(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】無縫製かつリバーシブルである2色構成のジャージの製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 1/04 20060101AFI20220408BHJP
A41B 1/00 20060101ALI20220408BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20220408BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
A41D1/04 Z
A41B1/00 Z
A41D1/04 T
A41D27/00 Z
D06P5/00 109
(21)【出願番号】P 2018528727
(86)(22)【出願日】2016-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2016082396
(87)【国際公開番号】W WO2017114751
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-12-16
(31)【優先権主張番号】102015000089256
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518189633
【氏名又は名称】ジェンテ ディ マーレ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ファネシ,アンジェリーナ
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-082980(JP,A)
【文献】特開平03-097901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/04
A41B 1/00
A41D 27/00
D06P 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染色に適した生糸を選択する工程と、
無縫製のリバーシブルなジャージ(1)を製造するために前記生糸を用いてホールガーメント織機で織る工程であって、前記ジャージ(1)は筒状の胴体部(2)と肩の高さで筒状の胴体部(2)に結合した2つの袖部(3)とを備え、筒状の胴体部(2)は、裾部(4)とネック部(5)を有し、袖部(3)は袖口(6)を有する、工程と、
ジャージの裾部(4)および袖口(6)をホールガーメント織機によって閉じる工程と、
両袖(3)ならびに前記ジャージの胴体部(2)の両脇上にトラック(7)を形成する工程であって、各トラック(7)は前記ホールガーメント織機で表編みする表編み針の代わりに裏編みする平編み針で作られ、ホールガーメント織機から出されたジャージをドライクリーニングする工程と、
ジャージ(1)から出る長い毛糸を取り出して、ホールガーメント織機による編み方と同じタイプの編み方を再現する、ジャージ(1)が手作業で仕上げされる工程と、
完全に閉じられたジャージを得るためにジャージのネック部分(5)によってできた開口部を覆うためにジャージ(1)にパッチ(15)を仮縫いする工程と、
しわができないようにジャージを広げるために事前にアイロンをかける工程と、
ジャージを染色する工程と、
を備え、
前記ジャージを染色する工程は、回転ドラムのある槽にジャージを入れ、染料の色がジャージの表面と裏面でそれぞれ異なるように吸収される、
無縫製かつリバーシブルかつ2色構成のジャージの製造方法。
【請求項2】
ジャージの表面にフロスト染料コーティングを得るように、他の染料の色を吸収しない、閉じられたジャージをフロストタイプ染料で染色する第1染色工程と、
ジャージの内側にフロスト染色コーティングが存在する、ジャージのネック部分を開けてパッチ(15)を取り除きジャージを裏返しする工程と、
2色構成のシャツを得るためにジャージの表面に吸収された染料およびジャージの裏面に存在するフロスト染色コーティングで吸収しなかった染料を用いて、裏返しにされたジャージを染色する第2染色工程と、
裾部(4)と袖口(6)の封止を取り除く工程とを
備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
染色に適した生糸を選択する工程と、
無縫製のリバーシブルなジャージ(1)を製造するために前記生糸を用いてホールガーメント織機で織る工程であって、前記ジャージ(1)は筒状の胴体部(2)と肩の高さで筒状の胴体部(2)に結合した2つの袖部(3)とを備え、筒状の胴体部(2)は、裾部(4)とネック部(5)を有し、袖部(3)は袖口(6)を有する、工程と、
ジャージの裾部(4)および袖口(6)をホールガーメント織機によって閉じる工程と、
両袖(3)ならびに前記ジャージの胴体部(2)の両脇上にトラック(7)を形成する工程であって、各トラック(7)は前記ホールガーメント織機で表編みする表編み針の代わりに裏編みする平編み針で作られ、ホールガーメント織機から出されたジャージをドライクリーニングする工程と、
