(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】高い温度及び電圧において向上した性能を有する固体電解キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/028 20060101AFI20220408BHJP
C08G 61/12 20060101ALI20220408BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20220408BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20220408BHJP
H01G 9/07 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
H01G9/028 G
C08G61/12
H01G9/00 290H
H01G9/08 E
H01G9/07
H01G9/00 290A
(21)【出願番号】P 2019541671
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(86)【国際出願番号】 US2017056295
(87)【国際公開番号】W WO2018075329
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-05-11
(32)【優先日】2016-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500047848
【氏名又は名称】キョーセラ・エイブイエックス・コンポーネンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ペトルジレック,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヘル,ミロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ホフィーレク,トマーシュ
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-174948(JP,A)
【文献】特開2013-074032(JP,A)
【文献】特開2012-129531(JP,A)
【文献】特開2013-219362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/028
C08G 61/12
H01G 9/00
H01G 9/08
H01G 9/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ素子を含むキャパシタアセンブリであって、
前記キャパシタ素子は、
バルブメタル化合物を含む多孔質陽極体;
前記陽極体の上に配されている、バルブメタル化合物の酸化物を含む誘電体;
前記誘電体の上に配されている固体電解質であって、予め重合された導電性ポリマー粒子から形成されている、そしてスルホニルイオンを含む少なくとも1つの導電性ポリマー層を前記固体電解質が含む、前記固体電解質;
前記固体電解質の上に配されている、予め重合された導電性ポリマー粒子から形成された1以上の層を含有する外側ポリマー被覆であって、前記外側ポリマー被覆において用いられる予め重合された導電性ポリマー粒子の平均寸法の、前記固体電解質の分散液において用いられる予め重合された導電性ポリマー粒子の平均寸法に対する比率が、約1.5~約30である、前記外側ポリマー被覆;及び
前記誘電体の酸化物に
共有結合しており、スルホニルイオンに結合することができる有機官能性シラン;
を含
み、
前記有機官能性シランが、次の一般式(III):
【化3】
(式中、
R
1
、R
2
、及びR
3
は、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、又はヒドロキシアルキルであり;
R
4
及びR
5
は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルであるか、或いは、N、R
4
、及びR
5
は、1以上の更なる原子と一緒に環構造を形成し;そして
Z
1
及びZ
2
は、独立して有機基である)
を有するジアミノ官能性シランである、
前記キャパシタアセンブリ。
【請求項2】
前記ジアミノ官能性シランが、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン)、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレノキシ)]-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、又はこれらの組合せである、請求項
1に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項3】
前記陽極体がタンタルを含み、前記誘電体が五酸化タンタルを含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項4】
前記導電性ポリマー層が外因性導電性ポリマー及びスルホニル対イオンを含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項5】
前記外因性導電性ポリマーが次式:
【化4】
(式中、
R
7は、線状又は分岐のC
1~C
18アルキル基;C
5~C
12シクロアルキル基;C
6~C
14アリール基;C
7~C
18アラルキル基であり;そして
qは0~8の整数である)
の繰り返し単位を有する、請求項
4に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項6】
前記外因性導電性ポリマーがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項
4に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項7】
前記スルホニル対イオンがポリスチレンスルホン酸又はその塩である、請求項
4に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項8】
前記導電性ポリマー層が、次式:
【化5】
(式中、
Rは(CH
2)
a-O-(CH
2)
bであり;
aは0~10であり;
bは1~18であり;
Zはアニオンであり;
Xはカチオンである)
の繰り返し単位を有する固有導電性ポリマーを含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項9】
前記固有導電性ポリマーが、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸,塩)、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-プロパンスルホン酸,塩)、又はこれらの組合せである、請求項
8に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項10】
前記導電性ポリマー層が、予め重合された導電性ポリマー粒子の分散液から形成される、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項11】
前記固体電解質がin-situ重合された導電性ポリマーを概して含まない、請求項1に記
載のキャパシタアセンブリ。
【請求項12】
前記外側ポリマー被覆が架橋剤を含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項13】
前記陽極体と電気的に接続されている陽極終端;
前記固体電解質と電気的に接続されている陰極終端;及び
前記キャパシタ素子を収容し、前記陽極終端及び前記陰極終端の少なくとも一部を露出した状態にしているハウジング;
を更に含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項14】
前記ハウジングが、前記キャパシタ素子を封入する樹脂材料から形成される、請求項
13に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項15】
前記ハウジングがその中に前記キャパシタ素子が配置される内部空洞を画定し、前記内部空洞が不活性ガスを含む気体雰囲気を有する、請求項
13に記載のキャパシタアセンブリ。
【請求項16】
キャパシタ素子を形成する方法であって、
焼結多孔質陽極体を陽極酸化してバルブメタル化合物の酸化物を含む誘電体を形成する
こと;
有機官能性シラン化合物を含む溶液を前記陽極に施すこと
、ここで、当該有機官能性シラン化合物は、次の一般式(III):
【化3】
(式中、
R
1
、R
2
、及びR
3
は、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、又はヒドロキシアルキルであり;
R
4
及びR
5
は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルであるか、或いは、N、R
4
、及びR
5
は、1以上の更なる原子と一緒に環構造を形成し;そして
Z
1
及びZ
2
は、独立して有機基である)
を有するジアミノ官能性シランであり;
導電性ポリマー粒子及びスルホニル対イオンを含む分散液を施して、導電性ポリマー層を形成すること;
前記導電性ポリマー層の上に配されている、予め重合された導電性ポリマー粒子から形成された外側ポリマー被覆を施すこと、ここで、前記外側ポリマー被覆において用いられる予め重合された導電性ポリマー粒子の平均寸法の、前記分散液において用いられる予め重合された導電性ポリマー粒子の平均寸法に対する比率が、約1.5~約30であり;及び
前記有機官能性シラン化合物を前記誘電体の酸化物に
共有結合させること;
を含む上記方法。
【請求項17】
前記溶液が有機溶媒を含む、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、2016年10月18日の出願日を有する米国仮特許出願62/409,425(その全部を参照として本明細書中に包含する)の出願日の利益を主張する。
固体電解キャパシタ(例えばタンタルキャパシタ)は、通常は、金属粉(例えばタンタル)を金属リード線の周囲にプレスし、プレスした部品を焼結し、焼結した陽極を陽極酸化し、その後、固体電解質を施すことによって製造される。固有導電性(intrinsically conductive)ポリマーは、それらの有利な低い等価直列抵抗(ESR)及び「非燃焼/非発火」故障モードのために、固体電解質としてしばしば用いられる。例えば、かかる電解質は、触媒及びドーパントの存在下における3,4-ジオキシチオフェンモノマー(EDOT)のin-situ化学重合によって形成することができる。しかしながら、in-situ重合されたポリマーを用いる従来のキャパシタは、比較的高いリーク電流(DCL)を有していて、高速スイッチング又は動作電流スパイク中に経験するような高い電圧において故障する傾向がある。これらの問題点を克服する試みにおいて、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホネート)の複合体(PEDOT:PSS)から形成される分散液も用いられている。PEDOT:PSS分散液は幾つかの向上した特性をもたらすことができるが、かかる材料のキャパシタンスは、特に比較的高い電圧にかけた際に、高い温度において大きく低下する傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
したがって、改良された性能を有する固体電解キャパシタに対する必要性が現在存在する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様によれば、キャパシタ素子を含むキャパシタアセンブリが開示される。キャパシタ素子は、バルブメタル化合物を含む多孔質陽極体、陽極体の上に配されている、バルブメタル化合物の酸化物を含む誘電体;及び誘電体の上に配されている固体電解質を含む。固体電解質は、スルホニルイオンを含む少なくとも1つの導電性ポリマー層を含む。更に、キャパシタ素子は、誘電体の酸化物に結合しており、スルホニルイオンに結合することができる有機官能性シランを含む。
【0004】
本発明の他の態様によれば、キャパシタ素子を形成する方法が開示される。この方法は、焼結多孔質陽極体を陽極酸化してバルブメタル化合物の酸化物を含む誘電体を形成すること;有機官能性シラン化合物を含む溶液を陽極に施すこと;導電性ポリマー粒子及びスルホニル対イオンを含む分散液を施して、導電性ポリマー層を形成すること;及び、有機官能性シラン化合物を誘電体の酸化物に結合させること;を含む。
【0005】
本発明の他の特徴及び形態を、下記においてより詳細に示す。
当業者に向けられた、本発明のベストモードを含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面を参照しながら本明細書の残りでより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリの一態様の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリの別の態様の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリの更に別の態様の断面図である。
【
図4】
図4は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリの更に別の態様の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本議論は代表的な態様のみの説明であり、本発明のより広い形態を限定することは意図しておらず、より広い形態は代表的な構成の中で具現化されることが当業者によって理解される。
【0008】
一般的に言うと、本発明は、広範囲の異なる条件下においても良好な電気特性を示すことができるキャパシタアセンブリに関する。より詳しくは、本キャパシタは、バルブメタル化合物(例えばタンタル)を含む多孔質陽極体、陽極体の上に配されていて、バルブメタル化合物の酸化物(例えば五酸化タンタル)を含む誘電体、及び誘電体の上に配されている固体電解質を含むキャパシタ素子を含む。固体電解質は、スルホニルイオンを含む少なくとも1つの導電性ポリマー層を含む。この層は、例えば、それが、スルホニルイオンがドープされた導電性ポリマーの複合体(例えばポリスチレンスルホネート)を含むという点で「外因性(extrinsically)」導電性であってよい。他の態様においては、この層は、導電性ポリマー自体が、ポリマー骨格の一部としてか、又はポリマー骨格に結合した官能基としてスルホニルイオンを含むという点で「固有(intrinsically)」導電性であってよい。導電性ポリマーの性質に関係なく、誘電体の酸化物に結合しており、導電性ポリマー層中に含まれるスルホニルイオンに結合することができる有機官能性シラン化合物も用いられる。理論によって限定されることは意図しないが、これによってキャパシタに複数の利益をもたらすことができると考えられる。例えば、高温において一定の電圧に曝露すると、スルホニルイオンは誘電体に移動する可能性があり、これによりその強度が低下し、したがってより高いリーク電流をもたらすと考えられる。しかしながら、本発明のキャパシタアセンブリにおいては、スルホニルイオンの全部又は一部が有機官能性シラン化合物に結合するようになり、これによってかかるイオンが誘電体中に移動する傾向を減少させることができる。更に、有機官能性シラン化合物を誘電体の酸化物及びスルホニルイオンに結合させることによって、これらの層の界面接着性を向上させることができ、これにより特に高い温度及び電圧にかけた際のキャパシタンスの安定性を向上させることができるとも考えられる。
