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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】超音波振動又は音波振動による接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
B23K20/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018074342
(22)【出願日】2018-04-08
(65)【公開番号】P2019181504
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594114019
【氏名又は名称】株式会社アルテクス
(74)【代理人】
【識別番号】100154195
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 敬子
(74)【代理人】
【識別番号】100171826
【弁理士】
【氏名又は名称】丸林 啓介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-263248(JP,A)
【文献】実開昭62-96986(JP,U)
【文献】特開2006-231402(JP,A)
【文献】特開昭58-38130(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0939975(KR,B1)
【文献】特開2018-51629(JP,A)
【文献】特開2019-10655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記共振器の側の突起部の根元部が外側から前記共振器の側に窪む凹弧状面部になったことを特徴とする請求項1記載超音波振動又は音波振動による接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合用共振器の接合対象体を押し付ける先端部の形状に工夫を凝らし、超音波振動又は音波振動で複数枚の熱可塑性合成樹脂フィルムと複数枚の金属箔とを上下に交互に積み重ねてなる多層部が板状の金属部の上に一括かつ導通可能に接合する超音波振動又は音波振動による接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5及び6用いて、非特許文献1で開示された金属接合について説明する。図5に示し
た金属接合は、複数の重ね合わされた金属部材51からなる接合対象体52を共振器53とアンビル54とで加重しながら共振器53で横方向の超音波振動を接合対象体52に与えることで、複数の重ね合わされた金属部材51同士の境界面において摩擦が発生し、この摩擦熱による加熱から金属原子の運動が盛んになり、拡散による金属原子の移動が発生
し、金属原子相互間に発生する引力で金属原子相互間が結び付き、複数の重ね合わされた金属部材51同士が接合する。共振器53の金属部材51を押し付ける先端部55及びアンビル54の金属部材51を押し付ける先端部56は、図6に示したように、共振器53又はアンビル54の側から突出する方向に徐々に細くなる角錐形又は截頭角錐形のグリップ部として構成され、図4に示した接合対象体52をグリップするようなっている。
【0003】
近年、リチウムイオン電池等にあっては、金属箔の1枚ずつの厚みが薄くなり、金属箔の接合枚数が多くなる傾向にある。このように金属箔の厚みが薄くかつ接合枚数が多くなると、接合中において、前記角錐形又は截頭角錐形の突起部からなる先端部55及び56が金属箔に刺さるに連れて先端部55及び56における隣接する面同士の交差するエッジに角が立ち、金属箔に破壊が発生することがあった。
【0004】
前記角錐形又は截頭角錐形になった突起部からなる先端部55及び56による金属箔の破壊を防止することから、特許文献1の段落[0027]から段落[0030]及び図5で開示された金属箔を超音波振動で接合する発明を利用することが考えられる。
【0005】
図7を用いて、特許文献1の段落[0027]から段落[0030]及び図5で開示された発明を利用して、複数枚の金属箔61を超音波振動で接合する場合について説明する。図7に示したように、複数枚の重ね合わされた金属箔61を金属板からなる保護部材62及び63で上下より挟み、保護部材62及63を共振器53の先端部55とアンビル54の先端部56とで上下より挟み、共振器53で金属箔61と保護部材62及63とに加重及び超音波振動をかけ、先端部55及び56が保護部材62及63並びに金属箔61を破壊することなく金属箔61と保護部材62及63とを互いに超音波振動で接合する。
