(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-07
(45)【発行日】2022-04-15
(54)【発明の名称】画像生成装置、画像表示装置、及び画像表示方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20220408BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220408BHJP
【FI】
A61B1/045 610
A61B1/00 731
(21)【出願番号】P 2020527193
(86)(22)【出願日】2019-02-22
(86)【国際出願番号】 JP2019006747
(87)【国際公開番号】W WO2020003604
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2018121986
(32)【優先日】2018-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123962
【氏名又は名称】斎藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】本間 博之
(72)【発明者】
【氏名】谷内 章一
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104368(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/002740(WO,A1)
【文献】特開2003-265411(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183371(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/043107(WO,A1)
【文献】特開平11-197098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像ユニットと、画像処理装置と、を備え、
前記撮像ユニットは、対物光学系と、光路分割素子と、撮像素子と、を有し、
前記光路分割素子によって、所定の結像領域が前記撮像素子上に形成され、
前記所定の結像領域は、第1結像領域と、第2結像領域と、からなり、
前記撮像素子は、第1撮像領域と第2撮像領域とを有する所定の撮像領域を有し、
前記第1撮像領域と前記第2撮像領域は、並列に、前記撮像素子上に位置し、
前記第1結像領域と前記第2結像領域は、共に、前記対物光学系における視野の像であって、
前記第1結像領域の外縁
の少なくとも一部と前記第2結像領域の外縁
の少なくとも一部は、共に、前
記所定の撮像領域の内側に位置し、
前記第1結像領域は、前記第1撮像領域に位置し、
前記第2結像領域は、前記第2撮像領域に位置し、
前記撮像素子で、前記
第1撮像領域に位置する
前記第1結像領域の外縁
と、前記第2撮像領域に位置する前記第2結像領域の外縁が撮像され、
前記画像処理装置は、参照データを有し、
前記参照データは、前記所定の結像領域における基準点を表すデータ、又は、前記所定の撮像領域における基準点を表すデータを有し、
前記画像処理装置では、
前記撮像素子で撮像された前記第1結像領域の外縁に基づいて、前記第1結像領域の特徴点が算出され、
前記撮像素子で撮像された前記第2結像領域の外縁に基づいて、前記第2結像領域の特徴点が算出され、
前記第1結像領域の特徴点、前記第2結像領域の特徴点、及び前記参照データから、前記所定の結像領域と前記撮像素子とのずれ量が算出され、
前記ずれ量から、前記第1結像領域から取得した第1画像の表示位置と、前記第2結像領域から取得した第2画像の表示位置と、が決定されることを特徴とする画像生成装置。
【請求項2】
前記第1撮像領域と前記第2撮像領域は、共に、矩形領域であり
、
以下の条件式(1)、(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
1<f/IHmax<1.2 (1)
0.8<f/Id<0.98 (2)
ここで、
fは、前記対物光学系の焦点距離、
IHmaxは、表示用領域における最大長、
Id={(Iv/2)
2+(Ih/2)
2}
1/2であって、
Ivは、前記矩形領域の縦方向の長さ、
Ihは、前記矩形領域の横方向の長さ、
前記表示用領域は、前記第1撮像領域の内側に位置し、前記第1画像の表示に用いられる撮像領域、又は、前記第2撮像領域の内側に位置し、前記第2画像の表示に用いられる撮像領域、
前記最大長は、前記表示用領域の中心から前記表示用領域の外縁までの距離のなかで、最大となる距離、
である。
【請求項3】
前記所定の撮像領域に位置する外縁を含む画像は、内側領域と、外側領域と、を有し、
前記内側領域は、前記所定の撮像領域に位置する外縁の内側に位置し、
前記外側領域は、前記所定の撮像領域に位置する外縁の外側に位置し、
前記内側領域は、明るさが均一な領域を有し、
前記明るさが均一な領域は、前記所定の撮像領域に位置する外縁と接していることを特徴とする請求項1に記載の画像生成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像生成装置と、表示装置と、を備えることを特徴とする画像表示装置
【請求項5】
第1結像領域の外縁の
少なくとも一部の画像を生成するステップと、
第2結像領域の外縁の
少なくとも一部の画像を生成するステップと、
前記第1結像領域の外縁の画像に基づいて、前記第1結像領域の特徴点を算出すると共に、前記第2結像領域の外縁の画像に基づいて、前記第2結像領域の特徴点を算出するステップと、
前記第1結像領域の特徴点、前記第2結像領域の特徴点、及び参照データから、所定の結像領域と撮像素子とのずれ量を算出するステップと、
前記ずれ量から、前記第1結像領域から取得した第1画像の表示位置と、前記第2結像領域から取得した第2画像の表示位置と、を決定するステップと、を有し、
前記撮像素子上に、前記所定の結像領域が形成され、
前記所定の結像領域は、前記第1結像領域と、前記第2結像領域と、からなり、
前記撮像素子は、第1撮像領域と第2撮像領域とを有する所定の撮像領域を有し、
前記第1撮像領域と前記第2撮像領域は、並列に、前記撮像素子上に位置し、
前記第1結像領域は、前記第1撮像領域に位置し、
前記第2結像領域は、前記第2撮像領域に位置し、
前記参照データは、前記所定の結像領域における基準点を表すデータ、又は、前記所定の撮像領域における基準点を表すデータを有し、
前記第1結像領域と前記第2結像領域は、共に、対物光学系における視野の像であることを特徴とする画像表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像生成装置、画像表示装置、及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学系と撮像素子を備えた装置において、撮像素子の多画素化が進んでいる。撮像素子の画素数が多くなると、1つの画素の面積が小さくなる。そのため、光学系では、分解能を高くする必要がある。
【0003】
