(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】調理装置
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
A47J37/12 361
(21)【出願番号】P 2018107272
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(72)【発明者】
【氏名】香西 健太
(72)【発明者】
【氏名】木本 進
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 渉
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0302211(US,A1)
【文献】特開平07-213236(JP,A)
【文献】特開平11-267042(JP,A)
【文献】特開平08-242780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/10-37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を揚げる油槽と、
前記食材を収納して前記油槽に漬けたり、油槽から引き上げたりするバスケットと、
前記バスケットと前記油槽の質量を測定する質量測定部と、
前記バスケットの前記油槽への上げ下げを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記バスケットに収納された前記食材の質量に基づいて、あるいは、前記油槽中の食材の質量の変化に基づいて、前記バスケットの上げ下げを制御又は指示する、
調理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記質量測定部で測定された油槽の質量が規定値以下になれば、油の補給を報知する、請求項1に記載の調理装置。
【請求項3】
前記食材の質量に応じた加熱時間を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、前記質量測定部で測定された前記食材の質量に対応する前記記憶部内の加熱時間に基づいて、前記バスケットの上げ下げを制御又は指示する、
請求項1又は2に記載の調理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記バスケットに収納された前記食材の質量が規定値を超える場合は、前記バスケットを前記油槽に漬けないように制御する、
請求項1又は2に記載の調理装置。
【請求項5】
前記バスケットを着脱自在に支持して、前記バスケットを油槽へ漬けたり、油槽から引き上げたりする昇降手段を備え、
前記昇降手段は、前記制御部によって駆動制御される、
請求項1に記載の調理装置。
【請求項6】
調理する食材を指定する指定部と、前記指定部によって指定された食材毎の質量、加熱時間を記録するデータロガーと、をさらに備える、
請求項1に記載の調理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材をバスケット内に収納したまま加熱油に浸して揚げ物にする調理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファーストフード店やコンビニエンスストアー、スーパーマーケット等では、揚げ物を効率よく調理するための調理装置が導入されている。特に、コンビニエンスストアー等では、アルバイト等の不慣れな調理者であっても、簡単に調理できる調理装置が導入されている。
【0003】
その代表的なものは、下記特許文献1、2に記載のフライヤー(調理装置)である。この調理装置は、バスケットに食材を収容して加熱油槽に所定時間浸漬するもので、特に食材の種類に応じた油温度と、加熱時間と、食材の量に応じて低下する油温度から好ましい加熱温度まで復帰させる時間とを予め記憶しておき、記憶した時間に基づいてバスケットの昇降を制御するようにしたものである。
【0004】
これらの調理装置は、マニュアル通りに使用されれば、問題はないが、不慣れな者が規定量以上の食材をバスケットに入れて使用したり、食材が十分浸漬されないまでに油量が減っているにも拘わらず、そのまま使用したりすると、食材に十分火が通らない問題が生じ、それに起因して、顧客のクレームに発展したり、食中毒が発生する危険性もある。
【0005】