【0009】
而して、本発明の結果として、得られるキャパシタアセンブリは種々の独特で有益な特性を示すことができる。例えば、本キャパシタアセンブリは、高い温度に曝露した場合であっても優れた電気特性を示すことができる。例えば、本キャパシタアセンブリは、約80℃以上、幾つかの態様においては約100℃~約150℃、幾つかの態様においては約105℃~約130℃(例えば105℃又は125℃)の温度を有する高温雰囲気と接触させて配置することができる。かかる高い温度においても、本キャパシタアセンブリはその湿潤キャパシタンスの高いパーセントを示すことができ、これによりそれが大気湿度の存在下において小さなキャパシタンスの損失及び/又は変動しか有しないようにすることが可能になる。この性能特性は、等式:
湿潤対乾燥キャパシタンス=(乾燥キャパシタンス/湿潤キャパシタンス)×100
によって求められる「湿潤対乾燥キャパシタンスパーセント(wet-to-dry capacitance percentage)」によって定量される。
【0010】
本キャパシタアセンブリは、約50%以上、幾つかの態様においては約60%以上、幾つかの態様においては約70%以上、幾つかの態様においては約80%~100%の湿潤対乾燥キャパシタンスパーセントを示すことができる。乾燥キャパシタンスは、120Hzの周波数において測定して、約30ナノファラド/平方センチメートル(nF/cm2)以上、幾つかの態様においては約100nF/cm2以上、幾つかの態様においては約200~約3,000nF/cm2、幾つかの態様においては約400~約2,000nF/cm2であってよい。キャパシタンスはまた、かかる温度において、約100時間以上、幾つかの態様においては約300時間~約3000時間、幾つかの態様においては約400時間~約2500時間(例えば約500時間)のような相当な時間の間、安定に維持することができる。例えば一態様においては、高温雰囲気(例えば125℃)に約500時間曝露した後のアセンブリのキャパシタンス値の、かかる高温雰囲気に最初に曝露した際のアセンブリのキャパシタンス値に対する比は、約0.7~1.0、幾つかの態様においては約0.75~1.0、幾つかの態様においては約0.80~1.0である。
【0011】
特に、高い電圧を印加した際に、かかる高いキャパシタンス値を維持することができる。例えば、高温雰囲気(例えば125℃)及び定格電圧(最大動作電圧)に曝露した後のアセンブリのキャパシタンス値の、かかる高温雰囲気に曝露した際であるが、定格電圧を印加する前のアセンブリの当初のキャパシタンス値に対する比は、約0.7~1.0、幾つかの態様においては約0.75~1.0、幾つかの態様においては約0.80~1.0である。定格電圧は、例えば約15ボルト以上、幾つかの態様においては約18ボルト以上、幾つかの態様においては約20~約150ボルトであってよい。例えば一態様においては、25ボルトの電圧で高温雰囲気(例えば125℃)に約500時間曝露した後のアセンブリのキャパシタンス値の、かかる高温雰囲気中であるが、電圧を印加する前のアセンブリの当初のキャパシタンス値に対する比を、上述の範囲内にすることができる。本発明者らは、定格電圧が誘電体を形成するのに用いる化成電圧に近づき始めた場合、即ち定格電圧に対する化成電圧の比(化成比(forming ratio))が約2.6以下、幾つかの態様においては約2.5以下、幾つかの態様においては約1.5~約2.3(例えば1.7又は2.1)である場合であっても、キャパシタンスが安定で、上述の範囲内に維持されることを見出した。また、多重電圧パルスを印加した場合にも、高いキャパシタンス値を維持することができる。例えば、高温雰囲気(例えば105℃)において定格電圧(例えば16ボルト)で1000パルス(30秒の荷電)にかけた後のアセンブリのキャパシタンス値と、かかるパルスを印加する前のアセンブリの当初キャパシタンスとの比は、約0.7~1.0、幾つかの態様においては約0.75~1.0、幾つかの態様においては約0.80~1.0である。
【0012】
良好なキャパシタンス安定性を示すのに加えて、本キャパシタアセンブリはまた、上記に記載したように高温の雰囲気(例えば105℃又は125℃)及び高い電圧(例えば20又は35ボルト)に曝露した後に比較的低いリーク電流(DCL)を示すこともできる。例えば、高温の雰囲気(例えば125℃)及び定格電圧(例えば20又は35ボルト)に90秒間曝露した後に、本キャパシタアセンブリは、僅か約50マイクロアンペア(μA)以下、幾つかの態様においては約40μA以下、幾つかの態様においては約20μA以下、幾つかの態様においては約0.1~約10μAのDCLを示すことができる。リーク電流はまた、高温の雰囲気及び定格電圧に、例えば約100時間以上、幾つかの態様においては約300時間~約3000時間、幾つかの態様においては約400時間~約2500時間(例えば約500時間)のような相当な時間曝露した後に、上述の範囲内、又はこれより更に低く維持することもできる。
【0013】
ここで、本発明の種々の態様をより詳細に記載する。
I.キャパシタ素子:
A.陽極体:
キャパシタ素子は、焼結多孔質体上に形成された誘電体を含む陽極を含む。多孔質陽極体は、バルブメタル化合物(すなわち酸化することができる金属)、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、それらの合金、それらの酸化物、それらの窒化物などを含む粉末から形成することができる。タンタルが特に好適である。例えば、粉末は、タンタル塩(例えば、フッ化タンタル酸カリウム(K2TaF7)、フッ化タンタル酸ナトリウム(Na2TaF7)、五塩化タンタル(TaCl5)等)を還元剤と反応させる還元プロセスから形成することができる。還元剤は、液体、気体(例えば水素)、又は固体、例えば金属(例えばナトリウム)、金属合金、又は金属塩の形態で提供することができる。例えば一態様においては、タンタル塩(例えばTaCl5)を約900℃~約2,000℃、幾つかの態様においては約1,000℃~約1,800℃、幾つかの態様においては約1,100℃~約1,600℃の温度で加熱して蒸気を形成することができ、それを気体還元剤(例えば水素)の存在下で還元することができる。かかる還元反応の更なる詳細は、MaeshimaらのWO2014/199480に記載されている。還元後、生成物を冷却、粉砕、及び洗浄して粉末を形成することができる。
【0014】
粉末の比電荷は、通常は、所望の用途に応じて約2,000~約800,000マイクロファラド・ボルト/グラム(μF・V/g)で変動する。例えば、幾つかの態様においては、約100,000~約800,000μF・V/g、幾つかの態様においては約120,000~約700,000μF・V/g、幾つかの態様においては約150,000~約600,000μF・V/gの比電荷を有する高電荷粉末を用いることができる。他の態様においては、約2,000~約100,000μF・V/g、幾つかの態様においては約5,000~約80,000μF・V/g、幾つかの態様においては約10,000~約70,000μF・V/gの比電荷を有する低電荷粉末を用いることができる。当該技術において公知なように、比電荷は、キャパシタンスに用いた陽極酸化電圧をかけ、次にこの積を陽極酸化電極体の重量で割ることによって求めることができる。
【0015】
粉末は、一次粒子を含む自由流動性の微細粉末であってよい。粉末の一次粒子は、一般的に、場合によっては粒子を70秒間の超音波振動にかけた後に、例えばBECKMAN COULTER Corporation製のレーザー粒径分布分析装置(例えばLS-230)を用いて求めて、約5~約250ナノメートル、幾つかの態様においては約10~約200ナノメートル、幾つかの態様においては約20~約150ナノメートルのメジアン径(D50)を有する。一次粒子は、通常は三次元の粒子形状(例えば球状又は角状)を有する。かかる粒子は、通常は比較的低い「アスペクト比」、すなわち粒子の平均直径又は幅を平均厚さで割った値(D/T)を有する。例えば、粒子のアスペクト比は、約4以下、幾つかの態様においては約3以下、幾つかの態様においては約1~約2であってよい。一次粒子に加えて、粉末は、一次粒子の凝集(又は凝塊化)によって形成される二次粒子のような他のタイプの粒子を含んでいてもよい。かかる二次粒子は、約1~約500マイクロメートル、幾つかの態様においては約10~約250マイクロメートルのメジアン径(D50)を有していてよい。
【0016】
粒子の凝集は、粒子を加熱することによるか、及び/又はバインダを用いることによって行うことができる。例えば、凝集は、約0℃~約40℃、幾つかの態様においては約5℃~約35℃、幾つかの態様においては約15℃~約30℃の温度で行うことができる。また好適なバインダとしては、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);セルロースポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルヒドロキシエチルセルロース;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.製のCarbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、及びポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、及びフルオロオレフィンコポリマー;アクリルポリマー、例えばナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)、及び低級アルキルアクリレートとメタクリレートのコポリマー;並びに脂肪酸及びワックス、例えばステアリン酸及び他の石鹸脂肪酸、植物性ワックス、マイクロワックス(精製パラフィン)等を挙げることができる。
【0017】
得られる粉末は、任意の従来の粉末プレス装置を用いて圧縮してペレットを形成することができる。例えば、ダイと1つ又は複数のパンチを含むシングルステーション式圧縮プレス機であるプレス成形機を用いることができる。あるいは、ダイと単一の下方パンチのみを用いるアンビルタイプの圧縮プレス成形機を用いることができる。シングルステーション式圧縮プレス成形機は、シングルアクション、ダブルアクション、浮動ダイ、可動式プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、圧印加工、又はサイジングのような種々の能力を有するカムプレス、トグル/ナックルプレス、及び偏心/クランクプレスのようないくつかの基本的タイプで入手可能である。粉末は、ワイヤ、シート等の形態であってよい陽極リードの周囲に圧縮することができる。リードは、陽極体から縦方向に伸長させることができ、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン等、並びにそれらの導電性酸化物及び/又は窒化物のような任意の導電性材料から形成することができる。リードの接続はまた、他の公知の技術を用いて、例えば、リードを陽極体に溶接するか、或いは形成中(例えば圧縮及び/又は焼結の前)に陽極体内部にそれを埋め込むことによって達成することもできる。
【0018】
バインダは、プレス後にペレットを真空下で一定の温度(例えば約150℃~約500℃)において数分間加熱することによって除去することができる。或いは、バインダは、ペレットを、Bishopらの米国特許6,197,252に記載されているような水溶液と接触させることによって除去することもできる。その後、ペレットを焼結して多孔質の一体部材を形成する。ペレットは、通常は約700℃~約1600℃、幾つかの態様においては約800℃~約1500℃、幾つかの態様においては約900℃~約1200℃の温度で、約5分~約100分間、幾つかの態様においては約8分~約15分間焼結する。これは1以上の工程で行うことができる。所望の場合には、焼結は、酸素原子の陽極への移動を制限する雰囲気中で行うことができる。例えば、焼結は、真空下、不活性ガス下、水素下などの還元雰囲気中で行うことができる。還元雰囲気は、約10トル~約2000トル、幾つかの態様においては約100トル~約1000トル、幾つかの態様においては約100トル~約930トルの圧力であってよい。水素と他の気体(例えばアルゴン又は窒素)の混合物を用いることもできる。
【0019】
B.誘電体:
陽極はまた誘電体によって被覆される。誘電体は、焼結した陽極を陽極酸化して、誘電体層が陽極の上及び/又はその中に形成されるようにすることによって形成することができる。例えば、タンタル(Ta)陽極を陽極酸化して五酸化タンタル(Ta2O5)にすることができる。通常は、陽極酸化は、まず、陽極を電解液中に浸漬することなどによって溶液を陽極に施すことによって行われる。水(例えば脱イオン水)のような溶媒が一般的に用いられる。イオン伝導度を増大させるために、溶媒中で解離してイオンを形成することができる化合物を用いることができる。かかる化合物の例としては、例えば、電解質に関して下記に記載するような酸が挙げられる。例えば、酸(例えばリン酸)は、陽極酸化溶液の約0.01重量%~約5重量%、幾つかの態様においては約0.05重量%~約0.8重量%、幾つかの態様においては約0.1重量%~約0.5重量%を構成することができる。所望の場合には、複数の酸のブレンドを用いることもできる。
【0020】
電流を陽極酸化溶液に流して、誘電体層を形成する。化成電圧の値によって誘電体層の厚さが制御される。例えば、電源は、まず、必要な電圧に到達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電位モードに切り替え、所望の誘電体厚さが陽極の表面全体上に確実に形成されるようにすることができる。勿論、パルス又はステップ定電位法などの他の公知の方法も用いることができる。陽極酸化を行う電圧は、通常は、約4~約250V、幾つかの態様においては約9~約200V、幾つかの態様においては約20~約150Vの範囲である。酸化中は、陽極酸化溶液は昇温温度、例えば約30℃以上、幾つかの態様においては約40℃~約200℃、幾つかの態様においては約50℃~約100℃に維持することができる。陽極酸化は周囲温度以下で実施することもできる。得られる誘電体層は陽極の表面上及びその細孔内に形成することができる。
【0021】
