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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】表示装置製造用マスク
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20220408BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20220408BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220408BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220408BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220408BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220408BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
G09F9/00 338
C23C14/04 A
H01L27/32
H05B33/04
H05B33/10
H05B33/14 A
H05B33/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020013303
(22)【出願日】2020-01-30
(62)【分割の表示】P 2016001474の分割
【原出願日】2016-01-07
(65)【公開番号】P2020077006
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2020-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小野 敬亮
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-178057(JP,A)
【文献】特開2004-085831(JP,A)
【文献】特開2000-121802(JP,A)
【文献】特開2004-117703(JP,A)
【文献】特開2010-197469(JP,A)
【文献】特開2015-214741(JP,A)
【文献】特開2000-082582(JP,A)
【文献】特表2005-519187(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0342102(US,A1)
【文献】特開2015-034835(JP,A)
【文献】特開2008-285690(JP,A)
【文献】特開2012-037670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C14/00-14/58
G02B1/10-1/18
G02F1/1335
1/13363
G09F9/00
H01L27/32
51/50
H05B33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板からなる、導電性酸化物を含む上部電極を有機層上に有する表示装置の前記上部電極をスパッタリングで作製するためのマスクであって、
前記金属基板は、前記金属基板を貫通し、ハニカムパターンまたはマトリックスパターンに配置された複数の貫通孔を有し、
前記貫通孔の最大幅は0.1μm以上3μm以下であり、前記貫通孔と貫通孔の間のピッチは2μmから6μmである、表示装置製造用マスク。
【請求項2】
前記複数の貫通孔の形状が円形状である請求項1に記載の表示装置製造用マスク。
【請求項3】
前記複数の貫通孔のうち、少なくとも一つの貫通孔の形状は他の貫通孔の形状と異なる請求項1または2に記載の表示装置製造用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電極の作製方法、ならびにこの作製方法で形成された電極を有する表示装置に関する。例えば透光性を有する導電性酸化物を含有する電極の作製方法、ならびにこの作製方法で形成された電極を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の代表例として、液晶素子や発光素子を各画素に有する液晶表示装置やEL(lectroluminescence)表示装置などが挙げられる。これらの表示装置は、基板上に形成された複数の画素内の各々に液晶素子あるいは発光素子などの表示素子を有している。液晶素子や発光素子は一対の電極を有しており、一対の電極のうち少なくとも一方は可視光を透過する。例えば発光素子は、発光性の有機化合物を含む層(以下、有機層)が一対の電極で挟まれた構造を有しており、一対の電極のうち少なくとも一つが可視光を透過するように設計されている。