これに対し、下記特許文献3の調理装置では、バスケットに重量測定手段を取り付け、その測定手段でバスケットに投入された食材の重量を測定し、得られた食材の初期重量と加熱された油槽中の食材の重量とを比較し、加熱中の食材重量が初期重量に対して所定の割合まで減少したときに、加熱終了と判断して、昇降装置でバスケットを油槽から上昇させるようにしている。この装置によれば、食材に火が通っていない問題は、解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-178633号公報
【文献】特許第4050530号公報
【文献】特開平11-267042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3の調理装置では、バスケットを重量測定手段で支持する構成であるため、バスケットを油槽から引き上げている時は、バスケットに投入された食材の初期重量を測定することはできるが、バスケットを油槽に浸漬して食材を加熱すると、食材は、浮力によって軽くなり、終には水分が飛んで浮き上がるから、食材の重量が測定できなくなる問題がある。そのため、特許文献3の調理装置では、実用化できない問題がある。
【0008】
この問題を回避するには、食材が常にバスケットに負荷されるように、食材を油面すれすれに保持しておく必要があるが、そのためには、油面を検出してバスケットの上下位置を調整しなければならない。例えそれができたとしても、食材が完全に油に浸かっていない場合は、中まで火が通らない問題があり、それを回避するため、バスケットを少し深く沈めると、今度は、食材の減少量が把握できなくなる問題がある。
【0009】
本発明は、この問題を解決して、調理に不慣れな者が調理装置を使う場合でも、望ましい状態で揚げた物の品質を一定に保持することができる新たな調理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る調理装置は、
食材を揚げる油槽と、
前記食材を収納して前記油槽に漬けたり、油槽から引き上げたりするバスケットと、
前記バスケットと前記油槽の質量を測定する質量測定部と、
前記バスケットの前記油槽への上げ下げを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記バスケットに収納された前記食材の質量に基づいて、あるいは、前記油槽中の食材の質量の変化に基づいて、前記バスケットの上げ下げを制御又は指示することを特徴とする。
【0011】
ここでの質量測定部は、一台の秤でバスケットと油槽の全体質量を測定する場合と、二台の秤でバスケットの質量と、油槽の質量をそれぞれ測定する場合とを含む概念である。前者の一台の秤で測定する場合は、バスケットに食材を投入した状態の油槽を含む全質量から、バスケットが空の状態の全質量(風袋)を差し引くことによって、バスケットに投入された食材の質量を求めることができる。また、食材の入ったバスケットを油槽に漬けても、それらの合計質量は、最初は変化しない。しかし、加熱によって食材から水分が飛散していくため、秤の測定質量も漸次減少していく。そこで、この減少量を逐次把握していけば、加熱中の食材の質量変化が把握でき、その変化によって、食材に火が通ったか否かを判断して、バスケットの上げ下げを制御することができる。また、警告ランプ等を点灯させて、調理者にバスケットを上げることを指示することができる。
【0012】
また、二台の秤を使用する場合は、第一の秤でバスケットの質量を測定し、第二の秤で油槽の質量を測定する。第一の秤で食材の質量を測定する場合は、バスケットに食材が投入されたときの測定質量から、バスケットが空のときの測定質量(風袋)を差し引くことによって求めることができる。また、第二の秤で油槽中の食材の質量変化を求めるには、食材が収納されたバスケットを油槽に浸漬すると、最初は、バスケットの浸漬部分の体積と、食材の体積とに相当する油量だけ質量が増す。そして、油槽に漬けられた食材は、加熱によって水分が飛散し、それに伴って第二の秤の測定質量も漸次減少する。そこで、食材を油槽に浸漬したときの第二の秤の測定質量が、その後どれだけ減少したかを逐次把握することにより、油槽中の食材の質量変化を知ることができ、それによって、食材に火が通ったか否かを判断して、バスケットの上げ下げを制御することができる。
【0013】
バスケットに収納された食材の質量に基づいて、バスケットの上げ下げを制御する場合は、制御部は、まず、バスケットに収納された食材の質量が規定量を超えるか否かを判断し、超える場合は、バスケットを油槽に漬けないように制御する。これにより、規定量を超える食材が一度に油槽に漬けられて、油温度が急激に低下するのを防止している。この規定量を超えない場合は、制御部は、測定された食材の質量に応じた加熱時間を設定した後、食材の入ったバスケットを油槽に漬ける。そして、設定された加熱時間が経過するとバスケットを油槽から引き上げるように制御する。これにより、揚げ物の品質を一定にすることができる。
