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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】電磁弁および流体圧回路
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
F16K31/06 305H
F16K31/06 305J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018041595
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019157914
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591053786
【氏名又は名称】日電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 啓
(72)【発明者】
【氏名】齊木 光博
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-022128(JP,U)
【文献】特開2010-169206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
F16K 3/00- 3/36
F16K 29/02
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口と、流体の流出口とを有する弁本体と、
軸方向の一端部側が前記弁本体に固定された固定弁棒と、
前記弁本体に対して固定して設けられた固定部材と、
軸方向の一端部側へ開口され前記固定弁棒の軸方向の他端部側が摺動可能に挿入される挿入部を有し、前記固定弁棒に沿って摺動可能でかつ前記固定部材に対して接離可能に設けられ、前記流入口と前記流出口との連通状態を開閉する可動部材と、
前記流入口と前記流出口との連通状態を閉塞させる方向に前記可動部材を付勢する付勢手段と、
前記可動部材に前記付勢手段の付勢方向とは反対方向への電磁力を付与するソレノイド部と、
前記挿入部における軸方向の他端部と前記固定弁棒の軸方向の他端部との間で構成され、非圧縮性の流体を供給可能な流体供給部と、
前記可動部材における前記挿入部の内周面と前記固定弁棒の外周面との隙間によって構成され、前記流体供給部に非圧縮性の流体を供給するための供給経路部とを具備し、
前記流体供給部への非圧縮性の流体の供給量によって、前記固定弁棒に対する前記可動部材の移動が調整される
ことを特徴とする電磁弁
【請求項2】
固定弁棒は、流出口に連通する流路を有し、
挿入部は、軸方向の一端部側に設けられた開口方向に向けて拡径するテーパ部を有し、
前記流路における前記流出口とは反対側の端部が前記挿入部におけるテーパ部以外の箇所に対応して配置された場合に、流入口と前記流出口との連通状態が閉塞され、
前記流路における前記流出口とは反対側の端部が前記テーパ部に対応して配置された場合に、前記流入口と前記流出口との連通状態が開通される
ことを特徴とする請求項記載の電磁弁。
【請求項3】
流体を供給するポンプと、
流体の給排の流量に応じて動作する作動装置と、
前記作動装置への流体の給排の流量を制御する請求項1または2記載の電磁弁と、
前記電磁弁が弁閉状態の場合にその電磁弁からの流体の流出を遮断するノンリーク弁とを備えた
ことを特徴とする流体圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショックレスタイプの電磁弁およびその電磁弁を備えた流体圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
理美容や医療分野等で用いられる椅子やベッド等の昇降および傾動用の油圧作動装置(例えば油圧シリンダ等)には、作動流体としての作動油の流量を制御するために電磁弁が用いられている。
【0003】
また、椅子やベッド等では、作動開始時や作動停止時に、急激な油圧の作用によって椅子やベッドに振動が生じ利用者に衝撃がかからないようにするため、モータの駆動力にて可動する電磁弁を用いる場合や、油圧シリンダ等の作動装置に通ずる配管上に、急激な油圧を除去するためのダンパやアキュームレータ等のショックレス機器を使用する場合がある。
【0004】