必須ではないが、幾つかの態様においては、誘電体層は、陽極の外表面上に配される第1の部分と陽極の内表面上に配される第2の部分を有するという点において、陽極全体にわたって区別された厚さを有することができる。かかる態様においては、第1の部分は、その厚さが第2の部分の厚さよりも大きくなるように選択的に形成される。しかしながら、誘電体層の厚さは特定の領域内で均一である必要はないことを理解すべきである。外表面に隣接する誘電体層の幾つかの部分は、例えば、実際には内表面における層の幾つかの部分より薄い場合があり、その逆の場合もある。それでもなお、誘電体層は、外表面における層の少なくとも一部が内表面における少なくとも一部よりも大きな厚さを有するように形成することができる。これらの厚さにおける実際の差は特定の用途に応じて変化させることができるが、第2の部分の厚さに対する第1の部分の厚さの比は、通常は約1.2~約40、幾つかの態様においては約1.5~約25、幾つかの態様においては約2~約20である。
【0022】
区別された厚さを有する誘電体層を形成するためには多段階法が一般的に用いられる。このプロセスの各段階において、焼結した陽極を陽極酸化して誘電体層(例えば五酸化タンタル)を形成する。陽極酸化の第1段階中においては、通常は比較的小さい化成電圧、例えば、約1~約90ボルト、幾つかの態様においては約2~約50ボルト、幾つかの態様においては約5~約20ボルトの範囲の化成電圧を用いて、内部領域に関して所望の誘電体厚さが達成されるのを確実にする。その後、焼結体を次にプロセスの第2段階で陽極酸化して、誘電体の厚さを所望レベルに増加させることができる。これは、一般的には、電解液中において、第1段階中において用いられた電圧より高い電圧、例えば約50~約350ボルト、幾つかの態様においては約60~約300ボルト、幾つかの態様においては約70~約200ボルトの範囲の化成電圧で陽極酸化することにより達成される。第1及び/又は第2段階中においては、電解液は、約15℃~約95℃、幾つかの態様においては約20℃~約90℃、幾つかの態様においては約25℃~約85℃の範囲内の温度に維持することができる。
【0023】
陽極酸化プロセスの第1及び第2段階中において用いられる電解液は同じでも又は異なっていてもよい。しかしながら、通常は、誘電体層の外側部分においてより大きな厚さを得ることをより良好に促進することを助けるために、異なる溶液を用いることが望ましい。例えば、相当量の酸化物皮膜が陽極の内表面上に形成されないようにするためには、第2段階において用いられる電解液は、第1段階において用いられる電解液よりも低いイオン伝導度を有することが望ましい可能性がある。この点に関し、第1段階中に用いられる電解液には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸等のような酸性化合物を含ませることができる。かかる電解液は、25℃の温度で求めて、約0.1~約100mS/cm、幾つかの態様においては約0.2~約20mS/cm、幾つかの態様においては約1~約10mS/cmの導電率を有することができる。第2段階中に用いられる電解液は、通常は弱酸の塩を含ませて、ヒドロニウムイオン濃度が、細孔内での電荷通過の結果として細孔内で増大するようにする。イオン輸送又はイオン拡散は、電荷のバランスを取るために必要に応じて、弱酸のアニオンが細孔中に移動するように起こる。その結果、主要導電種(ヒドロニウムイオン)の濃度は、ヒドロニウムイオン、酸アニオン、及び非解離酸の間の平衡が形成される際に減少して、導電不良種が形成される。導電種の濃度の低下は、電解液中での比較的高い電圧降下をもたらし、これにより内部の更なる陽極酸化が妨害され、一方で連続した高導電率の領域における高い化成電圧に対してはより厚い酸化物層が外側に蓄積する。好適な弱酸塩としては、例えば、ホウ酸、ボロン酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、アジピン酸などのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩(例えばナトリウム、カリウムなど)を挙げることができる。特に好適な塩としては、四ホウ酸ナトリウム及び五ホウ酸アンモニウムが挙げられる。かかる電解液は、通常は、25℃の温度で求めて約0.1~約20mS/cm、幾つかの態様においては約0.5~約10mS/cm、幾つかの態様においては約1~約5mS/cmの導電率を有する。
【0024】
所望の場合には、所望の誘電体厚さを達成するために、陽極酸化の各段階を1サイクル又は複数サイクル繰り返すことができる。更に、陽極は、第1及び/又は第2段階の後に、電解液を除去するために他の溶媒(例えば水)ですすぐか又は洗浄することもできる。
【0025】
C.有機官能性シラン化合物:
上記で示したように、また、誘電体の酸化物(例えば五酸化タンタル)及び導電性ポリマー層中に存在するスルホニルイオンとの結合を形成することができる有機官能性シラン化合物も誘電体に施す。通常は、有機官能性シラン化合物は、次の一般式(I):
【0026】
【0027】
(式中、
R1、R2、及びR3は、独立して、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル等)、アルケニル(例えば、エテニル、プロペニル等)、アリール(例えばフェニル)、ヘテロアリール(例えばピリジル)、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル、シクロブチル等)、ヘテロシクリル(例えばピペリジニル)、ハロ(例えばフルオロ)、ハロアルキル(例えばフルオロアルキル)、又はヒドロキシアルキル(例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル等)であり;
Xは、アミノ官能基、イオウ官能基等のような、スルホニルイオンに結合することができる官能基である。通常は、そのような官能基は有機官能基である。)
を有する。
【0028】
幾つかの態様においては、R1、R2、及びR3の少なくとも1つはヒドロキシアルキル(例えばOCH3)であってよい。例えば、R1、R2、及びR3のそれぞれはヒドロキシアルキルであってよい。しかしながら他の態様においては、R1はアルキル(例えばCH3)であってよく、R2及びR3はヒドロキシアルキル(例えばOCH3)であってよい。好適なアミノ官能性有機シラン化合物としては、例えば次の一般式(II):
【0029】
【0030】
(式中、
R1、R2、及びR3は上記に規定した通りであり;
R4及びR5は、独立して水素、アルキル、独立してアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシアルキルであるか、或いは、N、R4、及びR5は、1以上の更なる原子と一緒に環構造(例えば、
ヘテロアリール又はヘテロシクリル)を形成し;そして
Zは、窒素原子をケイ素原子に連結する有機基、例えばアルキル(例えば、エチル又はプロピル)、アリール(例えばフェニル)等である)
を有するモノアミン官能性シランを挙げることができる。
【0031】
モノアミノ官能性有機シラン化合物の例としては、例えば、第1級アミン化合物(例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2-(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロール、3-(m-アミノフェノキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン等);第2級アミン化合物(例えば、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、n-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノエチル)メチルジエトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン等);第3級アミン化合物(例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、(N,N-ジエチル-3-アミノプロピル)トリメトキシシラン等);並びにこれらの組合せを挙げることができる。更に、所望の場合には、窒素原子に更なる基を結合させて、化合物が第4級アミン官能性シラン化合物になるようにすることができる。
【0032】
また、次の一般式(III):
【0033】
【0034】
(式中、
R1、R2、R3、R4、及びR5は、上記に規定した通りであり;そして
Z1は、窒素原子をケイ素原子に連結する有機基であり、Z2は、複数の窒素原子を連結する有機基、例えばアルキル(例えばエチル又はプロピル)、アリール(例えばフェニル)等である)
を有するもののようなジアミノ官能性シラン化合物を用いることもできる。かかるジアミノ官能性シラン化合物の例としては、例えば、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン)、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレノキシ)]-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン等、並びにこれらの組合せを挙げることができる。また、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンのようなトリアミノ官能性化合物を用いることもできる。
【0035】
勿論、上記に示したように、スルホニルイオンとの結合を形成することができる他の官能基を用いることもできる。例えば、幾つかの態様においては、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2,2-ジメトキシ-1-チア-2-シラシクロペンタン、11-メルカプトウンデシルトリメトキシシラン、S-(オクタノイル)メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-(2-ピリジルエチル)チオプロピルトリメトキシシラン、2-(4-ピリドエチル)チオプロピルトリメトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン、2-(3-トリメトキシシリルプロピルチオ)チオフェン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[m-(2-トリエトキシシリルエチル)トリル]ポリスルフィド、ビス[3-(トリエトキシシリル)プロピル]チオ尿素等、並びにこれらの組合せのようなイオウ官能性シラン化合物を用いることができる。
【0036】
用いる特定の化合物に関係なく、有機官能性シラン化合物は、当該技術において公知の技術を用いて誘電体の酸化物に結合させることができる。例えば、有機シラン化合物は、1以上の基(例えば、式(I)におけるR1、R2、及び/又はR3)をヒドロキシル基に転化する加水分解反応にかけることができる。これらのヒドロキシル基は、次に縮合反応によって誘電体酸化物と反応させて、有機官能性シラン化合物が誘電体にグラフトするか又は他の形態で結合するようにする。
【0037】
反応を開始するためには、有機官能性シラン化合物をまず溶媒中に溶解して溶液を形成することができる。炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、及びキシレン);エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、及びジエチルエーテル);ケトン(例えばメチルエチルケトン);ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルム、塩化メチレン、及び1,2-ジクロロエタン);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びイソブチルアルコール)など、並びに任意の上記のものの組合せのような有機溶媒が特に好適である。アルコールが本発明において用いるのに特に好適である。溶液中の有機溶媒の濃度は変化させることができるが、通常は溶液の約70重量%~約99重量%、幾つかの態様においては約80重量%~約98重量%、幾つかの態様においては約85重量%~約97重量%の量で用いる。有機官能性シラン化合物はまた、溶液の約1重量%~約30重量%、幾つかの態様においては約2重量%~約20重量%、幾つかの態様においては約3重量%~約15重量%を構成することができる。形成されたら、次に、浸漬、液滴被覆、スピン被覆、噴霧等などによる任意の種々の公知の技術を用いて溶液を誘電体上に被覆する。次に、溶液を加熱して溶媒を除去して、有機官能性シラン化合物を誘電体に結合させることができる。加熱は、25℃~約350℃、幾つかの態様においては約30℃~約325℃、幾つかの態様においては約50℃~約300℃の温度で行うことができる。また、加熱のための時間は変化させることができるが、通常は約1~約100分間、幾つかの態様においては約2~約60分間、幾つかの態様においては約4~約50分間である。溶媒を除去したら、酸素原子によって隣接する複数のケイ素原子が連結され、またケイ素原子を誘電体に共有結合するシランネットワークを形成することができる。界面において、シランはそれ自体と、及び誘電体とも反応して、層と架橋及び機械的に連結する。
【0038】
上記で議論したように、シラン化合物の官能基はまた、次に有機官能性シラン化合物に施す導電性ポリマー層中に存在するスルホニルイオンに結合するのにも利用できる。結合の性質は、用いる特定の化合物に応じて、共有結合、イオン結合、水素結合等のように変化する可能性がある。例えば、シラン化合物のアミノ官能基(NH2)を水素化して官能基が正電荷を帯びるようにする(NH3
+)ことができる。この水素化シラン化合物は、次にスルホネートイオン(SO3
-)のような導電性ポリマー層中の負電荷スルホニル対イオンとイオン結合を形成することができる。有機官能性シラン化合物との間の結合は、キャパシタの形成中か、又は更には特定の使用条件又は貯蔵条件に応じてそれが形成された後に起こり得る。例えば幾つかの態様においては、シラン化合物とスルホニル基との間の結合は、高い温度及び/又は電圧のような特定の条件中にのみ起こり得る。
【0039】
D.固体電解質:
上記に示したように、固体電解質は誘電体及び有機官能性シラン化合物の上に配され、一般にキャパシタアセンブリのための陰極として機能する。固体電解質は、外因性導電性ポリマー及び/又は固有導電性ポリマーを含む1以上の層を含む。幾つかの態様においては、次式(IV):
【0040】
【0041】
(式中、
R7は、線状又は分岐のC1~C18アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-若しくはイソプロピル、n-、イソ-、sec-、又はtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、n-オクタデシル等);C5~C12シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等);C6~C14アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等);C7~C18アラルキル基(例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリル、メシチル等)であり;
qは、0~8、幾つかの態様においては0~2、一態様においては0の整数である)
