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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】無菌クロマトグラフィーおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/18 20060101AFI20220408BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220408BHJP
   B01D 15/20 20060101ALI20220408BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
C07K1/18
C12P21/02 C
B01D15/20
B01D15/36
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020070132
(22)【出願日】2020-04-09
(62)【分割の表示】P 2016546971の分割
【原出願日】2015-01-16
(65)【公開番号】P2020121995
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】61/928,906
(32)【優先日】2014-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ラフール・ゴダワット
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーナ・ワリコー
(72)【発明者】
【氏名】ロハン・パティル
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・コンスタンティノフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカット・キショア・リヤカラ
(72)【発明者】
【氏名】マーサ・ロハニ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/159858(WO,A1)
【文献】特表2013-527473(JP,A)
【文献】特表2013-515258(JP,A)
【文献】特表2013-515251(JP,A)
【文献】特表2012-510981(JP,A)
【文献】国際公開第03/045546(WO,A1)
【文献】CAPTO ADHERE - AFFINITY CHROMATOGRAPHY,GE Healthcare Life Sciences,Instructions 28-9064-05 AC (2012),pp.1-40,https://nl.vwr.com/assetsvc/asset/nl_NL/id/17889007/contents,[ONLINE], [検索日 2018年12月4日]
【文献】GAGNON P.,DISSECTION OF THE SEPARATION MECHANISMS AND ENHANCEMENT OFAGGREGATE REMOVAL BY CHARGED-HYDROPHOBIC MIXED MODE CHROMATOGRAPHY,6TH INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON HIC AND RPC (2009) pp.1-30
【文献】BIOPROCESS INTERNATIONAL (2007) Vol.5, No.5, pp.52-56 (第53,55頁は広告頁のため削除)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
B01D
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えタンパク質を製造するための一体化され、クローズドな、連続的な方法であって、
(a)細胞を少なくとも90%含まない、組換えタンパク質を含む液体培養培地を準備すること;
(b)液体培養培地を第1のマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS1)に連続的に供給すること;
(c)MCCS1を用いて液体培養培地から組換えタンパク質を捕獲すること;
(d)MCCS1から組換えタンパク質を含む溶出液を生産し、溶出液を第2のマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS2)に連続的に供給すること;
(e)組換えタンパク質を溶出液からMCCS2に連続的に供給し、その後組換えタンパク質を溶出することにより、精製された組換えタンパク質を生産すること、
を含み、ここで、該方法は、一体化されており、かつ液体培養培地から精製された組換えタンパク質まで連続的に稼動し、MCCS1および/またはMCCS2内の少なくとも1つのカラムはガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有するクロマトグラフィーカラムであり、該ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は2またはそれ以上のクロマトグラフィーサイクルの各々の間に変性用緩衝液に曝露され、該変性用緩衝液は尿素、グアニジン塩酸塩、およびTriton(商標) X-100のうち1つまたはそれ以上を含み、該変性用緩衝液の流量、容積および濃度は、ガンマ照射されたクロマトグラフィー樹脂による結合能力の低下を回復させるよう選択される、方法。。
【請求項2】
MCCS1および/またはMCCS2が、少なくとも2つの異なる単位操作を実行する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MCCS1もしくはMCCS2、または両方の使用が、カラム切り替えを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
MCCS1が、組換えタンパク質を捕獲する、およびウィルスを不活化する単位操作をさらに実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
MCCS2が、組換えタンパク質を精製する、およびポリッシュする単位操作を実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
MCCS1および/またはMCCS2が、少なくとも2つのクロマトグラフィーカラムを利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
MCCS1およびMCCS2内のクロマトグラフィーカラムの全てが、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有するクロマトグラフィーカラムである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
MCCS1が、第1の定期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
MCCS2が、第2の定期的向流(PCCS2)クロマトグラフィーシステムである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
組換えタンパク質が、治療用組換えタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
精製された組換えタンパク質を医薬組成物中に配合することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも4日の期間連続的に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも7日の期間連続的に実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも14日の期間連続的に実行される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも28日の期間連続的に実行される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂が、10kGy~40kGyの線量のガンマ線照射で処理されている、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂が、15kGy~35kGyの線量のガンマ線照射で処理されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂が、20kGy~30kGyの線量のガンマ線照射で処理されている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
変性用緩衝液が、6M~9Mの尿素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
変性用緩衝液が、5M~7Mのグアニジン塩酸塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
変性用緩衝液が、Triton(商標) X-100を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
変性用緩衝液が、
8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5;
6Mグアニジン塩酸塩、pH2.5;および
0.1M酢酸中0.5% Triton(商標)X-100、pH2.5
からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂が、変性用緩衝液への曝露後0.5M~1.5Mの水酸化ナトリウムを含む洗浄用緩衝液に曝露される。、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂が、多モードクロマトグラフィー樹脂、アニオン交換クロマトグラフィー樹脂、カチオン交換クロマトグラフィー樹脂、サイズ排除クロマトグラフィー樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂およびアフィニティークロマトグラフィー樹脂からなる群から選択される、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ガンマ照射されたクロマトグラフィー樹脂が、アニオン交換クロマトグラフィー樹脂である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年1月17日に出願された米国仮特許出願61/928,906号の優先権を主張し、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、組換えタンパク質に関するバイオテクノロジーおよびバイオ製造の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組換えタンパク質をコードする核酸を含む哺乳類細胞は、しばしば、治療用または商業用に重要なタンパク質を製造するために使用されている。多様な製品パイプラインに関する現在の環境において、バイオテクノロジー系の会社は、非常に自由度が高くて対費用効果の良い治療用タンパク質原薬製造のための革新的な解決策の開発へと増々駆り立てられている。組換えタンパク質を効率的に単離する方策の1つは、(例えば、閉鎖系を用いる)連続クロマトグラフィーを包含するプロセスによるものである。連続クロマトグラフィーの1つの知られている制限は、夾雑製品、生産収率の低下、および系内の流量の減少(または圧力の上昇)をもたらすことになる系内の夾雑する作用物質(例えば、増大したバイオバーデン)の存在である。例えば、系内の増大したバイオバーデンはその系の完全なシャットダウンを引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも部分的に、クロマトグラフィー樹脂のガンマ線照射の結果その樹脂の結合能力が低下する(例えば、樹脂の結合能力は複数のサイクルのクロマトグラフィーの間着実に低下する)こと、およびガンマ線照射された樹脂の結合能力はその樹脂を変性用緩衝液に曝露することによって回復することができるという発見に基づいている。この発見に鑑みて、本明細書に、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を用いてクロマトグラフィーを実行する方法であって、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムを準備すること;カラムによって、クロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することを含む第1のサイクルのクロマトグラフィーを実行すること;およびカラムによって少なくとも1つの追加のサイクルのクロマトグラフィーを実行すること:を含む、方法が提供される。また、組換えタンパク質を製造するための一体化され、クローズドなまたは実質的にクローズドな、連続的な方法であって、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムの使用を含み、ここでガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は本方法における各サイクル中変性用緩衝液に曝露され、低減したバイオバーデンの緩衝液が本方法で使用される、方法も提供される。本明細書に記載されている方法およびプロセスのいずれも、(本明細書中に定義されている)低減したバイオバーデンの、無菌、殺菌した、または絶対的に無菌の方法またはプロセスであることができる。本明細書に記載されている方法およびプロセスのいずれも殺菌および低減したバイオバーデン、無菌、または絶対的に無菌の組合せであることができる。
【0005】
本明細書に、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を用いてクロマトグラフィーを実行する方法であって、(a)ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有するクロマトグラフィーカラムを準備すること;(b)カラムによって、クロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することを含む第1のサイクルのクロマトグラフィーを実行すること;および(c)カラムによって少なくとも1つの追加のサイクルのクロマトグラフィーを実行すること:を含む、方法が提供される。これらの方法のいくつかの実施形態において、(b)および/または(c)におけるサイクルを実行することは、(a)組換えタンパク質を含有する液体にクロマトグラフィー樹脂を曝露することにより組換えタンパク質を捕獲する工程;(b)クロマトグラフィー樹脂を洗浄用緩衝液に曝露することによりクロマトグラフィー樹脂を洗浄する工程;(c)クロマトグラフィー樹脂を溶出緩衝液に曝露することにより組換えタンパク質を溶出する工程;および(d)クロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することによりクロマトグラフィー樹脂を再生する工程:を含む。
【0006】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、組換えタンパク質を含有する液体は液体培養培地である。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、(b)および(c)におけるサイクルは閉鎖され一体化されたシステムを用いて実行される。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、緩衝液は低減したバイオバーデンの緩衝液(例えば、ろ過により調製される低減したバイオバーデンの緩衝液)である。
【0007】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、変性用緩衝液は尿素、グアニジン塩酸塩、およびTriton(商標) X-100のうち1つまたはそれ以上を含む。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、(b)のサイクルは、変性用緩衝液への曝露後約0.5M~約1.5Mの水酸化ナトリウムを含む洗浄用緩衝液にクロマトグラフィー樹脂を曝露することをさらに含む。タンパク質リガンドを含むアフィニティークロマトグラフィー樹脂を使用するいくつかの実施形態において、(b)のサイクルは、約1mM~約100mMの水酸化ナトリウムを含む洗浄用緩衝液にクロマトグラフィー樹脂を曝露することをさらに含む。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、カラムはマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS)(例えば、定期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)の一部である。
【0008】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂はアニオン交換クロマトグラフィー樹脂、カチオン交換クロマトグラフィー樹脂、サイズ排除クロマトグラフィー樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂、アフィニティークロマトグラフィー樹脂、またはこれらの任意の組合せである。いくつかの例において、クロマトグラフィー樹脂はアニオン交換クロマトグラフィー樹脂である。
【0009】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、クロマトグラフィー樹脂は約10kGy~約40kGy(例えば、約15kGy~約35kGy、または約20kGy~約30kGy)の線量のガンマ線照射で処理されている。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、4またはそれ以上(例えば、9またはそれ以上、14またはそれ以上、19またはそれ以上、24またはそれ以上、29またはそれ以上、または39またはそれ以上)の追加のサイクルのクロマトグラフィーが実行される。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、工程(c)は少なくとも4日(例えば、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも14日、または少なくとも28日)の期間にわたって実行される。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、組換えタンパク質は組換え治療用タンパク質である。
【0010】
また、精製された組換えタンパク質を製造するための一体化され、クローズドなまたは実質的にクローズドな、連続的な方法であって、(a)組換えタンパク質を含み、実質的に細胞を含まない液体培養培地を準備すること;および(b)各サイクル中に変性用緩衝液に曝露されるガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムを含むマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS)に液体培養培地を連続的に供給すること;を含み、本方法は低減したバイオバーデンの緩衝液を利用し、一体化されており、液体培養培地から精製された組換えタンパク質であるMCCSからの溶出液まで連続的に稼動する、方法が提供される。これらの方法のいくつかの実施形態において、MCCSは少なくとも2つの異なる単位操作を実行する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、MCCSはカラムの切り替えを包含する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、MCCS内の全てのカラムがガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有する。
【0011】
本明細書に記載の任意の方法のいくつかの例において、MCCSは組換えタンパク質を捕獲する、およびウィルスを不活化するという単位操作、または組換えタンパク質を捕獲し精製するという単位操作を実行する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、MCCSは定期的向流クロマトグラフィーシステムである。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、MCCSはアフィニティークロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、もしくは疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはこれらの任意の組合せのための複数のカラムを含む。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、MCCSはアフィニティークロマトグラフィーのためのカラムを含み、アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインA結合捕獲機構、基質結合捕獲機構、抗体または抗体フラグメント結合捕獲機構、アプタマー結合捕獲機構、および補因子結合捕獲機構:からなる群から選択される捕獲機構によって実行される。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、アフィニティークロマトグラフィーはプロテインA結合捕獲機構によって実行され、組換えタンパク質は抗体または抗体フラグメントである。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、組換えタンパク質は治療用組換えタンパク質である。本明細書に記載されているいずれかの方法のいくつかの実施形態は精製された組換えタンパク質を医薬組成物中に配合することをさらに含む。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、変性用緩衝液は尿素、グアニジン塩酸塩、およびTriton(商標) X-100のうち1つまたはそれ以上を含む。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの例において、クロマトグラフィー樹脂は各サイクルで変性用緩衝液への曝露後約0.5M~約1.5Mの水酸化ナトリウムを含む洗浄用緩衝液に曝露される。
【0012】
また、組換えタンパク質を製造するための一体化され、クローズドなまたは実質的にクローズドな、連続的な方法であって、(a)実質的に細胞を含まない、組換えタンパク質を含む液体培養培地を準備すること;(b)液体培養培地を第1のマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS1)に連続的に供給すること;(c)MCCS1を用いて液体培養培地から組換えタンパク質を捕獲すること;(d)MCCS1から組換えタンパク質を含む溶出液を生産し、溶出液を第2のマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS2)に連続的に供給すること;(e)組換えタンパク質を溶出液からMCCS2に連続的に供給し、その後組換えタンパク質を溶出することにより、精製された組換えタンパク質を生産すること:を含み、ここで:本方法は低減したバイオバーデンの緩衝液を利用し、一体化されており、かつ液体培養培地から精製された組換えタンパク質まで連続的に稼動し、MCCS1および/またはMCCS2内の少なくとも1つのカラムはガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有するクロマトグラフィーカラムであり、クロマトグラフィー樹脂は本方法において各サイクル中に変性用緩衝液に曝露される、方法が提供される。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、MCCS1および/またはMCCS2は少なくとも2つの異なる単位操作を実行する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、MCCS1もしくはMCCS2、または両方の使用はカラム切り替えを包含する。
【0013】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、MCCS1は、組換えタンパク質を捕獲する、およびウィルスを不活化するという単位操作をさらに実行する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、MCCS2は組換えタンパク質を精製する、およびポリッシュするという単位操作を実行する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、MCCS1および/またはMCCS2は少なくとも2つのクロマトグラフィーカラムを利用する。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、MCCS1およびMCCS2内のクロマトグラフィーカラム(複数可)は全てガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有するクロマトグラフィーカラムである。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、MCCS1は第1の定期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS1)である。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、捕獲はアフィニティークロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、もしくはサイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはこれらの任意の組合せを用いて実行される。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、捕獲は、プロテインA結合捕獲機構、基質結合捕獲機構、抗体または抗体フラグメント結合捕獲機構、アプタマー結合捕獲機構、および補因子結合捕獲機構:の群から選択される捕獲機構を有するアフィニティークロマトグラフィーを用いて実行される。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、アフィニティークロマトグラフィーはプロテインA結合捕獲機構によって実行され、組換えタンパク質は抗体または抗体フラグメントである。
【0014】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、MCCS2は第2の定期的向流(PCCS2)クロマトグラフィーシステムである。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、組換えタンパク質は治療用の組換えタンパク質である。本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態は、精製された組換えタンパク質を医薬組成物中に配合することをさらに含む。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、本方法は少なくとも4日(例えば、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも14日、または少なくとも28日)の期間連続的に実行される。
【0015】
本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂はアニオン交換クロマトグラフィー樹脂、カチオン交換クロマトグラフィー樹脂、サイズ排除クロマトグラフィー樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂、アフィニティークロマトグラフィー樹脂、またはこれらの任意の組合せである。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、クロマトグラフィー樹脂はアニオン交換クロマトグラフィー樹脂である。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの例において、クロマトグラフィー樹脂は約10kGy~約40kGy(例えば、約15kGy~約35kGy、または約20kGy~約30kGy)の線量のガンマ線照射で処理されている。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、変性用緩衝液は尿素、グアニジン塩酸塩、およびTriton(商標) X-100のうち1つまたはそれ以上を含む。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は変性用緩衝液への曝露後約0.5M~約1.5Mの水酸化ナトリウムを含む洗浄用緩衝液に曝露される。クロマトグラフィー樹脂がタンパク質リガンド(例えば、プロテインAリガンド)を有するアフィニティー樹脂である、本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、クロマトグラフィー樹脂は変性用緩衝液への曝露後約1mM~約100mMの水酸化ナトリウムを含む洗浄用緩衝液に曝露される。