【0006】
しかしならが、図7に示した金属接合は、複数枚の重ね合わされた金属箔61を保護部材62及63で保護する工程が増加するので、にわかに採用しがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2014/81802号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】超音波金属接合の原理(技術説明)コスモシステム株式会社、[平 成28年9月7日検索、インターネット<URL:http://www.cosmo-stm.com/usmetal/a bout-us-metal-welding.html>]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、接合用共振器の接合対象体を押し付ける先端部の形状に工夫を凝らし、少なくとも、前記先端部から金属箔を保護部材で保護することなく、超音波振動又は音波振動で複数枚の熱可塑性合成樹脂フィルムと複数枚の金属箔とを上下に交互に積み重ねてなる多層部が板状の金属部の上に一括かつ導通可能に接合する超音波振動又は音波振動による接合方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、共振器の接合対象体の側の先端部が外面に角張ったシャープエッジの存在しない複数個の突起部を前記先端部と前記先端部の下方に設けられた受け治具との対向する方向に2段以上に積み重ねかつ前記接合対象体の側の突起部を前記共振器の側の突起部よりも小さい形状とした構成になっており、複数枚の熱可塑性合成樹脂フィルムと複数枚の金属箔とを上下に交互に積み重ねてなる多層部を金属部の上に積み重ねた構造の接合対象体が前記先端部と前記受け治具との間に配置されて上下方向より加圧され、前記先端部が前記共振器の一端部に取り付けられた振動子から伝達された音波振動又は超音波振動に共振して前記加圧される方向に直交する横方向に振動して前記接合対象体における多層部の複数枚の金属箔と金属部とを一括しかつ導通可能に接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、共振器の先端部が外面に角張ったシャープエッジの存在しない複数個の突起部を前記先端部と前記先端部の下方に設けられた受け治具との対向する方向に2段以上に積み重ねかつ前記接合対象体の側の突起部を前記共振器の側の突起部よりも小さい形状とした構成になっているので、接合対象体を接合する工程において、先ず音波振動又は超音波振動のエネルギーを1段目としての接合対象体の側の小さい形状の突起部に集中させて変位のきっかけとし、続く2段目としての共振器の側の大きな形状の突起部が接合対象体の側の小さい形状の突起部の周囲に存在する部分を円滑に接合することができる。よって、振動エネルギーが共振器の先端部に集中し接合対象体の接合対象部位を1つの塊の金属となるように一括かつ導通可能に接合することができ、接合対象体の接合対象部位の周囲における熱可塑性合成樹脂フィルムが広範囲に溶けない。又、共振器の先端部に振動エネルギーが効率的に集中することによって、振動による金属箔の原子及び金属部の原子の自由運動が抑制され、金属箔及び金属部から発生するコンタミネーションとしての金属粉の発生と拡散とが抑えられる。又、本発明において、前記接合対象体の側の突起部の根元部が外側から前記接合用共振器の側又は前記接合用受け治具の側に窪む凹弧状面部になっていれば、前記接合用受け治具の側の突起部の根元部にクラックが入ることがなく、接合の仕上りを前記接合用受け治具の側の突起部の根元部の凹弧状面部の反映された綺麗な形に見せることができる。又、本発明において、前記接合用共振器の側又は前記接合用受け治具の側の突起部の根元部が外側から前記接合用共振器の側又は前記接合用受け治具の側に窪む凹弧状面部になっていれば、前記接合用共振器の側又は前記接合用受け治具の側の突起部の根元部にクラックが入ることがなく、接合の仕上りを前記根元部の凹弧状面部の反映された綺麗な形に見せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】発明を実施するための形態に係る接合方法を示し、A図は接合対象体を受け治具の上に搭載した接合前の状態の側面図、B図は接合対象体が共振器と受け治具とで上下から加圧された状態において共振器の先端部が音波振動又は超音波振動に共振して横方向に振動して接合対象体の金属箔と金属部とにおける接合対象部位を一括して導通可能に接合された内部の模式図、C図は共振器が上昇して接合対象部位の接合された内部の模式図。
