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特許7055310ヤーン、織紐、ロープ、およびヤーンの製造方法
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  • 特許-ヤーン、織紐、ロープ、およびヤーンの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ヤーン、織紐、ロープ、およびヤーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D02G 3/04 20060101AFI20220411BHJP
   D02G 3/28 20060101ALI20220411BHJP
   D02G 3/40 20060101ALI20220411BHJP
   D04C 1/02 20060101ALI20220411BHJP
   D04C 1/12 20060101ALI20220411BHJP
   D07B 1/02 20060101ALI20220411BHJP
   D07B 1/04 20060101ALI20220411BHJP
   D07B 1/16 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
D02G3/04
D02G3/28
D02G3/40
D04C1/02
D04C1/12
D07B1/02
D07B1/04
D07B1/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021176442
(22)【出願日】2021-10-28
【審査請求日】2021-11-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501066532
【氏名又は名称】大竹 幸衛
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】大竹 幸衛
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-022181(JP,B1)
【文献】実開昭49-111554(JP,U)
【文献】特開平04-108124(JP,A)
【文献】特開平10-317289(JP,A)
【文献】特開2001-207345(JP,A)
【文献】特開2004-308048(JP,A)
【文献】特開2007-254941(JP,A)
【文献】特開2016-053226(JP,A)
【文献】特開2019-137967(JP,A)
【文献】特開2019-151961(JP,A)
【文献】特開2020-133086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G 1/00 - 3/48
D02J 1/00 - 13/00
D04C 1/00 - 7/00
D04G 1/00 - 5/00
D07B 1/00 - 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープまたは紐用のヤーンであって、
前記ヤーンは複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントを含む集合体であり、
前記第1フィラメントは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成り、
前記第2フィラメントは、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成り、
前記集合体中の前記複数の第1フィラメントの質量割合は70~95%であり、前記集合体中の前記複数の第2フィラメントの質量割合は5~30%であり、
前記集合体は、撚り合わせていないことを特徴とする、
ヤーン。
【請求項2】
ロープまたは紐用のヤーンであって、
前記ヤーンは複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントを含む集合体であり、
前記第1フィラメントは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成り、
前記第2フィラメントは、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成り、
前記集合体中の前記複数の第1フィラメントの質量割合は70~95%であり、前記集合体中の前記複数の第2フィラメントの質量割合は5~30%であり、
前記集合体は、撚り数が500T/m以下で撚り合わせたことを特徴とする、
ヤーン。
【請求項3】
前記集合体は、バインダー樹脂が付着し、前記バインダー樹脂により前記複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントが結束されていることを特徴とする、
請求項1または2に記載のヤーン。
【請求項4】
ボビン巻き、チーズ巻き、または玉巻きされている、
請求項1~3のいずれかに記載のヤーン。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のヤーンを複数撚り合わせたストランをさらに複数撚り合わせて形成されたロープ。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載のヤーンを単独で、または複数平行に揃えてストランの芯部とし、