【0016】
本明細書で使用される場合、名詞の前の単語不定冠詞「1つの」はその特定の名詞の1つまたはそれ以上を表す。例えば、句「クロマトグラフィーカラム」は「1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム」を表す。
【0017】
用語「ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂」は、ガンマ線照射に曝露されたクロマトグラフィー樹脂を意味する。例えば、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は、クロマトグラフィー樹脂のバイオバーデンを低減するのに充分な量のガンマ線照射に曝露されたクロマトグラフィー樹脂であることができる。いくつかの例において、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は、約1kGy~約15kGyの線量、約1kGy~約20kGyの線量のガンマ線照射、約1kGy~約25kGyの線量のガンマ線照射、約1kGy~約30kGyの線量のガンマ線照射、または約1kGy~約35kGyの線量のガンマ線照射に曝露されている。ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は約1×10-6、1×10-7、1×10-8、1×10-9、または1×10-10未満の滅菌保証レベルを有することができる。クロマトグラフィー樹脂にガンマ線照射する代表的な方法は本明細書に記載されている。クロマトグラフィー樹脂にガンマ線照射する追加の方法は当技術分野で公知である。
【0018】
用語「ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有する、または含むクロマトグラフィーカラム」は、(本明細書中に定義されているような)ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムを意味する。例えば、かかるクロマトグラフィーカラムは、約1kGy~約15kGyの線量、約1kGy~約20kGyの線量のガンマ線照射、約1kGy~約25kGyの線量のガンマ線照射、約1kGy~約30kGyの線量のガンマ線照射、または約1kGy~約35kGyの線量のガンマ線照射に曝露されているガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むことができる。例えば、かかるクロマトグラフィーカラムは、約1×10-6、1×10-7、1×10-8、1×10-9、または1×10-10未満の滅菌保証レベルを有するガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有することができる。いくつかの実施形態において、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有する、または含むクロマトグラフィーカラムは(本明細書中に定義されているように)低減したバイオバーデンを有するか、または無菌もしくは絶対的に無菌であるか、または殺菌されている(すなわち、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有する、または含むクロマトグラフィーカラムの内面および内容物は低減したバイオバーデンを有するか、無菌であるか、絶対的に無菌であるか、または殺菌されている)。いくつかの実施形態において、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含有する、または含むクロマトグラフィーカラムは殺菌されており、低減したバイオバーデンを有し、無菌であり、または絶対的に無菌である。
【0019】
用語「変性用緩衝液」は、タンパク質の変性を引き起こす充分な量の1つまたはそれ以上の化学的作用物質(例えば、洗剤(複数可)、還元剤(複数可)、酸(複数可)、塩基(複数可)、カオトロピック剤(複数可)、有機溶媒(複数可)、もしくは架橋剤(複数可)、またはこれらの任意の組合せ)を含む液体を意味する。変性用緩衝液の非限定例は本明細書に記載されている。変性洗浄用緩衝液の追加の例は当技術分野で公知である。タンパク質の変性を検出する(例えば、タンパク質の変性を直接に(例えば、分光学)または間接的に(例えば、タンパク質活性(例えば、酵素活性またはタンパク質結合活性)アッセイ(複数可)を通して)検出する)方法も当技術分野で周知である。タンパク質の変性を検出する方法の非限定例も本明細書に記載されている。本明細書に記載の方法またはプロセスのいずれかにおいて、変性用緩衝液は、ガンマ線殺菌されたクロマトグラフィー樹脂(例えば、本明細書に記載されているクロマトグラフィー樹脂のいずれかまたはクロマトグラフィー樹脂の組合せ)を含むクロマトグラフィーカラムを再生するために使用することができる。
【0020】
用語「低減したバイオバーデンの緩衝液」は、未処理の同じ液体中に見られる自己複製する生物学的夾雑性作用物質(複数可)のレベル未満のレベルの自己複製する生物学的夾雑性作用物質(複数可)を有する処理された(例えば、ろ過された、オートクレーブ処理された、またはガンマ線照射された)液体(例えば、処理された緩衝溶液)を意味する。自己複製する生物学的夾雑物質の非限定例は細菌(例えば、グラム陽性もしくはグラム陰性細菌、または細菌もしくは真菌胞子)、マイコバクテリア、ウィルス(例えば、ベシウィルス、Cache Valleyウィルス、パルボウィルス、ヘルペスウィルス、およびブニヤウィルス)、寄生虫、菌類、酵母、および原虫であることができる。例えば、低減したバイオバーデンの緩衝液は約または1×10-6未満、1×10-7未満、1×10-8未満、1×10-9未満、もしくは1×10-10未満の滅菌保証レベルを有することができる。
【0021】
「絶対無菌」または「絶対的に無菌」は自己複製する生物学的夾雑物を完全に含まない組成物または方法を記述するために使用される用語である。例えば、この用語は、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂、クロマトグラフィーカラムの内面および内容物(例えば、クロマトグラフィー樹脂)、および/または緩衝液に適用することができる。絶対的に無菌の組成物または方法は(当技術分野で公知のように)クリーンであることができる。
【0022】
「無菌の」または「無菌」は約または1.0×10-6未満(例えば、約または1.0×10-7未満、約または1.0×10-8未満、約または1.0×10-9もしくは1×10-10未満)の滅菌保証レベルを有する組成物または方法を記述するのに使用される用語である。組成物または方法が無菌であるかどうかの決定は当技術分野で公知の多くの確認された生産方法を用いて試験することができる。例えば、無菌の組成物または方法は生きている自己複製する生物学的夾雑物(例えば、本明細書に記載されている自己複製する生物学的夾雑物のいずれか)を完全に含まないことができる。無菌の組成物または方法もまた(当技術分野で公知のように)クリーンであることができる。
【0023】
用語「滅菌」は組成物を(本明細書に定義されているように)無菌にするのに使用される確立された方法を意味する。ある組成物に対して(本明細書に定義されている)無菌が達成されたかどうかを決定するために、処理プロセス中耐性指示菌の自己複製する生物学的夾雑物(例えば、細菌)の不活化率を測定することができる。
【0024】
用語「滅菌保証レベル」すなわち「SAL」は業界で公知であり、1つのバッチの処理単位で絶対無菌を達成する信頼度レベルを意味する。この確率は通常、検証中に実行される不活化研究の結果に基づいて計算され、1×10-nの形で表される。
【0025】
用語「殺菌した」は、疾患を引き起こすかまたは症状を引き起こす自己複製する生物学的夾雑物質および/またはタンパク質(例えば、本明細書に記載の自己複製する生物学的夾雑物質、毒素(例えば、エンドトキシン)、または炎症性タンパク質のいずれか)を含まない組成物または方法を記述するために使用される。殺菌した組成物または方法も(当該用語が当技術分野で公知のように)クリーンであることができる。
【0026】
用語「サイクルのクロマトグラフィー」または「クロマトグラフィーサイクル」は専門用語であり、単一のクロマトグラフィーカラムを用いる単一回のクロマトグラフィーで実行される全ての工程を意味する。例えば、1サイクルのクロマトグラフィーは、クロマトグラフィーカラムを緩衝液で平衡化し、組換えタンパク質を含むサンプルをクロマトグラフィーカラムに通し、組換えタンパク質をクロマトグラフィーカラムから溶出し、変性用緩衝液をカラムに通すことによりクロマトグラフィーカラムを洗浄する工程を含むことができる。クロマトグラフィーのサイクルで実行される工程の追加の例は本明細書に記載されている。クロマトグラフィーのサイクルで実行される工程のさらなる例も当技術分野で周知である。
【0027】
用語「単位操作」は専門用語であり、液体培養培地から組換えタンパク質を精製する方法において実行することができる機能的な工程を意味する。例えば、一単位の動作は、ろ過すること(例えば、夾雑物細菌、酵母、ウィルスもしくはマイコバクテリア、および/または、組換えタンパク質を含む流体から出てくる微粒子状物質の除去)、捕獲すること、エピトープタグ除去、精製すること、保持もしくは貯蔵すること、ポリッシュすること、ウィルス不活性化、組換えタンパク質を含む流体のイオン濃度および/またはpHを調節すること、ならびに、望ましくない塩を除去することであってよい。
【0028】
用語「捕獲する」は、液体培養培地または希釈された液体培養培地中に存在する1つまたはそれ以上の他の成分(例えば、哺乳類細胞中に存在するかまたはそれから分泌される培養培地タンパク質または1つもしくはそれ以上の他の成分(例えば、DNA、RNA、または他のタンパク質))から、組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)を部分的に精製または単離し(例えば、重量で少なくともまたは約5%、例えば、少なくとももしくは約10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または少なくとももしくは約95%純粋)、濃縮するために実行される工程を意味する。典型的には、捕獲は、(例えば、アフィニティークロマトグラフィーの使用によって)組換えタンパク質が結合するクロマトグラフィー樹脂を用いて実行される。液体培養培地または希釈済み液体培養培地から組換えタンパク質を捕獲する非限定的な方法は、本明細書で記載されており、他の方法も当技術分野で公知である。組換えタンパク質は、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜(例えば、本明細書に記載のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜のいずれか)を用いて、液体培養培地から捕獲することができる。
【0029】
用語「精製する」は、組換えタンパク質を含む流体中に存在する1つもしくはそれ以上の他の不純物(例えば、かさ高い不純物)または成分(例えば、哺乳類細胞中に存在するかまたはそれから分泌される液体培養培地タンパク質または1つもしくはそれ以上の他の成分(例えば、DNA、RNA、他のタンパク質、内毒素、ウィルス、等))から組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)を単離するために実行される工程を意味する。例えば、精製することは、最初にある捕獲する工程の最中または後に実行することができる。精製は、組換えタンパク質または夾雑物のいずれかに結合するクロマトグラフィー樹脂、膜または任意の他の固体担体を用いて(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アニオン交換もしくはカチオン交換クロマトグラフィー、または分子ふるいクロマトグラフィーの使用によって)、実行することができる。組換えタンパク質は、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜(例えば、本明細書に記載のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜のいずれか)を用いて、組換えタンパク質を含む流体から精製することができる。
【0030】
「ポリッシュすること」という用語は専門用語であり、所望される最終的な純度に近い組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)を含む流体から、微量または少量の残留夾雑物または残留不純物を除去するために実行される、工程を意味する。例えば、ポリッシュすることは、組換えタンパク質を含む流体が、標的とする組換えタンパク質に選択的に結合しまたは組換えタンパク質を含む流体中に存在する少量の夾雑物もしくは不純物に選択的に結合する、クロマトグラフィーカラム(複数可)または膜型吸着材(複数可)を通過することにより、実行することができる。このような例において、クロマトグラフィーカラム(複数可)または膜型吸着材(複数可)の溶出液/ろ液は、組換えタンパク質を含む。
【0031】
「ろ過すること」という用語は、液体(例えば、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて存在する液体培養培地または流体)から望ましくない生物型夾雑物(例えば、哺乳類細胞、細菌、酵母細胞、ウィルスまたはマイコバクテリア)および/または粒子状物質(例えば、沈殿したタンパク質)の少なくとも一部(例えば、少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)を除去することを意味する。
【0032】
「溶出液/ろ液」という用語は専門用語であり、検出可能な量の組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)を含んでいるクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から排出される、流体を意味する。
【0033】
用語「一体化された方法」は、特定の結果(例えば、組換えタンパク質の液体培養培地からの精製)を達成するように協力して機能する構造要素を用いて実行される方法を意味する。
【0034】
用語「連続的な方法」は、システムの少なくとも一部を介して流体を連続的に供給する方法を意味する。例えば、連続的な方法は、組換えタンパク質を含む液体培養培地をバイオリアクターからMCCSを介して連続的に供給する方法である。連続的な方法の別の例は、組換えタンパク質を含む液体培養培地をバイオリアクターから第1および第2のMCCS(MCCS1およびMCCS2)を介して連続的に供給する方法である。さらなる例は、組換えタンパク質を含む液体培養培地をMCCSを介して連続的に供給する方法、組換えタンパク質を含む液体培養培地をMCCS1およびMCCS2を介して連続的に供給する方法、または組換えタンパク質を含む流体をMCCS2を介して連続的に供給する方法を含む。
【0035】
用語「クローズドな方法」は専門用語であり、組換えタンパク質と接触する方法の構成要素(例えば、クロマトグラフィー樹脂および/または緩衝液)または組換えタンパク質を含む液体が、かなりの時間夾雑作用物質に意図的に曝露されない(例えば、かなりの時間意図的に空気に曝露されない)ように実行される方法を意味する。
【0036】
「治療用タンパク質原薬」という用語は、十分に精製されており、または、汚染をもたらすタンパク質、脂質および核酸(例えば、液体培養培地中に存在するまたは宿主細胞に由来した(例えば、哺乳類宿主細胞、酵母宿主細胞または細菌宿主細胞に由来した)夾雑タンパク質、脂質および核酸)、ならびに、生物型夾雑物(例えば、ウィルス型夾雑物および細菌型夾雑物)から十分に単離されており、さらなる大幅な精製および/または汚染除去工程(複数可)を全く用いないで医薬品中に配合することができる、組換えタンパク質(例えば、免疫グロブリン、タンパク質フラグメント、人為的改変タンパク質または酵素)を意味する。
【0037】
「マルチカラムクロマトグラフィーシステム」または「MCCS」という用語は、相互接続されているまたは切り替え処理を受けることになる合計で2つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜からできたシステムを意味する。マルチカラムクロマトグラフィーシステムの非限定的な例は、相互接続されているまたは切り替え処理を受けることになる合計で2つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜を含んでいる、定期的向流クロマトグラフィーシステム(PCC)である。マルチカラムクロマトグラフィーシステムのさらなる例は、本明細書で記載されており、当技術分野で公知でもある。
【0038】
用語「実質的に含まない」は、指定された物質(例えば、哺乳類細胞または哺乳類細胞に由来する夾雑タンパク質、核酸、炭水化物、もしくは脂質)を少なくともまたは約90%含まない(例えば、少なくとももしくは約95%、96%、97%、98%、または少なくとももしくは約99%含まない、または約100%含まない)組成物(例えば、液体培養培地)を意味する。
【0039】
「哺乳類細胞」という用語は、任意の哺乳類(例えば、ヒト、ハムスター、マウス、ミドリザル、ラット、ブタ、ウシまたはウサギ)から作られたまたは任意の哺乳類に由来した任意の細胞を意味する。例えば、哺乳類細胞は、不死化細胞であってよい。いくつかの実施形態において、哺乳類細胞は、分化細胞である。いくつかの実施形態において、哺乳類細胞は、未分化細胞である。哺乳類細胞の非限定的な例は、本明細書で記載されている。哺乳類細胞のさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0040】
「培養」または「細胞培養」という用語は、制御下にある一組の物理的条件下における哺乳類細胞の維持または増殖を意味する。
【0041】
「哺乳類細胞の培養物」という用語は、制御下にある一組の物理的条件下で維持または増殖される複数の哺乳類細胞を含有する、液体培養培地を意味する。
【0042】
「液体培養培地」という用語は、細胞(例えば、哺乳類細胞)がインビトロで成長または増殖できるようにするのに十分な栄養素を含む、流体を意味する。例えば、液体培養培地は、次のうち1つまたはそれ以上を含み得る:アミノ酸(例えば、20個のアミノ酸)、プリン(例えば、ヒポキサンチン)、ピリミジン(例えば、チミジン)、コリン、イノシトール、チアミン、葉酸、ビオチン、カルシウム、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チミジン、シアノコバラミン、ピルベート、リポ酸、マグネシウム、グルコース、ナトリウム、カリウム、鉄、銅、亜鉛および重炭酸ナトリウム。いくつかの実施形態において、液体培養培地は、哺乳類由来の血清を含み得る。いくつかの実施形態において、液体培養培地は、哺乳類由来の血清または別の抽出物を含まない(組成が明らかな液体培養培地(defined liquid culture medium))。いくつかの実施形態において、液体培養培地は、微量金属、哺乳類成長ホルモンおよび/または哺乳類成長因子を含み得る。液体培養培地の別の例は、最少培地(例えば、無機塩、炭素源および水のみを含む培地)である。液体培養培地の非限定的な例は、本明細書で記載されている。液体培養培地のさらなる例が、当技術分野で公知であり、市販されてもいる。液体培養培地は、任意の密度の哺乳類細胞を含み得る。例えば、本明細書で使用されるとき、バイオリアクターから抜き出されたある体積の液体培養培地は、哺乳類細胞を実質的に含み得ない。
【0043】
「動物由来成分無含有の液体培養培地」という用語は、哺乳類に由来したいかなる成分(例えば、タンパク質または血清)も含まない液体培養培地を意味する。
【0044】
「血清無含有の液体培養培地」という用語は、哺乳類血清を含まない液体培養培地を意味する。
【0045】
「血清含有液体培養培地」という用語は、哺乳類血清を含む液体培養培地を意味する。
【0046】
「既知組成液体培養培地(chemically-defined liquid culture medium)」という用語は専門用語であり、化学的組成の全てが既知になっている液体培養培地を意味する。例えば、既知組成液体培養培地は、ウシ胎児血清、ウシ血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含まないが、こうした製造物はアルブミンと脂質との複雑な混合物を典型的には含む。
【0047】
「タンパク質無含有の液体培養培地」という用語は、いかなるタンパク質も(例えば、検出可能ないかなるタンパク質も)含まない、液体培養培地を意味する。
【0048】
「免疫グロブリン」という用語は、免疫グロブリンタンパク質(例えば、可変ドメイン配列、フレームワーク配列および/または定常ドメイン配列)に関する少なくとも15個のアミノ酸(例えば、少なくとも20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個のアミノ酸)からできたアミノ酸配列を含む、ポリペプチドを意味する。免疫グロブリンは例えば、例えば少なくともアミノ酸15個の軽鎖免疫グロブリン、例えば少なくともアミノ酸15個の重鎖免疫グロブリンを含み得る。免疫グロブリンは単離された抗体(例えば、IgG、IgE、IgD、IgA、またはIgM)、例えば、IgGのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)である。免疫グロブリンは、抗体フラグメント、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメントまたはscFvフラグメントであってよい。免疫グロブリンは、二重特異性抗体もしくは三重特異性抗体、または二量体抗体、三量体抗体もしくは多量体抗体、またはジアボディ、Affibody(登録商標)もしくはNanobody(登録商標)であってもよい。免疫グロブリンは、少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む人為的改変タンパク質(例えば、融合タンパク質)であってもよい。免疫グロブリンの非限定的な例は、本明細書で記載されており、免疫グロブリンのさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0049】
「タンパク質フラグメント」または「ポリペプチドフラグメント」という用語は、長さがアミノ酸少なくとももしくは約4個分、アミノ酸少なくとももしくは約5個分、アミノ酸少なくとももしくは約6個分、アミノ酸少なくとももしくは約7個分、アミノ酸少なくとももしくは約8個分、アミノ酸少なくとももしくは約9個分、アミノ酸少なくとももしくは約10個分、アミノ酸少なくとももしくは約11個分、アミノ酸少なくとももしくは約12個分、アミノ酸少なくとももしくは約13個分、アミノ酸少なくとももしくは約14個分、アミノ酸少なくとももしくは約15個分、アミノ酸少なくとももしくは約16個分、アミノ酸少なくとももしくは約17個分、アミノ酸少なくとももしくは約18個分、アミノ酸少なくとももしくは約19個分、またはアミノ酸少なくとももしくは約20個分、または長さがアミノ酸20個分超になっている、ポリペプチド配列の一部を意味する。組換えタンパク質フラグメントは、本明細書に記載の方法のいずれかを用いて製造することができる。
【0050】
「人為的改変タンパク質」という用語は、有機体(例えば、哺乳類)内部に存在する内因性核酸によって自然にコードされない、ポリペプチドを意味する。人為的改変タンパク質の例には、酵素(例えば、人為的改変酵素の安定性および/または触媒活性の増大をもたらす1つまたはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入または付加を受けている)、融合タンパク質、抗体(例えば、二価抗体、三価抗体またはジアボディ)、および、少なくとも1つの組換え足場配列を含む抗原結合性タンパク質が挙げられる。
【0051】
「分泌されたタンパク質」または「分泌された組換えタンパク質」という用語は、元々含まれていた少なくとも1つの分泌シグナル配列が、哺乳類細胞内部で翻訳され、哺乳類細胞中の分泌シグナル配列が酵素によって少なくとも部分的に開裂されると、細胞外の空間(例えば、液体培養培地)に少なくとも一部が分泌される、タンパク質(例えば、組換えタンパク質)を意味する。分泌されたタンパク質として取り扱われるために、「分泌された」タンパク質が、細胞から完全にかい離している必要がないことについては、当業者ならば理解されよう。
【0052】
「潅流型バイオリアクター」という用語は、第1の液体培養培地中の複数の細胞(例えば、哺乳類細胞)を含んでいるバイオリアクターを意味し、ここで、バイオリアクター内に存在する細胞の培養は、第1の液体培養培地を定期的または連続的に抜き出すこと、および同時またはすぐ後に、実質的に同じ体積の第2の液体培養培地をバイオリアクターに添加することを含む。いくつかの例において、培養期間(例えば、1日を基準とした際の培養培地再供給比率)中における増分による期間(例えば、約24時間の期間、約1分から約24時間の間の期間、または24時間超の期間)にわたって、抜き出しおよび添加が実行される第1の液体培養培地の体積の増分による変化(例えば、増大または減少)がある。毎日抜き出して置き換える培地の割合は、培養されている特定の細胞、初期の播種密度、および、特定の時間における細胞密度に応じて変動し得る。「RV」または「反応器容積」は、培養プロセスの開始時に存在する培養培地の体積(例えば、播種後に存在する培養培地の合計体積)を意味する。
【0053】
「流加型バイオリアクター」という用語は専門用語であり、第1の液体培養培地中の複数の細胞(例えば、哺乳類細胞)を含んでいるバイオリアクターを意味し、ここで、バイオリアクター内に存在する細胞の培養は、細胞培養物から第1の液体培養培地または第2の液体培養培地が大幅にまたは顕著に抜き出されることなく、第1の液体培養培地に第2の液体培養培地を定期的または連続的に添加することを含む。第2の液体培養培地は、第1の液体培養培地と同じであってよい。流加型培養のいくつかの例において、第2の液体培養培地は、濃縮された形態になった第1の液体培養培地である。流加型培養のいくつかの例において、第2の液体培養培地は、乾燥粉末として添加される。
【0054】
「清澄化済み液体培養培地」という用語は、細菌細胞または酵母細胞を実質的に無含有(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%または99%無含有)である、細菌細胞培養または酵母細胞培養から入手した液体培養培地を意味する。
【0055】
そうではないとの規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。方法および材料は、本発明における使用のために本明細書で記載されているが、当技術分野で公知になっている適切な他の方法および材料もまた、使用され得る。材料、方法および例は、説明用のものにすぎず、限定を加えるものになる意図はない。本明細書で言及された全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリおよび他の参考資料は、参照によって全部分を本明細書に組み入れる。矛盾する場合、本明細書の方が、規定を含めて支配する。
【0056】
本発明に関する他の特色および利点については、下記の詳細な記載および図面および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、アニオン交換および疎水性基を有する未処理(バージン)の多モード樹脂(AE樹脂)ならびに25kGyガンマ線照射したAE樹脂(クロマトグラフィーサイクルなし)のt0における結合等温線のグラフである。
図2図2は、各サイクルにおいて(組換えタンパク質の溶出後)700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)の緩衝液、続いて1N NaOHの溶液を用いて各樹脂を洗浄する場合、複数のサイクルのカラムクロマトグラフィーにわたるバージン(未処理)AE樹脂、15kGyガンマ線照射したAE樹脂、および25kGyガンマ線照射したAE樹脂の規格化された結合能力パーセントのグラフである。各樹脂の結合能力パーセントは時間0(t0)におけるバージン(未処理の)AE樹脂の結合能力に対して規格化されており、これはt0におけるガンマ線照射した樹脂と極めてよく似ている(27±2mg/mL)ことも見出された。
図3図3は、各サイクルにおいて(組換えタンパク質の溶出後)700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)の緩衝液、続いて1N NaOHの溶液を用いて各樹脂を洗浄する場合、複数のサイクルのカラムクロマトグラフィーにわたるバージン(未処理の)AE樹脂、15kGyガンマ線照射したAE樹脂、および25kGyガンマ線照射したAEの結合能力の低下の平均割合を示すグラフである。