しかしながら、モータで可動する電磁弁は、モータによってコストが上昇するとともに、構造的にも複雑化および大型化してしまう。
【0005】
また、ショックレス機器を設ける場合には、ショックレス機器によってコストが上昇するとともに、配管する際の手間も増え配管作業が煩雑化してしまう。
【0006】
そして、モータやショックレス機器を用いないショックレスタイプの電磁弁としては、特許文献1に示すように、可動部材である可動鉄心(移動コアー)を固定部材である固定鉄心(固定コアー)側に吸着させる際における可動鉄心の動作を、可動鉄心と固定鉄心との間の空間への非圧縮性流体の流入量(容量)によって制御する構成が知られている。
【0007】
すなわち、特許文献1の電磁弁では、非圧縮性の流体を可動鉄心とその外側のスリーブとの間を流動させながら、可動鉄心と固定鉄心との間の空間へ供給し、その供給する流体の流量を制御することで可動鉄心の動きを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】実開昭55-57572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1の構成では、可動鉄心の外径とスリーブの内径との間に生じる隙間に非圧縮性の流体を流動させて可動鉄心の移動を調整するため、可動鉄心およびスリーブを高精度で製造する必要がある。
【0010】
したがって、ショックレスタイプの電磁弁において、可動部材の移動時間および速度を容易に調整できるだけでなく、より製造しやすい電磁弁が求められていた。
【0011】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、ショックレスタイプの電磁弁において、可動部材の移動時間および速度を容易に調整でき、かつ、製造しやすい電磁弁およびその電磁弁を備えた流体圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された電磁弁は、流体の流入口と、流体の流出口とを有する弁本体と、軸方向の一端部側が前記弁本体に固定された固定弁棒と、前記弁本体に対して固定して設けられた固定部材と、軸方向の一端部側へ開口され前記固定弁棒の軸方向の他端部側が摺動可能に挿入される挿入部を有し、前記固定弁棒に沿って摺動可能でかつ前記固定部材に対して接離可能に設けられ、前記流入口と前記流出口との連通状態を開閉する可動部材と、前記流入口と前記流出口との連通状態を閉塞させる方向に前記可動部材を付勢する付勢手段と、前記可動部材に前記付勢手段の付勢方向とは反対方向への電磁力を付与するソレノイド部と、前記挿入部における軸方向の他端部と前記固定弁棒の軸方向の他端部との間で構成され、非圧縮性の流体を供給可能な流体供給部と、前記可動部材における前記挿入部の内周面と前記固定弁棒の外周面との隙間によって構成され、前記流体供給部に非圧縮性の流体を供給するための供給経路部とを具備し、前記流体供給部への非圧縮性の流体の供給量によって、前記固定弁棒に対する前記可動部材の移動が調整されるものである。
【0013】
求項に記載された電磁弁は、請求項記載の電磁弁において、固定弁棒は、流出口に連通する流路を有し、挿入部は、軸方向の一端部側に設けられた開口方向に向けて拡径するテーパ部を有し、前記流路における前記流出口とは反対側の端部が前記挿入部におけるテーパ部以外の箇所に対応して配置された場合に、流入口と前記流出口との連通状態が閉塞され、前記流路における前記流出口とは反対側の端部が前記テーパ部に対応して配置された場合に、前記流入口と前記流出口との連通状態が開通されるものである。
【0014】
請求項に記載された流体圧回路は、流体を供給するポンプと、流体の給排の流量に応じて動作する作動装置と、前記作動装置への流体の給排の流量を制御する請求項1または2記載の電磁弁と、前記電磁弁が弁閉状態の場合にその電磁弁からの流体の流出を遮断するノンリーク弁とを備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、弁本体に固定された固定弁棒と、この固定弁棒に沿って摺動可能な可動部材と、これら固定弁棒と可動部材との間に位置する流体供給部と、この流体供給部へ流体を供給するための供給経路部とを備えるため、可動部材の移動時間および速度を容易に調整でき、製造しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態の電磁弁を示す断面図である。
