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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】欠陥密度の低いバルクの炭化ケイ素
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20220408BHJP
   C30B 23/06 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B23/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019149764
(22)【出願日】2019-08-19
(62)【分割の表示】P 2016540423の分割
【原出願日】2014-09-05
(65)【公開番号】P2019214512
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2019-09-17
(31)【優先権主張番号】61/874,640
(32)【優先日】2013-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513278275
【氏名又は名称】ジーティーエイティー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】GTAT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100189131
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 拓郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182486
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 正展
(74)【代理人】
【識別番号】100158872
【氏名又は名称】牛山 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100147289
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ドラチェフ, ローマン ヴィー.
(72)【発明者】
【氏名】サンタナラガヴァン, パルタサラティ
(72)【発明者】
【氏名】アンドルキヴ, アンドリー エム.
(72)【発明者】
【氏名】ライトル, デイヴィッド エス.
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-523918(JP,A)
【文献】特開2013-067523(JP,A)
【文献】特開2001-114598(JP,A)
【文献】特表2013-504513(JP,A)
【文献】特表2010-515661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化ケイ素シードウエハ上に少なくとも2つの炭素質のコーティングを含む平坦で実質的に円形の上面、
頂部の内方向へ一旦向かって直径を減少させた後、平坦で実質的に円形の上面と平行な方向に実質的に円形の断面形状を有する中間部のおよそ中央まで、炭化ケイ素シードウエハから垂直な方向へ直径を増加させるように曲線を描く外側表面、及び
平坦で実質的に円形の上面の反対側の表面を有する円錐形の外部ドーム、
を有する、炭化ケイ素ブール。
【請求項2】
炭素質のコーティングの少なくとも一つが硬化されている、請求項1に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項3】
炭化ケイ素ブールが、シード保護層を形成するために硬化された複合体の層を形成している2~5のコーティングを平坦で実質的に円形の上面の上に含む、請求項1に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項4】
炭化ケイ素ブールの最大直径が75mmより大きい、請求項1に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項5】
炭化ケイ素ブールの最大直径が100mmより大きい、請求項1に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項6】
炭化ケイ素ブールの最大直径が150mmより大きい、請求項1に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項7】
炭化ケイ素ブールの最大直径が200mmより大きい、請求項1に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項8】
炭化ケイ素ブールの欠陥数の合計が8000/cmより少ない、請求項1に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項9】
炭化ケイ素ブールの貫通刃状転位(threading edge dislocation)の密度が4000/cmより少ない、請求項8に記載の炭化ケイ素ブール。
【請求項10】
炭化ケイ素ブールの基底面の欠陥の密度が500/cmより少ない、請求項8に記載の炭化ケイ素ブール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2013年9月6日出願の米国仮特許出願第61/874640号に関連する。当該特許出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本発明は、昇華炉及び低い欠陥密度を有するバルクの炭化ケイ素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化ケイ素(SiC)は、その優れた化学的、物理的、及び電気的特性により近年、大きな関心を集めている。具体的には、バルク単結晶SiCは、例えば、パワーエレクトロニクスの部材、及びLEDの材料のための基質を含む、半導体用途に有用であることが見出されている。この材料には他の用途もまた出現している。