図4図4は、各サイクルにおいて組換えタンパク質の溶出後700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)、続いて1N NaOHの溶液で洗浄したバージン(未処理の)AE樹脂(低pHアルギニンバージン)を含む単一のクロマトグラフィーカラムを用いた、または(各サイクルにおいて)組換えタンパク質の溶出後8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5(低pH尿素);6MグアニジンHCl(pH2.5)(低pHグアニジン);0.1M酢酸中0.5%Triton-X 100(pH2.5)、続いて0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)(低pH Triton);700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)(低pHアルギニン);もしくは0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)(低pH有機)で、各々続いて1N NaOHの溶液により洗浄した25kGyガンマ線照射したAE樹脂を含む単一のクロマトグラフィーカラムを用いた、複数のサイクルのカラムクロマトグラフィーにわたるバージン(未処理の)AE樹脂の規格化された結合能力パーセントのグラフである。各サイクルの各樹脂の結合能力パーセントは時間0(t0)におけるバージン(未処理の)AE樹脂の結合能力に規格化されており、これはt0におけるガンマ線照射した樹脂と極めてよく似ていることも見出された(27±2mg/mL)。
図5図5は、各サイクルにおいて(組換えタンパク質の溶出後)8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5、続いて1N NaOHの溶液を用いて各樹脂を洗浄した場合、25kGy照射したAE樹脂を含む3つのクロマトグラフィーカラムを用いて実行された複数のサイクルのカラムクロマトグラフィーにわたる280nmにおける溶出液吸光度を示すマルチカラムクロマトグラフィー(MCC)実験の典型的なクロマトグラフプロファイルである。3つの異なるサイクルで8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5の変性用緩衝液に曝露中AE樹脂から放出された結合したタンパク質を表すピークは矢印で示されている。クロマトグラフはMCC実験を実行するのに使用した3つ全てのクロマトグラフィーカラムに対するUVトレースを示す。
図6図6は、各サイクルにおいて組換えタンパク質の溶出後700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)、続いて1N NaOHの溶液で洗浄されたバージン(未処理の)AE樹脂(低pHアルギニンバージン)を含む単一のクロマトグラフィーカラムを用いた、または(各サイクルにおいて)組換えタンパク質の溶出後8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5(低pH尿素);6MグアニジンHCl(pH2.5)(低pHグアニジン);0.1M酢酸中0.5%Triton-X 100(pH2.5)、続いて0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)(低pH Triton);もしくは0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)(低pH有機)で;各々続いて1N NaOHの溶液で洗浄された25kGyガンマ線照射したAE樹脂を含む単一のクロマトグラフィーカラムを用いた複数のサイクルのカラムクロマトグラフィーにわたりサイクル当たりクロマトグラフィー樹脂に結合した回収された組換えタンパク質の割合のグラフである。
図7図7は、各サイクルにおいて組換えタンパク質の溶出後700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)で、続いて1N NaOHの溶液で洗浄されたバージン(未処理の)AE樹脂(低pHアルギニンバージン)を含む単一のクロマトグラフィーカラムを用いた、または(各サイクルにおいて)組換えタンパク質の溶出後8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5(低pH尿素);6MグアニジンHCl(pH2.5)(低pHグアニジン);0.1M酢酸中0.5%Triton-X 100(pH2.5)、続いて0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)(低pH Triton);もしくは0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)(低pH有機)で;各々続いて1N NaOHの溶液で洗浄された25kGyガンマ線照射したAE樹脂を含む単一のクロマトグラフィーカラムを用いた、複数のサイクルのカラムクロマトグラフィーにわたる溶出液中に存在する宿主細胞タンパク質(ng/mg)のグラフである。
図8図8は、リソソーム貯蔵疾患および各疾患を治療するのに使用することができる組換え治療用酵素のリストである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本明細書に、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂でクロマトグラフィーを実行する方法であって、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムを準備すること、そのカラムによって第1のサイクルのクロマトグラフィーを実行することを含み、該サイクルはクロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することを含む、方法が提供される。また、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムの使用を含む、組換えタンパク質を製造するための一体化されクローズドなまたは実質的にクローズドな連続的な方法も提供され、ここでガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は該方法における各々のサイクル中に変性用緩衝液に曝露され、低減したバイオバーデンの緩衝液が該方法で使用される。これらの方法およびプロセスの非限定的な局面が以下に記載される。当技術分野では理解できるように、以下に記載される様々な局面は無制限に任意の組合せで使用することができる。
【0059】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂
当技術分野で公知の多種多様な異なるタイプのクロマトグラフィー樹脂(またはその組合せ)は、当技術分野で公知の方法を用いてガンマ線照射に曝露することができる。例えば、コバルト-60またはセシウム-137のような同位体がガンマ線源として使用される。ガンマ線照射に曝露されるクロマトグラフィー樹脂は充填されたクロマトグラフィーカラム内に存在することができる。他の例において、ガンマ線照射に曝露されるクロマトグラフィー樹脂は密封容器内に存在する(例えば、密封容器内のスラリー)。
【0060】
クロマトグラフィー樹脂は約-25℃~約0℃(両端を含む)、または約0℃~約25℃(両端を含む)の温度でガンマ線照射に曝露することができる。クロマトグラフィー樹脂は約0.1kGy~約100kGy、約1kGy~約100kGy、約1kGy~約90kGy、約1kGy~約80kGy、約1kGy~約70kGy、約1kGy~約65kGy、約5kGy~約65kGy、約10kGy~約60kGy、約10kGy~約55kGy、約10kGy~約50kGy、約10kGy~約45kGy、約10kGy~約40kGy、約10kGy~約35kGy、約10kGy~約30kGy、約15kGy~約50kGy、約15kGy~約45kGy、約15kGy~約40kGy、約15kGy~約35kGy、または約20kGy~約30kGyの線量のガンマ線照射に曝露することができる。
【0061】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂はアニオン交換クロマトグラフィー樹脂、カチオン交換クロマトグラフィー樹脂、サイズ排除クロマトグラフィー樹脂、疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂、アフィニティークロマトグラフィー樹脂、またはこれらの任意の組合せであることができる。アフィニティークロマトグラフィー樹脂の非限定例には、ペプチドリガンド、タンパク質リガンド(例えば、プロテインAまたはプロテインG)、アプタマーリガンド、基質リガンド、生成物リガンド、金属リガンド、および補因子リガンドを有する樹脂がある。ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は二モードクロマトグラフィー樹脂(例えば、アニオン交換および疎水性相互作用クロマトグラフィー樹脂の特徴を有するもの)であることができる。
【0062】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラム
本明細書に記載されている方法はガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムの使用を含み、また本明細書に記載されている方法は少なくとも1つのガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムを含む1つまたは2つのMCCSの使用を含む。ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は本明細書に記載されている任意のタイプの樹脂(または当技術分野で公知の任意のタイプのクロマトグラフィー樹脂)であることができる。ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の方法のいずれかを用いて製造することができる。
【0063】
かかるクロマトグラフィーカラムはクロマトグラフィーカラムに未処理のクロマトグラフィー樹脂(複数可)を充填し、ガンマ線照射に(例えば、本明細書に記載されている曝露および条件のいずれかを用いて)曝露することにより生産することができる。他の例において、ガンマ線照射された樹脂(複数可)を含むクロマトグラフィーカラムは、クロマトグラフィー樹脂(例えば、容器内に入れて提供されたクロマトグラフィー樹脂)をガンマ線照射に曝露し、クロマトグラフィーカラムにそのガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を充填することにより生産することができる。かかる方法において、ガンマ線照射に曝露されたクロマトグラフィー樹脂は容器内のスラリーとして存在することができ、クロマトグラフィーカラムは低減したバイオバーデンのフード内で充填される。他の方法において、クロマトグラフィー樹脂は容器内で固体混合物としてガンマ線照射に曝露することができ、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂のスラリーは(例えば、低減したバイオバーデンのフード内で製造された)低減したバイオバーデンの緩衝液を用いて製造することができ、得られたスラリーを用いて低減したバイオバーデンのフード内でクロマトグラフィーカラムに充填することができる。これらの例のいくつかにおいて、充填に先立って、クロマトグラフィーカラムを処理(例えば、オートクレーブ処理、ガンマ線照射、またはエチレンオキサイドへの曝露)してバイオバーデンを低減することができる。
【0064】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムは約1×10-3~約1×10-12、約1×10-4~約1×10-12、1×10-5~約1×10-11、約1×10-5~約1×10-10、約1×10-5~約1×10-9、約1×10-6~約1×10-9、または約1×10-6~約1×10-8(両端を含む)の滅菌保証レベル(SAL)を有することができる。
【0065】
低減したバイオバーデンの緩衝液
本明細書に記載の方法およびプロセスは1種またはそれ以上の低減したバイオバーデンの緩衝液を用いて実行することができる。当技術分野では理解されるように、低減したバイオバーデンの緩衝液はクロマトグラフィーのサイクルで使用される任意の種類の緩衝液(例えば、クロマトグラフィーのサイクルまたは本明細書に記載の単位操作のいずれかの工程で使用される緩衝液)であることができる。緩衝液のバイオバーデンを低減するための代表的な方法には、ろ過(0.2μm孔径のろ過)、オートクレーブ処理、およびガンマ線照射がある。緩衝液のバイオバーデンを低減するさらなる方法は当技術分野で公知である。低減したバイオバーデンの緩衝液は約1×10-3~約1×10-12、約1×10-4~約1×10-12、1×10-5~約1×10-11、約1×10-5~約1×10-10、約1×10-5~約1×10-9、約1×10-6~約1×10-9、または約1×10-6~約1×10-8(両端を含む)の滅菌保証レベルを有することができる。
【0066】
変性用緩衝液
本明細書に記載の方法およびプロセスは変性用緩衝液の使用を含む。変性用緩衝液としては、タンパク質の変性を引き起こす結果となる充分な量の1つまたはそれ以上の化学的作用物質(例えば、洗剤(複数可)、還元剤(複数可)、酸(複数可)、カオトロピック剤(複数可)、有機溶媒(複数可)、もしくは架橋剤(複数可)、またはこれらの任意の組合せ)がある。変性用緩衝液に包含され得る非限定的な代表的な洗剤にはTriton X-100、ドデシル硫酸ナトリウム、およびエチルトリメチルアンモニウムブロミドがある。変性用緩衝液に包含され得る有機溶媒の非限定例にはエタノール、ブタノール、フェノール、プロパノール、およびメタノールがある。変性用緩衝液に包含され得る還元剤の非限定例には2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、およびトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンがある。変性用緩衝液に包含され得る酸の非限定例には酢酸、トリクロロ酢酸、およびスルホサリチル酸がある。変性用緩衝液に包含され得るカオトロピック剤の非限定例には尿素(例えば、6~9M尿素)、チオ尿素、塩化グアニジン(例えば、5~7M塩化グアニジン)、過塩素酸リチウム(例えば、4~7M過塩素酸リチウム)、または酢酸リチウムがある。変性用緩衝液に包含され得る架橋剤の非限定例にはホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドがある。
【0067】
変性用緩衝液の非限定例には:8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5(例えば、続いて1N NaOH);6MグアニジンHCl、pH2.5(例えば、続いて1N NaOHまたは1M NaOH+1M NaCl);および0.1M酢酸中0.5%Triton-X 100、pH2.5(例えば、続いて0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール、pH2.5、続いて1N NaOH)がある。
【0068】
組換え治療用タンパク質
本明細書に記載の組換えタンパク質は組換え治療用タンパク質であることができる。本明細書で提供された方法によって製造され得る組換え治療用タンパク質の非限定的な例には、免疫グロブリン(軽鎖および重鎖免疫グロブリンを含める)、抗体または抗体フラグメント(例えば、本明細書に記載の抗体フラグメントのいずれか)、酵素(例えば、ガラクトシダーゼ(例えば、アルファ-ガラクトシダーゼ)、Myozyme(登録商標)またはCerezyme(登録商標))、タンパク質(例えば、ヒトエリスロポエチン、腫瘍壊死因子(TNF)、またはインターフェロンアルファもしくはベータ)、または免疫原性もしくは抗原性タンパク質もしくはタンパク質フラグメント(例えば、ワクチンにおける使用のためのタンパク質)が挙げられる。各種のリソソーム貯蔵疾患を治療するのに使用することができる組換え治療用酵素の非限定例が図8に示されている。組換え治療用タンパク質は、少なくとも1つの多機能性組換えタンパク質足場を含む、人為的改変抗原結合性ポリペプチドであってよい(例えば、Gebauerら、Current Opin.Chem.Biol.13:245~255、2009年;および米国特許出願公開第2012/0164066号(参照によって全部分を本明細書に組み入れる)で記載された、抗原結合性組換えタンパク質を参照されたい。)。抗体である組換え治療用タンパク質の非限定的な例には、パニツムマブ、オマリズマブ、アバゴボマブ(abagovomab)、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ(alacizumab)、アラシズマブペゴール、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブ(anatumomab)、アポリズマブ、アチヌマブ(atinumab)、トシリズマブ、バシリキシマブ(basilizimab)、ベクツモマブ(bectumomab)、ベリムマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、カナキヌマブ、セツキシマブ、ダクリズマブ、デンスマブ(densumab)、エクリズマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エファングマブ、エルツマキソマブ(ertumaxomab)、エタラシズマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ、ナタリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、ラニビズマブ、リツキシマブ、トシリズマブおよびトラスツズマブが挙げられる。本明細書に記載の方法によって製造され得る組換え治療用抗体のさらなる例は、当技術分野で公知である。本方法によって製造/精製され得る組換え治療用タンパク質のさらなる非限定的な例には、アルグルコシダーゼアルファ、ラロニダーゼ、アバタセプト、ガルスルファーゼ、ルトロピンアルファ、抗血友病因子、アガルシダーゼベータ、インターフェロンベータ-1a、ダーベポエチンアルファ、テネクテプラーゼ、エタネルセプト、凝固第IX因子、卵胞刺激ホルモン、インターフェロンベータ-1a、イミグルセラーゼ、ドルナーゼアルファ、エポエチンアルファおよびアルテプラーゼが挙げられる。
【0069】
分泌された可溶性組換え治療用タンパク質は、細胞(例えば、哺乳類細胞)から液体培養培地を除去または物理的に分離することにより、液体培養培地(例えば、第1の液体培養培地および/または第2の液体培養培地)から回収することができる。細胞(例えば、哺乳類細胞)から液体培養培地を除去するための相異なる種々の方法は、当技術分野で公知であり、例えば、遠心分離、ろ過、ピペット操作および/または吸引が挙げられる。分泌された組換え治療用タンパク質は、その後、様々な種類のクロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、カチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、もしくは疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはこれらの任意の組合せ)および/またはろ過(例えば、分子量カットオフろ過)を始めとする様々な生化学的技術を用いて、液体培養培地から回収し、さらに精製することができる。
【0070】
クロマトグラフィーのサイクル
当技術分野で周知のように、クロマトグラフィーのサイクルにおける工程は、クロマトグラフィー樹脂、サイクルにおいて各々の工程を実行するのに使用される緩衝液、および標的とする組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)の生物物理学的な特性に応じて異なることができる。例えば、アフィニティークロマトグラフィーカラムは、標的とする組換えタンパク質を含む流体をアフィニティークロマトグラフィーカラムに装填し、カラムを洗浄して望ましくない生物学的材料(例えば、夾雑するタンパク質および/または小分子)を除去し、カラムに結合した標的とする組換えタンパク質を溶出し、カラムを再平衡化する工程を含むことができる。標的とする組換えタンパク質が装填工程でクロマトグラフィー樹脂に結合するカチオンおよび/またはアニオン交換クロマトグラフィーカラムを用いるクロマトグラフィーのサイクルは、標的とするタンパク質を含む流体をカラムに装填し、カラムを洗浄して望ましくない生物学的材料を除去し、カラムに結合した標的とする組換えタンパク質を溶出し、カラムを再平衡化する工程を含むことができる。他の例において、望ましくない生物学的材料が装填工程中にクロマトグラフィー樹脂に結合するが標的とする組換えタンパク質は結合しないカチオンおよび/またはアニオン交換クロマトグラフィーカラムを用いるクロマトグラフィーのサイクルは、標的とするタンパク質を含む流体をカラムに装填し、通過画分中の標的とする組換えタンパク質を収集し、カラムを再平衡化する工程を含むことができる。当技術分野で周知のように、クロマトグラフィーサイクルにおける単一の工程のいずれも単一の緩衝液または複数の緩衝液(例えば、2種またはそれ以上の緩衝液)を含むことができ、クロマトグラフィーサイクルにおける単一の工程のいずれか1つまたはそれ以上が緩衝液勾配を含むことができる。クロマトグラフィーの単一のサイクルの様々な周知の局面の組合せのいずれも、例えば、異なるクロマトグラフィー樹脂(複数可)、流量(複数可)、緩衝液(複数可)、カラムのボイド容積(複数可)、カラムのベッド容積(複数可)、各々の工程で使用される緩衝液の体積(複数可)、標的とするタンパク質を含む流体の体積(複数可)、ならびに各々の工程で使用される緩衝液(複数可)の数および種類を、任意の組合せでこれらの方法に使用することができる。
【0071】
ガンマ線殺菌された樹脂でクロマトグラフィーを実行する方法
本明細書に、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を用いてクロマトグラフィーを実行する方法が提供される。これらの方法は、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムを準備すること、このカラムによって、クロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することを含む第1のサイクルのクロマトグラフィーを実行すること、該カラムによって少なくとも1つの追加のサイクルのクロマトグラフィーを実行することを含む。ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂は、任意のタイプのクロマトグラフィー樹脂であることができ、および/または本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知のガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂のいずれかであることができる。クロマトグラフィーカラムは、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知のガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムのいずれかであることができる。組換えタンパク質は組換え治療用タンパク質(例えば、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の組換え治療用タンパク質のいずれか)であることができる。
【0072】
いくつかの例において、カラムはマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS)の一部であり、例えば、定期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)の一部であることができる。
【0073】
変性用緩衝液は本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の代表的な変性用緩衝液のいずれかであることができる。例えば、変性用緩衝液は尿素、グアニジン塩酸塩、およびTriton(商標) X-100のうち1つまたはそれ以上を含むことができる。いくつかの例において、クロマトグラフィー樹脂は少なくとも1分~約2時間(例えば、1分~約1.5時間、約1分~約1.0時間、約1分~約55分、約1分~約50分、約1分~約45分、約1分~約40分、約1分~約40分、約1分~約35分、約1分~約30分、約1分~約25分、約1分~約20分、約1分~約15分、または約1分~約10分)の期間変性用緩衝液に曝露される。いくつかの例において、クロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することは、約0.5×ベッド容積~約10×ベッド容積(例えば、約0.5×ベッド容積~約9.0×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約8.0×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約7.0×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約6.0×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約5.0×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約4.0×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約3.5×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約3.0×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約2.5×ベッド容積、約0.5×ベッド容積~約2.0×ベッド容積、または約0.5×ベッド容積~約1.5×ベッド容積)の変性用緩衝液をクロマトグラフィーカラムに通すことを含む。いくつかの例において、第1のサイクルのクロマトグラフィーは、約0.5M~約1.5M水酸化ナトリウムを含む洗浄用緩衝液にクロマトグラフィー樹脂を曝露し、続いて変性用緩衝液に曝露することを含むことができる。
【0074】
前記カラムによって実行される第1のサイクルのクロマトグラフィーは、クロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することを含む本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知のいずれかのサイクルのクロマトグラフィーであることができる。前記カラムによって実行される少なくとも1つの追加のサイクルのクロマトグラフィーは本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知のいずれかのサイクルのクロマトグラフィーであることができる。例えば、第1のサイクルのクロマトグラフィーおよび少なくとも1つの追加のサイクルのクロマトグラフィーは:組換えタンパク質を含む液体にクロマトグラフィー樹脂を曝露することにより組換えタンパク質を捕獲し;クロマトグラフィー樹脂を洗浄用緩衝液に曝露することによりクロマトグラフィー樹脂を洗浄し、クロマトグラフィー樹脂を溶出緩衝液に曝露することにより組換えタンパク質を溶出し;クロマトグラフィー樹脂を変性用緩衝液に曝露することによりクロマトグラフィー樹脂を再生する工程を含むことができる。いくつかの例において、組換えタンパク質を含む液体は液体培養培地(例えば、潅流またはバッチ培養から収集された液体培養培地)である。
【0075】
第1のクロマトグラフィーサイクルおよび少なくとも1つの追加のクロマトグラフィーサイクルは、閉鎖され一体化されたシステム(例えば、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の代表的な閉鎖され一体化されたシステムのいずれか)を用いて実行することができる。例えば、第1のクロマトグラフィーサイクルおよび少なくとも1つの追加のクロマトグラフィーサイクルは、緩衝液が低減したバイオバーデンの緩衝液(例えば、第1および少なくとも1つの追加のサイクルで使用されるあらゆる緩衝液)である閉鎖され一体化されたシステムを用いて実行することができる。当技術分野で周知のように、低減したバイオバーデンの緩衝液は様々な異なる方法を用いて生産する(例えば、ろ過、オートクレーブ処理、または熱処理により製造する)ことができる。
【0076】
