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特許7054890靴底部材およびそれを有するルームシューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】靴底部材およびそれを有するルームシューズ
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/38 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
A43B13/38 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017025091
(22)【出願日】2017-02-14
(65)【公開番号】P2018130226
(43)【公開日】2018-08-23
【審査請求日】2019-12-05
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】595019474
【氏名又は名称】徳武産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】西尾 政展
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】関口 哲生
【審判官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】実公昭56-19845(JP,Y2)
【文献】登録実用新案第3174048(JP,U)
【文献】実公昭59-8561(JP,Y2)
【文献】特開2007-283016(JP,A)
【文献】実開昭63-13006(JP,U)
【文献】実開平3-106905(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B1/00-23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中底および本底が一体になった靴底部材であって、本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出しているフランジ形状縫い代突出部であって、かつ、上方から被せたアッパーの下縁部がフランジ形状縫い代突出部上面に重ねられ全周を縫着するための縫い代突出部を有すること、および中底の表面が人の足の裏の構造に適合した形状であって、中底の足との接触面側には、足の骨格のアーチを保持する凸曲面状隆起部を備え、ならびに、中底の足との接触面側の外周には、外周に足の安定性を高めるための外周隆起部を備えていることを特徴とするルームシューズ靴底部材。
【請求項2】
本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出している前記縫い代突出部は、上部が中底を形成し、下部が本底を形成している、請求項1に記載のルームシューズ靴底部材。
【請求項3】
本底および中底の境界にはつなぎ目がなく一体化されている、請求項1または2に記載のルームシューズ靴底部材。
【請求項4】
本底と中底が同一の材料または異なる材料からなる、請求項1から3のいずれかに記載のルームシューズ靴底部材。
【請求項5】
靴底部材の中底の足との接触面側に、布が貼付されている、請求項1から4のいずれかに記載のルームシューズ靴底部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のルームシューズ靴底部材を有し、前記縫い代突出部に上方から被せたアッパー下縁部が上面に重ねられ縫着されていることを特徴とする中底と本底の一体型ルームシューズ。
【請求項7】
本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出している前記フランジ形状縫い代突出部にバイアステープを巻いて縫い付ける縫い代を覆う処理がされている、請求項6に記載の中底と本底の一体型ルームシューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底部材およびそれを有するルームシューズ、より詳細には中底と本底と縫い代突出部が一体になったルームシューズ靴底部材、および中底と本底の一体型ルームシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