【0004】
炭化ケイ素は、当該分野で公知の種々の方法によって製造することができる。例えば、炭化ケイ素の大きな単結晶は、物理的気相輸送(physical vapor transport、PVT)法を用いて製造される。この方法では、粉末の炭化ケイ素のようなソースは、結晶成長炉の高温領域に用意されて加熱される。また、炭化ケイ素の単結晶ウエハなどのシードは、低温領域に用意される。炭化ケイ素は、昇華するまで加熱され、そして得られた蒸気は、材料が堆積するより冷たい炭化ケイ素のシードに達する。あるいは、ソースはケイ素と炭素の粒子の混合物であってもよく、加熱の際に、SiCを形成しその後昇華しシードで再結晶する。
【0005】
炭化ケイ素の大きなブール(boule)は、結晶成長炉を用いて製造することができるが、このプロセスは、しばしば、制御することが困難である。例えば、初めから終わりまで一貫性のある性質を有するブールを得るための結晶成長プロセスは、典型的には数日間にわたって2000℃以上で行われ、ソースとシードとの間の温度勾配のようなプロセス条件をプロセス全体にわたって一定に保つことが重要である。プロセス条件の小さな変化は、成長した炭化ケイ素ブールの品質に大きな変化をもたらす。また、プロセス条件が適切に制御されていない場合には、成長が進むにつれて、シード及び/又は成長中の結晶の昇華が発生する可能性がある。加えて、生成物の品質は結晶成長チャンバ内で用いられる部品の種類から影響を受けることがあり、なぜなら、成長条件によっては一部が分解し、それによって成長を化学的に妨害し得るからである。結果として、昇華炉内で成長させた炭化ケイ素は、多くの場合、材料の性能特性に影響を与える小角粒界(low angle grain boundary)、転位、Si及びCの第二相インクルージョン、異なる結晶多形のインクルージョン、及びマイクロパイプのような結晶中の欠陥が含まれている。さらに、たとえ一定の条件を、高品質の製品を製造するための単結晶成長プロセスのために維持することができる場合であっても、典型的には、やはりランツーラン変動性(run to run variability)が見出され、例えば、ソース、シード、又は装置の部品のいかなる変化も生成物の不一致を引き起こし得る。
【0006】
このため、効率的かつコスト効率よく高品質な大規模な炭化ケイ素単結晶を製造することができる、信頼性と再現性のある炭化ケイ素昇華炉又は方法は、今までに存在しなかった。したがって、改良された炭化ケイ素成長装置及び方法が業界で必要とされる。
【発明の概要】
【0007】

本発明は昇華炉で形成される炭化ケイ素ブールに関し、炭化ケイ素ブールは、少なくとも2つの炭素質のコーティングを含む平坦で実施的に円形の外側表面、平坦な外側表面と平行な方向に実質的に円形の断面形状を有する中間部、及び平坦な外側表面と反対側に円錐形の外部表面を有する。好ましくは、炭化ケイ素ブールは欠陥数の合計が約8000/cmより少ない。
【0008】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方は単に例示的かつ説明的なものに過ぎず、特許請求されているような本発明のさらなる解釈を提供することを意図していると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1a及び図1bは、本発明の様々な実施形態で用いられる炭化ケイ素シードホルダーの斜視図である。
図2図2は、本発明の様々な実施形態で用いられる昇華炉の概略図である。
図3図3a及び図3bは、本発明の様々な実施形態で用いられる昇華炉のホットゾーンの様々な図である。
図4図4は、本発明の1つの実施形態によって製造された炭化ケイ素ブールの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、炭化ケイ素を製造するための方法及び装置に関する。
【0011】
本発明の炭化ケイ素を形成する方法において、昇華炉は、炉殻、ホットゾーン、炉殻の中のホットゾーンを囲む断熱材を含む。炉殻は、高温での結晶化の炉に使用される当該技術分野で公知の任意のものとすることができ、当該炉殻には水などの冷却液体が循環する冷却流路を特徴付ける内壁及び外壁を包含する石英の殻が含まれる。加えて、炉殻は、空冷の単層の石英の殻であってもよく、当該空冷は例えば殻の底部から頂部に向けてである。炉殻は、結晶成長を促進し制御するための熱を提供する少なくとも1つの加熱素子に囲まれる。
【0012】
ホットゾーンは、るつぼカバー又はるつぼ蓋を有するるつぼ、並びにるつぼ内に位置する炭化ケイ素シード及び炭化ケイ素前駆体(本明細書中ではしばしば炭化ケイ素ソースともいう)の両方を含む。これらのそれぞれは以下でより詳細に説明する。断熱材は炉殻の内部に位置してホットゾーンを取り囲み、当該断熱材は炉内の温度及び条件に耐えることができる低い熱伝導性を有する当該分野で公知の任意の材料、例えばグラファイト、とすることができる。好ましくは、断熱材はグラファイトフェルトのような繊維質の断熱材の層を複数含み、層の数は、例えば、層の厚さ、炉殻のサイズ、るつぼのサイズ及び形状、結晶成長の条件、及びコストなどに応じて変化させることができる。好ましくは、断熱材の層の形状及び寸法は使用するるつぼの形状及びサイズに適合し、かつ結晶成長のための望ましい温度勾配を維持するために十分に低い熱伝導性を提供する。例えば、円筒形のるつぼにおいては、好ましくは、断熱材はるつぼを囲んで積層させたドーナツ形状を有する繊維質の断熱材材料の層を含む。好ましくは、取り扱いを容易にし、かつ低い熱伝導性を一貫して維持するために、断熱材で囲まれたホットゾーンは、石英容器のような保持容器の中に入れられる。保持容器の外部と炉殻の内側の面との間に存在する空隙は、アルゴンと窒素の組み合わせのような、不活性ガス又はガス混合物で充填することができる。
