(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ワーク受取装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/00 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
B23Q7/00 A
(21)【出願番号】P 2018008234
(22)【出願日】2018-01-22
【審査請求日】2020-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000212566
【氏名又は名称】中村留精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【氏名又は名称】宮田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【氏名又は名称】宮田 誠心
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 大希
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-153424(JP,A)
【文献】実開昭50-000684(JP,U)
【文献】登録実用新案第3036767(JP,U)
【文献】特開平10-156658(JP,A)
【文献】実開昭64-036326(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229013(US,A1)
【文献】特開平07-277420(JP,A)
【文献】特開平05-128353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0183413(US,A1)
【文献】実開平05-086401(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00 - 7/18
B24B 31/12 - 31/16
B65B 35/00 - 35/58
B65G 47/78
B65G 47/82
B65G 59/10 - 59/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械において、
チャックからワークを受け取るバケットを有し、
前記バケットは、スリットが形成されており、
前記スリットを通過する押し出し手段によって、前記バケット内のワークが排出される
ようになっており、
前記スリットは、前記バケットが移動可能となっている方向に沿って形成されており、
前記押し出し手段は固定されており、
前記バケットが移動することによって、相対的に前記押し出し手段がスリットを通過するようになっていることを特徴とするワーク受取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において、チャックからワークを受け取るワーク受取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、加工完了後にワークを機外に排出する工程を有する。
【0003】
特許文献1に示すように、ワークを機外に排出する工程では、アームの先端に設けられたエアハンドのフィンガーでワークを把握して、ワークを搬送する。
【0004】
エアハンドは、フィンガーで把握できるワークの重量に制限がある。また、エアハンドにおけるフィンガーのストロークに限界がある。そのため、エアハンドは、様々な重量及び形状のワークに対応することが難しい。異なる重量及び形状のワークを搬送するためには、エアハンドを交換する時間がかかってしまう。
【0005】
そこで、エアハンドに比べて、様々な重量及び形状のワークに対応できるものとして、特許文献1に示すように、スウィングアームの先端に設けられたバケットで受け取るものがある。
【0006】
特許文献1は、チャックからワークをバケットで受け取る準備位置から、スウィングアームを旋回させて、排出位置でワークをバケットから排出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
排出位置でバケットを傾ける動作が必要となり、ワークをバケットで受け取ってから、ワークをバケットから排出するまでの時間の短縮が難しいという問題がある。
【0009】
また、バケットを傾ける動作を実現する追加の構成が必要となる。そのため、ワーク受取装置が大型化し、機内において、ワーク受取装置の占有空間や動作のための空間が大きくなってしまうという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、様々な重量及び形状のワークに対応可能でありながら、ワークをバケットから排出するまでの時間を短縮することができるとともに、機内において、占有空間や動作のための空間を小さくすることができるワーク受取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1のワーク受取装置は、工作機械において、チャックからワークを受け取るバケットを有し、前記バケットは、スリットが形成されており、前記スリットを通過する押し出し手段によって、前記バケット内のワークが排出されるようになっており、前記スリットは、前記バケットが移動可能となっている方向に沿って形成されており、前記押し出し手段は固定されており、前記バケットが移動することによって、相対的に前記押し出し手段がスリットを通過するようになっている。
【0012】
請求項1のワーク受取装置は、チャックからバケットでワークを受け取る。
【0013】
請求項1のワーク受取装置は、スリットを通過する押し出し手段によって、バケットを傾けることなく、前記バケット内のワークを排出することができる。
【0014】
また、請求項1のワーク受取装置は、受け取ったワークに付着しているクーラントや切粉がバケットに貯留することなく、スリットを通して流出させることができる。
【0015】