【0003】
可視光を透過する電極(以下、透光性電極)の代表的な材料としてインジウム―スズ酸化物(ITO)やインジウム―亜鉛酸化物(IZO)が挙げられる。特許文献1には、スパッタリング法によって形成されるITO膜やIZO膜を透光性電極として用いたEL表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-84541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表示装置の表示不良を防止することを目的の一つとする。あるいは、表示装置の表示不良のための成膜方法を提供することを目的の一つとする。あるいは、表示装置の表示不良を防止するための成膜装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は表示装置の作製方法である。該作製方法は、基板上に第1の電極を形成し、第1の電極上に有機層を形成し、透光性を有する導電性酸化物を含むターゲットをスパッタすることによって有機層上に第2の電極を形成することを含む。第2の電極の形成時において、有機層とターゲットの間にマスクを設置し、マスクは周期的に配列した、最大幅が0.1μm以上3μm以下の貫通孔を有する。
【0007】
本発明の一実施形態は表示装置の作製方法である。該作製方法は、基板上に第1の電極を形成し、第1の電極上に有機層を形成し、周期的に配列した貫通孔を有するマスクを有機層上に設置し、透光性を有する導電性酸化物を含むターゲットをスパッタすることによって有機層上に第2の電極を形成することを含む。貫通孔の最大面積は、有機層と第1の電極が接する面積よりも小さい。
【0008】
本発明の一実施形態は、チャンバーと、チャンバー内に位置し、ターゲットを保持するホルダーと、チャンバー内かつホルダーの下に位置し、基板を支持するステージと、チャンバー内に放電を誘起する電源と、チャンバーへガスを供給するガス供給部と、周期的に配置された複数の貫通孔を有するマスクを保持して基板とターゲット間に設置するマスクホルダーを有する成膜装置である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る表示装置を作製するための装置の断面模式図。
図2】一実施形態に係る表示素子の作製方法を示す模式図。
図3】一実施形態に係る表示素子の作製方法を示す模式図。
図4】一実施形態に係る表示素子の作製時に用いるマスクの上面図と断面図。
図5】一実施形態に係る表示素子の作製時に用いるマスクの上面図と断面図。
図6】一実施形態に係る表示素子の作製時に用いるマスクの上面図と断面図。
図7】一実施形態に係る表示素子の作製時に用いるマスクの上面図と断面図。
図8】一実施形態に係る表示素子の作製方法を示す模式図。
図9】一実施形態に係る表示装置の上面模式図。
図10】一実施形態に係る表示装置の断面模式図。
図11】一実施形態に係る表示装置の作製方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0011】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明の一実施形態に係る表示装置の作製方法を図1乃至図6を用いて説明する。本実施形態では、表示装置が含有する発光素子の作製方法を例として説明を行う。
【0013】
<1.スパッタリング装置>
後述するように、発光素子は少なくとも一つの透光性電極を有している。透光性電極を成膜するためのスパッタリング装置100の断面模式図を図1に示す。
【0014】
スパッタリング装置100はチャンバー110内の下部にステージ200を有しており、その上に基板220が設置、支持される。ステージ200には基板温度を制御するための温度制御部210が備えられており、成膜中における基板220の温度を任意に制御することができる。
【0015】
チャンバー110内の上部にはターゲット150を保持するためのホルダー120が設置されており、ホルダー120の温度は温度制御部130によって制御される。これにより、ターゲット150の成膜時における温度を制御することができる。ホルダー120の上および横には、ターゲット150の表面に平行な磁界を作り出すためにマグネット140が設置される。このマグネット140の設置は任意である。またマグネット140は、ターゲット150の上方のみに設置してもよい。ターゲット150と基板220との距離は任意に設定できるが、好ましくは5cm以上20cm以下である。また、ターゲット150と基板220がそれぞれチャンバー110内の下側と上側に配置されるよう、ホルダー120やステージ200の位置関係を逆にしてもよい。この場合には、基板220は被処理面が下になるようにチャンバー110内に設置される。
【0016】