【0013】
本方法では、炉殻、ホットゾーン、及び断熱材は、様々な手段で組み合わせることができる。例えば、一実施形態では、断熱材が、開口した頂部を有する保持容器内に備えられ、そして殻の外部の周りに加熱素子を有する(可動式の又は固定された台座の上などにある)炉殻の中に置かれ、それから、炭化ケイ素前駆体及び炭化ケイ素シードを含みるつぼカバーで密封されたるつぼを含有するホットゾーンが、断熱材の中に置かれて断熱材がホットゾーンを取り囲むようにする。あるいは、別の一実施形態では、断熱材が、炉殻の内部、好ましくは保持容器の中に置かれ、るつぼが、断熱材の中に置かれる。次に、炭化ケイ素ソース及び炭化ケイ素シードがるつぼの内部に設置され、該るつぼはその後るつぼカバーで密封することができる。さらに、別の一実施形態では、断熱材は、ソース及びシードあり又はなしのホットゾーンを囲んで置かれ、ホットゾーン及び断熱材は一緒に、炉殻の内部に、好ましくは保持容器の使用を伴って設置される。順序にかかわらず、好ましくは、ホットゾーンは、殻の垂直な中心軸に沿って炉殻の中心に水平に(例えば軸方向に)配置される。中心軸に沿った垂直方向の位置調整は、例えば、加熱素子の種類や配置に依存し、後述するように、製造のための望ましい温度勾配によっても依存する。好ましくは、ホットゾーンは垂直方向には、炉殻の中心又はその上に配置され、同様に炉殻を囲む加熱素子の中心又はその上に配置される。特定の垂直方向の位置調整は最適な成長性能のために調節することができる。るつぼと炭化ケイ素ソース及びシードを用意した後で、るつぼをカバーによって密封することができる。他の組み合わせもまた可能であり、当業者に知られているであろう。任意に、多孔質グラファイトフィルターのような多孔質フィルターを炭化ケイ素前駆体と炭化ケイ素シードの間に配置してもよい。
【0014】
昇華炉が組み立てられた後、本発明の方法はさらに、炭化ケイ素前駆体を蒸発させるために加熱素子によりホットゾーンを加熱する工程を含み、それによって炭化ケイ素シード上に炭化ケイ素が形成される。加熱素子はソースの昇華を起こすために炉殻の内部、より具体的には、るつぼの内部の温度を変化させることができるものであれば当該技術分野で公知の任意のものとすることができる。加熱素子は単体の素子であってもよく、又は複数の素子を含むことができるが、さらなる制御のために複数の素子の方が好ましい。好ましくは、本発明のためには、加熱素子は、炉殻の外側を囲んで包み、炉殻の内部の構成部品、特にるつぼに誘導結合することができる誘導ヒーターである。加えて、るつぼ内部の温度を測定し、維持し、及び/又は制御するために、ホットゾーンはさらにるつぼの上に位置する少なくとも1つのサーマルサイト管を含んでいてもよい。好ましくは、当該管はるつぼカバーを貫通して炭化ケイ素シードの上に位置する。そこから、温度の値を測定することができ、必要に応じて、望ましい結晶成長条件を維持することを確保するために加熱素子への電源供給を変化させることができる。
【0015】
上述した通り、ホットゾーンは、るつぼ、るつぼカバー、炭化ケイ素前駆体、及び炭化ケイ素シードを含む。るつぼは、昇華炉の内部に存在する条件に耐えることのできるものであれば当技術分野で公知の任意のるつぼであってよい。好ましくは、るつぼ及びるつぼ蓋はグラファイトを含む。加えて、るつぼは、例えば炉殻の形状及びサイズ、使用される炭化ケイ素前駆体の総量、及び形成される炭化ケイ素生成物の目的の形状及びサイズに応じて任意の形状又はサイズを有することができる。例えば、るつぼは実質的に円筒の形状を有することができる。るつぼは上部領域(るつぼの頂部の領域である)及び下部領域(るつぼの底部の領域である)を有し、これらの領域は同じ又は異なった形状及び/又は断面積を有することができる。例えば、るつぼの上部領域と下部領域の両方が実質的に円筒の形状であって、上部領域が下部領域よりも大きい直径を有する形状とすることができる。この例では断熱材は上部及び下部領域の両方に対してぴったりと合わせることができ、その結果として断熱材はるつぼの外側表面全体に接触する、又は、好ましくは、断熱材は上部領域に対してきつく合わせられ下部領域に対しては合わせないことができ、その結果としてるつぼ及び断熱材の下部部分の間に空隙が残される。炭化ケイ素前駆体はるつぼの下部領域に位置し、炭化ケイ素シードはるつぼの上部領域に位置する。この例では、ホットゾーンが炉殻を囲む加熱素子によって加熱されるとき、炭化ケイ素前駆体はケイ素及び炭素を含む蒸気を形成するために反応及び/又は昇華し、当該蒸気は炭化ケイ素シードに向かってホットゾーンを通り上方へ移動し、当該炭化ケイ素シード上で蒸気が凝固し再固体化し、その結果炭化ケイ素生成物が形成される。
【0016】