中底(インソール)とは靴の中で足の裏に接する部分の敷物を指すものであり、床面から足裏に伝わる力を分散させることで高い衝撃吸収を実現し、足への負担、さらに全身への負担を軽減する作用を有し、靴一般に採用されている。一般に、中底(インソール)とは、中敷と称される取り外しのできる後入れタイプのものと、靴の製造工程で中に組み込まれる中底の双方を指すことがある。
【0003】
後入れタイプの中敷の例としては、 硬質床上における立ち作業が長時間続いても、着用者の足や腰などに疲労がたまり難くなるようにするために、靴底に外皮が設けられ、外皮が足の爪先部を包容可能な甲皮部及び足の踵部を包容可能な側皮部を有し、靴底の表面に靴中敷が取外し可能に敷設されたルームシューズ(特許文献1)、換気機能を備える靴中敷のクッション体構造であって、進、出気口を設置する可塑性材質の上中敷、下中敷、及び中間にあり面積が比較的小さいスポンジクッションにより構成し、前記上中敷を一体成型する時、足底と接触する上中敷正面のかかと部位には突出面を設置し、前記突出面辺縁の低い位置には数個の進気口を設置し、土踏まずとつま先の間部分には一個或いは数個の凹槽を設置し、前記凹槽底位置には数個の出気口を設置し、これにより空気が流通し換気する過程において、進気口、出気口に使用者の足底が密着し塞ぐことはなくなり、スムーズな換気効果を達成可能である換気機能を備える靴中敷のクッション体構造(特許文献2)や、踵部及び土踏まず部において足のホールド性が高く、踏み付け部においてクッション性が高い中敷として、踵部及び土踏まず部が高密度に成形された合成樹脂発泡体でなり、踏み付け部が低密度に成形された合成樹脂発泡体でなる中敷であって、高密度に成形された合成樹脂発泡体は、踵部と土踏まず部とを合わせた部分の周縁側が傾斜のある土手面を形成するようにその周縁部を立ち上げてある中敷(特許文献3)が挙げられ、このように中敷きには様々な機能を持たせることが提案がされている。
【0004】
また、靴底と一体化された中底であって、衝撃吸収などの作用による履き心地、見栄えおよび製造効率などの改善を図る技術に関するものとしては、例えば、 発泡ゴムを合中底とし、充実ゴムを外底とする2層靴底において、工程数が少なく外観の優れた靴底及びその製法を提供するものとして、 縦方向の糸と横方向の糸を織り込んだ平織織布と、ゴムスポンジと、ソリッドゴムとが順次積層されかつ一体成形されている靴底、および、この靴底の製法として、外底成形用未加硫ゴム生地と、合中底成形用発泡剤入り未加硫ゴム生地と、平織織布とを重ねて、靴底成形型にセットし、加熱加圧して、加硫一体化し合中底を発泡することにより、工程数が少なく、外観の優れた靴底を得る製法が提案されている(特許文献4)。
【0005】
また、見栄えが良く、製造効率に優れかつ加工精度にバラツキが生じ難い下面・周面表皮を備えた室内履物であって、中物芯を袋状表皮で被覆してなる底と、袋状表皮に縫着されたアッパーとを備える。中底表皮とともに袋状表皮を構成する下面・周面表皮が、表皮材とその上に積層された合成樹脂基材とよりなりかつ周縁部にプレス成形によって形成された立上り部を有している室内履物(特許文献5)や、甲革が表材と裏材とからなり、中底と一体にした前記甲革を、中底裏面と本底上面とを接着することにより、本底と一体としている靴であって、前記裏材と中底とを、柔軟性を有する材料で袋状に一体成形するか、若しくは、柔軟性を有する材料で一体成形した前記裏材と中底とを、両材料の境界に沿って少なくとも一部分を縫い合せることで袋状にするかし、前記中底の土踏まず部の両側縁部に、前記表材の土踏まず部の両側下縁部をそれぞれ縫着することを特徴とする靴(特許文献6)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-283016号公報
【文献】特開2009-207873号公報
【文献】特開2005-237625号公報
【文献】特開平11-28103号公報
【文献】特開2007-296176号公報
【文献】特開2005-74952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ルームシューズは、通常、本底をベースとしており、この本底は、芯材とこの芯材部を被覆する被覆部とを備え、本底には、外皮が縫製によって設けられており、この外皮は、布生地により構成されていることが多い。
