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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】流動性材料の長距離圧送方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
E21D11/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018037081
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019152009
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】509343895
【氏名又は名称】株式会社三和
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】共田 義夫
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-139711(JP,A)
【文献】特開昭62-185922(JP,A)
【文献】特開2008-308837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06、23/00-23/26
E21F 13/02
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下空間工事に用いられる流動性材料を供給源から1000m以上の長距離路程に渡って移送する長距離圧送方法において、
前記長距離路程を複数の単位区間に区分し、前記単位区間毎に自律的移送システムを配置し、
前記自律的移送システムは、前記単位区間の上流端に配置された圧送用ポンプと、前記圧送用ポンプの作動を制御する制御装置を備え、
前記制御装置によって、前記単位区間の前記上流端に予め設定した作動条件を満たす前記流動性材料が到達した状態で、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを作動させて前記流動性材料を下流へ送る送り状態とするものであり、
複数の前記単位区間の前記自律的移送システムを順次作動させて、前記供給源からの前記流動性材料を、前記長距離路程の下流端まで圧送することを特徴とする流動性材料の長距離圧送方法。
【請求項2】
前記制御装置は、前記作動条件を満たす前記到達状態を感知するセンサを備え、前記センサの感知結果に基づき前記圧送用ポンプの作動を制御するものであり、
前記自律的移送システムは、前記センサの感知結果によって前記圧送用ポンプが作動し、前記単位区間の上流端から下流端まで前記流動性材料を圧送することができるものであることを特徴とする流動性材料の請求項1記載の長距離圧送方法。
【請求項3】
前記センサは、前記ポンプよりも上流側の前記長距離路程内の圧力を感知する圧力センサであり、前記圧力センサが予め設定した作動圧力以上の高圧を感知したことを条件に前記圧送用ポンプを作動させ、前記圧力センサが予め設定した停止圧力以下の低圧を感知したことを条件に前記圧送用ポンプを停止するように前記圧送用ポンプの作動を制御することを特徴とする請求項2に記載の流動性材料の長距離圧送方法。
【請求項4】
前記単位区間の前記上流端に前記作動条件を満たす前記流動性材料が到達しなくなった状態で、当該単位区間内に前記流動性材料を残したまま、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを停止状態とし、
前記停止状態から前記流動性材料の供給を再開し、前記単位区間の前記上流端に予め設定した前記作動条件を満たす前記流動性材料が到達した状態で、当該単位区間を前記送り状態とすることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の流動性材料の長距離圧送方法。
【請求項5】
前記単位区間の前記上流端に前記流動性材料が到達しなくなった状態で、当該単位区間内に前記流動性材料を残したまま、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを停止状態とし、
前記単位区間の前記上流端に加圧空気を供給し、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを前記作動状態とすることにより、当該単位区間内の前記流動性材料を下流側に送って当該単位区間内を空にすることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の流動性材料の長距離圧送方法。
【請求項6】