炭化ケイ素前駆体は、るつぼの下部領域に直接配置することができ、又は、代わりに、下側領域に配置される別個の独立型の容器に提供することができる。例えば、炭化ケイ素前駆体は、るつぼ内に配置されたソースモジュール内に含めることができる。ソースモジュールは、1又はそれ以上の前駆体チャンバを有することができ、炭化ケイ素形成に必要な条件に耐えることができ、かつ生成物に干渉したり汚染物質を加えたりしないものであれば、任意の容器とすることができる。好ましくは、ソースモジュールはグラファイトを含む。モジュールの形状は、例えば前駆体の分量、るつぼの形状に応じて変化させることができる。例えば、ソースモジュールは、るつぼの下部領域に環状チャンバの形成をもたらす円筒形の挿入物であることができる。この場合、外側環状チャンバは加熱素子に近づくことができ、炭化ケイ素前駆体を含むことができ、同時に円筒形チャンバの内側は炭化ケイ素シードに至るための昇華生成物の経路となる空間を提供する。好ましくは、この実施形態では、円筒形のソースモジュールは、炭化ケイ素前駆体の昇華によって生成する蒸気の拡散を可能にすることができる多孔質グラファイトを含む。
【0017】
炭化ケイ素前駆体は、炭化ケイ素を含み、粉末、顆粒、固体、又はそれらの組み合わせを含む任意の形態をとることができる。好ましくは、炭化ケイ素前駆体は粒子状物質が非常に低い水準である実質的に固体であって、例えば、10%未満の粒子状物質、5%未満の粒子状物質、及び1%未満の粒子状物質を含む。最も好ましくは、炭化ケイ素前駆体は、実質的に粒子状物質を有さない固体の物質である。加えて、前駆体は、炭化ケイ素の密度と比較して、多孔性、低密度の固体又は非多孔性、高密度の固体のいずれであってもよい。
【0018】
炭化ケイ素前駆体は、種々の異なる方法で用意することができる。例えば、ケイ素と炭素、例えばグラファイト、を含有する試薬混合物を用意し、続いて加熱し、炭化ケイ素を含む実質的に固体の前駆体である炭化ケイ素前駆体混合物を形成することができる。あるいは、粒子状炭化ケイ素を用意し、実質的に固体の炭化ケイ素前駆体に変換するために加熱することもできる。変換の程度は、例えば、加熱の程度、温度、並びに試薬混合物の炭素とケイ素の比率、及び混合物の形状によって異なる。例えば、ケイ素粒子と炭素粒子は粒子状混合物を形成するために結合させることができ、該粒子状混合物は前駆体の炭化ケイ素を形成するための反応に使用可能である表面積を増大させる。好ましくは、ケイ素から炭化ケイ素への変換の促進のためにモル過剰の炭素が使用される。例えば、炭化ケイ素前駆体を調製するための炭素のケイ素に対するモル比は好ましくは1.0より大きく、さらに好ましくは約1.05から約1.5であり、最も好ましくは約1.1から約1.3である。
【0019】
任意の公知の粒子状炭化ケイ素又はケイ素及び炭素粒子は、炭化ケイ素前駆体を調製するために用いることができる。例えば、微粒子混合物を使用する場合、好ましくは、ケイ素粒子は約0.1mmから約10mmの平均粒子サイズを有し、さらに好ましくは約0.5mmから5mmであり、最も好ましくは、約1mmから約4mmである。加えて、好ましくは、炭素粒子は約50ミクロンから約1000ミクロンの範囲の平均粒子サイズを有し、さらに好ましくは約75ミクロンから約750ミクロンであり、最も好ましくは約85ミクロンから約500ミクロンである。これらの範囲の粒子は、例えばふるい分けなどを含む、当技術分野で利用可能な任意の方法を用いて調製することができる。
【0020】
粒子状混合物は、撹拌又は混合によって試薬の粒子を組み合わせるなどによって、均一な又はほぼ均一なケイ素と炭素の粒子の混合物として形成させることができ、又は意図的な混合なしに試薬の粒子を組み合わせることによって不均一な混合物として形成させることができる。例えば、ケイ素粒子と炭素粒子はケイ素と炭素の交互の層として組み合わせることができ、それぞれの炭素の層は実質的に等しい炭素の量を有し、それぞれのケイ素の層は実質的に等しいケイ素の量を有する。粒子状混合物は、上述の通り、るつぼの下部領域に用意し加熱することができ、又は代わりに上述の通りソースモジュールに用意することができ、るつぼに配置されてから加熱されるか別に加熱されてからるつぼの下部領域に配置されるかのいずれかであってよい。
【0021】
ホットゾーンは、その上で炭化ケイ素が形成されるるつぼの上部領域に位置する炭化ケイ素シードをさらに含む。シードは、実質的に単結晶の炭化ケイ素の形成を確保するために単結晶である。当技術分野で公知の任意のシードが使用できる。好ましくは、炭化ケイ素シードは炭化ケイ素ウエハであり、とりわけ、炭化ケイ素ブールのスライスで得られるような円形の炭化ケイ素ウエハである。炭化ケイ素シードウエハの直径は、るつぼのサイズ、製造したい炭化ケイ素の望ましいサイズなど様々な要因に応じて変えることができる。例えば、炭化ケイ素シードは約75mmより大きい(例えば約80mmから約85mm)、約100mmより大きい(例えば約105mmから約115mm)、約150mmより大きい(例えば約160mmから約170mm)、及び約200mmより大きい(例えば約210mmから230mm)直径を有する円状の炭化ケイ素ウエハであってよい。炭化ケイ素シードの厚さも、コストや入手性などの要因に応じて変えることができる。例えば、炭化ケイ素シードは約0.5mmから約3.5mm、例えば約0.6mmから約1.3mm、及び約0.7mmから約1.1mmの厚さを有する円状の炭化ケイ素ウエハであってよい。
【0022】
炭化ケイ素シードは上面及び底面を有し、るつぼの下部領域に配置された炭化ケイ素前駆体に底面を向けてるつぼの上部領域に配置される。シードは単結晶炭化ケイ素なので、シードはシリコン面とカーボン面を有し、シードは形成される炭化ケイ素の結晶多形に依存して、前駆体に何れかの面を向けて配置することができる。例えば、6H炭化ケイ素は炭化ケイ素シードウエハのシリコン面が底面であるときに形成され、4H炭化ケイ素はシードウエハのカーボン面から成長する。好ましくは、炭化ケイ素シードは分離した独立型のシードモジュール内に用意され、当該シードモジュールはるつぼの上部領域に配置される。シードモジュールは炭化ケイ素の成長条件に耐えることができる任意の容器であってよく、さらに炭化ケイ素を含むことができ、炭化ケイ素の成長を妨げない適切な場所にシードを固定する。好ましくは、シードモジュールは、るつぼの上部領域に露出し炭化ケイ素が成長するシードの底面を残してシードを包含するシードホルダーを含む。好ましくは75%まで、さらに好ましくは80%まで、最も好ましくは90%までの底面が露出される。この方法では、結晶成長の表面の露出は最大化される。