少なくとも1つの追加のサイクルのクロマトグラフィーは2またはそれ以上(例えば、3またはそれ以上、4またはそれ以上、5またはそれ以上、6またはそれ以上、7またはそれ以上、8またはそれ以上、9またはそれ以上、10またはそれ以上、11またはそれ以上、12またはそれ以上、13またはそれ以上、14またはそれ以上、15またはそれ以上、20またはそれ以上、25またはそれ以上、30またはそれ以上、35またはそれ以上、40またはそれ以上、45またはそれ以上、50またはそれ以上、55またはそれ以上、60またはそれ以上、65またはそれ以上、70またはそれ以上、75またはそれ以上、80またはそれ以上、85またはそれ以上、90またはそれ以上、95またはそれ以上、または100またはそれ以上)のサイクルの追加のクロマトグラフィーであることができる。いくつかの例において、少なくとも1つの追加のサイクルのクロマトグラフィーは少なくとも3日(例えば、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも16日、少なくとも17日、少なくとも18日、少なくとも19日、少なくとも20日、少なくとも21日、少なくとも22日、少なくとも23日、少なくとも24日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、少なくとも45日、少なくとも50日、少なくとも55日、少なくとも60日、少なくとも65日、少なくとも70日、少なくとも75日、少なくとも80日、少なくとも85日、少なくとも90日、少なくとも95日、または少なくとも100日)の期間にわたり連続的に実行される。
【0077】
組換えタンパク質を製造するための一体化され、クローズドなまたは実質的にクローズドな、連続的な方法
本明細書に、精製された組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)を製造するための一体化され、クローズドなまたは実質的にクローズドな、連続的な方法が提供される。これらの方法は、実質的に細胞を含まない組換えタンパク質(例えば組換え治療用タンパク質)を含有する液体培養培地を準備することを含む。
【0078】
いくつかの方法はガンマ線殺菌された樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムを含むマルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS)に液体培養培地を連続的に供給することを含み、ここでクロマトグラフィー樹脂は各サイクルの間変性用緩衝液に曝露される(例えば、本明細書に記載のいずれかの持続時間の間本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の変性用緩衝液のいずれかに曝露される)。これらの方法は低減したバイオバーデンの緩衝液を利用し、一体化され、かつ液体培養培地から、精製された組換えタンパク質(例えば治療用タンパク質原薬)であるMCCSからの溶出液まで連続的に稼動する。
【0079】
いくつかの方法は、液体培養培地を第1のMCCS(MCCS1)に連続的に供給し、MCCS1を用いて組換えタンパク質を液体培養培地から捕獲し、組換えタンパク質を含むMCCS1から溶出液を生産し、溶出液を第2のMCCS(MCCS2)に連続的に供給し、組換えタンパク質を溶出液からMCCS2に連続的に供給し、その後組換えタンパク質を溶出することにより、精製された組換えタンパク質を生産することを含み、ここでMCCS1および/またはMCCS2内の少なくとも1つのカラムはガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムであり、クロマトグラフィー樹脂は該方法において各サイクルの間に変性用緩衝液に曝露される(例えば、本明細書に記載のいずれかの持続時間の間本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の変性用緩衝液のいずれかに曝露される)。これらの方法は低減したバイオバーデンの緩衝液を利用し、一体化され、かつ液体培養培地から、精製された組換えタンパク質まで連続的に稼動する。
【0080】
いくつかの例において、MCCS、MCCS1、および/またはMCCS2で使用されるクロマトグラフィーカラムは各々がガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含む。いくつかの実施形態は、精製された組換えタンパク質を医薬組成物に配合する工程をさらに含む。
【0081】
本明細書に記載の方法により、組換えタンパク質を含む液体培養培地からの精製された組換えタンパク質の連続的で時間効率の良い生産が提供される。例えば、治療用タンパク質を含む液体培養培地のMCCSまたはMCCS1への供給から、それぞれMCCSまたはMCCS2からの組換えタンパク質の溶出までの経過時間は、例えば、約4時間~約48時間(両端を含む)、例えば、約4時間~約40時間、約4時間~約35時間、約4時間~約30時間、約4時間~約28時間、約4時間~約26時間、約4時間~約24時間、約4時間~約22時間、約4時間~約20時間、約4時間~約18時間、約4時間~約16時間、約4時間~約14時間、約4時間~約12時間、約6時間~約12時間、約8時間~約12時間、約6時間~約20時間、約6時間~約18時間、約6時間~約14時間、約8時間~約16時間、約8時間~約14時間、約8時間~約12時間、約10時間~20時間、約10時間~18時間、約10時間~16時間、約10時間~14時間、約12時間~約14時間、約10時間~約40時間、約10時間~約35時間、約10時間~約30時間、約10時間~約25時間、約15時間~約40時間、約15時間~約35時間、約15時間~約30時間、約20時間~約40時間、約20時間~約35時間、または約20時間~約30時間(両端を含む)であることができる。他の例において、組換えタンパク質を含む液体培養培地のMCCSまたはMCCS1への供給から、それぞれMCCSまたはMCCS2からの組換えタンパク質の溶出までの経過時間は、例えば、約4時間超~約40時間未満(両端を含む)、例えば、約4時間超~約39時間未満、約38時間、約37時間、約36時間、約35時間、約34時間、約33時間、約32時間、約31時間、約30時間、約29時間、約28時間、約27時間、約26時間、約25時間、約24時間、約23時間、約22時間、約21時間、約20時間、約19時間、約18時間、約17時間、約16時間、約15時間、約14時間、約13時間、約12時間、約11時間、約10時間、約9時間、約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、または約4.5時間(両端を含む)である。
【0082】
これらの方法のいずれかで使用することができるMCCS(MCCS、MCCS1、および/またはMCCS2)の非限定的な局面は米国仮特許出願第61/775,060号および同第61/856,390号(各々参照によって本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0083】
いくつかの代表的な方法は保持する工程を利用しない(例えば、方法全体でリザーバ(例えば、停留タンク(break tank))を使用しない)。他の方法においては、方法全体で最大1、2、3、4、または5個のリザーバ(例えば、停留タンク)が使用される。本明細書に記載の方法のいずれも方法全体で最大1、2、3、4、または5個のリザーバ(例えば、停留タンク)を利用することができ、ここで各々の停留タンクは、例えば、約5分~約6時間未満(両端を含む)、例えば、約5分~約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、または約30分(両端を含む)の全期間の間組換えタンパク質のみを保持する。
【0084】
いくつかの方法は1、2、3、4、5、または6個のリザーバ(例えば、停留タンク)を利用し、例えば、1mL~約300mL(両端を含む)、例えば、1mL~約280mL、約260mL、約240mL、約220mL、約200mL、約180mL、約160mL、約140mL、約120mL、約100mL、約80mL、約60mL、約40mL、約20mL、または約10mL(両端を含む)である容量を有することができる。MCCSまたはMCCS1に供給される前に流体を保持するために(本明細書に記載の方法のいずれかで)使用されるいずれのリザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))も、例えば、MCCSの第1のカラムすなわちMCCS1の装填体積の1mL~約100%(両端を含む)、例えば、1mL~約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約5%(両端を含む)である容量を有することができる。MCCS1からの溶出液がMCCS2に入る前にその溶出液を保持するためにリザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))を使用することができ、このリザーバは、例えば、MCCS2の第1のカラムの装填体積の1mL~約100%(両端を含む)、例えば、1mL~約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約5%(両端を含む)である容量を有することができる。
【0085】
これらの方法の様々なさらなる局面は以下に詳細に記載され、本明細書に提供される方法において制限されることなく任意の組合せで使用することができる。提供される方法の代表的な局面が以下に記載されているが、当業者には理解されるように、本明細書に記載の方法に追加の工程を加えることができ、他の材料を使用して本明細書に記載の方法のいずれかの工程を実行することができる。
【0086】
液体培養培地
実質的に細胞を含まない組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)を含む液体培養培地は任意の起源に由来することができる。例えば、液体培養培地は組換え細胞培養物(例えば、組換え細菌、酵母、または哺乳類細胞培養物)から得ることができる。液体培養培地は、流加式細胞(例えば、哺乳類細胞)培養物(例えば、組換えタンパク質を分泌する哺乳類細胞の培養物を含む流加式バイオリアクター)または潅流細胞(例えば、哺乳類細胞)培養物(例えば、組換えタンパク質を分泌する哺乳類細胞の培養物を含む潅流バイオリアクター)から得ることができる。液体培養培地はまた、組換えタンパク質を分泌する細菌または酵母細胞の培養物からの清澄化液体培養培地であることもできる。
【0087】
組換え細胞培養物から得た液体培養培地をろ過または清澄化して、細胞および/またはウィルスを実質的に含まない液体培養培地を得ることができる。細胞を除去するために液体培養培地をろ過または清澄化する方法は当技術分野で公知である(例えば、0.2-μmのろ過およびAlternating Tangential Flow(ATFTM)システムを用いるろ過)。組換え細胞はまた、遠心分離を用い、実質的に細胞を含まない液体培養培地である上澄みを除去して液体培養培地から除去することもでき、または液体培養培地を含む容器(例えば、バイオリアクター)の重力方向の底部(gravitational bottom)に細胞を沈降させ、沈降した組換え細胞から遠い液体培養培地(実質的に細胞を含まない液体培養培地)を除去することによっても液体培養培地から除去することができる。
【0088】
液体培養培地は、本明細書に記載または当技術分野で公知の組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)のいずれかを産生する組換え細胞(例えば、組換え細菌、酵母、または哺乳類細胞)の培養物から得ることができる。本明細書に記載のいずれかの方法のいくつかの例は、組換えタンパク質(例えば、組換え治療用タンパク質)を産生する組換え細胞(例えば、組換え細菌、酵母、または哺乳類細胞)を培養する工程をさらに含むことができる。
【0089】
液体培養培地は本明細書に記載または当技術分野で公知のあらゆる種類の液体培養培地であることができる。例えば、液体培養培地は:動物由来の成分を含まない液体培養培地、血清を含まない液体培養培地、血清を含有する液体培養培地、既知組成の液体培養培地、およびタンパク質を含まない液体培養培地からなる群から選択することができる。本明細書に記載の方法のいずれにおいても、培養物から得られた液体培養培地は、MCCSまたはMCCS1に供給される前に第2の流体(例えば、緩衝液)の添加により希釈することができる。
【0090】
実質的に細胞を含まない組換えタンパク質を含む液体培養培地は、液体培養培地をMCCSまたはMCCS1に供給する前に(例えば、約15℃未満(例えば、約10℃未満、約4℃未満、約0℃未満、約-20℃未満、約-50℃未満、約-70℃未満、または約-80℃未満)の温度で)少なくとも1日(例えば、少なくとも約2日、少なくとも約5日、少なくとも約10日、少なくとも約15日、少なくとも約20日、または少なくとも約30日)貯蔵することができる。あるいは、いくつかの例において、液体培養培地はバイオリアクターから直接MCCSまたはMCCS1に供給される(例えば、ろ過または清澄化工程の後バイオリアクターから直接MCCSまたはMCCS1に供給される)。
【0091】
マルチカラムクロマトグラフィーシステム
本明細書に記載の方法は、MCCSまたは2つまたはそれ以上の(例えば、2つ、3つ、4つ、5つのまたは6つの)マルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS)(例えば、MCCS1およびMCCS2)の使用を含む。MCCSは、2つもしくはそれ以上のクロマトグラフィーカラム、2つもしくはそれ以上のクロマトグラフィー膜、または少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムと少なくとも1つのクロマトグラフィー膜との組合せを含み得る。非限定的な例において、MCCS(例えば、本明細書の方法のいずれかにおけるMCCS、MCCS1および/またはMCCS2)は、4つのクロマトグラフィーカラム、または3つのクロマトグラフィーカラムおよび1つのクロマトグラフィー膜、または3つのクロマトグラフィーカラム、または2つのクロマトグラフィーカラムおよび2つのクロマトグラフィー膜、または2つのクロマトグラフィーカラムおよび1つのクロマトグラフィー膜を含み得る。クロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜の組合せのさらなる例については、当業者ならば限定を伴うことなく、MCCS(例えば、本明細書に記載の方法のいずれかにおけるMCCS、MCCS1および/またはMCCS2)における使用のために想定することができる。MCCS内に存在する個々のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜は、同一であってもよいし(例えば、同じ形状、容積、樹脂、捕獲機構および単位操作を有していてもよいし)、または異なっていてもよい(例えば、異なる形状、容積、樹脂、捕獲機構および単位操作のうち1つまたはそれ以上を有していてもよい)。MCCS(例えば、本明細書に記載の方法のいずれかにおけるMCCS、MCCS1および/またはMCCS2)内に存在する個々のクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は、同じ単位操作(例えば、捕獲する単位操作、精製する単位操作またはポリッシュする単位操作)を実行することもできるし、または異なる単位操作(例えば、例えば捕獲すること、精製すること、ポリッシュすること、ウィルスを不活性化すること、組換えタンパク質を含む流体のイオン濃度および/またはpHを調節すること、ならびにろ過することからできた群より選択される異なる単位操作)を実行することもできる。例えば、本明細書に記載の方法の例において、MCCSまたはMCCS1内の少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜は組換えタンパク質を捕獲するという単位操作を実行する。
【0092】
MCCS内に存在し得る(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2内に存在し得る)1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(複数可)は、例えば、上下限も含めて約1mLから約2mLの間、約5mL、約10mL、約15mL、約20mL、約25mL、約30mL、約35mL、約40mL、約45mL、約50mL、約55mL、約60mL、約65mL、約70mL、約75mL、約80mL、約85mL、約90mL、約95mL、または約100mLの間の樹脂体積を有し得る。MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2内に存在し得る)内に存在し得る1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(複数可)は、約2mLから約100mLの間、約2mLから約90mLの間、約2mLから約80mLの間、約2mLから約70mLの間、約2mLから約60mLの間、約2mLから約50mLの間、約5mLから約50mLの間、約2mLから約45mLの間、約5mLから約45mLの間、約2mLから約40mLの間、約5mLから約40mLの間、約2mLから約35mLの間、約5mLから約35mLの間、約2mLから約30mLの間、約5mLから約30mLの間、約2mLから約25mLの間、約5mLから約25mLの間、約15mLから約60mLの間、約10mLから約60mLの間、約10mLから約50mLの間、および約15mLから約50mLの間の樹脂体積を有し得る。本明細書に記載の方法のいずれかにおいて使用される、MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)内の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(複数可)は、実質的に同じ樹脂体積を有していてもよいし、または相異なる樹脂体積を有していてもよい。MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)内の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(複数可)のために使用される流量は、例えば約0.2mL/分から約25mL/分の間(例えば、約0.2mL/分から約20mL/分の間、約0.5mL/分から約20mL/分の間、約0.2mL/分から約15mL/分の間、約0.5mL/分から約15mL/分の間、約0.5mL/分から約10mL/分の間、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)であってよい。
【0093】
MCCS内(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2内)の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(複数可)は、実質的に同じ形状を有していてもよいし、または実質的に異なる形状を有していてもよい。例えば、MCCS内(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2内)の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(複数可)は、円形シリンダー状になった実質的に同じ形状を有していてもよいし、または、長円形シリンダー状になった実質的に同じ形状を有していてもよい。
【0094】
MCCS内に存在し得る(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2内に存在し得る)1つまたはそれ以上のクロマトグラフィー膜(複数可)は、例えば約1mLから約500mLの間(例えば、約1mLから約475mLの間、約1mL~約450mL、約1mL~約425mL、約1mL~約400mL、約1mL~約375mL、約1mL~約350mL、約1mL~約325mL、約1mL~約300mL、約1mL~約275mL、約1mL~約250mL、約1mL~約225mL、約1mL~約200mL、約1mL~約175mL、約1mL~約150mL、約1mL~約125mL、約1mL~約100mL、約2mL~約100mL、約5mL~約100mL、約1mL~約80mL、約2mL~約80mL、約5mL~約80mL、約1mL~約60mL、約2mL~約60mL、約5mL~約60mL、約1mL~約40mL、約2mL~約40mL、約5mL~約40mL、約1mL~約30mL、約2mL~約30mL、約5mL~約30mL、約1mLから約25mLの間、約2mLから約25mLの間、約1mLから約20mLの間、約2mLから約20mLの間、約1mLから約15mLの間、約2mLから約15mLの間、約1mLから約10mLの間、または約2mLから約10mLの間)のベッドボリュームを有し得る。
【0095】
1つまたはそれ以上の(例えば、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24)異なる種類の低減したバイオバーデンの緩衝液が、本明細書に記載の方法のいずれかにおけるMCCS、MCCS1および/またはMCCS2の使用中に用いられ得る。当技術分野で公知のように、本明細書に記載の方法でMCCS、MCCS1、および/またはMCCS2に使用される低減したバイオバーデンの緩衝液の1つまたはそれ以上の種類は、MCCS、MCCS1、および/またはMCCS2のクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)に存在する樹脂、組換えタンパク質の生物物理学的な性質、ならびにMCCS、MCCS1、および/またはMCCS2の特定のクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜により実行される単位操作(例えば、本明細書に記載の代表的な単位操作のいずれか)に依存する。本明細書に記載の方法のいずれかにおけるMCCS、MCCS1および/またはMCCS2の使用中に用いられるバッファーの体積および種類は、当業者によって決定することもできる(例えば、以下でより詳細に論述している)。例えば、本明細書に記載の方法のいずれかにおけるMCCS、MCCS1および/またはMCCS2の使用中に用いられるバッファーの体積および種類(複数可)は、精製された組換えタンパク質(例えば、組換えタンパク質薬物生成物)における次のもののうち1つまたはそれ以上を最適化するために選択することができる:組換えタンパク質の総合的収率、組換えタンパク質の活性、組換えタンパク質の純度の水準、および、組換えタンパク質を含む流体(例えば、液体培養培地)からの生物型夾雑物の除去(例えば、活性ウィルス、マイコバクテリア、酵母、細菌または哺乳類細胞の非存在)。
【0096】
MCCS、MCCS1および/またはMCCS2は、定期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)であってよい。PCCSは例えば、2つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムからの組換えタンパク質の連続的な溶出を可能にするために切り替えられる、2つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(例えば、3つのカラムまたは4つのカラム)を含み得る。PCCSは、2つもしくはそれ以上のクロマトグラフィーカラムを含み得、2つもしくはそれ以上のクロマトグラフィー膜を含み得、または少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび少なくとも1つのクロマトグラフィー膜を含み得る。カラム動作(サイクル)は一般に、装填工程、洗浄工程、溶出工程および再生工程からなる。PCCSにおいては、サイクル方式にして同じ工程を別々に連続的に稼動させるために、複数のカラムが使用される。カラムが直列で動作するため、1つのカラムから出てくる通過画分および洗浄剤は、別のカラムによって捕捉される。こうしたPCCSに特有の特色は、バッチモード時のクロマトグラフィー中に典型的であるのと同様に、動的結合能力ではなく静的結合能力に近くなった樹脂のローディングを可能にする。連続的なサイクル運転および溶出の結果として、PCCSに入り込む流体が連続的に処理され、組換えタンパク質を含む溶出液が連続的に製造される。
【0097】
PCCSサイクルで1つの工程から別の工程に進むためにカラム切り替え方策が使用される。PCCSで使用することができるカラム切り替えの例は米国仮特許出願第61/775,060号および同第61/856,390号に記載されている。例えば、カラム切り替え方法はカラム毎に2つの自動化された切り替え操作を使用することができる:その第1は最初の生成物の破過に関連し、第2はカラム飽和に対応する。カラム切り替え操作をいつ発生させるべきかという決定は、PCCS内に存在する各クロマトグラフィーカラムから出てくる溶出液中の組換えタンパク質濃度を監視すること(例えば、UV監視によって実行される監視)によって決定することができる。例えば、カラム切り替えは、フィードバック制御を用いた生成物濃度のインライン測定が可能な任意のPATツールにより、決定することができる。PATツールは、フィードバック制御を用いた生成物濃度の実時間インライン測定が可能である。当技術分野で公知になっているのと同様に、カラム転換は、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2内の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜を流体(例えば、バッファー)が通過する時間または通過する量に基づいて設計することもできる。
【0098】
PCCSにおいて、PCCS内に存在する各クロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜上における組換えタンパク質の滞留時間(RT)は、第1のカラム/膜からの破過がPCCS内の別のカラム/膜によって捕捉され得るため、カラム/膜のサイズ増大を伴うことなく短縮され得る。連続的な方法によるシステムは、式:V=DRTを用いてカラム/膜容積(V)およびRTを変化させることにより、任意の潅流速度(D)で液体培養培地を処理するように設計され得る。
【0099】
本記載の方法において使用されるMCCSまたはMCC1および/もしくはMCCS2によって実行され得る1つまたはそれ以上の単位操作には例えば、組換えタンパク質を捕獲すること、組換えタンパク質を含む流体中に存在するウィルスを不活性化すること、組換えタンパク質を精製すること、組換えタンパク質をポリッシュすること、(例えば、本明細書に記載の例示的な任意の停留タンク(複数可)を用いて)組換えタンパク質を含む流体を保持すること、組換えタンパク質を含む流体から出てくる粒子状材料および/または細胞をろ過または除去すること、ならびに、組換えタンパク質を含む流体のイオン濃度および/またはpHを調節することが挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態において、MCCSまたはMCCS1は組換えタンパク質を捕獲するという単位操作を実行する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜を含む。捕獲する単位操作は、例えば捕獲機構を利用する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー樹脂を用いて、実行することができる。捕獲機構の非限定的な例には、タンパク質A結合式捕獲機構、抗体結合式または抗体フラグメント結合式捕獲機構、基質結合式捕獲機構、アプタマー結合式捕獲機構、タグ結合式捕獲機構(例えば、ポリHisタグに基づいた捕獲機構)および補因子結合式捕獲機構が挙げられる。捕獲はまた、カチオン交換もしくはアニオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、または疎水性相互作用クロマトグラフィーを実行するのに使用することができる樹脂を用いて実行することもできる。組換えタンパク質を捕捉するために使用され得る非限定的な樹脂は、本明細書で記載されている。組換えタンパク質を捕捉するために使用され得る樹脂のさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0101】
組換えタンパク質を含む流体中に存在するウィルスを不活性化する単位操作は、(例えば、少なくとも30分の期間(例えば、約30分から1.5時間の間の期間、約30分から1.25時間の間の期間、約0.75時間から1.25時間の間の期間、または約1時間の期間)にわたって約3.0から5.0の間(例えば、約3.5から約4.5の間、約3.5から約4.25の間、約3.5から約4.0の間、約3.5から約3.8の間、または約3.75)のpHで組換えタンパク質を含む流体をインキュベートすることができる、例えばクロマトグラフィーカラム、クロマトグラフィー膜または保持タンクを含む)MCCS、MCCS1および/またはMCCS2を用いて、実行することができる。