前記単位区間内が空になった状態で、前記単位区間の前記上流端に洗浄液を導入し、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを前記作動状態とすることにより、当該単位区間内に導入された前記洗浄液を下流側に送って当該単位区間内を洗浄した後、
前記洗浄液の導入を止めて、前記単位区間の前記上流端に加圧空気のみを供給し、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを前記作動状態とすることにより、当該単位区間内の前記洗浄液を下流側に送って当該単位区間内を空にすることを特徴とする請求項5に記載の流動性材料の長距離圧送方法。
【請求項7】
前記長距離路程は、シールド工事、トンネル工事、地下空洞の埋め戻し工事から選択された少なくとも一種の工事の対象となる長距離空間内の路程であり、
前記流動性材料は、建設汚泥とセメントとを含む流動化処理土であり、
前記流動化処理土を前記長距離空間の解放端から内部へ搬送して前記地下工事を行うことを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の流動性材料の長距離圧送方法。
【請求項8】
地下空間工事に用いられる流動性材料を供給源から1000m以上の長距離路程に渡って移送する長距離圧送システムにおいて、
複数の単位区間に区分された前記長距離路程の、前記単位区間毎に配置された自律的移送システムを備え、
前記自律的移送システムは、前記単位区間の上流端に配置された圧送用ポンプと、前記圧送用ポンプの作動を制御する制御装置を備え、
それぞれの前記自律的移送システムは、前記制御装置によって、前記単位区間の前記上流端に予め設定した作動条件を満たす前記流動性材料が到達した到達状態を感知するセンサを備え、
前記制御装置は、前記センサが前記到達状態を感知した状態で、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを作動させて前記流動性材料を下流へ送るように構成され、
複数の前記単位区間の前記自律的移送システムを順次作動させて、前記供給源からの前記流動性材料を、前記長距離路程の下流端まで圧送することを特徴とする流動性材料の長距離圧送システム
【請求項9】
前記制御装置は、前記センサによる前記到達状態を感知したとの感知結果に基づき前記圧送用ポンプの作動を制御するものであり、
前記自律的移送システムは、前記センサの前記感知結果によって前記圧送用ポンプが作動し、前記単位区間の上流端から下流端まで前記流動性材料を圧送することができるものであることを特徴とする流動性材料の請求項8記載の長距離圧送システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下空間工事に用いられる流動性材料の長距離圧送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、地下空間工事に用いられる流動性材料を地上に配置したポンプによって圧送する技術に関し、特許文献1に示す方法を提案している。
特許文献2では、セメント系充填材の長距離圧送注入方法として、セメント、水に第1増粘剤と第2増粘剤を加えて調整したA液と、無機系充填材、水に前記第1増粘剤と前記第2増粘剤を加えて調整したB液とを混合して増粘させた後に施工するセメント系充填材の長距離圧送注入方法において、前記A液と前記B液を各々別々のパイプで長距離圧送し、前記A液と前記B液を施工部直前で攪拌装置を介して混合して注入施工することを提案している。
【0003】
特許文献3及び4では、長距離圧送用セメント混和材や、その注入工法などを提案するものであり、特に流動性材料について改良を施して長距離圧送を実現する提案がなされている。
ところがこれらのいずれの提案にあっても、1000m以上の長距離路程の上流側から1台のポンプで下流端まで流動性材料を圧送することを前提としてなされた提案であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4098675号公報
【文献】特開2009-24481号公報
【文献】特許第5773957号公報
【文献】特許第5882146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、地下空間工事に用いられる流動性材料の長距離圧送方法自体を根本的に見直して、効率的な長距離圧送が可能な新たな方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地下空間工事等に用いられる流動性材料を1000m以上の長距離路程に渡って移送する長距離圧送方法において、次の方法によって、効率的な長距離圧送を実現する。
