(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】車両用内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20220408BHJP
B60N 3/00 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60N3/00 C
(21)【出願番号】P 2019036607
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000225728
【氏名又は名称】南条装備工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 伸二
(72)【発明者】
【氏名】二川 将明
(72)【発明者】
【氏名】應和 孝利
【審査官】西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-345566(JP,A)
【文献】特開2002-079867(JP,A)
【文献】実開平01-058332(JP,U)
【文献】特開2001-122007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60N 2/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に積層された発泡材からなるクッション材と、
前記クッション材を覆う柔軟な樹脂材からなる表皮材とを備えた車両用内装材において、
前記表皮材と前記クッション材との間には、前記クッション材に向けて突出して当該クッション材に接触し、無負荷状態のときに当該表皮材と当該クッション材との間に空隙部を形成する複数の
円柱状または角柱状の突起が互いに間隔をあけて設けられ
、
複数の前記突起の間隔は、前記表皮材が荷重を受けて前記クッション材に接近する方向に変位した際に当該表皮材の裏面における前記突起の間の部分に前記クッション材が接触するように設定されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用内装材において、
前記突起の突出方向先端部は、無負荷状態で前記クッション材に埋め込まれていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用内装材において、
前記突起の突出方向先端部は、先細形状とされていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用内装材において、
前記突起の突出方向の寸法は、前記クッション材の厚みよりも短く設定されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の車両用内装材において、
複数の前記突起は、前記表皮材の裏面に一体成形されていることを特徴とする車両用内装材。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1つに記載の車両用内装材において、
前記車両用内装材は、ドアトリムに設けられるアームレストであることを特徴とする車両用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に設けられる車両用内装材に関し、特に表皮材及び基材を備えた構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車室内には、アームレスト等の車両用内装材が設けられている。この種の車両用内装材は、一般的に、硬質樹脂からなる基材と、柔軟性を有する樹脂からなる表皮材とを備えており、基材によって車両に対する取付剛性を確保しながら、表皮材の柔軟性によって乗員が触れたときの柔らかさが得られるようにしている(例えば、特許文献1、2参照)
特許文献1の車両用アームレストは、基材を覆うように設けられた表皮材の裏面に複数のスペーサーリブが形成されてなるものである。乗員が表皮材の表面に肘をついた際、スペーサーリブが撓み変形することによりその際の弾性反発力が作用してクッション性を得るようにしている。
【0003】
また、特許文献2の車両用アームレストの表皮材の裏側には発泡層が基材との間に隙間を形成するように設けられている。基材には、発泡層へ向けて突出する複数の突起が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-85434号公報
【文献】特開2010-215070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用内装材に低荷重時における柔らかさを持たせたい場合がある。ここで、低荷重とは、例えば乗員の指が軽く触れたときのような極めて低い荷重のことである。このような低荷重時の柔らかさを持たせることで、車両用内装材に触れたときに乗員が感じるソフト感を向上させることができ、その結果、乗員に高級感や高品質感を与えることができる。
【0006】
