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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】防水コネクタ及び機器ケースの防水構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20220408BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20220408BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R12/71
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017201219
(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公開番号】P2019075310
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 誠
(72)【発明者】
【氏名】山田 紘史
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-128715(JP,A)
【文献】特開2016-009576(JP,A)
【文献】特開2002-280131(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0019522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H01R 12/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔が形成された壁部を含み前記壁部の表面に前記挿通孔を取り囲む外環状溝が形成された機器ケース内に固定される回路基板の表面に実装され、前記壁部の前記表面と直交するコネクタ接続方向に前記挿通孔を介して相手側コネクタと接続される防水コネクタであって、
前記相手側コネクタと電気的に接続されるコンタクトと、
前記コンタクトを保持し前記挿通孔に挿通される挿通部を含み、前記挿通部が、前記壁部の前記表面と略面一に配置される環状面であって内環状溝が形成された環状面を含む絶縁性のハウジングと、
前記壁部の前記表面と前記挿通部の前記環状面とに対向する対向面を含み前記挿通部の外周面と前記挿通孔の内周面との隙間を覆う覆い部であって前記コネクタ接続方向と直交する環状板状をなす覆い部と、前記覆い部の外周部から直交状に延び前記外環状溝に嵌合される環状の外シール部と、前記覆い部の内周部から直交状に延び前記内環状溝に嵌合された環状の内シール部と、を含み、単一の部材で形成される弾性シール部材と、
前記壁部に固定されるカバーであって当該カバーと前記壁部の前記表面及び前記挿通部の前記環状面との間に前記覆い部を挟持するカバーと、を備える防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の防水コネクタにおいて、前記弾性シール部材の前記外シール部及び前記内シール部の少なくとも一方が、その外周面及び内周面の少なくとも一方に、対応する環状溝の内面に弾性的に接触する環状のシールリップを含む、防水コネクタ。
【請求項3】
請求項1に記載の防水コネクタにおいて、前記弾性シール部材の前記外シール部及び前記内シール部のそれぞれが、その外周面に設けられ対応する環状溝の内面に弾性的に接触する外周シールリップと、その内周面に設けられ対応する環状溝の内面に弾性的に接触する内周シールリップとを含む、防水コネクタ。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の防水コネクタにおいて、前記覆い部が、前記対向面に設けられ前記壁部の前記表面に弾性的に接触する環状の外側シールリップと、前記対向面に設けられ前記挿通部の前記環状面に弾性的に接触する環状の内側シールリップとを含む、防水コネクタ。
【請求項5】
請求項に記載の防水コネクタにおいて、前記覆い部が、前記カバー側の面に設けられ前記カバーに弾性的に接触する環状のシールリップを含む、防水コネクタ。
【請求項6】