前記芯部と前記芯部を被覆する皮部によりストランが形成され、
前記ストランを撚り合わせて形成される、ロープ。
【請求項7】
前記皮部は、請求項1~3のいずれかに記載のヤーンと加撚ヤーンの両方を含むことを特徴とする、
請求項6に記載のロープ。
【請求項8】
請求項3に記載のヤーンを縦糸として、加撚ヤーンを横糸として織られた織紐。
【請求項9】
ヤーンの製造方法であって、
前記ヤーンは複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントを含む集合体であり、前記第1フィラメントは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成り、前記第2フィラメントは、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成り、
複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントを、撚り合わせずに、または撚り数が500T/m以下で撚り合わせた集合体を形成する工程と、
前記集合体を水溶性樹脂を含む液中に浸漬する工程と、
水溶性樹脂が付着した前記集合体を乾燥する工程と、
を備える、
ヤーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単糸集合体であるヤーンと、ヤーンにより形成される紐やロープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィラメント等の単糸を複数本撚り合わせて単合ヤーンまたはさらに撚り合わせた複合ヤーンとし、該単合ヤーンや該複合ヤーンを複数本撚り合わせてストラン(ストランド)とし、該ストランを複数本より合わせてロープが製造されている。
【0003】
また、紐はいくつか種類があるが、例えば組紐は、複数のヤーンを斜に交差させながら組んで製造され、織紐は、縦糸と横糸を直角に合わせ織って製造される。
【0004】
しかしながら、このような方法で形成されたロープや紐では、単糸をできるだけ直線的に配置することにより強度が確保できるが、単糸、ヤーン、ストランド等を各段階で撚り合わせて製造されるため、長さ方向に角度がつき、その結果、特に引張強度が低下するという問題があった。
【0005】
さらに、撚り数が多いほど、単位長さあたりの質量が大きくなるため、従来の方法では単位長さ当りのヤーンの質量が大きくなり、該ヤーンにより製造されるロープや紐も重くなり、使い勝手等に問題があった。
【0006】
一方、低価格で汎用的に使用されているポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂から成るフィラメントは、撚り合わせずに使用した場合は耐摩耗性が低いという問題があり、耐摩耗性を維持するためにも各フィラメントは撚り合わせて使用されている。
【0007】
また、複数の単糸から単合ヤーンまたは複合ヤーンを製造する際に、撚糸機が必要となる。撚糸機として、リング撚糸機を用いた場合は、その高速回転に必要な精工さ故に撚糸機が高価であり、さらにその付属ボビン等の準消耗品も高価であるため、製造されたヤーンも高価となってしまうという問題があった。また、他の種類の撚糸機を用いた場合においては、上撚り、下撚りと多々工程があり、高速回転による騒音や、作業中の安全性に課題が残る。
【0008】
特許文献1では、強度を高くするため、内層ロープとその外側を被覆する外層ロープの二重構造とし、内層ロープを緩く、また外層ロープをきつく打ってなる繊維ロープで、内層ロープと外層ロープが同じ素材で、且つ内層ロープと外層ロープの糸量比が60:40から55:45の範囲内に設定された繊維ロープを開示している。
【0009】
また、特許文献2では、複数の繊維からなるヤーンを複数本集束し、その外周に集束糸を螺旋状に巻回してストランドを形成し、当該ストランドを複数本組み合わせてなることを特徴とする、ロープが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実用新案登録3216535号公報
【文献】特開2020―56124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1の繊維ロープは、引張強度はある程度向上されたが、さらなる引張強度の向上および耐摩耗性の向上、および低コスト化が求められる。また、特許文献2のロープは、ヤーンを複数本集束し、その外周に集束糸を螺旋状に巻回してストランドを形成しており、集束糸を巻回する工程が必要となり、製造過程が煩雑になる。また、特許文献2においても、引張強度のさらなる向上および耐摩耗性の向上、および低コスト化が求められる。
【0012】
また、ロープだけでなく、紐類にも適用可能な、応用力の高いヤーンが求められている。
【0013】
そこで、本発明では、軽量、低コストで、高い引張強度、引張破断力を有するロープ、紐、およびそれらのロープや紐を形成するためのヤーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ロープまたは紐用のヤーンであって、前記ヤーンは複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントを含む集合体であり、前記第1フィラメントは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成り、前記第2フィラメントは、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成り、前記集合体中の前記複数の第1フィラメントの質量割合は70~95%であり、前記集合体中の前記複数の第2フィラメントの質量割合は5~30%であり、前記集合体は、撚り合わせていないことを特徴とする、ヤーンである。