【0023】
加えて、好ましくは、シードホルダーに包含される炭化ケイ素シードの上面もまたるつぼの上部領域に露出される。具体的には、シードホルダー内でシードの上面の約75%より大きい、約80%より大きい、及び約90%より大きい割合が露出される。これは当技術分野で典型的に行われることと正反対である。当業者はシードの上面にるつぼの蓋として機能できる分厚いグラファイトブロックのような保護バリアを接着するであろう。露出したシードの上面を残すことは、シードの分解及び成長する炭化ケイ素結晶の内部に欠陥を生成することを予想させる。しかしながら、シードにブロックを接着することは重大な不利益があり、具体的にはブロックとシードの間の熱的な不整合によって応力が生まれ成長する結晶中に欠陥が生まれる。その上、成長条件を耐え抜ける接着剤はプロセスにさらなるコストを追加し、シードが成長する環境に汚染物質を追加することがありうる。
【0024】
驚くべきことに、炭化ケイ素シードの上面はるつぼの上部領域に露出したままにすることができ、露出した表面はるつぼ又はるつぼ蓋を包含するホットゾーン内のシード上のすべての部品から連結されていないか又は浮いており、結果として、炭化ケイ素がシードに形成されるときの結晶の欠陥の総量を減らすことができることが見出された。炭化ケイ素シードの上面が炭化ケイ素の成長中に劣化しないことを確保するために、シードの上面はるつぼの上部領域の結晶成長の環境でバリアとして機能できるシード保護層を含むことが好ましい。より好ましくは、炭化ケイ素の上面の全てがシード保護層を含む。この層は単層であってもよく、複数の層を含んでいてもよいが、全体としてシードの厚さと比較して非常に薄い。好ましくは、シード保護層は約250ミクロン未満の厚さを有し、さらに好ましくは約100ミクロン未満の厚さを有し、例えば約10ミクロンから約90ミクロン、約30ミクロンから約80ミクロン、約50ミクロンから約70ミクロンである。シード保護層は、特に熱膨張の係数の不一致に起因する、望ましくない熱的な応力を与えずにシードの上面における反応を防止できる、任意の材料を含むことができる。例えば、シード保護層は、グラファイト又は高温において硬化されたフォトレジスト層を含むコーティングのような、1又は複数の炭素質の層を含んでいてもよい。シード保護層が少なくとも2つのコーティング層を含むとき、各層の厚さは全体の厚さと同様に変えることができ、好ましくは約250ミクロン未満に保たれる。例えば、それぞれの層は約1ミクロンから約100ミクロンであってよく、層が硬化したフォトレジストであれば約2ミクロンから約5ミクロン、層がグラファイトのコーティング層であれば約20ミクロンから約30ミクロンであってよい。
【0025】
シード保護層は、薄い表面層を生成することができる当技術分野で公知の任意のコーティング技術を使用して、炭化ケイ素シード表面に適用することができる。したがって、本発明の方法の一つの実施形態では、シードモジュールは使用される材料に応じて、炭化ケイ素シードの表面に少なくとも一つのコーティングを塗布し、必要に応じて、得られたコーティングを硬化させる工程を含む方法によって提供される。表面はシードのシリコン面又はシードのカーボン面のいずれかである。コーティングされた後、シード保護層を含む表面は、シードの上面として使用され、好ましくはシードモジュール内に含まれるシードは、この保護された表面をるつぼの上部領域に露出しながらるつぼに配置される。
【0026】
シードホルダーの様々な異なるタイプを用いることができ、ホルダーは、例えば、グラファイトなどの炭化ケイ素結晶の成長のために必要とされる高温条件に耐えることが可能な任意の材料で作ることができる。好ましくは、本発明の方法のために、シードホルダーは、炭化ケイ素前駆体の昇華などから製造される蒸気がるつぼから通気できるようにするために、ホルダーに設けられた空間である一つ以上の蒸気放出開口部を含む。好ましくは、蒸気放出開口部がシードホルダーの中に含まれかつシードの周辺の近く又は外側にある時には、蒸気放出開口部は炭化ケイ素シードの底面より下に設けられ、それによって蒸気が上方に向かってかつシードの周囲へその後るつぼの外へと移動できるようになり、該るつぼは好ましくは蒸気が通り抜けることができる1又はそれ以上の通気口も含む。さらに、蒸気放出リングもまた、シードホルダーの中又はシードホルダーの外とるつぼ壁の間のいずれかに含まれていてもよい。該リングは1又はそれ以上のるつぼの通気口に位置合わせすることができる孔を含む。シードホルダーの頂部にある上部の蒸気放出孔もまた用いることができる。リングの調整は、孔の配列を変更することにより、るつぼから断熱材の周囲へと通気される蒸気の量を変化させることができる。
【0027】
シードホルダーの蒸気放出開口部の数は変化させることができ、形状やサイズも同様に変えることができ、また、開口部はシードホルダー上の様々な位置に配置することもできる。例えば、シードホルダーは、炭化ケイ素シードの底面と垂直なホルダーの中心軸の周囲に配置された多数の蒸気放出開口部を含んでいてもよい。具体的には、円形のウエハである炭化ケイ素シードのために、多数の蒸気放出開口部はシードの外側の周りに中心軸から等距離に対称的に配置されることができる。開口部の形状は、例えば、円形、楕円形、長方形、又は正方形とすることができ、開口部はシードホルダーの本体内又は縁部に沿って配置することができる。具体的な例としては、シードホルダーは、ソースに面するシードホルダーの底の縁の周囲に、おおよそ城郭のタレットの形状を形成するように対称的に配置された多数の正方形の蒸気放出開口部を含むことができる。
