(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】流体ガン
(51)【国際特許分類】
B05B 3/00 20060101AFI20220411BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20220411BHJP
B05B 1/30 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B05B3/00
B08B5/02 Z
B05B1/30
(21)【出願番号】P 2017198116
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】512174446
【氏名又は名称】株式会社MURONE
(74)【代理人】
【識別番号】100110560
【氏名又は名称】松下 恵三
(74)【代理人】
【識別番号】100182604
【氏名又は名称】長谷川 二美
(72)【発明者】
【氏名】浅井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】室根 貴之
(72)【発明者】
【氏名】箭内 義昭
(72)【発明者】
【氏名】綱島 涼
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-017367(JP,U)
【文献】登録実用新案第3088382(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 3/18
7/00- 9/08
11/00-11/06
12/16-12/36
14/00-16/80
B08B 1/00- 1/04
5/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエアを導入するエア導入口を有する略筒状の本体と、
当該本体の内部に前記エア導入口から導入されるエアの圧力により軸方向に伸長可能に収納された伸長パイプと、
当該伸長パイプの先端に設けたノズルと、
前記本体と前記伸長パイプとの間にリリース構造が設けられ、当該リリース構造は前記本体に設けたリリースボタンにより前記本体と前記伸長パイプとの係合状態から解放状態に切り替えるリリース機構と、
を備えたことを特徴とする流体ガン。
【請求項2】
前記本体と伸長パイプとの間にはエアの導入を調整するバルブ装置が設けられ、
当該バルブ装置は、内部にバルブを有すると共に前記本体に設けたトリガーと機械的に連動していることを特徴とする請求項1に記載の流体ガン。
【請求項3】
前記トリガーとバルブとの間にロッカーアームを設け、前記トリガーの搖動端部がロッカーアームの搖動端部に当接し、前記バルブに機械的に連動する部材が前記ロッカーアームの中腹に当接した構造を有することを特徴とする請求項2に記載の流体ガン。
【請求項4】
前記リリース機構は、伸長パイプを前記本体の内部に収納状態に保持する当該伸長パイプに係合するロックピンを有
すると共に前記ロックピンに機械的に連結するリリースボタンとを有し、
当該リリースボタンは、前記トリガーと連続面を構成して一つのレバーのような外観を形成することを特徴とする請求項2又は3に記載の流体ガン。
【請求項5】
前記伸長パイプは、軸方向に直交方向の断面が楕円形状となることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の流体ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のワーク等に対してエア等の流体を噴射する流体ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より特許文献1に記載されたようなエアーガンが知られている。このエアーガンは、銃身部とグリップ部とからなり、圧縮空気を先端の噴射ノズルから噴出する構成である。ユーザは、このようなエアーガンを把持し、加工して得られた工作物等に付着した切粉や塵埃等を除去すべく、噴射ノズルから噴出する圧縮空気を工作物等の噴射対象物に噴射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のエアーガンによれば、噴射ノズルを設けた銃身部が固定されていることから、ユーザの手が届きにくい場所に対してエアを噴出する際には、エアが拡散してしまい、切粉等を十分に除去することができないという問題点があった。また、仮に銃身部(ノズル)の長いエアーガンの場合には、ユーザの近い場所に対してエアを噴出する際に、当該エアーガンを握った手を後ろに引く等、無理な体勢を取らねばならいという問題点があった。本発明は、係る問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る流体ガンは、内部にエアを導入するエア導入口を有する略筒状の本体と、当該本体の内部に前記エア導入口から導入されるエアの圧力により軸方向に伸長可能に収納された伸長パイプと、当該伸長パイプの先端に設けたノズルとを備えたことを特徴とする。