の繰り返し単位を有する「外因性」導電性ポリマーを固体電解質中で用いることができる。1つの特定の態様においては、「q」は0であり、ポリマーはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である。かかるポリマーを形成するのに好適なモノマーの1つの商業的に好適な例は、HeraeusからClevios(登録商標)Mの名称で入手できる3,4-エチレンジオキシチオフェンである。
【0042】
式(IV)のポリマーは、一般に、それらが通常はポリマーに共有結合していない別の対イオンの存在を必要とする点で「外因性」導電性であるとみなされる。上記に示したように、対イオンは一般にスルホニルイオンであり、これはモノマー又はポリマーアニオンの形態で与えることができる。ポリマーアニオンは、例えば、ポリマースルホン酸(その塩を含む)、例えばポリスチレンスルホン酸又はスルホネート(PSS)、ポリビニルスルホン酸等であってよい。酸はまた、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と、アクリル酸エステル及びスチレンのような他の重合性モノマーとのコポリマーのようなコポリマーであってもよい。更に、好適なモノマーアニオンとしては、例えば、C1~C20アルカンスルホン酸又はその塩(例えばドデカンスルホン酸);脂肪族ペルフルオロスルホン酸又はその塩(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸);場合によってC1~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸又はその塩(例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸);シクロアルカンスルホン酸又はその塩(例えばカンファースルホン酸、又はテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、又はヘキサクロロアンチモネート);などのアニオンが挙げられる。PSSが特に好適なポリマーアニオンである。
【0043】
また、ポリマーに共有結合しているスルホネートによって少なくとも部分的に補償(compensate)されている主鎖上に配置されている正電荷を有する固有導電性ポリマーを用いることもできる。例えば、好適な固有導電性ポリマーの1つの例は、次式(V):
【0044】
【0045】
(式中、
Rは(CH2)a-O-(CH2)bであり;
aは、0~10、幾つかの態様においては0~6、幾つかの態様においては1~4(例えば1)であり;
bは、1~18、幾つかの態様においては1~10、幾つかの態様においては2~6(例えば、2、3、4、又は5)であり;
Zは、SO3
-、CF3SO3
-等のようなスルホニルアニオンであり;
Xは、水素、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム、又はカリウム)、アンモニウム等のようなカチオンである)
の繰り返し単位を有していてよい。
【0046】
1つの特定の態様においては、式(V)におけるZはSO3であって、固有導電性ポリマーは次式(VI):
【0047】
【0048】
(式中、R及びXは上記に規定した通りである)
の繰り返し単位を含む。式(V)又は(VI)において、aは好ましくは1であり、bは好ましくは3又は4である。更に、Xは好ましくはナトリウム又はカリウムである。
【0049】
所望の場合には、ポリマーは他のタイプの繰り返し単位を含むコポリマーであってよい。かかる態様においては、式(VI)の繰り返し単位は、通常はコポリマー中の繰り返し単位の全量の約50モル%以上、幾つかの態様においては約75モル%~約99モル%、幾つかの態様においては約85モル%~約95モル%を構成する。勿論、ポリマーは、100モル%の式(II)の繰り返し単位を含む点でホモポリマーであってもよい。かかるホモポリマーの具体例としては、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸,塩)、及びポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-プロパンスルホン酸,塩)が挙げられる。
【0050】
種々の方法を用いて導電性ポリマー層を形成することができる。例えば、モノマーを酸化触媒の存在下で化学重合することによって、in-situ重合された層を形成することができる。酸化触媒は、通常は鉄(III)、銅(II)、クロム(VI)、セリウム(IV)、マンガン(IV)、マンガン(VII)、又はルテニウム(III)カチオン等のような遷移金属カチオンを含む。また、導電性ポリマーに過剰の電荷を与えてポリマーの導電性を安定化するために、ドーパントを用いることもできる。ドーパントは、通常はスルホニルアニオンを含む。幾つかの態様においては、酸化触媒は、カチオン(例えば遷移金属)及びスルホニルアニオンを含む点で触媒機能及びドーピング機能の両方を有する。例えば、酸化触媒は、鉄(III)カチオンを含む遷移金属塩、例えば鉄(III)ハロゲン化物(例えばFeCl3)、又は他の無機酸の鉄(III)塩、例えばFe(ClO4)3又はFe2(SO4)3、並びに有機酸及び無機スルホン酸の鉄(III)塩であってよい。無機スルホン酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C1~C20アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩(例えば硫酸ラウリルの鉄(III)塩)が挙げられる。更に、有機スルホン酸の鉄(III)塩の例としては、例えば、C1~C20アルカンスルホン酸(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はドデカンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸)の鉄(III)塩;場合によってC1~C20アルキル基によって置換されている芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸)の鉄(III)塩;シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸)の鉄(III)塩;などが挙げられる。これらの上述の鉄(III)塩の混合物を用いることもできる。鉄(III)-p-トルエンスルホネート、鉄(III)-o-トルエンスルホネート、及びこれらの混合物が特に好適である。鉄(III)-p-トルエンスルホネートの1つの商業的に好適な例は、Heraeus CleviosからClevios(登録商標)Cの名称で入手できる。
【0051】
酸化触媒及びモノマーは、逐次又は一緒のいずれかで施して重合反応を開始させることができる。これらの成分を施すための好適な適用技術としては、スクリーン印刷、浸漬、電気泳動被覆、及び噴霧が挙げられる。一例として、モノマーをまず酸化触媒と混合して前駆体溶液を形成することができる。混合物が形成されたら、それを陽極部品に施し、次に重合させて、導電性被覆が表面上に形成されるようにすることができる。或いは、酸化触媒及びモノマーを順次施すことができる。例えば一態様においては、酸化触媒を有機溶媒(例えばブタノール)中に溶解し、次に浸漬溶液として施す。次に、陽極部品を乾燥してそれから溶媒を除去することができる。その後、モノマーを含む溶液中に部品を浸漬することができる。これとは関係なく、重合は、通常は、用いる酸化剤及び所望の反応時間に応じて、約-10℃~約250℃、幾つかの態様においては約0℃~約200℃の温度で行う。上記に記載したような好適な重合技術は、Bilerの米国特許7,515,396により詳細に記載されている。1つ又は複数のかかる導電性被覆を施すための更に他の方法は、Sakataらの米国特許5,457,862、Sakataらの米国特許5,473,503、Sakataらの米国特許5,729,428、及びKudohらの米国特許5,812,367に記載されている。
【0052】
in-situの適用に加えて、導電性ポリマーはまた、導電性ポリマー粒子の分散液の形態で施すこともできる。分散液を用いる1つの利益は、これによってin-situ重合中に生成する、イオン移動のために高電界下で絶縁破壊を引き起こす可能性があるイオン種(例えばFe2+又はFe3+)の存在を最小にすることができることである。而して、導電性ポリマーをin-situ重合によるのではなく分散液として施すことによって、得られるキャパシタは比較的高い「絶縁破壊電圧」を示すことができる。陽極の良好な含侵を可能にするためには、分散液中で用いる粒子は、通常は、約1~約150ナノメートル、幾つかの態様においては約2~約50ナノメートル、幾つかの態様においては約5~約40ナノメートルの平均径(例えば直径)のような小さい寸法を有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザー回折等のような公知の技術を用いて求めることができる。更に、粒子の形状を変化させることができる。例えば1つの特定の態様においては、粒子は球状の形状である。しかしながら、プレート、ロッド、ディスク、バー、チューブ、不規則形状等のような他の形状も本発明によって意図されることを理解すべきである。分散液中の粒子の濃度は、分散液の所望の粘度、及び分散液をキャパシタに施す特定の方法に応じて変化させることができる。しかしながら、通常は、粒子は、分散液の約0.1~約10重量%、幾つかの態様においては約0.4~5重量%、幾つかの態様においては約0.5~約4重量%を構成する。
【0053】
分散液にはまた、得られる固体電解質の全体的な特性を向上させるための1以上の成分を含ませることもできる。例えば、分散液にバインダーを含ませて、ポリマー層の接着性を更に高め、また分散液内における粒子の安定性も増加させることができる。バインダーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、シリコーン樹脂又はセルロースのような有機的性質のものであってよい。バインダーの接着能力を増大させるために架橋剤を用いることもできる。かかる架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート又は架橋性ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレート、又はポリオレフィンを挙げることができ、その後の架橋を含めることができる。また、層を陽極に施す能力を促進させるために、分散剤を用いることもできる。好適な分散剤としては、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、及びブタノール)、脂肪族ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、脂肪族カルボン酸エステル(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えばアセトニトリル)、脂肪族スルホキシド及びスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン)、脂肪族カルボン酸アミド(例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド)、脂肪族及び芳香脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びアニソール)、水、及び任意の上記の溶媒の混合物のような溶媒が挙げられる。特に好適な分散剤は水である。
【0054】
上述したものに加えて、更に他の成分を分散液中で用いることもできる。例えば、約10ナノメートル~約100マイクロメートル、幾つかの態様においては約50ナノメートル~約50マイクロメートル、幾つかの態様においては約100ナノメートル~約30マイクロメートルの寸法を有する通常のフィラーを用いることができる。かかるフィラーの例としては、炭酸カルシウム、シリケート、シリカ、硫酸カルシウム又はバリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維又はガラス球、木粉、セルロース粉末、カーボンブラック、導電性ポリマー等が挙げられる。フィラーは、粉末形態で分散液中に導入することができるが、繊維のような他の形態で存在させることもできる。
【0055】
イオン性又は非イオン性界面活性剤のような表面活性物質を分散液中で用いることもできる。更に、有機官能性シラン又はそれらの加水分解物、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はオクチルトリエトキシシランのような接着剤を用いることができる。分散液にはまた、エーテル基含有化合物(例えばテトラヒドロフラン)、ラクトン基含有化合物(例えば、γ-ブチロラクトン又はγ-バレロラクトン)、アミド又はラクタム基含有化合物(例えば、カプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、又はピロリドン)、スルホン及びスルホキシド(例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)又はジメチルスルホキシド(DMSO))、糖又は糖誘導体(例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、又はラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、フラン誘導体(例えば、2-フランカルボン酸又は3-フランカルボン酸)、アルコール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ-又はトリエチレングリコール)のような、導電性を増加させる添加剤を含ませることもできる。
【0056】
所望の場合には、ヒドロキシル官能性非イオン性ポリマーを、固体電解質中において用いることもできる。「ヒドロキシ官能性」という用語は、一般的に、化合物が少なくとも一つのヒドロキシル官能基を含むか、又は溶媒の存在下でかかる官能基を有することができることを意味する。理論によって限定することは意図しないが、一定の分子量を有するヒドロキシ官能性ポリマーを用いることによって、高電圧での化学分解の可能性を最小にすることができると考えられる。例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーの分子量は、約100~10,000グラム/モル、幾つかの態様においては約200~2,000グラム/モル、幾つかの態様においては約300~約1,200グラム/モル、幾つかの態様においては約400~約800グラム/モルであってよい。
【0057】