挿通孔が形成された壁部を含み前記壁部の表面に前記挿通孔を取り囲む外環状溝が形成され、回路基板が固定された機器ケースと、請求項1~の何れか一項に記載の防水コネクタと、を含む機器ケースの防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水コネクタ及び機器ケースの防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の防水型コネクタでは、コンタクトを保持する絶縁ハウジングの外周に環状のシール部材が配置される。一方の開口端に、絶縁ハウジングがシール部材を挟んで嵌入される筒状部を有するカバー部材が設けられ、該カバー部材において、筒状部の他方の開口端には、外向きに広がって形成された鍔状部が設けられる。
絶縁ハウジングと機器ケースとの対向面どうしの隙間が、当該隙間に配置されたシール部材によって塞がれている。また、絶縁ハウジングとカバー部材との対向面どうしの隙間が、当該隙間に配置されたシール部材によって塞がれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4153549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁ハウジングが回路基板に固定され、回路基板が機器ケースに固定される。絶縁ハウジングと回路基板との組付位置のばらつきに、回路基板と機器ケースとの組付位置のばらつきが付加されるため、機器ケースに対する絶縁ハウジングの位置も、相当量ばらつく場合がある。
前記組付位置のばらつきが大きい場合には、前記隙間を挟んで対向する部材の対向面どうしの間隔が変化するため、これらの対向面に対するシール部材の接触力が弱くなり、防水性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、組付位置のばらつきに拘らず優れた防水性を得ることのできる防水コネクタ及び機器ケースの防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、挿通孔(82)が形成された壁部(81)を含み前記壁部の表面(81a)に前記挿通孔を取り囲む外環状溝(83)が形成された機器ケース(80)内に固定される回路基板(90)の表面(90a)に実装され、前記壁部の前記表面と直交するコネクタ接続方向(X)に前記挿通孔を介して相手側コネクタと接続される防水コネクタ(1;1P;1Q;1R;1S)であって、前記相手側コネクタと電気的に接続されるコンタクト(2)と、前記コンタクトを保持し前記挿通孔に挿通される挿通部(31)を含み、前記挿通部が、前記壁部の前記表面と略面一に配置される環状面(37)であって内環状溝(38)が形成された環状面を含む絶縁性のハウジング(3)と、前記壁部の前記表面と前記挿通部の前記環状面とに対向する対向面(41b)を含み前記挿通部の外周面(36)と前記挿通孔の内周面(82a)との隙間(S1)を覆う覆い部であって前記コネクタ接続方向と直交する環状板状をなす覆い部(41)と、前記覆い部の外周部から直交状に延び前記外環状溝に嵌合される環状の外シール部(42)と、前記覆い部の内周部から直交状に延び前記内環状溝に嵌合された環状の内シール部(43)と、を含み、単一の部材で形成される弾性シール部材(4;4P;4Q;4R;4S)と、前記壁部に固定されるカバー(5)であって当該カバーと前記壁部の前記表面及び前記挿通部の前記環状面との間に前記覆い部を挟持するカバーと、を備える防水コネクタを提供する。
【0007】
なお、括弧内の英数字は、後述する実施形態における対応構成要素等を表すが、このことは、むろん、本発明がそれらの実施形態に限定されるべきことを意味するものではない。以下、この項において同じ。
請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の防水コネクタにおいて、前記弾性シール部材の前記外シール部及び前記内シール部の少なくとも一方が、その外周面及び内周面の少なくとも一方に、対応する環状溝の内面に弾性的に接触する環状のシールリップ(61~64)を含んでいてもよい。
【0008】
請求項3に記載の発明のように、請求項1に記載の防水コネクタにおいて、前記弾性シール部材の前記外シール部及び前記内シール部のそれぞれが、その外周面に設けられ対応する環状溝の内面に弾性的に接触する外周シールリップ(63,62)と、その内周面に設けられ対応する環状溝の内面に弾性的に接触する内周シールリップ(61,64)とを含んでいてもよい。
【0009】