車両用内装材の硬軟感は、荷重が作用した表皮材が当該荷重の作用する方向にどのくらい変位するかで決まり、荷重が作用したときの表皮材の変位量が大きければ大きいほど柔らかく感じる一方、変位量が小さければ小さいほど硬く感じることになる。ただし、荷重が作用したときの表皮材の変位量が大きすぎると、内部が空っぽのような空洞感が生じることになるので、表皮材の変位量は大きければよいというものでもなく、空洞感を生じないようにしながら、ソフト感を向上させるのは困難であった。
【0007】
特許文献1の場合、乗員が表皮材の表面に肘をついた場合を想定しているので、上述したような低荷重時の柔らかさは殆ど感じられない構造となっている。すなわち、表皮材の裏面に複数のスペーサーリブが形成され、これらスペーサーリブの先端部が基材に当接しているので、肘をついた場合よりもはるかに低い荷重が作用した時には、スペーサーリブが表皮材と基材との間で突っ張るようになり、例えば指が軽く触れたときには、指の腹にスペーサーリブの反力が点状に作用し、良好なソフト感が得られないと考えられる。
【0008】
また、特許文献2の場合、表皮材のクッション層がその裏側から基材に対して複数の突起で支持されることになる。特許文献2には、突起で感触を調整可能であることが記載されているが、突起による感触の調整は、上述したような指が軽く触れたときの感触ではなく、もっと大きな荷重が作用した場合である。すなわち、特許文献2では表皮材にクッション層を設けているので、表皮材はクッション層を含む分だけ厚くなり、上述したような低荷重時には、表皮材自体の変形が起こり難く、その結果、ソフト感が生じ難い。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空洞感が生じないようにしながら、乗員の指が軽く触れたときのような極めて低い荷重の作用時に良好なソフト感が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、柔軟性を有する表皮材とクッション材との間に複数の突起を設け、無負荷状態で表皮材とクッション材との間に空隙部を設けるようにした。
【0011】
第1の発明は、基材と、前記基材に積層された発泡材からなるクッション材と、前記クッション材を覆う柔軟な樹脂材からなる表皮材とを備えた車両用内装材において、前記表皮材と前記クッション材との間には、前記クッション材に向けて突出して当該クッション材に接触し、無負荷状態のときに当該表皮材と当該クッション材との間に空隙部を形成する複数の円柱状または角柱状の突起が互いに間隔をあけて設けられ、複数の前記突起の間隔は、前記表皮材が荷重を受けて前記クッション材に接近する方向に変位した際に当該表皮材の裏面における前記突起の間の部分に前記クッション材が接触するように設定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、表皮材に対して荷重が作用していない無負荷状態のときには、複数の突起がクッション材に接触して表皮材とクッション材との間に空隙部が形成される。表皮材に対して、例えば乗員の指が軽く触れて極めて低い荷重が作用すると、突起がクッション材に埋まることで表皮材における荷重が作用した部分の変位が許容される。突起がクッション材に完全に埋まるまでは、表皮材とクッション材との間に空隙部があるので、表皮材の変位に要する荷重は極めて低くなる。よって、低荷重が作用したときの表皮材の変位量を大きくすることが可能になり、乗員は表皮材を柔らかく感じる。表皮材が変位するときには突起がクッション材に埋まるので突起が突っ張るように作用することはなく、よって、良好なソフト感が得られる。また、無負荷状態のときに突起がクッション材に接触しているので、乗員の指が触れて荷重が高まった瞬間からクッション材による反力が作用することになり、空洞感は生じない。
【0013】
また、表皮材が受ける荷重が大きくなったときに表皮材の裏面における突起の間の部分にクッション材を接触させて、表皮材の広い範囲をクッション材で支持することが可能になる。
【0014】
第2の発明は、前記突起の突出方向先端部は、無負荷状態で前記クッション材に埋め込まれていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、突起がアンカー効果を発揮するので、表皮材のズレが発生しにくくなるとともに、表皮材にシワが発生しにくくなる。
【0016】
第3の発明は、前記突起の突出方向先端部は、先細形状とされていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、突起の先端部がクッション材に食い込みやすくなり、突起のアンカー効果がより一層高まる。
【0018】
第4の発明は、前記突起の突出方向の寸法は、前記クッション材の厚みよりも短く設定されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、表皮材に対して大きな荷重が作用した際に、突起が基材との間で突っ張り難くなり、底付き感が生じなくなる。
【0020】
第5の発明は、複数の前記突起は、前記表皮材の裏面に一体成形されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、突起と表皮材との相対的なズレが起こらなくなるので、突起がクッション材に食い込んだ状態で、表皮材のズレが発生しにくくなるとともに、表皮材にシワが発生しにくくなる。