一般的に、任意の種々のヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーをこの目的のために用いることができる。例えば一態様においては、ヒドロキシ官能性ポリマーはポリアルキレンエーテルである。ポリアルキレンエーテルとしては、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエピクロロヒドリン等)、ポリオキセタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトンなどを挙げることができる。ポリアルキレンエーテルは、通常は、末端ヒドロキシ基を有する主として線状の非イオン性ポリマーである。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン)が特に好適であり、これらはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はテトラヒドロフランの水への重付加によって製造される。ポリアルキレンエーテルは、ジオール又はポリオールから重縮合反応によって製造することができる。ジオール成分は、特に、5~36個の炭素原子を含む飽和又は不飽和で、分岐又は非分岐の脂肪族ジヒドロキシ化合物、又は芳香族ジヒドロキシ化合物、例えばペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス-(ヒドロキシメチル)-シクロヘキサン、ビスフェノールA、二量体ジオール、水素化二量体ジオール、又は更には上記のジオールの混合物から選択することができる。更に、例えば、グリセロール、ジ-及びポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、又はソルビトールなどの多価アルコールも重合反応において用いることができる。
【0058】
上述のものに加えて、他のヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーも本発明において用いることができる。かかるポリマーの幾つかの例としては、例えば、エトキシル化アルキルフェノール;エトキシル化又はプロポキシル化C6~C24脂肪アルコール;一般式:CH3-(CH2)10-16-(O-C2H4)1-25-OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル);一般式:CH3-(CH2)10-16-(O-C3H6)1-25-OHを有するポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;次の一般式:C8H17-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OHを有するポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル(例えばTriton(登録商標)X-100);次の一般式:C9H19-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル(例えばノノキシノール-9);C8-C24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエステル、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、PEG-20メチルグルコースジステアレート、PEG-20メチルグルコースセスキステアレート、PEG-80ヒマシ油、及びPEG-20ヒマシ油、PEG-3ヒマシ油、PEG-600ジオレエート、及びPEG-400ジオレエート)、及びポリオキシエチレングリセロールアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン-23グリセロールラウレート、及びポリオキシエチレン-20グリセロールステアレート);C8~C24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエーテル(例えば、ポリオキシエチレン-10セチルエーテル、ポリオキシエチレン-10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン-20セチルエーテル、ポリオキシエチレン-10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン-20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン-20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン-15トリデシルエーテル、及びポリオキシエチレン-6トリデシルエーテル);ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(例えばPoloxamers);など、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
ヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーは、種々の異なる方法で固体電解質中に導入することができる。例えば幾つかの態様においては、非イオン性ポリマーを単に導電性ポリマーの分散液中に導入することができる。かかる態様においては、層中における非イオン性ポリマーの濃度は、約1重量%~約50重量%、幾つかの態様においては約5重量%~約40重量%、幾つかの態様においては約10重量%~約30重量%であってよい。しかしながら、他の態様においては非イオン性ポリマーは、1つ又は複数の当初の外側層が形成された後に施すことができる。かかる態様においては、非イオン性ポリマーを施すために用いる技術は変化させることができる。例えば、非イオン性ポリマーは、含浸、浸漬、流し込み、ドリッピング、注入、噴霧、展開、塗装、又は印刷、例えばインクジェット若しくはスクリーン印刷のような種々の方法を用いて、液体溶液の形態で施すことができる。水、アルコール、又はこれらの混合物のような当業者に公知の溶媒を溶液中で用いることができる。かかる溶液中における非イオン性ポリマーの濃度は、通常は、溶液の約5重量%~約95重量%、幾つかの態様においては約10重量%~約70重量%、幾つかの態様においては約15重量%~約50重量%の範囲である。所望の場合には、かかる溶液は導電性ポリマーを概して含んでいなくてよい。例えば、導電性ポリマーは、溶液の約2重量%以下、幾つかの態様においては約1重量%以下、幾つかの態様においては約0.5重量%以下を構成することができる。
【0060】
分散液は、スピン被覆、含浸、流し込み、滴下適用、注入、噴霧、ドクターブレード塗布、ブラシ塗布、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷)、又は浸漬などによる種々の公知の技術を用いて施すことができる。分散液の粘度は、通常は、約0.1~約100,000mPas(100s-1の剪断速度で測定)、幾つかの態様においては約0.5~約10,000mPas、幾つかの態様においては約1~約1,500mPas、幾つかの態様においては約5~約1000mPasである。
【0061】
D.外側ポリマー被覆:
また、固体電解質の上に配される外側ポリマー被覆を施すこともできる。外側ポリマー被覆は、一般に上記に記載の予め重合された導電性ポリマー粒子(例えば、外因性導電性ポリマー粒子の分散液)から形成される1以上の層を含む。外側被覆は、キャパシタ体のエッジ領域中に更に浸透して、誘電体に対する接着を増加させて、より機械的に堅牢な部品を与えることができ、これにより等価直列抵抗及びリーク電流を減少させることができる。一般に、陽極体の内部に含浸させるのではなく、エッジの被覆度を向上させることを意図しているので、外側被覆において用いられる粒子は、通常は固体電解質中において用いられるものよりも大きな寸法を有する。例えば、固体電解質の任意の分散液において用いられる粒子の平均寸法に対する、外側ポリマー被覆において用いられる粒子の平均寸法の比率は、通常は約1.5~約30、幾つかの態様においては約2~約20、幾つかの態様においては約5~約15である。例えば、外側被覆の分散液中で用いられる粒子は、約80~約500ナノメートル、幾つかの態様においては約90~約250ナノメートル、幾つかの態様においては約100~約200ナノメートルの平均寸法を有していてよい。
【0062】
所望の場合には、外側ポリマー被覆において架橋剤を用いて、固体電解質に対する接着度を増大させることができる。通常は、架橋剤は外側被覆において用いる分散液を施す前に施す。好適な架橋剤は、例えば、Merkerらの米国特許公開2007/0064376に記載されており、例えば、アミン(例えば、ジアミン、トリアミン、オリゴマーアミン、ポリアミン等);多価金属カチオン、例えば、Mg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Ba、Ti、Co、Ni、Cu、Ru、Ce、又はZnの塩又は化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物等が挙げられる。特に好適な例としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ブタンジアミン等、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0063】
架橋剤は、通常は、そのpHが25℃において求めて1~10、幾つかの態様においては2~7、幾つかの態様においては3~6である溶液又は分散液から施される。酸性化合物を用いて所望のpHレベルの達成を助けることができる。架橋剤のための溶媒又は分散剤の例としては、水、又は有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、カルボン酸エステル等が挙げられる。架橋剤は、スピン被覆、含浸、流延、滴下適用、噴霧適用、蒸着、スパッタリング、昇華、ナイフ被覆、塗装又は印刷、例えばインクジェット、スクリーン、又はパッド印刷のような任意の公知のプロセスによってキャパシタ体に施すことができる。施したら、ポリマー分散液を施す前に架橋剤を乾燥することができる。次に、所望の厚さが達成されるまでこのプロセスを繰り返すことができる。例えば、架橋剤及び分散液の層を含む外側ポリマー被覆全体の全厚さは、約1~約50μm、幾つかの態様においては約2~約40μm、幾つかの態様においては約5~約20μmの範囲であってよい。
【0064】
E.他の随意的な構成要素:
所望の場合には、キャパシタ素子に、当該技術において公知の他の層を含ませることもできる。例えば、場合によっては、誘電体と固体電解質の間に、比較的絶縁性の樹脂材料(天然又は合成)から製造されるもののような接着剤層を形成することができる。この層は、有機官能性シラン化合物の前、その後、又はそれと組み合わせて施すことができる。樹脂材料は、約10Ω・cmより高く、幾つかの態様においては約100Ω・cmより高く、幾つかの態様においては約1,000Ω・cmより高く、幾つかの態様においては約1×105Ω・cmより高く、幾つかの態様においては約1×1010Ω・cmより高い比抵抗を有していてよい。本発明において用いることができる幾つかの樹脂材料としては、ポリウレタン、ポリスチレン、不飽和又は飽和脂肪酸のエステル(例えばグリセリド)などが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、好適な脂肪酸のエステルとしては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アロイリット酸、シェロール酸などのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの脂肪酸のエステルは、得られた皮膜を迅速に重合して安定な層にすることを可能にする「乾性油」を形成させるために比較的複雑な組合せで用いる場合に特に有用であることが分かっている。かかる乾性油としては、それぞれ1、2、及び3個のエステル化された脂肪アシル残基を有するグリセロール骨格を有するモノ-、ジ-、及び/又はトリ-グリセリドを挙げることができる。例えば、用いることができる幾つかの好適な乾性油としては、オリーブ油、アマニ油、ヒマシ油、キリ油、大豆油、及びセラックが挙げられるが、これらに限定されない。これら及び他の接着剤層材料は、Fifeらの米国特許第6,674,635(その全部を全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)においてより詳細に記載されている。
【0065】
所望の場合には、部品にそれぞれ炭素層(例えばグラファイト)及び銀層を施すこともできる。銀被覆は、例えば、キャパシタのためのはんだ付け可能な導体、接触層、及び/又は電荷収集体として機能させることができ、炭素被覆は、銀被覆と固体電解質との接触を制限することができる。かかる被覆は固体電解質の一部又は全部を覆うことができる。
【0066】
II.終端(termination):
形成されたら、特に表面実装用途において用いる場合には、キャパシタ素子に終端を設けることができる。例えば、キャパシタアセンブリに、キャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続される陽極終端と、キャパシタ素子の陰極が電気的に接続される陰極終端を含ませることができる。導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びこれらの合金)のような任意の導電性材料を用いて終端を形成することができる。特に好適な導電性金属としては、例えば、銅、銅合金(例えば、銅-ジルコニウム、銅-マグネシウム、銅-亜鉛、又は銅-鉄)、ニッケル、及びニッケル合金(例えばニッケル-鉄)が挙げられる。終端の厚さは、一般的にキャパシタの厚さを最小にするように選択される。例えば、終端の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの態様においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.07~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。一つの代表的な導電性材料は、Wieland(ドイツ)から入手できる銅-鉄合金の金属プレートである。所望の場合には、終端の表面は、当該技術において公知なように、最終部品を回路基板へ実装することができるのを確実にするために、ニッケル、銀、金、スズ等で電気めっきすることができる。一つの特定の態様においては、終端の両方の面をそれぞれニッケル及び銀フラッシュでめっきし、一方で、実装面もスズはんだ層でめっきする。
【0067】
終端は、当該技術において公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。例えば一態様においては、陰極終端と陽極終端を画定するリードフレームを与えることができる。電解キャパシタ素子をリードフレームに取り付けるためには、まず導電性接着剤を陰極終端の表面に施すことができる。導電性接着剤には、例えば、樹脂組成物内に含まれる導電性金属粒子を含ませることができる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマス等であってよい。樹脂組成物には、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及び化合物(例えばシラン化合物)を含ませることができる。好適な導電性接着剤は、Osakoらの米国特許出願公開2006/0038304に記載されている。任意の種々の技術を用いて、導電性接着剤を陰極終端に施すことができる。例えば、それらの実用上及び費用節約上の利益のために印刷技術を用いることができる。陽極リードも、機械的溶接、レーザー溶接、導電性接着剤等のような当該技術において公知の任意の技術を用いて陽極終端に電気的に接続することができる。陽極リードを陽極終端に電気的に接続したら、次に導電性接着剤を硬化させ、電解キャパシタ素子が陰極終端へ適切に接着することを確実にすることができる。