図2】発明を実施するための形態に係る接合装置を示した正面図。
図3】発明を実施するための形態に係る接合用共振器の先端部を示し、A図は底面図、B図はA図のB-B線断面図、C図はA図のC-C線断面図。
図4】発明を実施するための形態に係る接合用共振器の先端部の図2と異なる構造を示し、A図は底面図、B図はA図のB-B線断面図、C図はA図のC-C線断面図。
図5】非特許文献1で開示された金属接合を示した模式図。
図6】従来の共振器及びアンビルの接合対象体を押し付ける先端部としての截頭角錐形の突起部を示した斜視図。
図7】特許文献1で開示された発明を利用した金属接合を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を用いて、発明を実施するための形態に係る接合方法について説明する。図1に示した接合方法では、図1のA図に示したように、接合対象体41の挿入可能な空間が共振器1の先端部6と受け治具40との間に形成され、共振器1の先端部6と受け治具40とが互いに縦方向で対向した状態において、接合対象体41が受け治具40の上に搭載される。この受け治具40の上に搭載された接合対象体41は、複数枚の熱可塑性合成樹脂フィルム42と複数枚の金属箔43とを上下に交互に積み重ねてなる多層部44が板状の金属部45の上に積み重ねられた構造になっている。接合対象体41が受け治具40の上に搭載された場合、接合対象体41における板状の金属部45が受け治具40に接触している。受け治具41の接合対象体41の側の上面には山形の多数個の凹凸からなるグリップ部47が設けられているが、受け治具41の接合対象体41の側の上面はグリップ部47の設けられていない平坦な面でも適用可能である。金属部45の厚みは、グリップ部47が接合時に金属部45を上下方向に貫通することがない厚さになっている。
【0014】
先端部6は、共振器1の接合対象体41の側に位置する部分でありかつ接合時に接合対象体41に押し付けられる部分であって、複数個の突起部7及び8を共振器1と受け治具40との対向する方向としての縦方向に2段に積み重ねかつ接合対象体41の側の突起部8を共振器1の側の突起部7よりも小さい形状とした構成になっている。突起部7及び8は、半球形又は蒲鉾形に構成されている。突起部7及び8を構成する半球形又は蒲鉾形は、外面に角張ったシャープエッジの存在しない形状である。
【0015】
接合対象体41の側の突起部8が共振器1の側の突起部7よりも小さい形状になっているので、この明細書では、共振器1の側の突起部7を大突起部7と表現し、接合対象体41の側の突起部8を小突起部8と表現する。又、接合時に小突起部8が大突起部7よりも先に接合対象体41に接触するように、小突起部8が大突起部7から接合対象体41の側に突出した構成になったことにより、先端部6が接合時に金属箔43を破壊しない。大突起部7と小突起部8とからなる先端部6の個数は、1個又は複数個のどちらかでよい。先端部6が複数個の場合、それぞれの先端部6が異なる大きさ又は同じ大きさでもよい。
【0016】
次に、図1のB図に示したように、共振器1が矢印10で示すように下降するのに伴って接合対象体41と共振器1と受け治具40とを上下方向に互いに接触する方向に加圧し、接合対象体41が共振器1の先端部6と受け治具40とで上下から挟まれて加圧され、共振器1の先端部6が振動子38から伝達された音波振動又は超音波振動に共振して矢印9で示した横方向に振動し、接合対象体41の金属箔43と金属部45とにおける接合対象部位46が先端部6からの加圧と振動エネルギーとを受けて一括かつ導通可能に接合する。
【0017】
