(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】回転情報伝達機器
(51)【国際特許分類】
H04B 5/02 20060101AFI20220408BHJP
【FI】
H04B5/02
(21)【出願番号】P 2018527687
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2017025756
(87)【国際公開番号】W WO2018012622
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2016140000
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(ACCEL)の研究課題「近接場結合集積技術による革新的情報処理システムの実現と応用展開」における、研究題目「近接場結合集積技術ならびに高効率情報処理システムの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100105337
【氏名又は名称】眞鍋 潔
(72)【発明者】
【氏名】黒田 忠広
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-252553(JP,A)
【文献】特開2015-170936(JP,A)
【文献】国際公開第2015/094802(WO,A1)
【文献】特開2015-202415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上底部或いは下底部に第1の円弧状結合器を設けた第1の基板と、
前記第1の円弧状結合器と結合可能な位置に配置された第2の円弧状結合器及び第3の円弧状結合器を備えた第2の基板とを有し、
前記第1の円弧状結合器は、それぞれの一端が終端抵抗或いは短絡導体により接続された円弧状の信号線路と円弧状の帰還経路を備えた単一の円弧状結合器であり、
前記第2の円弧状結合器の弧長及び第3の円弧状結合器の弧長が前記第1の円弧状結合
器の弧長より短く、
前記第2の円弧状結合器と前記第3の円弧状結合器の少なくとも一方が常に前記第1の円弧状結合器と結合しており、
前記第1の基板及び第2の基板の一方が非可動部に固定されており、
前記第1の基板及び第2の基板の他方が回転部材に固定されて回転する回転情報伝達機器。
【請求項2】
前記第1の円弧状結合器が前記第1の基板の底面に設けられている請求項1に記載の回転情報伝達機器。
【請求項3】
前記第1の円弧状結合器が前記第1の基板の外周面に設けられ、
前記第2の円弧状結合器及び第3の円弧状結合器が、前記第2の基板に設けられた円筒状中空部の内周面に沿って設けられている請求項1に記載の回転情報伝達機器。
【請求項4】
前記第2の円弧状結合器と前記第3の円弧状結合器が、前記第1の円弧状結合器からの同じデジタル信号を受信できる距離に配置されており、
前記第2の円弧状結合器の出力と前記第3の円弧状結合器の出力を切替える手段を有する請求項1に記載の回転情報伝達機器。
【請求項5】
前記第2の円弧状結合器と前記第3の円弧状結合器が、前記第1の円弧状結合器からの異なるデジタル信号を受信できる距離に配置されており、
前記第2の円弧状結合器の出力と前記第3の円弧状結合器の出力を切替える手段を有する請求項1に記載の回転情報伝達機器。
【請求項6】
前記第1の基板が、さらに、第1の制御信号用結合器を備えており、
前記第2の基板が前記第1の基板が回転中に前記第1の制御信号用結合器と結合可能な位置に第2の制御信号用結合器を備えており、
前記第2の制御信号用結合器からの出力により前記第2の円弧状結合器の出力と前記第3の円弧状結合器の出力を切替える請求項4または請求項5に記載の回転情報伝達機器。
【請求項7】
前記第2の円弧状結合器の出力と前記第3の円弧状結合器の出力を格納するレジスタをさらに備えている請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の回転情報伝達機器。
【請求項8】
前記第1の円弧状結合器、前記第2の円弧状結合器及び前記第3の円弧状結合器は、それぞれ円弧状の信号線路と円弧状の帰還経路を備え、
前記信号線路の一端と前記帰還経路の一端とが終端抵抗により整合終端している請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の回転情報伝達機器。
【請求項9】
前記第1の円弧状結合器、前記第2の円弧状結合器及び前記第3の円弧状結合器は、それぞれ円弧状の信号線路と円弧状の帰還経路を備え、
前記信号線路の一端と前記帰還経路の一端とが短絡している請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の回転情報伝達機器。
【請求項10】
前記第1の円弧状結合器の中心角が、350°以上であり、
前記第2の円弧状結合器の弧長及び前記第3の円弧状結合器の弧長が使用するデジタル信号の帯域を確保する長さ以下である請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の回転情報伝達機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転情報伝達機器に関するものであり、例えば、ブラシをリングに押し当てる接触式の従来コネクタを用いずに、電磁界結合を利用して非接触で回転する基板間、モジュール間或いは端末間で高速にデータ通信する構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント基板(Printed Circuit Board;PCB)やモジュールや端末(以下、総称して基板と略称する)の相対位置が回転しながら、両基板を高速なデジタル信号で接続することが求められる場合がある。例えば、監視カメラや車の周辺を写す映像システムやロボットの関節などである。