【0102】
組換えタンパク質を精製する単位操作は、例えば捕捉システムを利用する樹脂を含んでいる例えばクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を含む、1つまたはそれ以上のMCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)を用いて、実行することができる。捕獲機構の非限定的な例には、タンパク質A結合式捕獲機構、抗体結合式または抗体フラグメント結合式捕獲機構、基質結合式捕獲機構、アプタマー結合式捕獲機構、タグ結合式捕獲機構(例えば、ポリHisタグに基づいた捕獲機構)および補因子結合式捕獲機構が挙げられる。精製することは、カチオン交換もしくはアニオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーを実行するために使用され得る樹脂を用いて、実行することもできる。組換えタンパク質を精製するために使用され得る非限定的な樹脂は、本明細書で記載されている。組換えタンパク質を精製するために使用され得る樹脂のさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0103】
組換えタンパク質をポリッシュする単位操作は、例えばカチオン交換クロマトグラフィー、アニオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーを実行するために使用され得る樹脂を含んでいる、例えばクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を含む、1つまたはそれ以上のMCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)を用いて、実行することができる。組換えタンパク質をポリッシュするために使用され得る非限定的な樹脂は、本明細書で記載されている。組換えタンパク質をポリッシュするために使用され得る樹脂のさらなる例は、当技術分野で公知である。
【0104】
組換えタンパク質を含む流体を保持する単位操作は、少なくとも1つのリザーバ(例えば、停留タンク)を含む、またはMCCSもしくはMCCS1およびMCCS2とを合算して最大で1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのリザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))を含む、MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)を用いて、実行することができる。例えば、上記保持する単位操作を達成するために使用され得るリザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))はそれぞれ、約1mLから約1Lの間(例えば、約1mLから約800mLの間、約1mLから約600mLの間、約1mLから約500mLの間、約1mLから約400mLの間、約1mLから約350mLの間、約1mLから約300mLの間、約10mLから約250mLの間、約10mLから約200mLの間、約10mLから約150mLの間または約10mLから約100mLの間)の体積を有し得る。本明細書に記載の方法において使用されるリザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))は、例えば上下限も含めて1mLから約300mLの間、例えば、上下限も含めて1mLから約280mL、約260mL、約240mL、約220mL、約200mL、約180mL、約160mL、約140mL、約120mL、約100mL、約80mL、約60mL、約40mL、約20mLまたは約10mLの間である、容量を有し得る。流体がMCCSまたはMCCS1に進入するまで流体を保持しておくために(本明細書に記載の方法のいずれかにおいて)使用される、任意のリザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))は、例えば上下限も含めて1mLから第1のMCCSの第1のカラムの負荷量の約100%の間、上下限も含めて約1mLからMCCSまたはMCCS1の第1のカラムの負荷量の約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%または約5%の間である、容量を有し得る。溶出液がMCCS2に入る前に(組換えタンパク質を含む)MCCS1からの溶出液を保持するのに使用されるリザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))のいずれも、例えば、MCCS2の第1のカラムの装填体積の1mL~約100%(両端を含む)、例えば、約1mL~約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%、または約5%(両端を含む)の容量を有することができる。
【0105】
リザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))はそれぞれ、少なくとも10分(例えば、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間または少なくとも6時間)にわたって、組換えタンパク質を含む流体を保持することができる。他の例において、リザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))は、例えば上下限も含めて約5分から約6時間未満の間、例えば上下限も含めて約5分から約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間または約30分の間という合計時間での期間にわたって、組換えタンパク質のみを保持する。リザーバ(複数可)(例えば、停留タンク(複数可))は、組換えタンパク質を含む流体の保持と(例えば、25℃未満、15℃未満または10℃未満の温度における)冷蔵の両方を実行するために使用され得る。リザーバは、円形シリンダー、長円形シリンダー、または、ほぼ長方形で密封済みの不透過性袋を含めて、任意の形状を有し得る。
【0106】
組換えタンパク質を含む流体をろ過する単位操作は、例えばフィルターを含むまたは分子ふるい樹脂を含んでいるクロマトグラフィーカラムもしくはクロマトグラフィー膜を含む、MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)を用いて、実行することができる。当技術分野で公知であるとおり、沈殿した任意の材料および/または細胞(例えば、沈殿した折り畳まれていないタンパク質;沈殿した望ましくない宿主細胞タンパク質;沈殿した脂質;細菌;酵母細胞;真菌細胞;マイコバクテリア;および/または哺乳類細胞)を除去することができる、多種多様なサブミクロンフィルター(例えば、1μm未満、0.5μm未満、0.3μm未満、約0.2μm、0.2μm未満、100nm未満、80nm未満、60nm未満、40nm未満、20nm未満または10nm未満の細孔径を有するフィルター)が、当技術分野で入手可能である。約0.2μmまたは0.2μm未満の細孔径を有するフィルターは、組換えタンパク質を含む流体から細菌を効果的に除去することが知られている。当技術分野で公知であるとおり、分子ふるい樹脂を含んでいるクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜もまた、組換えタンパク質を含む流体をろ過する単位操作を実行するために、MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)内に使用することができる。
【0107】
組換えタンパク質を含む流体のイオン濃度および/またはpHを調節する単位操作は、バッファー調節リザーバ(例えば、インラインバッファー調節リザーバ)を含んでいて利用する、MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)を用いて、実行することができ、このバッファー調節リザーバは、(例えば、MCCS、MCCS1および/もしくはMCCS2内部にあるカラムどうしの間、または、終わりから二番目のMCCS(例えば、MCCS1)内にある最後のカラムの後から、組換えタンパク質を含む流体が次のMCCS(例えば、MCCS2)の第1のカラムに送り込まれる前までの間に)組換えタンパク質を含む流体中に新たなバッファー溶液を添加する。当技術分野で理解され得るのと同様に、インラインバッファー調節リザーバは、任意のサイズ(例えば、100mL超)であってよく、任意の緩衝液(例えば、次のもののうち1つまたはそれ以上を有する緩衝液:組換えタンパク質を含む流体に比較して増大もしくは減少するpH、組換えタンパク質を含む流体に比較して増大もしくは減少するイオン(例えば、塩)濃度、および/または、MCCS(例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2)内の少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムもしくは少なくとも1つのクロマトグラフィー膜中に存在する樹脂への結合において組換えタンパク質と競合して濃度が増大もしくは減少する作用物質)を収容し得る。
【0108】
MCCS、MCCS1および/またはMCCS2は、2つまたはそれ以上の単位操作を実行することができる。例えば、MCCS、MCCS1および/またはMCCS2はそれぞれ、少なくとも次の単位操作を実行することができる:組換えタンパク質を捕獲すること、および組換えタンパク質を含む流体中に存在するウィルスを不活性化すること;組換えタンパク質を捕獲すること、組換えタンパク質を含む流体中に存在するウィルスを不活性化すること、ならびに組換えタンパク質を含む液体のイオン濃度および/またはpHを調節すること;組換えタンパク質を精製すること、および組換えタンパク質をポリッシュすること;組換えタンパク質を精製すること、組換えタンパク質をポリッシュすること、ならびに、組換えタンパク質を含む流体をろ過することまたは組換えタンパク質を含む流体から沈殿物および/もしくは特定の物質を除去すること;ならびに、組換えタンパク質を精製すること、組換えタンパク質をポリッシュすること、組換えタンパク質を含む流体をろ過することまたは組換えタンパク質を含む流体から沈殿物および/もしくは特定の微粒子状物質を除去すること、ならびに組換えタンパク質を含む液体のイオン濃度および/またはpHを調節すること。
【0109】
組換えタンパク質を捕獲する
本方法は、MCCSまたはMCCS1を用いて組換えタンパク質を捕獲する工程を含む。当技術分野において認識することができるように、組換えタンパク質を含む液体培養培地は、種々の異なる手段を用いてMCCSまたはMCCS1上に連続的に供給することができる。例えば、液体培養培地はMCCSまたはMCCS1中に能動的にポンプで送ることができ、または液体培養培地は重力を用いてMCCSまたはMCCS1中に供給することができる。液体培養培地はMCCSまたはMCCS1中に供給する前にリザーバ(例えば、保持タンク)に貯蔵することができ、または、液体培養培地は細胞(例えば、組換えタンパク質を培地中に分泌する哺乳類細胞)の培養物を含むバイオリアクターからMCCSまたはMCCS1中に能動的にポンプで送ることができる。
【0110】
液体培養培地は約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分~約14mL/分、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量でMCCSまたはMCCS1中に供給する(装填する)ことができる。組換えタンパク質を含む液体培養培地は本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の典型的な出所のいずれかに由来することができる。
【0111】
いくつかの例は、さらに、液体培養培地をMCCSまたはMCCS1中に供給する前にろ過する任意選択の工程を含む。本明細書に記載の組換えタンパク質を含む液体培養培地もしくは流体をろ過する典型的な手段のいずれか、または当技術分野で公知の任意のろ過手段を、組換えタンパク質を含む液体培養培地をMCCSまたはMCCS1中に供給する前にろ過するために使用することができる。
【0112】
本明細書に記載の方法において、組換えタンパク質の液体培養培地からの捕獲はMCCSまたはMCCS1を用いて実行される。当技術分野において認識することができるように、組換えタンパク質の捕獲を達成するためには、MCCSまたはMCCS1の少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたは少なくとも1つのクロマトグラフィー膜が、捕獲機構(例えば、本明細書に記載の典型的な捕獲機構のいずれか)を利用する樹脂を含むか、またはカチオン交換、アニオン交換、もしくは分子ふるいクロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーを実行することができる樹脂を含まなければならない。例えば、組換えタンパク質が抗体または抗体フラグメントであれば、捕獲システムはプロテインA-結合捕獲機構または抗原-結合捕獲機構(この場合捕獲抗原は組換え抗体または抗体フラグメントにより特異的に認識される)であることができる。組換えタンパク質が酵素であれば、捕獲機構は、組換え酵素を捕獲するために酵素に特異的に結合する抗体もしくは抗体フラグメントを、組換え酵素を捕獲するために酵素の基質を、組換え酵素を捕獲するために酵素の補因子を、または、組換え酵素がタグを含む場合、組換え酵素内に存在するタグに特異的に結合するタンパク質、金属キレート、もしくは抗体(もしくは抗体フラグメント)を使用することができる。組換えタンパク質を捕獲するために使用することができる非限定的な樹脂は本明細書に記載されており、組換えタンパク質を捕獲するのに使用することができる追加の樹脂は当技術分野で公知である。プロテインA-結合捕獲機構を利用する樹脂の1つの非限定的な例はMabSelect SuRe樹脂(GE Healthcare,Piscataway,NJ)である。
【0113】
組換えタンパク質を捕獲するために使用することができるMCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の典型的な非限定的な大きさおよび形状は本明細書中に記載されている。MCCSまたはMCCS1中に供給される(装填される)液体培養培地は、例えば、約0.05mg/mL~約100mg/mLの組換えタンパク質(例えば、約0.1mg/mL~約90mg/mL、約0.1mg/mL~約80mg/mL、約0.1mg/mL~約70mg/mL、約0.1mg/mL~約60mg/mL、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約40mg/mL、約0.1mg/mL~約30mg/mL、約0.1mg/mL~約20mg/mL、約0.5mg/mL~約20mg/mL、約0.1mg/mL~15mg/mL、約0.5mg/mL~約15mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、または約0.5mg/mL~約10mg/mLの組換えタンパク質)を含むことができる。捕獲する単位操作を実行するために使用される樹脂に組換えタンパク質が結合するのに必要とされる平均時間は、例えば、約5秒~約10分(例えば、約10秒~約8分、約10秒~約7分、約10秒~約6分、約10秒~約5分、約30秒~約5分、約1分~約5分、約10秒~約4分、約30秒~約4分、または約1分~約4分)であることができる。
【0114】
当技術分野において認識することができるように、MCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を用いて組換えタンパク質を捕獲するためには、MCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を装填し、洗浄し、溶離し、再生するという連続したクロマトグラフィー工程を実行しなければならない。本明細書に記載の連続したクロマトグラフィー工程の各々に割り当てられる典型的な流量、バッファー容積、および/または時間の長さのいずれかを、これらの異なる連続したクロマトグラフィー工程の1つまたはそれ以上(例えば、組換えタンパク質を捕獲するのに使用されるMCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を装填し、洗浄し、溶離し、再生するという連続したクロマトグラフィー工程の1つまたはそれ以上)で使用することができる。MCCSまたはMCCS1(例えば、PCCSまたはPCCS1)でクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜を捕獲するのに使用することができる各々の連続したクロマトグラフィー工程に割り当てられる非限定的な流量、バッファー容積、および/または時間の長さは以下に提供される。加えて、MCCSおよび/またはMCCS1に使用することができる典型的なバッファーは以下に記載される。
【0115】
捕獲する単位操作を実行することができる樹脂(例えば、本明細書に記載の捕獲するのに使用することができる典型的な樹脂のいずれか)を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜を含むMCCSまたはMCCS1は、上に記載した装填流量(供給速度)のいずれかを用いて、組換えタンパク質を含む液体培養培地を装填することができる。いくつかの例において、捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含有する単一のクロマトグラフィーカラムまたは単一のクロマトグラフィー膜が、例えば、約10分~約90分(例えば、約15分から約90分の間、約20分から約80分の間、約30分から約80分の間、約40分から約80分の間、約50分から約80分の間、および約60分から約80分の間)で装填される。MCCSまたはMCCS1が、捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含む少なくとも2つのクロマトグラフィーカラムを直列に含むいくつかの例において、2つのクロマトグラフィーカラムを連続して装填するのに必要とされる時間は、例えば、約50分~約180分(例えば、約60分から約180分の間、約70分から約180分の間、約80分から約180分の間、約90分から約180分の間、約100分から約180分の間、約110分から150分の間、および約125分から約145分の間)である。
【0116】
捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含むMCCSまたはMCCS1内の少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上への組換えタンパク質の装填の後、その少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を少なくとも1種の洗浄用バッファーで洗浄する。当技術分野において認識することができるように、少なくとも1種(例えば、2、3、または4種)の洗浄用バッファーとは、組換えタンパク質ではない全てのタンパク質を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から溶出する一方で、組換えタンパク質と樹脂との相互作用を乱さないことを意味する。
【0117】
洗浄バッファーは、約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分~約14mL/分、約1.0mL/分~約25.0mL/分、約1.0mL/分~約15.0mL/分)の流量で少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を通過させることができる。使用される洗浄バッファーの容積(例えば、1より多くの洗浄バッファーを使用するときの洗浄バッファーの合計総容積)は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約15XCV(例えば、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約4XCV~約11XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。洗浄の合計時間は、例えば、約2分~約3時間(例えば、約2分~約2.5時間、約2分~約2.0時間、約5分~約1.5時間、約10分~約1.5時間、約10分~約1.25時間、約20分~約1.25時間、または約30分~約1時間)であることができる。
【0118】
捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含むMCCSまたはMCCS1内の少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の洗浄の後、捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含むMCCSまたはMCCS1内の少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に溶出バッファーを通すことによって、組換えタンパク質を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から溶離する。溶出バッファーは、捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を、約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約6.0mL/分の間、約1.0mL/分から約5.0mg/分の間、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量で通過することができる。精製する単位操作を実行することができる樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の各々から組換えタンパク質を溶離するために使用される溶出バッファーの容積は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約15XCV(例えば、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約4XCV~約11XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。溶離する合計時間は、例えば、約2分~約3時間(例えば、約2分~約2.5時間、約2分~約2.0時間、約2分~約1.5時間、約2分~約1.5時間、約2分~約1.25時間、約2分~約1.25時間、約2分~約1時間、約2分から約40分の間、約10分から約40分の間、約20分から約40分の間)であることができる。これらの方法で使用することができる溶出バッファーの非限定的な例は捕獲機構および/または組換えタンパク質に依存する。例えば、溶出バッファーは、異なる濃度の塩(例えば、増大した塩濃度)、異なるpH(例えば、増大または低減した塩濃度)、または捕獲する単位操作を実行することができる樹脂に対する結合に関して組換えタンパク質と競合する分子を含むことができる。本明細書に記載の各々の典型的な捕獲機構に対するかかる溶出バッファーの例は当技術分野で周知である。
【0119】
捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含むMCCSまたはMCCS1内の少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から組換えタンパク質を溶離した後、次の容積の液体培養培地を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上に装填することができる前に、その少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を、再生バッファーを用いて平衡化しなければならない。再生バッファーは、捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を、例えば、約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約6.0mL/分の間、約1.0mL/分から約5.0mg/分の間、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、約5.0mL/分から約15.0mL/分の間、または約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量で通すことができる。いくつかの例において、再生緩衝液は変性用緩衝液(例えば、本明細書に記載の変性用緩衝液のいずれかまたは変性用緩衝液の組合せ)である。捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を平衡化するために使用される再生バッファーの容積は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約15XCV(例えば、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約2XCV~約5XCV、約4XCV~約11XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。
【0120】
本明細書に記載の方法のいくつかで、MCCSまたはMCCS1は、組換えタンパク質を含む流体を、低いpH(例えば、pH4.6未満、4.4未満、4.2未満、4.0未満、3.8未満、3.6未満、3.4未満、3.2未満、または3.0未満)に、例えば、約1分~1.5時間(例えば、約1時間)保持し、組換えタンパク質を含む流体中に存在するウィルスを不活化するリザーバを含んでいる。ウィルスを不活化する単位操作を実行するために使用することができるリザーバの一例は、例えば、組換えタンパク質を含む流体をMCCS2中に供給する前に、その組換えタンパク質を含む流体を例えば約1分~1.5時間保持することができる撹拌フラスコ(stir flask)(例えば、500-mL撹拌フラスコ、例えば、プログラムされた撹拌プレート(programmed stir plate)付きの500-mL撹拌フラスコ)である。ウィルスの不活化の単位操作を実行するために使用されるリザーバは、プログラムされた撹拌プレート(例えば、リザーバ内で流体を、例えば4時間毎に混合する(例えば、定期的に混合する)ようにプログラムされた撹拌プレート)付きの500-mL撹拌フラスコであることができる。ウィルスの不活化の単位操作を実行するために使用することができるリザーバのもう1つ別の例は、例えば、組換えタンパク質を含む流体をMCCS2中に供給する前に、その組換えタンパク質を含む流体を例えば約1分~1.5時間保持することができるプラスチックバッグ(例えば、500-mLプラスチックバッグ)である。いくつかの例において、組換えタンパク質を含む流体は、ウィルスの不活化の単位操作を実行するために使用されるリザーバ中に供給されるとき、既に低いpH(例えば、pH4.6未満、4.4未満、4.2未満、4.0未満、3.8未満、3.6未満、3.4未満、3.2未満、または3.0未満)を有していることができる。当業者には認識することができるように、ウィルスを不活化する単位操作を実行するために様々な他の手段を使用することができる。例えば、組換えタンパク質を含む流体のUV照射も、ウィルスを不活化する単位操作を実行するために使用することができる。組換えタンパク質を含む流体中に存在するウィルスの不活化の単位操作を実行するために使用することができるリザーバの非限定的な例が本明細書中に記載されている。
【0121】
MCCSまたはMCCS1は4つのクロマトグラフィーカラムを含むPCCSを含むことができ、ここで4つのクロマトグラフィーカラムのうちの少なくとも3つは(例えば、捕獲する単位操作を実行することができる樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムのいずれか(例えば、本明細書に記載されているもののいずれか))を含むMCCSを用いて、組換えタンパク質を液体培養培地から捕獲する単位操作を実行する。これらの例において、PCCの第4のカラムは、組換えタンパク質を含む流体中のウィルスを不活化する単位操作を実行することができる(例えば、組換えタンパク質を含む流体のウィルスの不活化を達成するために使用することができる本明細書中に記載の典型的なカラムのいずれか)。
【0122】