【0006】
更に、前記本体と伸長パイプとの間にはエアの導入を調整するバルブ装置が設けられ、当該バルブ装置は、内部にバルブを有すると共に前記本体に設けたトリガーと機械的に連動しても良い。また、前記トリガーとバルブとの間にロッカーアームを設け、前記トリガーの搖動端部がロッカーアームの搖動端部に当接し、前記バルブに機械的に連動する部材が前記ロッカーアームの中腹に当接した構造としても良い。
【0007】
更に、上記流体ガンは、前記伸長パイプを前記本体の内部に収納状態に保持する当該伸長パイプに係合するロックピンを有するリリース機構と、前記ロックピンに機械的に連結するリリースボタンとを有し、当該リリースボタンは、前記トリガーと連続面を構成して一つのレバーのような外観を形成する。
【0008】
また、前記伸長パイプは、軸方向に直交方向の断面が楕円形状とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るエアーガンを示す側面図である。
【
図2】
図1に示したエアーガンのノズル伸長状態を示す説明図である。
【
図3】
図1に示したエアーガンの内部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、この発明の実施の形態1に係るエアーガンを示す側面図である。
図2は、
図1に示したエアーガンのノズル伸長状態を示す説明図である。
図3は、
図1に示したエアーガンの内部構造を示す断面図である。
図4は、
図1に示したエアーガンの斜視図である。このエアーガン100は、手で握ることができる全体が略筒状の本体101と、本体101に伸縮可能に設けた伸長パイプ14,15とから構成される。
【0011】
本体101は、長手方向の上下に分割された上本体カバー1と下本体カバー2とを組み合わせて構成される。本体101の内部には、軸方向にベースパイプ13が設けられる。このベースパイプ13の内部には、第一伸長パイプ14が伸縮可能に収納配置され、更に当該第一伸長パイプ14の内部に第二伸長パイプ15が伸縮可能に収納配置される。第二伸長パイプ15の先端には、パッキン32を介挿した状態でノズル7が設けられる。本体101及びベースパイプ13の先端には、第一伸長パイプ14の伸長位置を制限するパイプストッパー5が設けられる。パイプストッパー5の先端には、キャップ6が設けられる。
【0012】
ノズル7の先端面は、第一伸長パイプ14の軸方向に対して一定の角度を持って傾斜している。ノズル7の傾斜面には、エア噴出口が設けられる(図示省略)。第一伸長パイプ14の後端には、円弧形状の一対のスライダー8が設けられると共に、ベースパイプ13との機密性を保つためのパッキン29が設けられる。更に、後端縁には、スライドブッシュ10が設けられる。前記第二伸長パイプ15の後端には、円弧形状の一対のスライダー9が設けられる。また、第二伸長パイプ15の後端には、第一伸長パイプ14との機密性を保つためのパッキン30が設けられる。更に、後端縁には、前記先端キャップ6に嵌合して当該第二伸長パイプ15を仮固定するロックフック21が設けられる。ロックフック21は周方向に凹部を有するキャップ状の部材である。
【0013】
ベースパイプ13、第一伸長パイプ14及び第二伸長パイプ15は、それぞれ軸方向に直交方向の断面が楕円形状となる。このため、当該形状自体が直線ガイドとなり、伸長縮退の動作においてノズル7の方向が周方向に変化しない。更に、スプライン等のガイド用の溝を設けなくても良いため、すっきりした外観デザインになる。
【0014】
前記ベースパイプ13の後端には、内部にエアを導入するためのエア導入口であるカプラ35が設けられる。カプラ35には、図示しないエア供給源となるポンプがホースを介して接続される。カプラ35とベースパイプ13との間には、バルブ装置102が設けられる。バルブ装置102は、スプリングシート24、スプリング33、バルブ23、バルブラバー31が軸線上に配置され、バルブホルダー16の内部を前記バルブ23の軸が貫通し、その端縁にスライドボール11が設けられる。バルブホルダー16は、ベースパイプ13の後端に形成したバルブ筒103の内部に配置される。スプリングシート24がバルブ筒103の内部の天井に当接し、前記バルブ23の鍔と当該スプリングシート24の間のスプリング33によりバルブ23がバルブホルダー16の端縁に付勢されて閉じており、バルブ23の軸を前記スライドボール11を押すことで軸方向に移動させる。これにより、バルブ23の鍔とバルブホルダー16の端縁が離れて、バルブ23が開く。
