(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】回転蓋付きスタンプ台
(51)【国際特許分類】
B41K 1/54 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
B41K1/54 D
(21)【出願番号】P 2018159241
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】アハマド イズミール アミン ビン ムスタファ カマル
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-10187(JP,A)
【文献】特開2009-137109(JP,A)
【文献】特開2017-134758(JP,A)
【文献】特開2002-36691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/168591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキパッドを備えたケース本体の後端縁と、前記インキパッドを覆う回転蓋の後端縁とを板状のヒンジ部材で連結し、前記回転蓋をケース本体に対し360°回動可能とした回転蓋付きスタンプ台であって、
前記ケース本体の後端壁面は上方に向けて鋭角な傾斜面となっており、
前記回転蓋を360°回転した場合に、前記ヒンジ部材は前記傾斜面に沿って固定されて手開き用のヘラ部を形成することを特徴とする回転蓋付きスタンプ台。
【請求項2】
ヒンジ部材の上端部又は回転蓋の表面側後端部の少なくとも一方に、回転蓋の回動を規制するための制止片が形成されている請求項1に記載の回転蓋付きスタンプ台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転蓋がケース本体に対して360°回動可能な回転蓋付きスタンプ台に関するものである。特に、本発明は赤ちゃんの手形や足形を台紙に転写する場合に、使い勝手よく使用することができる回転蓋付きスタンプ台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ゴム印を捺印するためにスタンプ台が広く使用されている。また、インキパッドを覆う蓋を開けた場合に、その蓋を別の場所へ置いて紛失することを防止する目的で、蓋とケース本体とが分離できないように連結した状態となっている回転蓋付きスタンプ台が提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2を参照)。
【0003】
一方、最近では赤ちゃんの手形や足形を台紙に転写して記念に残しておく家庭が増加しており、一般的な市販のゴム印用スタンプ台を利用して赤ちゃんの手や足にインキを付着させることがあった。また、手形スタンプ用としての専用スタンプ台も市販されるようになってきた。
【0004】
しかしながら、赤ちゃんの手足は握った状態にあることが多く、インキを付着させるには片方の手でスタンプ台を持ち、もう一方の手で指を開く作業を行う必要があり、少なくとも両手が必要であるか、あるいは第三者に手伝ってもらう必要があるため、作業的にたいへんであった。また、従来の回転蓋付きスタンプ台は、回転蓋とスタンプ台を単純にヒンジ結合しただけの構造であってグラグラの状態であるため、回転蓋を360°回動するには両手で支持する必用があり、赤ちゃんの手や足にインキを付着させる作業を難しくしているという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3256520号公報
【文献】特開2002-36691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、赤ちゃんの手形や足形を台紙に転写する場合に、握った状態の手や足を開いた状態にしてしっかりとインキを付着させることができ、美しい手形や足形を台紙に転写することができ、またインキ付着の一連の作業を第三者の手助けがなくても一人で行うことができる回転蓋付きスタンプ台を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の回転蓋付きスタンプ台は、インキパッドを備えたケース本体の後端縁と、前記インキパッドを覆う回転蓋の後端縁とを板状のヒンジ部材で連結し、前記回転蓋をケース本体に対し360°回動可能とした回転蓋付きスタンプ台であって、