【0028】
このように、本発明の炭化ケイ素を形成する方法は炉殻、断熱材、及びホットゾーンを有する昇華炉を提供する工程を含み、該ホットゾーンは下部領域に炭化ケイ素前駆体を、上部領域に炭化ケイ素シードを有するるつぼを含む。一つの実施形態では、炭化ケイ素前駆体はソースモジュール内に含まれ、及び/又は炭化ケイ素シードはシードモジュール内に含まれる。これらのモジュールは別の工程でるつぼの外側で用意され、その後、るつぼの中に配置することができる。このように、ソース、シード、又はその両方は昇華炉とは別にパッケージ化された構成要素として提供することができる。ソースは炭化ケイ素の生成の間に消費され、炭化ケイ素シードは炭化ケイ素生成物の成長の一部となり生成した物質から除去される。したがって、本発明の一つの方法は、昇華炉のホットゾーンの中の炭化ケイ素の生成のための消耗品についてのプロセスである。炉が提供され、消耗可能なソースモジュール及び/又は消耗可能なシードモジュールはそれぞれホットゾーンの下部及び上部領域に配置され、炭化ケイ素が形成され、その後の炭化ケイ素の生成の実行のためにソースとシードの両方が除去され別のソースとシードに置き換えられる。
【0029】
本発明の方法の特定の実施形態が以下に記載される。しかしながら、これらは実際に単なる例示であって、限定しておらず、実施例のみを目的として示していることは当業者に明らかであろう。多数の修正及びその他の実施形態は当業者の範囲内であり、本発明の範囲内に入ると考えられる。加えて、当業者には当然のことながら、具体的な条件及び形態は例示であって、実際の条件及び形態は特定の系によって決めることができる。当業者は特定の要素の均等物を、ルーチンの実験より多くを用いずに、認識し確認することもできるであろう。
【0030】
本発明の方法の第1の例では、実質的に固体の炭化ケイ素前駆体混合物は、660grの粒状のケイ素(1.0~3.35mmの範囲の粒子サイズで、平均粒子サイズ2.18mmにふるいわけされた)及び340grの粒状の炭素(90~500ミクロンの範囲の粒子サイズで、平均粒子サイズ294ミクロンにふるいわけされた)によって、円筒状のグラファイトるつぼの底に位置し、中心に多孔質グラファイトの環状壁を有する円筒状のグラファイトソースモジュールの外側環状チャンバの中に調製された。ケイ素及び炭素の粒子は交互の層に配置され、それぞれの層はほぼ当量の原料を有している(炭素粒子の6層と交互にケイ素粒子の5層)。多孔質グラファイトフィルターは複数の層の上に配置され、しかし前駆体混合物と接触しないように約20mmの間隔を設け、るつぼは円筒状のサーマルサイト管を包含するるつぼ蓋によって密封された。部分的に充填されたるつぼはその後、円筒形の石英容器の中に配置され、容器に詰められたおよそ0.25インチの厚さを有する軟らかいグラファイトフェルトの多数の層で囲まれ、そして充填された容器は炉殻の中に配置され、炉殻の外側の周囲に位置する誘導ヒーターによって、約1400℃の温度で2時間、続いて約2240℃の温度で追加の2時間加熱された。得られる実質的に固体の炭化ケイ素前駆体混合物はそのままで炭化ケイ素の生成のために用いられた。
【0031】
別途、シードモジュールは、磨かれた80mmの炭化ケイ素ウエハ(0.8mmから1.0mmの間の厚さ)のシリコン面にシード保護層を塗布すること、及びシードホルダーに保護済みのシードを配置することによって、提供された。具体的には、第1のフォトレジスト層(Megaposit SPR、Rohm and Hass Electronic Materialsより入手可能な粘性のクレゾールノボラック樹脂の溶液)は炭化ケイ素ウエハの磨かれたシリコン面の上に塗られ、第1の層が2~4ミクロンの厚さを有するように硬化して形成した。第2のフォトレジスト層は第1の層の上に塗布され硬化された(厚さは2~4ミクロンであった)。炭素質の層は、その後に、スプレーコーティンググラファイト(Aerodag G、非水性グラファイトの噴霧分散)によって第2のフォトレジスト層の上に約120℃で塗布された(厚さは20~30ミクロンであった)。複合物は完全な硬化と被覆率を確保するために真空中に1150℃で2時間加熱された。第3のフォトレジスト層はまた、フォトレジスト層が多孔質の層を充填するように最小限の厚さで、多孔質の炭素質の層に塗布され、続いてシーラントとして第2のグラファイト層(厚さは20~30ミクロンであった)をスプレーコーティングした。完全な複合物は最終的に、シリコン面に多層シード保護を有する炭化ケイ素シードウエハを生成するために、窒素下に大気圧で300℃8時間加熱された。
【0032】
保護された炭化ケイ素シードは、複数の蒸気放出開口部を備えたグラファイトシードホルダーに取り付けられ、シードモジュールを形成する。シードモジュールの上面図が図1aに、底面図が図1bに示される。したがって、炭化ケイ素シード100は、シリコン面上に、前述の通りに用意されるシード保護層110を含み、ホルダーの底面の外周の周りに城郭のタレット状に対称的に位置する多数の長方形の蒸気放出開口部130を含むシードホルダー120内に位置する。加えて、シードホルダー120は、ホルダーの上部に追加の蒸気放出開口部140をさらに含み、該開口部は図2に示され後述する通りに、るつぼの通気口にそろえて並べることができる。炭化ケイ素前駆体の昇華によって生まれる蒸気は、したがって、経路の矢印Aによって図示されるように、炭化ケイ素シード100に近づき蒸気放出開口部130及び追加の蒸気放出開口部140から漏れ、るつぼの通気口を通り抜けて周囲の断熱材へと出る。炭化ケイ素シード100は、シードホルダー120に配置され、表面にシード保護層110を有し、シードの底面に4H炭化ケイ素の成長のためのカーボン面を形成する。図1a及び図1bに示されるように、炭化ケイ素シード100の上面150及び底面160はシードホルダー120内で露出されている。