本発明にあっては、従来の方法と同様、前記長距離路程の上流側に前記流動性材料の供給源を配置、前記長距離路程の上流端から下流端に向けて圧送路を施設するものではあるが、前記圧送路を複数の単位区間に区分し、前記単位区間毎に自律的移送システムを配置することを特徴とする。この自律的移送システムは、前記単位区間の上流端に配置された圧送用ポンプと、前記圧送用ポンプの作動を制御する制御装置を備え、前記制御装置によって、前記単位区間の前記上流端に予め設定した作動条件を満たす前記流動性材料が到達した状態で、当該単位区間の上流端の前記圧送用ポンプを作動させて前記流動性材料を下流へ送るものである。そして、これらの複数の前記単位区間の前記自律的移送システムを順次作動させることによって、前記供給源からの前記流動性材料を、前記圧送路の下流端まで圧送することを実現するものである。
【0007】
前記制御装置は、前記作動条件を満たす前記到達状態を感知するセンサを備え、前記センサの感知結果に基づき前記圧送用ポンプの作動を制御するものとして、実施することができる。即ち、前記自律的移送システムは、前記センサの感知結果によって前記圧送用ポンプが作動し、前記単位区間の上流端から下流端まで前記流動性材料を圧送することができる、前記単位区間の圧送が順次行われることによって、前記供給源からの前記流動性材料を、前記圧送路の下流端まで圧送することを実現するものである。
より具体的には、前記センサには、前記ポンプの上流側の前記圧送路内の圧力を感知する圧力センサを採用することができる。そして、前記圧力センサが予め設定した作動圧力以上の高圧を感知したことを条件に前記圧送用ポンプを作動させ、前記圧力センサが予め設定した停止圧力以下の低圧を感知したことを条件に前記圧送用ポンプを停止するように前記圧送用ポンプの作動を制御することで、前記自律的移送システムはそれぞれ独立して自律的に作動することができると同時に、これらの前記自律的移送システムが前記流動性材料の移動に従って連携して作動する結果、それぞれの自律性が有機的に結びつき、前記供給源からの前記流動性材料を、前記長距離路程の下流端まで、連続的に圧送することができるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、効率的な長距離圧送が可能な流動性材料の長距離圧送方法を提供することができたものである。
本発明にあっては、1台の大型ポンプにより高圧で長距離圧送を行う場合に比べて、比較的小出力のポンプで比較的小さな圧力で長距離圧送を行うことができるものであり、安全性が高く、効率的な長距離圧送を低コストで実現することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る長距離圧送方法の説明図。
図2】同長距離圧送方法の自律的移送システムの説明図。
図3】同長距離圧送方法の自律的移送システムの制御装置のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
(長距離空間10の概要)
この実施の形態に示す長距離空間10は、シールド工事用の空間で、立坑11と横坑12とを備える。立坑11は地上13から下方に所定深さまで伸びる空間であって、垂直の空間であることが一般的ではあるが、傾斜しているものであっても構わず、いずれにしても深さを得ることを目的として地中に形成された空間である。横坑12は立坑11から横方向に所定長さまで伸びる空間であって、水平な空間であることが一般的ではあるが、傾斜しているものであっても構わず、いずれにしても水平距離を得ることを目的として地中に形成された空間である。横坑12は工事の進行に伴い順次のばされていく場合もあるが、本発明にあっては1000m以上の長距離路程Lに渡って形成される。
【0011】
地上13には、ホッパーやミキサー車やバキューム車など流動性材料の供給源14が配置される。なおこの供給源14は、地下空間内に配置してもかまわない。図1の例では、地上13の供給源14から縦パイプ16によって地下へ下され、横パイプ17によって長距離路程Lを移送される。縦パイプ16は立坑11に配置され、横パイプ17は横坑12に配置される。縦パイプ16における移送は、自然落下でも構わないしポンプなどによる圧送を行っても構わない。またトンネル工事にあっては、通常立坑11は必要としないため、横坑12によって長距離路程Lが構成されることになる。
【0012】
(横坑12における長距離圧送)
シールド工事にあっては、掘削坑の表面と、その内周面に配置されるセグメントとの間の裏込め空間に、土砂や、モルタルや、流動化処理土(ソイルモルタルとも言う)などの流動性材料を裏込め材として投入して、裏込め空間に充填することによって、陥没事故の発生を防止するのが一般的である。流動性材料としては、各種のモルタル(一般的なモルタルの他、発泡モルタル、セメントの含有率の低い貧配合のモルタル)や、流動化処理土(所定量のセメントと水と粒度が制御された建設残土などの土砂)の他、可塑性グラウト材や発泡ウレタンを挙げることもでき、その用途は前記の裏込め材の他、管内の充填、空間内の舗装、吹き付け塗布等々、長距離空間10における土木建設工事に用いられる種々の土木建設用の流動性材料を示すことができる。