チャンバー110の横壁には仕切弁170が設置されており、基板220をチャンバー110内外へ搬送する際に用いられる。基板220の搬送にはロボットアーム(図示せず)などを用いることができる。チャンバー110にはさらにガス供給部160が設けられており、アルゴンや窒素などの不活性ガス、あるいは酸素など、種々のガスの導入に使用することができる。チャンバー110には排気装置250が接続されており、チャンバー110内の減圧に用いられる。
【0017】
スパッタリング装置100はさらに交流電源260が設けられている。交流電源260としては例えば13.56MHzの高周波電源を用いることができる。交流電源260を用いてターゲット150と基板220の間に電界を作り出すことより、ターゲット150付近にグロー放電が誘起される。ガス供給部160によってチャンバー110内に導入されたガス分子あるいはガス原子がグロー放電によってイオン化されてプラズマが発生する。そしてイオンが交流電源260によって印加された電圧によって加速され、ターゲット150に衝突する。イオンがターゲット150に衝突することでターゲット150中のターゲット材が弾き飛ばされ基板220上に堆積することによって基板220上に成膜が行われる。成膜のオン―オフはシャッター230によっても制御することができ、シャッター230はシャッター制御部240によって開閉される。
【0018】
スパッタリング装置100はさらに、ステージ200上にマスクホルダー310を有しており、このマスクホルダー310はマスク300を基板220とターゲット150の間に保持することができる。マスクホルダー310にはアライメント機構320が設けられ、マスク300を三次元的(基板220に平行な面内、および基板220の法線に沿った方向)に移動させることができる。これにより、基板220に対するマスク300の位置を調整することができる。アライメント機構320により、マスク300と基板220との距離は0.5mmから20mm、好ましくは1mmから10mmとなるよう、また、マスク300と基板220が接触しないように調整される。マスクホルダー310には電源330が接続されており、これによってマスクホルダー310、およびマスク300へ直流電圧、あるいは交流電圧を印加することができる。
【0019】
<2.発光素子の作製方法>
次に発光素子の作製方法を図2乃至図8を用いて説明する。図2(A)に示すように、基板220上に第1の電極221を形成する。基板220は発光素子に物理的強度を与えるものであり、これ以降の製造工程の環境下に耐えることができるものであればよい。具体的には、石英、ガラス、プラスチック、金属などを用いることができる。基板220は可撓性を有していてもよい。
【0020】
第1の電極221は、後に形成される有機層222に電荷を注入する機能を有する。有機層222からの発光を基板220側から取り出す場合には、透光性を有する材料、たとえばITOやIZOなどの導電性酸化物を使用することができる。有機層222からの発光を基板220とは反対側から取り出す場合には、可視光を反射する構成とすればよく、例えば銀やマグネシウム、アルミニウムなどの金属を用いることができる。あるいはこれらの金属上に透光性の導電性酸化物を積層してもよい。第1の電極221はスパッタリング法、蒸着法、ゾルゲル法、印刷法などを用いて形成することができる。なお、スパッタリング法を用いて形成する場合の詳細は後述する。
【0021】
第1の電極221上に有機層222を形成する(図2(B))。図2(B)では有機層222は単層構造として描かれているが、種々の機能を有する層を複数積層することができる。例えば電荷注入層、電荷輸送層、電荷阻止層、発光層などを適宜用いることができる。有機層222は蒸着法、インクジェット法、スピンコート法などによって形成することができる。
【0022】
有機層222上に第2の電極223を形成する(図2(C))。第2の電極223は有機層222に電荷を注入する機能を有する。有機層222からの発光を基板220の反対側から取り出す場合には、透光性を有する材料、たとえばITOやIZOなどの導電性酸化物を使用することができる。有機層222からの発光を基板220側から取り出す場合には、可視光を反射する構成とすればよく、例えば銀やマグネシウム、アルミニウムなどの金属を用いることができる。第2の電極223はスパッタリング法、蒸着法、ゾルゲル法、印刷法などを用いて形成することができる。
【0023】
第1の電極221あるいは第2の電極223、あるいはこれらの両方をスパッタリング法で形成する場合、図1に示したスパッタリング装置100を用いることができる。具体的には、第1の電極221の形成前、あるいは有機層222を形成した後、基板220をステージ200上に固定する。チャンバー110内の圧力を10-3Pa程度に減圧した後、アルゴンなどの不活性ガスをチャンバー110の圧力が1Pa乃至10Pa程度になるように導入し、ターゲット150とステージ200との間に数kVの交流電圧を印加する。これによってグロー放電が発生し、アルゴンなどの不活性ガスがイオン化・加速されてターゲット150に衝突する。
