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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】家具
(51)【国際特許分類】
   A47B 55/00 20060101AFI20220411BHJP
   A47B 97/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
A47B55/00
A47B97/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017074206
(22)【出願日】2017-04-04
(65)【公開番号】P2018174999
(43)【公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594161622
【氏名又は名称】飛騨産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】中川 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】坂井 雄大
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3160035(JP,U)
【文献】特開2011-247025(JP,A)
【文献】特開2001-059372(JP,A)
【文献】国際公開第2006/114612(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 55/00、63/00、97/00
A47G 33/02
E05C 17/56、19/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体の側面に設けられた開口部を開閉自在に覆う回動式の扉を有する箱状の家具において、
前記扉の閉位置に無い状態において前記扉の上端縁部に設けられた凹部内の底部に自重により直に載置されるとともに、前記底部から上方への移動も許容されている第1磁性体と、
前記扉の閉位置において前記第1磁性体と対向する、前記箱本体における前記開口部の上縁部に埋設された第2磁性体と、を有し、
前記第1磁性体は、前記扉が閉位置に在るときに前記第2磁性体に吸着され、前記扉を前記閉位置で固定し、
記第1磁性体は、前記第2磁性体に対する吸着位置と前記凹部内における載置位置との間の距離の上下動が許容される形態で前記凹部内において前記扉に固定されており、
記凹部は、円筒形状を有し、
前記第1磁性体は、前記凹部に収容される大きさの有底円筒形状を有すると共に、前記第1磁性体の底部を貫通する貫通孔を有し、
前記第1磁性体の、前記第2磁性体に対する吸着位置と前記凹部内における載置位置との間の距離の上下動が許容される形態での前記凹部内における前記扉への固定は、軸部が前記貫通孔を貫通して前記凹部の底部に先端が固定された釘の頭部によりなされることを特徴とする家具。
【請求項2】
前記開口部は、天板、底板及び側板によって形成される略矩形の開口部であり、
前記箱本体における前記開口部の上縁部は、前記天板の下面部であり、
前記扉は、側板の正面側端部よりも前記箱本体の幅方向外方且つ正面側位置において前記天板及び底板に回動可能に軸支されると共に、前記開口部を開放する方向に回動して前記側板の外側面部と前記扉の正面部とが対向する該扉の開放位置において前記第1磁性体と対向する前記天板の下面部に埋設された第3磁性体を有し、
前記第1磁性体は、前記扉が前記開放位置に在るときに前記第3磁性体に吸着され、前記扉を前記開放位置で固定することを特徴とする請求項1に記載の家具。
【請求項3】
前記開口部は、天板、底板及び側板によって形成される略矩形の開口部であり、
前記箱本体における前記開口部の上縁部は、前記天板の下面部であり、
前記扉が、前記側板の正面側端部よりも前記箱本体の幅方向外方且つ正面側位置において前記天板及び底板に回動可能に軸支されており、
前記閉位置において扉の裏面部が前記側板の正面側端部に当接して該扉の閉方向へのさらなる回動が規制されることを特徴とする請求項1または2に記載の家具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉付きの家具に関し、特に、箱本体の側面に設けられた開口部を開閉自在に覆う扉を有する家具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロッカー、食器棚、下駄箱、戸棚等の扉を側面に有する箱状の家具は、扉を開けて開口部から家具内部に物の収納を行う。かかる箱状の家具においては、回動式の扉が設けられていることから、扉の閉状態の位置決めをして、その位置を維持するための戸当たりや戸受けが側面や天面から突出していることが一般的である。このような戸当たりや戸受けは開口部の周縁部から家具内スペース側へと突出しているので、開口部から収納物を出し入れする際には、この戸当たりや戸受けに収納物がぶつからないように行わなければならず、スムーズな出し入れ動作を妨げていた。