【0013】
この実施の形態に係る長距離圧送方法は、流動性材料を長距離路程Lに渡ってポンプによって上流端から下流端に向けて圧送するものである。1000m以上の長距離路程Lを一台のポンプによって上流端から下流端に向けて圧送する場合には、0.3Mpaを超える高圧のポンプが必要になるとともに、パイプやホースなどの圧送路についても高圧に耐えるものが必要となる。
これに対して、この実施の形態に係る長距離圧送方法は、比較的小さな出力のポンプや、比較的小さな耐圧強度による圧送路を用いて、効率的且つ経済的な長距離圧送を実現するものである。
【0014】
(長距離路程Lについて)
長距離圧送を、低コストかつ効率的に行う手段として、この実施の形態にあっては、縦パイプ16から構成される長距離路程Lを複数の単位区間に区分し、前記単位区間毎に自律的移送システムを配置するものである。図1にあっては、単位区間として第一区間L1と第二区間L2の二つの区間のみを示したが、第3、第4と次々に単位区間の数を増やして行くことができる。なお1つの単位区間は200~600m程度が適当であるが、単位区間の長さは適宜に変更して実施することができる。
【0015】
(自律的移送システムの概要)
自律的移送システムは、単位区間20(第一区間L1、第二区間L2)の上流端に配置された圧送用ポンプ21(第一センサs1、第二センサs2)と、その作動を制御する制御装置22を備える。制御装置22は、単位区間20の上流端に予め設定した作動条件を満たす流動性材料が到達した状態で、同単位区間の上流端の圧送用ポンプ21を作動させて流動性材料を下流へ送るものである。
【0016】
圧送用ポンプ21(第一センサs1、第二センサs2)は、流動性材料を圧送することができるものであれば特に制限はなく、サンドポンプなどの種々の形式のポンプを採用することができる。
そして、これらの単位区間20の自律的移送システムを順次作動させることによって、供給源14からの流動性材料を、長距離路程Lの下流端まで圧送することができる。
【0017】
特に自律的移送システムは、自律的に作動することができ、その結果それぞれの単位区間20の圧送用ポンプ21に作業者がいなくても、また配線などの全ての圧送用ポンプ21を結ぶ情報伝達手段を設けなくても、供給源14からの流動性材料を、長距離路程Lの下流端まで圧送することができる。
【0018】
(各自律的移送システムの制御装置)
制御装置22は、前記作動条件を満たす前記到達状態を感知するセンサ23(第一センサs1、第二センサs2)を備え、センサ23の感知結果に基づき圧送用ポンプ21の作動を制御する。したがって、自律的移送システムは、センサ23の感知結果によって他の制御信号を与えられずとも、単位区間20の上流端から下流端まで流動性材料を圧送することができる。
【0019】
センサ23としては、圧送用ポンプ21の上流側の圧送路(縦パイプ16)内の圧力を感知する圧力センサを適用することができる。このセンサ23は、圧送用ポンプ21の直前に配置すれば良いが、圧送用ポンプ21内部における加圧部分よりも上流側であれば特にその位置は問わない。また、圧送用ポンプ21から数メーター上流側など、圧送用ポンプ21の作動と停止による圧力変動の影響を受ける範囲に配置しても構わない。
【0020】
制御装置22は、センサ23が予め設定した作動圧力以上の高圧を感知したことを条件に圧送用ポンプ21を作動させる。また、センサ23が予め設定した停止圧力以下の低圧を感知したことを条件に圧送用ポンプ21を停止状態とする。
例えば、作動圧力(高圧と言う場合もある)は約0.05Mpa、停止圧力(低圧と言う場合もある)は0~-0.004Mpa程度の負圧とすることができる。なお、作動圧力(高圧)と停止圧力(低圧)との間の圧力を、以下の説明において中間圧と言う。
【0021】
(制御の具体例)
制御装置22における制御は、種々の方法で実施することができるが、その一例を図3を参照して説明する。
ステップ101:センサ23が管内圧力を検知する。
【0022】
ステップ102:制御装置22は検知した圧力が作動圧力(高圧)以上であるか否かを判断する。
ステップ103:作動圧力(高圧)以上である場合、制御装置22は圧送用ポンプ21が作動状態であるか否かを判断する。
圧送用ポンプ21が作動状態である場合は、処理が終了し、制御装置22は作動状態を継続する。
【0023】
ステップ104:圧送用ポンプ21が作動状態でない場合(停止状態の場合)、制御装置22を作動させる。
【0024】
ステップ105:ステップ102において、検知した圧力が作動圧力(高圧)より低い場合、制御装置22は検知した圧力が停止圧力(低圧)以下であるか否かを判断する。
停止圧力(低圧)より高い場合は、処理が終了し、制御装置22は現在の状態(作動状態又は停止状態)を継続する。
【0025】