【0003】
このような場合、相対位置が回転している両基板を配線で接続すると、回転と共に配線がねじれるという問題がある。そこで従来では、一方の基板にある電極(リング)に他方の基板にある電極(ブラシ)を押し当てることで信号接続している。しかし、その場合、電極が磨耗したり、電極の表面がさびたりほこりが付くなどして、接触不良を起こす。そのため保守点検が必要になりコストが高くなる。
【0004】
また、電極接点で特性インピーダンスが不連続になると、信号の一部は反射して、通過した信号に歪が生じる。これはシンボル間干渉の原因となり、通信の高速化を妨げるという問題を生ずる。また、コネクタの端子間隔を狭くすると回転時に隣接ブラシ間が接触するので、機器の小型化が妨げられることになる。
【0005】
この様なコネクタに関する課題を解決するために、本発明者は、基板に形成される伝送線路を近接させて、容量結合及び誘導結合(合わせて電磁界結合と称する)を利用してデジタルデータを無線通信することを提案している(例えば、特許文献1乃至特許文献3参照)。
【0006】
特許文献1では、平行に配置して整合終端した二本の伝送線路からなる差動伝送線路を互いに同一方向に平行に配置して、2つの基板間で無線通信することを提案している。この場合、伝送線路の長さを短くするほど、結合器は広帯域になり、高速にデータ転送できる。或いは、シングルエンド(片差動)の伝送線路の一対を用いて同様に無線通信することもできる。
【0007】
また、特許文献2では、一本の伝送線路の両端から差動信号を与えた一対の伝送線路を近接配置して、2つの基板間で無線通信することを提案している。また、伝送線路を円弧状にして中心軸を一致させると、2つの基板を回転できることも示されている。さらに、円弧状の伝送線路の一方を他方より短くする例も提案している。
【0008】
また、特許文献3では、平行に配置して整合終端した二本の伝送線路と対向して配置された二本の伝送線路を直結して、2つの基板間で無線通信することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5213087号公報
【文献】特開2014-033432号公報
【文献】特開2014-225768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
信号転送速度を高速にするためには、伝送線路を短くして広帯域にする。高速な信号は差動で扱うことが多いので、以下の説明では差動を前提とするが、シングルエンドに適用することは容易である。特許文献1の提案の場合には、結合器の長さと結合器の帯域とデータ転送速度の間には、おおよそ以下の関係がある。
結合器の長さ=4mmの時、結合器の帯域=12GHz、データ転送速度=16Gbps
結合器の長さ=6mmの時、結合器の帯域=8GHz、データ転送速度=11Gbps
結合器の長さ=10mmの時、結合器の帯域=4.5GH、データ転送速度=6Gbps
となる。
【0011】
例えば、MIPI(Mobile Industry Processor Interface)の数Gbpsのデータ転送に対応できる規格であるM-PHY規格では、最大毎秒6Gbpsの転送速度が求められる。そのためには、結合器に4.5GHz程度の帯域が少なくとも必要になり、結合器の長さは10mmよりも短くする。円弧状にするなら、直径は3.2mm程度より小さくなる。これを回転する基板の回転中心に設置する。
【0012】
しかし、回転中心に回転軸が設置されその直径が大きいと、小さな結合器を回転軸の周りに設置することは困難になる。一方、結合器を小型化できないと、信号転送の高速化が困難になるという問題がある。
【0013】
また、特許文献2の記載を鋭意検討した結果、円弧状の伝送線路の一方を回転軸の周りに設置できる程度に十分に大きくして、他方を必要な帯域が得られる程度に十分に短くすることが考えられる。例えば、一方の円弧の直径を100mm、つまり結合器の長さを314mmにして、他方の円弧の長さを10mmにすることが考えられる。
【0014】
しかし、その場合は、新たに以下の課題を生じる。6Gbpsのデジタル信号はシンボルの単位間隔(UI)が333psであり、周波数で3GHzに相当する。3GHzの信号がFR4(Flame Retardant Type 4)基板上の伝送線路に印加された時、誘電体による波長短縮効果で、波長は約56mmになる。したがって、314mmの円周上には信号が5ビット並ぶことになる。
【0015】
この場合、10mm長の短い方の円弧の位置によって、両端子に入力する信号は最大4ビット分タイミングがずれることになる。即ち、異なる信号が結合器の両端に入力するため、シンボル間干渉が起こり正しく転送できない。言い換えれば、この場合は大きな円弧の円周を56mmよりも十分に短くしなければならず、あまり大きくできないという問題がある。
【0016】