接合対象体41を接合する工程において、接合対象体41が先端部6からの加圧と振動エネルギーとを受けることによって、先端部6の周囲における熱可塑性合成樹脂フィルム42が蒸発し、先端部6の周囲における金属箔43の金属粒子及び金属部45の金属粒子がインゴットに変化し、このインゴットとなった,金属箔43の原子及び金属部45の原子に自由運動が発生し、ついには金属箔43の原子及び金属部45の原子が励起状態となって拡散して接合対象部位46として1つの塊の金属となるように接合する。つまり、金属箔43と金属部45とにおける接合対象部位46が1つの塊の金属となるように一括かつ導通可能に接合される。接合対象部位46では金属箔43及び金属部45が熱可塑性合成樹脂フィルム42を上下方向に貫通して1つの塊の金属となって接合し、接合対象部位46の周囲における接合対象部位46以外の部分では多層部44の熱可塑性合成樹脂フィルム42が各金属箔43を互いに絶縁しかつ金属箔43と金属部45とを互いに絶縁できる。
【0018】
先端部6が大突起部7と小突起部8となる外面に角張ったシャープエッジの存在しない複数個の突起部を共振器1と受け治具40との対向する方向に2段以上に積み重ねかつ接合対象体41の側の小突起部8を共振器1の側の大突起部7よりも小さい形状とした構成になっているので、接合対象体41を接合する工程において、先ず音波振動又は超音波振動のエネルギーを1段目としての小突起部8に集中させて変位のきっかけとし、続く2段目としての大突起部7が小突起部8の周囲に存在する部分を円滑に接合することができる。よって、振動エネルギーが先端部6に集中し接合対象部位46を1つの塊の金属となって一括かつ導通可能に接合することができ、接合対象部位46の周囲における熱可塑性合成樹脂フィルム42が広範囲に溶けない。又、先端部6に振動エネルギーが効率的に集中することによって、振動による金属箔43の原子及び金属部45の原子の自由運動が抑制され、金属箔43及び金属部45から発生するコンタミネーションとしての金属粉の発生と拡散とが抑えられる。尚、接合には20KHz以下の範囲中の或る1つの周波数に固定される固定されることが有利で、リチウムイオン電池の電極の接合等でタブ部を束ねて接合する場合に上記効果が期待できる。
【0019】
その後、図1のC図に示したように、共振器1が上昇するのに伴って、先端部6が接合対象体41から離れ、接合対象体41が受け治具40の上に残される。そして、接合対象体41が受け治具40から取り出され、接合対象体41に対する1回の接合動作が終了する。
【0020】
図2を用いて、発明を実施するための形態に係る接合方法に用いられる接合装置31について説明する。図2に示した接合装置31に用いられる共振器1は、接合目的に応じて、アルミ合金又はチタン合金又は鉄合金等から構成され、共振主体部2と支持部3と接合ツール部4とを備える。接合ツール部4のワーク側の面5は、接合時に接合対象体41に対向する面となり、接合ツール部4の縦方向に延びる中心線に直交する横方向の平面を構成する。ワーク側の面5には、先端部6が設けられる。先端部6の個数は、1個のワーク側の面5に対し、1個でも複数個でもよい。
【0021】
ワーク側の面5並びに先端部6が矢印9で示した横方向に最大の振動振幅で振動する最大振動振幅点を構成するように、接合ツール部4の共振主体部2の外面から下側に突出した寸法は設定される。共振主体部2における横方向の一端から他端までの長さは、振動子38から伝達された超音波振動又は音波振動の共振周波数の少なくとも半波長の長さを有すればよいが、1波長の長さになったものを例示した。共振主体部2は、丸棒状であっても角棒状であってもよい。共振主体部2の長さ方向の両端部及び中央部には、最大振動振幅点が位置する。
【0022】
共振主体部2の長さ方向の中央部おける最大振動振幅点の位置には、接合ツール部4が共振主体部2の外面から下側に突出して設けられる。接合ツール部4の共振主体部2の外面から下側に突出した寸法が少ない場合は、接合ツール部4が共振主体部2の外面から上側又は前側又は後側の少なくとも1つの側にも突出して設けられてもよい。
【0023】
共振主体部2の長さ方向の中央部と両端部との間における最小振動振幅点の位置には、支持部3が共振主体部2の外面から外側に突出して設けられる。最小振動振幅点は、ノーダルポイントとも称される。支持部3が共振主体部2の外面から外側に突出する態様は、特許第4564548号公報の段落[0013]及び図2を参照すれば、明確になる。
【0024】
共振主体部2が丸棒状の場合、支持部3は共振主体部2を円周方向に囲む態様であってもよい。支持部3が共振主体部2を円周方向に囲む態様は、特許第2911394号公報の図5または図18を参照すれば、明確になる。
【0025】
共振主体部2は、構造は複雑になるが、接合ツール部4を有する中央部と支持部3を有する両端部とを無頭ねじ又はねじ棒のような連結具で同軸状に連結した構造でもよい。共振主体部2の接合ツール部4を有する中央部がホーンと表現され、共振主体部2の支持部3を有する両端部がブースタと表現される。