光学系の分解能を高くするには、物体側開口数を大きくすれば良い。ただし、物体側開口数を大きくすると、被写界深度が狭くなる。被写界深度が狭いと、観察できる範囲が限られる。観察範囲が狭いと、効率良く観察することが困難になる。
【0004】
被写界深度を拡大する装置として、特許文献1に開示された内視鏡装置がある。この内視鏡装置では、対物光学系と撮像素子との間に、光路分割素子が配置されている。光路分割素子によって、2つの光路が形成される。2つの光路では、光路差が生じている。そのため、撮像素子上に、ピントの異なる2つの光学像が形成される。
【0005】
ピントの異なる2つの光学像は、撮像素子で撮像される。その結果、ピントの異なる2つの画像が取得される。取得した2つの画像を合成することで、被写界深度を拡大した画像が生成される。
【0006】
また、この内視鏡装置では、画像補正処理部で画像補正が行える。画像補正では、2つの画像における相対的な位置、角度、及び倍率を略同一にしている。
【0007】
画像補正では、予め設定された補正パラメータが用いられる。補正パラメータの補正量は、工場出荷時に、予め補正パラメータ部に設定されている。そして、内視鏡が画像プロセッサに接続された際に、補正パラメータ部から対応するパラメータを呼び出して補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
内視鏡装置では、内視鏡の取り扱い時に、内視鏡の先端部に衝撃が加わることがある。特許文献1の内視鏡装置では、先端部に、対物光学系、光路分割素子、及び撮像素子が配置されている。そのため、先端部に衝撃が加わると、対物光学系、光路分割素子、及び撮像素子の少なくとも1つが、強い力を受ける。
【0010】
また、内視鏡は、高温度、高湿度の環境下で、洗浄や消毒が行われることがある。このような環境下では、先端部に熱的変化などの影響が及ぶことがある。そのため、洗浄や消毒が行われると、対物光学系、光路分割素子、及び撮像素子が熱的な力を受ける。更に、衝撃、洗浄、及び消毒以外でも、先端部が力を受けてしまうことがある。
【0011】
このような力を強く受けるか、又はこのような力を繰り返し受けると、対物光学系と撮像素子との間、光路分割素子と撮像素子との間、又は光学ユニットと撮像素子との間で、ミクロンオーダーの相対的なずれを生じることがある。尚、光学ユニットは、対物光学系と光路分割素子とからなる。
【0012】
撮像素子上には、ピントの異なる2つの光学像が形成されている。そのため、上述のずれが生じると、撮像素子と光学像との間で、相対的な位置のずれが生じる。この相対的な位置のずれ(以下、「位置ずれ」という)は、2つの画像から合成画像を生成する際に、悪影響を及ぼす。
【0013】
位置ずれの量(以下、「ずれ量」という)は、撮像素子に基準点を設けるか、又は、光学像に基準点を設けることで求めることができる。例えば、撮像素子に基準点を設けると、ずれ量は基準点から光学像の位置までの距離で算出できる。
【0014】
参照量を工場出荷時のずれ量とすると、工場出荷時、ずれ量は参照量と一致している。また、工場出荷時、2つの画像から合成された画像は、自然な合成画像になっている。よって、ずれ量が参照量と一致している状態では、自然な合成画像が生成される。逆に、ずれ量が参照量と一致していない状態では、自然な合成画像を生成することができない。
【0015】
上述のように、特許文献1の内視鏡装置では、機械的な衝撃や熱的な衝撃等で、位置ずれが生じる場合がある。位置ずれが大きいと、ずれ量は参照量と一致しなくなる。そのため、特許文献1の内視鏡装置では、位置ずれが生じた場合、自然な合成画像を生成することが困難になる。
【0016】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであって、撮像素子と光学像との間で位置ずれが生じても、容易に、自然な合成画像が取得できる画像生成装置、画像表示装置、及び画像表示方法を提供することを目的とする。
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る画像生成装置は、
撮像ユニットと、画像処理装置と、を備え、
撮像ユニットは、対物光学系と、光路分割素子と、撮像素子と、を有し、
光路分割素子によって、所定の結像領域が撮像素子上に形成され、
所定の結像領域は、第1結像領域と、第2結像領域と、からなり、
撮像素子は、第1撮像領域と第2撮像領域とを有する所定の撮像領域を有し、
第1撮像領域と第2撮像領域は、並列に、撮像素子上に位置し、
第1結像領域と第2結像領域は、共に、対物光学系における視野の像であって、
第1結像領域の外縁の少なくとも一部と第2結像領域の外縁の少なくとも一部は、共に、所定の撮像領域の内側に位置し、
第1結像領域は、第1撮像領域に位置し、
第2結像領域は、第2撮像領域に位置し、
撮像素子で、第1撮像領域に位置する第1結像領域の外縁と、第2撮像領域に位置する第2結像領域の外縁が撮像され、
画像処理装置は、参照データを有し、
参照データは、所定の結像領域における基準点を表すデータ、又は、所定の撮像領域における基準点を表すデータを有し、
画像処理装置では、撮像素子で撮像された第1結像領域の外縁に基づいて、第1結像領域の特徴点が算出され、撮像素子で撮像された第2結像領域の外縁に基づいて、第2結像領域の特徴点が算出され、
第1結像領域の特徴点、第2結像領域の特徴点、及び参照データから、所定の結像領域と撮像素子とのずれ量が算出され、
ずれ量から、第1結像領域から取得した第1画像の表示位置と、第2結像領域から取得した第2画像の表示位置と、が決定されることを特徴とする。
また、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る画像表示装置は、
上述の画像生成装置と、表示装置と、を備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る画像表示方法は、
第1結像領域の外縁の少なくとも一部の画像を生成するステップと、
第2結像領域の外縁の少なくとも一部の画像を生成するステップと、
第1結像領域の外縁の画像に基づいて、第1結像領域の特徴点を算出すると共に、第2結像領域の外縁の画像に基づいて、第2結像領域の特徴点を算出するステップと、
第1結像領域の特徴点、第2結像領域の特徴点、及び参照データから、所定の結像領域と撮像素子とのずれ量を算出するステップと、
ずれ量から、第1結像領域から取得した第1画像の表示位置と、第2結像領域から取得した第2画像の表示位置と、を決定するステップと、を有し、
撮像素子上に、所定の結像領域が形成され、
所定の結像領域は、第1結像領域と、第2結像領域と、からなり、
撮像素子は、第1撮像領域と第2撮像領域とを有する所定の撮像領域を有し、
第1撮像領域と第2撮像領域は、並列に、撮像素子上に位置し、
第1結像領域は、第1撮像領域に位置し、
第2結像領域は、第2撮像領域に位置し、
参照データは、所定の結像領域における基準点を表すデータ、又は、所定の撮像領域における基準点を表すデータを有し、
第1結像領域と第2結像領域は、共に、対物光学系における視野の像であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮像素子と光学像との間で位置ずれが生じても、容易に、自然な合成画像が取得できる画像生成装置、画像表示装置、及び画像表示方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図8】撮像領域と表示用領域の様子を示す図である。