しかしながら、ルームシューズの本底は柔らかい材質の部材が用いられることが多く、これを着用しての移動あるいは作業の際に硬質床から足や腰部に対して大きな衝撃力を受けることが多い。そのため、硬質の床における立ち作業が長時間続くと、足や腰などに疲労がたまり易くなるという問題がある。こうした問題は、中底(インソール)を利用することにより床からの衝撃力を弱めることで解決されるが、中敷き形式のインソールとすると、作業中にインソールのずれや脱落によりその機能が発揮できなくなることや、適正なインソールを求めることが困難であることがあった。
また、本底と一体化する中底形式のインソールとすると、靴の製造工程が複雑となり、製造工程面、コスト面からみて適切なものであるとは言いがたかった。中敷、中底などを備えたルームシューズを製造するには幾種類もの部材を成形して組み立てる作業が必要となり、製造工程上の問題点となることがあったからである。
本発明は、こうした中底(インソール)を備えた靴の問題点を解決しようとするものであり、構造がシンプルになり、商品生産時に必要な資材点数、工程が少なくなり、コストダウンが可能となる、また、資材が少なくなることによって、管理(在庫等)しやすくなる、さらにまた、靴の製造工程が簡単な、製造工程面、コスト面からみてメリットがあるルームシューズ用の靴底部材およびそれを有するルームシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、こうした中底(インソール)を備えた靴の問題点を、中底(インソール)と本底をあらかじめ一体にした構成とすること、ならびに、それらに縫い代突出部を設けて靴底部材とアッパー部材の結合を容易にすることにより解決するものである。
すなわち、本発明は以下の(1)ないし()に記載のルームシューズ靴底部材を要旨としている。
(1)中底および本底が一体になった靴底部材であって、本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出しているフランジ形状縫い代突出部であって、かつ、上方から被せたアッパーの下縁部がフランジ形状縫い代突出部上面に重ねられ全周を縫着するための縫い代突出部を有すること、および中底の表面が人の足の裏の構造に適合した形状であって、中底の足との接触面側には、足の骨格のアーチを保持する凸曲面状隆起部を備え、ならびに、中底の足との接触面側の外周には、外周に足の安定性を高めるための外周隆起部を備えていることを特徴とするルームシューズ靴底部材。
(2)本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出している前記縫い代突出部は、上部が中底を形成し、下部が本底を形成している、上記(1)に記載のルームシューズ靴底部材。
(3)本底および中底の境界にはつなぎ目がなく一体化されている、上記(1)または(2)に記載のルームシューズ靴底部材。
(4)本底と中底が同一の材料または異なる材料からなる、上記(1)から(3)のいずれかに記載のルームシューズ靴底部材。
(5)靴底部材の中底の足との接触面側に、布が貼付されている、上記(1)から(4)のいずれかに記載のルームシューズ靴底部材。
【0009】
また、本発明は以下の(6)および(7)に記載の中底と本底の一体型ルームシューズを要旨としている。
(6)上記(1)から(5)のいずれかに記載のルームシューズ靴底部材を有し、前記縫い代突出部に上方から被せたアッパー下縁部が上面に重ねられ縫着されていることを特徴とする中底と本底の一体型ルームシューズ。
(7)本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出している前記フランジ形状縫い代突出部にバイアステープを巻いて縫い付ける縫い代を覆う処理がされている、上記(6)に記載の中底と本底の一体型ルームシューズ。


【発明の効果】
【0010】
本発明は、中底および本底が一体になっており、その外周縁にアッパー部分の下縁部の全周を縫着するための縫い代突出部を有するルームシューズ靴底部材およびそれを有するルームシューズを提供することができる。本発明のルームシューズ靴底部材は中底および本底が一体になったシンプルな構造のものであり、また、それらに縫い代突出部を設けて靴底部材とアッパー部材の結合を容易にする構造のものであり、ルームシューズ靴底部材あるいはルームシューズは、生産時に必要な資材点数、工程が少なくなり、コストダウンが可能となる、また、資材が少なくなることによって、管理(在庫等)しやすくなる、さらにまた、靴の製造工程が簡単な、製造工程面、コスト面からみてメリットがあるという効果を奏する。