したがって、本発明は、結合器を設置が困難になる程度に小型化することなく、回転情報伝達機器において数Gbpsのデータを無線通信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一つの態様では、回転情報伝達機器は、上底部或いは下底部に第1の円弧状結合器を設けた第1の基板と、前記第1の円弧状結合器と結合可能な位置に配置された第2の円弧状結合器を備えた第2の基板とを有し、前記第2の円弧状結合器の弧長が前記第1の円弧状結合器の弧長より短く、前記第1の基板及び第2の基板の一方が非可動部に固定されており、前記第1の基板及び第2の基板の他方が回転部材に固定されて回転する。
【発明の効果】
【0018】
一つの側面として、結合器を設置が困難になる程度に小型化することなく、回転情報伝達機器において数Gbpsのデータを無線通信することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態の回転情報伝達機器の概念的構成図である。
【
図2】本発明の実施の形態の回転情報伝達機器における結合器の結合状態を示す概念的平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態の回転情報伝達機器の他の態様を表す概念的構成図である。
【
図4】本発明の実施の形態の回転情報伝達機器における新たな課題の説明図である。
【
図5】本発明の実施例1の回転情報機器の概念的構成図である。
【
図6】本発明の実施例1の回転情報機器における結合器の結合状態を示す概念的平面図である。
【
図7】本発明の実施例2の回転情報機器の説明図である。
【
図8】本発明の実施例2の回転情報機器における出力信号の途中までの説明図である。
【
図9】本発明の実施例2の回転情報機器における出力信号の
図8以降の途中までの説明図である。
【
図10】本発明の実施例2の回転情報機器における出力信号の
図9以降の説明図である。
【
図11】本発明の実施例3の回転情報機器の説明図である。
【
図12】本発明の実施例4の回転情報機器の説明図である。
【
図13】本発明の実施例5の回転情報機器の説明図である。
【
図14】本発明の実施例5の回転情報機器における出力信号切り替えの説明図である。
【
図15】本発明の実施例6の回転情報機器の説明図である。
【
図16】本発明の実施例7の回転情報機器の説明図である。
【
図17】本発明の実施例7の回転情報機器における状態1及び出力信号の説明図である。
【
図18】本発明の実施例7の回転情報機器における状態2及び出力信号の説明図である。
【
図19】本発明の実施例7の回転情報機器における状態3及び出力信号の説明図である。
【
図20】本発明の実施例7の回転情報機器における状態4及び出力信号の説明図である。
【
図21】本発明の実施例7の回転情報機器における状態5及び出力信号の説明図である。
【
図22】本発明の実施例8の回転情報機器の説明図である。
【
図23】本発明の実施例9の回転情報機器の具体的構成の説明図である。
【
図24】本発明の実施例9の回転情報機器の結合度-周波数特性の受信器位置依存性の説明図である。
【
図25】本発明の実施例9の回転情報機器のアイパターンの受信器位置依存性(1)の説明図である。
【
図26】本発明の実施例9の回転情報機器のアイパターンの受信器位置依存性(2)の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ここで、
図1乃至
図3を参照して、本発明の実施の形態の回転情報伝達機器を説明する。本発明者が特許文献1の記載を鋭意検討した結果、特許文献1の結合器を円弧状の結合器に変形して用いることにより、結合器のサイズを大きくしてもタイミングの問題を発生することなく数Gbpsの高速信号による無線通信が可能であるとの結論に至った。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の回転情報伝達機器の概念的構成図であり、
図2は本発明の実施の形態の回転情報伝達機器における結合器の結合状態を示す概念的平面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の実施の形態の回転情報伝達機器は、上底部或いは下底部に第1の円弧状結合器4を設けた第1の基板3と、第1の円弧状結合器4と結合可能な位置に配置された第2の円弧状結合器6を備えた第2の基板5とを有する。第2の円弧状結合器6の弧長が第1の円弧状結合器4の弧長より短く、第1の基板3及び第2の基板5の一方が非可動部に固定されており第1の基板3及び第2の基板4の他方が回転部材に2に固定されて回転する。ここでは、第1の基板3が回転するものとして図示している。即ち、回転軸1を有する回転部材2を備えており、回転部材2の上底部或いは下底部に第1の円弧状結合器4を備えた第1の基板3が設けられている。また、固定部7に固定された第2の基板5には第1の円弧状結合器4と結合可能な位置に第2の円弧状結合器6が設けられており、この第2の円弧状結合器6の弧長を第1の円弧状結合器4の弧長より短くしている。なお、
図1においては、回転軸1が天井側の固定部7の側に設けられているので、第1の円弧状結合器4を回転部材2の上底面に設けているが、回転軸1を下側の固定部に取り付けた場合には、第1の円弧状結合器4は回転部材2の下底面に設ける。
【0022】
このような構成にすることによって、第1の円弧状結合器4を伝搬する差動信号が同じ経路で第2の円弧状結合器6に到着するので、上述のタイミングのズレの問題は生じない。なお、第1の円弧状結合器4及び第2の円弧状結合器6の形状は真円でも楕円でも良い。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態の回転情報伝達機器の他の態様を表す概念的構成図であり、第1の円弧状結合器4は第1の基板3の外周面に設けられ、第2の円弧状結合器6が、第2の基板5に設けられた円筒状中空部の内周面に沿って設けられている。このような構成でも