図2】同上電磁弁における可動部材と固定弁棒とにおける供給経路部を模式的に示す断面図である。
図3】(a)は同上電磁弁における弁閉状態を示す断面図であり、(b)は同上電磁弁における弁開状態を示す断面図である。
図4】同上電磁弁を用いた流体圧回路を示す回路図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態の構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1において、1は電磁弁であり、この電磁弁1は、例えば、理美容および医療分野等における椅子やベッド等の油圧回路において、油圧シリンダ等の作動装置の制御弁として用いられる。
【0019】
電磁弁1は、弁本体2と、この弁本体2に固定されたハウジング3とを備えている。このハウジング3内では、固定弁棒4が弁本体2に固定され、固定部材としての固定鉄心5が、円筒状のスリーブ6を介し弁本体2に対して固定されている。また、スリーブ6内には、可動部材としての可動鉄心7が摺動可能に挿入されている。すなわち、スリーブ6に挿入された可動鉄心7は、固定弁棒4に沿って摺動可能で、かつ、固定鉄心5に対して接離可能となっている。
【0020】
さらに、ハウジング3内では、固定鉄心5と可動鉄心7とに付勢手段としてのばね8が接続され、固定鉄心5、スリーブ6および可動鉄心7を覆うようにソレノイド部9が設けられている。
【0021】
弁本体2は、作動油等の非圧縮性の流体の流入口11と、流体の流出口12とが開口形成され、これら流入口11と流出口12とが互いに連通されている。
【0022】
また、弁本体2における流出口12の上部には、固定弁棒4を取り付けるための取付孔13が設けられている。
【0023】
さらに、弁本体2には、Oリング14を介して円筒状のホルダ15が取り付けられ、このホルダ15を介してハウジング3が弁本体2に固定されている。
【0024】
また、ホルダ15の内側には、円筒状のスリーブ6が取り付けられている。このスリーブ6の軸方向の一端部(図1における下端部であり、以下下端部とする。)には、可動鉄心7が摺動自在に挿入されており、スリーブ6の軸方向の他端部(図1における上端部であり、以下上端部とする。)には、固定鉄心5が内嵌して固定されている。
【0025】
固定鉄心5は、円柱状の部材であり、この固定鉄心5の軸方向の一端部(図1における下端部であり、以下下端部とする。)の下端面が、可動鉄心7の他端部(図1における上端部であり、以下上端部とする。)の上端面と対向するように、固定鉄心5の軸方向の他端部(図1における上端部であり、以下上端部とする。)がハウジング3の天井面にボルト16を用いて固定されている。
【0026】
固定鉄心5の下端部側には、スリーブ6が外嵌して固定されており、このスリーブ6内で可動鉄心7が固定鉄心5に対して接離移動する。
【0027】
また、固定鉄心5の下端部には、スリーブ6の内側に位置するように、ばね8が接続されている。
【0028】
可動鉄心7は、スリーブ6内に摺動自在に挿入可能な円柱状の部材である。
【0029】
この可動鉄心7は、下端部側へ円柱状に開口された挿入部18を有し、この挿入部18には、固定弁棒4が摺動可能に内挿される。
【0030】
すなわち、可動鉄心7は、スリーブ6内で固定弁棒4に沿って移動することで、固定鉄心5に対して接離する。また、このように可動鉄心7が固定鉄心5に対して接離移動することで、弁本体2の流入口11と流出口12との連通状態が開閉される。
【0031】
また、可動鉄心7の挿入部18は、固定弁棒4の外径に対応するように所定の径で開口された閉塞部19と、この閉塞部19の軸方向の一端部側(下側)に設けられ開口方向に向けて漸次拡径するテーパ部20とを有している。すなわち、挿入部18の内周面は、軸方向の他端部側(上側)に位置し軸方向と平行に円柱状に開口された閉塞部19と、この閉塞部19の軸方向の一端側(下側)に位置し軸方向に対して傾斜状で円錐状に開口されテーパ部20とを有している。
【0032】
可動鉄心7の上端部には、ばね8を取り付けるための取付凹部21が設けられている。
【0033】
すなわち、ばね8は、一端部が取付凹部21に接続され、他端部が固定鉄心5に接続されている。そして、ばね8は、可動鉄心7が固定鉄心5から離間し流入口11と流出口12との連通状態が閉塞される方向に可動鉄心7を付勢する。
【0034】
ソレノイド部9は、ハウジング3内において、スリーブ6の外側に位置するようにボビン22がホルダ15上に固定され、このボビン22にコイル23が巻き付けられている。