ジャージ(1)から出る長い毛糸を取り出して、ホールガーメント織機による編み方と同じタイプの編み方を再現する、ジャージ(1)が手作業で仕上げされる工程と
、
しわができないようにジャージを広げるために事前にアイロンをかける工程と、
ジャージを染色する工程と、
を備え、
前記ジャージを染色する工程は、
基色でネック部分(5)が開いていてパッチ(15)がないジャージ(1)を表面および裏面ともに基色で均一に染色する第1染色工程と、
完全に閉じられたジャージを得るために、ジャージのネック部分(5)にある開口部を覆うために、ジャージ(1)のネック部分にパッチ(15)を仮縫いする工程と、
ジャージの表面にフロスト染色コーティングを得るために、他の色の染料を吸収しないフロスト染料を用いた第2染色工程と、
ジャージの裏面にフロスト染色コーティングが存在するように、ジャージのネック部分を開けてパッチ(15)を取り除きジャージを裏返す工程と、
ジャージの表面に吸収され、ジャージの裏面に存在するフロスト染色コーティングに吸収されない染料を用いて、裏返されたジャージの第3染色工程と、
裾部(4)と袖口(6)の封止を取り除く工程とを
備える無縫製かつリバーシブルかつ2色構成のジャージの製造方法。
【請求項4】
前記ホールガーメント織機で織り、生糸よりも弾性のある例えばライクラまたは他の弾性繊維といった弾性合成生糸を使って再編み込をすることで、裾部(4)、袖口(6)、ネック(5)に厚みをもたせる工程を備える請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記合成素材の毛糸は衣服の表面の仕上げ色に似た色に着色される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ネック部分(5)、裾部(4)および袖口(6)はリンクス工程で編まれる工程である請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ジャージのネック部分(5)を閉じるために仮縫い途中のジャージに当てられた前記パッチ(15)は、ジャージ(1)と同じ生糸で製造される請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
パッチ(15)を仮留めするために用いられる毛糸は、ポリエステルの糸である請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ジャージにおけるカフスボタンまたはダブルボタン(10)の鳩目(9、9’)はホールガーメント織機によって編成工程中に得ることができる請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
素材/洗濯タグ(23)が外縁の一辺のみに縫い付けられたブランドタグ(20)を製造する工程と、
4箇所のステッチ(21)でジャージの袖の袖口(6)の内側にブランドタグ(20)を取り付けることにより、袖口(6)とブランドタグ(20)との間にポケット(22)が形成される工程であり、前記素材/洗濯タグ(23)は前記ポケット(22)から引き出される可能性のある配置である工程を備える請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無縫製かつリバーシブルかつ2色構成の衣服を製造する工程に関する。特に、衣服は好ましくは羊毛、カシミヤ等の貴重な天然毛糸から作られたジャージ、プルオーバー、カーディガンまたは他のタイプの編地衣服である。
【背景技術】
【0002】
既知のように、リバーシブル(両面仕上げの)の衣服は裏返しにしても着ることができる衣服である。当然ながら、消費者はリバーシブルかつ2色構成の衣服、つまり衣服の両面がそれぞれ異なる色である衣服を求める。
【0003】
現在、リバーシブルかつ2色構成の編地衣服は、異なる2色の毛糸を用いた直線織機によって製造される。前記異なる色の毛糸は、「ヴァニセ」編みとして知られる特殊な技術で編まれており、第1色の毛糸は衣服の表面上にのみ配置され、第2色の毛糸は衣服の裏面上にのみ配置される。織機から出てくる2色構成の衣服は平面シートであり、その後、一般的な胴体部分および袖の形状である筒状にするため縫い目で閉じられる。織機から出ている衣服の垂れた毛糸はその後縫い合わせて輪にする。
【0004】
最近市場に導入された織機は、直接編地衣料を筒状に製造することが可能であり、筒状にするため衣服を閉じる最終的な縫い目が必要ない。
【0005】
前述の織機はホールガーメント(登録商標)として既知であり、主に日本企業の島精機製作所により販売および市販されている。ホールガーメント織り技術は、機械内で直接、縫い目を輪にした、すぐに着用できる完成された衣服を製造することができる。
【0006】
欧州特許第1672105号明細書は、縫い目を作らずに、ホールガーメント織機を用いて袖のある編地衣料の編成方法を開示する。