【0003】
また、特に、仏壇や扉を有する神棚などの場合には、扉を全開にした場合に、内部に鎮座する仏様、神様の前に戸当たりや戸受けが側面や天面から突出することになり、上記出し入れの不便性だけでなく意匠性に欠けるという不具合もあった。
【0004】
特許文献1には、建物のドア(扉)の開放時に用いられる戸当たりの代用としての扉の固定機構が開示されている。具体的には、特許文献1には、建物の扉の底部に、床面に対して進退自在に設けられた先端部に磁石を有する扉側部材と、扉の開放位置において前記扉側部材に対応させて床面に配設された前記磁石を吸着可能な床側部材と、を備えた扉の固定機構が開示されている。
【0005】
この扉の固定機構によれば、通常は扉側部材の先端部の磁石はバネで床面と離反する方向に付勢されているが、扉の開放位置において磁石と床側部材との間に生じる磁力により扉側部材が付勢力に抗して扉内から引き出され、磁石が床側部材と吸着し、扉を開放状態で固定することが可能となっている。
【0006】
これにより、扉の開放時に用いられる戸当たりを設けることなく、扉の開放状態での位置保持の機能が発揮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-293994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の扉の固定機構は、上述のように扉の閉状態ではなく扉の開放状態の固定機構であって、扉の閉状態における枠状の戸当たりを代用するものではない。また、特許文献1には、建物のドアの開放時に用いる床から突出した戸当たりは掃除や歩行の邪魔になると記載されているものの、建物のドアを閉じる時に用いられる戸口の開口部に設けられた枠状の戸当たりについて上述した収納物の出し入れの不便性や意匠性の悪さの問題を開示する記載がない。
【0009】
したがって、箱状の家具の開口部に設けられた戸当たりや戸受けが家具への物の出し入れや意匠性に与える影響について、いまだ改善の余地が残されている。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、物の出し入れをしやすく、且つ意匠性が向上した扉付き箱状家具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、箱本体の側面に設けられた開口部を開閉自在に覆う回動式の扉を有する箱状の家具において、前記扉の閉位置において前記扉の上端縁部に設けられた凹部内の底部に自重により載置されるとともに、前記底部から上方への移動も許容されている第1磁性体と、前記扉の閉位置において前記第1磁性体と対向する、前記箱本体における前記開口部の上縁部に埋設された第2磁性体と、を有し、前記第1磁性体は、前記扉が閉位置に在るときに前記第2磁性体に吸着され、前記扉を前記閉位置で固定することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、扉が閉位置に在るときに第1磁性体が第2磁性体に吸着され、扉を閉位置で固定することから、扉を閉位置で固定するために開口部に戸当たりや戸受けを設ける必要が無くなる。
【0013】
したがって、開口部の戸当たりや戸受けの配置を省略することで、物の出し入れのしやすさを向上させ、且つ、意匠性を向上させることが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の家具において、前記第1磁性体は、前記第2磁性体に対する吸着位置と前記凹部内における載置位置との間の距離の上下動が許容される形態で前記凹部内において前記扉に固定されていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、第1磁性体が扉の凹部内に固定されることとなるため、扉の開放時に第1磁性体が凹部から脱落するおそれも無く、安心である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の家具において、前記開口部は、天板、底板及び側板によって形成される略矩形の開口部であり、前記箱本体における前記開口部の上縁部は、前記天板の下面部であり、前記扉は、側板の正面側端部よりも前記箱本体の幅方向外方且つ正面側位置において前記天板及び底板に回動可能に軸支されると共に、前記開口部を開放する方向に回動して前記側板の外側面部と前記扉の正面部とが対向する該扉の開放位置において前記第1磁性体と対向する前記天板の下面部に埋設された第3磁性体を有し、前記第1磁性体は、前記扉が前記開放位置に在るときに前記第3磁性体に吸着され、前記扉を前記開放位置で固定することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、扉が開放位置に在るときにも第1磁性体が第2磁性体に吸着され、扉を開放位置で固定することから、扉を開放位置で固定するためにこの開放位置における天板等に戸当たりや戸受けを設ける必要が無くなる。
【0018】