求項に記載の発明のように、請求項に記載に防水コネクタにおいて、前記覆い部が、前記対向面に設けられ前記壁部の前記表面に弾性的に接触する環状の外側シールリップ(65)と、前記対向面に設けられ前記挿通部の前記環状面に弾性的に接触する環状の内側シールリップ(66)とを含んでいてもよい。
【0010】
請求項に記載の発明のように、請求項に記載の防水コネクタにおいて、前記覆い部が、前記カバー側の面に設けられ前記カバーに弾性的に接触する環状のシールリップ(67,68)を含んでいてもよい。
請求項に記載の発明は、挿通孔が形成された壁部を含み前記壁部の表面に前記挿通孔を取り囲む外環状溝が形成され、回路基板が固定された機器ケースと、請求項1~の何れか一項に記載の防水コネクタと、を含む機器ケースの防水構造(10;10P;10Q;10R;10S)を提供する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明では、組付位置のばらつきによって、機器ケースの壁部の挿通孔の内周面に対して、ハウジングの挿通部の外周面が、コネクタ接続方向と直交する方向(環状面と平行な方向)に位置ずれしている場合や、機器ケースの壁部の表面に対して、ハウジングの挿通部の環状面が、コネクタ接続方向(環状面と直交する方向)に位置ずれしている場合がある。前記の位置ずれがある場合でも、弾性シール部材の覆い部が、挿通孔の内周面とハウジングの挿通部の外周面との隙間を覆った状態で、前記の位置ずれを吸収するように例えば伸縮して弾性変形する。このため、組付位置のばらつきに拘らず優れた防水性を得ることができる。なお、外シール部が嵌合される外環状溝や内シール部が嵌合される内環状溝では、前記の位置ずれによって溝形状が変化することがないため、外シール部及び内シール部は、前記位置ずれの影響を受け難い。
また、弾性シール部材の覆い部を挟んで機器ケースの壁部に固定されるカバーによって、弾性シール部材の覆い部を保護しつつ、覆い部の過度な変形を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、弾性シール部材の外シール部及び内シール部の少なくとも一方が、その外周面及び内周面の少なくとも一方に、環状のシールリップを有している。このため、前記の位置ずれに伴う覆い部の弾性変形により、外シール部または内シール部が、対応する外環状溝内または内環状溝内で変位したとしても、外シール部または内シール部の防水性を確保することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、各シール部の外周面及び内周面にシールリップが設けられるので、各シール部の防水性を確保しつつ、対応する環状溝内での各シール部の変位の許容量を大きくすることができる。可及的に、前記の位置ずれの吸収量を大きく確保することができる。
求項に記載の発明では、前記の位置ずれに伴って覆い部が弾性変形しても、覆い部に設けられた外側シールリップ及び内側シールリップが、壁部の表面及び挿通部の環状面にそれぞれ弾性的に接触するため、前記の位置ずれに拘らず、覆い部における防水性を確保することができる。
【0014】
請求項に記載の発明では、覆い部の対向面だけでなく、覆い部のカバー側の面にもシールリップが設けられるため、挿通部の環状面と直交する方向への位置ずれの吸収量を大きく確保することができる。
請求項に記載の発明では、組付位置のばらつきに拘らず、優れた防水性を得ることのできる機器ケースの防水構造を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態の防水コネクタを含む機器ケースの防水構造の一部破断斜視図である。
図2図2(a)及び(b)は、機器ケースの防水構造の互いに別角度からの分解斜視図である。
図3図3(a)は、機器ケースの防水構造の概略断面図である。図3(b)は、図3(a)のA部を拡大した拡大断面図である。
図4図4は防水コネクタの弾性シール部材の概略断面図である。
図5図5(a)及び(b)は、弾性シール部材が取り外された状態の防水コネクタの互いに別角度からの斜視図である。
図6図6(a)は本発明の第2実施形態の弾性シール部材の概略断面図であり、図6(b)は第2実施形態における機器ケースの防水構造の要部の拡大断面図である。
図7図7(a)は本発明の第3実施形態の弾性シール部材の概略断面図であり、図7(b)は第2実施形態における機器ケースの防水構造の要部の拡大断面図である。