【0014】
一方、油槽中の食材の質量変化に基づいて、バスケットの上げ下げを制御する場合は、
油槽に漬けた後の質量の減少量から、食材から飛散した水分量を大凡捉えることができ、その減少量から食材に火が通ったか否かを判断することができるから、制御部は、例えば食材の質量が当初の質量から10%減少したとすれば、その時点でバスケットを上昇させる。これにより、油槽に漬けた食材を望ましい揚げ状態にすることができる。ただし、ここでの10%は、食材の中まで火が通ったか否かを繰り返しテストすることによって求めたもので、その値は、食材によって異なり、これに限定されるものではない。したがって、望ましい減少量は、食材毎に事前に求めておくのが良い。
【0015】
本発明では、油槽の質量を測定することができるから、前記制御部は、質量測定部で測定された油槽の質量が規定値以下になれば、油の補給を報知することを特徴とする。
例えば、一人前の食材の量では、問題なく揚げることはできても、二人前の食材の量になると、油量が少なすぎる場合がある。そうした場合に備えて、油量が規定値以下に下がれば、制御部は、油の補給を促すメッセージを報知させて、不慣れな調理者であっても、揚げ物の品質が一定に保持されるようにしている。
【0016】
第二の発明に係る調理装置は、
食材を揚げる油槽と、
前記食材を収納して前記油槽に漬けたり、油槽から引き上げたりするバスケットと、
前記バスケットに収納された前記食材の質量を測定する質量測定部と、
前記食材の質量に応じた加熱時間を記憶する記憶部と、
前記バスケットの前記油槽への上げ下げを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記質量測定部で測定された前記食材の質量に対応する前記記憶部内の加熱時間に基づいて、前記バスケットの上げ下げを制御又は指示することを特徴とする。
【0017】
ここでの質量測定部は、一台の秤でもってバスケットと油槽の全体質量を測定するものであっても良いし、前述の第一秤でもってバスケットの質量だけを測定するものであっても良い。いずれの場合も、バスケットに食材を投入した状態の測定質量から、バスケットの風袋質量を減算することにより、或いは、バスケットと油槽との風袋質量を減算することにより、食材の質量を求めることができる。
また、ここでの加熱時間は、食材の中まで火が通る時間であって、その時間は、油の温度と、食材の質量とによって変わるから、種々の条件の下での加熱時間をこの調理装置を使って事前に求めおくのが好ましい。したがって、加熱時間を記憶する記憶部には、例えば下記表1のような情報として記憶されている。
なお、表1では、調理者に分かり易くするため、食材の質量を材料一人前として表記しているが、記憶部には、これを質量に換算した値で記憶しておく。また、例えば10g単位で食材の質量を変えた場合の各質量の加熱時間を記憶しておくのも良いし、さらに、食材の大きさが揃っている場合は、調理者に分かり易くするため、個数で表記し、記憶部には、その個数に単体質量を掛けた値で記憶しておくのも良い。加えて、下記表1では、第一発明の場合の食材の減少量も併せて記憶している。
【0018】
【0019】
この第二発明の制御部も、前述同様、バスケットに収納された食材の質量が規定量を超える場合は、バスケットを油槽に漬けないように制御する。規定量以下であれば、バスケットを油槽に漬ける。続いて制御部は、測定された質量に対応する加熱時間を記憶部から読み出し、それを内蔵のタイマーに設定する。設定されたタイマー時間が経過すれば、制御部は、バスケットを油槽から引き上げる。この一連の動作により、望ましい状態で食材を揚げることができる。
【0020】
第一発明、第二発明の前記バスケットを着脱自在に支持して、そのバスケットを油槽へ漬けたり、油槽から引き上げたりする昇降手段を備え、その昇降手段は、制御部によって駆動制御されることを特徴とする。
これにより、バスケットを昇降手段から外して、加熱調理された食材を容器等に移し替えることができる。
【0021】
また、調理する食材を指定する指定部と、指定された食材毎の質量、加熱時間を記録するデータロガーをさらに備えていることを特徴とする。