図1の場合と同様に、結合器を設置が困難になる程度に小型化することなく、回転情報伝達機器における数Gbpsのデータを無線通信することが可能になる。
【0024】
但し、いずれの場合も別の新たな課題を生じるので、この事情を
図4を参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態の回転情報伝達機器における新たな課題の説明図であり、
図4(a)は結合器の結合状態を示す概念的平面図であり、
図4(b)は結合部の拡大図である。
図4に示すように、第1の円弧状結合器4の信号線路4
1及び帰還経路4
2の信号D
1n、D
1pの入力点と接続部材8
1で結合されている終点をまたがって第2の円弧状結合器6の信号線路6
1及び帰還経路6
2が結合した場合、シンボル間干渉を起こすことになる。或いは、第1の円弧状結合器4の信号線路4
1及び帰還経路4
2の信号D
1n、D
1pの入力点と終点を第2の円弧状結合器6の信号線路6
1及び帰還経路6
2の長さよりも十分に大きく離せば、シンボル間干渉が起こらない。しかし、その場合には、第2の円弧状結合器6の信号線路6
1及び帰還経路6
2が第1の円弧状結合器4の信号線路4
1及び帰還経路4
2と結合しない位置、即ち、通信できない角度が存在する。
【0025】
このような点を問題にしない場合には、
図2に示す結合状態でも使用可能である。しかし、シンボル間干渉を起こすことなく、360°全ての角度において信号接続ができる方が望ましい。そこで、第2の基板5に、さらに第3の円弧状結合器を設け、第2の円弧状結合器6と第3の円弧状結合器の少なくとも一方が常に第1の円弧状結合器4と結合しているようにすることが望ましい。
【0026】
この場合、第2の円弧状結合器6と第3の円弧状結合器を、第1の円弧状結合器4からの同じデジタル信号を受信できる距離に近接配置し、第2の円弧状結合器6の出力と第3の円弧状結合器の出力を切替えて信号処理をするようにしても良い。
【0027】
或いは、第2の円弧状結合器6と第3の円弧状結合器を、第1の円弧状結合器4からの異なるデジタル信号を受信できる距離に配置し、第2の円弧状結合器6の出力と第3の円弧状結合器の出力を切替えて信号処理をするようにしても良い。
【0028】
第2の円弧状結合器6の出力と第3の円弧状結合器の出力を切替えて信号処理するために、第1の基板3に第1の制御信号用結合器を設け、第2の基板5に第1の基板3が回転中に第1の制御信号用結合器と結合可能な位置に第2の制御信号用結合器を設けても良い。この場合、第2の制御信号用結合器からの出力により第2の円弧状結合器6の出力と第3の円弧状結合器7の出力を切替える。
【0029】
また、第2の円弧状結合器6と第3の円弧状結合器からの出力におけるデータ抜けを防止するために、第2の円弧状結合器6の出力と第3の円弧状結合器の出力を格納するレジスタをさらに設けても良い。
【0030】
第1の円弧状結合器4、第2の円弧状結合器6及び第3の円弧状結合器は、それぞれ円弧状の信号線路と円弧状の帰還経路を備え、信号線路の一端と帰還経路の一端とを終端抵抗からなる接続部材81,82により整合終端しても良い。
【0031】
或いは、第1の円弧状結合器4、第2の円弧状結合器6及び第3の円弧状結合器は、それぞれ円弧状の信号線路と円弧状の帰還経路を備え、信号線路の一端と帰還経路の一端とを導電体からなる接続部材81,82により短絡させても良い。
【0032】
第1の円弧状結合器4の中心角は350°以上とすることが望ましく、且つ、第2の円弧状結合器6の弧長及び第3の円弧状結合器の弧長は、使用するデジタル信号の帯域を確保する長さ以下とすることが望ましい。
【0033】
例えば、弧長が6mmの第2の円弧状結合器6或いは第3の円弧状結合器が毎秒1mの速度で第1の円弧状結合器4に対して相対的に回転移動している場合、第2の円弧状結合器6或いは第3の円弧状結合器の弧長の半分である3mm移動するのに要する時間は3msである。一方、6Gbpsのデジタル信号のシンボル単位間隔(UI)は333psであり、第2の円弧状結合器6或いは第3の円弧状結合器の弧長の半分の3mmに比べて7桁小さい。したがって、前後のビットを転送している間に第2の円弧状結合器6或いは第3の円弧状結合器が移動した距離は結合器の長さの1,000万分の1程度となり、止まっているのに等しいので、移動している間データ通信は正常に行われることになる。
【0034】
本発明の実施の形態においては、弧長の大きな第1の円弧状結合器に対して、弧長が短い第2の円弧状結合器を結合させているので、結合器を回転軸の周りに設置できる程度に大きくすることができる。また、第3の円弧状結合器を設けることによって、360°全ての角度において信号接続ができ、転送速度を向上することが可能になる。なお、回転情報伝達機器の適用対象としては、監視カメラや車の周辺を写す映像システム等の回転情報機器やロボットの関節などが挙げられる。
【実施例1】
【0035】
次に、
図5及び
図6を参照して、本発明の実施例1の回転情報機器を説明する。
図5は、本発明の実施例1の回転情報機器の概念的構成図であり、回転軸11を有する回転部材12を備えており、回転部材12の上底部に円弧状結合器14を備えた基板13が設けられている。また、天井部17に固定された基板15には円弧状結合器14と結合可能な位置に弧長の短い円弧状結合器16が設けられている。或いは、逆に、円弧状結合器14が固定され、弧長の短い円弧状結合器16が回転していても良い。