したがって、扉の開放位置における天板等の戸当たりや戸受けの配置を省略することで、より意匠性を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3の何れか1項に記載の家具において、前記開口部は、天板、底板及び側板によって形成される略矩形の開口部であり、前記箱本体における前記開口部の上縁部は、前記天板の下面部であり、前記扉が、前記側板の正面側端部よりも前記箱本体の幅方向外方且つ正面側位置において前記天板及び底板に回動可能に軸支されており、前記閉位置において扉の裏面部が前記側板の正面側端部に当接して該扉の閉方向へのさらなる回動が規制されることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、第1磁性体が第2磁性体に吸着される扉の閉位置において扉の裏面部が側板の正面側端部に当接して扉の閉方向へのさらなる回動が規制されるため、扉を閉位置で固定するに際に、扉の裏面部が側板の正面側端部に当接するまで回動させればよく、閉動作が容易なものとなっている。
【0021】
また、側板の正面側端部が扉の閉方向への回動を規制するため、開口部近傍への戸当たりを設ける必要もない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、扉が閉位置に在るときに第1磁性体が第2磁性体に吸着され、扉を閉位置で固定することから、扉を閉位置で固定するために開口部に戸当たりや戸受けを設ける必要が無くなる。
【0023】
したがって、開口部の戸当たりや戸受けの配置を省略することで、物の出し入れのしやすさを向上させ、且つ、意匠性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施の形態に係る家具の斜視図である。
図2】本実施の形態に係る家具の底面図であって、扉が(a)閉位置及び(b)開放位置に在る状態を示す図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4】扉が閉位置及び開放位置に無い状態における第1磁性体の配置を示す図である。
図5】第1磁性体の変形例を示す、扉上端部の拡大縦断面図である。それぞれ、(a)第1磁性体の凹部内の底部への載置状態及び(b)第2磁性体に吸着された状態をしめす。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図に基づいて詳細に説明する。本発明の箱状の家具を、図1図4を参照して説明する。図1は本実施の形態に係る家具の斜視図、図2は本実施の形態に係る家具の底面図、図3図1のIII-III線断面図、図4は扉が閉位置及び開放位置に無い状態における第1磁性体の配置を示す図である。
【0026】
各図において、矢印Wは家具の幅方向を示し、矢印Fは家具の正面方向を示し、矢印Uは家具の上下方向上方を示す。なお、図2においては、底板の図示を省略している。
【0027】
図1に示すように、家具10は、略矩形の天板12、側板14-1,14-2、背板16(図2参照)、底板18及び正面に配置された両開きの扉20-1,20-2を有する略直方体の箱本体11として形成されている。
【0028】
したがって、天板12の正面側端部12a、側板14-1,14-2の正面側端部14-1a,14-2a、底板18の正面側端部18aに囲まれた領域が開口部24(図2(b)参照)を形成しており、この開口部24が扉20-1,20-2により開閉される。
【0029】
扉20-1,20-2は、図2に示すように、幅方向外側端部において天板12及び底板18に軸支されている。扉20-1,20-2の軸支には、例えば、軸吊丁番22を用いることができる。
【0030】
ここで、図2(a)に示すように、平面視の軸吊丁番22-1,22-2の位置(すなわち、平面視の扉20-1,20-2の軸支位置)は、側板14-1,14-2の正面側端部14-1a,14-2aよりも箱本体11の幅方向外方且つ正面側位置である。
【0031】
そして、図1及び図2(a)に示すように、扉20-1,20-2が閉位置にある場合において、図2(a)に示すように、扉20-1,20-2の裏面部20-1b,20-2bは側板14-1,14-2の正面側端部14-1a,14-2aにそれぞれ当接する位置にある。
【0032】
また、扉20-1,20-2は、図2(b)に示すように、軸吊丁番22-1,22-2の位置を中心として開方向(矢印100c,100d方向)に回動し、同図に示す開放位置において正面部20-1a,20-2aが側板の外側面部14-1b,14-2bと対向する位置となる。
【0033】
したがって、図2(a)に示すように、閉位置からの扉20-1,20-2のさらなる閉方向(矢印100a,100b方向)への回動が規制されており、図2(b)に示すように、開放位置において扉20-1,20-2のさらなる開方向(矢印100c,100d方向)への回動が規制されている。
【0034】
次に、扉20-1及び天板12に設けられる磁性体について説明する。なお、これ以降、扉20-2に設けられる磁性体及びこれに対応して天板12に設けられる磁性体については、扉20-1及び天板に設けられる磁性体と左右対称の配置となっているため、その説明を省略する。
【0035】