【0022】
第6の発明は、前記車両用内装材は、ドアトリムに設けられるアームレストであることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、ドアトリムのアームレストに乗員が触れた際に空洞感が無く、良好なソフト感が得られる。
【発明の効果】
【0024】
第1の発明によれば、柔軟性を有する表皮材とクッション材との間に複数の突起を設け、無負荷状態で表皮材とクッション材との間に空隙部を設けたので、空洞感が生じないようにしながら、乗員の指が軽く触れたときのような極めて低い荷重の作用時に良好なソフト感を得ることができる。また、表皮材が荷重を受けてクッション材に接近する方向に変位した際に、表皮材の裏面にクッション材が接触するので、表皮材が受ける荷重が大きくなったときにクッション材によるクッション性を十分に得ることができる。
【0025】
第2の発明によれば、突起の突出方向先端部が無負荷状態でクッション材に埋め込まれているので、表皮材のズレ及び表皮材へのシワの発生が抑制され、見栄えを良好にすることができる。
【0026】
第3の発明によれば、突起の突出方向先端部が先細形状となっているので、突起のアンカー効果をより一層高めることができる。
【0027】
第4の発明によれば、突起の突出方向の寸法をクッション材の厚みよりも短くしたので、大荷重時の底付き感が生じないようにすることができる。
【0028】
第5の発明によれば、複数の突起を表皮材の裏面に一体成形したので、表皮材のズレ及び表皮材へのシワの発生を抑制することができる。
【0029】
第6の発明によれば、ドアトリムのアームレストに良好なソフト感を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施形態に係るアームレストを備えたドアトリムを車室内側から見た側面図である。
【
図5】指の変形量と表皮材の変形量との関係を説明する図である。
【
図7】表皮材に作用する荷重と表皮材の変位量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用内装材としてのアームレスト1を備えたドアトリム100を示すものである。ドアトリム100は、自動車のドア(図示せず)の車室内側に取り付けられ、該ドアの車室内側を覆うように形成されている。このドアトリム100も車両用内装材である。ドアトリム100の車室内側の上側部分には、トリム上側表皮101が設けられており、このトリム上側表皮101はドアトリム100の上側部分において前後方向に延びている。また、ドアトリム100の車室内側のトリム上側表皮101よりも下側には、トリム下側表皮102が設けられている。尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。
【0033】
アームレスト1は、ドアトリム100の上下方向中間部に取り付けられ、車室内側へ膨出するとともに、前後方向に長い形状を有している。
図3に示すように、この実施形態では、アームレスト1が基材10とクッション材20と表皮材30とを有している。
【0034】
基材10は、クッション材20及び表皮材30を構成する材料よりも硬い樹脂材からなり、アームレスト1の形状を維持可能な剛性を有するとともに、アームレスト1の高い取付剛性を確保することができるように構成されている。基材10は、車室内外方向に延びる上板部11と、上板部11の車室内側から下方へ延びる縦板部12とを有しており、上板部11と縦板部12とは一体成形されている。上板部11の車室外側の端部には、上方へ突出して前後方向に延びる側壁部11aが形成されている。この側壁部11aの上端部には、車室外側へ突出して前後方向に延びるフランジ部11bが形成されている。
【0035】
上板部11の車室内側は下方へ湾曲しながら延びている。上板部11の車室内側の端部には、車室内側へ突出して前後方向に延びる横壁部11cが形成されている。横壁部11cの車室内側の端部に上記縦板部12の上端部が連続している。縦板部12は、下側へ行くほど車室外側に位置するように傾斜乃至湾曲しながら延びている。
【0036】
基材10の側壁部11aと横壁部11cの間には、クッション材20が連続して設けられており、このクッション材20は基材10に積層された状態になっている。クッション材20は、アームレスト1の上面から車室内側の角部に亘って設けられ、乗員がアームレスト1に手を置いたときに触れやすい部分をカバーするようになっている。
【0037】
クッション材20は、例えば弾性を有する発泡材等で構成されている。クッション材20の裏面は、上板部11の上面に配置されるとともに、側壁部11aの内面及び横壁部11cの内面にも配置されている。基材10とクッション材20とは一体成形してもよいし、別々に成形した後、配置するようにしてもよい。
【0038】
表皮材30は、クッション材20の全体を覆うように形成された柔軟な樹脂材からなる部材である。表皮材30は、基材10及びクッション材20に一体成形するようにしてもよいし、基材10及びクッション材20とは別に成形した後、基材10及びクッション材20を被覆するように設けてもよい。
