR算出部34にフィードバックする事前情報フィードバック処理を行う。この事前情報フィードバック処理では、インタリーブ部46が、選択部45から出力される復号結果の情報(D・W)に対し、送信器のインタリーブ部12と同じ順序の並べ替えを施す。事前情報生成部48が、インタリーブ部46による並べ替え後の情報を上位ビットに対する情報又は下位ビットに対する情報に振り分け、上位ビットに対する情報を上位ビットの情報ビットに対する事前情報(Lj
u(a,h),MLD ;第3事前情報)として上位ビットLLR算出部34にフィードバックし、下位ビットに対する情報を下位ビットの情報ビットに対する事前情報(Lj
u(a,l),BCJR ;第1事前情報)としてBCJR復号部33にフィードバックする。
【0070】
このような構成により、受信機において、BCJR復号とRS復号が反復的に繰り返されることになる。その結果、各々の誤り訂正能力を徐々に改善できるので、上位ビットに対する対数尤度比の信頼度と下位ビットに対する対数尤度比の信頼度を徐々に向上させることができ、所定の反復回数を経た後には大きな改善効果を得ることができる。したがって、所要CNRを改善できる無線通信システムを提供することができる。
【0071】
ここで、本例の無線通信システムでは、送信機が本発明に係る送信装置に対応し、受信機が本発明に係る受信装置に対応している。なお、送信機と受信機を備えた無線通信装置同士が互いに無線通信する構成など、他の形態の無線通信システムであってもよい。
【0072】
また、本例の無線通信システムでは、本発明に係る最大事後確率復号手段として、BCJR復号処理を行うBCJR復号部33を用いているが、これに限定されない。例えば、BCJR復号部33に代えて、SOVA復号処理を行うSOVA復号器を用いてもよく、最大事後確率復号に近似の復号処理を行えればよい。
【0073】
また、本例の無線通信システムでは、上位ビットが本発明に係る第1ビットに対応し、下位ビットが本発明に係る第2ビットに対応しているが、これに限定されない。例えば、上記の割り当てを逆にしてもよい(すなわち、下位ビットを本発明に係る第1ビットとし、上位ビットを本発明に係る第2ビットとしてもよい)。
【0074】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、他の無線通信システムに広く適用することができることは言うまでもない。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0075】
この出願は、2019年10月28日に出願された日本出願特願2019-195303を基礎として優先権の利益を主張するものであり、その開示の全てを引用によってここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、送信装置から受信装置へ無線により信号を送信する無線通信システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
11:RS符号器、 12:インタリーブ部、 13:S/P変換部、 14:畳み込み符号化部、 15:変調部、 16:伝搬路、 17:復調部、 18:ビタビ復号部、 19:P/S変換部、 20:デインタリーブ部、 21:RS復号部、 32:符号化ビットLLR算出部、 33:BCJR復号部、 34:上位ビットLLR算出部、 35:LLR並べ替え部、 36:硬判定部、 37:LLR/確率変換部、 38:S/P変換部、 39:バイト確率変換部、 40-1,40-2:デインタリーブ部、 41:昇順並べ替え部、 42:消失部、 43-1~43-N:RS復号部、 44-1~44-N:シンドローム計算部、 45:選択部、 46:インタリーブ部、 47:P/S変換部、 48:事前情報生成部