ステップ106:停止圧力(低圧)以下である場合、制御装置22は圧送用ポンプ21が作動状態であるか否かを判断する。
圧送用ポンプ21が作動状態でない場合(停止状態の場合)、処理が終了し、制御装置22は停止状態を継続する。
ステップ107:圧送用ポンプ21が作動状態である場合、制御装置22を停止させる指示を圧送用ポンプ21に送出する。
【0026】
以上の結果、センサ23における管内圧力が、作動圧力(高圧)以上に一旦高まると圧送用ポンプ21は作動状態となって、管内圧力がセンサ23が停止圧力(低圧)以下となるまで圧送用ポンプ21の作動状態が継続する。一方、センサ23における管内圧力が、停止圧力(低圧)以下に下がると圧送用ポンプ21は停止状態となって、管内圧力がセンサ23が作動圧力(高圧)以上となるまで圧送用ポンプ21の停止状態が継続する。
【0027】
言い換えれば、中間圧力にあっては、先の状態(作動状態または停止状態)が継続される。これによって、次に述べるように、各単位区間20の自律的移送システムは自律的に流動性材料を単位区間20の上流端から下流端に送ることができ、これら長距離路程Lの単位区間20の各自律的移送システムが順次作動する。その結果、供給源14からの流動性材料は、長距離路程Lの下流端まで順次圧送される。
【0028】
なお、想定外の脈動などによる一次的な高圧又は低圧の発生による誤動作を防止するために、作動圧力(高圧)又は停止圧力(低圧)の検知が所定時間(1秒以下または2、3秒程度の数秒)連続することによって、作動圧力(高圧)又は停止圧力(低圧)の感知として、圧送用ポンプ21を作動状態または停止状に変更するようにしても構わない。
【0029】
また、作業者が作動と停止を切り替えることができるように手動入力部25を制御装置22に接続したり、圧送用ポンプ21に直接設けたりしても構わない。また地上などから、全ての圧送用ポンプ21を停止させたり作動させたりすることができるように、遠隔の入力手段を併用して実施することを妨げるものではない。
【0030】
(長距離圧送方法の具体的工程)
長距離圧送方法の具体的工程を表1を参照しながら説明する。
【表1】
【0031】
(工程0)
工程0は、流動性材料の搬送作業の開始前の状態である。この状態では、流動性材料は地上13の供給源14にあり、縦パイプ16及び横パイプ17(第一区間L1、第二区間L2)には流動性材料が存在しない状態であり、全ての圧送用ポンプ21(この例では第一圧送用ポンプp1及び第二圧送用ポンプp2)は停止している状態にあり、第一センサs1及び第二センサs2は中間圧を検知している。
【0032】
(工程1)
工程1は、流動性材料の搬送作業が開始され始めた状態である。この状態では、流動性材料が立坑11内を送られて、第一センサs1に到達する。この到達直後の段階では、未だ第一圧送用ポンプp1は作動しておらず、流動性材料が送られて来るに従いその圧力が高まり、第一センサs1が高圧を検知する。この高圧の検知によって、第一圧送用ポンプp1が作動して、流動性材料の圧送を開始する。
圧送の開始当初は、流動性材料は第二区間L2に到達していないため、第二センサs2は中間圧を検知した状態にあり、第二圧送用ポンプp2は停止している。
なお、作業の開始段階あたっては、安全確認を兼ねて、作業員が手動入力部25によって第一圧送用ポンプp1を作動させるようにしても構わない。
【0033】
(工程2)
工程2は、流動性材料が第二センサs2に到達した状態である。この到達直後の段階では、未だ第二圧送用ポンプp2は作動しておらず、流動性材料が送られて来るに従いその圧力が高まり、第二センサs2が高圧を検知する。この高圧の検知によって、第二圧送用ポンプp2が作動して、流動性材料の圧送を開始する。
【0034】
供給源14からの流動性材料の供給が継続されている以上、第一区間L1内には流動性材料が第一圧送用ポンプp1によって送られ続けるが、第一圧送用ポンプp1の作動開始に伴い第一センサs1の位置する管内圧力は高圧から中間圧に低下するが、第一圧送用ポンプp1の作動状態は継続する。
【0035】
(工程3)
工程3は、流動性材料の搬送が順調に継続している状態である。供給源14からの流動性材料の供給が継続されている以上、第一区間L1と第二区間L2内には流動性材料が第一圧送用ポンプp1と第二圧送用ポンプp2によって送られ続ける。第一圧送用ポンプp1と第二圧送用ポンプp2の作動に伴い第一センサs1と第二センサs2の位置する管内圧力は高圧から中間圧に低下するが、第一圧送用ポンプp1と第二圧送用ポンプp2の作動状態は継続する。
【0036】
このように全ての単位区間20(第一区間L1、第二区間L2)の自律的移送システムが自律的に順次作動することによって、流動性材料は、長距離路程Lの基端から先端まで送られて行く。
【0037】
(工程4)