扉20-1の上端縁部20-1cの幅方向中央側寄り位置には、図3に示すように、略円筒形状の凹部26-1が設けられている。凹部26-1の底部26-1bには、凹部26-1の高さよりもやや小さい高さを有する略円柱形状の第1磁性体28-1が自重により載置されている。
【0036】
第1磁性体28-1は、後述する第2磁性体30-1及び第3磁性体32-1に磁力で吸着される。
【0037】
第1磁性体28、第2磁性体30及び第3磁性体32は、それぞれ、永久磁石及び強磁性体から選択される。強磁性体としては、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの合金(フェライト等)が挙げられる。
【0038】
一方、図3に示すように、天板12の下面部12b(開口部24の上縁部)には、閉位置に在る扉20-1の凹部26-1の底部26-1bに載置された第1磁性体28-1と対向する位置で第2磁性体30-1が埋設されており、第2磁性体30-1の下面30-1aと天板12の下面部12bは面一に形成されている。
【0039】
また、図3に示すように、第1磁性体28-1の高さhは、天板12の下面部12bと扉20-1の上端縁部20-1cとの間の距離dよりも大きい。これは、第1磁性体28-1が第2磁性体30-1に吸着された際に、扉20-1を第2磁性体30-1に吸着された第1磁性体28-1に係止させ、扉20-1の挙動を閉位置で規制するためである。
【0040】
また、天板12の下面部12bには、開放位置に在る扉20-1の凹部26-1の底部26-1bに載置された第1磁性体28-1と対向する位置で第3磁性体32-1が埋設されており、第3磁性体32-1の下面32-1aと天板12の下面部12bは面一に形成されている。
【0041】
次に、家具10の、扉20-1を閉じるときの動きを、扉20-1を開放位置でも閉位置でもない位置から閉位置に移動させる場合を例に説明する。
【0042】
扉20-1が開放位置でも閉位置でも無い状態において、図4に示すように、第1磁性体28-1は、凹部26-1内の載置位置にある。
【0043】
次に、扉20-1をその裏面部20-1bが側板14-1の正面側端部14-1aに当接するまで閉方向に回動させる。これにより扉20-1は閉位置まで移動し、図3に示すように、第1磁性体28-1は、対向する位置にある第2磁性体30-1に吸着される。
【0044】
この状態で扉20-1を開放方向に動かそうとすると、凹部26-1の内周壁26-1aが第1磁性体28-1の周面に接触し、開放方向への扉20-1の移動を規制する。
【0045】
したがって、扉20-1が閉位置で固定されることとなり、扉20-1を閉位置に固定するために開口部24から家具10内スペースへと突出する戸当たりや戸受けを設ける必要が無くなる。
【0046】
また、扉20-1の閉位置において、扉20-1の裏面部20-1bが側板14-1の正面側端部14-1aに当接して扉20-1の閉方向へのさらなる回動が規制されるため、扉20-1を閉位置で固定する際に、扉20-1をその裏面部20-1bが側板14-1の正面側端部14-1aに当接するまで回動させればよく、閉動作が容易なものとなっている。同時に、この構成により、開口部24から家具10内スペースへと突出する戸当たりを設ける必要もなくなっている。
【0047】
次に、家具10の、扉20-1を開けるときの動きを、扉20-1を閉位置から開放位置に移動させる場合を例に説明する。
【0048】
まず、扉20-1を閉位置から開放方向へと回動させる。このとき、第2磁性体30-1に吸着された第1磁性体28-1の周面が凹部26-1の内周壁26-1aに接触し、扉20-1の開放方向への移動を規制しているが、第2磁性体30-1と第1磁性体28-1との吸着面に作用する摩擦力よりも大きな力を加えることで第1磁性体28-1による扉20-1の固定が解除され、扉20-1は閉位置から開放方向へと移動する。
【0049】
その後、さらに扉20-1を回動させ、扉20-1の正面部20-1aを側板14-1の外側面部14-1bと対向・接触させる。これにより、扉20-1は開放位置まで移動し、第1磁性体28-1は、対向する位置にある第3磁性体32-1に吸着される。
【0050】
この状態で扉20-1を閉方向に動かそうとすると、凹部26-1の内周壁26-1aが第1磁性体28-1の周面に接触し、閉方向への扉20-1の移動を規制する。
【0051】
したがって、扉20-1が開放位置で固定されることとなり、扉20-1を開放位置で固定するためにこの開放位置における天板12や底板18に戸当たりを設ける必要が無くなるとともに、扉20-1の開放位置における戸当たりや戸受けの配置を省略することで、家具10の意匠性をより向上させることが可能となる。
【0052】
また、上記実施の形態においては、第1磁性体28-1は凹部26-1内において扉20-1に固定されていないが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
以下に、第1磁性体の変形例を、図5を参照して説明する。本変形例においては、第1磁性体40-1は、所定距離の上下動が許容されつつ凹部26-1内において扉20-1に固定された形態を有する。なお、上記実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0054】