【0007】
しかし、 ホールガーメント織機は、異なる色の毛糸を交互に表面上および裏面上に配置する「ヴァニセ」生地を製造することは出来ない。したがって、現在のホールガーメント織機はリバーシブルな編地衣服を製造できるが、異なる色が両面にある衣服を製造することはできない。
【0008】
米国特許第6006550号明細書は、第1色は第1面にあり第2色は第2面にあるリバーシブルな編地の製造工程を開示する。
【0009】
ドイツ特許第10127740号明細書は2色構成の生地の製造方法を開示し、上記方法は生地の異なる部分を捩じることによって染料が届かない部分をつくり二色効果を得ることを提供する。
【0010】
国際公開公報WO2005/028731明細書は、第1色の裏面と、第1色と異なる第2色の表面を備える生地の製造方法を開示し、前記方法は2種類の染料を生地の裏面および表面に吹きかけることで二色効果を得ることを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第1672105号明細書
【文献】米国特許第6006550号明細書
【文献】ドイツ特許第10127740号明細書
【文献】国際公開公報WO2005/028731明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、リバーシブルかつ2色構成の編地衣服の製造方法を開示することで従来技術の欠点をなくすことであり、完成品を得るために生地に輪を作ったり縫い目を作ったりする必要がない完成された衣服をもたらす織機であるホールガーメント織機を用いる。
【0013】
他の目的は、見た目が美しい無縫製の衣服を供給できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は特許請求の範囲に記載された独立請求項1の特徴を備えた本発明によって達成される。
【0015】
有利な実施形態は従属請求項に示される。所望の目的を達成するために、出願人は伝統的な製造方法に変革を起こした。ホールガーメント織機を用いたリバーシブルかつ2色構成の衣服の製造方法を改良するためにホールガーメント織機において多くの試験を行った。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は本発明の方法で設定されたホールガーメント織機から出てきたジャージの平面図である。
【
図3】
図3は
図2のカーディガンのカフスボタンの斜視図である。
【
図4】
図4はネック部分を閉じてカーディガンを留めるためのパッチを追加した後の衣服を示す以外は
図1と同じ図である。
【
図5】
図5は本発明に基づく方法で得られた衣服の袖の平面図であり、タグを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の付加的な特徴は以下の詳細な記述においてより明確になるが、それはただ理解を助けるものであり、実施形態を制限するものではない。
【0018】
図面において、本発明に基づくリバーシブルかつ2色構成の衣服の製造方法が開示される。
【0019】
ホールガーメント織機は衣服を形成するジャージを編むために用いられる。前記織機は糸番手に非常に感度が高く、糸番手が僅かに異なることによって編む際にかなりの問題を引き起こす。
【0020】
したがって、工程の第1段階は理想的な毛糸を探すことである。毛糸は太くなければならず、天然物で加工されておらず、衣服は連続して染色されるため染色しやすい中立な白色または薄いグレイ色の染色に適しているものでなければならない。
【0021】
毛糸を購入する前に、ホールガーメント織機に取り付けるのに合致する糸番手か確認するために糸番手を検査する。説明する目的で、Nm2/30糸番手を持っている羊毛の太糸が使われる。
【0022】
リバーシブルかつ2色構成の衣服を得るために、ホールガーメント織機の設定に関する技術を調査した。
【0023】
図1において、ホールガーメント織機は直接、縫製することなく、筒状の胴体部(2)および肩の高さで胴体部(2)に結合した2つの袖部(3)から成るジャージ(1)を製造する。
【0024】
筒状の胴体部(2)は、裾部(4)とネック部(5)を有する。袖部(3)は袖口(6)を有する。
【0025】
ホールガーメント織機は織られた衣服の裾部(4)および袖口(6)が織り工程で閉じられて封止されるように設定される。反対に、ネック部(5)は開放されたままにされる。
【0026】
説明のために、
図1は「V」ネック(5)を示す。「V」ネックのバージョンでは、ネックはリンクス工程で編まれ、平織りステッチは裏編みステッチと同じであり、ネックの裏面部(50)上にはめ込む。明らかに裾部(4)と袖口(6)はリンクス工程で編むことができる。
【0027】