前記ケース本体の後端壁面は上方に向けて鋭角な傾斜面となっており、
前記回転蓋を360°回転した場合に、前記ヒンジ部材は前記傾斜面に沿って固定されて手開き用のヘラ部を形成することを特徴とするものであり、これを請求項1に係る発明とする。
【0008】
好ましい実施形態によれば、ヒンジ部材の上端部又は回転蓋の表面側後端部の少なくとも一方に、回転蓋の回動を規制するための制止片が形成されているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、インキパッドを備えたケース本体の後端縁と、前記インキパッドを覆う回転蓋の後端縁とを板状のヒンジ部材で連結し、前記回転蓋をケース本体に対し360°回動可能とした回転蓋付きスタンプ台であって、前記ケース本体の後端壁面は上方に向けて鋭角な傾斜面となっており、前記回転蓋を360°回転した場合に、前記ヒンジ部材は前記傾斜面に沿って固定されて手開き用のヘラ部を形成するようにしたので、回転蓋を360°回転するとインキパッドの前方にヘラ部が形成され、このヘラ部を用いて赤ちゃんの手のひらを伸ばしつつインキパッドで手のひら全体にインキを均等に付着させることができる。しかも、この動作を片手で行うことができ、従来のように赤ちゃんの手のひらを開くのに両手を使ったり、第三者の手を借りる必用もなくなる。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、ヒンジ部材の上端部又は回転蓋の表面側後端部の少なくとも一方に、回転蓋の回動を規制するための制止片が形成されているものとしたので、ヒンジ部材の回転蓋側に力を与えながら回転蓋を360°回転させることができ、回転蓋の開きからインキ転写までの一連の動作を片手で完結させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】(a)
図2のA-A断面図、(b)は回転蓋が当接する様子を示す説明図である。
【
図6】回転蓋を360°回転させた形態を示すA-A断面図である。
【
図7】回転蓋の回動状態を示す説明図で、(a)は回転蓋が閉じた状態の図、(b)は回転蓋を180°回転させた図、(c)は回転蓋を270°回転させた図、(d)は回転蓋を360°回転させた図である。
【
図9】(a)は制止片を回転蓋に設けた形態を示す図、(b)は回転蓋が当接する様子を示す説明図である。
【
図10】は制止片をヒンジピン周辺に設けた形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は回転蓋付きスタンプ台の一例を示す全体斜視図、
図2は平面図、
図3は右側面図、
図4は背面図である。また
図5は、
図2におけるA-A断面図であり、
図6は回転蓋を360°回転させた形態を示すA-A断面図である。
【0013】
本発明の回転蓋付きスタンプ台は、基本的にはケース本体1と回転蓋2からなるものである。ケース本体1はインキパッド4を備えており、このケース本体1の後端縁と、前記インキパッド4を覆う回転蓋2の後端縁とは板状のヒンジ部材3で連結されて、前記回転蓋2をケース本体1に対し360°回動可能となっている。なお、前記ケース本体1とヒンジ部材3とは、ヒンジ部材3の左右端部においてヒンジピン5aにより連結され、また前記回転蓋2とヒンジ部材3とは、ヒンジ部材3の左右端部においてヒンジピン5bにより連結されている。
このように、ヒンジ部材3を介してケース本体1と回転蓋2が連結されることで、回転蓋2がケース本体1に対し360°回動可能な構造となっている。
【0014】
前記ケース本体1の後端壁面は上方に向けて鋭角な傾斜面6となっている。そして、前記回転蓋2を360°回転した場合に、前記ヒンジ部材3は前記傾斜面6に沿って固定され、この結果、インキパッド4の前方に手開き用のヘラ部10を形成するように構成されている。
これにより、
図8に示されるように、握った状態の赤ちゃんの手をヘラ部10で押し開きながら前進させ、続いてインキパッド4で手のひら全体にインキを均等に付着させることができることとなる。
【0015】
また、ヒンジ部材3の上端部又は回転蓋2の表面側後端部の少なくとも一方に、には、回転蓋2の回動を規制するための制止片7が形成されている。
また、本発明でいう規制とは、ヒンジ部材(
図5(b)を参照)又は回転蓋部分(
図9(b)を参照)、もしくはヒンジ部材と回転蓋部分の両方に設けられた(図示せず)例えば凸状の制止片7により、ヒンジ部材と回転蓋部分とが当接し、両者が回転蓋回転中に、くの字形状で固定されることを意味する。