【0026】
接合ツール部4は、共振主体部2に一体に設けられた構造でも、共振主体部2と別体になったものを無頭ねじ又はねじ棒のような連結具で共振主体部2に連結した構造でもよい。接合ツール部4が共振主体部2に連結される構造の場合、無頭ねじ又はねじ棒のような連結具を使用することなく、共振主体部2に接合ツール部4をろう付け材のような接合剤で結合させてもよい。接合ツール部4の全体形状としては、丸棒状、角棒状等の形が適用可能である。
【0027】
図2に示した接合装置31は、装置躯体32の上部に加圧機構33を備え、加圧機構33の出力部材34に保持具35を備える。保持具35は、前後及び下方に貫通する空間部36の左右方向としての横方向の両側に、保持部37を備える。保持具35には、共振器1の長さ方向が矢印9で示した横方向に向けられ、共振器1の支持部3以外の部分が保持具35に接触しないように空間部36と保持具35の外とに配置され、支持部3が保持部37に支持され、超音波振動又は音波振動を利用して接合対象体41を接合する接合用共振器1が保持具35に設置される。これにより、振動子38を一端部に有する共振器1が昇降可能な保持具35に水平状で両側支持に装着される。
【0028】
共振器1の横方向の一端部には振動子38の出力端部39が無頭ねじ又はねじ棒のような連結具で同軸状に連結され、共振器1は振動子38から伝達された音波振動又は超音波振動に共振する。装置躯体32の下部には、アンビルとしての受け治具40が、接合ツール部4の真下に位置して設けられる。図2に示した接合装置31に用いられる受け治具40は、超音波振動又は音波振動を利用して接合対象体41を接合する接合用受け治具40を構成するので、この明細書では接合用受け治具40を受け治具40と表現する。尚、共振器1としては、接合ツール部4から横方向の両側に支持部3を備えた両支持タイプを図示したが、接合ツール部4から横方向の片側に支持部を備えた片支持タイプでもよい。しかしながら、共振器1としては、片支持タイプよりも両支持タイプの方が、接合ツール部4で接合対象体に加重を掛けたときに、接合対象体への加重の偏りがない。
【0029】
図2に示した接合装置31で接合対象体41を接合する場合には、接合対象体41の挿入可能な空間が共振器1の先端部6と受け治具40との間に形成され、共振器1の先端部6と受け治具40とが互いに縦方向で対向した状態において、接合対象体41における板状の金属部45が受け治具40に接触するように、接合対象体41が受け治具40の上に搭載される。
【0030】
次に、加圧機構33が駆動し、出力部材34が下降するのに伴って、接合対象体41が共振器1の先端部6と受け治具40とで上下から挟まれて加圧され、共振器1が振動子38から伝達された音波振動又は超音波振動に共振し、共振器1の先端部6が矢印9で示した横方向に振動し、接合対象体41の接合対象部位が先端部6からの加圧と振動エネルギーとを受けて接合される。
【0031】
共振器1における接合ツール部4を有する中央部と支持部3を有する両端部との間に、又は、共振器1と接合ツール部4との間に、共振器1と振動子38の出力端部39との間
に、図示のされていない中間ブースタを無頭ねじ又はねじ棒からなる連結具により横方向同軸状態に一体に結合しても良い。中間ブースタは、共振器1の振幅を調整するためのものである。中間ブースタの倍率(形状)を変えることで、共振器1の振幅を大きくも小さくもすることができる。中間ブースタを使用しない場合は、共振器1の振幅は、振動子38の振幅と同じ、つまり、1倍である。但し、1倍の中間ブースタを使用する場合もある。
【0032】
接合装置31としては、特許第2911395号公報で開示された共振器を縦置き状態に配置した接合装置でも適用可能である。
【0033】
図2に示したワーク側の面5の大突起部7と小突起部8とからなる2段に構成された先端部6の周囲に、図示を省略した周辺突部を設けても良い。この図示を省略した周辺突部のワーク側の面5から突出する寸法は、先端部6のワーク側の面5から突出する寸法より小さくなっており、接合時に前記図示を省略した周辺突部が接合対象体41を破壊することなく押さえ込んで接合することができる。
【0034】