有利には、裾部(4)、袖口(6)とネック(5)はジャージの他の部分と比べてより厚い。そのような厚みのある袖口(6)、裾部(4)およびネック(5)は、よりよい着心地および衣服がより長持ちするように、ジャージの他の部分に対して厚みのある裾部、袖口、ネックを得るため、ウールの原毛を例えばライクラまたは他の弾性繊維といった弾性合成毛糸を使って再編み込をする工程で得られる。しかし、ライクラ繊維が裾部(4)、袖口(6)とネック(5)を厚くするために用いられるのであれば、染色工程でライクラが色を吸収しないことを考慮しなければならない。よって、ライクラ毛糸は、既に得られる衣服の最終的な色に似たその色に着色されていなければならない。
【0028】
ホールガーメント織機は、両袖(3)ならびにジャージの胴体部(2)の両脇上にトラック(7)と呼ばれる一本の生地を作るように設定される。各トラック(7)は表編み針の代わりに平編み針にすることで作られる。つまり、各トラック(7)を作ることで、表編み針を平編み針に替えるので、両袖(3)ならびに胴体部(2)の両脇の編み方を変えることができる。トラック(7)の機能は、次の染色工程で問題を起こすのを避けることである。実際、染料の色は、折りたたまれた両袖(3)ならびにジャージの胴体部(2)に正確に吸収されない傾向があり、それによりジャージに色のむらができる。ジャージの他の部分に対して僅かに異なる色を吸収しているが、異なる編み方であるため、トラック(7)は特別な装飾用の模様に見える。
【0029】
ホールガーメント織機は、鳩目および/またはポケットをも作ることができる。実際、通常通り連続してポケットと鳩目を輪で作ることは、縫い目を使用することであるので、リバーシブルかつ無縫製な衣服にはならない。
【0030】
図2はカーディガンである編地衣服(1)を示す。この場合、ネック(5)から裾部(4)まである2つの縦のボーダー(8、8’)が胴体部(2)の前面に位置している。この場合、鳩目(9、9’)はジャージの両側に縦のボーダー(8、8’)上に作られる。
【0031】
図3において、カフスボタンあるいはダブルボタン(10)はカーディガンの鳩目(9、9’)に適用される。カフスボタン(10)は第1ボタン(11)と連結スレッド(12)によって連結された第2ボタン(11’)とを備える。このように第1ボタン(11)はジャージの第1縦ボーダーの鳩目(9)に掛け合わされ、第2ボタン(11’)はジャージの第2縦ボーダーの鳩目(9’)に掛け合わされる。
【0032】
ホールガーメント織機から出てきたジャージ(1)は機械から出たオイル残余および染みを有する。このため、ジャージ(1)は検査されて、染みはトリクロロエチレンで落とされる。その後、ドライクリーニングにより織機のオイル残滓が除去される。
【0033】
ドライクリーニング後、ジャージ(1)は完成する。標準仕上げと本発明の方法による仕上げの主な差異は以下のとおりである。
【0034】
標準仕上げでは、ジャージから出ている長い毛糸は縫い目内に修復される。
【0035】
その代わりに、本発明の方法では、ジャージ(1)は縫い目を有しないため、ジャージから出る長い毛糸は再度、整経するため用いられる。この方法は完全に針と糸を使って手作業で行われる。つまり、針を使って、作業者が手作業でジャージから出る長い毛糸を取り出して、ジャージを自動的に編むのと同じように結ぶ。
【0036】
さらに、織り中にジャージの裾部(4)および袖口(6)を閉じるホールガーメント織機によって用いられた分離毛糸は、染色工程において毛糸が切れるリスクを防止するため、手動で結ばなければならない。
【0037】
編工程後にジャージ(1)で唯一空いたままの部分はネック部(5)である。
【0038】
図4において、パッチ(15)をネック部(5)に宛がって、ジャージ(1)を完全に閉じる。パッチ(15)はネック部(5)の開いている部分と同じ面積を有する。パッチ(15)は仮留め機械でネック部(5)上に当てられる。
【0039】
有利には、パッチ(15)は染色工程で異なる毛糸が異なる方法で色を吸収するのを防止するためジャージ(1)と同じ毛糸で作られている。これは期待されていた色と異なる仕上げ色になるリスクを防ぐためである。
【0040】
パッチ(15)を仮留めするために用いられる毛糸は、仮留め糸にしたがって染色されない箇所が残っていてはならないので、非常に細くなければならない。説明のために、100%のポリエステルGUTERMAN120毛糸が使用される。
【0041】
ドライクリーニング後、仕上げおよび仮縫いをして、衣服は事前にアイロンをかけられる。実際は、事前のアイロンがけ工程は完全な染色を得るために必要である。
【0042】
ジャージ(1)はホールガーメント機械で編み工程で作られたトラック(7)上にアイロンされなければならない。
【0043】
ジャージの袖口(6)および裾部(4)は、広げるため、また胴体部(2)と袖(3)と同じ幅にするためにアイロンされなければならない。実際、編み工程中に、袖口(6)および裾部(4)に厚みのある弾性繊維を当てることは、ジャージの袖口(6)および裾部(4)をきつくする傾向があり、染色工程中に袖口(6)および裾部(4)に染料が溜まるリスクを生じる。
【0044】
またこの事前アイロンがけ工程はジャージ(1)上に折り目を減らす圧迫アイロン工程を提供する。
【0045】