【0035】
そして、ソレノイド部9は、コイル23への通電によって、可動鉄心7に、ばね8による付勢方向とは反対方向へ電磁吸引力を付与する。
【0036】
すなわち、コイル23に通電することによって、可動鉄心7は、ばね8の付勢力に抗して流入口11と流出口12との連通状態が解放される方向へ電磁力により引き付けられ、弁開進行するように移動する。
【0037】
また、コイル23への通電が遮断されることで、可動鉄心7は、ソレノイド部9による電磁吸引力が無くなり、ばね8の付勢力によって流入口11と流出口12との連通状態を閉塞するように移動する。
【0038】
固定弁棒4は、円柱状の部材であり、軸方向の一端部(図1における下端部であり、以下下端部とする。)が取付孔13に嵌合されて、弁本体2に対して水密に固定されている。
【0039】
また、固定弁棒4の軸方向の他端部(図1における上端部であり、以下上端部とする。)側は、可動鉄心7の挿入部18に挿入されている。なお、固定弁棒4の上端面が、挿入部18の天井面に接触した状態が、流入口11と流出口12との連通状態が閉塞された着座状態となる。
【0040】
固定弁棒4は、内部に弁本体2の流出口12に連通する空洞状の流路24を有している。
【0041】
この流路24は、固定弁棒4の外周面へ開口された流入部25と、下端部へ開口された流出部26とを有している。
【0042】
流入部25は、ソレノイド部9の通電が遮断され可動鉄心7が固定鉄心5に対して最も離間した着座状態において、挿入部18の閉塞部19に対応して配置され、また一方で、ソレノイド部9に通電され、可動鉄心7が固定鉄心5側へ接近し弁開進行した状態において、テーパ部20に対応して配置される。
【0043】
流出部26は、固定弁棒4が弁本体2に取り付けられた状態において、弁本体2の流出口12に対応して配置されている。
【0044】
したがって、ソレノイド部9に通電されていない着座状態では、流入部25が閉塞部19に閉塞されて、流入口11と流出口12との連通が閉塞される。すなわち、流入口11からの流体は、流入部25に流入できずに流出口12から流出することなく滞留する。
【0045】
一方、ソレノイド部9に通電され弁開進行が開始されて連通状態が開通されると、流入部25がテーパ部20に対応して配置されて開放され、流入口11は、流路24を介して流出口12と連通した状態となる。すなわち、弁本体2の流入口11から流入した流体は、固定弁棒4の外周面に位置する流入部25から流路24内に流入し、固定弁棒4の下端部に位置する流出部26を通って弁本体2の流出口12へ流出する。
【0046】
ここで、図2に示すように、固定弁棒4は、上端部の角部が弧状に成形されているとともに、挿入部18の内周面と固定弁棒4の外周面との間には、わずかな隙間が存在する。この隙間には流体が流入可能であり、隙間に流入した流体は、固定弁棒4の上端部の弧状の角部に沿って固定弁棒4の上端面と挿入部18の天井面との間に入り込む。
【0047】
すなわち、固定弁棒4の上端面と挿入部18の天井面との間によって流体供給部28が構成され、固定弁棒4の外周面と挿入部18の内周面との間の隙間によって供給経路部29が構成される。
【0048】
そして、流体が供給経路部29を通って流体供給部28に供給されることで、その流体が非圧縮性であるため、流体供給部28へ供給された流体の分量(供給量)に応じて、固定弁棒4に対して可動鉄心7が摺動する。
【0049】
つまり、流体供給部28への流体の供給量にともなって可動鉄心7が摺動し、流体供給部28は、流体が供給されることにより、固定弁棒4に対して可動鉄心7を摺動させるための制御室として作用する。
【0050】
したがって、通電されたソレノイド部9により可動鉄心7に電磁力が付与されて、可動鉄心7が固定鉄心5に接近移動する際や、ソレノイド部9の通電が遮断され可動鉄心7が固定鉄心5から離間移動する際には、流体供給部28への流体の供給量を制御することで、固定鉄心5に対する可動鉄心7の移動時間および速度を調整できる。
【0051】
次に、上記実施の形態の作用および効果を説明する。
【0052】
まず、図3(a)に示すように、弁本体2の流入口11と流出口12との連通状態が閉塞された弁閉状態では、固定弁棒4に設けられた流路24が可動鉄心7における挿入部18の閉塞部19で閉塞されているため、流体は流出口12側へ流動できず、また、流入口11側と流出口12側との圧力差によって流体が漏れにくい状態となっている。