【0068】
III.ハウジング:
種々の環境中で良好な電気的性能を示す本キャパシタアセンブリの能力のために、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止する必要はない。それでも、幾つかの態様においては、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止するのが望ましい可能性がある。例えば一態様においては、キャパシタ素子は、不活性ガスを含む気体雰囲気の存在下でハウジング内に気密封止して、それによってキャパシタ素子の固体電解質に供給される湿分の量を更に制限することができる。
【0069】
キャパシタ素子は種々の方法でハウジング内に封止することができる。例えば幾つかの態様においては、キャパシタ素子をケース内に収容することができ、次にこれに、硬化させて硬化したハウジングを形成することができる熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)のような樹脂材料を充填することができる。かかる樹脂の例としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂はまた特に好適である。光開始剤、粘度調整剤、懸濁助剤、顔料、応力低減剤、非導電性フィラー、安定剤等のような更に他の添加剤を用いることもできる。例えば、非導電性フィラーとしては、無機酸化物粒子、例えばシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、ゼオライト、シリケート、クレイ(例えばスメクタイトクレイ)等、及び複合材料(例えばアルミナ被覆シリカ粒子)、並びにこれらの混合物を挙げることができる。これとは関係なく、陽極及び陰極終端の少なくとも一部が回路基板上に実装するために露出されるように、樹脂材料でキャパシタ素子を包囲及び封入することができる。このようにして封入した場合には、キャパシタ素子と樹脂材料は一体のキャパシタアセンブリを形成する。
【0070】
勿論、別の態様においては、キャパシタ素子を離隔して別個の状態でハウジング内に収容することが望ましい可能性がある。このようにすると、ハウジングの雰囲気を気体状にして、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、クリプトン、ラドンなど、並びにこれらの混合物のような少なくとも1種類の不活性ガスを含ませることができる。通常は、不活性ガスは、ハウジング内の雰囲気の大部分、例えば、雰囲気の約50重量%~100重量%、幾つかの態様においては約75重量%~100重量%、幾つかの態様においては約90重量%~約99重量%を構成する。所望の場合には、二酸化炭素、酸素、水蒸気等のような比較的少量の非不活性ガスを用いることもできる。しかしながら、かかる場合においては、非不活性ガスは、通常はハウジング内の雰囲気の15重量%以下、幾つかの態様においては10重量%以下、幾つかの態様においては約5重量%以下、幾つかの態様においては約1重量%以下、幾つかの態様においては約0.01重量%~約1重量%を構成する。
【0071】
金属、プラスチック、セラミックなどのような任意の種々の異なる材料を用いてハウジングを形成することができる。例えば一態様においては、ハウジングは、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ニッケル、ハフニウム、チタン、銅、銀、鋼(例えばステンレス)、これらの合金(例えば導電性酸化物)、これらの複合材料(例えば導電性酸化物で被覆された金属)などのような金属の1以上の層を含む。他の態様においては、ハウジングに、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ガラス等、並びにこれらの組合せのようなセラミック材料の1以上の層を含ませることができる。
【0072】
ハウジングは、円筒形、D字形、長方形、三角形、角柱形等のような任意の所望の形状を有していてよい。例えば
図1を参照すると、ハウジング122とキャパシタ素子120を含むキャパシタアセンブリ100の一態様が示されている。この特定の態様においては、ハウジング122は概して長方形である。通常は、ハウジング及びキャパシタ素子は、キャパシタ素子を内部空洞内に容易に収容することができるように同じか又は類似の形状を有する。例えば示される態様においては、キャパシタ素子120及びハウジング122の両方とも概して長方形の形状を有している。
【0073】
所望の場合には、本発明のキャパシタアセンブリは、比較的高い体積効率を示すことができる。かかる高い効率を促進するために、キャパシタ素子は、通常は、ハウジングの内部空洞の容積の相当部分を占める。例えば、キャパシタ素子は、ハウジングの内部空洞の約30体積%以上、幾つかの態様においては約50体積%以上、幾つかの態様においては約60体積%以上、幾つかの態様においては約70体積%以上、幾つかの態様においては約80体積%~約98体積%、幾つかの態様においては約85体積%~約97体積%を占めることができる。この目的のために、キャパシタ素子の寸法と、ハウジングによって画定される内部空洞の寸法との間の差は通常は比較的小さい。
【0074】
例えば
図1を参照すると、キャパシタ素子120は、ハウジング122によって画定される内部空洞126の長さと比較的同等の長さ(陽極リード6の長さを除く)を有していてよい。例えば、内部空洞の長さに対する陽極の長さの比は、約0.40~1.00、幾つかの態様においては約0.50~約0.99、幾つかの態様においては約0.60~約0.99、幾つかの態様においては約0.70~約0.98の範囲である。キャパシタ素子120は約5~約10ミリメートルの長さを有していてよく、内部空洞126は約6~約15ミリメートルの長さを有していてよい。同様に、内部空洞126の高さに対するキャパシタ素子120の高さ(z方向における)の比は、約0.40~1.00、幾つかの態様においては約0.50~約0.99、幾つかの態様においては約0.60~約0.99、幾つかの態様においては約0.70~約0.98の範囲であってよい。内部空洞126の幅に対するキャパシタ素子120の幅(x方向における)の比も、約0.50~1.00、幾つかの態様においては約0.60~約0.99、幾つかの態様においては約0.70~約0.99、幾つかの態様においては約0.80~約0.98、幾つかの態様においては約0.85~約0.95の範囲であってよい。例えば、キャパシタ素子120の幅は約2~約7ミリメートルであってよく、内部空洞126の幅は約3~約10ミリメートルであってよく、キャパシタ素子120の高さは約0.5~約2ミリメートルであってよく、内部空洞126の幅は約0.7~約6ミリメートルであってよい。
【0075】
決して必須ではないが、キャパシタ素子は、陽極終端と陰極終端がその後に回路中に組み込むためにハウジングの外部に形成されるように、ハウジングに取り付けることができる。終端の特定の構成は意図する用途に応じて定めることができる。例えば一態様においては、キャパシタアセンブリは、表面実装可能であり、且つ更になお機械的に堅牢であるように形成することができる。例えば、陽極リードは、外側の表面実装可能な陽極及び陰極終端(例えば、パッド、シート、プレート、フレーム等)に電気的に接続することができる。かかる終端は、キャパシタと接続するためにハウジングを通って伸長させることができる。終端の厚さ又は高さは、一般的にキャパシタアセンブリの厚さを最小にするように選択される。例えば、終端の厚さは、約0.05~約1ミリメートル、幾つかの態様においては約0.05~約0.5ミリメートル、及び約0.1~約0.2ミリメートルの範囲であってよい。所望の場合には、終端の表面は、当該技術において公知なように、ニッケル、銀、金、スズ等で電気めっきして、最終部品が回路基板に実装可能になることを確実にすることができる。一つの特定の態様において、1つ又は複数の終端にはそれぞれニッケル及び銀フラッシュを堆積させ、実装表面もスズはんだ層をめっきする。他の態様においては、1つ又は複数の終端において、ベース金属層(例えば銅合金)上に薄い外側金属層(例えば金)を堆積させて導電性を更に増加させる。
【0076】
幾つかの態様においては、ハウジングの内部空洞内において接続部材を用いて、機械的に安定な形態の終端への接続を促進することができる。例えば、再び
図1を参照すると、キャパシタアセンブリ100に、第1の部分167と第2の部分165から形成されている接続部材162を含ませることができる。接続部材162は、外部終端と同様の導電性材料から形成することができる。第1の部分167と第2の部分165は、一体であってよく、或いは直接又は更なる導電部材(例えば金属)を介してのいずれかで接続されている別々の片であってよい。示されている態様においては、第2の部分165は、リード6が伸長する横方向(例えばy方向)に対して概して平行な面内に与えられる。第1の部分167は、リード6が伸長する横方向に対して概して垂直の面内に与えられるという意味で「直立」している。このように、第1の部分167は、リード6の水平方向の動きを制限して、使用中における表面接触及び機械的安定性を増大させることができる。所望の場合には、絶縁材料7(例えば、Teflon(登録商標)ワッシャー)をリード6の周囲で用いることができる。
【0077】
第1の部分167は、陽極リード6に接続される実装領域(図示せず)を有していてよい。かかる領域は、リード6の表面接触及び機械的安定性を更に増大させるために「U字形」を有していてよい。かかる領域のリード6への接続は、溶接、レーザー溶接、導電性接着剤等のような任意の種々の公知の技術を用いて達成することができる。例えば一つの特定の態様においては、この領域は陽極リード6にレーザー溶接される。しかしながら、選択される技術に関係なく、第1の部分167によって陽極リード6を実質的に水平の配向で保持して、キャパシタアセンブリ100の寸法安定性を更に増大させることができる。
【0078】
再び
図1を参照すると、接続部材162及びキャパシタ素子120が、陽極及び陰極終端(それぞれ127及び129)を通してハウジング122に接続されている本発明の一態様が示されている。より具体的には、この態様のハウジング122は、外壁123及び二つの対向する側壁124を含んでいて、その間にキャパシタ素子120を収容する空洞126が形成されている。外壁123及び側壁124は、上記のような金属、プラスチック、又はセラミック材料の1以上の層から形成することができる。この特定の態様において、陽極終端127は、ハウジング122内に配置され、接続部材162に電気的に接続されている第1の領域127aと、ハウジング122の外側に配置され、実装表面201を与える第2の領域127bを含む。更に、陰極終端129は、ハウジング122内に配置され、キャパシタ素子120の固体電解質に電気的に接続されている第1の領域129aと、ハウジング122の外側に配置され、実装表面203を与える第2の領域129bを含む。かかる領域の部分全体がハウジングの内部又は外側に配置される必要はないことを理解すべきである。
【0079】
示されている態様においては、導電トレース127cがハウジングの外壁123内で伸長して、第1の領域127aと第2の領域127bを接続している。同様に、導電トレース129cがハウジングの外壁123内で伸長して、第1の領域127aと第2の領域127bを接続している。導電トレース及び/又は終端の領域は別々であっても一体であってもよい。ハウジングの外壁を通って伸長しているのに加えて、トレースは、外壁の外側のような他の場所に配置することもできる。勿論、本発明は、所望の終端を形成するために導電トレースを用いることに決して限定されない。
【0080】
用いられる特定の構成に関係なく、終端127及び129のキャパシタ素子120への接続は、溶接、レーザー溶接、導電性接着剤等のような任意の公知の技術を用いて行うことができる。例えば一つの特定の態様においては、導電性接着剤131を用いて、接続部材162の第2の部分165を陽極終端127に接続する。更に、導電性接着剤133を用いて、キャパシタ素子120の陰極を陰極終端129に接続する。
【0081】
場合によっては、ポリマー拘束部材(restraint)を、キャパシタ素子の1以上の表面、例えば、後面、前面、上面、下面、1つ又は複数の側面、或いはこれらの任意の組合せと接触させて配置することもできる。ポリマー拘束部材は、ハウジングからキャパシタ素子が剥離する可能性を減少させることができる。これに関し、ポリマー拘束部材は、それが振動力を受けた場合でもキャパシタ素子を比較的固定された位置に保持することを可能にするある程度の強度を有していてよいが、亀裂を生じるほど強靱ではない。例えば、拘束部材は、約25℃の温度で測定して、約1~約150メガパスカル(MPa)、幾つかの態様においては約2~約100MPa、幾つかの態様においては約10~約80MPa、幾つかの態様においては約20~約70MPaの引張強さを有していてよい。拘束部材は導電性でないことが通常は望ましい。例えば再び
図1を参照すると、単一のポリマー拘束部材197がキャパシタ素子120の上面181及び後面177と接触して配置されている一態様が示されている。
図1には単一の拘束部材が示されているが、別々の複数の拘束部材を用いて同じ機能を達成することができることを理解すべきである。実際、より一般的には、任意の数のポリマー拘束部材を用いて、キャパシタ素子の任意の所望の面と接触させることができる。複数の拘束部材を用いる場合には、それらは互いと接触していてよく、又は物理的に離隔した状態で保持することができる。例えば一態様においては、キャパシタ素子120の上面181及び前面179と接触する第2のポリマー拘束部材(図示せず)を用いることができる。第1のポリマー拘束部材197と第2のポリマー拘束部材(図示せず)は、互いと接触していてもいなくてもよい。更に他の態様において、ポリマー拘束部材は、他の面と共に又は他の面の代わりに、キャパシタ素子120の下面183及び/又は1つ又は複数の側面と接触させることもできる。
【0082】
それをどのように施すかには関係なく、ポリマー拘束部材はまた、ハウジングの少なくとも一つの面と接触させて、可能性のある剥離に対してキャパシタ素子を更に機械的に安定化することを促進することが通常は望ましい。例えば、拘束部材は、1以上の側壁、外壁、蓋等の内表面と接触させることができる。例えば
図1においては、ポリマー拘束部材197は、側壁124の内表面107及び外壁123の内表面109と接触している。ハウジングと接触しているが、ハウジングによって画定される空洞の少なくとも一部は、不活性ガスが空洞を通って流れて固体電解質と酸素との接触を制限することを可能にするように占有されていない状態のままであることが望ましい。例えば、空洞容積の少なくとも約5%、幾つかの態様においては空洞容積の約10%~約50%は、通常はキャパシタ素子及びポリマー拘束部材によって占有されていない状態のままである。
【0083】
所望の形態で接続したら、得られるパッケージを上記に記載したように気密封止する。例えば再び