【0024】
ターゲット150には、例えばITOやIZOなどの導電性酸化物を用いればよい。加速されたガスのイオンがターゲット150に衝突してターゲット150に含まれる材料を弾き飛ばし、これが基板220上、あるいは有機層222上に堆積し、第1の電極221、第2の電極223が形成される。
【0025】
この時、基板220、あるいは有機層222を覆うように、図4(A)、(B)に示すようなマスク300をマスクホルダー310に設置する。マスク300と基板220は接触しないよう、かつ、その距離が0.5mmから20mm、好ましくは1mmから10mmとなるように、アライメント機構320を用いてマスク300の位置を調整する。マスク300はステンレスやニッケル、クロムなどの金属を用いて形成することができる。
【0026】
図4(B)は図4(A)の直線A-Bに沿った断面模式図である。(以下、図5乃至7において同じ)。図4(A)、(B)に示すように、マスク300には複数の貫通孔305が周期的に設けられている。貫通孔305の大きさは発光素子の第1の電極221や第2の電極223の大きさよりも小さい。具体的には、複数の貫通孔305のうち最も大きな貫通孔305の幅(以下、貫通孔305の最大幅と記す)Wは0.1μmから3μm、好ましくは1μmから3μmである。隣接する二つの貫通孔305の距離もWと同程度が好ましい。したがって、貫通孔305のピッチPは0.2μmから6μm、好ましくは2μmから6μmである。このため図2(D)に示すように、第1の電極221や第2の電極223の形成時には、複数の貫通孔305が一つの第1の電極221と重なり、さらに、第1の電極221と有機層222とが接触する領域(発光領域)と重なる。また、複数の貫通孔305のうち最も大きな貫通孔305の面積(以下、貫通孔305の最大面積と記す)は、第1の電極221と有機層222とが接触する領域よりも小さい。
【0027】
図4(A)に示すマスク300の貫通孔305は、六角形の頂点に位置するように配置されており、ハニカムパターンを形成している。しかし本実施の形態では配置パターンはこれに限られず、例えば図5(A)に示すように、マトリクス状に配置されていてもよい。この場合でも図5(B)に示すように、貫通孔305の最大幅Wは0.1μmから3μm、好ましくは1μmから3μmであり、ピッチPは0.2μmから6μm、好ましくは2μmから6μmである。
【0028】
貫通孔305の形状は円形に限らず、楕円形、多角形などでもよい。例えば図6(A)に示すように、貫通孔305は正方形などの多角形の形状を有していてもよい。この場合も、貫通孔305の最大幅Wは0.1μmから3μm、好ましくは1μmから3μmであり、ピッチPは0.2μmから6μm、好ましくは2μmから6μmである(図6(B))。図7(A)に示すように、貫通孔305が多角形の形状を有している場合、その辺は必ずしもマスク300の辺と平行である必要はない。図7(A)ではひし形の貫通孔305がマスク300に設けられている。この場合も、貫通孔305の最大幅Wは0.1μmから3μm、好ましくは1μmから3μmであり、ピッチPは0.2μmから6μm、好ましくは2μmから6μmである(図7(B))。また、一つのマスク300内で貫通孔305の全てが同一の形を有する必要はなく、複数の貫通孔305のうち少なくとも一つが他の貫通孔305と形状が異なっていてもよい。
【0029】
IZOなどの導電性酸化物をターゲット150として用いる場合、比較的大きいターゲット材の塊がターゲット150から弾き飛ばされ、基板220や有機層222上に堆積することがある。この時の模式図を図8(A)に示す。この図では第2の有機層222上に第2の電極223を形成する際、比較的大きいターゲット材の塊228が堆積した様子を表している。ここで示すように、塊228が存在すると、この後に形成される保護膜224(後述)は塊228と第2の電極223を完全に覆うことができず、矢印で示したような隙間が生じる。この隙間から水や酸素などの不純物が浸入して第2の電極223が腐食され、この領域で発光が得られなくなる。その結果、この発光素子は表示装置上では暗点(DS:Dark Spot)として認識される。保護膜224の厚さを大きくすることで塊228と第2の電極223を完全に覆うことも可能であるが、この場合、保護膜224の光吸収が大きくなるため、発光素子からの発光を効果的に取り出すことができない。したがって、保護膜224の膜厚にも限界があり、例えば塊228の最大径が3μm以上になると、事実上保護膜224では第2の電極223と塊228を完全に覆うことができない。
【0030】