【0036】
図6は本発明の実施例1の回転情報機器における結合器の結合状態を示す概念的平面図である。中心角が355°の円弧状結合器14と結合可能な位置に同じ曲率半径を有する円弧状結合器16を設ける。ここでは、典型例として円弧状結合器14は線幅が2mmの信号線路14
1及び帰還経路14
2を平均半径が50mmになるように設け、終端抵抗18
1により整合終端する。一方、円弧状結合16は、平均弧長が4mm~10mm、例えば、10mmの信号線路16
1及び帰還経路16
2からなり終端抵抗18
2により整合終端されている。
【0037】
回転機器(12)により発生した差動信号D1p,D1nは、円弧状結合14に出力され、円弧状結合器16からD2p,D2nとして出力される。この場合、円弧状結合器14の信号D1p、D1nの入力点と終端抵抗181で結合されている終点をまたがって円弧状結合器16が結合した場合、シンボル間干渉を起こすことになる。しかし、このような点を問題にしない場合には、実デバイスとして使用することができる。
【実施例2】
【0038】
次に、
図7乃至
図10を参照して、本発明の実施例2の回転情報機器を説明する。
図7は、本発明の実施例2の回転情報機器の説明図であり、
図7(a)は概念的構成図であり、
図7(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。なお、この回転情報機器の取り付け状態は上記の実施例1と同様である。
図7(a)に示すように、本発明の実施例2においては、実施例1と同様に基板13に中心角が355°の円弧状結合器14と結合可能な位置に同じ曲率半径を有する円弧状結合16を設ける。一方、基板(15)には、実施例1と同様に円弧状結合器14と結合可能な位置に円弧状結合器16を設けられているとともに、円弧状結合器16と同様な円弧状結合器19とが設けられている。この場合、円弧状結合器16と円弧状結合器19が円弧状結合器14からの同じデジタル信号を受信できる距離に近接配置する。
【0039】
図7(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。1対のカウンタ20
1,20
2と、一対の判定回路21
1,21
2と、一対のシフトレジスタ22
1,22
2と選択回路23を備えている。
【0040】
次に、
図8乃至
図10を参照して出力信号の切り替えを説明するが、ここでは各結合器をシンボル化して示しており、各図における上図は概念的平面図であり、下図は円弧状結合器14を直線状に伸ばした展開図である。なお、ここでは、便宜的に円弧状結合器16,19を回転させているが、実際には円弧状結合器14が回転している。なお、図面に示した通りに、円弧状結合器14を固定し、円弧状結合器16,19を回転させても良い。
【0041】
図8(a)から
図8(b)に示す結合位置においては、信号D
1p,D
1nが円弧状結合器16の出力D
2p,D
2nとして現れ、結合しなかった信号成分がその先の円弧状結合器19の出力D
3p,D
3nとして現れる。この場合、円弧状結合器16の出力D
2p,D
2nと円弧状結合器19の出力D
3p,D
3nのデジタル信号パターンは一致するが、最初に受信する円弧状結合器16の出力D
2p,D
2nの方が強いので基板(15)への転送信号として選択する。
【0042】
さらに回転して、
図9(a)から
図9(b)の位置にくると、円弧状結合器16が円弧状結合器14と正しく結合できなくなり、信号は円弧状結合器16の出力D
2p,D
2nにだけ正しく現れる。この状態では依然として、円弧状結合器16の出力D
2p,D
2nを基板(15)への転送信号として選択する。
【0043】
さらに回転して、
図10(a)から
図10(b)に示す位置になると、円弧状結合器19が円弧状結合器14と正しく結合する。円弧状結合器16は円弧状結合器14としばらくの間は正しく結合するが、やがて正しく結合できなくなり円弧状結合器16からは誤った信号が出力されるようになる。そうなる前に、円弧状結合器19の出力D
3p,D
3nを基板(15)への転送信号として選択切り替えする。
【0044】
但し、切り替えの際に注意を要する。円弧状結合器19と円弧状結合器16との間には、いくつかのデジタル信号が並んでいる。先の仮定では、314mmの円周上に5ビットの信号が並んでいた。この場合、
図10(a)に示すように円弧状結合器19と円弧結合器16との間には4つのデジタル信号が並んでいる。
【0045】
即ち、円弧状結合器16が信号Dnを出力しているとき、円弧状結合器16にこの先4番目に出力される信号Dn+4が、円弧状結合器19に現在出力されている。したがって、円弧状結合器19の出力D3p,D3nを基板(15)への転送信号として選択切り替えすると、両結合器間に存在する3つの信号(Dn+1、Dn+2、Dn+3)を転送し損なうことになる。応用によってはそれが許される場合もある。
【0046】
それが許されない場合には、円弧状結合器19の出力を複数ビット保管しておき、信号の抜けがなく連続して出力されるように切り替えれば良い。具体的には、D2p,D2nから信号Dnを出力した後にD3p,D3nに切り替える際に、D3p,D3nの出力の先につけられた4ビットのシフトレジスタ222を用いて信号Dnを継続して出力し、その後、信号Dn+1、信号Dn+2、信号Dn+3、信号Dn+4と順次出力していく。
【0047】