【0015】
バルブホルダー16の付近には、ロッカーアーム26が揺動可能に配置されている。このロッカーアーム26の先端に当接するように、且つ、前記ベースパイプ13の側面にトリガー3が軸支される。このトリガー3は、指2本乃至3本でも握れるように軸から揺動端部までの距離が長く且つ指が触れる面は湾曲面としてフィット感を持たせたものである。このトリガー3の搖動端部が前記ロッカーアーム26の搖動端部に当接し、当該トリガー3を押し込むことで、ロッカーアーム26が揺動し、ロッカーアーム26の中腹に当接する前記スライドボール11が前記バルブ23の軸を押し上げ、これによりバルブ23が開閉する。即ち、トリガー3と前記バルブ装置102のバルブ23とは機械的に連動した状態であり、ロッカーアーム26の中腹にはバルブ23に機械的に連動するスライドボール11等の部材が当接する。なお、トリガー3の搖動端部には、前記ロッカーアーム26とスムーズに当接するようローラ37が設けられる。
【0016】
ロッカーアーム26は、支点となる回転軸の部分から外側面が略半弧形状の湾曲面をしており、その搖動端部が前記ローラ37に当接している。また、スライドボール11が当接する内側面も略円弧形状の湾曲面となる。具体的には、外側面及び内側面となる湾曲面は、三つの平面が所定角度で連続して全体的に略湾曲面となっている。一方、トリガー3のローラ37は、トリガー3の支点を中心として搖動するので、当該ローラ37は、ロッカーアーム26の外側面に対して先端方向に移動しながら当接する。
【0017】
これにより、
図6(a)に示すように、初期状態では、ローラ37がロッカーアーム26の先端近傍に当接している。この状態でトリガー3を握ると、
図6(b)に示すように、ローラ37がロッカーアーム26の端部を押し上げ、これにより、スライドボール11を介してノズル23が軸方向に移動する。更に、トリガー3を握って押し込むと、
図6(c)に示すように、ロッカーアーム26がローラ37により押し上げられ、スライドボール11を介してノズル23が軸方向に更に移動する。ここで、ロッカーアーム26は、全体が略円弧形状になっているため、トリガー3の初期状態から握り始めでは、ローラ37がロッカーアーム26の先端より若干中寄りで当接して当該ロッカーアーム26の搖動量が大きくなるように作用する。このため、バルブ23の開きが大きくなるので、ロッカーアーム26の握り始めまでは、エアの流量を大きく変化できるようになる。このため、エア噴出初期では、エアの噴出量を調整しやすいものとなる。
【0018】
その後、更にロッカーアーム26を握るとローラ37がロッカーアーム26の先端方向に移動すると共に当該ロッカーアーム26の外側面が所定角度で傾斜していることからトリガー3の搖動量に対してロッカーアーム26の搖動量が小さくなり、バルブ23の開きが小さくなる。このため、トリガー3を強く握ることになる状態(通常の使用状態直前から使用状態)では、トリガー3の握り具合によるエアの噴出量の変化は小さいものとなる。このため、実際に握った状態でエアを噴出している状態ではエアの噴出量は安定する。
【0019】
本体101の下部には、第一伸長パイプ14及び第二伸長パイプ15のリリース構造104が設けられる。ベースパイプ13の側面には、リリースシーソー25が配置される。リリースシーソー25は、前記トリガー3の内部に収納可能なサイズである。略中央で前記ベースパイプ13に軸支され、一端にはフック25aが設けられる。他端にはリリースボタン4が設けられ、リリースボタン4を押すことで軸中心に搖動し、前記フック25aが下方に移動する。このフック25aは、後述するリリース機構104に機械的に連結する。リリースボタン4は、前記トリガー3と連続面を形成するような形状となり、当該トリガー3とリリースボタン4が連続配置された状態で一つのレバーのような外観を呈する。更に具体的には、本体101を握った際に人差し指でリリースボタン4を操作し、中指等でトリガー3を操作することができ、ワンハンドでエアの噴射及びノズル7の伸長の動作を可能とする。
【0020】
リリース機構104は、エアパッキン36、ホルダ19、ロックピン22、スプリング34、スライダリング12、キャップ20が軸上に配置組立てられる。ロックピン22は、ベースパイプ13の内部に貫通する。キャップ20は、前記リリースシーソー25のフック25aに係止する。ロックフック21は前記ロックピン22と係合し、第二伸長パイプ15を縮退した状態で保持する。第二伸長パイプ15が縮退状態で保持されると、第一伸長パイプ14もノズル7に係止されて本体101内に縮退状態で収納される。また、ロックピン22とロックフック21との係合が外れることで、伸長パイプ14,15がリリースされて解放状態となる。