図5は、第1磁性体の変形例を示す、扉上端部の拡大縦断面図である。それぞれ、(a)第1磁性体の凹部内の底部への載置状態及び(b)第2磁性体に吸着された状態をしめす。
【0055】
図5(a)に示すように、第1磁性体40-1は、扉20-1の上端縁部20-1cの凹部26-1に収容される大きさの有底円筒形状を有し、第1磁性体の穴部41-1の底部41-1aには、第1磁性体40-1の底面部40-1aまで貫通する貫通孔42-1が設けられている。
【0056】
第1磁性体40-1は、この貫通孔42-1を貫通した釘44によって凹部26-1の底部26-1bに固定されている。このとき、第1磁性体40-1が第2磁性体30-1にも第3磁性体32-1とも対向していない状態においては、図5(a)に示すように、第1磁性体40-1は扉20-1の上端縁部20-1cの凹部26-1の底部26-1b上に載置された載置位置にある。
【0057】
一方、図5(b)に示すように、第1磁性体40-1が第2磁性体30-1と対向する閉位置においては、第1磁性体40-1は磁力により第2磁性体30-1に吸着される吸着位置まで移動することが許容される。
【0058】
なお、第1磁性体40-1は第2磁性体30-1との吸着位置において釘44の頭部44aによってさらなる上方への移動が係止されている。
【0059】
ここで、扉20-1の閉位置における上記第1磁性体40-1と第2磁性体30-1との位置関係は、扉20-1の開放位置における第1磁性体40-1と第3磁性体32-1との位置関係にも当てはまるので、第3磁性体32-1と第1磁性体40-1との位置関係についての記載は省略する。
【0060】
したがって、本変形例に係る第1磁性体40-1によれば、第1磁性体40-1が扉20-1の凹部26-1内に固定されることとなるため、家具の運搬時などに扉20-1が半開きの状態で横向き又は下向きで搬送されることとなった場合であっても、第1磁性体40-1が凹部26-1から脱落するおそれもなく、安心である。
【0061】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態において、家具を両開きの扉20-1,20-2を有する家具として例示したが、片開きの扉を有する家具とすることも可能である。
【0062】
また、本発明に係る家具としては、側面に扉を有する箱状の家具であればどのようなものであってもよく、例えば、ロッカー、食器棚、下駄箱、戸棚、仏壇、本棚、テレビボード、化粧箪笥等を挙げることができる。
【0063】
さらに、本実施の形態においては、開口部24を、天板12、底板18及び側板14-1,14-2によって形成される略矩形の開口部として説明しているが、これに限られるものでは無い。すなわち、開口部は箱本体11の側面に設けられていればよく、例えば、箱本体11の側面の一部を扉とする構成であってもよい。なお、ここでいう側面とは、天板12と底板14との間の側面を意味しており、したがって、本発明において側面というときには、天板12及び側板14との間の挟まれた正面、背面、幅方向両側面の全側周面を含む。
【0064】
また、本実施の形態において、扉の回動軸は軸吊丁番22-1,22-2から形成される上下方向の回動軸となっているが、これに限られるものではなく、箱体の幅方向に伸長する回動軸とすることも可能である。
【0065】
例えば、本実施の形態の家具10を用いて例示すれば、側板14-1,14-2の下端部における正面側端部14-1a,14-2a近傍位置において幅方向に伸長する水平軸を設け、この水平軸によって開口部24に設けられた一枚板の扉を軸支することとしてもよい。扉はこの水平軸を回動軸としてその扉の上端縁部から正面方向に倒れるように回動し、開閉することとなる。
【0066】
この場合、上記第1実施の形態の第1磁性体28-1,28-2及び第2磁性体30-1,30-2による扉の閉位置固定機構をそのまま用いることが可能となる。
【0067】
また、上記第1磁性体の変形例において、釘44はステンレスなどの第1~第3磁性体に吸着しない金属を材料としている。さらに、上記第1磁性体の変形例において、第1磁性体40-1は釘44によって固定されているが、釘44に限定されず、他の固定手段を用いて固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 家具
11 箱本体
12 天板
14-1,14-2 側板
14-1a,14-2a 側板の正面側端部
14-1b,14-2b 側板の外側面部
18 底板
20-1,20-2 扉
20-1a,20-2a 扉の正面部
20-1b,20-2b 扉の裏面部
20-1c,20-2c 扉の上端縁部
24 開口部
26-1,26-2 扉の上端縁部に設けられた凹部
26-1b,26-2b 凹部内の底部
26-1b,26-1b 底部
28-1,28-2,40-1,40-2 第1磁性体
30-1,30-2 第2磁性体
32-1,32-2 第3磁性体
図1
図2
図3
図4
図5