【
図13】2つの撮像素子を用いた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態に係る画像生成装置と画像表示装置について、図面を用いて、このような構成をとった理由と作用を説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
本実施形態の画像生成装置は、撮像ユニットと、画像処理装置と、を備え、撮像ユニットは、対物光学系と、光路分割素子と、撮像素子と、を有し、光路分割素子によって、所定の結像領域が撮像素子上に形成され、所定の結像領域は、第1結像領域と、第2結像領域と、からなり、第1結像領域と第2結像領域は、共に、対物光学系における視野の像であって、第1結像領域の外縁と第2結像領域の外縁は、共に、撮像素子の所定の撮像領域の内側に位置し、撮像素子で、所定の撮像領域に位置する外縁が撮像され、画像処理装置は、参照データを有し、参照データは、所定の結像領域における基準点を表すデータ、又は、所定の撮像領域における基準点を表すデータを有し、画像処理装置では、第1結像領域の外縁に基づいて、第1結像領域の特徴点が算出され、第2結像領域の外縁に基づいて、第2結像領域の特徴点が算出され、第1結像領域の特徴点、第2結像領域の特徴点、及び参照データから、所定の結像領域と撮像素子とのずれ量が算出され、ずれ量から、第1結像領域から取得した第1画像の表示位置と、第2結像領域から取得した第2画像の表示位置と、が決定されることを特徴とする。
また、本実施形態の画像表示装置は、本実施形態の画像生成装置と、表示装置と、を備える。以下、本実施形態の画像表示装置を用いて説明する。以下の説明における作用効果は、本実施形態の画像生成装置でも得られるものと考えることができる。
【0023】
本実施形態の画像表示装置を
図1に示す。画像表示装置1は、撮像ユニット2、画像処理装置3と、表示装置4と、を備える。撮像ユニット2は、対物光学系5と、光路分割素子6と、撮像素子7と、を有する。
【0024】
光路分割素子6によって、対物光学系5の光路は、第1光路8と、第2光路9と、に分かれる。また、光路分割素子6によって、所定の結像領域が撮像素子7上に形成されている。
【0025】
結像領域と撮像領域の様子を
図2に示す。所定の結像領域10は、第1結像領域11と、第2結像領域12と、からなる。第1結像領域11と第2結像領域12は、共に、対物光学系5における視野の像である。
【0026】
第1結像領域11の外縁13と第2結像領域12の外縁14は、共に、撮像素子7の所定の撮像領域15の内側に位置している。撮像素子7で、所定の撮像領域15に位置する外縁が撮像される。
【0027】
第1結像領域11と第2結像領域12は、並列に、撮像素子7上に形成されている。所定の撮像領域15は、第1撮像領域16と、第2撮像領域17と、からなる。第1撮像領域16と第2撮像領域17は、並列に、撮像素子7上に位置している。
【0028】
第1結像領域11と第1撮像領域16は、第1光路8に位置している。第2結像領域12と第2撮像領域17は、第2光路9に位置している。外縁13は、第1撮像領域16で撮像される。外縁14は、第2撮像領域17で撮像される。
【0029】
第1結像領域11には、第1光学像18が形成されている。第2結像領域12には、第2光学像19が形成されている。第1光学像18と第2光学像19では、一方の光学像が他方の光学像の鏡像になっている。
【0030】
結像領域と撮像領域の様子を
図3に示す。
図3(a)は、基準状態の様子を示す図である。
図3(b)は、シフトが生じた様子を示す図である。
【0031】
基準状態について説明する。基準状態としては、撮像ユニット2の製造時の状態や、画像表示装置1の工場出荷時の状態がある。また、工場出荷後に、位置ずれが発生した場合、最後に位置ずれが発生した状態の前の状態を、基準状態にすることができる。
【0032】
例えば、工場出荷後に、3回の位置ずれが生じたとする。この場合、3回目の状態が、最後に位置ずれが発生した状態になる。よって、最初に位置ずれが生じた状態、又は、2回目に位置ずれが生じた状態を、基準状態にすることができる。
【0033】
上述のように、位置ずれは、撮像素子と光学像との間で生じた位置のずれである。また、ずれ量は、撮像素子と光学像との間で生じた位置のずれの量である。画像表示装置1では、所定の結像領域10に、第1光学像18と第2光学像19が形成されている。
【0034】
例えば、対物光学系5と光路分割素子6が静止している状態で、撮像素子7が移動したとする。この場合、第1撮像領域16と第2撮像領域17は移動する。第1撮像領域16には、第1光学像18が位置している。第2撮像領域17には、第2光学像19が位置している。第1撮像領域16と第2撮像領域17が移動しても、第1光学像18と第2光学像19は移動しない。すなわち、撮像素子7が移動しても、所定の結像領域10は移動しない。
【0035】
逆に、撮像素子7が静止している状態で、対物光学系5と光路分割素子6の少なくとも一方が移動したとする。この場合、第1光学像18と第2光学像19が移動する。第1光学像18は、第1撮像領域16に位置している。第2光学像19は、第2撮像領域17に位置している。第1光学像18と第2光学像19が移動しても、第1撮像領域16と第2撮像領域17は移動しない。すなわち、所定の結像領域10が移動しても、撮像素子7は移動しない。
【0036】
このように、撮像素子と光学像との間で生じる位置ずれは、撮像素子と所定の結像領域との間で生じる位置ずれに置き換えることができる。
【0037】
以下の説明では、撮像素子と所定の結像領域との間で生じた位置のずれも、位置ずれと称する。同様に、撮像素子と所定の結像領域との間で生じた位置のずれの量も、ずれ量と称する。
【0038】
画像表示装置1では、画像処理装置3を用いて、ずれ量が算出される。ずれ量は、撮像素子7と所定の結像領域10との間で生じた位置のずれに基づいて、算出される。そのため、所定の結像領域10に関する位置の情報と、撮像素子7に関する位置の情報と、が必要になる。
【0039】
画像処理装置3では、所定の結像領域10に関する位置の情報として、第1結像領域11の特徴点P1と、第2結像領域12の特徴点P2と、が用いられる。また、撮像素子7に関する位置の情報として、第1撮像領域16における基準点Q1と、第2撮像領域17における基準点Q2と、が用いられる。
【0040】
特徴点P1は、外縁13から算出できる。ただし、第1結像領域11では、外縁13a、外縁13b、外縁13c、及び外縁13dが、第1結像領域11の四隅に位置しているだけである。
【0041】
外縁13a、外縁13b、外縁13c、及び外縁13dは、いずれも、外縁13の一部である。そのため、外縁13a、外縁13b、外縁13c、及び外縁13dを用いて、外縁13全体の形状を求める。外縁13全体の形状が求められると、特徴点P1を決定できる。
【0042】
第1結像領域11と第2結像領域12は、共に、対物光学系5における視野の像である。対物光学系5の形状は、理想的には、円である。この場合、対物光学系5における視野の形状は円になる。
【0043】