元々、バケットはチャックからワークを受け取るために、工作機械の機内で移動可能となっている。そのため、請求項1のワーク受取装置は、バケットの移動可能となっている方向に沿ってスリットが形成されていれば、固定された押し出し手段に対するバケットの移動を利用することによってバケット内のワークを排出することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1のワーク受取装置は、バケットでワークを搬送するので、様々な重量及び形状のワークに対応することができる。また、請求項1のワーク受取装置は、バケットを傾けることなく、前記バケット内のワークを排出することができるので、ワークをバケットから排出するまでの時間を短縮することができるとともに、機内において、占有空間や動作のための空間を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る第一実施形態のワーク受取装置からワークを排出する様子を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る第一実施形態のワーク受取装置からワークを排出する前の様子を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る第二実施形態のワーク受取装置の斜視図である。
【
図4】本発明に係る第三実施形態のワーク受取装置の正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第一実施形態のワーク受取装置について説明する。
【0019】
工作機械は、主軸の先端に取り付けられているチャックと、チャックに把持されているワークWを加工する刃物台と、加工後のワークを受け取るワーク受取装置1と、ワーク受取装置1から排出されたワークWを収容するワーク収納箱10とを有する。
【0020】
棒状のワークWは、バーフィーダーによって供給されるようになっている。
【0021】
ワーク受取装置1は、チャックの回転軸と略平行な方向に延びる走行軸と、走行軸に沿って移動可能となっているアーム2と、アーム2の先端に設けられているバケット3とを有する。
【0022】
ワーク受取装置1は、少なくとも、アーム待機位置、受取位置及びワーク排出位置へバケット3が移動できるように構成されている。
【0023】
アーム2は、サーボモータによって走行軸の任意の位置に位置決めすることができるようになっている。
【0024】
アーム2は、チャックの回転軸と略平行な旋回軸周りに旋回可能となっている。また、アーム2は、バケット3が設けられている先端の位置と旋回軸との距離を増減させることができるようになっている。
【0025】
バケット3は、
図1に示すように、外形が円錐台の筒体からなる。バケット3は、円錐台の中心軸がチャックの回転軸と略平行となっている。バケット3は、円錐台の上底に当たる部分が開口しており、円錐台の下底に当たる部分が閉塞されている。バケット3は、円錐台の上底に当たる開口からワークWを挿入可能となっている。
【0026】
円錐台の下底に当たる部分と、側周面に当たる部分には、連続するスリット4が形成されている。スリット4は、バケット3が移動可能となっている方向である走行軸と平行な方向に形成されている。
【0027】
ワーク収容箱10は、押し出し手段である押し出し板11が立設した状態で固定されている。押し出し板11は、バケット3のスリット4を通過できるようになっている。
【0028】
次に、ワーク受取装置1の一連の動作について、受け取り動作、搬送動作、及び、排出動作に分けて以下に説明する。
【0029】
受取動作では、ワーク受取装置1は、まず、アーム2がアーム待機位置から走行軸に沿って走行する。
【0030】
次に、アーム2を旋回軸周りに旋回させてアーム2の先端をチャックに近づける。
【0031】
次に、アーム2は、バケット3が設けられているアーム2の先端の位置と旋回軸との距離を増加させ、さらにアーム2の先端をチャックに近づける。
【0032】
次に、アーム2は、走行軸に沿ってバケット3がチャックに接近する方向に走行する。これにより、バケット3は、受取位置に到達する。
【0033】
この受取位置では、チャックに把持されているワークWの一部は、バケット3の開口から挿入されている状態となる。
【0034】
この受取位置で、チャックのワーク把持が解除されるとワークWがバケット3に収容された状態となる。
【0035】
受取位置で、バーフィーダーがワークWをチャックからバケット3に向かって押し出すことによって、ワークWがバケットに収容された状態となっていてもよい。
【0036】
バケットに収容されたワークWは、バケットの円錐台の側周面にあたる部分に沿って載置されていることとなる。そのため、ワークWは、重力によってバケット3の閉塞されている円錐台の下底に向かって押されることとなる。したがって、ワークWは、バケット3から落下しにくくなっている。
【0037】
搬送動作では、まず、ワークWをバケット3に収容した状態で、バケット3が設けられているアーム2の先端の位置と旋回軸との距離を減少させる。
【0038】
次に、アーム2を旋回軸周りに旋回させてアーム2の先端をチャックにから遠ざける。
【0039】
アーム2の旋回の過程において、バケット3のスリット4が鉛直方向下向きに位置することがある。そのため、受け取ったワークWに付着しているクーラントや切粉がバケット3に貯留することなく、スリット4を通して流出させることができる。
【0040】
次に、走行軸に沿って、バケット3がワーク収納箱10に近づく方向に走行する。これにより、バケット3は、ワーク排出位置に到達する。
【0041】
排出動作について、
図1に基づいて説明する。バケット3は、排出動作の説明のため透明な材料からなるものとする。
【0042】
図1(a)は、バケット3が排出位置にある状態を示す。スリット4は鉛直方向下向きの位置にある。この状態から、矢印Aに示すように、バケット3が押し出し板11に接近する方向に、アーム2を走行軸に沿って走行させる。
【0043】
これに伴い、バケット3内部において、スリット4から押し出し板11の一部が突出した状態で、押し出し板11は、スリット4が延びる方向に相対的に通過し始める。さらに矢印Aの方向にアーム2を走行軸に沿って走行させると、
図1(b)に示すように、スリット4を通過していく押し出し板11は、バケット3内のワークWをバケット3の開口から押し出す方向にスライドさせていく。
【0044】
押し出し板11がスリット4を通過し終えると、ワークWはバケット3から排出され、ワーク収納箱10内に落下するようになっている。
【0045】
ワークWの排出が完了したアーム2は、アーム待機位置に戻る。