これに対して図8(B)に示すように、第1の電極221あるいは第2の電極223を形成する時にマスク300を設置することで、貫通孔305よりも大きな塊228はマスク300によってブロックされ、付着物360としてマスク300上に捕獲される。その結果、図8(A)で示したような塊228は基板220や有機層222上に堆積しない。このため、DS発生などの表示不良を効果的に抑制することができ、表示装置の製造歩留まりを改善することができる。スパッタリング法によって第1の電極221を基板220上に形成するときにもマスク300を使用することが可能であり、その結果、例えば塊228によって第1の電極221と第2の電極223がショートすることを防ぐことができる。
【0031】
マスク300の位置は、ターゲット150よりも基板220に近い位置に設置されるよう、アライメント機構320などを用いて調整する。これにより、ターゲット150付近に形成される放電領域370(図8(B)参照)にマスク300が干渉して異常放電が生じることを防ぐことができる。上述したように、マスク300と基板220の距離が0.5mmから20mm、好ましくは1mmから10mmとなるように調整する。
【0032】
第1の電極221や第2の電極223の形成時、マスク300にはターゲット150から弾き飛ばされたターゲット材の塊が付着物360としてターゲット材料が表面に付着する。また、貫通孔305を通過できるターゲット材もマスク300に衝突することでマスク300上に堆積する。こうした付着物360や堆積物は、マスク300に直接、あるいはマスクホルダー310を通して間接的に電源330から直流電圧、あるいは交流電圧を印加することで除去することができる(図8(B)参照)。特にイオン化している付着物360は容易に除去することが可能である。付着物360や堆積物の除去は定期的に行えばよい。
【0033】
第2の電極223の形成後、保護膜224を形成する(図3(A))。保護膜224は窒化ケイ素や酸化窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素などの無機絶縁膜を単層、あるいは積層で形成すればよい。保護膜224の厚さは、水や酸素などの不純物が第2の電極223を含む発光素子に浸入せず、かつ、有機層222からの発光を十分に透過できる程度の厚さから選択される。好ましくは0.1μmから5μmであり、より好ましくは0.5μmから2μmである。保護膜224は化学気相成長法(CVD)などを利用して形成することができる。
【0034】
次に対向基板225を接着剤226を用いて基板220に張り合わせ、発光素子を封止する(図3(B))。対向基板225は基板220と同様なものを使用することができる。接着剤226としては、たとえばエポキシ系接着剤など、熱硬化性樹脂、あるいは光硬化性樹脂を使用することができる。この時、基板220、対向基板225、接着剤226で囲まれた空間227に不活性ガスを封入してもよい。あるいは、エポキシ樹脂やシロキサン樹脂などを用いて空間227を充填してもよい。これらの樹脂に乾燥材を混入してもよい。以上の工程を経ることにより、発光素子を作製することができる。
【0035】
上述したように、本実施形態では周期的に配列した貫通孔305を有するマスク300を基板220とターゲット150の間に設置する。また、好ましくは貫通孔305の最大幅Wは0.1μmから3μm、あるいは1μmから3μmとし、ピッチPを0.2μmから6μm、あるいは2μmから6μmとしている。この構成により、マスクが約3μm以上の大きさのターゲット材の塊228を補足することができ、大きな異物が基板に堆積することを防ぐことができる。このため、保護膜224を厚くしなくても発光素子を保護することができ、表示不良の発生を抑制することができるだけでなく、表示装置の信頼性と生産性の向上にも寄与することができる。
【0036】
なお本実施形態では、気相状態の被堆積物を基板表面で固化して堆積させる成膜方法において、異物が膜中に混入することを防ぐための方法をスパッタリング装置に対して具現化した例を示した。しかしながら本発明はこれに限定されず、他の成膜装置に対しても具現化することができる。例えば真空蒸着装置や電子ビーム蒸着装置、レーザーアブレーション装置、CVD装置に対しても本発明を具現化することが可能である。
【0037】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態を適用することで作製される表示装置を説明する。上述したように、第1実施形態で示した表示装置の作製方法により、ターゲット150から弾き飛ばされる大きなターゲット材の塊228の堆積を防ぐことができるが、この方法を用いることにより、作製した電極の表面に周期的に凸部を形成することができる。
【0038】