本発明のルームシューズ靴底部材を用いて、硬質床材からの衝撃を緩和して足や腰に疲労が蓄積することが少ないルームシューズを製造することができる。従来の中敷と称されるインソールでは使用中にインソールのずれや脱落がありインソールの機能が発揮できないことや、適切なインソールを選択することは困難となることがあった。また、靴底と一体化する形式の中底と称されるインソールとすると、靴の製造工程が複雑となり、製造工程面、コスト面からみて適切なものとは言いがたかった。本発明は、こうした中底(インソール)を備えた靴の問題点を、中底および本底が一体になった構造とし、その外周縁にアッパー部分の下縁部の全周を縫着するための縫い代突出部を設けることにより、製造工程上および製造コストの面から極めて有用なものであるとともに、インソールとしての機能を損なうことがない製品を提供することができる。従来のインソールと底が別のものと比較して構造がシンプルになり、商品生産時に必要な資材点数、工程が少なくなり、コストダウンが可能となる。また、資材が少なくなることによって、管理(在庫等)しやすくなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のルームシューズ(フランジ形状縫い代突出部を有する靴底部材の左足)の斜め上方から見た斜視図を示す。
図2】実施例1のルームシューズの斜め下方から見た斜視図を示す。
図3】実施例1のルームシューズの底面図を示す。
図4】実施例1のルームシューズの斜め上方から見た中底表面を説明する図面である。
図5】実施例1の靴底部材の斜め上方から(中底側から)見た外観を示す。
図6】実施例1の靴底部材の下方から(靴底側から)見た外観を示す。
図7】実施例1の靴底部材を斜め上方からから見た斜視図を示す。
図8】実施例1の靴底部材の斜め下方から見た斜視図を示す。
図9】実施例1の靴底部材の横アーチを支える凸曲面状隆起部での断面を示す模式図である。
図10】実施例1のルームシューズの構成部材と製作手順の概略を示す。
図11】実施例2のルームシューズ(カップインソール形状縫い代突出部を有する靴底部材の右足)の斜め上方から見た斜視図を示す。
図12】実施例2の靴底部材を斜め上方(中底側から)からの外観を示す。
図13】実施例2の靴底部材の斜め下方から(靴底側から)の外観を示す。
図14】実施例2の靴底部材の横アーチを支える凸曲面状隆起部での断面を示す模式図である。
図15】実施例2のルームシューズの横アーチを支える凸曲面状隆起部での断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、本底および中底(インソール)が一体に形成され、その外周縁には靴のアッパーを縫着するための縫着突出部が設けられているルームシューズ靴底部材、およびこの靴底部材を用いたルームシューズを提供するものである。本発明のルームシューズ靴底部材は、その縫い代突出部を使って、足の甲を包む柔軟な材料からなるアッパー部分の下縁部の全周が縫着されてルームシューズを形成する。
【0013】
[靴底部材]
靴底部材は、本底、中底および縫い代突出部が一体になった構造のものである。靴底部材は中底および本底が一体になり、その外周縁にアッパー部分の下縁部の全周を縫着するための縫い代突出部を有する。本底および/または中底および/または縫い代突出部は同一の材料または異なる材料からなる。材料としては、低比重でもクッション性があり、かつ曲げ弾性率の比較的高い合成樹脂、ゴム材料等の弾性を有する発泡性又は非発泡性の材料が用いられる。また、中底と本底を異なる材料で製造することもできる。異なる材料の場合、中底は床からの衝撃を吸収することに優れた材料、例えば、低反発フォームとし、本底は柔軟性があるが摩擦耐特性に優れた材料とすることができる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体やポリエチレンの発泡体が好ましいものとして例示されるが、ゴム材料を混合することで摩擦耐特性を上げることができる。それらの発泡体を用いる靴底部材の成形は、エチレン-酢酸ビニル共重合体及び/又はポリエチレン等の樹脂にゴム材料を混合し、さらに、架橋剤、発泡剤、充填材、その他の添加剤を添加・混練したものを金型等で加熱して発泡したものを切削によって形状を賦形したり、あるいは発泡したものを成形型により加熱圧縮後に冷却して形状を賦形することによって行う。以上の例示されたものに限定されることはない。