これにより、販売された揚げ物が、後から問題になっても、販売時点では、安全性の高いレベルで加熱調理されたことを証明することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る調理装置によれば、バスケットに投入された食材の質量に基づいて、食材の加熱時間を適切に管理することができる。また油槽に浸漬された食材の質量変化から、中まで火が通ったか否かを判断することができるから、調理に不慣れな者でも、常に一定品質の揚げ物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る一実施形態としての調理装置の外観斜視図。
【
図2】上記調理装置のカバーを除去した内部の縦断側面図。
【
図3】上記調理装置に搭載される電気系統のブロック線図。
【
図4】商品(食材)指定画面の一例を示す表示画面。
【
図5】指定された食材(から揚げ)を調理しているときの表示画面。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る調理装置を図面に基づいて説明する。なお、ここに示す実施形態は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0025】
図1は、調理装置1の外観斜視図を示し、
図2は、調理装置1のカバーを外して、内部の縦断面を示したものである。したがって、
図2では、カバーの前面に取り付けられた表示入力部8と、その下部に設けられた制御部6を破線で示している。
【0026】
これらの図において、調理装置1は、卓上型の調理装置の一例を示したもので、油を溜めて食材を揚げる油槽2と、食材を収納して油槽2に漬けるバスケット3と、バスケット3に収納された状態の食材の質量を測定する
図2の第一秤41と、油槽2の質量を測定する第二秤42と、バスケット3を昇降させて、食材を油槽2へ上げ下げする昇降手段5と昇降手段5を駆動制御する制御部6と、油槽2を加熱するヒータ7とを備えている。
【0027】
なお、この実施形態では、
図2、
図3に示すように、個々に質量を測定する第一秤41と第二秤42で質量測定部4を構成しているが、この第一秤41と第二秤42を一体にした一台の秤で構成してあっても良い。この場合、この第一秤41と第二秤42を一体にした一台の秤は、少なくとも油槽2の質量及びバスケット3の質量が負荷される位置に配置される。
【0028】
油槽2は、業務用のステンレス製容器で成形され、その裏面には、電気ヒータ7が配置されている。また油槽2内には、
図3に示す温度センサSが取り付けられている。電気ヒータ7は、例えば供給電力を制御することによって発熱温度が自在にコントロールできるIH調理器である。
【0029】
バスケット3は、左右に取手(図示せず。)の付いたステンレス製の籠であって、油槽2内に漬けることのできる大きさと深さを備えている。このバスケット3の背面側には、側面視逆L字形の支持アーム31が取り付けられ、その支持アーム31を介して昇降手段5に着脱自在に支持されるようになっている。
なお、
図1、
図2において、前面、背面は、矢印で示す方向であり、それと交差する方向が左右方向である。
【0030】
着脱自在に支持する構成は、例えば昇降手段5の上下動するリフト軸50の前面上部に水平な支持棒51を取り付け、その背面側に、背面へ向けて飛び出るフック52を取り付けて、支持棒51とフック52でバスケット3の支持アーム31を支持するようにした構造である。
【0031】
支持アーム31は、平面視がコの字形に形成され、そのコの字形の中央連結部分32をフック52の下面に引っ掛けた状態で、支持アーム31を支持棒51の上に乗せると、バスケット3が水平姿勢を保ってリフト軸50の上部に支持されるようになっている。したがって、バスケット3を取るときは、バスケット3の手前を持ち上げて浮かせ、その状態でバスケット3を背面側へ移動させれば、支持アーム31の中央連結部分32がフック52から外れ、その状態でバスケット3を持ち上げれば、バスケット3が昇降手段5から取り外せるようになっている。
【0032】
質量測定部4は、
図2に示すように、昇降手段5が負荷された第一秤41と、油槽2が負荷された第二秤42とで構成され、それぞれの秤41、42の測定信号が、
図3の制御部6に入力されるようになっている。制御部6では、入力された測定質量から風袋質量を差し引くことにより、第一秤41からは、バスケット3に収納された食材の質量を求め、第二秤42からは、油槽2の全体質量の質量変化から、油槽2に漬けられた食材の質量変化を求めるようになっている。
【0033】
昇降手段5は、回転運動を直線往復運動に変換する機構、例えばランクとピニオンのような機構でもって、リフト軸50を上下動させるようにしたものである。そのため、リフト軸50には、ラックが設けられ、そのラックと噛み合うピニオンが、図示しないモータ軸に取り付けられて、制御部6の指示に基づいて、リフト軸50が所定ストローク上下に往復移動するようになっている。