撮像素子7が理想的に配置されている状態では、撮像面は対物光学系5の光軸に対して垂直になっている。ただし、実際には、撮像素子7を理想状態で配置することは難しい。例えば、組立誤差によって、撮像素子7の配置は理想状態からずれた状態になっていることが多い。この場合、撮像で得られた画像では、視野の画像の形状は楕円になる。
【0044】
また、対物光学系5の内部には、レンズを保持する枠や絞りが配置されている。枠や絞りには、開口部が設けられている。多くの場合、開口部の形状は円形である。しかしながら、非円形の開口部を有する枠や絞りが用いられる場合がある。この場合、撮像で得られた画像では、視野の画像の形状は必ずしも円になるとは限らない。
【0045】
組立誤差が十分に小さい対物光学系では、視野の像の形状は円になる。また、円形の開口部を有する枠や絞りが、対物光学系に用いられている場合は、視野の像の形状は、円になる。視野の像の形状が円の場合、
図2に示すように、第1結像領域11の形状は円になる。この場合、外縁13は、円周になる。そのため、外縁13a、外縁13b、外縁13c、及び外縁13dは、いずれも、円周の一部になる。外縁14についても同様である。
【0046】
視野の像の形状が円にならない場合について説明する。外縁の形状を
図4に示す。
図4(a)は、外縁が曲線の場合を示す図である。
図4(b)は、外縁が楕円周の場合を示す図である。
【0047】
視野の像の形状が円にならない場合、
図4(a)に示すように、第1結像領域11’の形状は、曲線で構成された形状になる。この場合、外縁13’は曲線になる。そのため、外縁13’a、外縁13’b、外縁13’c、及び外縁13’dは、いずれも、曲線の一部になる。外縁14’についても同様である。
【0048】
また、視野の像の形状が円にならない場合、
図4(b)に示すように、第1結像領域11”の形状は楕円になる。この場合、外縁13”は、楕円周になる。そのため、外縁13”a、外縁13”b、外縁13”c、及び外縁13”dは、いずれも、楕円周の一部になる。外縁14”についても同様である。
【0049】
外縁13の一部が第1撮像領域16の内側に位置している場合、第1結像領域11の全体の形状の特定では、外縁13a、外縁13b、外縁13c、及び外縁13dを使った推定が行われる。第1結像領域11’の全体の形状の特定や、第1結像領域11”の全体の形状の特定についても同様である。推定では、円による近似や、楕円による近似、その他の様々な近似を用いることができる。
【0050】
外縁13が曲線の場合、特徴点P1は、第1結像領域11の重心にすれば良い。また、外縁13が楕円周又は円周の場合、特徴点P1は、第1結像領域11の重心、又は第1結像領域11の中心にすれば良い。第2結像領域12についても同様である。
【0051】
画像処理装置3では、第1結像領域11の特徴点P1、第2結像領域12の特徴点P2、及び参照データから、ずれ量が算出される。
【0052】
参照データは、所定の撮像領域15における基準点を表すデータである。所定の撮像領域15は、第1撮像領域16と第2撮像領域17とを有する。よって、基準点Q1と基準点Q2を、参照データとして用いることができる。
【0053】
基準点Q1は、例えば、第1撮像領域16の中心にすれば良い。基準点Q2は、例えば、第2撮像領域17の中心にすれば良い。
【0054】
基準状態では、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置は一致している。また、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置も一致している。ずれ量ΔPQは、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置との差、又は、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差である。
【0055】
基準状態では、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置との差、及び、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差は、どちらもゼロである。よって、基準状態では、ずれ量ΔPQはゼロである。
【0056】
上述のように、参照データには、工場出荷時のずれ量を設定できる。ただし、参照データに設定できる量は、工場出荷時のずれ量に限られない。基準状態でのずれ量であれば、どのようなずれ量も参照データに設定できる。上述のように、基準状態では、ずれ量ΔPQはゼロである。よって、参照データΔrefもゼロになる。
【0057】
ただし、撮像ユニット2の製造では、製造誤差をゼロにすることは困難である。そのため、実際には、ずれ量をゼロにすることは困難である。このように、参照データの値はゼロである必要はない。
【0058】
シフトが生じた場合について説明する。基準状態の画像表示装置1に衝撃が加えられたことで、画像表示装置1で位置ずれが生じたとする。
図3(b)では、所定の結像領域10が、撮像素子7に対して矢印の方向にシフトしている。
【0059】
この場合、第1結像領域11と第2結像領域12も、矢印の方向にシフトする。そのため、シフトした後の特徴点の位置を特定する必要がある。
【0060】
図3(b)に示すように、シフトが生じた後でも、第1結像領域11では、外縁13bと外縁13cとが、第1結像領域11の内側に位置している。よって、シフト後の第1結像領域11の全体の形状の特定では、外縁13bと外縁13cとを使った推定が行われる。シフト後の第1結像領域11の全体の形状が特定できると、シフト後の特徴点P1を特定できる。特徴点P2についても同様である。
【0061】
上述のように、基準状態において、第1結像領域11の形状は既知になっている。よって、基準状態で得られた第1結像領域11の形状を、シフト後の第1結像領域11の全体の形状の特定に利用しても良い。また、基準状態で得られた第1結像領域11の形状を、シフト後の特徴点P1の特定に利用しても良い。特徴点P2についても同様である。
【0062】
シフトが生じた後では、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置は一致していない。また、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置も一致していない。ずれ量ΔPQは、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置との差、又は、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差である。
【0063】
特徴点P1の位置と基準点Q1の位置との差、及び、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差は、どちらもゼロではない。よって、シフトが生じた後では、ずれ量ΔPQはゼロではない。ずれ量ΔPQから参照量Δrefを減算することで、シフトが生じた後のずれ量ΔPQを算出できる。
【0064】
シフトの場合、基準点Q1に対する特徴点P1の移動方向と、基準点Q2に対する特徴点P2の移動方向は、同じ方向である。また、特徴点P1の移動量と特徴点P2の移動量は、同じである。よって、ずれ量ΔPQは、特徴点P1と特徴点P2のどちらか一方のみを用いて算出できる。