【0014】
[縫い代突出部]
縫い代突出部は、本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出しているフランジ形状、または、中底の周縁部が上方に延出した土手部を形成しているカップインソール形状をなしている。本底または中底からはみ出すように出っ張ったフランジ形状をなしているフランジ形状縫い代突出部は、縫い代突出部から上部が中底を形成し、その下部が本底を形成し、また、縫い代突出部、本底および中底は一体に形成されている。その厚みや突出幅は、逢着によりアッパーを係止することができるとともに、ルームシューズの使用期間中に破損などが生じない範囲とすることが好ましい。
また、カップインソール形状縫い代突出部は、本底と一体に形成されている中底を囲繞しており、また、その縫い代突出部は中底の周辺部を立ち上がり、その縁は靴のアッパーに沿ってその厚みや突出幅は、逢着によりアッパーを係止することができるとともに、ルームシューズの使用期間中に破損などが生じない範囲とする。すなわち、オーバーの縫製により縫い代突出部とアッパー部とを縫い合わせることができる幅と厚さで外方にまたは上方に突出している。この土手部の内面は足の外面に沿うように傾斜していること、また、その外面はアッパーと縫製に好適な形状とすることが望ましい。その厚みや上方への延出長さは、逢着によりアッパーを係止することができるとともに、ルームシューズの使用期間中に破損などが生じない範囲とすることが好ましい。
また、本底および中底と同一の材料でつくると、製造方法が簡易となり望ましい。縫い代突出部の材料としては、アッパーと縫い代突出部が縫合されてルームシューズとしての使用に耐久性を有する材料であれば特に制限はない。
【0015】
[本底]
本底は、中底および縫い代突出部と一体になった構造のものであり、それらは同一の材料または異なる材料からなる。本底の床に接触する面は、滑り止めとなる凹凸模様(溝)が形成されている。本底は、縫い代突出部を有する中底に、あるいは中底と縫い代突出部を積層したものに、凹凸模様を刻設した防滑性の高い本底成形品を接合する、または、それら三者を同時に成形することで製造することができる。
本底の材料として、ゴム材を混合したエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の発泡体を用いた場合、軽量性に優れ、滑りにくく耐摩耗性に優れる本底が得られるが、それに限定されない。
【0016】
[中底]
中底は、縫い代突出部を有する中底も同様に、その表面が人の足の裏の構造に適合した形状である。足との接触面側には、足の骨格の内側縦アーチ、外側縦アーチおよび横アーチを支える凸曲面状隆起部を備えていることが好ましく、これらは装着者の疲労を軽減するための隆起部である。また、足との接触面側の外周には、足の安定性を高めるための外周隆起部を備えていてもよい。これは、周側縁沿いにゆるやかな立ち上がり隆起部を側縁に形成したものである。この外周隆起部を形成することで足のホールド性の向上を図っている。このように足が中底(インソール)面から移動またはずれることを防止することにより足の位置を安定させて履き心地を向上させることができる。
中底の材料として、ゴム材を混合したエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の発泡体を用いた場合、軽量性に優れ、クッション性があるので足の疲れが軽減されるが、それに限定されない。
【0017】
靴底部材の中底の足との接触面側(中底の表面)には、布を貼付することができる。その場合、ルームシューズの中底の表面が布などでカバーされることにより、着用者の足の裏面と接触し、柔軟な布地と中底の緩衝効果により履き心地を改善することができる。縫い代突出部を使ってアッパー部分の下縁部を縫着するまえに、布を貼付することが望ましい。
【0018】
[アッパー部分]
アッパーは、軽量でソフトな布材を用いて構成する。通常の室内履きに用いられる縫製可能な布材であれば特に制限はない。伸縮性があり肌触りの良い布地で作成したことにより、感触がよく安定した履き心地を得ることができ、足に確実にフィットする。