【0034】
制御部6は、マイクロコンピュータで構成され、第一秤41、第二秤42、昇降手段5ヒータ7、表示入力部8、温度センサSとそれぞれ電気的に接続されている。また、内臓の記憶部61には、表1のような加熱時間や食材の減少量が食材毎に記憶されている。また、制御部6は、温度センサSから油温度を入力して、油槽2の油温度が所定の温度となるように、ヒータ7の供給電力を制御するようにプログラムされている。
【0035】
また、制御部6は、第一秤41から入力したバスケット3と食材の質量に基づいて、昇降手段5に対してバスケット3の上げ下げを指示する。すなわち、バスケット3に収納された食材の質量が規定量を超えている場合は、表示入力部8に食材がオーバーしていることを表示し、昇降手段5を停止させたまま待機させる。また、規定量以下であれば、制御部6は、昇降手段5を駆動制御してバスケット3を油槽へ漬ける。続いて制御部6は、第二秤42から入力した油槽の質量変化から、油槽2中の食材の質量変化を求め、求めた質量変化から食材の減少量を求めて、その減少量から食材に火が通ったか否かを判断して、昇降手段5に対してバスケット3の上げ下げを指示する。
【0036】
表示入力部8は、カバーの前面に設けられたタッチパネルで構成され、制御部6は、表示入力部8に対し、初期画面として、例えば
図4に示すような商品一覧を表示させる。この商品一覧は、油で揚げる商品の一覧を表したもので、調理者は、その中の一つの商品、例えば「から揚げ」キー81をタッチし、続いて一人前、二人前等の量指定キー82をタッチすると、制御部6は、指定された「から揚げ」に火が通ったときの食材の減少量(%)を記憶部61から読み出してワーキングエリアにセットし、同時に、対応する加熱時間も読み出して図示しないソフトタイマーにセットする。
【0037】
ソフトタイマーに加熱時間がセットされると、表示入力部8は、
図5の画面表示に切り替わり、制御部6は、スタートキー83がタッチされるのを待機する。スタートキー83がタッチされると、制御部6は、昇降手段5を駆動制御して、バスケット3を油槽2に漬けるとともに、タイマーをスタートさせる。また、
図5の表示画面には、第一秤41で測定された食材の質量を表示する質量表示欄84と、記憶部61から読み出された加熱時間を表示する加熱時間表示欄85とが設けられている。なお、表示欄85に表示された加熱時間は、バスケット3が油槽2に漬けられた後は、時間経過とともに残り時間が表示されるようにプログラムされている。
【0038】
なお、記憶部61には、表1の情報の他、各食材について、細かな質量毎の加熱時間、例えばAの食材が100gの場合は、加熱時間が3分、120gの場合は、3分10秒、140gの場合は、3分20秒等と、細かに加熱時間を記憶させたものでも良い。また、この記憶部61には、油の補充を指示する限界質量と、一度に揚げることのできる各食材の限界質量とが記憶されている。
【0039】
また、制御部6には、調理した食材(商品)毎の質量、加熱時間、加熱温度を記録するデータロガー62が設けられ、記憶した履歴は、必要に応じて、プリンター63等に出力できるようになっている。また、このデータロガー62は、外付けの記憶媒体をデータロガーとして構成することもできる。
【0040】
なお、この実施形態では、食材毎に加熱時間と食材の減少量とを記憶して、食材の揚げ加減が監視できるようになっている。これは、例えば解凍した食材を油槽2に漬けることが条件である食材を、冷凍のまま油槽2に漬けてしまうと、ソフトタイマーに設定した加熱時間では、十分火が通らないことがある。その場合に備えて、加熱時間が経過しても、食材の減少量が少ない場合は、表示入力部8を介して警告するとともに、加熱温度を調整して、例え冷凍のまま油槽2に漬けられても、失敗のない調理ができるようにしている。
【0041】
この調理装置1の使用に際しては、まず油槽2に所定量の油を蓄え、バスケット3を油槽2から上げた状態でヒータ7に電力を供給して、油を所定温度まで上げておく。そうして準備が整うと、制御部6は、表示入力部8に
図4の商品一覧を表示させて、商品指定キー80がタッチされるのを待つ。
【0042】
調理者は、注文のあった食材をバスケット3に入れ、続いて商品指定キー80と、量指定キー82をタッチして、食材と何人前であるかを指定する。すると、制御部6は、
図5の表示画面に切り替え、第一秤41は、バスケット3の風袋を差し引いて、バスケット3に投入された食材の質量を求め、求めた質量を制御部6に出力する。制御部6は、入力した食材質量を