【0033】
図2は、昇華炉200の概略図であって、該昇華炉は誘導加熱素子202に囲まれた炉殻201を含み、さらに、炉殻201の内側に、炉殻201の中心軸207にそって誘導加熱素子202の中心よりわずかに上に位置し、グラファイトフェルトの複数の層を含む断熱材204に囲まれたホットゾーン203を含む。ホットゾーン203及び断熱材204は石英容器205に入れられ、空隙206はアルゴンと窒素の混合物で充填される。図3a及び図3bに示すように、ホットゾーン203は、上部領域220の直径が下部領域240の直径よりも大きい略円筒形のグラファイト製であるるつぼ210を含む。炭化ケイ素シード100を含むシードホルダー120は、炭化ケイ素シード100の上面150と底面160の両方が上部領域220に露出されるとともに、るつぼ210の上部領域220に位置する。底面160は、るつぼ210の下部領域240に位置する実質的に固体の炭化ケイ素前駆体混合物230に対面し、該前駆体混合物は前述の通りに、多孔質グラファイト壁233によって形成される開口環状領域232を有するソースモジュール235の外側環状チャンバ231に用意される。実質的に固体の炭化ケイ素前駆体混合物230は多孔質グラファイトフィルター225によってシードホルダー120から分離され、図示される通り、当該多孔質グラファイトフィルターはソース又はシードに接触することはない。シードホルダー120は長方形の蒸気放出開口部130(図3aの視点では図示されない)を含み、該開口部は蒸気放出リング280中にある位置合わせされた孔270及び通気口260を通ってるつぼ210から排出されるための蒸気の経路を提供する。るつぼ210は、ホットゾーン203の温度を監視するために炭化ケイ素シード100の上に設置されるサーマルサイト管290が挿入されたるつぼカバー215によって密封される。
【0034】
本発明の例となる方法では、昇華炉200を用意した後、ホットゾーン203は誘導加熱素子202によって2080℃から2110℃の間の温度まで加熱され、同時に約0.5Torrまで反応圧力を減少させ、これらの条件を約100時間維持する(この間、温度を50℃の範囲に保持する)。るつぼ内には温度勾配が設けられ、下部領域240は上部領域220よりも約20~40℃熱くされる。このような方法で、実質的に固体の炭化ケイ素前駆体混合物230は昇華され、炭化ケイ素シード100の底面160にバルクの炭化ケイ素が形成され、過剰な蒸気は蒸気放出開口部130を通って通気される。
【0035】
同様に、第2の例では、前の実施例に記載される通りに、1050~1150grの粒子状SiC(ポリアルファSiC、Washington Millsから入手可能)は円筒形のグラファイトのソースモジュールの外側環状チャンバの中に設置され、グラファイトるつぼの中かつ炉殻の内側に位置する。SiCは、約1.1gr/Lの密度を持つ実質的に固体の炭化ケイ素前駆体を生産するために、約1400℃まで2時間、続いて約2240℃まで追加の2時間加熱される。別に、前の実施例に記載と同様の方法を用いて、シードホルダーの中に包含され、シリコン面にシード保護層が塗布された100mmの炭化ケイ素ウエハを含むシードモジュールも用意される。具体的には、第1のフォトレジスト層(Megaposit SPR)を、炭化ケイ素ウエハの研磨されたシリコン面上に塗布し、2~4ミクロンの厚さを有する第1の層を形成するために硬化させた。次いで、炭素の層を第1のフォトレジスト層の上にスプレーコーティンググラファイト(Aerodag G)により塗布した(全体の厚さは20~30ミクロンであった)。複合体を、完全な硬化と被覆率を確保するために、真空下に1150℃で2時間加熱した。このプロセスは、シリコン面上に多層のシード保護を有する炭化ケイ素シードウエハを製造するために繰り返された。図3a及び図3bに示すように、保護されたシードは、前の実施例で使用されたグラファイトシードホルダーに設置され、グラファイトるつぼの上部領域に位置し、上部領域にシードの両方の面が露出する。得られたホットゾーンは、約0.25インチの厚さと非常に低い熱伝導率(1000℃において0.15W/(K・m))を有するグラファイトフェルトの多数の層を含む断熱材によって囲まれ、その組み合わせは石英容器の中に設置され、図2に示した昇華炉の軸方向の中心に誘導加熱素子の中心よりも上に置かれる。上記の通り、炭化ケイ素シードの底面に接してバルクの炭化ケイ素が形成された。
【0036】
例えば、炭化ケイ素前駆体のサイズ、炭化ケイ素シードの底面の露出面積の大きさ、及びるつぼの相対的な形状に応じて、得られる炭化ケイ素の形状や大きさを変更することができる。例えば、成長した炭化ケイ素は、炭化ケイ素シードの底面に平行な方向に実質的に円形の断面形状を有するブールの形であり得る。ブールはシード表面から垂直な方向へ最大直径まで直径を増加させることができ、さらに、丸みを帯びた点まで、略円錐形状の底面を形成するように直径を減少させることができる。炭化ケイ素ブールの最大直径は、例えば炭化ケイ素の成長時間の長さや成長条件に応じて変化させることができる。一般的に、最大直径は約70mmから約250mmである。例えば、最大直径は75mmより大きくてもよく(例えば約80mmから約85mm)、約100mmより大きいことを含み(例えば約105mmから約115mm)、約150mmより大きくてもよく(例えば約160mmから約170mm)、約200mmより大きくてもよい(例えば約210mmから約230mm)。ブール重量は成長条件に依存するが、一般的には最初の原料物質の初期重量の約60%~約80%である。
【0037】