【0046】
また、
図2に示すように、ワーク収容箱10の代わりに、シューター20にワークWが落下するようになっていてもよい。
【0047】
シューター20は、同様に、押し出し板21が固定されている。
図2は、バケット3がワーク排出位置にある状態を示す。この状態から、矢印Bに示す方向にアーム2を移動させると、同様に押し出し板21がスリット4を通過する過程でワークWはバケット3から排出され、シューター20内に落下するようになっている。
【0048】
シューター20に落下したワークWは、シューター20に沿って転がり、工作機械の機外へと送られるようになっている。
【0049】
図2に示すように、バケット3が排出位置にある状態で、スリット4が鉛直方向下向きに位置していない場合でも、ワークWをバケット3から排出することが可能である。
【0050】
上記説明したバケット3は、チャックの把持される全てのワークの受取、搬送及び配送が可能ではあるが、特に、ワークの残材の受取、搬送及び配送に特に適している。
【0051】
以下、本発明の第二実施形態のワーク受取装置1について説明する。
【0052】
第一実施形態と共通する説明は省略する。
【0053】
第一実施形態ではバケット3は、外形が円錐台の筒体からなる場合について説明した。
第二実施形態では、バケット5は、受け皿となっている。バケット5は、バケット3の円錐台の筒体の側周面の一部及び下底の一部を取り除いたものである。
【0054】
このバケット5は、
図3において、受け皿の上方が開放されている。そのため、受取動作において、バケット5の上方から落下するワークも受け取ることができる。
【0055】
バケット5のスリット6は、第一実施形態と同様に、バケット3が移動可能となっている方向である走行軸と平行な方向に形成されている。
【0056】
第一実施形態と同様に、矢印Cに示す方向にアーム2を移動させると、押し出し手段である押し出し板(
図3中では省略)がスリット6を通過する過程で、ワークWはバケット5から排出される。
【0057】
バケット5の上部が開口しているため、押し出し板11がスリット6を通過し終える前に、重力によって、ワークWがバランスを崩してバケットからワーク収納箱内に落下させることができる。したがって、第二実施形態は、バケットからワークWを排出する時間を短縮できる可能性がある。
【0058】
以下、本発明の第三実施形態のワーク受取装置1について説明する。
【0059】
第一実施形態と共通する説明は省略する。
【0060】
第三実施形態のバケット7は、
図4に示すように、側周面に開口8を有する筒体からなる。また、スリット9は、バケット7が移動可能となっている方向であるアーム2の旋回方向に沿って形成されている。
【0061】
第一実施形態と同様に、矢印Dに示す方向にアーム2を移動させると、押し出し手段である押し出し板(
図4中では省略)がスリット9を通過する過程で、ワークWはバケット7の開口8から排出される。
【0062】
第三実施形態のバケット7は、アーム2の走行方向にはワークWを排出するスペースの確保が難しいが、アーム2の旋回方向にはワークWを排出するスペースが確保できる場合に有効となる。
【0063】
上記実施形態は、棒状のワークWは、バーフィーダーによって供給される場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、ワークローダー等によってワークが供給されてもよい。
【0064】
上記実施形態は、アーム2は、走行軸に沿った走行、旋回軸周りに旋回、及び、先端の位置と旋回軸との距離を増減の動きが出来る場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、上記説明以外の軸に沿った走行、上記説明以外の軸周りの旋回等やこれらの組み合わせた動きが可能となっていてもよい。
【0065】
上記実施形態は、アーム2の先端にバケット3のみが設けられている場合を説明したが、これに限定されることはない、バケットがワークの残材のみを受け取る場合、ワークを加工した完成品を受け取るエアハンドとバケットがアームの先端に併存していてもよい。
【0066】
上記実施形態は、バケット3、5及び7は、横断面が円又は円の一部を切り欠いた形状である場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、バケットは、横断面が多角形であってもよい。
【0067】
例えば、外形が円錐台のバケット3は、横断面が多角形となると、バケット3の外形は角錐台となる。この場合、排出位置において側周面の境界線が鉛直方向下向きに位置するようにすると、バケットは、境界線を構成する2つの側周面でワークを支持する。したがって、排出位置において、ワークがバケット内部で転がることがなく、スリットを通過する押し出し手段は、確実にワークを押し出すことができる。
【0068】
上記実施形態は、バケット3が透明な材料からなるものとする場合について説明したが、これに限定されることはない。バケットは、不透明な材料からなるものであってもよい。
【0069】
上記実施形態は、チャックのワーク把持が解除されたワークやバーフィーダーで押し出されたワークを受け取る場合について説明したが、これに限定されることはない。刃物台によって、切り落とされたワークをキャッチするものでもよい。
【0070】
また、バケットの開口が複数のチャックに向うように、アームの先端が回動可能となっていてもよい。
【0071】
上記実施形態は、走行軸に沿って、バケット3がワーク収納箱10に近づく方向に走行して排出位置に到達する場合について説明したが、これに限定されることはない。搬送動作において、例えば、走行軸に沿って走行の他に、旋回軸周りに旋回等のアームが可能な動きやこれらの動きを組み合わせて、バケットが排出位置に到達してもよい。
【0072】
上記実施形態は、押し出し手段が押し出し板11である場合について説明したが、これに限定されることはない。押し出し手段は、スリットを通過することができる形状、例えば、棒体等であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ワーク受取装置
2 アーム
3 バケット
4 スリット
5 バケット
6 スリット
7 バケット
8 開口
9 スリット
10 ワーク収容箱
11 押し出し板
21 シューター
22 押し出し板