出力信号の切り替えるタイミングを決めるためには、円弧状結合器19の出力D3p,D3nをシフトレジスタ222でNビット遅らせた信号Dnと円弧状結合器16の出力D2p,D2nの信号Dnが十分に(予め定められたpビット以上にわたって)一致しているか否かを判定回路212で判定して切り替えれば良い。314mmの円周上に5ビットの信号が並んでいる場合には、N=4になる。このNを見つける方法は、設計における計算であったり、動作環境でのデジタルキャリブレーションなどがある。切り替えるタイミングを別の結合器を用いて求めても良い。
【0048】
さらに回転して、再び
図8(a)に示すように円弧状結合器16も円弧状結合器14と十分に結合して正しく転送するようになり、円弧状結合器16の出力と円弧状結合器19の出力が十分に(予め定められたqビット以上にわたって)一致しているか否かを判定回路21
1で判定して、再び円弧状結合器16の出力を基板(15)への転送信号として選択切り替えする。切り替えの際に数ビットのデータが失われる可能性があるのは、先ほどの説明と同様である。
【0049】
この様に、本発明の実施例2においては、基板15側に2つの弧長の短い円弧状結合器16,19を設けているので、出力信号を切替えることによって、360°全ての角度において信号接続ができる。また、シフトレジスタを用いることによって、切り替えの際のデータ抜けを防止しているのでシンボル間干渉を起こすことがない。
【実施例3】
【0050】
次に、
図11を参照して、本発明の実施例3の回転情報機器を説明するが、上記の実施例2における円弧状結合器16,19における終端抵抗を短絡導体に置き換えた以外は実施例2と同様である。
図11は、本発明の実施例3の回転情報機器の説明図であり、
図11(a)は概念的構成図であり、
図11(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。なお、この回転情報機器の取り付け状態は上記の実施例2と同様である。
図11(a)に示すように、本発明の実施例3においては、実施例2と同様に基板(13)に円弧状結合器14を設けるとともに、基板(15)には円弧状結合器14と結合可能な位置に同じ曲率半径を有する円弧状結合16,19を設ける。円弧状結合器14は終端抵抗18
1により整合終端されているが、円弧状結合器16と円弧状結合器19は短絡導体18
5,18
6により短絡されている。この場合、円弧状結合器16と円弧状結合器19が円弧状結合器14からの同じデジタル信号を受信できる距離に近接配置する。
【0051】
図11(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。1対のカウンタ20
1,20
2と、一対の判定回路21
1,21
2と、一対のシフトレジスタ22
1,22
2と選択回路23を備えている。
【0052】
本発明の実施例3においては、円弧状結合器16と円弧状結合器19において、終端抵抗の代わりに短絡導体185,186を用いている。このように、円弧状結合器16及び円弧状結合器19の一対の結合電極の端部を連結させることによって、遠端結合部において終端抵抗により捨てていた信号を、近端結合部の1/2の強度で且つ極性が反転した信号ではあるが有効利用することが可能になる。
【実施例4】
【0053】
次に、
図12を参照して、本発明の実施例4の回転情報機器を説明するが、円弧状結合器16と円弧状結合器19の位置を変えたものである。
図12は、本発明の実施例4の回転情報機器の説明図であり、
図12(a)は概念的構成図であり、
図12(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。なお、この回転情報機器の取り付け状態は上記の実施例1と同様である。
図12(a)に示すように、本発明の実施例4においては、実施例2と同様に基板(13)に円弧状結合器14を設けるとともに、基板(15)には円弧状結合器14と結合可能な位置に円弧状結合16,19を設ける。但し、この場合は、円弧状結合器16と円弧状結合器19が円弧状結合器14からの異なったデジタル信号を受信できる距離に配置する。
【0054】
図12(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。1対のカウンタ20
1,20
2と、一対の判定回路21
1,21
2と、一対のシフトレジスタ22
1,22
2と選択回路23を備えている。
【0055】
このように、切り替えのタイミングを調整すれば、円弧状結合器16と円弧状結合器19の位置関係は任意になる。
【実施例5】
【0056】
次に、
図13及び
図14を参照して、本発明の実施例5の回転情報機器を説明するが、切り替えタイミングを決定するために実施例2の構成に制御信号用円弧状結合器を加えたものである。
図13は、本発明の実施例5の回転情報機器の説明図であり、
図13(a)は概念的構成図であり、
図13(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。なお、この回転情報機器の取り付け状態は上記の実施例1と同様である。
図13(a)に示すように、本発明の実施例5においては、実施例2と同様に基板(13)に円弧状結合器14を設けるとともに、制御信号用円弧状結合器24を設ける。一方、基板(15)には円弧状結合器14と結合可能な位置に同じ曲率半径を有する円弧状結合16,19を設けるとともに、制御信号用円弧状結合器24と結合可能な制御信号用円弧状結合器25を設ける。なお、ここでは、制御信号用円弧状結合器24,25を円弧状結合器14の内側に設けているが、外側に設けても良い。
【0057】