【0053】
この図3(a)に示す弁閉状態から、ソレノイド部9に通電させると、電磁力により可動鉄心7が固定鉄心5側へ引き付けられようとするが、流体が非圧縮性であるため、その流体が流体供給部28に流入されないと、可動鉄心7が動くことができない。そのため、挿入部18の内周面と固定弁棒4の外周面との隙間で構成される供給経路部29を通って非圧縮性の流体が流体供給部28へ供給されることで、可動鉄心7が固定鉄心5側へ移動して、流入部25とテーパ部20とが対応した状態となり、弁開進行する。
【0054】
また、可動鉄心7は、流体供給部28への流体の供給量に応じて移動するため、弁開を開始した際には、流体供給部28への流体の供給量を制御することで、流入部25とテーパ部20との対応状態を制御でき、弁開の際の作動装置への流体の流量を緩やかに比例的に変化させることができる。
【0055】
一方、図3(b)に示す弁開状態から弁閉状態にする場合には、ソレノイド部9の通電を遮断する。
【0056】
ソレノイド部9の通電を遮断すると、可動鉄心7が自重とばね8の付勢力とによって、固定鉄心5から離間するように移動して弁閉進行させる。
【0057】
この弁閉を開始した際には、挿入部18の内周面と固定弁棒4の外周面との隙間で構成される供給経路部29を通って流体供給部28から流出する流体の流量を制御することで、固定鉄心5に対する可動鉄心7の移動を制御し、弁閉の際の作動装置からの流体の流量を緩やかに比例的に変化できる。
【0058】
そして、上述のように電磁弁1によれば、供給経路部29からの流体供給部28への流体の供給量を制御することにより、可動鉄心7の移動を調整できるため、弁開時および弁閉時において、可動鉄心7の移動時間および速度を容易に調整でき、作動装置に対する流体の流量を、弁開閉状態に応じて、例えば比例的に緩やかに変化できる。
【0059】
また、流体供給部28および供給経路部29のいずれも、可動鉄心7と固定弁棒4との寸法や構成を調整するだけであるため、特殊な設備や方法を用いなくても、一般的な製造方法で高精度に加工しやすく、製造しやすい。
【0060】
さらに、例えば可動鉄心7とスリーブ6との間で流体を流動させる従来の構成に比べて、可動鉄心7と固定弁棒4との間で流体を流動させる構成の方が強度上の観点からも好ましい。
【0061】
可動鉄心7の挿入部18の軸方向の他端部と固定弁棒4の軸方向の他端部との間で流体供給部28が構成されることにより、可動鉄心7の移動を調整しやすいとともに、可動鉄心7に固定鉄心5を挿入可能な挿入部18を形成するだけであるため、高精度に加工しやすい。
【0062】
また、挿入部18の内周面と固定弁棒4の外周面との隙間によって、供給経路部29が構成されることにより、可動鉄心7の挿入部18の内周面と、固定弁棒4との構成や寸法を調整するだけであるため、高精度に加工しやすい。
【0063】
さらに、可動鉄心7内に固定弁棒4が挿入された構成にすることにより、電磁弁1の大型化を防止できる。
【0064】
また、固定弁棒4に流入口11および流出口12に連通する流路24が設けられたことにより、固定弁棒4を流体の流動経路として利用でき、電磁弁1を小型化できる。
【0065】
さらに、挿入部18にテーパ部20が設けられることにより、固定弁棒4の流入部25に対応するテーパ部20の位置(開口面積)に基づいて、流入部25から流路24に流入する流体の流量を調整できるため、作動装置に対する流体の流量をより調整しやすくできる。
【0066】
なお、上記実施の形態では、挿入部18における上端部と、固定弁棒4の上端部との間が流体供給部28となる構成としたが、このような構成には限定されず、流体供給部28は、流体が供給されることにより、その供給量によって固定弁棒4に対して可動鉄心7を固定鉄心5側へ摺動させることが可能な構成であればよい。
【0067】
また、供給経路部29は、可動鉄心7の挿入部18の内周面と固定弁棒4の外周面との隙間で形成された構成としたが、このような構成には限定されず、流体供給部28に流体を供給可能な構成であればよい。
【0068】
さらに、固定弁棒4に流入口11および流出口12に連通する流路24が設けられた構成としたが、このような構成には限定されず、固定弁棒4とは別に流入口11からの流体を流出口12へ流動させるための経路を有する構成にしてもよい。
【0069】