【0015】
ここで、「撚り合わせていない」とは、単糸を互いに平行に引き揃えたものを意味し、撚り数が実質的に0のものを示す。また、「紐用」とは、ヤーン自体がそのまま紐として用いられる場合や、ヤーンを組んだり織ったりして製造される紐を含む。
【0016】
また、本発明は、ロープまたは紐用のヤーンであって、前記ヤーンは複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントを含む集合体であり、前記第1フィラメントは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成り、前記第2フィラメントは、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成り、前記集合体中の前記複数の第1フィラメントの質量割合は70~95%であり、前記集合体中の前記複数の第2フィラメントの質量割合は5~30%であり、前記集合体は、撚り数が500T/m以下で撚り合わせたことを特徴とする、ヤーンである。
【0017】
ここで、「甘撚り」とは、通常よりも単位長さあたりの撚り回数が少ないものを意味する。好ましくは、撚り数が500T/m以下のものである。
【0018】
前記集合体は、バインダー樹脂が付着し、前記バインダー樹脂により前記複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントが結束されていることが好ましい。
【0019】
前記集合体はボビン巻き、チーズ巻き、または玉巻きされていることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、前記ヤーンを複数撚り合わせたストランをさらに複数撚り合わせて形成されたロープである。
【0021】
また、本発明は、前記ヤーンを単独で、または複数平行に揃えてストランの芯部とし、前記芯部と前記芯部を被覆する皮部によりストランが形成され、前記ストランを撚り合わせて形成される、ロープである。
【0022】
前記皮部は、前記ヤーンと加撚ヤーンの両方を含むことが好ましい。
【0023】
また、本発明は、前記ヤーンを縦糸として、加撚ヤーンを横糸として織られた織紐である。
【0024】
また、本発明は、ヤーンの製造方法であって、前記ヤーンは複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントを含む集合体であり、前記第1フィラメントは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成り、前記第2フィラメントは、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成り、複数の第1フィラメントおよび複数の第2フィラメントを、撚り合わせずに、または撚り数が500T/m以下で撚り合わせた集合体を形成する工程と、前記集合体を水溶性樹脂を含む液中に浸漬する工程と、水溶性樹脂が付着した前記集合体を乾燥する工程と、を備える、ヤーンの製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高価な撚糸機や撚り工程が不要となり、設備投資が激減し、簡素化により作業効率が高くなり、安全性が向上される。さらに、撚り数が0か、または少なくなることにより引張強度、引張破断力強度が高くなり、軽量なヤーンが得られ、それにより製造されたロープ、紐においても、引張強度が高く、軽量となる。さらに、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成るフィラメントが混合されているため、耐摩耗性が高い。また、樹脂を浸透させた場合は、樹脂の結束効果により取り扱い性が向上される。
【0026】
また、樹脂を浸透させた場合は、本発明のヤーンそのものが紐として使用でき、従来の組紐と同様にロープ網の加工修理、小荷物作りの物品結束に使用できる。その際には、樹脂により単糸を結束することにより、作業用の針穴に通しやすく、作業性がアップする。また、織紐に使用した場合には、樹脂の効果により軟化しにくいため横糸同士の間隔が広い分、横糸の打ち込みを少なくでき、風合いの悪化もなく、生産効率が向上される。また、低価格なヤーン、紐、ロープが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第3実施形態に係る三撚りロープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。本発明は、ロープまたは紐用のヤーンであって、複数の熱可塑性樹脂単糸を含む単糸集合体である。ヤーンは、複数の第1フィラメントと複数の第2フィラメントを含む集合体であり、第1フィラメントは、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成るモノフィラメントであり、第2フィラメントは、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成るモノまたはマルチフィラメントである。集合体中の複数の第1フィラメントの質量割合は70~95%が好ましく、80~90%が更に好ましい。集合体中の複数の第2フィラメントの質量割合は5~30%が好ましく、10~20%がさらに好ましい。第1フィラメントと第2フィラメントは偏在することなく、ランダムに混合されている。