又、共振器1の先端部6が突起部7及び8を共振器1と受け治具40との対向する方向に2段に積み重ねた構成になった場合を図2に例示したが、複数個の突起部を共振器1と受け治具40との対向する方向に3段以上に積み重ねた構造でも同様に適用可能である。例えば、複数個の突起部が共振器1と受け治具40との対向する方向に3段に積み重ねられた構造にあっては、接合対象体41の側に最も近い突起部が最も小さい形状であり、共振器1の側に最も近い突起部が最も大きい形状であり、接合対象体41の側に最も近い突起部と共振器1の側に最も近い突起部との間に位置する突起部が接合対象体41の側に最も近い最も小さい形状の突起部よりも大きい形状であるとともに共振器1の側に最も近い大きな形状の突起部よりも小さい形状になっている。このように複数個の突起部が共振器1と受け治具40との対向する方向に3段又は3段以上に積み重ねられた構造では、複数個の突起部のそれぞれの形状が共振器1の側から接合対象体41の側に行くに従って小さい形状になっている。又、複数個の突起部を2段又は3段以上に積み重ねてなる先端部6が共振器1の1個のワーク側の面5に対し複数個設けられてもよい。
【0035】
図3を用いて、発明を実施するための形態に係る共振器1の先端部6が大突起部7と小突起部8とからなる2段に構成された構造について説明する。図3のA図に示したように、先端部6を底面より見た場合に、大突起部7は、蒲鉾形になっているが、円形状でもよい。蒲鉾形の大突起部7の長手方向における両端部の外面は、凸弧状面部71として構成される。凸弧状面部71は、大突起部7の外面の長手方向に延びる中心線を中心として大突起部7の外面の長手方向に延びる中心線に直交する水平面内において大突起部7を半周する態様で、大突起部7の外面の長手方向に延びる中心線の側から大突起部7の外面の長手方向に延びる中心線と直交する方向の両側に行くに従って滑らかな凸状の円弧を描き、大突起部7の短手方向の両端部に外接する。
【0036】
小突起部8は、大突起部7よりも小さい相似形の蒲鉾形になっているが、円形状でもよい。小突起部8の長手方向における両端部の外面は、凸弧状面部81として構成される。凸弧状面部81は、小突起部8の外面の長手方向に延びる中心線を中心として小突起部8の外面の長手方向に延びる中心線に直交する水平面内において小突起部8を半周する態様で、小突起部8の外面の長手方向に延びる中心線の側から小突起部8の外面の長手方向に延びる中心線と直交する方向の両側に行くに従って滑らかな凸状の円弧を描き、小突起部8の短手方向の両端部に外接する。図3のA図において、小突起部8が長手方向に複数個に分かれた構成、つまり、複数個の小突起部8が1個の大突起部7に設けられてもよい。
【0037】
図3のB図に示したように、凸弧状面部71は、大突起部7の外面の縦方向に延びる中心線を中心として大突起部7の両端部の側における外面の縦方向に延びる中心線上の垂直平面内において大突起部7を1/4周する態様で、ワーク側の面5から大突起部7の外面の中心部の側に行くに従って滑らかな凸状の円弧を描き、大突起部7の短手方向の外面としての凸弧状面部72と段差なく滑らかに連続し、ワーク側の面5に到達する。即ち、大突起部7の長手方向における両端部の外面は、図3のB図に示した凸弧状面部71により、角張ったシャープエッジの存在しない、共振器1の側から外側に突出した凸状の円弧面を構成する。凸弧状面部71における凸状の円弧面を描く中心部の上下方向の位置は、ワーク側の面5と同じ位置又は異なる位置のどちらの位置でもよい。
【0038】
又、凸弧状面部81は、小突起部8の外面の縦方向に延びる中心線を中心として小突起部8の両端部の側における外面の縦方向に延びる中心線上の垂直平面内において小突起部8を1/4周する態様で、ワーク側の面5から小突起部8の外面の中心部の側に行くに従って滑らかな凸状の円弧を描き、小突起部8の短手方向の外面としての凸弧状面部82と段差なく滑らかに連続し、凸弧状面部72に到達する。即ち、小突起部8の長手方向における両端部の外面は、図3のB図に示した凸弧状面部81により、角張ったシャープエッジの存在しない、共振器1の側から外側に突出した凸状の円弧面を構成する。凸弧状面部81における凸状の円弧面を描く中心部の上下方向の位置は、凸弧状面部72と同じ位置又は異なる位置のどちらの位置でもよい。
【0039】