事前アイロンがけ工程の後に、ジャージは、回転染色槽内で異なる染色サイクルによって染色される。
【0046】
異なるタイプの染料が使用される。説明のため、以下三種類の染色が示される。
【0047】
例1(ジャージの片側にフロスト効果)
閉じられたジャージは染色槽に投入されて、洗浄効果(フロスト)染色を用いた第1染色サイクルが行われる。ジャージ(1)が閉じられていることを考慮すると、前記第1染色サイクル中には、フロスト染色コーティングはジャージの表面にのみ積み重ねられる。
【0048】
続いて、ジャージは染色槽から取り出され、ジャージのネック部が開かれ、ジャージのネック部分からパッチが取り除かれ、フロスト染色がジャージの裏面になるようにジャージは裏返される。そして、裏返されたジャージは再度洗浄槽に投入されて、第2染色サイクルが色のタイプの着色染料によってなされる。
【0049】
フロスト染色コーティング(ジャージの裏面上に含まれる)がフロスト染色コーティングを受けていないジャージの表面と比べて少ない色を吸収することを考慮すると、第2染色サイクル中は、着色染料はフロスト染色コーティングを受けていないジャージの表面でより吸収される。よって、ジャージの表面に非フロスト(結合)効果が得られる。逆に、ジャージの裏面にフロスト効果が得られる。それにより、2色構成の編地衣服を得る。
【0050】
例2(ジャージの片面へのブルーミスト効果)
本例では、フロスト染料の代わりに、ブルーミスト(インディゴ)染料が使用される。ブルーミストは、フロスト染料と同じ方法を有するが、ブルーミストコーティングではインディゴ染料のみを吸収する。
【0051】
染色の第1サイクルでは、ジャージの表面にブルーミスト染色コーティングが得られるように、閉じられたジャージはブルーミストを用いて染色される。
【0052】
その後、ジャージは染色槽から取り出され、ネック部分が開かれてジャージは裏返しにされる。裏返しにされたジャージは、着色染料、例えばベージュ色の染料を用いる第2染色サイクルとして染色槽に入れられる。
【0053】
よって、ベージュ色がジャージの表面で得られ、ジャージの裏面はインディゴ色を有する。それはブルーミストコーティングがインディゴ色のみを吸収し、ベージュ色を吸収しないからである。
【0054】
例3(ジャージの二面上に単一色)
異なる2色で単一色の仕上げを得るためには、パッチ(15)の仮縫いは染色工程の前に実行されない。つまりジャージのネック部分(5)は開けたままにしておくことを意味する。
【0055】
第1染色工程中に、ネック部分が開いているジャージ(1)は、例えばオレンジ色の基色で槽内で染色される。このように、表面および裏面ともに基色で均一に染色されたジャージを得る。
【0056】
基色で染色されたジャージが乾燥されると、パッチ(15)が仮縫いされてネック部分を閉じて、ジャージが閉じられる。
【0057】
よって、基色で着色されて完全に閉じられたジャージは、他の色を吸収しない染料であるフロスト染料によって槽内で第2染色工程を経る。例えば、フロスト染料の青は基色のオレンジ色と併せて茶色にするために用いられる。結果的に、茶色のフロスト染色コーティングがジャージの表面に作られる。
【0058】
同じく以前の事例では、ジャージは槽から取り出され、ジャージの裏面にフロスト染色コーティングが存在するように、ネック部分は開かれてジャージは裏返しにされる。次に着色染料によって第3染色サイクルが例えばグレイ色で行われる。結果として、ジャージの表面にグレイ色が得られる。逆に、茶色は、グレイ色を吸収しないフロスト染色コーティングによってジャージの裏面に残る。
【0059】
このように、純粋な2色(グレーおよび茶色)がジャージの両面にそれぞれ得られる。
【0060】
染色工程の最後には、仮縫いの際に当てられるパッチ(15)ならびに編み工程中に当てられる裾および袖口の封止が取り除かれる。
【0061】
ジャージが染色槽内で回転する染色工程では、糸がほつれたり穴が空いたりする可能性がある。したがって、衣服の完成度を確認し、長い毛糸を切断し、手作業で整経して穴を繕うといった品質管理が必要である。
【0062】
リバーシブルな衣服なので、リバーシブルではない衣服のようにブランドタグまたは素材/洗濯タグを付けることはできない。このために、
図5に示すように、素材/洗濯タグ(23)が外縁の一辺のみに縫い付けられたブランドタグ(20)が検討された。
【0063】
次にブランドタグ(20)がジャージの袖の袖口(6)の内側に4箇所の手縫い(21)によって取り付けられる。この方法にて、ポケット(22)が袖口(6)とブランドタグ(20)との間に作られる。素材/洗濯タグ(23)は袖口(6)とブランドタグ(20)の間にあるポケット(22)に隠される。素材/洗濯タグ(23)を見るためには、
図5に示されるように、ユーザーはポケット(22)から素材/洗濯タグ(23)を引き出すことができる。
【0064】
本発明の実施形態は、当業者の知見の範囲内において、添付された特許請求に開示された発明の範囲内である限り、多くの変更および修正がされることが可能である。