【0039】
表皮材30の車室外側の端部は、基材10のフランジ部11bに沿って延びた後、フランジ部11bの裏側に沿って延びて側壁部11aの外面に周り込むように形成されている。この表皮材30の車室外側の端部は、フランジ部11bの裏側及び側壁部11aの外面に接合されている。
【0040】
表皮材30の車室内側は下方へ湾曲しながら、基材10の縦板部12に沿って当該縦板部12の下端部まで延びている。表皮材30の下端部は、縦板部12の下端部を覆うように車室外側へ屈曲した後、上方へ折り曲げられて縦板部12の裏面に接合されている。
【0041】
表皮材30とクッション材20との間には、複数の突起31が設けられている。突起31は、表皮材30におけるクッション材20を覆う部分にのみ設けられており、縦板部12を覆う部分には設けられていない。従って、表皮材30における縦板部12を覆う部分は、当該縦板部12に対して直接接着されている。また、複数の突起31は、前後方向及び左右方向(車幅方向)に互いに間隔をあけて配置されている。突起31の形状は、円柱状であってもよいし、角柱状であってもよい。突起31は全て同じ形状であってもよいし、一部の突起31が他の突起31とは異なる形状であってもよい。
【0042】
図4にも示すように、突起31は、表皮材30の裏面に一体成形されており、表皮材30を構成する樹脂材と同じ樹脂材で構成されている。これにより、突起31と表皮材30との相対的な位置がずれることはないとともに、突起31と突起31との相対的な位置もずれることはない。尚、突起31は表皮材30とは別体であってもよい。
【0043】
また、突起31は、クッション材20に向けて突出して当該クッション材20に接触している。これにより、
図4に示すように、表皮材30に対して乗員等が接触していない状態、即ち無負荷状態のときに、表皮材30とクッション材20との間に空隙部Sが形成される。無負荷状態で、突起31の突出方向先端部のみがクッション材20に埋め込まれており、突起31の基端部及び中間部はクッション材20に埋め込まれていない。
【0044】
突起31の突出方向先端部は、先端に近づくほど細くなるように形成された、いわゆる先細形状とされている。これにより、突起31の突出方向先端部がクッション材20に対して食い込みやすくなり、突起31のアンカー効果が高まる。突起31の先端部は、先細形状にすることなく、基端部や中間部と同じ断面形状にしてもよい。
【0045】
また、突起31の突出方向の寸法は、クッション材20の厚みよりも短く設定されており、具体的には、突起31の突出方向の寸法は、クッション材20の厚みの1/2以下、好ましくは、1/4以下である。これにより、大きな荷重が表皮材30に作用して表皮材30が大きく変位したとしても、突起31の存在による底付き感が生じないようにすることができる。
【0046】
また、複数の突起31の間隔は、表皮材30が荷重を受けてクッション材20に接近する方向に変位した際に表皮材30の裏面における突起31の間の部分にクッション材20が接触するように設定されている。すなわち、突起31の間隔が狭く、突起31が密集していると、表皮材30がクッション材20に接近する方向に変位した際に表皮材30の裏面における突起31の間の部分にクッション材20が接触しないことが考えられるが、この実施形態では、表皮材30がクッション材20に接近する方向に変位した際に表皮材30の裏面における突起31の間の部分にクッション材20が確実に接触するように、突起31の間隔を設定している。これにより、表皮材30の裏面をクッション材20によって直接支持してクッション性を持たせることができる。突起31は表皮材30の裏面に均一に配置してもよいし、不均一に配置してもよい。突起31の数、形状、太さ、密度等により、表皮材30の変位量を調整することができる。
【0047】
図5は、指Aの変形量と表皮材30の変形量との関係を説明する概略図であり、この図では、突起31やクッション材20、基材10を省略している。乗員の指Aがアームレスト1の表皮材30に触れると、指Aが表皮材30を押すことになる。何も触れていない指Aの腹の形状が仮想線で示す形状であったとする。指Aの腹で表皮材30を押すと、表皮材30からの反力(反力の方向を矢印Bで示す)によって指Aの腹は実線で示すように、寸法Cだけつぶれることになる。一方、表皮材30は、指Aで押されたことによって寸法Dだけ変位する。指Aのつぶれ量を示す寸法Cが大きく、表皮材30の変位量を示す寸法Dが小さいと、乗員は表皮材30が硬いと感じるが、指Aのつぶれ量を示す寸法Cが小さく、表皮材30の変位量を示す寸法Dが大きいと、乗員は表皮材30が柔らかいと感じる。ただし、表皮材30からの反力が指Aに殆ど感じられないと、内部が空っぽのような空洞感が生じることになるので、指Aのつぶれ量を示す寸法Cはある程度必要である。したがって、指Aが表皮材30に接触した初期段階では、指Aのつぶれが進行していき、ある程度荷重が高まってから徐々に表皮材30が変位し、そのときの荷重が極めて低くても、表皮材30が大きく変位するように、表皮材30の変位量を設定するのが好ましい。
【0048】
これを実現するために、本実施形態では、