【0065】
光学像と撮像領域の様子を
図5に示す。
図5(a)は、基準状態の様子を示す図である。
図5(b)は、シフトが生じた様子を示す図である。
【0066】
基準状態でシフトが生じると、第1光学像18と第2光学像19は、基準状態の位置から移動する。このとき、第1光学像18と第2光学像19は、同じ方向にシフトする。
【0067】
光学像の画像の様子を
図6に示す。
図6(a)は、画像反転を行う前の様子を示す図である。
図6(b)は、画像反転を行った後の様子を示す図である。
図6(c)は、2つの画像を合成した様子を示す図である。
【0068】
シフトが生じた状態で、第1光学像18と第2光学像19を撮像する。この撮像によって、
図6(a)に示すように、第1画像20と第2画像21とが、取得される。第1画像20と第2画像21では、一方の画像が他方の画像の鏡像になっている。そのため、第1画像20と第2画像21とを合成することはできない。
【0069】
そこで、
図6(b)に示すように、反転画像22を生成する。反転画像22は、第1画像20を左右方向で反転させた画像である。これにより、反転画像22と第2画像21とを合成することができる。
【0070】
ただし、反転画像22では、シフト方向が第1画像20と逆向きになる。この場合、
図6(c)に示すように、合成された画像では、反転画像22と第2画像21とが重ならない。そのため、不自然な合成画像が生成されてしまう。
【0071】
画像表示装置1では、画像処理装置3で、ずれ量ΔPQが算出されている。そこで、ずれ量ΔPQから、反転画像22の表示位置と、第2画像21の表示位置とを決定できる。すなわち、反転画像22と第2画像21とを重ねることができる。その結果、自然な合成画像を生成できる。
【0072】
結像領域と撮像領域の様子を
図7に示す。
図7(a)は、基準状態の様子を示す図である。
図7(b)は、回転が生じた様子を示す図である。基準状態については説明を省略する。
【0073】
回転が生じた場合について説明する。基準状態の画像表示装置1に衝撃が加えられたことで、画像表示装置1で位置ずれが生じたとする。
図7(b)では、撮像素子7が、所定の結像領域10に対して矢印の方向に回転している。
【0074】
この場合、撮像素子7の回転に伴って、矢印の方向に、基準点Q1と基準点Q2が回転する。一方、第1結像領域11と第2結像領域12は回転していない。よって、特徴点P1と特徴点P2を、基準にすることができる。
【0075】
しかしながら、撮像素子7を基準にすると、結果的に、第1結像領域11と第2結像領域12とが回転したことになる。この場合、回転した後の特徴点P1の位置と特徴点P2の位置を特定することになる。
【0076】
上述のように、第1結像領域11の形状は、基準状態で既知となっている。
図7(b)に示すように、回転が生じた後でも、第1結像領域11では、外縁13aと外縁13bとが、第1結像領域11の内側に位置している。よって、回転後の第1結像領域11の全体の形状の特定では、外縁13aと外縁13bとを使った推定が行われる。回転後の第1結像領域11の全体の形状が特定できると、回転後の特徴点P1を特定できる。特徴点P2についても同様である。
【0077】
上述のように、基準状態において、第1結像領域11の形状は既知になっている。よって、基準状態で得られた第1結像領域11の形状を、回転後の第1結像領域11の全体の形状の特定に利用しても良い。また、基準状態で得られた第1結像領域11の形状を、回転後の特徴点P1の特定に利用しても良い。特徴点P2についても同様である。
【0078】
回転が生じた後では、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置は一致していない。また、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置も一致していない。ずれ量ΔPQは、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置との差、又は、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差である。
【0079】
特徴点P1の位置と基準点Q1の位置との差、及び、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差は、どちらもゼロではない。よって、回転が生じた後では、ずれ量ΔPQはゼロではない。ずれ量ΔPQから参照量Δrefを減算することで、回転が生じた後のずれ量ΔPQを算出できる。
【0080】
特徴点P1の位置と基準点Q1の位置とのずれは、シフトによっても生じ得る。そのため、特徴点P1だけに着目すると、このずれが、回転によって生じたものなのか、シフトによって生じたものなのか、区別ができない。
【0081】
画像処理装置3では、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差も算出している。そこで、基準点Q2に着目すると、基準点Q2に対する特徴点P2の移動方向は、基準点Q1に対する特徴点P1の移動方向と逆になっている。一方、シフトの場合は、上述のように、基準点Q2に対する特徴点P2の移動方向は、基準点Q1に対する特徴点P1の移動方向と同じである。
【0082】
よって、特徴点P2の位置と基準点Q2の位置との差を算出することで、特徴点P1の位置と基準点Q1の位置とのずれが、回転によって生じたものなのか、シフトによって生じたものなのを、区別できる。
【0083】
基準状態でシフトが生じると、
図5(b)に示すように、第1光学像18と第2光学像19は、基準状態の位置から移動する。よって、光学像を用いて、ずれ量を算出できる。この場合、光学像に特徴点が設定されることになる。そのため、ずれ量の算出では、毎回、同一の光学像を用いる必要がある。
【0084】
例えば、参照データの設定に、工場出荷時のずれ量が用いられているとする。このずれ量の算出に用いられた物体を、参照物体とする。工場出荷後にずれ量を算出する場合、物体には、参照物体、又は、参照物体の正確な複製を用いる必要がある。
【0085】
また、物体と対物光学系の相対関係も、工場出荷時の相対関係を忠実に再現する必要がある。相対関係とは、例えば、物体と対物光学系との距離、光軸と直交する面における物体と対物光学系との相対位置、物体に対する対物光学系の向きである。
【0086】
光学像における特徴点は、対物光学系の位置を直接的に示していない。そのため、光学像を用いてずれ量を算出する場合は、様々な制約を受けることになる。
【0087】
これに対して、画像表示装置1では、所定の結像領域10を用いて、ずれ量を算出している。所定の結像領域10は、対物光学系5における視野の像である。視野は、対物光学系5の位置で決まる。そのため、視野の像、すなわち、所定の結像領域10も対物光学系5の位置で決まる。
【0088】
このように、所定の結像領域10は、対物光学系の位置を直接的に示している。そして、所定の結像領域10に特徴点が設定されている。よって、画像表示装置1では、容易に、ずれ量を算出できる。
【0089】