図8図8(a)は本発明の第2実施形態の弾性シール部材の概略断面図であり、図8(b)は第2実施形態における機器ケースの防水構造の要部の拡大断面図である。
図9図9(a)は本発明の第3実施形態の弾性シール部材の概略断面図であり、図9(b)は第2実施形態における機器ケースの防水構造の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の防水コネクタ1を含む機器ケースの防水構造10(以下では、単に防水構造10とも言う)の一部破断斜視図である。図2(a)及び(b)は、互いに別角度からの防水構造10の分解斜視図である。図3(a)は、防水構造10の概略断面図であり、図3(b)は図3(a)のA部を拡大した拡大断面図である。図4は防水コネクタ1に含まれる弾性シール部材4の概略断面図である。
【0017】
図1図2(a)及び(b)並びに図3(a)に示すように、防水構造10は、壁部81を含む機器ケース80と、機器ケース80内に固定される回路基板90の実装面90aに実装される雄コネクタである防水コネクタ1とを含む。防水コネクタ1は、雌コネクタである相手側コネクタ(図示せず)に対してコネクタ接続方向Xに接続される。機器ケース80の壁部81の表面81aと回路基板90の実装面90aとは、コネクタ接続方向Xと直交している。
【0018】
図2(a)および図3(b)に示すように、機器ケース80の壁部81には、挿通孔82が形成されている。壁部81の表面81aには、挿通孔82を取り囲む外環状溝83が形成されている。図3(b)に示すように、外環状溝83は、底面83aと、外側の内壁面83bと、内側の内壁面83cとにより区画されている。また、図2(a)に示すように、壁部81には、外環状溝83を取り囲むように、複数のねじ孔84が形成されている。
【0019】
図2(a)及び(b)並びに図3(a)に示すように、防水コネクタ1は、相手側コネクタに対してコネクタ接続方向Xに接続される複数のコンタクト2と、コンタクト2を保持し相手側コネクタと嵌合する絶縁性のハウジング3と、弾性シール部材4と、カバー5とを備えている。
図5(a)及び(b)は、弾性シール部材4を取り外した状態の防水コネクタ1の互いに別角度からの斜視図である。図3(a)及び(b)並びに図5(a)及び(b)に示すように、ハウジング3は、コンタクト2を支持する略板状の支持部31と、支持部31から突出する筒状部32と、支持部31から筒状部32とは反対側に突出し回路基板90の実装面90aに固定される複数の脚部33とを備える。
【0020】
筒状部32は平面視で略矩形に形成されている。支持部31は、平面視で筒状部32の外郭よりも大きい長円形に形成されている。支持部31は、機器ケース80の壁部81の挿通孔82内に挿通されており、挿通部を構成している。
図3(b)及び図5(a)に示すように、挿通部としての支持部31は、筒状部32よりも外側に配置される環状の表面34と、表面34と交差する第1外周面35と、第1外周面35よりも大径の第2外周面36と、第1外周面35と第2外周面36とを接続する環状段部である環状面37とを含む。
【0021】
図3(b)に示すように、第2外周面36が、機器ケース80の壁部81の挿通孔82内に挿通されている。支持部31の第2外周面36が、壁部81の挿通孔82の内周面82aに対して隙間S1を設けて対向している。隙間S1によって、挿通孔82の内周面82aに対して支持部31(挿通部)がコネクタ接続方向Xと直交する方向Vに対して所定量、位置ずれすることが許容されている。環状面37は、コネクタ接続方向Xと直交している。環状面37は、機器ケース80の壁部81の表面81aと略面一に配置されている。
【0022】
環状面37には、第1外周面35を取り囲む内環状溝38が形成されている。内環状溝38は、底面38aと、外側の内壁面38bと、内側の内壁面38cとにより区画されている。内側の内壁面38cは、第1外周面35の一部により兼用されている。
図3(a)に示すように、コンタクト2は、支持部31に形成されたコンタクト挿通孔を挿通し、一端2aが筒状部32内に配置され、他端2bが回路基板90の導体部(図示せず)と接続される。
【0023】
図2(a)及び(b)、図3(b)並びに図4に示すように、弾性シール部材4は、環状の覆い部41と、環状の外シール部42と、環状の内シール部43とを含む。
