(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 3/12 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
F03B3/12
(21)【出願番号】P 2018038558
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】518075532
【氏名又は名称】株式会社中央発電
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 孝平
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-130339(JP,U)
【文献】特開平10-054336(JP,A)
【文献】特開2002-081362(JP,A)
【文献】特開2017-002874(JP,A)
【文献】登録実用新案第3179682(JP,U)
【文献】特許第6245486(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 3/12
F03B 7/00
F03B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川や用水路に係留して、水の流れでドラム形水車及びスクリュー形水車を回転させて発電をおこなう発電装置であって、
該発電装置は、流水上に浮かべる船体と、該船体の両側部に少なくとも一対設ける前記ドラム形水車と、該ドラム形水車の中心部に軸通して当該ドラム形水車の回転と共に回転する車軸と、該車軸と連結してその回転が伝達される第1ギアと、該第1ギアと連結する第1シャフトを介してその回転が伝達される変速機と、該変速機と連結する第2シャフトを介してその回転が伝達されて発電する発電機と、前記船体の船尾側の船底近傍に設ける前記スクリュー形水車と、該スクリュー形水車と連結する第3シャフトを介してその回転が伝達される第2ギアと、該第2ギアと連結する第4シャフトを介してその回転が伝達されて発電する前記発電機と、を少なくとも備え、
前記ドラム形水車は、筒体と、該筒体に設けられる複数枚の羽根とを有し、
該羽根は、前記筒体と離隔した位置の縁部に沿って水流の受面側に折曲した状態の折曲部が形成されて
おり、
前記船体の船底は、中央部から船尾側に渡って所要の傾斜角度を持って形成されて、前記スクリュー形水車の前方を開放していること
を特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記スクリュー形水車は、中央の中央部に沿って4枚又は複数枚の羽根片を有し、該羽根片の外側の縁部が水流の受面側に折曲していること
を特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム形の水車とスクリュー形の水車とを備えた船形の発電装置であり、更に詳しくは、河川や用水路等の流水上に係留して、水の流れで水車を回転させて、効率的に発電をおこなう発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の考案としては、実用新案登録第3173631号のドラム式水車筏発電装置を本願出願人が提案している(特許文献1参照)。
【0003】
図8及び
図9に示すように、このドラム式水車筏発電装置1は、船体2の両側部にドラム式水車3を二対設けており、このドラム式水車3の中心部には車軸4が軸通している。車軸4は、船内部分においてデフギア(デファレンシャルギア)5と連結し、また、デフギア5はシャフト6が連結して、シャフト6は発電機7に接続した構成である。
【0004】
このような構成のドラム式水車筏発電装置1は、水の流れでドラム式水車3を回転させることで車軸4を回転させて、その回転力をデフギア5を介してシャフト6から発電機7へと伝達して発電する仕組みである。
【0005】
発電機7で発電した電力は、
図10に示すように、陸地に立設する支柱8へ送電線9で送り、さらに送電線9から外部送電線10を介在して、所定の電力供給施設に電力を供給する。なお、
図9及び
図10中の符号WL(water-line)は喫水線を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来例のドラム式水車筏発電装置1においては、ドラム式水車3を増設したり、あるいは、ドラム式水車3の幅を拡張することで、回転力やトルクを増幅して発電する電力を増大することができるものの、当該ドラム式水車3の構造においては、その発電量が限られる。
【0008】