画像表示装置1では、第1結像領域11の外縁13の全部を、所定の撮像領域15内に位置させることができる。また、第2結像領域12の外縁14の全部を、所定の撮像領域15内に位置させることができる。
【0090】
また、画像表示装置1では、第1結像領域11の外縁13の一部を、所定の撮像領域15内に位置させることができる。また、第2結像領域12の外縁14の一部を、所定の撮像領域15内に位置させることができる。
【0091】
撮像領域と表示用領域の様子を
図8に示す。
図8(a)は、外縁全体が撮像領域内に位置している様子を示す図である。
図8(b)は、外縁の一部が撮像領域内に位置している様子を示す図である。
【0092】
上述のように、第1結像領域11の外縁13と、第2結像領域12の外縁14は、共に、所定の撮像領域15の内側に位置している。第1結像領域11では、外縁13は、第1撮像領域16の内側に位置している。第2結像領域12では、外縁14は、第2撮像領域17の内側に位置している。
【0093】
所定の撮像領域15は、第1撮像領域16と、第2撮像領域17と、を有する。ここでは、第1撮像領域16を用いて説明する。
【0094】
第1撮像領域16は、表示用領域23と、領域24と、を有する。表示用領域23は、第1撮像領域16の内側に位置し、第1画像の表示に用いられる撮像領域である。表示用領域23の形状は、八角形である。領域24の形状は、三角形である。領域24は、第1撮像領域16の四隅に位置している。
【0095】
図8(a)では、外縁13の全部が、第1撮像領域16の内側に位置している。上述のように、特徴点は、外縁13全体の形状を用いて決定する。
図8(a)では、外縁13全体の形状が明確に分かるので、外縁13全体の形状を推定する必要がない。その結果、特徴点を、正確に決定できる。
【0096】
ただし、外縁13の内側に、光学像が形成される。そのため、表示用領域23の一部は、光学像の表示に用いることができない。
【0097】
一方、
図8(b)では、外縁13の一部が、第1撮像領域16の内側に位置している。この場合も、外縁13の内側に、光学像が形成される。ここで、表示用領域23の全部が、外縁13の内側に位置している。そのため、表示用領域23の全部を、光学像の表示に用いることができる。
【0098】
ただし、上述のように、特徴点は、外縁13全体の形状を用いて決定する。
図8(b)では、外縁13全体の形状が明確に分からない。よって、外縁13全体の形状を推定することになる。
【0099】
本実施形態の画像表示装置では、所定の撮像領域は、第1撮像領域と、第2撮像領域と、を有し、第1撮像領域と第2撮像領域は、共に、矩形領域であり、第1結像領域は、第1撮像領域に位置し、第2結像領域は、第2撮像領域に位置し、以下の条件式(1)、(2)を満足することが好ましい。
1<f/IHmax<1.2 (1)
0.8<f/Id<0.98 (2)
ここで、
fは、対物光学系の焦点距離、
IHmaxは、表示用領域における最大長、
Id={(Iv/2)2+(Ih/2)2}1/2であって、
Ivは、矩形領域の縦方向の長さ、
Ihは、矩形領域の横方向の長さ、
表示用領域は、第1撮像領域の内側に位置し、第1画像の表示に用いられる撮像領域、又は、第2撮像領域の内側に位置し、第2画像の表示に用いられる撮像領域、
最大長は、表示用領域の中心から表示用領域の外縁までの距離のなかで、最大となる距離、
である。
【0100】
条件式(1)、(2)を満足することで、小型な撮像素子を用いても、結像領域の外縁を撮像領域の内側に位置させると共に、表示用領域の全てを結像領域の内側に位置させることができる。その結果、表示用領域の全部を光学像の表示に用いることができると共に、ずれ量を算出できる。
【0101】
IHmaxの値は、例えば、所定の光線に対応する像高にすることができる。所定の光線は、全反射が生じる半画角に対応する光線である。全反射が生じる半画角は、例えば、85度にすることができる。
【0102】
本実施形態の画像表示装置では、所定の撮像領域に位置する外縁を含む画像は、内側領域と、外側領域と、を有し、内側領域は、所定の撮像領域に位置する外縁の内側に位置し、外側領域は、所定の撮像領域に位置する外縁の外側に位置し、内側領域は、明るさが均一な領域を有し、明るさが均一な領域は、所定の撮像領域に位置する外縁と接していることが好ましい。
【0103】
上述のように、ずれ量の算出では、特徴点と基準点とが用いられる。特徴点は、結像領域の外縁から算出できる。よって、結像領域の外縁を特定する必要がある。
【0104】
結像領域の外縁は、所定の撮像領域15に位置している。よって、結像領域の外縁は、撮像素子7で撮像される。その結果、所定の撮像領域に位置する外縁を含む画像が得られる。
【0105】
所定の撮像領域に位置する外縁を含む画像について説明する。外縁を含む画像を
図9に示す。
図9では、参考のために、所定の撮像領域に位置する外縁の全体が、破線で示されている。
【0106】
所定の撮像領域に位置する外縁を含む画像25(以下、「画像25」という)は、内側領域26と、外側領域27と、を有する。内側領域26は、所定の撮像領域に位置する外縁28(以下、「外縁28」という)の内側に位置している。外側領域27は、外縁28の外側に位置している。
【0107】
内側領域26は、明るさが均一な領域29(以下「領域29」という)を有する。領域29については、後述する。
【0108】
所定の撮像領域は、第1撮像領域16と、第2撮像領域17と、を有する。よって、画像25は、第1撮像領域16に位置する外縁13を含む画像、又は、第2撮像領域17に位置する外縁14を含む画像と見なすことができる。
【0109】
図2に示すように、外縁13は、第1撮像領域16の内側に位置している。外縁14は、第2撮像領域17の内側に位置している。よって、第1撮像領域16における撮像と、第2撮像領域17における撮像とから、外縁13を含む画像と外縁14を含む画像とを取得できる。取得した画像から、外縁13と外縁14を特定できる。
【0110】
所定の撮像領域に位置する外縁は、所定の結像領域の外縁である。所定の結像領域は、視野の像である。視野の外側からの光は、対物光学系に入射しない。よって、視野の像の外側には、光は到達しない。この場合、画像25では、外側領域27における画素の値はゼロになる。
【0111】
一方、視野の内側からの光は、対物光学系に入射する。よって、視野の像の内側には、光が到達する。この場合、画像25では、内側領域26における画素の値は、入射した光の明るさに応じた値になる。
【0112】
そこで、内側領域26で、画素の値がゼロよりも大きくなるようにする。このようにすることで、外縁28を明確にできる。内側領域26における画素の値と外側領域27における画素の値との差が大きくなるほど、外縁28はより明確になる。
【0113】
内側領域26における画素の値を大きくするには、視野の内側を光で満たせば良い。視野の内側を光で満たす方法について、画像表示装置の具体例を用いて説明する。
【0114】
画像表示装置の具体例を
図10に示す。この例では、画像表示装置置は内視鏡システムである。
図10は、内視鏡システムの概略構成を示している。
【0115】
内視鏡システム30は、電子内視鏡を用いた観察システムである。内視鏡システム30は、電子内視鏡31と画像処理装置32とから構成されている。電子内視鏡31は、スコープ部31aと接続コード部31bとを備えている。また、画像処理装置32には、表示ユニット33が接続されている。