図1を参照すると、ハウジング122には、キャパシタ素子120及びポリマー拘束部材197がハウジング122内に配置された後に側壁124の上面上に配置される蓋125を含ませることもできる。蓋125は、セラミック、金属(例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルト等、並びにこれらの合金)、プラスチックなどから形成することができる。所望の場合には、封止部材187を蓋125と側壁124の間に配置して、良好な封止を与えることを促進することができる。例えば一態様においては、封止部材としては、ガラス-金属封止材、Kovar(登録商標)リング(Goodfellow Camridge, Ltd.)などを挙げることができる。側壁124の高さは、一般的に、キャパシタ素子が汚染されないように、蓋125がキャパシタ素子120のいずれの表面とも接触しないような高さである。ポリマー拘束部材197は蓋125と接触していてもしていなくてもよい。所望の位置に配置したら、蓋125を、溶接(例えば、抵抗溶接、レーザー溶接等)、はんだ付け等の公知の技術を用いて、側壁124に気密封止する。気密封止は、一般的に、得られるアセンブリが酸素又は水蒸気のような反応性ガスを実質的に含まないように、上記のような不活性ガスの存在下で行う。
【0084】
記載された態様は単に例示であり、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止するための種々の他の構成を本発明において用いることができることを理解すべきである。例えば
図2を参照すると、外壁123及び蓋225を含み、その間にキャパシタ素子120及びポリマー拘束部材197を収容する空洞126が形成されているハウジング222を用いるキャパシタアセンブリ200の他の態様が示されている。蓋225は、少なくとも一つの側壁224と一体の外壁223を含む。例えば示されている態様においては、二つの対向する側壁224が断面で示されている。外壁223及び123は、どちらも横方向(y方向)に伸長し、互いと概して平行、及び陽極リード6の横方向に対して概して平行である。側壁224は、外壁123に対して概して垂直である縦方向に、外壁223から伸長している。蓋225の遠位端500は外壁223によって画定されており、近位端501は側壁224のリップ部253によって画定されている。
【0085】
リップ部253は、側壁224から横方向(外壁123の横方向に対して概して平行であってよい)に伸長している。側壁224とリップ部253との間の角度は変動してよいが、通常は約60°~約120°、幾つかの態様においては約70°~約110°、幾つかの態様においては約80°~約100°(例えば約90°)である。リップ部253は、リップ部253及び外壁123が伸長する横方向に対して概して垂直であってよい周縁端部251も画定している。周縁端部251は、側壁224の外周の先に位置し、外壁123の縁部151と概して同一平面上であってよい。リップ部253は、溶接(例えば抵抗又はレーザー)、はんだ付け、接着剤等の任意の公知の技術を用いて、外壁123に封止することができる。例えば、示されている態様においては、部品間に封止部材287(ガラス-金属封止材、Kovar(登録商標)リングなど)を用いて、それらの接合を促進している。いずれにせよ、上記のリップ部を用いることにより、部品間のより安定な接続を可能し、キャパシタアセンブリの封止及び機械的安定性を改良することができる。
【0086】
更に他の可能なハウジング構造を本発明において用いることができる。例えば、
図3は、端子ピン327bと329bがそれぞれ陽極及び陰極の外部終端として用いられている他は
図2のものに類似したハウジング構造を有するキャパシタアセンブリ300を示している。より詳しくは、端子ピン327aは、外壁323内に形成されているトレース327cを通って伸長して、公知の技術(例えば溶接)を用いて陽極リード6に接続されている。更なるセクション327aを用いてピン327bを固定することができる。更に、端子ピン329bは、外壁323内に形成されているトレース329cを通って伸長して、上記に記載した導電性接着剤133によって陰極に接続されている。
【0087】
図1~3に示す態様は、ここでは単一のキャパシタ素子のみに関して議論している。しかしながら、複数のキャパシタ素子をハウジング内に気密封止することもできることも理解すべきである。複数のキャパシタ素子は、任意の種々の異なる技術を用いてハウジングに取り付けることができる。例えば
図4を参照すると、2個のキャパシタ素子を含むキャパシタアセンブリ400の一つの特定の態様が示されており、これに関してここでより詳細に記載する。より詳しくは、キャパシタアセンブリ400は、第2のキャパシタ素子420bと電気的に連絡している第1のキャパシタ素子420aを含む。この態様においては、キャパシタ素子は、それらの主面が水平構成になるように配列されている。すなわち、その幅(x方向)及び長さ(y方向)によって画定されるキャパシタ素子420aの主面は、キャパシタ素子420bの対応する主面に隣接して配置されている。而して、これらの主面は概して同一平面上にある。或いは、キャパシタ素子は、それらの主面が同一平面上になく、z方向又はx方向のようなある方向において互いに対して垂直になるように配置することができる。勿論、キャパシタ素子は同じ方向に伸長する必要はない。
【0088】
キャパシタ素子420a及び420bは、一緒になって空洞426を画定する外壁423並びに側壁424及び425を含むハウジング422内に配置されている。示されてはいないが、側壁424及び425の上面を覆い、アセンブリ400を上記に記載のように封止する蓋を用いることができる。場合によっては、ポリマー拘束部材を用いてキャパシタ素子の振動を制限するのを促進することもできる。例えば
図4においては、別々のポリマー拘束部材497a及び497bが、それぞれキャパシタ素子420a及び420bに隣接及び接触して配置されている。ポリマー拘束部材497a及び497bは、種々の異なる位置に配置することができる。更に、拘束部材の1つを排除することができ、或いは更なる拘束部材を用いることができる。例えば幾つかの態様において、キャパシタ素子の間でポリマー拘束部材を用いて機械的安定性を更に向上させることが望ましい可能性がある。
【0089】
キャパシタ素子に加えて、キャパシタアセンブリはまた、それぞれのキャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続されている陽極終端と、それぞれのキャパシタ素子の陰極が電気的に接続されている陰極終端も含む。例えば再び
図4を参照すると、共通の陰極終端429に並列に接続されている複数のキャパシタ素子が示されている。この特定の態様においては、陰極終端429は、まずキャパシタ素子の底面に対して概して平行な面内に与えられ、導電トレース(図示せず)と電気的に接触させることができる。キャパシタアセンブリ400は、キャパシタ素子420a及び420bの陽極リード(それぞれ407a及び407b)に接続されている接続部材427及び527も含む。より詳しくは、接続部材427は、直立部分465と、陽極終端(図示せず)に接続されている平面部分463を含む。更に、接続部材527は、直立部分565と、陽極終端(図示せず)に接続されている平面部分563を含む。勿論、広範囲の他のタイプの接続機構を用いることもできることを理解すべきである。
【0090】
その特定の構造に関係なく、得られるキャパシタアセンブリは上記に示す種々の有益な特性を示すことができる。例えば、本キャパシタは、約50ボルト以上、幾つかの態様においては約100ボルト以上、幾つかの態様においては約150ボルト以上、幾つかの態様においては約200ボルト~約300ボルトのような比較的高い「絶縁破壊電圧」(キャパシタが作動しなくなる電圧)を示すことができる。本キャパシタはまた、100kHzの動作周波数において測定して、約200ミリオーム、幾つかの態様においては約150ミリオーム未満、幾つかの態様においては約0.1~約100ミリオームのような比較的低い等価直列抵抗(ESR)を示すこともできる。また、キャパシタアセンブリの損失係数(dissipation factor)は比較的低いレベルで維持することができると考えられる。損失係数は、一般的に、キャパシタにおいて発生する損失を指し、通常は理想的なキャパシタ性能のパーセントとして表される。例えば、本発明のキャパシタの損失係数は、通常は、120Hzの周波数において求めて、約0.5%~約25%、幾つかの態様においては約0.8%~約10%、幾つかの態様においては約1%~約5%である。本キャパシタアセンブリはまた、約35ボルト以上、幾つかの態様においては約50ボルト以上、幾つかの態様においては約60ボルト~約200ボルトの定格電圧のような高電圧用途において用いることができる可能性もある。本キャパシタアセンブリはまた、比較的高いサージ電流(これも高電圧用途において通常的である)に耐えることができる可能性もある。ピークサージ電流は、例えば約100アンペア以上、幾つかの態様においては約200アンペア以上、幾つかの態様においては約300アンペア~約800アンペアであってよい。
【0091】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良好に理解することができる。
【実施例】
【0092】
試験手順:
等価直列抵抗(ESR):
等価直列抵抗は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を用いて測定することができる。動作周波数は100kHzであってよく、温度は23℃±2℃であってよい。
【0093】
損失係数:
損失係数は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を用いて測定することができる。動作周波数は120Hzであってよく、温度は23℃±2℃であってよい
キャパシタンス:
キャパシタンスは、Kelvinリードを備えたKeithley 3330精密LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を用いて測定することができる。動作周波数は120Hzであってよく、温度は23℃±2℃であってよい。幾つかの場合においては、「湿潤対乾燥」キャパシタンスを求めることができる。「乾燥キャパシタンス」は、固体電解質、グラファイト、及び銀層を施す前の部品のキャパシタンスを指し、一方で「湿潤キャパシタンス」は、誘電体形成後の部品のキャパシタンスを指し、14%硝酸中において、1mFのタンタル陰極を参照とし、10ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク・ピーク正弦波信号を用いて、30秒の電解液浸漬後に測定される。
【0094】
リーク電流:
リーク電流は、リーク試験メーターを用い、23℃±2℃の温度及び定格電圧(例えば16ボルト)において、最小で60秒(例えば、90秒、180秒、又は300秒)後に測定することができる。
【0095】
温度寿命試験(temperature life testing)
温度寿命試験は、125℃の温度において、異なる電圧(例えば、0ボルト、20ボルト、又は35ボルト)を用いて行うことができる(例えば10の部品)。試験条件後の復帰時間は30分であってよい。復帰時間後にキャパシタンス及びESRを測定することができる。
【0096】
温度パルス試験:
温度パルス試験は、125℃の温度において、異なる電圧を用いて行うことができる(例えば25の部品)。抵抗は33オームであってよく、30秒の充電/放電を用いる。復帰時間の1000時間後、2000時間後、及び3000時間後に、キャパシタンス及びESRを測定することができる。
【0097】
実施例1:
40,000μFV/gのタンタル粉末を用いて陽極試料を形成した。それぞれの陽極試料にタンタル線を埋め込み、1410℃で焼結し、プレスして5.3g/cm3の密度にした。得られたペレットは5.20×3.70×0.65mmの寸法を有していた。ペレットを、85℃の温度において8.6mSの導電率を有する水/リン酸電解液中で49.0ボルトに陽極酸化して、誘電体層を形成した。このペレットを、30℃の温度において2.0mSの導電率を有する水/ホウ酸/四ホウ酸二ナトリウム中で25秒間、130ボルトに再び陽極酸化して、外側の上に堆積されるより厚い酸化物層を形成した。
【0098】
次に、陽極を、1.1%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬することによって、導電性ポリマー被覆を形成した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを10回繰り返した。その後、部品を、2.0%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを3回繰り返した。その後、部品を、2%の固形分含量及び粘度160mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを8回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥した。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥した。
【0099】
実施例2:
エタノール中の(3-アミノプロピル)トリメトキシシランの溶液(1.0%)を用いて3つのプレコート層を形成した他は、実施例1に記載のようにしてキャパシタを形成した。47μF/20Vキャパシタの多数の部品(450)を形成し、シリカ樹脂中に封入した。
【0100】
実施例3:
エタノール中の[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシランの溶液(1.0%)を用いて3つのプレコート層を形成した他は、実施例1に記載のようにしてキャパシタを形成した。
【0101】
実施例1~3に記載したように47μF/20Vキャパシタの多数の部品(450)を形成し、シリカ樹脂中に封入した。部品を、キャパシタンス(CAP)、「湿潤対乾燥」キャパシタンス(W/D)、損失係数(Df)、ESR、及びリーク電流(DCL)に関して試験した。メジアンの結果を下記の表1に示す。
【0102】
【0103】
また、実施例1~3に記載のようにして47μF/20Vキャパシタ(封入前)の多数の部品(10)を形成し、150℃で4時間乾燥した。次に、得られた部品を、窒素ガスでパージしたセラミックハウジング中に配置して、次にシーム溶接によって気密封止した。上記に記載した「寿命試験」及び「パルス試験」を用いて、部品をキャパシタンス及びリーク電流に関して試験した。メジアンの結果を下記の表2及び3に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
実施例4:
70,000μFV/gのタンタル粉末を用いて陽極試料を形成した。それぞれの陽極試料にタンタル線を埋め込み、1440℃で焼結し、プレスして5.1g/cm3の密度にした。得られたペレットは5.60×3.65×0.90mmの寸法を有していた。ペレットを、85℃の温度において8.6mSの導電率を有する水/リン酸電解液中で71.0ボルトに陽極酸化して、誘電体層を形成した。このペレットを、30℃の温度において2.0mSの導電率を有する水/ホウ酸/四ホウ酸二ナトリウム中で25秒間、150ボルトに再び陽極酸化して、外側の上に堆積されるより厚い酸化物層を形成した。
【0107】