足をぶつけた場合の衝撃を緩和すべく、表布に裏布を重ねて縫い合わせてクッション性をもたせるのが望ましい。また、フィット感ないしホールド感を維持しながら開口部を更に拡大できるように、伸縮性のある布材で構成するのが好ましい。例えば、ニットにスポンジ布を貼り合わせた厚手の生地が好ましい素材としてあげられる。裏布は足入れがし易いように滑り性のある丈夫なニット生地が好ましい。
【0019】
縫い代突出部が本底と中底の境界位置の外周縁の端面から外方に突出しているフランジ形状縫い代突出部である場合は、縫い代突出部のアッパー縁部との縫い目は、バイアステープを巻いて縫い付け覆う処理がされている。
縫い代突出部が中底の周縁部が上方に延出した土手部を形成しているカップインソール形状である場合は、アッパーの縁部内側と縫い代突出部の外周縁が勘合状態になっていて、縫い代突出部のアッパー縁部との縫い目は、アッパー縁部外側に現れている。
【実施例1】
【0020】
本発明の縫い代突出部が本底または中底からはみ出すように出っ張ったフランジ状をなしているタイプの靴底部材を利用したルームシューズを図1から図4に示す。
図1には、ルームシューズの斜め上方から見た斜視図でありルームシューズの全体の外観を示す。図2にはルームシューズの斜め下方から見た斜視図を示し、図3にはルームシューズの底面図を示す。図4にはルームシューズの斜め上方から見た斜視図で中底表面を示している。
図5から図9には靴底部材を示す。図5には斜め上方から(中底側から)見た、靴底部材の全体の外観を示し、図6には靴底部材の本底の床に接する外面である接地面底を示す。図7には靴底部材を斜め上方からから見た斜視図を示し、図8には靴底部材を斜め下方からから見た斜視図を示す。図9は、靴底部材の横アーチを支える凸曲面状隆起部での断面を示す模式図である。図10には、本発明で中底に布製の中敷を備えたルームシューズの構成部材と製作手順の概略を示す。
【0021】
ルームシューズ1の靴底部材3は、中底(インソール)32と本底31が一体化して形成され、靴底部材3の外周にはフランジ形状縫い代突出部331が設けられている。例えば、この縫い代突出部331は中底(インソール)32と本底31との境界をなし、上部がインソール32、下部が本底31と概略分けることができる。フランジ形状縫い代突出部331はその境界付近から外側に突出している(図9参照)。
【0022】
本発明のルームシューズ靴底部材3は、本底31と中底32と縫い代突出部33が一体になった構造のものである。図9に示すように、靴底部材3は中底32および本底31が一体になり、その外周縁にアッパー部分の下縁部21の全周を縫着するための縫い代突出部33を有する。
本底31および/または中底32および/または縫い代突出部33は同一の材料または異なる材料からなることができる。靴底部材3を同一の材料から成形するには、製造が容易で、軽量性や屈曲性と耐摩耗性の両立が図れる発泡性又は非発泡性の材料が用いられる。本実施例では軽量性に優れ、滑りにくく耐摩耗性に優れる、ゴム材を混合したエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の発泡体を用いたが、それに限定されない。
【0023】
フランジ形状縫い代突出部331は、図9の靴底部材の横アーチを支える凸面状隆起部3211での断面を示す模式図に示されるように、前記縫い代突出部331から上部が中底32を形成し、その下部が本底31を形成し、また、材料として、ゴム材を混合したエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の発泡体を用いた場合、逢着によりアッパー2を係止することができるとともに、ルームシューズの使用期間中に破損などが生じることはない。フランジ形状縫い代突出部331は、オーバーの縫製により縫い代突出部331とアッパーの下縁部21を縫い合わせることができる幅と厚さで、例えば、約10mm幅、約2mm厚さで外方に突出している。
【0024】
本底31は、中底32および縫い代突出部33と一体になった構造のものであり、それらは同一の材料または異なる材料からなる。本底31の床に接触する面は、図3に示すようにルームシューズの接地面底311に相当し、滑り止めとなる凹凸模様(溝模様)が形成されている。本底31は厚さが薄いものでもよい。縫い代突出部331とアッパーの下縁部21を縫い合わせ、その縫い合わせ部分をバイアステープで覆って縫製するが、本底のバイアステープ部分が床に擦れないだけの厚さがあれば充分であり、本底は厚さ2mm程度の薄いものでも充分にその目的を達成できる。