図4に示すように、低荷重で容易に変形可能な柔軟性を有する表皮材30に、クッション材20に接触する複数の突起31を設け、無負荷状態で表皮材30とクッション材20との間に空隙部Sを設けている。表皮材30の表面に指Aを軽く置くと、突起31によって表皮材30がクッション材20に支持されているので、荷重が極めて低い初期段階では、クッション材20の反発力によって表皮材30の変形が抑制されて指Aの腹がつぶれていく。この初期段階の荷重は、指Aに力を入れずに表皮材30に単に置いたときのような極めて低い荷重である。
【0049】
そして、指Aに少しだけ力を加えると、表皮材30に作用する荷重が徐々に高まる。このとき、表皮材30とクッション材20との間には空隙部Sがあり、表皮材30が突起31のみによってクッション材20に対して狭い範囲に支持された状態になっているので、
図6に示すように、指Aからの荷重が低かったとしても、突起31がクッション材20に容易に埋まり、表皮材30がクッション材20に近づく方向に変位する。突起31がクッション材20に完全に埋まるまでは、表皮材30とクッション材20との間に空隙部Sがあるので、表皮材30の変位に要する荷重は極めて低くなる。よって、低荷重が作用したときの表皮材30の変位量を大きくすることが可能になり、乗員は表皮材30を柔らかく感じる。表皮材30が変位するときには突起31がクッション材20に次第に埋まっていくので、突起31が表皮材30とクッション材20との間で突っ張るように作用することはなく、よって、良好なソフト感が得られる。また、無負荷状態のときに突起31がクッション材20に接触しているので、乗員の指Aが表皮材30に触れた瞬間からクッション材20による微小な反力が作用することになり、空洞感は生じない。
【0050】
図7は、本発明に係るアームレスト1の表皮材30に作用する荷重と表皮材30の変位量との関係、及び比較例に係るアームレストの表皮材に作用する荷重と表皮材の変位量との関係を示すグラフである。縦軸は表皮材に作用する荷重の大きさを示しており、上へ行くほど荷重が大きくなる。横軸は表皮材における荷重が作用している部分の変位量であり、右へ行くほど変位量が大きくなる。本発明に係る荷重特性は実線で示し、比較例に係る荷重特性は破線で示している。本発明は、
図4に示すように、表皮材30に、クッション材20に接触する複数の突起31を設け、無負荷状態で表皮材30とクッション材20との間に空隙部Sを設けた構成である。一方、比較例は、図示しないが、表皮材の裏面には突起を設けることなく、表皮材の裏面の裏面全体をクッション材に接触させた構成である。
【0051】
このグラフから明らかなように、低い荷重P1が作用したときの表皮材30の変位量は、本発明が比較例に比べて2倍程度多くなっている。これにより、本発明は比較例に比べてソフトな感触が得られる。また、大きな荷重P2が作用したときには、本発明と比較例の変位量の差は小さくなる。
【0052】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係るアームレスト1によれば、柔軟性を有する表皮材30とクッション材20との間に複数の突起31を設け、無負荷状態で表皮材30とクッション材20との間に空隙部Sを設けたので、空洞感が生じないようにしながら、乗員の指が軽く触れたときのような極めて低い荷重の作用時に良好なソフト感を得ることができる。
【0053】
また、突起31の突出方向先端部が無負荷状態でクッション材20に埋め込まれているので、突起31がアンカー効果を発揮する。これにより、表皮材30のズレ及び表皮材30へのシワの発生が抑制され、見栄えを良好にすることができる。
【0054】
また、突起31の突出方向先端部が先細形状となっているので、突起31のアンカー効果をより一層高めることができる。
【0055】
また、突起31の突出方向の寸法をクッション材20の厚みよりも短くしたので、大荷重時の底付き感が生じないようにすることができる。
【0056】
また、複数の突起31を表皮材30の裏面に一体成形したので、表皮材30のズレ及び表皮材へのシワの発生を抑制することができる。
【0057】
また、表皮材30が荷重を受けてクッション材20に接近する方向に変位した際に、表皮材30の裏面にクッション材20が接触するので、表皮材30が受ける荷重が大きくなったときにクッション材20によるクッション性を十分に得ることができる。
【0058】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0059】
また、上記実施形態では、本発明をアームレスト1に適用した場合について説明したが、これに限らず、ドアトリム100の車室内側に適用することや、コンソールボックスのリッド、インストルメントパネル等に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る車両用内装材は、例えば、ドアトリムを構成する部材として使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 アームレスト(車両用内装材)
10 基材
20 クッション材
30 表皮材
31 突起
S 空隙部