工程4は、供給源14からの流動性材料の供給が停止した状態である。供給の停止は、例えばホッパー内の流動性材料が空になってしまった場合や、バキューム車のタンクが空になって次のバキューム車へラインを切り替える場合などに生ずる。
供給源14からの流動性材料の供給が停止することによって、縦パイプ16の内部には流動性材料が無くなるなど減少状態となる。他方、第一圧送用ポンプp1の作動は継続しているため、第一センサs1における管内圧力は負圧などの低圧状態となり、第一センサs1が低圧を感知する。
この低圧の感知によって、第一圧送用ポンプp1が停止状態となるが、第一区間L1の内部には流動性材料が存在しており、第二センサs2は中間圧を検知し続け、第二圧送用ポンプp2は作動状態を保っている。
【0038】
(工程5)
工程5は、供給源14からの流動性材料の供給が停止し、さらに第一圧送用ポンプp1が停止するが第二圧送用ポンプp2の作動が継続することによって、第一区間L1の内部には流動性材料が無くなるなど減少状態となる。他方、第二圧送用ポンプp2の作動は継続しているため、第二センサs2における管内圧力は負圧などの低圧状態となり、第二センサs2が低圧を感知する。
【0039】
この低圧の感知によって、第二圧送用ポンプp2が停止状態となるが、第二区間L2の内部には流動性材料が存在している。
なお、第三区間など、さらに多くの区間が設定されている場合には、順次単位区間20内の流動性材料が減少し、最も先端の単位区間20が、この例における第二区間L2の状態となる。
【0040】
(工程6)
工程6は、流動性材料の搬送作業が再開された状態である。この状態では、流動性材料が立坑11内を送られて、第一センサs1に到達する。この到達直後の段階では、未だ第一圧送用ポンプp1は作動しておらず、流動性材料が送られて来るに従いその圧力が高まり、第一センサs1が高圧を検知する。この高圧の検知によって、第一圧送用ポンプp1が作動して、流動性材料の圧送を開始する。
圧送の開始当初は、流動性材料は第二区間L2に到達していないため、第二センサs2は中間圧を検知した状態にあり、第二圧送用ポンプp2は停止しており、第二区間L2には再開前の流動性材料が残っている。
【0041】
(工程2に戻る)
圧送が再開された流動性材料が第二センサs2に到達した後は、工程2と同じ状態となり、準備全ての単位区間20の圧送用ポンプ21が作動して、流動性材料を送っていく。
さらに流動性材料の供給が続くことで、工程3に移行して、流動性材料の搬送が継続される。
【0042】
(工程7)
工程7以降は、流動性材料の搬送作業が終了するなど、圧送用ポンプ21(この例では第一区間L1及び第二区間L2)内の流動性材料を長距離路程Lの先端から全て吐出させてしまう工程である。
【0043】
まず工程7の実施には、コンプレッサなどのエア供給源26を縦パイプ16または横パイプ17の基端に接続する。このエア供給源26から高圧空気を、流動性材料の供給に変えて、導入する。
この高圧空気の導入によって、全てのセンサ23(第一センサs1、第二センサs2)は順次高圧を検知し、その作業状態にかかわらず、全ての圧送用ポンプ21(第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2)は順次作動状態となり、全ての単位区間20(第一区間L1、第二区間L2)から流動性材料が長距離路程Lの先端から吐出される。
なお、表1には示していないが、高圧空気の導入が停止されると、第一センサs1、第二センサs2は中間圧を検知を検知する場合があるが、その場合でも工程3の場合と同様に第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2の作動状態は継続する。
【0044】
(工程8)
工程8は、単位区間20(第一区間L1、第二区間L2)内部を洗浄する工程である。この工程は、工程7に引き続いて行うことが望ましい。
【0045】
この工程8は、エア供給源26からの高圧空気の導入を一旦停止した後に行う。これにより管内圧力が停止し、全てのセンサ23(第一センサs1、第二センサs2)は順次中間圧を検知し、全ての圧送用ポンプ21(第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2)は停止状態となる。
この状態で、水タンクや水道などの洗浄水供給源27を縦パイプ16または横パイプ17の基端に接続して、この洗浄水供給源27から洗浄水を、単位区間20へ導入する。洗浄水供給源27から洗浄水の導入だけでは、高圧とならないため、全てのセンサ23(第一センサs1、第二センサs2)は中間圧を検知した状態を維持し、全ての圧送用ポンプ21(第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2)は停止状態を維持する。
【0046】
(工程9)