図5の質量表示欄84に表示させ、続いて指定された人数分の食材がバスケット3に投入されたか否かをチェックする。その際、指定された人数分に相当する食材がバスケット3に投入されていない場合は、表示入力部8に警告メッセージを表示する、或いは、図示しない赤色ランプを点灯させて警告する。
【0043】
調理者は、それを見て、バスケット3への投入量を加減する。その際、質量表示欄84は、加減された食材の現在の投入量を逐次表示する。そうして、人数分の食材の量がバスケット3に収納されると、制御部6は、昇降手段5を制御して、バスケット3を油槽2へ漬けるととともに、記憶部61から対応する食材の指定された人数分の加熱時間をソフトタイマーに設定して、カウントダウンをスタートさせる。
【0044】
加熱時間が経過するまで、制御部6は、油槽2の油温度を温度センサSから入力しながら、ヒータ7への供給電力を制御する。同時に、第二秤42からバスケット3が浸漬された直後の測定質量からの減少量を入力する。その減少量が、例えば第一秤41で測定した食材の質量に対して10%減少したとすると、食材の中まで火が通ったと判断する。それと前後して、タイマーが加熱時間の終了を知らせる。
【0045】
すると、制御部6は、昇降手段5を制御してバスケット3を油槽2から引き上げる。この場合、加熱時間を優先するか、食材の減少量を優先するかは、食材によって適宜に決めておく。例えば、食材に味付け等の加工を行ってから油に漬ける場合は、漬ける前の食材温度は、略一定と見做せるから加熱時間を優先する。これに対し、食材を冷蔵庫から取り出してそのまま油槽に漬ける場合は、食材の温度、例えば冷凍状態か解凍状態かで、加熱時間に大きな差が生じてくるから、この場合には、油槽2中の食材の減少量から食材の中まで火が通ったか否かを判断する。こうすれば、不慣れな調理者が使用する場合でも、揚げた時の品質を一定にすることができる。
【0046】
こうしてバスケット3が油槽2から引き上げられると、調理者は、バスケット3を昇降手段5から外して、図示しない油切りに移し替える。
また、使用している間に油は、次第に減っていくので、第二秤42の測定質量が所定量以下に下がると、制御部は、油の補充を表示入力部8に表示させるようになっている。
また、制御部6は、第二秤42の測定質量が所定量以下の(極端に少ない)場合には、油が十分に入っていないと判断し、ヒータ7への電力供給を遮断して、温度を上げないように構成してもよい。
【0047】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、他の実施形態も採用可能である。例えば、この実施形態では、一つの油槽2に一つのバスケット3を浸漬するようにしたが、より大きな油槽2に複数のバスケット3を浸漬するようにしても良い。この場合には、バスケット3毎に昇降手段5と、それらの合計質量を測定する第一秤41(又は、複数のバスケットの各々の質量を測定する複数の第一秤41)と、加熱時間を管理するタイマーとを設けて、各バスケット3について、そこに投入された(全体の、又は、個々の)食材の質量に基づいて、油槽2への浸漬時間を制御するように構成することもできる。
【0048】
また、以上の実施形態では、昇降手段5を設けたが、これを無くして、調理者がバスケット3を油槽2に漬けたり、油槽2から引き上げたりするようにしても良い。この場合には、第一秤41を調理台の上に置き、その第一秤41を制御部6に電気的に接続して、食材の入ったバスケット3を第一秤41の計量皿に載せると、測定値が制御部6に入力されるように構成しておく。そして、第一秤41の測定値がゼロに戻ると、バスケット3は、油槽2に漬けられたと判断して、タイマーをスタートさせる。そして加熱時間が経過すると、制御部6は、表示制御部8に設けた図示しない警告ランプを点灯させて、バスケット3を油槽2から引き上げさせるように指示しても良い。
また、この場合、さらに油槽2に第二秤42を制御部6に電気的に接続して設けてもよい。第二秤42を設けた場合は、油槽2の質量を測定することにより、水分の飛びによる食材の質量の減少量(質量の経時的変化)を取得することができる。そのため、食材の投入時の温度の違い等に起因して、規定時間での食材の揚げ具合が異なる場合でも、第二秤42で計測した質量に基づき、中まで火が通ったかを判断することができる。そして、規定の加熱時間が経過しても食材に火が通っていない場合は、警告ランプを点灯させず、火が通るまで加熱を続け、火が通った時点で警告ランプを点灯させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 調理装置
2 油槽
3 バスケット
4 質量測定装置
41 第一秤
42 第二秤
5 昇降手段
6 制御部
61 記憶部
62 データロガー
7 ヒータ
8 表示入力部