図3(b)並びに図4に示すように、覆い部41は、支持部31の第2外周面36と挿通孔82の内周面82aとの隙間S1を覆う環状板である。覆い部41は、相手側コネクタ側に向く環状の表面41aと、表面41aの反対側の面であって、機器ケース80の壁部81の表面81aと支持部31(挿通部)の環状面37と隙間S1とに対向する環状の対向面41bを含む。表面41a及び対向面41bは、コネクタ接続方向Xと略直交するように配置される。
【0024】
外シール部42は、覆い部41の外周部から直交状(コネクタ接続方向X)に延び、機器ケース80の壁部81の表面81aの外環状溝83に嵌合されている。外シール部42は、外周面42aと、内周面42bとを含む。外シール部42の内周面42bには、環状の内周シールリップ61が設けられている。図3(b)に示すように、内周シールリップ61は、外環状溝83の内側の内壁面83cに弾性的に圧縮された状態で接触する。
【0025】
図3(b)及び図4に示すように、内シール部43は、覆い部41の内周部から直交状(コネクタ接続方向X)に延び、支持部31(挿通部)の環状面37の内環状溝38に嵌合されている。内シール部43は、外周面43aと、内周面43bとを含む。内シール部43の外周面43aには、環状の外周シールリップ62が設けられている。図3(b)に示すように、外周シールリップ62は、内環状溝38の外側の内壁面38bに弾性的に圧縮された状態で接触する。
【0026】
図2(a)並びに図3(a)及び(b)に示すように、カバー5は、弾性シール部材4の覆い部41を挟んで機器ケース80の壁部81に固定ねじ6により固定される。カバー5は、樹脂または金属により形成される。図2(a)及び図3(b)に示すように、カバー5は、矩形板状のカバー本体51と、カバー本体51の外周部から直交状に延びる環状のフランジ52とを含む。
【0027】
図3(b)に示すように、カバー5のカバー本体51と、機器ケース80の壁部81の表面81a及びハウジング3の支持部31の環状面37との間に、弾性シール部材4の覆い部41が挟持されている。カバー5の環状のフランジ52は、弾性シール部材4の外シール部42を取り囲んで配置される。
カバー本体51には、ハウジング3の支持部31が挿通される挿通孔53が形成されている。図2(a)及び(b)に示すように、固定ねじ6は、カバー本体51に形成されたねじ挿通孔を挿通して、機器ケース80の壁部81のねじ孔84にねじ結合される。
【0028】
図2(a)及び(b)並びに図3(b)に示すように、カバー本体51は、固定ねじ6の頭部の座面となる表面51aと、表面51aの反対側の面である内面51bとを含む。弾性シール部材4の覆い部41の表面41aは、カバー本体51の内面51bと弾性的に接触している。
カバー本体51の挿通孔53の内周面53aと支持部31の第1外周面35との間には、隙間S2が設けられている。隙間S2によって、機器ケース80の壁部81に固定されたカバー5に対して、ハウジング3の支持部31(挿通部)がコネクタ接続方向Xと直交する直交方向Vに所定量、位置ずれすることが許容されている。
【0029】
本実施形態によれば、下記の作用効果を奏する。すなわち、機器ケース80内に固定される回路基板90と機器ケース80の壁部81とが、コネクタ接続方向Xやコネクタ接続方向Xと直交する直交方向Vに位置ずれしている場合がある。この場合、回路基板90に実装される防水コネクタ1の、機器ケース80に対する組付位置が、コネクタ接続方向Xや直交方向Vにばらつく。
【0030】
このような組付位置のばらつきによって、機器ケース80の壁部81の挿通孔82の内周面82aに対して、ハウジング3の支持部31(挿通部)の第2外周面36が、コネクタ接続方向Xと直交する直交方向V(環状面37と平行な方向)に位置ずれしている場合や、機器ケース80の壁部81の表面81aに対して、ハウジング3の支持部31(挿通部)の環状面37が、コネクタ接続方向X(環状面37と直交する方向)に位置ずれしている場合がある。
【0031】
本実施形態では、前記のコネクタ接続方向Xや直交方向Vの位置ずれがある場合でも、弾性シール部材4の覆い部41が、壁部81の挿通孔82の内周面82aとハウジング3の支持部31(挿通部)の第2外周面36との隙間S1を覆った状態で、コネクタ接続方向Xや直交方向Vの位置ずれを吸収するように、例えば伸縮したりして弾性変形する。このため、組付位置のばらつきに拘らず優れた防水性を得ることができる防水コネクタ1を実現することができる。また、組付位置のばらつきに拘らず優れた防水性を得ることができる機器ケースの防水構造10を実現することができる。