いくつかの例において、組換えタンパク質を含む流体がMCCS1(例えば、PCCS1)から連続的に溶出され、MCCS2(例えば、PCCS2)に連続的に供給される。MCCSまたはMCCS1(例えば、PCCSまたはPCCS1)の溶出液中に回収される組換えタンパク質の割合(%)は、例えば、少なくとも70%、少なくとも72%、少なくとも74%、少なくとも76%、少なくとも78%、少なくとも80%、少なくとも82%、少なくとも84%、少なくとも86%、少なくとも88%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、または少なくとも98%であることができる。MCCS1(例えば、PCCS1)からの溶出液は当技術分野で公知の種々の手段(例えば、配管)を用いてMCCS2(例えば、PCCS2)中に供給することができる。MCCS1(例えば、PCCS1)の溶出液は、例えば、約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約6.0mL/分の間、約1.0mL/分から約5.0mg/分の間、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、約5.0mL/分~約15.0mL/分、約15mL/分~約25mL/分、または約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量でMCCS2(例えば、PCCS2)中に供給することができる。
【0123】
本明細書に記載のいくつかの方法は、さらに、MCCS1(例えば、PCCS1)からの溶出液のイオン濃度および/またはpHを、その溶出液がMCCS2(例えば、PCCS2)中に供給される前に調節する工程を含むことができる。本明細書に記載されているように、MCCS1(例えば、PCCS1)からの溶出液のイオン濃度および/またはpHは、(その溶出液がMCCS2中に供給される前に)その溶出液に(例えば、インラインバッファー調節リザーバを使用することにより)バッファーを添加することによって調節することができる。このバッファーは、例えば、約0.1mL/分~約15mL/分(例えば、約0.1mL/分~約12.5mL/分、約0.1mL/分~約10.0mL/分、約0.1mL/分~約8.0mL/分、約0.1mL/分~約6mL/分、約0.1mL/分~約4mL/分、または約0.5mL/分~約5mL/分)の流量でMCCS1からの溶出液に添加することができる。
【0124】
本明細書に記載の方法は、さらに、MCCS1からの溶出液をMCCS2中に供給する前にそのMCCS1からの溶出液を保持または貯蔵する(かつ場合により冷蔵する)工程を含むことができる。本明細書に記載されているように、この保持または貯蔵する工程は本明細書に記載のリザーバのいずれか(例えば、バックアップタンク)を用いて実行することができる。
【0125】
本明細書に記載の方法はまた、MCCS1からの溶出液をMCCS2中に供給する前にその溶出液をろ過する工程も含むことができる。本明細書に記載のろ過方法または典型的なフィルターのいずれもMCCS1からの溶出液をMCCS2中に供給する前にその溶出液をろ過するために使用することができる。
【0126】
組換えタンパク質をポリッシュおよび精製する
MCCS、MCCS1、および/またはMCCS2は組換えタンパク質を精製しポリッシュするという単位操作を実行するのに使用することができる。例えば、MCCS2を使用して組換えタンパク質を精製しポリッシュする操作を実行することができ、MCCS2からの溶出液はタンパク質原薬である。MCCS、MCCS1および/またはMCCS2は、組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、または4つ)のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜、および組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つ(例えば、2つ、3つ、または4つ)のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を含むことができる。
【0127】
組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜は、捕獲機構(例えば、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の捕獲機構のいずれか)を利用する樹脂、またはアニオン交換、カチオン交換、分子ふるいクロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーを実行するために使用することができる樹脂を含むことができる。組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜はアニオン交換、カチオン交換、分子ふるいクロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーを実行するために使用することができる樹脂(例えば、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知のアニオン交換、カチオン交換、分子ふるいクロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーを実行するための典型的な樹脂のいずれか)を含むことができる。
【0128】
組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムもしくはクロマトグラフィー膜の大きさ、形状、および容積、ならびに/または組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィー膜の大きさおよび形状は、本明細書に記載のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の典型的な大きさ、形状、および容積の組合せのいずれかであることができる。当業者には認識することができるように、組換えタンパク質を精製またはポリッシュする工程は、例えば、組換えタンパク質を精製またはポリッシュする単位操作を実行するために使用される少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を装填する工程、洗浄する工程、溶離する工程、および平衡化する工程を含むことができる。通例、精製する単位操作を実行するために使用されるクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から出て来る溶出バッファーは組換えタンパク質を含む。通例、ポリッシュする単位操作を実行するために使用されるクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から出て来る装填および/または洗浄バッファーは組換えタンパク質を含む。
【0129】
例えば、組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の大きさは、例えば、約2.0mL~約200mL(例えば、約2.0mL~約180mL、約2.0mL~約160mL、約2.0mL~約140mL、約2.0mL~約120mL、約2.0mL~約100mL、約2.0mL~約80mL、約2.0mL~約60mL、約2.0mL~約40mL、約5.0mL~約40mL、約2.0mL~約30mL、約5.0mL~約30mL、または約2.0mL~約25mL)の容積を有することができる。組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたは少なくとも1つのクロマトグラフィー膜上に装填されるときの組換えタンパク質を含む流体の流量は、例えば、約0.1mL/分~約25mL/分(例えば、約0.1mL/分~約12.5mL/分、約0.1mL/分~約10.0mL/分、約0.1mL/分~約8.0mL/分、約0.1mL/分~約6mL/分、約0.1mL/分~約4mL/分、約0.1mL/分~約3mL/分、約0.1mL/分~約2mL/分、または約0.2mL/分~約4mL/分)であることができる。組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上に装填される流体中の組換えタンパク質の濃度は、例えば、約0.05mg/mL~約100mg/mLの組換えタンパク質(例えば、約0.1mg/mL~約90mg/mL、約0.1mg/mL~約80mg/mL、約0.1mg/mL~約70mg/mL、約0.1mg/mL~約60mg/mL、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約40mg/mL、約0.1mg/mL~約30mg/mL、約0.1mg/mL~約20mg/mL、約0.5mg/mL~約20mg/mL、約0.1mg/mL~15mg/mL、約0.5mg/mL~約15mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、または約0.5mg/mL~約10mg/mLの組換えタンパク質)であることができる。精製する単位操作を実行するために使用される少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜内の樹脂は、アニオン交換またはカチオン交換クロマトグラフィーを実行するために使用することができる樹脂であることができる。精製する単位操作を実行するために使用される少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜内の樹脂はカチオン交換樹脂(例えば、Capto-S樹脂、GE Healthcare Life Sciences,Piscataway,NJ)であることができる。
【0130】
組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上への組換えタンパク質の装填の後、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を少なくとも1種の洗浄用バッファーで洗浄する。当技術分野において認識することができるように、少なくとも1種(例えば、2種、3種、または4種)の洗浄用バッファーは、組換えタンパク質ではないあらゆるタンパク質を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から溶離する一方で、組換えタンパク質と樹脂の相互作用またはその他の点で組換えタンパク質の溶離を乱さないことを意味する。
【0131】
洗浄バッファーは少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量で通ることができる。使用される洗浄バッファーの容積(例えば、1種より多くの洗浄バッファーを使用する場合は洗浄バッファーの合計総容積)は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約15XCV(例えば、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約4XCV~約11XCV、約2.5XCV~約5.0XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。洗浄の合計時間は、例えば、約2分~約3時間(例えば、約2分~約2.5時間、約2分~約2.0時間、約5分~約1.5時間、約10分~約1.5時間、約10分~約1.25時間、約20分~約1.25時間、約30分~約1時間、約2分から約10分の間、約2分から約15分の間、または約2分から約30分の間)であることができる。
【0132】
組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の洗浄後、組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に溶出バッファーを通すことによって組換えタンパク質を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から溶離する。溶出バッファーは、組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に、約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約6.0mL/分の間、約1.0mL/分から約5.0mg/分の間、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、または約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量で通すことができる。組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の各々から組換えタンパク質を溶離するために使用される溶出バッファーの容積は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約25XCV(例えば、約1XCV~約20XCV、約15XCV~約25XCV、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約4XCV~約11XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。溶離する合計時間は、例えば、約2分~約3時間(例えば、約2分~約2.5時間、約2分~約2.0時間、約2分~約1.5時間、約2分~約1.5時間、約2分~約1.25時間、約2分~約1.25時間、約2分~約1時間、約2分から約40分の間、約10分から約40分の間、約20分から約40分の間、または約30分から1.0時間の間)であることができる。これらの方法に使用することができる溶出バッファーの非限定的な例は樹脂および/または組換えタンパク質の生物物理学的な性質に依存する。例えば、溶出バッファーは、異なる濃度の塩(例えば、増大した塩濃度)、異なるpH(例えば、上昇または低下した塩濃度)、または樹脂と結合することに関して組換えタンパク質と競合する分子を含むことができる。本明細書に記載の典型的な捕獲機構の各々に対してかかる溶出バッファーの例は当技術分野で周知である。
【0133】
組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜からの組換えタンパク質の溶離の後、かつ組換えタンパク質を含む流体の次の容積を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上に装填することができる前に、その少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を、再生バッファーを用いて平衡化しなければならない。再生バッファーは、組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に、例えば、約0.2mL/分~約25mL/分(例えば、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約6.0mL/分の間、約1.0mL/分から約5.0mg/分の間、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、約5.0mL/分から約15.0mL/分の間、または約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量で通すことができる。組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる樹脂を含む少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を平衡化するために使用される再生バッファーの容積は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約15XCV(例えば、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約2XCV~約5XCV、約2.5XCV~約7.5XCV、約4XCV~約11XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。組換えタンパク質を精製する単位操作を実行するために使用する少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の溶出液中の組換えタンパク質の濃度は、例えば、約0.05mg/mL~約100mg/mLの組換えタンパク質(例えば、約0.1mg/mL~約90mg/mL、約0.1mg/mL~約80mg/mL、約0.1mg/mL~約70mg/mL、約0.1mg/mL~約60mg/mL、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約40mg/mL、約2.5mg/mL~約7.5mg/mL、約0.1mg/mL~約30mg/mL、約0.1mg/mL~約20mg/mL、約0.5mg/mL~20mg/mL、約0.1mg/mL~約15mg/mL、約0.5mg/mL~約15mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、または約0.5mg/mL~約10mg/mLの組換えタンパク質)であることができる。
【0134】
組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜は、カチオン交換、アニオン交換、または分子篩クロマトグラフィーを実行するために使用することができる樹脂を含むことができる。当技術分野において認識することができるように、組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を用いて組換えタンパク質をポリッシュすることは、例えば、組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を装填する工程、追跡する(chasing)工程、および再生する工程を含むことができる。例えば、装填、追跡、および再生する工程を用いてポリッシュを実行する場合、組換えタンパク質は、組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用される少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜中の樹脂と結合せず、組換えタンパク質は装填および追跡工程で少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜から溶離され、再生工程は、組換えタンパク質を含む追加の流体を少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上に装填することができる前に、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜からあらゆる不純物を除去するために使用される。装填、追跡、および再生工程の各々で使用される典型的な流量とバッファー容積は以下に記載する。
【0135】
組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の大きさ、形状、および容積、ならびに/または組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィー膜の大きさおよび形状は、本明細書に記載のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の典型的な大きさ、形状、および容積の組合せのいずれかであることができる。例えば、組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜の大きさは、例えば、約0.5mL~約200mL(例えば、約0.5mL~約180mL、約0.5mL~約160mL、約0.5mL~約140mL、約0.5mL~約120mL、約0.5mL~約100mL、約0.5mL~約80mL、約0.5mL~約60mL、約0.5mL~約40mL、約5.0mL~約40mL、約0.5mL~約30mL、約5.0mL~約30mL、約0.5mL~約25mL、約0.2mL~約10mL、または約0.2mL~約5mL)の容積を有することができる。組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上に装填されるときの組換えタンパク質を含む流体の流量は、例えば、約0.1mL/分~約25mL/分(例えば、約0.1mL/分~約12.5mL/分、約0.1mL/分~約10.0mL/分、約0.1mL/分~約8.0mL/分、約0.1mL/分~約6mL/分、約0.1mL/分~約4mL/分、約0.1mL/分~約3mL/分、約2mL/分~約6mL/分、約0.1mL/分~約2mL/分、または約0.2mL/分~約4mL/分)であることができる。組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上に装填される組換えタンパク質を含む流体の総容積は、例えば、約1.0mL~約250mL(例えば、約1.0mL~約225mL、約1.0mL~約200mL、約1.0mL~約175mL、約1.0mL~約150mL、約100mL~約125mL、約100mL~約150mL、約1.0mL~約150mL、約1.0mL~約125mL、約1.0mL~約100mL、約1.0mL~約75mL、約1.0mL~約50mL、または約1.0mL~約25mL)であることができる。ポリッシュを実行するために使用される少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜内の樹脂はアニオン交換またはカチオン交換樹脂であることができる。ポリッシュする単位操作を実行するために使用される少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜内の樹脂はカチオン交換樹脂(例えば、Sartobind(登録商標)Q樹脂,Sartorius,Goettingen,Germany)であることができる。
【0136】
装填工程後、追跡工程を実行する(例えば、追跡バッファーを少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に通して、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に実質的に結合しない組換えタンパク質を収集する)。これらの例において、追跡バッファーは、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に、約0.2mL/分~約50mL/分(例えば、約1mL/分~約40mL/分、約1mL/分~約30mL/分、約5mL/分~約45mL/分、約10mL/分~約40mL/分、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、または約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量で通すことができる。使用される追跡バッファーの容積は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約100XCV(例えば、約1XCV~約90XCV、約1XCV~約80XCV、約1XCV~約70XCV、約1XCV~約60XCV、約1XCV~約50XCV、約1XCV~約40XCV、約1XCV~約30XCV、約1XCV~約20XCV、約1XCV~約15XCV、約5XCV~約20XCV、または約5XCV~約30XCV、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約4XCV~約11XCV、約2.5XCV~約5.0XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。追跡の合計時間は、例えば、約1分~約3時間(例えば、約1分~約2.5時間、約1分~約2.0時間、約1分~約1.5時間、約2分~約1.5時間、約1分~約1.25時間、約2分~約1.25時間、約1分~約5分、約1分~約10分、約2分~約4分、約30分~約1時間、約2分から約10分の間、約2分から約15分の間、または約2分から約30分の間)であることができる。装填工程および追跡工程でカラムを通って来る溶出液中に存在する組換えタンパク質の合わせた濃度は、例えば、約0.1mg/mL~約100mg/mLの組換えタンパク質(例えば、約0.1mg/mL~約90mg/mL、約0.1mg/mL~約80mg/mL、約0.1mg/mL~約70mg/mL、約0.1mg/mL~約60mg/mL、約0.1mg/mL~約50mg/mL、約0.1mg/mL~約40mg/mL、約2.5mg/mLから約7.5mg/mLの間、約0.1mg/mL~約30mg/mL、約0.1mg/mL~約20mg/mL、約0.5mg/mL~20mg/mL、約0.1mg/mL~約15mg/mL、約0.5mg/mL~約15mg/mL、約0.1mg/mL~約10mg/mL、約0.5mg/mL~約10mg/mL、または約1mg/mL~約5mg/mLの組換えタンパク質)であることができる。
【0137】
追跡する工程の後、そしてポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜上に組換えタンパク質を含む流体の次の容積を装填することができる前に、少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を再生バッファーを用いて再生しなければならない。再生バッファーは、組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜に、例えば、約0.2mL/分~約50mL/分(例えば、約1mL/分~約40mL/分、約1mL/分~約30mL/分、約5mL/分~約45mL/分、約10mL/分~約40mL/分、約0.2mL/分~約20mL/分、約0.5mL/分~約20mL/分、約0.2mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約15mL/分、約0.5mL/分~約10mL/分、約0.5mL/分から約14mL/分の間、約1.0mL/分から約25.0mL/分の間、または約1.0mL/分から約15.0mL/分の間)の流量で通すことができる。ポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜を再生するために使用される再生バッファーの容積は、例えば、約1Xカラム容積(CV)~約500XCV(例えば、約1XCV~約450XCV、約1XCV~約400XCV、約1XCV~約350XCV、約1XCV~約300XCV、約1XCV~約250XCV、約1XCV~約200XCV、約1XCV~約150XCV、約1XCV~約100XCV、約1XCV~約90XCV、約1XCV~約80XCV、または約1XCV~約70XCV、約1XCV~約60XCV、約1XCV~約50XCV、約1XCV~約40XCV、約1XCV~約30XCV、約1XCV~約20XCV、約1XCV~約15XCV、約5XCV~約20XCV、約5XCV~約30XCV、約1XCV~約14XCV、約1XCV~約13XCV、約1XCV~約12XCV、約1XCV~約11XCV、約2XCV~約11XCV、約3XCV~約11XCV、約4XCV~約11XCV、約2.5XCV~約5.0XCV、約5XCV~約11XCV、または約5XCV~約10XCV)であることができる。
【0138】
他の例において、ポリッシュする単位操作を実行するために使用される1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜は、組換えタンパク質を含む流体中に存在する不純物を選択的に結合するかまたは保持する樹脂を含み、1つまたはそれ以上のカラムおよび/または膜の樹脂の結合能力に達するかまたは達したと実質的に同等になったら、1つまたはそれ以上のカラムおよび/または膜を再生する代わりに、1つまたはそれ以上のカラムおよび/または膜を取り替える(例えば、実質的に類似のカラムおよび/または膜と取り替える)。
【0139】
本明細書に記載のこれらの方法のいくつかの例において、MCCS2は、例えば、3つのクロマトグラフィーカラムおよび1つのクロマトグラフィー膜を含むPCCSを含み、ここでPCCS内の3つのクロマトグラフィーカラムは(例えば、タンパク質を精製する単位操作を実行するために使用することができる少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムを用いて)組換えタンパク質を精製する単位操作を実行し、PCCS内のクロマトグラフィー膜は組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行する。これらの例で、治療用タンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができるPCCS内のクロマトグラフィー膜は、組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができる、本明細書に記載の典型的なクロマトグラフィー膜のいずれかであることができる。本明細書に記載のカラムスイッチング法のいずれかを使用して、この例においてPCCS内の第1の3つのクロマトグラフィーカラムおよびクロマトグラフィー膜を切り替えることができる時を決定することができる。
【0140】