【0029】
集合体は、撚り合わせておらず、例えば複数のフィラメントを互いに平行に引き揃えたものである。ロープ製造用としては直径1.5~4mmの集合体が好ましく、織紐やロープ網の修理加工用紐としては要求される強度に合わせて直径が決定される。
【0030】
ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂からなる第1フィラメントは撚り合わせずに使用すると引張強度が高くなる一方で耐摩耗性が低くなるという問題があるが、撚り合わせなくても耐摩耗性が高いナイロン樹脂またはポリエステル樹脂からなる第2フィラメントを混合して無撚りのヤーンを形成することにより、全体として高い引張強度を維持しつつ耐摩耗性も向上できる。
【0031】
また、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成るフィラメントは、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂に比較すると比重が重く、これを混合することで、水中で使用しても浮きにくいロープや紐が製造できる。第2フィラメントとして、弾性や価格などを考慮するとポリエステル樹脂の方が好ましい。
【0032】
集合体は、無撚りの状態でバインダー樹脂となる水溶性樹脂が付着され、フィラメント同士がバインダー樹脂により結束されている。バインダー樹脂は、フィラメント同士を結束するものであればよく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂どちらも可能である。これにより、単糸同士がばらばらになるのを防ぎ、取り扱い性がよくなる。水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系やアクリル酸共重合体系の樹脂、エチレンオキシドに有機塩、無機塩を付与したもの、その他、CMC(カルボキシルメチルセルロース)やMC(メチルセルロース)、ゴム系樹脂等が例として挙げられるが、これに限定されるわけではない。水溶性樹脂の付着量は、付着前のヤーンの重量の5~30%であることが好ましい。また、水溶性樹脂は必ずしも付着する必要はない。
【0033】
このような、無撚りのヤーンをロープに用いる場合の一態様として、バインダー樹脂が付着した、または付着していないヤーンを撚り合わせてストランを形成し、形成されたストランをさらに複数撚り合わせてロープを形成することができる。
【0034】
無撚りでかつバインダー樹脂が付着したヤーン(以降、樹脂ヤーンともいう。)を用いてロープを製造した場合、ロープを甘撚りして製造することができる。従来のヤーンを用いた場合、ストランを甘撚りしてロープ製造すると、太く膨らみ感が出て取り扱い性が悪かった。それに対して、本発明の樹脂ヤーンを複数撚り合わせて製造された複数のストランをさらに甘撚りしてロープを製造すれば、樹脂の硬化によりそのような問題が回避される。そして、ロープが甘撚りして製造されることにより、並撚りに比較して引張強度、引張破断力が高くなり、単位長さあたりの質量が小さくなる。ここで、甘撚りによるロープの製造とは、通常よりも撚り数を少なくしたロープの製造であり、例えば、三つ撚りのロープの場合(太さが10~12mm程度と想定)、通常では撚り三つ分の長さが太さの3~3.3倍であるのに対して、甘撚りのロープでは3.7~4.5倍である。また、ストランもヤーンを甘撚りして製造されてもよい。
【0035】
無撚りヤーンを組紐に用いる場合、バインダー樹脂が付着した、または付着していない、複数の単糸集合体であるヤーンを斜に交差させながら組んで製造される。
【0036】
無撚りヤーンを織紐に用いる場合、無撚りヤーンを少なくとも縦糸として用い、縦糸と横糸を直角に合わせ織って織紐が製造される。樹脂ヤーンを用いた場合は、樹脂の硬化により、横糸の打ち込みが少なくても風合いや強度の悪化が見られず、織紐の長さ方向における横糸同士の間隔を広くできるため、生産性が向上される。撚り合わせていない単糸集合体を縦糸に使用するため、重要な縦方向の引張強度を高くすることができる。横糸は、引張強度が特に必要ではないため、加撚ヤーンでもよい。
【0037】
樹脂ヤーンは、それ自体を紐として用い、ロープ網の修理加工や小荷物作りのための物品の結束に使用することも可能である。その場合、単糸集合体が樹脂により硬化しているため、作業用の針穴に通しやすい効果もある。単糸集合体をボビン巻き、チーズ巻き、または玉巻きして使用することができる。
【0038】
次に、本発明のヤーン(バインダー樹脂付着)の製造方法について説明する。
まず、複数のフィラメントを、撚り合わせずに、平行に寄せて単糸の集合体を形成する。その後、集合体を水と水溶性樹脂の混合液中(例えば、混合液中に樹脂の固形分濃度が1~20%、さらに好ましくは10~20%)に浸漬し、水溶性樹脂を浸透させる。混合液は、十分な大きさの器に入れられ、連続的にヤーンを浸透させてもよいし、ヤーンを巻き玉にして、巻き玉ごと混合液中に投入してもよい。ヤーンの比重は水よりも軽い場合は、浮上防止具によりヤーンの浮上を防止する。
【0039】
その後、混合液が付着した集合体を乾燥させる。乾燥は、電気熱風など、任意の方法が採用され、単糸集合体に付着した水分を蒸発させ、樹脂を硬化させる。