本実施形態に係る表示装置の上面模式図を図9に示す。表示装置は基板220上に表示領域400を有し、表示領域400と電気的に接続された複数の配線420、および配線420とFPC(Flexible Printed Circuit)などのコネクタ(図示せず)を接続するための端子425を備えている。表示領域400の周辺には駆動回路430が設けられている。駆動回路430を設けずに、IC(Integrated
Circuit)チップなどを表示領域400の周辺、あるいはコネクタ上に配置してもよい。
【0039】
表示領域400には複数の副画素410がマトリクス状に配置されている。図9では各副画素410は鉤状の形状をしているが、その他の形状を有していてもよい。例えば四角形や円形の形状をしていてもよい。副画素410の拡大図(図9中、円で囲った領域)中の直線A-Bに沿った断面模式図を図10に示す。
【0040】
図10に示すように、表示装置は基板220上に下地膜440を介してトランジスタ415を有する。下地膜440は基板220からの金属イオンなどの不純物の拡散を防ぐ機能を有し、単層構造、積層構造のいずれでもよい。下地膜440は酸化ケイ素や窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などの無機絶縁膜をCVD法などによって形成することができる。
【0041】
トランジスタ415は発光素子の駆動を制御する機能を有しており、Nチャネル型であってもPチャネル型であってもよい。図10ではトランジスタ415は一つだけが描かれているが、各副画素410は複数のトランジスタを有していてもよい。トランジスタ415は下地膜440上に半導体膜450、ゲート絶縁膜460、ゲート電極470、保護膜480、ドレイン電極490、およびソース電極500を順次有している。本実施形態ではトランジスタ415はトップゲート型として記述するが、ボトムゲート型であってもよい。あるいは、ボトムゲートとトップゲートの両者を有するタイプでもよい。
【0042】
半導体膜450にはシリコンや酸化物半導体などを用いることができ、その結晶性も、アモルファス、微結晶、多結晶、単結晶のいずれでもよい。ゲート絶縁膜460や保護膜480は下地膜440で使用可能な材料を用い、単層、あるいは積層構造で形成することができる。
【0043】
ゲート電極470、ドレイン電極490、およびソース電極500には、アルミニウムや銅、モリブデン、タンタル、タングステン、チタンなどの金属あるいはこれらの合金を使用することができる。これらの電極も単層構造を有していてもよく、積層構造を有していてもよい。これらの電極が積層構造を有する場合、例えば導電性の高いアルミニウムや銅をモリブデンやタングステン、チタンなどの層で挟持された構造を採用することができる。なお図示していないが、ドレイン電極490、ソース電極500を与える金属層は一部基板220の端部まで延伸され、FPCやICチップと接続される端子を形成する。
【0044】
トランジスタ415上には層間絶縁膜510が設けられている。層間絶縁膜510はトランジスタ415に起因する凹凸を吸収し、平坦な表面を与える機能を有する。層間絶縁膜510は、例えばポリイミドやポリシロキサン、アクリル樹脂などの高分子材料を使用することができる。
【0045】
層間絶縁膜510上には接続電極520、配線525、配線530、配線532、誘電体膜540、および第1の電極550が設けられている。接続電極520と配線525は同一の層から形成され、金属、あるいはIZOやITOなどの透光性を有する導電性酸化物を用いて形成することができる。接続電極520はドレイン電極490と第1の電極5
50を電気的に接続する機能を有する。一方、配線525は配線525とともに電源線を構成し、後述する第2の電極580と接続される。配線530、配線532は、ゲート電極470、ドレイン電極490、およびソース電極500で使用できる金属を用いて形成することができる。誘電体膜540としては、例えば窒化ケイ素膜などを用いることができる。第1の電極550は、第1実施形態の第1の電極221と同様な構成を有することができる。
【0046】
第1の電極550は層間絶縁膜510内に形成されたコンタクトホールにおいて、接続電極520を介してドレイン電極490と電気的に接続される。配線530、誘電体膜540、および第1の電極550によって容量が形成される。
【0047】
第1の電極550、配線525の端部を覆い、かつ、コンタクトホールに起因する凹部を覆うように隔壁560が形成されている。隔壁560は第1の電極550、配線525の端部を保護し、コンタクトホールに起因する凹凸を吸収し、かつ、隣接する副画素から副画素410を電気的に独立させる機能を有する。隔壁560は層間絶縁膜510と同様の材料を用いて形成することができる。表示装置さらに、第1の電極550、隔壁560の上に有機層570を有しており、有機層570上には第2の電極580を有している。第1の電極550、有機層570、および第2の電極580によって発光素子が形成される。有機層570と第2の電極580は、第1実施形態の有機層222、第2の電極223と同様の構成を有することができる。