図5(a)に示されるように、制止片7をヒンジ部材3に設けることが考えられる。
回転蓋を回転させる際に、ヒンジ部材側に設けられた制止片当接部分7aと回転蓋当接部分2aが接することによって、回転蓋当接部分2aからヒンジ部材3の制止片当接部分7aの方向に力が加わり(
図5(b)を参照)、回転蓋2の回動が規制された状態で、回転蓋2を360°回転させることができる為、回転蓋2の開きからインキ転写までの一連の動作を片手で完結させることが可能となる。
なお、図示のものでは、前記制止片7は左右の端部に1個ずつ形成してあるが、形状や個数については任意に設計することができる。
【0016】
また、
図9(a)に示されるように、前記制止片7を回転蓋2に設けることが考えられる。これによっても、回転蓋を回転させる際に、回転蓋側に設けられた制止片当接部分7aとヒンジ部材当接部分3aが接することによって、制止片当接部分7aからヒンジ部材当接部分3aの方向に力が加わり(
図9(b)を参照)、回転蓋2の回動が規制された状態で、回転蓋2を360°回転させることができる為、回転蓋2の開きからインキ転写までの一連の動作を片手で完結させることが可能となる。
さらに、制止片は、回転蓋側と、ヒンジ部材の両側に設けても良い。また、
図10に示されるように、ヒンジピン5bの周辺に設けることもできる。
【0017】
次に、以上のように構成した回転蓋付きスタンプ台の使用について説明する。
図7(a)に示されるように、通常はケース本体1に対し回転蓋2は閉じた状態となっている。次いで、回転蓋2を開けると、
図7(b)に示されるように、回転蓋2はヒンジ部材3とともにヒンジピン5a、5bを中心に回動して180°回転した状態となり、更に
図7(c)に示されるように、回転蓋2はヒンジ部材3とともにヒンジピン5a、5bを中心に回動して、回転蓋2およびヒンジ部材3はともにケース本体1の裏面側へ向けて回動を続ける。更に、回転蓋2を開いていくと、
図7(d)に示されるように、ヒンジ部材3はケース本体1の後端壁面の傾斜面6に当接して回動を停止する。一方、回転蓋2はヒンジピン5bを中心にして更に回動を続け、ケース本体1の裏面側に密着することで回動を停止する。
なお、後端壁面の傾斜面6は、全面が斜面の場合だけでなく、一部が斜面の場合でもよく、また斜面の形状も直線状、曲線状、階段状等の形状を任意に設計することが出来る。
【0018】
この結果、
図6に示されるように、回転蓋2は360°回転してインキパッド4を露出した状態とするとともに、ケース本体1の裏面側に折り畳まれて密着した状態となる。また、ヒンジ部材3はケース本体1の後端壁面の傾斜面6に沿って固定され、手開き用のヘラ部10を形成することとなる。このヘラ部10は、スタンプ台を
図6の右方向へ移動させた場合に、進行方向に対してヘラ部10が鋭角となるように構成されており、握った状態にある赤ちゃんの手の掌と指の間にスムーズに入り込める構造となっている。
【0019】
図8に本発明のスタンプ台の使用状態を示す。
前記回転蓋2を360°回転してインキパッド4を露出した状態とし、このインキパッド4を下向きにして赤ちゃんの手にインキを付着するが、スタンプ台の前方には進行方向に対して鋭角となっている手開き用のヘラ部10が形成されているので、このヘラ部10が握った状態にある赤ちゃんの手の掌と指の間にスムーズに入り込み、スタンプ台の移動とともに赤ちゃんの指を押し開くこととなる。また、これと同時にインキパッド4が赤ちゃんの手全体にインキを万遍なく付着させることとなり、これら一連の動作を一人で簡単に行えることとなる。
【0020】
また、ヒンジ部材3の上端部には、回転蓋2の回動を規制するための凸状の制止片7が形成されているので、回転蓋を回転させる際に、ヒンジ部材側に設けられた制止片当接部分7aと回転蓋当接部分2aが接することによって、回転蓋当接部分2aからヒンジ部材3の制止片当接部分7aの方向に力が加わり、回転蓋2の回動が規制された状態で、回転蓋を360°回転させることができ、回転蓋2の開きからインキ転写までの一連の動作を片手で完結させることができる。このため、従来は両手を使っていたか、第三者に手伝ってもらっていたインキの付着作業を一人でより簡単に行うことができるようになった。
【符号の説明】
【0021】
1 ケース本体
2 回転蓋
2a 回転蓋当接部分
3 ヒンジ部材
3a ヒンジ部材当接部分
4 インキパッド
5a ヒンジピン
5b ヒンジピン
6 傾斜面
7 制止片
7a 制止片当接部分
10 ヘラ部