【0040】
一度の混合液への浸漬では不十分な場合は、二段階で混合液へ浸漬してもよい。二段階目の浸漬は、ロープや紐が細く軽量な場合、巻き玉の状態や、ロープや紐の状態で浸漬し、乾燥しても良い。また、ロープや紐が太く重い場合、200~300mの巻を網袋へ手繰り入れて、網袋を混合液へ浸漬し、乾燥しても良い。
【0041】
本実施形態においては、直径1.5~4mmの集合体を200~500mの巻き玉にしたもの、および、直径10mmのロープ、長さ200m、重さ15kgを網袋へ手繰り入れたものを混合液中に浸漬し、水溶性樹脂を浸透させ乾燥させた。
【0042】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第1実施形態では、集合体は単糸が撚り合わせずに形成されているのに対して、本実施形態では甘撚りされていることが相違し、その他は共通する。第2実施形態のヤーンは甘撚りの状態で、バインダー樹脂によりフィラメント同士が結束されている。バインダ―樹脂となる水溶性樹脂を付着する場合は、甘撚りした状態で、水と水溶性樹脂の混合液中に浸漬し、樹脂を浸透させ、その後乾燥させて製造される。
【0043】
次に、図1を参照しながら、第3実施形態について説明する。ロープ1は、ストラン2を撚り合わせて形成され(本実施形態では三つ撚り)、ストラン2は、中心に配置される芯部21と、芯部21の周りを被覆する皮部22を有する。
【0044】
芯部21は、第1実施形態において説明したヤーンである無撚りヤーン5を含む。具体的には、芯部21は、ポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂からなる複数の第1フィラメント3、および、ナイロンまたはポリエステル系樹脂からなる複数の第2フィラメント4がランダムに混合された状態で平行に揃えられて並ぶ集合体である無撚りヤーン5を、平行に寄せ、必要に応じてバインダー樹脂により結束させたものである。ここで、一つの無撚りヤーン5をそのまま芯部21に用いてもよい。図中、芯部21内において太線で囲んだ部分が、一つの無撚りヤーン5を示している。
【0045】
皮部22は、芯部21の周面において、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂からなる、単合ヤーンまたは複合ヤーンである加撚りヤーン6と、芯部21にも用いられた無撚りヤーン5の両方が組み合わされ、撚り合わされて形成される。好ましくは、図1に示すように、芯部21の周囲で加撚りヤーン6と無撚りヤーン5が交互に撚り合わされた状態が好ましい。図1においては、皮部22における無撚りヤーン5は簡易的に斜線で示しているが、芯部21と同じように、第1フィラメント3と第2フィラメント4が混合され、撚り合わされていないヤーンである。
【0046】
無撚りヤーン5や無撚りヤーン5から構成される芯部21において、第1フィラメント3が80~90%、第2フィラメント4が10~20%であることが好ましい。第1フィラメント3は、ポリプロピレンまたはポリエチレン樹脂からなるモノフィラメントであり、第2フィラメント4はナイロンまたはポリエステル系樹脂からなるモノフィラメントまたはマルチフィラメントであることが好ましい。第2フィラメント4としては、タイヤコードに用いられるナイロンやポリエステル繊維を主繊維とした撚糸を用いることもできる。
【0047】
ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂からなるフィラメントは撚り合わせずに使用すると引張強度が高くなる一方で耐摩耗性が低くなるという問題があるが、撚り合わせなくても耐摩耗性が高いナイロンまたはポリエステル系樹脂からなるフィラメントを混合して無撚りヤーン5を形成することにより、全体として高い引張強度を維持しつつ耐摩耗性も向上できる。
【0048】
無撚りヤーン5は、第1実施形態と同様に、バインダー樹脂となる水溶性樹脂が付着され、フィラメント同士がバインダー樹脂により結束されていることが好ましい。これにより、第1フィラメント3、第2フィラメント4同士がばらばらになるのを防ぎ、取り扱い性がよくなる。
【0049】
なお、無撚りヤーン5に代えて、第2実施形態に記載した甘撚りヤーンを使用してもよい。
【0050】
なお、本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、該技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは無論である。
【符号の説明】
【0051】
1 :ロープ
2 :ストラン
3 :第1フィラメント
4 :第2フィラメント
5 :無撚りヤーン
6 :加撚りヤーン
21 :芯部
22 :皮部
【要約】
【課題】 軽量、低コストで、高い引張強度を有するロープ、紐、およびそれらのロープや紐を形成するためのヤーンを提供する。
【解決手段】 ロープ1または紐用のヤーン5であって、ヤーン5は複数の第1フィラメント3と複数の第2フィラメント4を含む集合体であり、第1フィラメント3は、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂から成り、第2フィラメント4は、ナイロン樹脂またはポリエステル樹脂から成り、集合体中の複数の第1フィラメント3の質量割合は70~95%であり、集合体中の複数の第2フィラメント4の質量割合は5~30%であり、集合体は、撚り合わせていないことを特徴とする。
【選択図】図1
図1