例えば、第二の実施例で作製したバルクの炭化ケイ素は、円形の水平断面と図4に示される形状を有するブールである。示されるように、ブールは、頂点の初期の炭化ケイ素シードウエハから、約112mmの最大直径を有する最も広い部分である中間部Bのおよそ中央まで曲線を描く外側表面を有する頂部Aを有する。中間部Bの丸みを帯びた外側表面は、ウエハ製造のために、(図示されるような)平坦な表面まですり砕くことができる。ブールは成長した光沢のある外側表面を有するドーム部Cによって締めくくられる。この例では、成長した炭化ケイ素ブールは、約748grの重量及び約33mmの高さを有し、A部は約10mm、B部とC部は約12mmであった。
【0038】
したがって、本発明はまた、本発明の方法によって製造されたバルクの炭化ケイ素ブールに関する。上記のようにブールは炭化ケイ素シード上に成長させるので、成長したブールはしたがって該シードを含む。それゆえに、本発明の特定の実施形態では、円形炭化ケイ素ウエハ上で成長する炭化ケイ素ブールは、実質的に円形の水平断面形状を伴う概ね球根状の形状を有し平坦な外部の表面を含み、該ブールは円形の炭化ケイ素ウエハを含み、結果として1又はそれ以上の、好ましくは少なくとも2の、例えば2~5の、炭素のコーティングも含む。バルクの炭化ケイ素ブールは、平坦な表面と平行な方向に実質的に円形の断面形状と、平坦な表面よりわずかに大きな直径を有する中間部をさらに有し、平坦な外部の表面とは反対側に円錐形又はドーム形状の外側表面を有する。円筒状の外側表面は好ましくは鏡面状の仕上がりを有する。
【0039】
本発明の方法により製造された本発明の炭化ケイ素は、改善された特性、特に一般に低い全体的な欠陥数が見出され、当該欠陥には以下に限定されるものでないが、貫通刃状転位(threading edge dislocation)、貫通らせん転位(threading screw dislocation)及び基底面の欠陥(転位や積層欠陥)が含まれる。例えば、当該炭化ケイ素は全欠陥の合計数が約8000/cm未満、特に約6000/cm未満であることが見出される。加えて、当該炭化ケイ素の貫通刃状転位の密度は約4000/cm未満、特に約2500/cm未満のように低いことが見出される。また、当該炭化ケイ素の貫通らせん転位の密度は約3500/cm未満、約3000/cm未満を含むことが見出される。さらに、本発明の炭化ケイ素の基底面の欠陥の密度もまた、約500/cm未満、又は約200/cm未満のように低いことが見出される。好ましくは、本発明の方法によって製造される炭化ケイ素は、約2500/cm未満の貫通刃状転位の密度を有し、約3000/cm未満の貫通らせん転位の密度を有し、約200/cm未満の基底面の欠陥の密度を有する。
【0040】
複数の炭化ケイ素ウエハは、低い欠陥レベルを有する成長した炭化ケイ素ブールから取ることができ、ウエハの数はおそらく中間部(最大直径を有する)のサイズ、対象のウエハの厚さ、及びウエハを取るための方法に依存する。図4に示されるブールの場合は、中間部Bから7~10のウエハが切出せることが予想され、必要に応じて研磨することができる。平均的に少ない欠陥数を有するブールから得られるこれらのウエハのそれぞれは、とりわけLED又はパワーデバイス用途における、物理的及び性能の特性が改善されていることが予想される。例えば、1.25mm炭化ケイ素ウエハが図4に示されるブールのB部から切り出された;上端の一つ(W1)と下端の一つ(W2)。それらは約1.00mmの厚さまで研磨され、欠陥レベルが分析された。結果は下記の表1に示される。
【0041】
【表1】
【0042】
データが示すように、両方のウエハは、驚くべきことに、少ない欠陥合計数を有することが見出された。さらに、欠陥の合計量は中間部Bの全体を通して減少しており、成長が進むにつれて欠陥が減少したことを示唆している。貫通らせん転位、貫通刃状転位、及び基底面の欠陥もまた、驚くべきことに、全て少ない。それぞれのウエハにおけるこのような低い欠陥レベルのより、B部から得られる全てのウエハは、例えば、LED及びパワーエレクトロニクス用途における、向上した性能を有することが予想される。
【0043】
本発明はさらに、上記の方法で用いられる昇華炉に関する。昇華炉は、炉殻、炉殻の外部に位置する少なくとも1つの加熱素子、及び断熱材に囲まれた炉殻の内部に位置するホットゾーンを含む。殻、ヒーター、断熱材、及びホットゾーンは、上記したいずれのものであってもよい。特に、ホットゾーンはるつぼ、るつぼを密封するるつぼカバー、るつぼの下部領域に位置する炭化ケイ素前駆体、及びるつぼの上部領域に位置する炭化ケイ素シードを含む。上記した構成要素のいずれも本発明の昇華炉で用いることができ、該構成要素は例えば、ケイ素と炭素の微粒子を含む粒子状の混合物を加熱することによって用意されるような実質的に固体の炭化ケイ素前駆体混合物、及び炭化ケイ素シードを含むシードモジュール、とりわけ該シードが上面と底面をるつぼの上部領域に露出させており炭化ケイ素シードの上面がシード保護層を含む、を包含する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態の上述の記載は、例示及び説明のために提示されるものである。網羅的であること、又は本発明を開示されたそのものの形態に限定することを意図していない。修正及び改変は上記の教示に照らして可能であり、あるいは本発明の実施から得ることができる。実施形態は、本発明の本質及び、当業者が様々な実施形態に考えられる特定の用途に適するように様々な修正とともに利用できるようにするための実際の応用を説明するために、選択及び記載された。本発明の範囲は本明細書に添付されている特許請求の範囲、及びその均等物によって定義されていることが意図されている。
図1
図2
図3a
図3b
図4