図13(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。1対のカウンタ20
1,20
2と、一対の判定回路21
1,21
2と、一対のシフトレジスタ22
1,22
2と選択回路23を備えている。
【0058】
次に、
図14を参照して出力信号の切り替えを説明するが、ここでは各結語器をシンボル化して示しており、上図は概念的平面図であり、下図は円弧状結合器14を直線状に伸ばした展開図である。なお、ここでは、説明の都合上、制御信号用円弧状結合器24,25の設置位置を
図13(a)と異なるように図示している。
【0059】
回転部材(12)の回転に伴って制御信号用円弧状結合器24は制御信号用円弧状結合器25と結合して制御信号を検出してから、所定のビット数の間は、円弧状結合器16の出力D
2p,D
2nを基板(15)への出力に選択し、上記ビット数をカウントした後に、円弧状結合器19の出力D
3p,D
3nを基板(15)への出力に切り替える。その後、再び制御信号用円弧状結合器24が制御信号用円弧状結合器25と結合して制御信号を検出した時点で再び円弧状結合器16の出力D
2p,D
2nを基板(15)への出力に切り替えることを繰り返す。その結果、
図14の上半分において円弧状結合器16もしくは円弧状結合器19が円弧状結合器14と結合する。この場合も、出力切り替えの際にビット飛びが起こる可能性と対処は、実施例2と同様である。
【実施例6】
【0060】
次に、
図15を参照して、本発明の実施例6の回転情報機器を説明するが、円弧状結合器14と円弧状結合器16とが結合できない角度を認識するために実施例1の構成に制御信号用円弧状結合器を加えたものである。
図15は、本発明の実施例6の回転情報機器の説明図であり、
図15(a)は概念的構成図であり、
図15(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。なお、この回転情報機器の取り付け状態は上記の実施例1と同様である。
図15(a)に示すように、本発明の実施例6においては、実施例1と同様に基板(13)に円弧状結合器14を設けるとともに、制御信号用円弧状結合器24を設ける。一方、基板(15)には円弧状結合器14と結合可能な位置に同じ曲率半径を有する円弧状結合16を設けるとともに、制御信号用円弧状結合器24と結合可能な制御信号用円弧状結合器25を設ける。なお、ここでは、制御信号用円弧状結合器24,25を円弧状結合器14の内側に設けているが、外側に設けても良い。
【0061】
図15(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。1対のカウンタ20
3,20
4とを備えている。回転部材(12)の回転に伴って制御信号用円弧状結合器24は制御信号用円弧状結合器25と結合してC
2から出力された制御信号のパルス数をカウンタ20
4を用いて計測しp回以上検出すると、接続無効と判断し、カウンタ20
3をリセットする。それからカウンタ20
3を用いて制御信号をq回以上検出すると、接続有効と判断し、カウンタ20
4をリセットする。このようにすることで、円弧状結合器14と円弧状結合器16とが結合できない角度を認識することができる。
【0062】
このように、本発明の実施例6においては、制御信号用円弧状結合器を設けて円弧状結合器14と円弧状結合器16とが結合できない角度を認識して、シンボル干渉が起こる角度における信号を廃棄しているので、シンボル干渉の無い信号のみを利用することができる。
【実施例7】
【0063】
次に、
図16乃至
図24を参照して、本発明の実施例7の回転情報機器を説明するが、出力制御方法を変えた以外は上記の実施例4と同様である。
図16は、本発明の実施例4の回転情報機器の説明図であり、
図16(a)は概念的構成図であり、
図16(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。なお、この回転情報機器の取り付け状態は上記の実施例1と同様である。
図16(a)に示すように、本発明の実施例4と同様に、基板(13)に円弧状結合器14を設けるとともに、基板(15)には円弧状結合器14と結合可能な位置に円弧状結合16,19を設ける。この場合、円弧状結合器16と円弧状結合器19が円弧状結合器14からの異なったデジタル信号を受信できる距離に配置する。
【0064】
図16(b)は、出力信号の切り替えを行う切り替え回路の構成図である。1対のカウンタ20
1,20
2と、一対の判定回路21
1,21
2と、一対のシフトレジスタ22
1,22
2と選択回路23を備えている。但し、この場合には、回転部材(12)が1周するごとに、ビット
nのデータをビット
n+m+kに置き換える。
【0065】
図17(a)に示すように、円弧状結合器16と円弧状結合器19とが円弧状結合器14と正常に通信可能な位置ある場合には、
図17(b)に示すように、シフトレジスタ22
1の出力D
2(n+m)とシフトレジスタ22
2の出力D
2(n)とが一致する。ここでは、実装時に円弧状結合器16と円弧状結合器19からの出力が2ビットずれにように調整しているので、m=2,n=0としている。なお、偶然の一致を避けるために、予め定めたq回以上一致することを判定回路21
2で判定したのち、基板(15)への出力をD2(n+m)に切り替え、カウンタ20
2をリセットする。
【0066】
次いで、
図18(a)に示すように、半回転した場合には円弧状結合器16は正しく通信できるが円弧状結合器19は正しく通信できなくなる。この場合は、
図18(b)に示すように、D