【0116】
スコープ部31aは、操作部34aと挿入部34bに大別される。挿入部34bは、細長で患者の体腔内へ挿入可能になっている。また、挿入部34bは、可撓性を有する部材で構成されている。観察者は、操作部34aに設けられているアングルノブ等により、諸操作を行うことができる。
【0117】
また、操作部34aからは、接続コード部31bが延設されている。接続コード部31bは、ユニバーサルコード35を備えている。ユニバーサルコード35は、コネクタ36を介して画像処理装置32に接続されている。
【0118】
ユニバーサルコード35は、各種の信号等の送受信に用いられる。各種の信号としては、電源電圧信号及びCCD駆動信号等がある。これらの信号は、電源装置やビデオプロセッサからスコープ部31aに送信される。また、各種の信号として映像信号がある。この信号は、スコープ部31aからビデオプロセッサに送信される。
【0119】
なお、画像処理装置32内のビデオプロセッサには、図示しない画像記録装置等の周辺機器が接続可能である。ビデオプロセッサは、スコープ部31aからの映像信号に対して信号処理を施す。映像信号に基づいて、表示ユニット33の表示画面上に内視鏡画像が表示される。
【0120】
挿入部34bの先端には、先端部34cが設けられている。
図10では、先端部34cの近傍に、構造体40が図示されている。
【0121】
構造体を
図11に示す。
図11(a)は、構造体の第1例を示す図である。
図11(b)は、構造体の第2例を示す図である。
【0122】
第1例の構造体について説明する。第1例の構造体40は、円筒部41と、平面部42と、を有する。平面部42は、円筒部41の一端に位置している。円筒部41と平面部42とで、構造体40の内部に空間43が形成されている。内面44は、空間43側に位置している。
【0123】
空間43には、先端部34cが挿入されている。先端部34cには、撮像ユニット2と、照明光学系45と、が配置されている。
【0124】
照明光学系45からは、照明光が出射する。先端部34cは、構造体40の内面44と対向している。そのため、照明光は内底面44aと内側面44bに照射される。このとき、内面44によって、照明光は繰り返し反射される。その結果、内面44は、均一な明るさで照明される。内面44では、明るさの分布が極端に不均一でなければ良い。よって、明るさの分布が完全に均一になっている必要は無い。明るさの分布は、略均一であると尚良い。
【0125】
内面44は、平面部42を形成する素材そのもので形成されている。ただし、内面44に、反射膜等の塗布剤が設けられていても良い。このようにすると、光の均一性が増す。内面44に照射された照明光は、内面44で反射される。内面44で反射された光は、対物光学系5に入射する。
【0126】
構造体40では、照明光は、対物光学系5の視野よりも広い範囲に照射されている。よって、対物光学系5には、視野全体から光が入射する。その結果、明るい結像領域が、撮像領域に形成される。
【0127】
構造体40では、円筒部41と、平面部42と、が用いられている。しかしながら、対物光学系5に入射する光は、内面44で反射された光である。よって、内面44を円筒ではなく、球面にしても良い。
【0128】
第2例の構造体について説明する。平面部42では、内面44で照明光が反射されている。しかしながら、平面部42を発光面にしても良い。第2例の構造体50は、発光面51を有する。発光面51は、明るさの分布が略均一な領域を有していれば良い。
【0129】
上述のように、内面44は、均一な明るさで照明されている。この場合、結像領域における明るさも、均一になる。内側領域26は、結像領域における明るさを反映している。よって、内側領域26は、領域29を有する。領域29では、明るさの分布が完全に均一である必要は無い。明るさの分布は、略均一であれば良い。
【0130】
領域29は、内側領域26の全体に分布している。内側領域26は、外縁28と接している。よって、画像25では、領域29は、4箇所で、外縁28と接している。
【0131】
外側領域27は、視野の外側に対応する領域である。上述のように、視野の外側からの光は、対物光学系5に入射しない。そのため、外側領域27における画素の値はゼロになる。
【0132】
一方、内側領域26は、視野の内側に対応する領域である。視野の内側では、内面44で反射された光が対物光学系5に入射する。この場合、内側領域26における画素の値はゼロにはならない。そのため、領域29における画素の値も、ゼロにはならない。
【0133】
領域29と外側領域27は、外縁28と接している。領域29における画素の値はゼロよりも大きく、外側領域27における画素の値はゼロである。この場合、領域29と外側領域27とを、明確に区別できる。その結果、外縁28を明確に特定できる。外縁28が特定されることで、特徴点を算出できる。特徴点と参照データとから、ずれ量を算出できる。
【0134】
画像25では、内側領域26の全体が、明るさが均一な領域になっている。しかしながら、明るさが均一な領域は、内側領域26の一部であっても良い。
【0135】
明るさが均一な領域の例を
図12に示す。
図12(a)は、外縁を含む画像の第1例を示す図である。
図12(b)は、外縁を含む画像の第2例を示す図である。
【0136】
第1例の外縁を含む画像60では、明るさが均一な領域61の形状は、円環になっている。このような形状でも、明るさが均一な領域61は、4箇所で、外縁53と接している。よって、外縁53を明確に特定できる。
【0137】
円環の領域は、次のようにして得られる。構造体40では、内面44に、反射率が互いに異なる領域を2つ形成する。そして、反射率が低い方の領域を、内面44の中央付近に位置させる。
【0138】
構造体50では、発光面51上に、遮光部材を配置する。そして、遮光部材に円環の開口部を形成する。又は、発光面51を複数の光源で形成する。そして、円環に対応する光源のみを発光させる。
【0139】
第2例の外縁を含む画像70では、明るさが均一な領域71の形状は、略矩形になっている。このような形状でも、明るさが均一な領域71は、2箇所で、外縁53と接している。よって、外縁53を明確に特定できる。略矩形の領域は、第1例と同じようにして得ることができる。
【0140】
撮像素子について説明する。撮像素子が1つの場合、単一の撮像領域に、第1結像領域と第2結像領域が位置している。
【0141】
画像表示装置1では、
図2に示すように、1つの撮像素子7が用いられている。撮像素子7は、単一の撮像領域として、所定の撮像領域15を有する。所定の撮像領域15には、第1結像領域11と第2結像領域12とが形成されている。
【0142】
所定の撮像領域15は、第1撮像領域16と、第2撮像領域17と、からなる。第1撮像領域16には、第1結像領域11が位置している。第2撮像領域17には、第2結像領域12が位置している。
【0143】
撮像素子が2つの場合について説明する。撮像素子は2つの場合、一方の撮像素子の撮像領域に、第1結像領域が位置し、他方の撮像素子の撮像領域に、第2結像領域が位置している。
【0144】
2つの撮像素子を用いた例を
図13に示す。
図13(a)は、撮像部の上面図である。