【0025】
中底32は、図5図7図9に示すように、中底表面321が人の足の裏の構造に適合した形状であることが好ましい。足の骨格の横アーチを保持するための凸曲面状隆起部3211や、足がインソール面から移動またはずれることを防止するために周辺部には外周隆起部3212が設けられていることが好ましい。図9は、横アーチを支える凸曲面状隆起部3211、周側縁沿いにゆるやかな立ち上がる外周隆起部3212を側縁に形成したものの断面である。外周隆起部3212を形成することで足のホールド性の向上を図っている。また、足の内側縦アーチを支える凸曲面状隆起部3213および外側縦アーチを支える凸曲面状隆起部3214を設けることができる。靴サイズ(足長サイズ)によって一概には言えないが、凸曲面状隆起部はベースの最も厚いところは内側縦アーチ支える部分(3213)でその厚さが10mm~18mm程度であり、外側縦アーチ支える凸曲面状隆起部(3214)および踵側の縁部(3212)でその厚さが8~14mm程度であり、横アーチを支える凸曲面状隆起部3211ではベースより2~5mm程度厚くすることが好ましい。
中底32の材料として、ゴム材を混合したエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の発泡体を用いた。軽量性に優れ、クッション性があるので足の疲れが軽減されるが、低比重であって、熱成型が可能で軽量な素材であれば特に制限はない。
【0026】
靴底部材の中底32の足との接触面側(中底の表面321)には、布を貼付することができる。縫い代突出部33を使ってアッパー部分の下縁部21と縫着するまえに、布を貼付することが望ましい。ルームシューズ1の中底の表面321は布などでカバーされ、それが着用者の足の裏面と接触し、柔軟な布と中底の緩衝効果により履き心地を改善することができる。
【0027】
本発明のルームシューズ靴底部材3は、その縫い代突出部33を使って、足の甲を包む柔軟な材料からなるアッパー(甲皮)部分2の下縁部21の全周で縫着されてルームシューズ1を形成する。図1から図4には、図5から図9に示される本発明のルームシューズ靴底部材3を使用したルームシューズ1の外観の一例が示されている。
【0028】
アッパー2は、軽量でソフトな布材を用いて構成する。通常の室内履きに用いられる縫製可能な布材であれば特に制限はない。肌触りの良い布地、さらに伸縮性があり肌触りの良い布地で作成したことにより、感触がよく安定した履き心地を得ることができ、足に確実にフィットする。
足をぶつけた場合の衝撃を緩和すべく、表布に裏布を重ねて縫い合わせてクッション性をもたせるのが望ましい。また、フィット感ないしホールド感を維持しながら開口部を更に拡大できるように、伸縮性のある布材で構成するのが好ましい。例えば、ニットにスポンジ布を貼り合わせた厚手の生地が好ましい素材としてあげられる。裏布は足入れがし易いように滑り性のある丈夫なニット生地が好ましい。
【0029】
フランジ形状縫い代突出部331にバイアステープを巻いて縫い付ける縫い代を覆う処理がされている。靴底部材とアッパーは、その縫い代突出部331をアッパーの下縁部21と重ね、縫い代突出部331の外縁から約2mmのところでオーバーの縫製により縫着される。次いでバイアステープを使ってパイピングの手法で縫い代や生地端を外苑から約4mmでくるむ。このように、本発明のルームシューズ1は、靴底部材3の外周にある縫い代突出部33にアッパー部分2を縫製して一体化し、次いで縫製した縫着突出部の外側にテープを巻いて縫製して製造される。
【実施例2】
【0030】
本実施例は、フランジ形状縫い代突出部331が、カップインソール形状縫い代突出部332に変更された以外は、実施例1と同一である。
本発明の縫い代突出部が中底の周縁部が上方に延出した土手部を形成しているタイプ(カップインソール形状縫い代突出部332)のルームシューズ全体の外観を図11に示し、使用した靴底部材3を斜め上方から見た斜視図を図12に示す。図13には靴底部材3を斜め下方から見た斜視図を示し、図14は靴底部材3の横アーチを支える凸曲面状隆起部3211での断面を示す模式図である。また、図15は、ルームシューズ1のアッパー2が、中底32の周縁部が上方に延出したカップインソール形状縫い代突出部332と縫合部21で縫合されていることを示す模式図である。