【0021】
また、
図7の断面図に示すように、第一伸長パイプ14及び第二伸長パイプ15をベースパイプ13に収納した状態で、第一伸長パイプ14の後端は、ベースパイプ13の筒内後端面にスライドブッシュ10を介して当接し、第二伸長パイプ15の後端は、パッキン30を介して前記スライドブッシュ10に当接すると共に、ロックフック21は第一伸長パイプ14の後端から突出してベースパイプ13の後端付近に位置するようになり、当該後端に設けたリリース機構104のロックピン22の先端とその周囲の溝で係合する。
【0022】
ロックフック21は、中空となっており、第二伸長パイプ15の内部と外部とを連通する。このため、
図7の断面図に示すように、バルブ装置102から繋がる通路と第二伸長パイプ15の内部とを略連続的に繋げることができる。また、パイプ収納状態でスライドブッシュ10及びパッキン30により、ベースパイプ13、第一伸長パイプ14及び第二伸長パイプ15の隙間には、エアが入り難い状態になる。
【0023】
下本体カバー2には、前記トリガー3及びリリースボタン4を本体101の外部に露出する穴105が設けられる。上記の各部品は樹脂、ゴム等で形成されるが、必要によりアルミニウム等の軽量金属で製造しても良い。本体101の全体は、
図4に示すように、スティック状になる。上本体カバー1の後端は、握った状態でフィットするようにダックテール形状になる。
【0024】
次に、このエアーガン100の動作について説明する。
図1に示した状態(伸長パイプ14,15の縮退状態)で本体101を持ち、トリガー3を本体101に押し込むと、ロッカーアーム26が本体101の内側に搖動すると共に前記スライドボール11を押し、これによりバルブ23が開く。これにより、カプラ35に接続したエアホースから供給されるエアがバルブ装置102を介してベースパイプ13内に導入され、第二伸長パイプ15は端部のロックフック21が開口しており、これがバルブ装置102に連続的に接続されているので、導入されたエアは、第二伸長パイプ15内に導かれてノズル7から噴出される。
【0025】
ノズル7の先端は所定の角度が設けられているため、エアは本体101の軸方向から若干下方に向いて噴出される。また、トリガー3の引き具合によりバルブ23が開閉して流量を調整できる。また、トリガー3とバルブ23との間にロッカーアーム26を介在させているため、梃子の原理でバルブ23の細かい開閉動作をトリガー3で行える。
【0026】
次に、リリースボタン4を押すと、リリースシーソー25が揺動してロックピン22を押し下げ、当該ロックピン22とロックフック21との係合が外れる。この状態でトリガー3を握ってエアを供給すると、第二伸長パイプ15がエアの圧力で伸長すると共に第一伸長パイプ14についてもエアの圧力で伸長する。第一伸長パイプ14は、パイプストッパー5により所定位置まで伸長し、第二伸長パイプ15は、ロックフック21が第一伸長パイプ14の先端まで伸長して止まる。これにより、
図2に示すように、パイプが伸長してノズル7の位置が先端方向に延びる。このように、エアの圧力により第一伸長パイプ14及び第二伸長パイプ15が伸長することから、特別な動力源が不要である。
【0027】
エアーガン100のノズル7が伸長することで、高い場所等のそのままでは届きにくい場所にエアを噴射できる。即ち、ノズル7が伸縮することで被噴射対象に対してエアを確実に噴射できる領域が広くなる。また、近い場所にエアを噴射する際は、ノズル7を縮退させれば良い。
【0028】
ノズル7を縮退させる場合は、ユーザが第二伸長パイプ15の先端を押し込んで、第一伸長パイプ14ごと本体101内に入れる。これにより前記ロックフック21にロックピン22が係合して固定され、第一伸長パイプ14及び第二伸長パイプ15が縮退状態を保持する。
【0029】
なお、本実施の形態では、本発明としてエアーガン100を例示したが、水を噴出するウォーターガンとしても使用できる。
【符号の説明】
【0030】
100 エアーガン
101 本体
102 バルブ装置
104 リリース機構
1 上本体カバー
2 下本体カバー
3 トリガー
4 リリースボタン
5 パイプストッパー
6 キャップ
7 ノズル
13 ベースパイプ
14 第一伸長パイプ
15 第二伸長パイプ
21 ロックフック
22 ロックピン
23 バルブ
25 リリースシーソー
26 ロッカーアーム