【0032】
なお、弾性シール部材4の外シール部42が嵌合される外環状溝83や、弾性シール部材4の内シール部43が嵌合される内環状溝38では、前記の位置ずれによって溝形状が変化することがないため、外シール部42及び内シール部43は、前記位置ずれの影響を受け難い。
また、弾性シール部材4の外シール部42の内周面42bに内周シールリップ61が設けられ、弾性シール部材4の内シール部43の外周面43aに外周シールリップ62が設けられている。このため、前記の位置ずれに伴う覆い部41の弾性変形の影響で、外シール部42または内シール部43が、対応する外環状溝83内または内環状溝38内で変位したとしても、外シール部42または内シール部43の防水性を確保することができ、防水性が向上する。
【0033】
また、カバー5が弾性シール部材4を覆うことにより、振動等の外力によって弾性シール部材4が外れないように保護される。また、弾性シール部材4による防水性が向上される。
なお、防水構造10の組立工程は、例えば下記となる。すなわち、まず、防水コネクタ1が回路基板90に実装される。次いで、回路基板90付きの防水コネクタ1が、機器ケース80の壁部81に組み付けられる。次いで、弾性シール部材4が組み付けられた後、カバー5が組み付けられる。
(第2実施形態)
図6(a)は本発明の第2実施形態の防水コネクタ1Pにおける弾性シール部材4Pの概略断面図であり、図6(b)は第2実施形態の防水コネクタ1Pを含む防水構造10Pの要部の拡大断面図である。
【0034】
図6(a)に示すように、第2実施形態の弾性シール部材4Pでは、外シール部42の外周面42aに、一対の環状の外周シールリップ63が設けられ、外シール部42の内周面42bに、一対の環状の内周シールリップ61が設けられている。また、内シール部43の外周面43aに、一対の環状の外周シールリップ62が設けられ、内シール部42の内周面43bに、一対の環状の内周シールリップ64が設けられている。
【0035】
図6(b)に示すように、外シール部42の外周シールリップ63及び内周シールリップ61が、それぞれ外環状溝83の外側の内壁面83b及び内側の内壁面83cに弾性的に接触する。また、内シール部43の外周シールリップ62及び内周シールリップ64が、それぞれ内環状溝38の外側の内壁面38b及び内側の内壁面38cに弾性的に接触する。
【0036】
第2実施形態では、弾性シール部材4Pの各シール部42,43の外周面42a,43a及び内周面42b,43bにシールリップ63,62;61,64が設けられるので、各シール部42,43の防水性を確保しつつ、対応する環状溝83,38内での各シール部42,43の変位の許容量を大きくすることができる。このため、前記の位置ずれ(特に直交方向Vへの位置ずれ)の吸収量を大きく確保することができる。
(第3実施形態)
図7(a)は本発明の第3実施形態の防水コネクタ1Qにおける弾性シール部材4Qの概略断面図であり、図7(b)は第2実施形態の防水コネクタ1Qを含む防水構造10Qの要部の拡大断面図である。
【0037】
図7(a)及び(b)に示すように、弾性シール部材4Qでは、覆い部41の対向面41bに、壁部81の表面81aに弾性的に接触する環状の外側シールリップ65と、ハウジング3の支持部31(挿通部)の環状面37に弾性的に接触する環状の内側シールリップ66とが設けられている。また、覆い部41の表面41aに、カバー5のカバー本体51の内面51bと弾性的に接触する環状の外側シールリップ67と環状の内側シールリップ68とが設けられている。
【0038】
第3実施形態では、弾性シール部材4Qの覆い部41を挟んで機器ケース80の壁部81に固定されるカバー5によって、弾性シール部材4Qの覆い部41を保護しつつ、覆い部41の過度な変形を抑制することができる。また、前記の位置ずれに伴って覆い部41が弾性変形しても、覆い部41の対向面41bに設けられた外側シールリップ65及び内側シールリップ66が、機器ケース80の壁部81の表面81a及び防水コネクタ1のハウジング3の支持部31(挿通部)の環状面37にそれぞれ弾性的に接触するため、前記の位置ずれに拘らず、覆い部41における防水性を確保することができる。
【0039】