【0031】
カップインソール形状縫い代突出部332を有するルームシューの靴底部材3は、中底(インソール)32と本底31が一体化して形成され、カップインソール形状縫い代突出部332は、本底31と一体に形成されている中底32を囲繞しており、また、その縫い代突出部332は中底32の周辺部に立ち上がり、その縁は靴のアッパー2に沿って上方に延出している(図15参照)。
【0032】
本発明のルームシューズ靴底部材3は、図14に示すように、靴底部材3は中底32および本底31が一体になり、中底32の周辺部を立ち上がり、その外周縁にアッパー部分の下縁部21の全周を縫着するための縫い代突出部332を有する。
本底31および/またはカップインソール形状縫い代突出部332を有する中底32は同一の材料または異なる材料からなり、具体的には実施例1と同一である。
【0033】
図15の靴底部材3の横アーチを支える凸状隆起部3211での断面を示す模式図に示されるように、カップインソール形状縫い代突出部332は本底31と一体に形成されている中底32を囲繞しており、中底32の周辺部を立ち上がり、その縁は靴のアッパー2に沿って上方に延出している。また、本底31およびカップインソール形状縫い代突出部332を有する中底32は一体に形成されている。カップインソール形状縫い代突出部332は、それにアッパーの下縁部21を被せて、重なり合った部分を縫い合わせることができる幅と厚さで、例えば、約10mm幅、約2mm厚さで上方に延出している。
【0034】
本底31は、カップインソール形状縫い代突出部332を有する中底32と一体になった構造のものであり、それらは同一の材料または異なる材料からなり、具体的には実施例1と同一である。
【0035】
カップインソール形状縫い代突出部332に囲繞された中底32は、その表面が人の足の裏の構造に適合した形状であり、足の骨格の横アーチを保持するための隆起部3211および足がインソール面から移動またはずれることを防止するための周辺部に外周隆起部3212などは実施例1と同一である。
【0036】
靴底部材3のカップインソール形状縫い代突出部332によって囲繞された中底32の足との接触面側の中底表面321には、布を貼付することができる。縫い代突出部332を使ってアッパー部分の下縁部21と縫着するまえに、布を貼付することが望ましい。ルームシューズ1の中底表面321には布などでカバーされた中底(インソール)が着用者の足の裏面と接触し、柔軟な布と中底の緩衝効果により履き心地を改善することができる。
【0037】
本発明のルームシューズ靴底部材3は、その縫い代突出部33を使って、足の甲を包む柔軟な材料からなるアッパー(甲皮)部分の下縁部21の全周が縫着されてルームシューズを形成する。図11には、本発明のルームシューズ靴底部材3を使用したルームシューズ1の外観が、図12から図15には、靴底部材3の外観およびその構造の一例が示されている。
【0038】
アッパー2は、軽量でソフトな布材を用いて構成しており、実施例1と同一である。
【0039】
縫い代突出部332が中底32の周縁部が傾斜した土手部を形成するようにその周辺部を立ち上げ上方に延出させており、アッパーの下縁部21の内側と縫い代突出部332の外周縁が勘合状態になっていて、縫い代突出部332のアッパー下縁部21との縫い目3312は、アッパー縁部外側に現れて製造される。
【符号の説明】
【0040】
1:ルームシューズ
2:アッパー(甲部)
21:アッパーの下縁部
3:靴底部材
31:本底
311:靴底面(ルームシューズの接地面底)
32:中底(インソール)
321:中底表面
3211:足の横アーチを支える凸曲面状隆起部
3212:外周隆起部
3213:足の内側縦アーチを支える凸曲面状隆起部
3214:足の外側縦アーチを支える凸曲面状隆起部
33:縫い代突出部
331:フランジ形状縫い代突出部
3311:バイアステープを巻いて縫い付けたフランジ形状縫い代突出部を覆う処理部
3312:カップインソール形状縫い代突出部のアッパー下縁部との縫い目
332:カップインソール形状縫い代突出部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15