この例のいくつかの実施形態は、さらに、PCCS内の3つのクロマトグラフィーカラムからの溶出液をPCCS内のクロマトグラフィー膜中に供給する前にその溶出液のイオン濃度および/またはpHを調節する工程を含むことができる。本明細書に記載されているように、PCCS内の3つのクロマトグラフィーカラムからの溶出液のイオン濃度および/またはpHは(この例においてはこの溶出液をPCCS内のクロマトグラフィー膜中に供給する前に)(例えば、インラインバッファー調節リザーバの使用により)PCCS内の3つのクロマトグラフィーカラムの溶出液にバッファーを添加することによって調節することができる。バッファーは、例えば、約0.1mL/分~約15mL/分(例えば、約0.1mL/分~約12.5mL/分、約0.1mL/分~約10.0mL/分、約0.1mL/分~約8.0mL/分、約0.1mL/分~約6mL/分、約0.1mL/分~4mL/分、または約0.5mL/分~約5mL/分)の流量で溶出液に添加することができる。
【0141】
これらの例は、さらに、この例においてはPCCS内の3つのクロマトグラフィーカラムからの溶出液をクロマトグラフィー膜(組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができるクロマトグラフィー膜)中に供給する前にその溶出液を保持または貯蔵する工程を含むことができる。本明細書に記載されているように、この保持または貯蔵する工程は本明細書に記載のリザーバのいずれか(例えば、バックアップタンク)を用いて実行することができる。
【0142】
これらの例はまた、典型的なPCCSシステム内におけるクロマトグラフィー膜からの溶出液(組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができるクロマトグラフィー膜の溶出液)をろ過する工程を含むこともできる。本明細書に記載のろ過のための典型的なフィルターまたは方法のいずれかを用いて、この典型的なPCCSにおけるクロマトグラフィー膜からの溶出液(組換えタンパク質をポリッシュする単位操作を実行するために使用することができるクロマトグラフィー膜の溶出液)をろ過することができる。
【0143】
当技術分野において認識することができるように、精製された組換えタンパク質は、本明細書に記載の方法のいずれかを用いてMCCSまたはMCCS2から定期的に溶離することができる。例えば、本明細書に記載の方法のいずれも、例えば、MCCSまたはMCCS1およびMCCS2に使用されるクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜に応じて、例えば、約30秒~約5時間(例えば、約1分から約4時間の間、約1分から約3時間の間、約1分から約2時間の間、約1分から約1.5時間の間、約1分から約1時間の間、または約1分から約30分の間)の持続時間の間、例えば、約1分~約6時間(例えば、約1分から約5時間の間、約1分から約4時間の間、約1分から約3時間の間、約1分から約2時間の間、約1分から約1時間の間、または約1分から30分の間)の頻度で、精製された組換えタンパク質を溶離することができる。
【0144】
培養する方法
本明細書に記載の方法のいくつかは、さらに、液体培養培地を含むバイオリアクター(例えば、潅流またはフェドバッチバイオリアクター)で、組換えタンパク質を分泌する細胞(例えば、組換え哺乳類細胞)を培養する工程を含み、ここでは細胞(例えば、哺乳類細胞)を実質的に含まないある容積の液体培養培地がバイオリアクター(例えば、潅流バイオリアクター)から連続的または定期的に除去され、MCCSまたはMCCS1中に供給される。バイオリアクターは、例えば、約1L~約10,000L(例えば、約1L~約50L、約50L~約500L、約500L~約1000L、500L~約5000L、約500L~約10,000L、約5000L~約10,000L、約1Lから約10,000Lの間、約1Lから約8,000Lの間、約1L~約6,000L、約1Lから約5,000Lの間、約100Lから約5,000Lの間、約10Lから約100Lの間、約10Lから約4,000Lの間、約10Lから約3,000Lの間、約10Lから約2,000Lの間、または約10Lから約1,000Lの間)の容積を有することができる。バイオリアクター内に存在する液体培養培地の量は、例えば、約0.5L~約5,000L(例えば、約0.5L~約25L、約25L~約250L、約250L~約500L、250L~約2500L、約250L~約5,000L、約2500L~約5,000L、約0.5Lから約5,000Lの間、約0.5Lから約4,000Lの間、約0.5Lから約3,000Lの間、約0.5Lから約2,500Lの間、約50Lから約2,500Lの間、約5Lから約50Lの間、約5Lから約2,000Lの間、約5Lから約1,500Lの間、約5Lから約1,000Lの間、または約5Lから約500Lの間)であることができる。細胞の培養は、例えば、フェドバッチバイオリアクターまたは潅流バイオリアクターを用いて実行することができる。細胞の培養(例えば、哺乳類細胞の培養)の非限定的な例およびいろいろな局面は以下に記載されており、いかなる組合せで使用することもできる。
【0145】
細胞
本明細書に記載の方法のいくつかで培養される細胞は細菌(例えば、グラム陰性細菌)、酵母(例えば、サッカロマイセス・セリビジアエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、またはアークスュラ・アデニニボランス(Arxula adeninivorans))、または哺乳類細胞であることができる。哺乳類細胞は懸濁液中で、または接着細胞として増殖する細胞であることができる。本明細書に記載の方法のいずれかで培養することができる哺乳類細胞の非限定的な例として:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO DG44細胞またはCHO-K1s細胞)、Sp2.0、骨髄腫細胞(例えば、NS/0)、B-細胞、ハイブリドーマ細胞、T-細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞(例えば、HEK 293EおよびHEK 293F)、アフリカミドリザル腎臓上皮(Vero)細胞、およびメイディン・ダービー(Madin-Darby)イヌ(コッカースパニエル(Cocker Spaniel))腎臓上皮(MDCK)細胞がある。接着細胞を培養するいくつかの例で、培養物はまた複数のマイクロキャリア(例えば、1つまたはそれ以上の細孔を含むマイクロキャリア)を含むこともできる。本明細書に記載の方法のいずれかで培養することができる追加の哺乳類細胞は当技術分野で公知である。
【0146】
哺乳類細胞は、組換えタンパク質(例えば、組換えタンパク質)をコードする組換え核酸(例えば、哺乳類細胞のゲノムに安定に組み込まれた核酸)を含むことができる。典型的な組換えタンパク質をコードする組換え核酸の非限定的な例は、本明細書に記載の方法を用いて生成することができる組換えタンパク質と共に以下に記載する。いくつかの例において、バイオリアクター(例えば、本明細書に記載のバイオリアクターのいずれか)で培養される哺乳類細胞はより大きい培養物から誘導された。
【0147】
組換えタンパク質をコードする核酸は分子生物学および分子遺伝学で公知の多種多様な方法を用いて哺乳類細胞中に導入することができる。非限定的な例として、トランスフェクション(例えば、リポフェクション)、形質導入(例えば、レンチウィルス、アデノウィルス、またはレトロウィルス感染)、およびエレクトロポレーションがある。いくつかの例において組換えタンパク質をコードする核酸は哺乳類細胞の染色体中に安定に組み込まれない(一過性トランスフェクション)が、他の場合には核酸が組み込まれる。あるいは、または加えて、組換えタンパク質をコードする核酸はプラスミド内および/または哺乳類の人工染色体(例えば、ヒト人工染色体)内に存在することができる。あるいは、または加えて、核酸はウィルスベクター(例えば、レンチウィルス、レトロウィルス、またはアデノウィルスベクター)を用いて細胞に導入することができる。核酸はプロモーター配列(例えば、β-アクチンプロモーターおよびCMVプロモーターのような強力なプロモーター、または誘導性プロモーター)に機能可能に結合することができる。所望により、核酸を含むベクターはまた、選択可能なマーカー(例えば、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、またはネオマイシン耐性を哺乳類細胞に授与する遺伝子)を含むこともできる。
【0148】
いくつかの例において、組換えタンパク質は分泌タンパク質であり、哺乳類細胞により細胞外培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)中に放出される。例えば、可溶性の組換えタンパク質をコードする核酸配列は、組換えタンパク質のN-またはC-末端に、分泌シグナルペプチドをコードする配列を含むことができ、これは哺乳類細胞内に存在する酵素により開裂され、その後細胞外培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)中に放出される。
【0149】
培養培地
液体培養培地は当技術分野で公知である。液体培養培地(例えば、第1および/または第2の組織培養培地)は哺乳類の血清(例えば、ウシ胎児血清およびウシ血清)、および/または成長ホルモンまたは増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、および上皮増殖因子)を補充することができる。あるいは、または加えて、液体培養培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)は既知組成液体培養培地、動物由来成分を含まない液体培養培地、無血清液体培養培地、または血清含有液体培養培地であることができる。既知組成液体培養培地、動物由来成分を含まない液体培養培地、無血清液体培養培地、および血清含有液体培養培地の非限定的な例は市販されている。
【0150】
液体培養培地は通例エネルギー源(例えば、グルコースのような炭水化物)、必須アミノ酸(例えば、20のアミノ酸+システインの基本的な組)、低濃度で必要とされるビタミンおよび/または他の有機化合物、遊離脂肪酸、および/または微量元素を含む。液体培養培地(例えば、第1および/または第2の液体培養培地)は、所望により、例えば、哺乳類ホルモンもしくは増殖因子(例えば、インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子)、塩およびバッファー(例えば、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩)、ヌクレオシドおよび塩基(例えば、アデノシン、チミジン、およびヒポキサンチン)、タンパク質および組織加水分解物、および/またはこれらの添加物の任意の組合せを補充することができる。
【0151】
本明細書に記載の方法のいずれかで細胞(例えば、哺乳類細胞)を培養するために使用することができる多種多様な異なる液体培養培地は当技術分野で公知である。同様に本方法で有用であり得る培地成分には、限定されることはないが、既知組成(CD)加水分解物、例えば、CDペプトン、CDポリペプチド(2またはそれ以上のアミノ酸)、およびCD増殖因子がある。液体の組織培養培地および培地成分の追加の例は当技術分野で公知である。
【0152】
熟練した実務者には認識されるように、本明細書に記載の第1の液体培養培地と第2の液体培養培地は同じタイプの培地または異なる培地であることができる。
【0153】
典型的なバイオリアクターの追加の特徴
本明細書に記載のバイオリアクターのいずれかの内面は、少なくとも1つのコーティング(例えば、ゼラチン、コラーゲン、ポリ-L-オルニチン、ポリスチレン、およびラミニンの少なくとも1つのコーティング)、ならびに当技術分野で公知のように、O、CO、およびNを液体培養培地中にスパージするための1つまたはそれ以上の口、および液体培養培地をかき混ぜるための撹拌機構を有し得る。バイオリアクターは制御加湿雰囲気中で(例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%より高い湿度、または100%の湿度で)細胞培養物をインキュベートすることができる。バイオリアクターはまた、バイオリアクターからある体積の液体培養培地を取り出すことができる機械的装置、および場合により、その機械的装置内に、液体培養培地のバイオリアクターからの移動過程の間に液体培養培地から細胞を除去するフィルター(例えば、米国仮特許出願第61/878,502号に記載されているATFシステムまたは細胞ろ過システム)を装備することもできる。
【0154】
温度
哺乳類細胞の培養工程は約31℃~約40℃の温度で実行することができる。熟練した実務者には認識されるように、温度は、培養工程中特定の時点で、例えば、1時間または1日単位で変えることができる。例えば、温度は、バイオリアクターに細胞(例えば、哺乳類細胞)を最初に播種した後約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、もしくは約20日またはそれ以上で変化またはシフトする(例えば、上昇もしくは低下する)ことができる。例えば、温度は上方へシフト(例えば、最大もしくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または最大もしくは約20℃の変化)することができる。例えば、温度は下方へシフト(例えば、最大もしくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または最大もしくは約20℃の変化)することができる。
【0155】
CO
本明細書に記載の培養工程は、さらに、バイオリアクター内の液体培養培地を最高または約15%のCO(例えば、最高もしくは約14%CO、12%CO、10%CO、8%CO、6%CO、5%CO、4%CO、3%CO、2%CO、または最高もしくは約1%CO)を含む雰囲気に曝露することを含むことができる。
【0156】
潅流バイオリアクター
本明細書に記載の培養工程は潅流バイオリアクターを用いて実行することができる。潅流バイオリアクター内での細胞(例えば、哺乳類細胞)の培養は、第1の容積の第1の液体培養培地(例えば、任意の濃度の哺乳類細胞を含む、例えば、実質的に細胞を含まない第1の容積の第1の液体培養培地)のバイオリアクターからの除去、および第2の容積の第2の液体培養培地を第1の液体培養培地に添加することを含む。除去と添加は同時もしくは順次に、またはこれら2つの組合せで実行することができる。さらに、除去と添加は、(例えば、バイオリアクターの容積または第1の液体培養培地の容積の0.1%~800%(例えば、1%から700%の間、1%から600%の間、1%から500%の間、1%から400%の間、1%から350%の間、1%から300%の間、1%から250%の間、1%から100%の間、100%から200%の間、5%から150%の間、10%から50%の間、15%から40%の間、8%から80%の間、または4%から30%の間)の容積をある所与の時間期間にわたって(例えば、24時間の期間にわたって、約1時間~約24時間の増加する時間期間にわたって、または24時間を超える増加する時間期間にわたって)除去し取り替える速度で)連続的に、または定期的に(例えば、3日毎に一回、2日毎に一回、1日に一回、1日に二回、1日に三回、1日に四回、または1日に五回)、またはこれらの任意の組合せで実行することができる。定期的に実行する場合、(例えば、約24時間の期間内、約1時間~約24時間の増加する時間期間内、または24時間を超える増加する時間期間内に)除去されるかまたは取り替えられる容積は、例えば、バイオリアクターの容積または第1の液体培養培地の容積の0.1%~800%(例えば、1%から700%の間、1%から600%の間、1%から500%の間、1%から400%の間、1%から300%の間、1%から200%の間、1%から100%の間、100%から200%の間、5%から150%の間、10%から50%の間、15%から40%の間、8%から80%の間、または4%から30%の間)であることができる。除去される第1の液体培養培地の第1の容積および添加される第2の液体培養培地の第2の容積は、いくつかの例において、培養期間の全体または一部の間、各々の24時間の期間(または代わりに、約1時間~約24時間の増加する時間期間もしくは24時間を超える増加する時間期間)にわたっておよそ同じに保つことができる。当技術分野で公知のように、第1の液体培養培地の第1の容積を除去する速度(容積/単位時間)および第2の液体培養培地の第2の容積を添加する速度(容積/単位時間)は変えることができる。第1の液体培養培地の第1の容積を除去する速度(容積/単位時間)および第2の液体培養培地の第2の容積を添加する速度(容積/単位時間)はほぼ同じであることができ、または異なることができる。
【0157】
あるいは、除去され添加される容積は培養期間中各々の24時間の期間(または代わりに、1時間~約24時間の増加する時間期間もしくは24時間を超える増加する時間期間)にわたって変化する(例えば、次第に増大する)ことができる。例えば、培養期間中各々の24時間の期間(あるいは、約1時間~24時間超の増加する時間期間または24時間を超える増加する時間期間)内に除去される第1の液体培養培地の容積および添加される第2の液体培養培地の容積は、培養期間中、バイオリアクター容積または第1の液体培養培地容積の0.5%~約20%である容積から、バイオリアクター容積または第1の液体培養培地容積の約25%~約150%まで(例えば、次第に、または互い違いの増加量によって)増大することができる。
【0158】
熟練した実務者には認識されるように、第1の液体培養培地と第2の液体培養培地は同じタイプの培地であることができる。他の例において、第1の液体培養培地と第2の液体培養培地は異なることができる。
【0159】
第1の液体培養培地の第1の容積は、例えば、第1の容積の第1の液体培養培地をバイオリアクターから(例えば、実質的に細胞を含まない第1の容積の第1の液体培養培地をバイオリアクターから)除去することができる機械系により除去することができる。代わりに、または加えて、第1の容積の第1の液体培養培地は、細胞(例えば、哺乳類細胞)を排除する分子量カットオフを有する無菌膜を通る第1の容積の第1の液体培養培地の染み出しまたは重力流により除去することができる。
【0160】
第2の容積の第2の液体培養培地は、自動的に、例えば、注入ポンプにより第1の液体培養培地に添加することができる。
【0161】
いくつかの例において、第1の容積の第1の液体培養培地(例えば、実質的に哺乳類細胞を含まない第1の容積の第1の液体培養培地)の除去、および第2の容積の第2の液体培養培地の第1の液体培養培地への添加は、バイオリアクターに哺乳類細胞を播種した後少なくとも1時間以内(例えば、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、10時間以内、12時間以内、14時間以内、16時間以内、18時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、72時間以内、96時間以内、または96時間後)には起こらない。
【0162】
フェドバッチバイオリアクター
本明細書に記載の培養工程はフェドバッチバイオリアクターを用いて実行することができる。フェドバッチバイオリアクターでの細胞の培養は、大半の培養期間にわたって、第1の液体培養培地への第2の容積の第2の液体培養培地の添加(例えば、定期的または連続的な添加)を含む。第2の液体培養培地の添加は、連続的に(例えば、バイオリアクターの容積または第1の液体培養培地容積の0.1%~300%(例えば、1%~250%、1%~100%、100%~200%、5%~150%、10%~50%、15%~40%、8%~80%、または4%~30%)の容積をある所与の時間期間にわたって(例えば、24時間の期間にわたって、約1時間~約24時間の増加する時間期間にわたって、または24時間を超える増加する時間期間にわたって)添加する速度で)、または定期的に(例えば、3日毎に一回、2日毎に一回、1日に一回、1日に二回、1日に三回、1日に四回、または1日に五回)、またはこれらの任意の組合せで実行することができる。定期的に実行する場合、(例えば、約24時間の期間内、約1時間~約24時間の増加する時間期間内、または24時間を超える増加する時間期間内に)添加される容積は、バイオリアクターの容積または第1の液体培養培地容積の、例えば、0.1%~300%(例えば、1%~200%、1%~100%、100%~200%、5%~150%、10%~50%、15%~40%、8%~80%、または4%~30%)であることができる。添加される第2の液体培養培地の第2の容積は、いくつかの例において、培養期間の全体または一部の間、各々の24時間の期間(または、代わりに、約1時間~約24時間の増加する時間期間または24時間を超える増加する時間期間)にわたってほぼ同じに保つことができる。当技術分野で公知のように、第2の容積の第2の液体培養培地を添加する速度(容積/単位時間)は培養期間の全体または一部の間変えることができる。例えば、添加される第2の液体培養培地の容積は、培養期間中、各々の24時間の期間(または代わりに、1時間~約24時間の増加する時間期間または24時間を超える増加する時間期間)にわたって変化する(例えば、次第に増大する)ことができる。例えば、培養期間中、各々の24時間の期間(または代わりに、約1時間~24時間超の増加する時間期間または24時間を超える増加する時間期間)内に添加される第2の液体培養培地の容積は、培養期間の間中、(例えば、次第にまたは互い違いの増加によって)バイオリアクター容積または第1の液体培養培地容積の0.5%~約20%である容積からバイオリアクター容積または第1の液体培養培地容積の約25%~約150%まで増大することができる。第2の容積の第2の液体培養培地を添加する速度(容積/単位時間)は培養期間の全体または一部にわたってほぼ同じであることができる。
【0163】
熟練した実務者には認識されるように、第1の液体培養培地と第2の液体培養培地は同じタイプの培地であることができる。他の例において、第1の液体培養培地と第2の液体培養培地は異なることができる。第2の液体培養培地の容積は自動的に、例えば、注入ポンプにより第1の液体培養培地に添加することができる。
【0164】
いくつかの例において、第1の液体培養培地への第2の容積の第2の液体培養培地の添加は、バイオリアクターへの哺乳類細胞の播種から少なくとも1時間以内(例えば、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、7時間以内、8時間以内、9時間以内、10時間以内、12時間以内、14時間以内、16時間以内、18時間以内、24時間以内、36時間以内、48時間以内、72時間以内、96時間以内、または96時間後)には起こらない。フェドバッチ培養における細胞培養培地は通例培養期間の終了時に収穫され、本明細書に記載の方法のいずれかで使用される。しかし、フェドバッチ培養の細胞培養培地はまた培養期間中の1つまたはそれ以上の時点で収穫され、本明細書に記載の方法のいずれかで使用されることもできる。
【0165】
熟練した実務者には認識されるように、種々の培養パラメーター(例えば、容器、容積、培養物容積を交換する頻度率、撹拌頻度、温度、培地、およびCO濃度)のいずれかをこれらの方法を実行するためにいかなる組合せで使用することもできる。さらに、本明細書に記載されているかまたは当技術分野で公知の哺乳類細胞のいずれも組換えタンパク質を産生するために使用することができる。
【0166】
代表的な生物学的製造システム
MCCSまたはMCCS1およびMCCS2を含む本明細書に記載の方法を実行するのに有用な生物学的製造システムの例は米国仮特許出願第61/775,060号および同第61/856,390号(参照によって組み入れる)に記載されている。これらの代表的なシステムにおいて、少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、または6つ)のガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムはMCCS内に、またはMCCS1および/またはMCCS2内に存在する。例えば、全システムが全部で2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20の、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含むクロマトグラフィーカラムを含むことができる。例えば、MCCS、MCCS1、および/またはMCCS2は(または各々が)ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を含む1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10のクロマトグラフィーカラムを含むことができる。
【0167】
例えば、有用なシステムは、入口を含むMCCS1および出口を含むMCCS2、または入口および出口を含むMCCSを含むことができる。いくつかの実施形態において、MCCS1およびMCCS2は互いに流体連通している。これらのシステムはまた、流体が入口に流入し、MCCS1およびMCCS2を通過し、出口を通って製造システムから出て行くことができるように構成することもできる。これらのシステムにより、液体培養培地からの治療用原薬の連続的で時間効率の良い生産が可能になる。例えば、治療用のタンパク質を含む流体(例えば、液体培養培地)のMCCS1への供給から、精製された組換えタンパク質(例えば、治療用タンパク質原薬)のMCCS2の出口からの溶出までの経過時間は、例えば、約4時間~約48時間(両端を含む)であることができる。
【0168】
いくつかの代表的なシステムは停留タンクを含まない。他の例において、システムは(例えば、各々の停留タンクが、例えば約5分~約6時間(両端を含む)の全期間の間治療用のタンパク質を保持するのみである場合)システム全体で最大1、2、3、4、または5の停留タンクを含むことができる。停留タンク(複数可)は1mL~約300mL(両端を含む)の容量を有することができる。流体がMCCS1またはMCCSに入る前に停留タンク(複数可)に入るようにシステム内に配置された停留タンク(複数可)はいずれも、それぞれMCCS1またはMCCSの第1のカラムの装填体積の1mL~約100%(両端を含む)である容量を有することができる。流体がMCCS2に入る前に(そしてMCCS1を出た後に)停留タンク(複数可)に入るようにシステム内に配置された停留タンク(複数可)はいずれも、例えば、MCCS2の第1のカラムの装填体積の1mL~約100%(両端を含む)である容量を有することができる。
【0169】
追加の代表的なシステムの構造および特徴
MCCSまたはMCCS1は、流体(例えば、実質的に細胞を含まない液体培養培地)がそれぞれMCCSまたはMCCS1に入るために通過することができる入口を含むことができる。入口はこのような目的のために当技術分野で公知のいかなる構造であることもできる。入口への流体管の挿入後その入口からの流体の有意な漏出を起こすことなく流体がその入口を通ってMCCSまたはMCCS1に入るように流体管を挿入することが可能な、例えば、ネジ、リブ、またはシールを含むことができる。本システムに使用することができる非限定的な入口は公知であり、当業者は理解できるであろう。
【0170】
MCCSまたはMCCS1は少なくとも2つのクロマトグラフィーカラム、少なくとも2つのクロマトグラフィー膜、または少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムおよび少なくとも1つのクロマトグラフィー膜、ならびに入口を有することができる。MCCSまたはMCCS1は、本明細書に記載の代表的なMCCSのいずれかであることができるか、または本明細書に記載のMCCSの(任意の組合せの)代表的な特徴のいずれか1つまたはそれ以上を有することができる。MCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は本明細書に記載の代表的な形状、大きさ、体積(ベッド容積)、および/または単位操作のいずれか1つまたはそれ以上を有することができる。
【0171】
MCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は本明細書に記載または当技術分野で公知の代表的な樹脂のいずれか1つまたはそれ以上を含むことができる。例えば、MCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)の1つまたはそれ以上に含まれる樹脂は、ある捕獲機構(例えば、プロテインA結合捕獲機構、プロテインG結合捕獲機構、抗体または抗体フラグメント結合捕獲機構、基質結合捕獲機構、補因子結合捕獲機構、アプタマー結合捕獲機構、および/またはタグ結合捕獲機構)を利用する樹脂であることができる。MCCSまたはMCCS1のクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)の1つまたはそれ以上に含まれる樹脂はカチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、分子ふるい樹脂、もしくは疎水性相互作用樹脂、またはこれらの任意の組合せであることができる。組換えタンパク質を精製するのに使用することができる樹脂のさらなる例は当技術分野で公知であり、MCCSまたはMCCS1内に存在する1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜に含ませることができる。MCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜は同じおよび/または異なる樹脂(例えば、本明細書に記載または組換えタンパク質の精製に使用されることが当技術分野で公知の樹脂のいずれか)を含むことができる。