また、覆い部41の表面41aに設けられた環状の外側シールリップ67と環状の内側シールリップ68とが、カバー5のカバー本体51の内面51bと弾性的に接触する。すなわち、覆い部41の対向面41bだけでなく、覆い部41のカバー5側の面である表面41aにもシールリップ67,68が設けられるため、支持部31(挿通部)のコネクタ接続方向X(環状面37と直交する方向)への位置ずれの吸収量を大きく確保することができる。
(第4実施形態)
図8(a)は本発明の第4実施形態の防水コネクタ1Rにおける弾性シール部材4Rの概略断面図であり、図8(b)は第4実施形態の防水コネクタ1Rを含む防水構造10Rの要部の拡大断面図である。
【0040】
図8(a)及び(b)に示すように、第4実施形態の弾性シール部材4Rは、第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせて構成されている。弾性シール部材4Rでは、外シール部42に外周シールリップ63と内周シールリップ61とが設けられ、内シール部43に外周シールリップ62と内周シールリップ64とが設けられている。
また、弾性シール部材4Rでは、覆い部41の対向面41bに、壁部81の表面81aに弾性的に接触する環状の外側シールリップ65と、支持部31(挿通部)の環状面37に弾性的に接触する環状の内側シールリップ66とが設けられている。また、覆い部41の表面41aに、カバー5のカバー本体51の内面51bに弾性的に接触する環状の外側シールリップ67と環状の内側シールリップ68とが設けられている。
【0041】
第4実施形態では、第2実施形態の作用効果と第3実施形態の作用効果とを奏する。
(第5実施形態)
図9(a)は本発明の第5実施形態の防水コネクタ1Sにおける弾性シール部材4Sの概略断面図であり、図9(b)は第5実施形態の防水コネクタ1Sを含む防水構造10Sの要部の拡大断面図である。
【0042】
図9(a)及び(b)に示すように、弾性シール部材4Sでは、外シール部42の外周面42aに設けられる外周シールリップ63が、外シール部42の内周面42bに設けられる内周シールリップ61に対してコネクタ接続方向Xにオフセットされた位置に配置されている。また、内シール部43の外周面43aに設けられる外周シールリップ62が、内シール部43の内周面43bに設けられる内周シールリップ64に対してコネクタ接続方向Xにオフセットされた位置に配置されている。
【0043】
具体的には、外シール部42において、コネクタ接続方向Xの位置に関して、内周シールリップ61が、一対の外周シールリップ63の間の位置に配置されている。また、内シール部43において、コネクタ接続方向Xの位置に関して、外周シールリップ62が、一対の内周シールリップ64の間の位置に配置されている。
第5実施形態では、各シールリップ61,63;62,64の応力負荷を均一化することができ、各シールリップ61,63;62,64の経時劣化を抑制して、長期に防水性を維持することができる。
【0044】
本発明は、各前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、挿通部は、支持部31に限らず、ハウジング3において、筒状部32よりも外側へ突出する環状部(図示せず)で構成されていればよい。また、カバー5を壁部81に固定する構造として、固定ねじ6の他、公知のロック構造等の他の固定構造を採用することができる。その他、本発明は、特許請求の範囲記載の範囲内で種々の変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0045】
1;1P;1Q;1R;1S 防水コネクタ
2 コンタクト
3 ハウジング
4;4P;4Q;4R;4S 弾性シール部材
5 カバー
10;10P;10Q;10R;10S (機器ケースの)防水構造
31 支持部(挿通部)
36 第2外周面
37 環状面
38 内環状溝
41 覆い部
41a 表面(カバー側の面)
41b 対向面
42 外シール部
42a 外周面
42b 内周面
43 内シール部
43a 外周面
43b 内周面
61;64 内周シールリップ
62;63 外周シールリップ
65;67 外側シールリップ
66;68 内側シールリップ
80 機器ケース
81 壁部
81a 表面
82 挿通孔
82a 内周面
90 回路基板
90a 実装面
S1 隙間
V (コネクタ接続方向と直交する)直交方向
X コネクタ接続方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9