また、固定弁棒4に流路24が設けられた構成において、挿入部18は、閉塞部19とテーパ部20とを有する構成としたが、このような構成には限定されず、可動鉄心7の移動にともなって流路24を開閉できる構成であればよい。
【0070】
次に、上記電磁弁1を用いた流体圧回路について、図4を参照して説明する。
【0071】
図4に示すように、流体圧回路としての油圧回路31は、例えば椅子やベッド等の作動対象物の昇降および傾動用の作動装置としての油圧シリンダ32の動作を制御するためのものである。
【0072】
油圧回路31は、ポンプ33とタンク34との間に複数(例えば2つ)の流路35a,35bが並列に接続されている。
【0073】
流路35aには、リリーフ弁36が接続され、流路35bには、油圧シリンダ32への作動油の供給側(油圧シリンダ32の拡大側)の電磁弁1と、逆止弁37と、油圧シリンダ32からの作動油の排出側(油圧シリンダ32の収縮側)の電磁弁1と、ノンリーク弁38とが順次直列に接続されている。また、逆止弁37と収縮側の電磁弁1との間に油圧シリンダ32が接続されている。
【0074】
拡大側の電磁弁1は、油圧シリンダ32へ作動油を供給する際の作動油の流量を調整する。すなわち、拡大側の電磁弁1は、弁開進行および弁閉進行を緩やかに比例的に行ない、シリンダ本体32a内へ流入する作動油の流量を調整することで、ロッド32bの進行移動開始時、および、ロッド32bの進行移動停止時の急激な油圧の作用を防止する。
【0075】
収縮側の電磁弁1は、油圧シリンダ32から作動油が排出する際の作動油の流量を調整する。すなわち、収縮側の電磁弁1は、弁開進行および弁閉進行を緩やかに比例的に行ない、シリンダ本体32aから流出する作動油の流量を調整することで、ロッド32bの後退移動開始時、および、ロッド32bの後退移動停止時の急激な油圧の作用を防止する。
【0076】
ここで、拡大側の電磁弁1および収縮側の電磁弁1のいずれも弁閉状態で油圧シリンダ32への作動油の給排を停止した状態では、作動対象物の重量やその利用者の体重等によって、ロッド32bが後退する方向に力が作用し、収縮側の電磁弁1から作動油が流出してしまい、油圧シリンダ32におけるロッド32bの位置が変化してしまう可能性がある。
【0077】
そこで、流路35bでは、収縮側の電磁弁1に直列にノンリーク弁38が接続されている。すなわち、油圧回路31では、ノンリーク弁38を弁閉することによって、収縮側の電磁弁1が弁閉状態の場合に、その電磁弁1からの作動油の流出を遮断し、油圧シリンダ32におけるロッド32bの位置を保持する。
【0078】
そして、ポンプ33の駆動に基づいて油圧シリンダ32のロッド32bを進行移動させる際には、拡大側の電磁弁1を弁開進行させて弁開状態とし、収縮側の電磁弁1を弁閉状態として、油圧シリンダ32へ作動油を供給する。
【0079】
油圧シリンダ32におけるロッド32bの進行移動を停止させる際には、弁開状態だった拡大側の電磁弁1を弁閉進行させて弁閉状態とし、油圧シリンダ32への作動油の供給を停止させる。
【0080】
油圧シリンダ32のロッド32bを後退移動させる際には、ノンリーク弁38を弁開した後、収縮側の電磁弁1を弁開進行させて弁開状態とし、油圧シリンダ32からの作動油をタンク34へ流出させる。なお、拡大側の電磁弁1は弁閉状態のままである。
【0081】
油圧シリンダ32におけるロッド32bの後退移動を停止させる際には、弁開状態だった収縮側の電磁弁1を弁閉進行させて弁閉状態とし、油圧シリンダ32からの作動油の排出を停止させるとともに、ノンリーク弁38を弁閉して、収縮側の電磁弁1からの作動油の流出を遮断する。
【0082】
なお、油圧回路31は、上記構成には限定されず、電磁弁1からの作動油の流出を遮断するノンリーク弁38が設けられた構成であれば、必要に応じて種々のバルブを適宜適用できる。
【0083】
また、ポンプ33とタンク34との間には、油圧シリンダ32が接続された流路35bが1つだけ設けられた構成には限定されず、油圧シリンダ32が接続された複数の流路が並列に設けられた構成にしてもよい
【符号の説明】
【0084】
1 電磁弁
2 弁本体
4 固定弁棒
5 固定部材としての固定鉄心
7 可動部材としての可動鉄心
8 付勢手段としてのばね
9 ソレノイド部
11 流入口
12 流出口
18 挿入部
20 テーパ部
24 流路
28 流体供給部
29 供給経路部
31 流体圧回路としての油圧回路
32 作動装置としての油圧シリンダ
33 ポンプ
38 ノンリーク
図1
図2
図3
図4