図13(b)は、撮像部の側面図である。
【0145】
撮像部80は、基板81と、第1撮像素子82と、第2撮像素子83と、を有する。第1撮像素子82と第2撮像素子83は、単一の基板81に固定されている。
【0146】
第1撮像素子82は、第1撮像領域16を有する。第1撮像領域16に、第1結像領域11が位置している。第2撮像素子83は、第2撮像領域17を有する。第2撮像領域17に、第2結像領域12が位置している。
【0147】
撮像部80は、撮像素子7と同じように、第1撮像領域16と第2撮像領域17とを有する。また、第1撮像素子82と第2撮像素子83は、単一の基板81に固定されている。この場合、撮像素子7と所定の結像領域との間で生じた位置のずれと同じ位置のずれが、撮像部80と所定の結像領域との間で生じる。よって、撮像部80を用いても、ずれ量を算出できる。
【0148】
本実施形態の画像表示方法は、第1結像領域の外縁の画像を生成するステップと、第2結像領域の外縁の画像を生成するステップと、第1結像領域の外縁の画像に基づいて、第1結像領域の特徴点を算出すると共に、第2結像領域の外縁の画像に基づいて、第2結像領域の特徴点を算出するステップと、第1結像領域の特徴点、第2結像領域の特徴点、及び参照データから、所定の結像領域と撮像素子とのずれ量を算出するステップと、ずれ量から、第1結像領域から取得した第1画像の表示位置と、第2結像領域から取得した第2画像の表示位置と、を決定するステップと、を有し、撮像素子上に、所定の結像領域が形成され、所定の結像領域は、第1結像領域と、第2結像領域と、からなり、参照データは、所定の結像領域における基準点を表すデータ、又は、所定の撮像領域における基準点を表すデータを有し、第1結像領域と第2結像領域は、共に、対物光学系における視野の像であることを特徴とする。
【0149】
本実施形態の画像表示方法によれば、撮像素子と光学像との間で位置ずれが生じても、容易に、自然な合成画像が取得できる。
【0150】
対物光学系の例を
図14に示す。対物光学系は、平凹負レンズL1と、両凹負レンズL2と、両凸正レンズL3と、凹平負レンズL4と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL5と、両凹負レンズL6と、平凸正レンズL7と、両凸正レンズL8と、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL9と、からなる。
【0151】
正メニスカスレンズL5と両凹負レンズL6とが接合されている。また、両凸正レンズL8と負メニスカスレンズL9とが接合されている。
【0152】
平凹負レンズL1と両凹負レンズL2との間に、光学フィルタF1が配置されている。また、両凹負レンズL6と平凸正レンズL7との間に、開口絞りSが配置されている。
【0153】
以下に、上記実施例の数値データを示す。記号は、rは各面の曲率半径、dは各光学部材の肉厚または空気間隔、ndは各光学部材のd線に対する屈折率、νdは各光学部材のd線に対するアッベ数である。各種データにおいて、fは、焦点距離である。
【0154】
数値実施例
面番号 r d nd νd
物体面 ∞ d0
1 ∞ 0.6561 1.88300 40.76
2 1.9220 0.8049
3 ∞ 0.9841 1.51800 75.00
4 ∞ 0.1698
5 -5.6263 0.3856 1.88300 40.76
6 3.3960 0.3075
7 93.7165 0.7666 1.92286 18.90
8 -3.7545 0.7132
9 -79.2437 0.4920 1.51633 64.14
10 ∞ 1.5581
11 -62.7030 0.878 1.92286 18.90
12 -2.8707 0.4100 2.00330 28.27
13 8.2363 0.0328
14(絞り) ∞ 0.0492
15 ∞ 0.7784 1.48749 70.23
16 -2.3726 0.0820
17 3.6087 1.2486 1.48749 70.23
18 -1.8711 0.4920 1.92286 18.90
19 -2.9189 (D10)
各種データ
f 1
Imh 1
Id 1.18
Iv 0.74
Ih 0.92
【0155】
本実施形態の画像表示装置では、以下のようにしても良い。これらの実施形態も本発明に含まれる。
外縁の少なくとも一部は、円周の一部である。
外縁の少なくとも一部は、曲線である。
外縁の少なくとも一部は、楕円周の一部である。
第1領域の特徴点は、第1領域の重心、又は第1領域の中心である。
第2領域の特徴点は、第2領域の重心、又は第2領域の中心である。
第1結像領域の外縁の一部が、所定の撮像領域内に位置している。
第1結像領域の外縁の全部が、所定の撮像領域内に位置している。
第2結像領域の外縁の一部が、所定の撮像領域内に位置している。
第2結像領域の外縁の全部が、所定の撮像領域内に位置している。
明るさが均一な領域は、対物光学系に入射した入射光で形成された領域であって、入射光は、物体表面からの反射光であり、物体表面は、反射率が略一定の領域を有する。
明るさが均一な領域は、対物光学系に入射した入射光で形成された領域であって、入射光は、光源から出射した光であり、光源は、明るさの分布が略均一な領域を有する。
撮像素子は1つであり、単一の撮像領域に、第1結像領域と第2結像領域が位置している。
撮像素子は2つであり、一方の撮像素子の撮像領域に、第1結像領域が位置し、他方の撮像素子の撮像領域に、第2結像領域が位置している。
【産業上の利用可能性】
【0156】
以上のように、本発明は、撮像素子と光学像との間で位置ずれが生じても、容易に、自然な合成画像が取得できる画像生成装置、画像表示装置、及び画像表示方法に適している。
【符号の説明】
【0157】
1 画像表示装置
2 撮像ユニット
3 画像処理装置
4 表示装置
5 対物光学系
6 光路分割素子
7 撮像素子
8 第1光路
9 第2光路
10 所定の結像領域
11、11’、11” 第1結像領域
12 第2結像領域
13、13a、13b、13c、13d 外縁
13’、13’a、13’b、13’c、13’d 外縁
13”、13”a、13”b、13”c、13”d 外縁
14、14’、14” 外縁
15 所定の撮像領域
16 第1撮像領域
17 第2撮像領域
18 第1光学像
19 第2光学像
20 第1画像
21 第2画像
22 反転画像
23 表示用領域
24 領域
25 外縁を含む画像
26 内側領域
27 外側領域
28 外縁
29 明るさが均一な領域
30 内視鏡システム
31 電子内視鏡
31a スコープ部
31b 接続コード部
32 画像処理装置
33 表示ユニット
34a 操作部
34b 挿入部
34c 先端部
35 ユニバーサルコード
36 コネクタ
40 構造体
41 円筒部
42 平面部
43 空間
44 内面
44a 内底面
44b 内側面
45 照明光学系
50 構造体
51 発光面
53 外縁
60 外縁を含む画像
61 明るさが均一な領域
70 外縁を含む画像
71 明るさが均一な領域
80 撮像部
81 基板
82 第1撮像素子
83 第2撮像素子
P1、P2 特徴点
Q1、Q2 基準点
L1~L9 レンズ
F1 光学フィルタ
S 開口絞り