2(n+m=2)とD
3(n=0)は不一致になるので、D
2(n+m=2)をそのまま基板(15)への出力とする。
【0067】
次いで、
図19(a)に示すように、さらに回転して円弧状結合器16及び円弧状結合器19が共に正しく通信できるようなると、
図19(b)に示すように、D
3(n+k=3)とD
2(n=0)が一致する(図の場合には、k=3,n=0)。この場合も、偶然の一致を避けるために、予め定めたq回以上一致することを判定回路21
1で判定したのち、基板(15)への出力をD
3(k+m+n=5)に切り替え、カウンタ20
1をリセットする。
【0068】
次いで、
図20(a)に示すように、さらに略半回転した場合には円弧状結合器19は正しく通信できるが円弧状結合器16は正しく通信できなくなる。この場合は、
図20(b)に示すように、D
3(n+k=3)とD
2(n=0)は不一致になるので、D
3(k+m+n=5)をそのまま基板(15)への出力とする。
【0069】
次いで、
図21(a)に示すように、さらに回転して円弧状結合器16及び円弧状結合器19が共に正しく通信できるようなると、
図21(b)に示すように、D
2(n+m=7)とD
3(n=5)とが一致する(図の場合には、m=2,k=3,n=5)。この場合も、偶然の一致を避けるために、予め定めたq回以上一致することを判定回路21
2で判定したのち、基板(15)への出力をD
2(n+m=7)に切り替え、カウンタ20
2をリセットする。
【0070】
この様に、本発明の実施例7においては、回転部材が1周する毎に、ビットnをビットn+m+kに更新しているので、シフトレジスタ221,222がオーバーフローする前にn+mビットを廃棄してシステムをリセットしている。それにより、結合器を設置が困難になる程度に小型化することなく、回転情報機器において数Gbpsのデータをシンボル干渉することなく無線通信することが可能になる。
【実施例8】
【0071】
次に、
図22を参照して、本発明の実施例8の回転情報機器を説明するが、回転部材の回転方向を反転した以外は、上記の実施例7と同様である。
図22は、本発明の実施例8の回転情報機器の説明図であり、
図22(a)は
図19(a)から
図20(a)に遷移する場合と同様である。また。
図22(b)は、
図17(a)から
図18(a)に遷移する場合と同様である。
【0072】
このように、実施例7における回転方向を逆転してもデータ通信できることが分かる。したがって、監視カメラの回転方向を時計回り・反時計回りに自由に変更することができ、実施例7と全く同様に、結合器を設置が困難になる程度に小型化することなく、回転情報機器において数Gbpsのデータをシンボル干渉することなく無線通信することが可能になる。
【実施例9】
【0073】
次に、
図23乃至
図26を参照して、本発明の実施例9の回転情報機器を説明するが、これは、上記実施例1の一実施形態につきその特性をシミュレーションしたものである。
図23は、本発明の実施例9の回転情報機器の一実施形態の具体的構成図であり、外径を40mmに設定してシミュレーションを行った。ここでは、円弧状結合器14の一方の端部TXから信号を送り、弧長の短い円弧状結合器16の一方の端部RXで受信している。また、円弧状結合器14の他端は50Ωの抵抗を介して接地し、円弧状結合器16の他方の端部も50Ωの抵抗を介して接地する。
【0074】
図24は、本発明の実施例9の回転情報機器の結合度-周波数特性の受信器設置位置依存性の説明図であり、ここでは、円弧状結合器14の信号を送る一方の端部から180°の位置を起点として、円弧状結合器16の中央の位置までの角度をθとしている。
図24から明らかなように、θ=180°では帯域が狭いが、それ以外の角度では広帯域な特性が得られることが確認された。なお、通信距離、即ち、円弧状結合器14と円弧状結合器16との間隔は1mmとしている。
【0075】
図25は、本発明の実施例9の回転情報機器のアイパターン(1)の受信器位置依存性の説明図であり、ここでは、通信速度を4Gbps、入力振幅を1.2V
diffに設定している。
図25(a)に示すθ=-90°の場合、及び、
図25(b)に示すθ=0°の場合には、複数の波形が重なり合ってアイパターンが開口した良好な特性を示している。
【0076】
図26は、本発明の実施例9の回転情報機器のアイパターン(2)の受信器位置依存性の説明図であり、
図26(a)に示すθ=90°の場合には、アイパターンが開口した良好な特性を示している。しかし、
図26(b)に示すθ=180°の場合には、複数の波形が良好に重ならず、アイパターンが開口した状態にはなっていない。
【0077】
以上のことから、円弧状結合器16が、円弧状結合器14の他端の接近した場合以外には良好な通信特性が得られることが明らかになった。
【符号の説明】
【0078】
1 回転軸
2 回転部材
3 第1の基板
4 第1の円弧状結合器
41 信号線路
42 帰還経路
5 第2の基板
6 第2の円弧状結合器
61 信号線路
62 帰還経路
7 固定部
81,82 接続部
11 回転軸
12 回転部材
13 基板
14 円弧状結合器
141 信号線路
142 帰還経路
15 基板
16 円弧状結合器
161 信号線路
162 帰還経路
17 天井部
181,182,183 終端抵抗
185,186 短絡導体
19 円弧状結合器
191 信号線路
192 帰還経路
201,202,203,204 カウンタ
211,212 判定回路
221,222 シフトレジスタ
23 選択回路
24,25 制御信号用円弧状結合器