工程9は、洗浄水の投入完了後に、エア供給源26からの高圧空気の導入を再開する。この高圧空気の導入によって、全てのセンサ23(第一センサs1、第二センサs2)は順次高圧を検知し、全ての圧送用ポンプ21(第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2)はその作動状態にかかわらず、順次作動状態となり、全ての単位区間20(第一区間L1、第二区間L2)に洗浄水が供給されて、長距離路程Lの先端から吐出される。
【0047】
なお、表1には示していないが、高圧空気の導入が停止されると、第一センサs1、第二センサs2は中間圧を検知する場合があるが、その場合でも工程3の場合と同様に第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2の作動状態は継続する。
【0048】
(工程10)
工程10は、高圧空気の導入を停止し、全ての圧送用ポンプ21(第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2)の作動を停止する工程である。上記の通り、高圧空気の導入を停止しただけでは、中間圧に低下するだけで第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2は停止しない。そこで、縦パイプ16に設けられたバルブ(図示せず)を閉じるなどして、第一圧送用ポンプp1につながる配管を遮断することによって、第一圧送用ポンプp1が設けられた位置の管内圧力が低圧までに下がり、第一センサs1が停止する。第一センサs1の停止に伴って、第一区間L1の管内圧力も低下して第二センサs2が低圧を検知することによって、第二圧送用ポンプp2が停止する。
【0049】
なお、上記の配管の遮断に代えて、作業員が最終の点検も兼ねて、第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2のスイッチを切るなど手動入力部25を操作して、第一圧送用ポンプp1、第二圧送用ポンプp2を停止させるようにしても良い。
【0050】
(実施の形態に係る長距離圧送方法の優位点)
この実施の形態に係る長距離圧送方法にあっては、複数のポンプが用いられるものではあるが、自律的移送システムによって、複数の圧送用ポンプ21がそれぞれ独自に作動しつつ、流動性材料の移動状態に伴ってそれぞれが連携して作動するため、全ての圧送用ポンプ21に作業員がつかなくても流動性材料を長距離路程Lの基端から先端まで圧送することができる。
従って作業員の数を大幅に増やさなくても、長距離圧送を円滑に実施することができる。
【0051】
また装置の面についても、この実施の形態に係る長距離圧送方法にあっては、約500mを圧送する能力のある圧送用ポンプ21として、0.8Mpa最大圧力程度の比較的小さなサンドポンプを採用することができ、このサンドポンプを4台用いて4つの自律的移送システムを連続して設けることによって、約2000mの長距離圧送を実施することができる。またこれに伴って用いられるは、比較的小さな耐圧強度があればよく、肉厚が4.5mm、単位メーターあたり重量が12.2kg/mの鋼管を用いれば足りる。
【0052】
他方、1台のポンプで長距離圧送を行う場合にあっては、約2000m以上を圧送する能力のある圧送用ポンプとして、5.5Mpa最大圧力程度の比較的大型の特殊ポンプを採用する必要が生じる。この特殊ポンプの採用に伴って用いられる圧送路には、比較的大きな耐圧強度が求められ、肉厚が7.1mm、単位メーターあたり重量が18.8kg/mの鋼管を用いる必要が生じる。したがってトータルの設備並びに運営コストは、この実施の形態に係る長距離圧送方法にあっては、1台のポンプで長距離圧送を行う場合に比べて、格段に小さくなる。
【0053】
特に、ポンプは脈動を完全に抑えることが困難である。この脈動は、ポンプの形式如何を問わずポンプの最大圧力が大きくなるに従って、大きくなる傾向を示す。この脈動は、配管に大きな衝撃を与えるため、用いられるポンプの最大圧力が高まるに従って、大きな衝撃が配管に加えられることとなり、この点からも、この実施の形態に係る長距離圧送方法にあっては、比較的小さな耐圧強度のパイプを採用しても、十分な耐久性を示すこととなる。しかも、圧送される流動性材料の圧力が大きいほど、万が一の事故の発生における影響も大きくなる。
【0054】
したがって、この実施の形態に係る長距離圧送方法にあっては、低コストで高い安全性を示す効率的な圧送方法を提供することができたものである。
【符号の説明】
【0055】
L 長距離路程
L1 第一区間
L2 第二区間
p1 第一圧送用ポンプ
p2 第二圧送用ポンプ
s1 第一センサ
s2 第二センサ
10 長距離地下空間
11 立坑
12 横坑
13 地上
14 供給源
16 縦パイプ
17 横パイプ
20 単位区間
21 圧送用ポンプ
22 制御装置
23 センサ
25 手動入力部
26 エア供給源
27 洗浄水供給源
図1
図2
図3