従って、従来例におけるドラム式水車筏発電装置1においては、水車の構造等を改良することによって、さらに効率的な発電をおこなって発電量を増大することに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、河川や用水路に係留して、水の流れでドラム形水車及びスクリュー形水車を回転させて発電をおこなう発電装置であって、該発電装置は、流水上に浮かべる船体と、該船体の両側部に少なくとも一対設ける前記ドラム形水車と、該ドラム形水車の中心部に軸通して当該ドラム形水車の回転と共に回転する車軸と、該車軸と連結してその回転が伝達される第1ギアと、該第1ギアと連結する第1シャフトを介してその回転が伝達される変速機と、該変速機と連結する第2シャフトを介してその回転が伝達されて発電する発電機と、前記船体の船尾側の船底近傍に設ける前記スクリュー形水車と、該スクリュー形水車と連結する第3シャフトを介してその回転が伝達される第2ギアと、該第2ギアと連結する第4シャフトを介してその回転が伝達されて発電する前記発電機と、を少なくとも備え、前記ドラム形水車は、筒体と、該筒体に設けられる複数枚の羽根とを有し、該羽根は、前記筒体と離隔した位置の縁部に沿って水流の受面側に折曲した状態の折曲部が形成されており、前記船体の船底は、中央部から船尾側に渡って所要の傾斜角度を持って形成されて、前記スクリュー形水車の前方を開放していることである。
【0010】
また、前記スクリュー形水車は、中央の中央部に沿って4枚又は複数枚の羽根片を有し、該羽根片の外側の縁部が水流の受面側に折曲していること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る発電装置によれば、船体の両側部に設ける一対のドラム形水車と、船体の船尾側の船底近傍に設けるスクリュー形水車との2種類の水車を用いて発電機で発電するので、発電量が増加していっそう効率的な発電が可能となる。
また、ドラム形水車の羽根は、筒体と離隔した位置の縁部に沿って水流の受面側に折曲した状態の折曲部が形成されているので、水流が折曲部に当たって押圧力が増大し、その結果、ドラム形水車のトルクや回転力が増幅するという優れた効果を奏する。
【0012】
また、スクリュー形水車は、中央の中央部に沿って4枚又は複数枚の羽根片を有し、羽根片の外側の縁部が水流の受面側に折曲していることによって、この折曲している折曲部分に水流が当たって押圧力が増大し、その結果、スクリュー形水車のトルクや回転力が増幅するという優れた効果を奏する。
【0013】
そして、船体の船底は、中央部から船尾側に渡って所要の傾斜角度を持って形成されて、スクリュー形水車の前方を開放していることによって、この開放している部分の水流がスクリュー形水車の前面に当たって押圧力が増大し、その結果、スクリュー形水車のトルクや回転力が増幅するという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る発電装置11を略示的に示す平面図である。
【
図2】本発明に係る発電装置11を略示的に示す側面図である。
【
図3】本発明に係る発電装置11を、一方のドラム形水車12と一方の側部19とを省略して略示的に示す側面図である。
【
図8】従来例に係るドラム式水車筏発電装置1の平面図である。
【
図9】従来例に係るドラム式水車筏発電装置1の側面図である。
【
図10】従来例に係るドラム式水車筏発電装置1の稼働状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解を容易にするために、従来例に対応する部分には従来例と同一の符号を付けて説明する。
【0016】
まず、
図1から
図3において、符号11は発電装置を示し、この発電装置11は、流水上に浮かべる船体2と、船体2の両側部に一対設けるドラム形水車12と、ドラム形水車12の中心部に軸通して当該ドラム形水車12の回転と共に回転する車軸4と、車軸4と連結してその回転が伝達される第1ギア5aと、第1ギア5aと連結する第1シャフト6aを介してその回転が伝達される変速機13と、変速機13と連結する第2シャフト6bを介してその回転が伝達されて発電する発電機7と、船体2の船尾2a側の船底2b近傍に設けるスクリュー形水車21と、スクリュー形水車21と連結する第3シャフト6cを介してその回転が伝達される第2ギア5bとから構成されている。そして、この第2ギア5bと連結する第4シャフト6dを介してその回転が発電機7に伝達されて発電する仕組みである。
【0017】
船体2は、船形あるいは筏形に形成されて、河川や用水路等に係留して流水上に浮かべて設置する。
【0018】
ドラム形水車12は、
図4及び
図5に示すように、ドラム形状の筒体14と、筒体14に設けられる複数枚の羽根15とからなる。
【0019】
羽根15は、