陽極を、1.9%の固形分含量を有するポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸(Clevios(登録商標)K, Heraeus)の溶液中に浸漬することによって、導電性ポリマー被覆を形成した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを2回繰り返した。その後、部品を、1.1%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを8回繰り返した。その後、部品を、2.0%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを3回繰り返した。その後、部品を、2%の固形分含量及び粘度160mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを8回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥した。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥した。
【0108】
実施例5:
エタノール中の(3-アミノプロピル)トリメトキシシランの溶液(1.0%)を用いて3つのプレコート層を形成した他は、実施例4に記載のようにしてキャパシタを形成した。更に、陽極を、1.1%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬することによって、導電性ポリマー被覆を形成した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを10回繰り返した。その後、部品を、2.0%の固形分含量及び粘度20mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを3回繰り返した。その後、部品を、2%の固形分含量及び粘度160mPa・sを有する分散ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(Clevios(登録商標)K、Heraeus)中に浸漬した。被覆したら、部品を125℃で20分間乾燥した。このプロセスを8回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥した。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥した。
【0109】
実施例6:
エタノール中の[3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシランの溶液(1.0%)を用いて3つのプレコート層を形成した他は、実施例4に記載のようにしてキャパシタを形成した。
【0110】
実施例1~3に記載のようにして47μF/35Vキャパシタの多数の部品(1300)を形成し、シリカ樹脂中に封入した。部品を、キャパシタンス(CAP)、「湿潤対乾燥」キャパシタンス(W/D)、損失係数(Df)、ESR、及びリーク電流(DCL)に関して試験した。メジアンの結果を下記の表4に示す。
【0111】
【0112】
また、実施例4~6に記載のようにして47μF/35Vキャパシタ(封入前)の多数の部品(10)を形成し、150℃で4時間乾燥した。次に、得られた部品を、窒素ガスでパージしたセラミックハウジング中に配置して、次にシーム溶接によって気密封止した。上記に記載した「寿命試験」及び「パルス試験」を用いて、部品をキャパシタンス及びリーク電流に関して試験した。メジアンの結果を下記の表5に示す。
【0113】
【0114】
本発明のこれら及び他の修正及び変更は、当業者によって、本発明の精神及び範囲から
逸脱することなく実施することができる。更に、種々の態様の複数の形態は、全体的又は
部分的の両方で交換することができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、
上記の記載はほんの一例にすぎず、添付の特許請求の範囲において更に記載される発明を
限定することは意図しないことを認識するであろう。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
キャパシタ素子を含むキャパシタアセンブリであって、
前記キャパシタ素子は、
バルブメタル化合物を含む多孔質陽極体;
前記陽極体の上に配されている、バルブメタル化合物の酸化物を含む誘電体;
前記誘電体の上に配されている、スルホニルイオンを含む少なくとも1つの導電性ポリ
マー層を含む固体電解質;及び
前記誘電体の酸化物に結合しており、スルホニルイオンに結合することができる有機官
能性シラン;
を含む上記キャパシタアセンブリ。
[請求項2]
前記有機官能性シラン化合物が次の一般式(I):
【化1】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリー
ル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、又はヒドロキシアルキルで
あり;
Xは、スルホニルイオンに結合することができる官能基である)
を有する、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項3]
R
1、R
2、及びR
3の少なくとも1つがヒドロキシアルキルである、請求項2に記載
のキャパシタアセンブリ。
[請求項4]
Xがアミノ基である、請求項2に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項5]
前記有機官能性シラン化合物が、次の一般式(II):
【化2】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリー
ル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、又はヒドロキシアルキルで
あり;
R
4及びR
5は、独立して水素、アルキル、独立してアルキル、アルケニル、アリール
、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ
アルキルであるか、或いは、N、R
4、及びR
5は、1以上の更なる原子と一緒に環構造
を形成し;そして
Zは有機基である)
を有するモノアミノ官能性シランである、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項6]
前記モノアミノ官能性シランが第1級アミンである、請求項5に記載のキャパシタアセ
ンブリ。
[請求項7]
前記第1級アミンが、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルト
リメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメト
キシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラ
ン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルト
リエトキシシラン、2-(4-ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2-(トリメトキ
シシリルエチル)ピリジン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)ピロール、3-(
m-アミノフェノキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、
3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキ
シシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、又はこれらの組合せである、請
求項6に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項8]
前記モノアミノ官能性シランが第2級アミンである、請求項5に記載のキャパシタアセ
ンブリ。
[請求項9]
前記第2級アミンが、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミ
ノイソブチルトリメトキシシラン、n-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-
フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメ
トキシシラン、シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシル
アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラ
ン、(フェニルアミノエチル)メチルジエトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリ
メトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、又はこれらの組合
せである、請求項8に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項10]
前記有機官能性シラン化合物が、次の一般式(III):
【化3】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、アルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリー
ル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、ハロ、ハロアルキル、又はヒドロキシアルキルで
あり;そして
Z
1及びZ
2は、独立して有機基である)
を有するジアミノ官能性シランである、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項11]
前記ジアミノ官能性シランが、N-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシ
シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(6
-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミ
ノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルト
リメトキシシラン)、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N
-3-[(アミノ(ポリプロピレノキシ)]-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-
(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル
)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミ
ノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチ
ルメトキシシラン、又はこれらの組合せである、請求項10に記載のキャパシタアセンブ
リ。
[請求項12]
前記陽極体がタンタルを含み、前記誘電体が五酸化タンタルを含む、請求項1に記載の
キャパシタアセンブリ。
[請求項13]
前記導電性ポリマー層が外因性導電性ポリマー及びスルホニル対イオンを含む、請求項
1に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項14]
前記外因性導電性ポリマーが次式:
【化4】
(式中、
R
7は、線状又は分岐のC
1~C
18アルキル基;C
5~C
12シクロアルキル基;C
6~C
14アリール基;C
7~C
18アラルキル基であり;そして
qは0~8の整数である)
の繰り返し単位を有する、請求項13に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項15]
前記外因性導電性ポリマーがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請
求項13に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項16]
前記スルホニル対イオンがポリスチレンスルホン酸又はその塩である、請求項13に記
載のキャパシタアセンブリ。
[請求項17]
前記導電性ポリマー層が、次式:
【化5】
(式中、
Rは(CH
2)
a-O-(CH
2)
bであり;
aは0~10であり;
bは1~18であり;
Zはアニオンであり;
Xはカチオンである)
の繰り返し単位を有する固有導電性ポリマーを含む、請求項1に記載のキャパシタアセン
ブリ。
[請求項18]
前記固有導電性ポリマーが、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][
1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸,塩)、ポリ(4-(
2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-
1-プロパンスルホン酸,塩)、又はこれらの組合せである、請求項17に記載のキャパ
シタアセンブリ。
[請求項19]
前記導電性ポリマー層が、予め重合された導電性ポリマー粒子の分散液から形成される
、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項20]
前記固体電解質がin-situ重合された導電性ポリマーを概して含まない、請求項1に記
載のキャパシタアセンブリ。
[請求項21]
前記固体電解質の上に配されている、予め重合された導電性ポリマー粒子及び架橋剤を
含む外側ポリマー被覆を更に含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項22]
前記陽極体と電気的に接続されている陽極終端;
前記固体電解質と電気的に接続されている陰極終端;及び
前記キャパシタ素子を収容し、前記陽極終端及び前記陰極終端の少なくとも一部を露出
した状態にしているハウジング;
を更に含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項23]
前記ハウジングが、前記キャパシタ素子を封入する樹脂材料から形成される、請求項2
2に記載のキャパシタアセンブリ。
[請求項24]
前記ハウジングがその中に前記キャパシタ素子が配置される内部空洞を画定し、前記内
部空洞が不活性ガスを含む気体雰囲気を有する、請求項22に記載のキャパシタアセンブ
リ。
[請求項25]
キャパシタ素子を形成する方法であって、
焼結多孔質陽極体を陽極酸化してバルブメタル化合物の酸化物を含む誘電体を形成する
こと;
有機官能性シラン化合物を含む溶液を前記陽極に施すこと;
導電性ポリマー粒子及びスルホニル対イオンを含む分散液を施して、導電性ポリマー層
を形成すること;及び
前記有機官能性シラン化合物を前記誘電体の酸化物に結合させること;
を含む上記方法。
[請求項26]
前記溶液が有機溶媒を含む、請求項25に記載の方法。