【0048】
ここで第2の電極580は第1実施形態で述べたマスク300を用いてスパッタリング法によって形成することができる。第2の電極580は有機層570を覆い、かつ電源線として機能する配線525と電気的に接続されるように形成される。マスク300の貫通孔305の最大幅は、発光領域、すなわち、第1の電極550と有機層570が接する領域よりも小さく、同様に第2の電極580よりも小さい。また、貫通孔305のピッチも副画素410のピッチと比較して非常に小さい。このため、複数の貫通孔305が一つの副画素410内の第2の電極580と重なる。この際図11に示すように、ターゲット150から弾き飛ばされたターゲット材は貫通孔305を通過するときに回折し、その結果、電極580の上面に複数の凸部が形成される。この凸部は貫通孔305の位置に対応している。また、この凸部の断面は曲線で表され、直線的な構造を持たない。したがってそのピッチ(図10に示すピッチP)は貫通孔305のピッチと同様であり、0.2μmから6μm、あるいは2μmから6μmである。またこのピッチPは副画素410の大きさと比較すると非常に小さい。
【0049】
第2の電極580上には保護膜590が設けられている。第2の電極580の上面の形状を反映し、保護膜590はピッチPを有する凸部を周期的に有している。保護膜590は窒化ケイ素や酸化ケイ素、窒化酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などの無機化合物や、あるいはアクリル樹脂などの有機材料を用いることができる。あるいはこれら無機化合物と有機材料を積層させてもよい。例えば、アクリル樹脂の層を窒化ケイ素や酸化ケイ素などの無機化合物を含有する層で挟持した構造でも良い。
【0050】
保護膜590の上に封止材600を介して対向基板610が張り合わされている(図10)。配線525と重なる領域において、対向基板610に遮光膜605を設けてもよい。なお、封止材600や対向基板610は設けなくてもよい。
【0051】
上述したように、本発明の実施形態に係る表示装置の作製方法を適用することで、例えば第2の電極580やその上の保護膜590の上面に周期的に配置された凸部を形成することができる。この凸部のピッチは可視光の波長よりもかなり大きいため、光学的な悪影響を引き起こさない。換言すると、発光素子の光取り出し効率や発光色、視野角依存性などに影響を与えることがなく、また、外光の反射に対しても影響を与えることはない。一方、保護膜590を介して第2の電極580が封止材600と接触する面積を増大させることができ、その結果、保護膜590と封止材600間の接着力を向上させることができる。このため、光学的な悪影響を引き起こすことなく、発光素子に水や酸素などの不純物が浸入する確率を低下させることができ、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0052】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0053】
本明細書においては、開示例として主にEL表示装置の場合を例示したが、他の適用例として、その他の自発光型表示装置、液晶表示装置、あるいは電気泳動素子などを有する電子ペーパ型表示装置など、あらゆるフラットパネル型の表示装置が挙げられる。また、中小型から大型まで、特に限定することなく適用が可能である。
【0054】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0055】
100:スパッタリング装置、110:チャンバー、120:ホルダー、130:温度制御部、140:マグネット、150:ターゲット、160:ガス供給部、170:仕切弁、200:ステージ、210:温度制御部、220:基板、221:第1の電極、222:有機層、223:第2の電極、224:保護膜、225:対向基板、226:接着剤、227:空間、228:塊、230:シャッター、240:シャッター制御部、250:排気装置、260:交流電源、300:マスク、305:貫通孔、310:マスクホルダー、320:アライメント機構、330:電源、360:付着物、370:放電領域、400:表示領域、410:副画素、415:トランジスタ、420:配線、425:端子、430:駆動回路、440:下地膜、450:半導体膜、460:ゲート絶縁膜、470:ゲート電極、480:保護膜、490:ドレイン電極、500:ソース電極、510:層間絶縁膜、520:接続電極、530:配線、540:誘電体膜、550:第1の電極、560:隔壁、570:有機層、580:第2の電極、590:保護層、600:封止材、610:対向基板
図1
図2
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図10
図11