図5に示すように、略L字状に形成されており、筒体14の外周部14aと一方の側部14bとに沿って設けられる一方の羽根15aと、筒体14の外周部14aと他方の側部14cとに沿って設けられる他方の羽根15bとで一対の羽根15を構成し、一方の羽根15aと他方の側部14cとの間には、隙間16が設けられている。
そして、この一対の羽根15が、所定の間隔を開けて複数対(
図4においては8対)設けられている。
なお、
図4及び
図5中の符号25は、筒体14に設けられた軸孔を示す。
【0020】
また、羽根15(一方の羽根15a、他方の羽根15b)は、筒体14と離隔した位置の縁部に沿って水流(矢印B参照)の受面側に折曲した状態の折曲部17が形成されている(
図5参照)。
この折曲部17の存在によって、水流が折曲部17に当たって押圧力が増大し、その結果、ドラム形水車12のトルクや回転力が増幅する。
【0021】
車軸4は、ドラム形水車12の中心部に軸通して、当該ドラム形水車12の回転と共に回転し、ドラム形水車12の回転を第1ギア5aに伝達する。
【0022】
第1ギア5aは、車軸4と連結してその回転を向きを変えて第1シャフト6aへと伝達する役目を果たす。
【0023】
第1シャフト6aは、端部が変速機13と連結してその回転が伝達される。
【0024】
変速機13は、第1シャフト6aの端部が接続して、その回転速度の比率を変える役目を果たすと共に、当該変速機13からの回転を第2シャフト6bを介して発電機7へ伝達する。
【0025】
発電機7は、第2シャフト6bの端部が接続して、その回転が伝達されて発電する役目を果たす。発電機7は、従来例と異なり、一台のみ設けられており発電効率を向上させている。
【0026】
スクリュー形水車21は、
図6に示すように、中央の中央部22に沿って4枚(又は複数枚)の羽根片23を有する。
羽根片23は、外側の縁部24が水流(矢印B参照)の受面側に折曲している。この折曲した縁部24に水流が当たって押圧力が増大し、その結果、スクリュー形水車21のトルクや回転力が増幅する。
【0027】
また、スクリュー形水車21は、長尺の第3シャフト6cと連結しており、第3シャフト6cは、端部が第2ギア5bと連結してその回転が伝達される。
【0028】
第2ギア5bは、第4シャフト6dと連結しており、その回転の向を変えて変速機18を介して、発電機7に伝達する役目を果たし、その回転が発電機7に伝達されて発電する仕組みである。
【0029】
船体2の船底2bは、
図3に示すように、中央部2cから船尾2a側に渡って所要の傾斜角度を持った傾斜部20が形成されている。このように、船底2bに傾斜部20が形成されることにより、スクリュー形水車21の前方が開放される。
したがって、開放されている部分を流れる水流、換言すれば、傾斜部20に沿って流れる水流がスクリュー形水車21の前面に当たるので、押圧力が増大し、その結果、スクリュー形水車21のトルクや回転力が増幅する。
【0030】
また、
図3に示すように、傾斜部20の両側には、壁状の側部19を有する。この側部19の存在によって、傾斜部20を流れる水流が船底2bの両側方向に流れることなく、スクリュー形水車21の前面に集中することとなり、その結果、スクリュー形水車21の押圧力がさらに増大する。
【0031】
以上のように構成される発電装置11は、船体2の両側部に設ける一対のドラム形水車12と、船体2の船尾2a側の船底2b近傍に設けるスクリュー形水車21との2種類の水車を同時に用いて発電機で発電するので、発電量が増加していっそう効率的な発電が可能となる。
なお、
図1から
図3中の矢印Bは水流方向を示している。
また、ドラム形水車12とスクリュー形水車21とのどちらか一方の水車を選択的に用いて発電機で発電することも可能である。
【0032】
このようにして発電した電力は、従来例で説明したように、陸地に立設する支柱8へ送電線9で送り、さらに送電線9から外部送電線10を介在して、所定の電力供給施設に電力を供給する(
図10参照)。
【符号の説明】
【0033】
WL(water-line) 喫水線
1 ドラム式水車筏発電装置
2 船体
2a 船尾
2b 船底
2c 中央部
3 ドラム式水車
4 車軸
5 デフギア(デファレンシャルギア)
5a 第1ギア
5b 第2ギア
6 シャフト
6a 第1シャフト
6b 第2シャフト
6c 第3シャフト
6d 第4シャフト
7 発電機
8 支柱
9 送電線
10 外部送電線
11 発電装置
12 ドラム形水車
13 変速機
14 筒体
14a外周部
14b、14c側部
15 羽根
15a一方の羽根
15b他方の羽根
16 隙間
17 折曲部
18 変速機
19 側部
20 傾斜部
21 スクリュー形水車
22 中央部
23 羽根片
24 縁部