【0172】
MCCSまたはMCCS1内に存在する2つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー樹脂は1つまたはそれ以上の単位操作(例えば、組換えタンパク質の捕獲、組換えタンパク質の精製、組換えタンパク質のポリッシュ、ウィルスの不活化、組換えタンパク質を含む流体のイオン濃度および/またはpHの調節、または組換えタンパク質を含む流体のろ過)を実行することができる。非限定例において、MCCSまたはMCCS1は、流体(例えば、液体培養培地)から組換えタンパク質を捕獲する、および組換えタンパク質を含む流体中に存在するウィルスを不活化するという単位操作を実行することができる。MCCSまたはMCCS1は本明細書に記載または当技術分野で公知の2またはそれ以上の単位操作の任意の組合せを実行することができる。
【0173】
MCCSまたはMCCS1内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は切り替え機構(例えば、カラム切り替え機構)により互いに連結または移動することができる。MCCSまたはMCCS1はまた1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、または5つ)のポンプ(例えば、自動化された、例えば、自動化されたぜん動ポンプ)を含むこともできる。カラム切り替え事象は、MCCSまたはMCCS1を通過する流体(例えば、MCCSまたはMCCS1内の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜への投入物および/またはそれ(ら)からの溶出液)中のある特定のレベルの組換えタンパク質に対応するUV吸光度、ある特定の体積の液体(例えば、緩衝液)、または特定の経過時間により検出されるある一定レベルの組換えタンパク質の検出によって始動させることができる。カラム切り替えとは一般に、MCCSまたはMCCS1内の少なくとも2つの異なるクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜(例えば、MCCS1またはMCCS2内に存在する2つまたはそれ以上の異なるクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜)が、本方法の少なくとも一部の間異なる工程(例えば、平衡化、装填、溶出、または洗浄)を実質的に同時に通過できるようにする機構を意味する。
【0174】
MCCSまたはMCCS1は定期的向流クロマトグラフィーシステム(PCCS)であることができる。例えば、MCCSまたはMCCS1であるPCCS(すなわち、それぞれ、PCCSまたはPCCS1)は4つのクロマトグラフィーカラムを含むことができ、ここで最初の3つのカラムは流体(例えば、液体培養培地)から組換えタンパク質を捕獲するという単位操作を実行し、PCCSの4つめのカラムは組換えタンパク質を含む流体中のウィルスを不活化するという単位操作を実行する。MCCSまたはMCCS1であるPCCSはカラム切り替え機構を利用することができる。PCCシステムは、例えば4、5、6、7、または8つのカラム、またはそれ以上までのカラムを稼動させることができる改良されたAKTAシステム(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を利用することができる。
【0175】
MCCSまたはMCCS1は:1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のUV監視装置、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のバルブ、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のpH計、および/または1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の導電率計を装備することができる。MCCSまたはMCCS1はまた、(例えば、UV吸光度、液体の体積、または経過時間に基づいて)カラム切り替えがいつ起こるべきかを検知し、カラム切り替え事象に影響を及ぼす(始動させる)ためのソフトウェア(例えば、Unicornベースのソフトウェア、GE Healthcare, Piscataway, NJ)を利用するオペレーティングシステムも装備することができる。
【0176】
MCCSまたはMCCS1は、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20-1、20-2、20-3、または20-4)のインライン緩衝液調節リザーバおよび/または緩衝液リザーバをさらに含むことができる。他の例において、MCCSまたはMCCS1は、MCCSまたはMCCS1内の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜中に容易には通過することができない流体を保持することができる1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、または6つ)の停留タンクを含むことができる。本明細書に記載のシステムはMCCS、MCCS1、および/またはMCCS2内に1つまたはそれ以上の停留タンク(例えば、本明細書に記載の停留タンク)を含むことができる。本明細書に記載のシステムの他の例は、MCCS、MCCS1、またはMCCS2内に停留タンクを含まないか、またはシステム全体に停留タンクを含まない。本明細書に記載のシステムの他の例はシステム全体に最大で1、2、3、4、または5つの停留タンク(例えば、本明細書に記載のいずれかの停留タンク(複数可))を含む。
【0177】
第2のMCCS
代表的なシステムにおける第2のMCCS(MCCS2)は少なくとも2つのクロマトグラフィーカラム、少なくとも2つのクロマトグラフィー膜、または少なくとも1つのクロマトグラフィーカラム(複数可)および少なくとも1つのクロマトグラフィー膜(複数可)、ならびに出口を含む。MCCS2は、本明細書に記載の代表的なMCCSのいずれかであることができ、または本明細書に記載のMCCSの代表的な特徴のいずれか1つまたはそれ以上を(任意の組合せで)有することができる。MCCS2内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は:本明細書に記載の形状、大きさ、体積(ベッド容積)、および/または単位操作のいずれか1つまたはそれ以上を有することができる。クロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は本明細書に記載または当技術分野で公知の代表的な樹脂のいずれかを含むことができる。例えば、MCCS2内に存在する1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜に含まれる樹脂は、捕獲機構(例えば、プロテインA結合捕獲機構、プロテインG結合捕獲機構、抗体もしくは抗体フラグメント結合捕獲機構、基質結合捕獲機構、補因子結合捕獲機構、タグ結合捕獲機構、および/またはアプタマー結合捕獲機構)を利用する樹脂であることができる。有用な樹脂としては、例えば、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、分子ふるい樹脂、および疎水性相互作用樹脂がある。樹脂のさらなる例は当技術分野で公知である。MCCS2内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜は同じおよび/または異なる樹脂(例えば、本明細書に記載の、または当技術分野で組換えタンパク質の精製に使用することが知られている樹脂のいずれか)を含むことができる。
【0178】
MCCS2内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は1つまたはそれ以上の単位操作(例えば、本明細書に記載の単位操作のいずれかまたは本明細書に記載の単位操作の任意の組合せ)を実行することができる。非限定例において、MCCS2は流体から組換えタンパク質を精製する、および組換えタンパク質を含む流体中に存在する組換えタンパク質をポリッシュするという単位操作を実行することができる。他の非限定例において、MCCS2は流体中に存在する組換えタンパク質を精製する、流体中に存在する組換えタンパク質をポリッシュする、および組換えタンパク質を含む流体をろ過するという単位操作を実行することができる。別の例において、MCCS2は流体中に存在する組換えタンパク質を精製する、流体中に存在する組換えタンパク質をポリッシュする、組換えタンパク質を含む流体をろ過する、および組換えタンパク質を含む流体のイオン濃度および/またはpHを調節するという単位操作を実行することができる。MCCS2は本明細書に記載または当技術分野で公知の単位操作の2つまたはそれ以上の任意の組合せを実行することができる。
【0179】
MCCS2内に存在するクロマトグラフィーカラム(複数可)および/またはクロマトグラフィー膜(複数可)は切り替え機構(例えば、カラム切り替え機構)により互いに対して連結または移動することができる。MCCS2はまた、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、または5)のポンプ(例えば、自動化された、例えば、自動化されたぜん動ポンプ)を含むこともできる。カラム切り替え事象は、MCCS2を通過する流体(例えば、MCCS2内の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜への投入物および/またはそれからの溶出液)中のある特定のレベルの組換えタンパク質に対応するUV吸光度、特定の体積の液体(例えば、緩衝液)、または特定の経過時間により検出されるあるレベルの組換えタンパク質の検出によって始動させることができる。
【0180】
MCCS2は定期的向流クロマトグラフィーシステム(すなわち、PCCS2)であることができる。例えば、PCCS2は、組換えタンパク質を流体から精製するという単位操作を実行する3つのカラム、および流体中に存在する組換えタンパク質をポリッシュするという単位操作を実行するクロマトグラフィー膜を含むことができる。例えば、組換えタンパク質を流体から精製するという単位操作を実行する3つのカラムは、例えば、カチオン交換樹脂を含むことができ、ポリッシュするという単位操作を実行するクロマトグラフィー膜はカチオン交換樹脂を含むことができる。PCCS2はカラム切り替え機構を利用することができる。PCCS2は、例えば、4、5、6、7、または8つのカラム、またはそれ以上まで稼動させることができる改良されたAKTAシステム(GE Healthcare, Piscataway, NJ)を利用することができる。
【0181】
MCCS2は:1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のUV監視装置、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のバルブ、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のpH計、および/または1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)の導電率計を装備することができる。MCCS2はまた、(例えば、UV吸光度、液体の体積、または経過時間に基づいて)カラム切り替え事象がいつ起こるべきかを検知し、カラム切り替え事象に影響を及ぼすためのソフトウェア(例えば、Unicornベースのソフトウェア、GE Healthcare, Piscataway, NJ)を利用するオペレーティングシステムを装備することもできる。
【0182】
MCCS2は、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20-1、20-2、20-3、または20-4)のインライン緩衝液調節リザーバおよび/または緩衝液リザーバをさらに含むことができる。他の例において、MCCS2は、MCCS2内の1つまたはそれ以上のクロマトグラフィーカラムおよび/またはクロマトグラフィー膜中に容易に通過することができない流体を保持することができる1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、または6つ)の停留タンク(例えば、本明細書に記載の停留タンクのいずれか)を含むことができる。
【0183】
MCCS2は、治療用タンパク質原薬がシステムを出て行くのに通ることができる出口を含む。出口は、例えば、流体管を挿入することができるネジ、リブ、もしくはシール、または精製された組換えタンパク質(例えば、治療用タンパク質原薬)を保持もしくは貯蔵するように設計されたバイアルを含むことができる。出口は、精製された組換えタンパク質(例えば、治療用タンパク質原薬)が低減したバイオバーデンのバイアルまたは貯蔵容器中に直接流入することができるように、低減したバイオバーデンのバイアルまたはその他のこのような貯蔵容器を出口に対して密閉するために使用することができる表面を含むことができる。本システムに使用することができる非限定的な出口は公知であり、当業者により理解されよう。
【0184】
本明細書に記載のシステムはまた、MCCS1とMCCS2との間に配置された流体管を含むこともできる。本明細書に記載の流体管のいずれも、例えば、例えばポリエチレン、ポリカーボネート、またはプラスチックで作成されたチューブであることができる。MCCS1とMCCS2との間に配置された流体管は、次のもの:流体管と流体連通しており、当該インライン緩衝液調節リザーバ(複数可)内に貯蔵されている緩衝液が流体管内に存在する流体に加えられるように位置している1つまたはそれ以上のインライン緩衝液調節リザーバ;流体管と流体連通しており、MCCS2中に容易に供給することができない、流体管内に存在するあらゆる過剰の流体を保持することができるように位置している停留タンク(例えば、本明細書に記載の停留タンク(複数可)のいずれか);ならびに流体管内に存在する流体をろ過する(例えば、細菌を除去する)ことができるように流体管内に配置された1つまたはそれ以上のフィルターの1つまたはそれ以上を任意の組合せでさらに含むことができる。インライン緩衝液調節リザーバのいずれも、例えば、約0.5L~50Lの体積の緩衝液を(例えば、25℃、15℃、または10℃以下の温度で)含むことができる。
【0185】
本明細書に記載のシステムは場合により、MCCS2内の最終のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜と出口との間に配置された流体管を含むことができる。本明細書に記載のシステムは、MCCS2内の最終のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜と出口との間に配置された流体管と流体接続している1つまたはそれ以上のフィルターをさらに含むことができ、その結果このフィルターはMCCS2内の最終のクロマトグラフィーカラムまたはクロマトグラフィー膜と出口との間に配置された流体管中に存在する流体から、例えば沈殿した物質、微粒子状物質、または細菌を除去することができる。
【0186】
本明細書に提供されるシステムのいくつかの例はまた、MCCSまたはMCCS1の入口と流体連通しているバイオリアクターも含む。本明細書に記載または当技術分野で公知の代表的なバイオリアクターのいずれも本システムに使用することができる。
【0187】
本明細書に提供されるシステムのいくつかの例はまたポンプシステムも含む。ポンプシステムは1つまたはそれ以上の次のもの:1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のポンプ(例えば、本明細書に記載または当技術分野で公知のポンプのいずれか)、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、または5つ)のフィルター(例えば、本明細書に記載または当技術分野で公知のフィルターのいずれか)、1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)のUV検出器、および1つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、または5つ)の停留タンク(例えば、本明細書に記載の停留タンクのいずれか)を含むことができる。本明細書に提供されるシステムのいくつかの例は、ポンプとMCCSまたはMCCS1の入口との間に配置された流体管(例えば、本明細書に記載または当技術分野で公知の代表的な流体管のいずれか)をさらに含む。いくつかの例において、この特定の流体管は1つまたはそれ以上(例えば、2、3、または4つ)のポンプ(例えば、本明細書に記載または当技術分野で公知のポンプのいずれか)および/または1つまたはそれ以上(例えば、2、3、または4つ)の停留タンク(例えば、本明細書に記載の代表的な停留タンクのいずれか)を含むことができ、ここでこれらのポンプ(複数可)および/または停留タンク(複数可)は流体管内に存在する流体と流体接続している。
【0188】
本明細書に記載のシステムのいくつかの例は、ポンプと入口との間で流体管に連結されたさらなる流体管をさらに含み、このさらなる流体管の一端はバイオリアクターに流体接続し、他端はポンプと入口との間の流体管と流体接続する。このさらなる流体管は、バイオリアクターから除去された液体培養培地から細胞を除去することができるフィルター(例えば、ATF細胞保持システム)を含むことができる。
【0189】
本明細書に提供されるシステムによって、精製された組換えタンパク質(例えば、治療用タンパク質原薬)の連続的な生産が可能になる。当技術分野で公知のように、本システムにより、精製された組換えタンパク質(例えば、治療用タンパク質原薬)の定期的な溶出が可能になり得る。本明細書に記載のシステムはまた、少なくとも約5日、少なくとも約10日、少なくとも約15日、少なくとも約20日、少なくとも約25日、少なくとも約30日、少なくとも約40日、少なくとも約50日、少なくとも約60日、少なくとも約70日、少なくとも約80日、少なくとも約90日、または少なくとも約100日の連続的な期間にわたり、少なくとも約5g/日、少なくとも約10g/日、少なくとも約15g/日、少なくとも約20g/日、少なくとも約30g/日、または少なくとも約40g/日の正味の収率の精製された組換えタンパク質(例えば、治療用タンパク質原薬)をもたらし得る。
【0190】
以下の実施例で本発明をさらに例証するが、これらの実施例は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0191】
t0におけるクロマトグラフィー樹脂の結合能力に対するガンマ線照射の効果
アニオン交換および疎水性特性の両方を有する二モードクロマトグラフィー樹脂(AE樹脂)の結合能力に対するガンマ線照射の効果を研究するために一組の実験を実行した。これらの実験で用いたAE樹脂はCapto Adhere(GE Healthcare Life Sciences)であり、これはN-ベンジル-N-メチルエタノールアミンリガンド、75μmの平均粒径、および0.09~0.12mmolのCl-1/mL培地のイオン容量を有していた。AE樹脂を未処理のままとするか(バージン)または樹脂のバイオバーデンを低減するために処理した(25kGyのガンマ線照射に曝露した)。照射は50mMリン酸ナトリウム、pH7.0中にスラリー化された0.2mLの樹脂を用いて実行した。
【0192】
t0における未処理のAE樹脂(液体培養培地中)および25kGyガンマ線照射したAE樹脂(クロマトグラフィー稼動なし)に結合したタンパク質(Fabrazyme(登録商標))の量をいろいろな標的タンパク質(Fabrazyme(登録商標))濃度で決定した。図1は、未処理および25kGyガンマ線照射したAE樹脂に対するt0における結合等温線を示す。これらのデータは、標的タンパク質の結合がt0における樹脂のガンマ線照射の後に変化しないことを示している。
【実施例2】
【0193】
複数のサイクルの間のクロマトグラフィー樹脂の結合能力に対するガンマ線照射の効果および結合能力の損失を軽減するための変性用緩衝液の使用
複数のサイクルの間のクロマトグラフィー樹脂の結合能力に対するガンマ線照射の効果を試験するために実験を実行した。マルチカラムクロマトグラフィーで、使用したカラムの各々にタンパク質(液体培養培地中のFabrazyme(登録商標))をその結合能力まで装填した。カラムの平衡化および洗浄を20mM MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、pH7.0で実行した。溶出緩衝液、200mMアルギニン、270mM MES、20%エチレングリコール pH7.5を用いて、結合したタンパク質をカラムから溶出した。この実施例において、その全ライフサイクルにわたるガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂の性能を試験するために、未処理のAEまたは25kGyガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂(実施例1に記載したようにして製造)を含有するカラムを、マルチカラムクロマトグラフィーシステム(MCCS)を用いてサイクルにかけたか、または単一のカラムを用いてMCCS条件を模倣する条件下で繰り返しサイクルのクロマトグラフィーを実行した(各々のカラムにはその静的結合能力まで装填した後洗浄および溶出を実行した)。この実施例に記載されている実験における洗浄および溶出工程は各々段階的に実行した。
【0194】
AE樹脂(バージン、15kGyガンマ線照射された、または25kGyガンマ線照射された樹脂)を含む単一のクロマトグラフィーカラムおよび各サイクルで700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)の洗浄用緩衝液、その後(組換えタンパク質の溶出後)1N NaOHの溶液を用いて、複数のサイクルのカラムクロマトグラフィーを実行した。複数のサイクルの間の(t0における未処理の(バージン)樹脂と比較した)規格化された結合能力のパーセントを決定した。これらの実験で得られたデータは、未処理およびガンマ線照射した樹脂両方の結合能力がt0で同様であるが、未処理およびガンマ線照射した樹脂の結合能力が複数のサイクルのクロマトグラフィーの間に結合能力の異なる割合の低下を示すということを示している(図2)。バージン樹脂は複数のサイクルのクロマトグラフィーの間に結合能力の低下を示すが、ガンマ線照射された樹脂は複数のサイクルのクロマトグラフィーの間に結合能力のより劇的な低下を示す(図2)。この組の実験における各々の樹脂の結合能力の計算された低下割合も図3に示す。これらのデータは、クロマトグラフィーのバイオバーデンを低減するためのガンマ線照射の使用の結果樹脂の結合能力が低下し、複数のサイクルのクロマトグラフィーの間に次第に悪くなることを立証している。
【0195】
ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂の失われた結合能力を回復するために様々な変性用緩衝液を使用できるかどうか決定するために複数の組の実験を実行した。これらの実験において、バージン(未処理の)AE樹脂を用いて実行された複数サイクルのクロマトグラフィーは、700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)の洗浄用緩衝液を、続いて1N NaOHの溶液を用いて実行した(低pHアルギニン)。複数サイクルのクロマトグラフィーはまた、25kGyガンマ線照射された樹脂を用い、各サイクルで組換えタンパク質の溶出後樹脂を洗浄するために次の緩衝液の組合せを用いても実行した:8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5、続いて1N NaOHの溶液(低pH尿素);6MグアニジンHCl(pH2.5)、続いて1N NaOHの溶液(または1M NaOH+1M NaCl)(低pHグアニジン);0.1M酢酸中0.5%Triton-X 100(pH2.5)、続いて0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコールの溶液(pH2.5)、続いて1N NaOHの溶液(低pH Triton);0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)、続いて1N NaOHの溶液(低pH有機);または700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)、続いて1N NaOHの溶液(低pHアルギニン)。規格化された結合能力パーセント(t=0におけるバージン(未処理の)樹脂の結合能力に対して規格化)、サイクル当たりの組換えタンパク質の回収パーセント(樹脂上に装填された流体中に存在する組換えタンパク質の量に対して)、およびサイクル当たりの溶出液中に存在する宿主細胞タンパク質のレベル(ng/mg)を決定した。図4のデータは、試験した変性用緩衝液のうち0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)および700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)を除く全てがガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂の結合能力の損失を軽減することができたということを示している。図4のデータは、変性用緩衝液のうち0.7M酢酸、20%エタノール、50%エチレングリコール(pH2.5)および700mMアルギニン、100mM酢酸塩(pH3.0)を除く全てが、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂を効率よく清浄化し、かつ複数のサイクルのクロマトグラフィーの間ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂の結合能力を維持することができるということを示している。
【0196】
図6のデータは、試験した変性用緩衝液の全てが、複数のサイクルの間ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂に結合した組換えタンパク質のサイクル当たりの安定した回収割合を与えることを示している。図6のデータは、試験した変性用緩衝液の各々が、サイクル当たりガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂に結合したタンパク質を同程度に回収することができたということを示している。図7のデータは、様々な試験された変性用緩衝液の使用の結果、各サイクルで組換えタンパク質溶出液中の宿主細胞タンパク質の許容できるレベルを与えることを示している。
【0197】
各サイクルで使用された変性用緩衝液は固く結合したタンパク質を樹脂から放出させることによりガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂の結合能力を回復すると考えられた。25kGyガンマ線照射したAE樹脂を含む3つのクロマトグラフィーカラムを用いて実行され、8M尿素、1M NaCl、0.1Mクエン酸、pH2.5、および(各サイクルの後)組換えタンパク質の溶出後1N NaOHの溶液で洗浄した複数サイクルのクロマトグラフィーの代表的なクロマトグラフを記録した(図5)。クロマトグラフは、ガンマ線照射された樹脂の変性用緩衝液による処理の結果、複数のサイクルの間3つのクロマトグラフィーカラムの各々でガンマ線照射された樹脂から実質的に同じ量のタンパク質が放出されたことを示している(図5の矢印参照)。
【0198】
要約すると、これらのデータは、いろいろな変性用緩衝液を用いて、ガンマ線照射されたクロマトグラフィー樹脂の結合能力を回復して予期された性能を達成することができるということを示している。
【0199】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と共に記載して来たが、以上の記載は説明することを意図したものであり、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではないことと理解されたい。他の局面、利点、および変更は以下の特許請求の範囲内に入る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8