図3のC図に示したように、大突起部7の短手方向の外面は、凸弧状面部72として構成される。凸弧状面部72は、大突起部7の外面の縦方向に延びる中心線を中心として大突起部7の中間部の側における外面の縦方向に延びる中心線上の垂直面内において大突起部7を半周する態様で、ワーク側の面5から大突起部7の外面の中心部の側に行くに従って滑らかな凸状の円弧を描き、ワーク側の面5に到達する。即ち、大突起部7の外面は、図3のB図及びC図に示した凸弧状面部71及び72が互いに段差なく滑らかに連続したことにより、角張ったシャープエッジの存在しない、ワーク側の面5から下方に突出した凸状の円弧面を構成する。又、小突起部8の短手方向の外面は、凸弧状面部82として構成される。凸弧状面部82は、小突起部8の外面の縦方向に延びる中心線を中心として小突起部8の中間部の側における外面の縦方向に延びる中心線上の垂直面内において小突起部8を半周する態様で、大突起部7の側から小突起部8の外面の中心部の側に行くに従って滑らかな凸状の円弧を描き、凸弧状面部72に到達する。即ち、小突起部8の外面は、図3のB図及びC図に示した凸弧状面部81及び82が互いに段差なく滑らかに連続したことにより、角張ったシャープエッジの存在しない、大突起部7から下方に突出した凸状の円弧面を構成する。
【0040】
図4を用いて、発明を実施するための形態に係る大突起部7における共振器1の側の根元部の図2と異なる形状と小突起部8における大突起部21の側の根元部の図2と異なる形状とについて説明する。図4のB図に示したように、大突起部7の長手方向の側の根元部は、凹弧状面部73として構成される。凹弧状面部73は、大突起部7の側からワーク側の面5に行くに従って滑らかな凹状の円弧を描き、凸弧状面部71とワーク側の面5とに外接する。即ち、大突起部7の根元部は、凹弧状面部73により、角張ったシャープエッジの存在しない、外側から共振器1の側に窪んだ凹状の円弧面を構成する。又、小突起部8の長手方向の側の根元部は、凹弧状面部83として構成される。凹弧状面部83は、小突起部8の側から大突起部7の側に行くに従って滑らかな凹状の円弧を描き、凸弧状面部81及び凸弧状面部72に外接する。即ち、小突起部11の長手方向の側の根元部は、凹弧状面部83により、角張ったシャープエッジの存在しない、外側から共振器1の側に窪んだ凹状の円弧面を構成する。
【0041】
図4のC図に示したように、大突起部7の短手方向の根元部は、凹弧状面部74として構成される。凹弧状面部74は、大突起部7の側からワーク側の面5に行くに従って滑らかな凹状の円弧を描き、ワーク側の面5と凸弧状面部71とに外接する。即ち、大突起部7の根元部は、図4のB図及びC図に示した凹弧状面部73及び74が互いに滑らかに連続したことにより、角張ったシャープエッジの存在しない、外側から共振器1の側に窪んだ凹状の円弧面を構成する。よって、大突起部7の根元部には、接合時の超音波振動又は音波振動に起因するクラックが発生しない。又、小突起部8の短手方向の根元部は、凹弧状面部84として構成される。凹弧状面部84は、小突起部8の側から大突起部7の側に行くに従って滑らかな凹状の円弧を描き、凸弧状面部71及び82に外接する。即ち、小突起部8の根元部は、図4のB図及びC図に示した凹弧状面部83及び84が互いに滑らかに連続したことにより、角張ったシャープエッジの存在しない、外側から共振器1の側に窪んだ凹状の円弧面を構成する。よって、小突起部8の根元部には、接合時の超音波振動又は音波振動に起因するクラックが発生しない。
【符号の説明】
【0042】
1 共振器
2 共振主体部
3 支持部
4 接合ツール部
5 ワーク側の面
6 共振器3の接合対象体41を押し付ける先端部
7 大突起部
8 小突起部
9 横方向を示した矢印
10 加圧方向を示した矢印
31 接合装置
32 装置躯体
33 加圧機構
34 加圧機構33の出力部材
35 保持具
36 保持具35の空間部
37 保持具35の保持部
38 振動子
39 振動子38の出力端部
40 受け治具
41 接合対象体
42 熱可塑性合成樹脂フィルム
43 金属箔
44 多層部
45 金属部
46 接合対象部位
47 クリップ部
71 大突起部7の長手方向の両端部の外面としての凸弧状面部
72 大突起部7の短手方向の外面としての凸弧状面部
73 大突起部7の長手方向の両端部の根元部としての凹弧状面部
74 大突起部7の短手方向の両端部の根元部としての凹弧状面部
81 小突起部8の長手方向の両端部の外面としての凸弧状面部
82 小突起部8の短手方向の外面としての凸弧状面部
83 小突起部8の長手方向の両端部の根元部としての凹弧状面部
84 小突起部8の短手方向の両端部の根元部としての凹弧状面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7