IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワイヤーデバイスの特許一覧

特許7055355高炉における装入物の装入及び堆積方法、並びに高炉の操業方法
<>
  • 特許-高炉における装入物の装入及び堆積方法、並びに高炉の操業方法 図1
  • 特許-高炉における装入物の装入及び堆積方法、並びに高炉の操業方法 図2
  • 特許-高炉における装入物の装入及び堆積方法、並びに高炉の操業方法 図3
  • 特許-高炉における装入物の装入及び堆積方法、並びに高炉の操業方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】高炉における装入物の装入及び堆積方法、並びに高炉の操業方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 15/04 20060101AFI20220411BHJP
   C21B 5/00 20060101ALI20220411BHJP
   C21B 7/24 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G01B15/04 C
C21B5/00 312
C21B7/24 302
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018045826
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019158607
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】593207271
【氏名又は名称】株式会社WADECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱野 早衛
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-067340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333752(US,A1)
【文献】特開2011-002241(JP,A)
【文献】特開2012-237560(JP,A)
【文献】特開2017-172024(JP,A)
【文献】特開昭56-105408(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0272865(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 15/04
C21B 5/00
C21B 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の内部に、シュータにより鉄鉱石やコークス等の装入物を装入し、堆積させる方法において、
検出波の送受信手段と、前記送受信手段に連結するアンテナと、反射面がアンテナと対面し、かつ、該アンテナに対する傾斜角度及び前記検出波の伝搬軸を中心に回動角度が可変である反射板とを備え、前記装入物の表面を面状に走査して該装入物の堆積プロフィールを測定する表面検出装置を複数、前記高炉の中心軸を中心にして等間隔で該高炉の外部に設置するとともに、
前記装入物の表面全面を前記表面検出装置の数に分割するとともに、各々の分割領域を担当する前記表面検出装置に割り当て、かつ、各々の前記表面検出装置を前記分割領域の直上に位置するように配置し、割り当てられた前記表面検出装置にて前記分割領域における前記装入物の堆積プロフィールを測定し、
各々の前記表面検出装置による測定作業を、割り当てされた前記分割領域に前記シュータが存在しない期間内に行うことを特徴とする高炉における装入物の装入及び堆積方法。
【請求項2】
前記分割領域の堆積プロフィールを合成して前記装入物の全表面の堆積プロフィールを求め、理論堆積プロフィールと比較して該理論堆積プロフィールからの差分を修正するように前記シュータの次回以降の旋回動作を制御することを特徴とする請求項記載の高炉における装入物の装入及び堆積方法。
【請求項3】
前記検出波がマイクロ波またはミリ波であることを特徴とする請求項1または2に記載の高炉における装入物の装入及び堆積方法。
【請求項4】
高炉の内部に、旋回するシュータにより鉄鉱石やコークス等の装入物を装入し、堆積させながら操業する高炉の操業方法において、
請求項1~の何れか1項に記載の方法により前記装入物の堆積プロフィールを求め、前記シュータの旋回動作を制御しながら前記装入物を装入、堆積させて操業することを特徴とする高炉の操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉に装入される鉄鉱石やコークス等の装入物の堆積プロフィールを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石を溶解する高炉では、通常、炉頂から大ベル(ベル式装入装置)やシュータ(ベルレス式装入装置)により鉄鉱石とコークスとを交互に装入して層状に堆積させ、炉頂部でのこれら装入物の堆積プロフィールが蟻地獄の如き逆錘状になるように堆積して操作を行う。
【0003】
ところで、高炉を安定して操業するための重要な要因の1つに、炉内のガス流の分布がある。このガス流の分布は、鉄鉱石やコークスの堆積状況と密接な関係があり、通常は、実験によりガス流の分布が最適となる堆積状態、即ち堆積物の傾斜面の角度や、鉄鉱石の堆積層とコークスの堆積層との層厚比等が最適となるような理論堆積プロフィールを求め、実際の堆積状態が理論堆積プロフィールと合致するように大ベルやシュータの動作を制御している。
【0004】
理論堆積プロフィールと合致するように堆積されているかを確認するために、マイクロ波やミリ波等の検出波を鉄鋼石またはコークスの堆積表面に向けて送信し、鉄鉱石またはコークスの表面で反射された検出波を受信して堆積プロフィールを求めることが行われている。
【0005】
本出願人も先に、特許文献1等において、図4に示すような表面検出装置10を提案している。この表面検出装置10は、反射板100とアンテナ120とを対向させて容器130に収容し、高炉1の炉頂近傍に設置されている。アンテナ120には、検出波Mの送受信手段110が連結している。反射板100は、例えば円板であり、アンテナ120に対する傾斜角度が可変で、その直径を中心に図中矢印Y方向に動くとともに、反射面の中心点を中心にして、即ちアンテナ120からの検出波Mの伝搬軸を中心にして、回中X方向に回動する。
【0006】
そして、測定に際して、アンテナ120から送信された検出波Mは、反射板100で反射されて炉内へと送られ、堆積している鉄鉱石7aやコークス7bの表面で反射され、その反射波が同経路を辿って送受信手段110で受信される。その際、反射板100のY方向への傾斜角度と、X方向への回動角度とを制御することにより、検出波Mは鉄鉱石7aやコークス7bの表面を面状に走査し、鉄鉱石7aやコークス7bの位置座標と、各位置における距離情報から、堆積プロフィールを3次元的に求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-33619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、表面検出装置10は、高炉1の炉頂近傍に1基のみ設置されるため、「テラス部」とも呼ばれる側壁2の近傍に堆積している鉄鉱石7aやコークス7bでは、表面検出装置10から遠くなるほど検出波Mの入射角が小さくなり、検出精度が悪くなる。特に、高炉1の中心軸Cに対して、表面検出装置10と対称端となるテラス部(図中左端)における入射角θが最も小さく、この付近での検出精度が最も低い。
【0009】
また、ベルレス高炉では、図示されるように鉄鉱石7aやコークス7bは、旋回するシュータ20から投下されるため、シュータ20が旋回して表面検出装置10の反射板100の直下に来ると、検出波Mの送信が遮断されて堆積プロフィールが得られない。表面検出装置10は高炉1に固定されており、シュータ20の旋回軌道も同心円であるから、得られる堆積プロフィールは、開口部140の直下に対応する箇所が帯状に欠落したものとなる。
【0010】
更には、検出範囲が高炉の内径に及ぶため、表面検出装置10の送信用開口140を広くしなければならず、炉内からの浮遊物等の侵入防止対策も、符号141で示すセラミックボードやセラミックフィルターを大径にする等、大がかりになる。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、シュータによる測定妨害が無く、鉄鉱石やコークスの全面の堆積プロフィールを精度良く測定して、理論堆積プロフィールにより近づけて高炉の操業を安定して行うことができ、更には表面検出装置の設置のための高炉の開口部も小さくすることができ、大掛かりな浮遊物の侵入防止対策も不要にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明は、下記の高炉における装入物の装入及び堆積方法、並びに高炉の操業方法を提供する。
(1)高炉の内部に、シュータにより鉄鉱石やコークス等の装入物を装入し、堆積させる方法において、
検出波の送受信手段と、前記送受信手段に連結するアンテナと、反射面がアンテナと対面し、かつ、該アンテナに対する傾斜角度及び前記検出波の伝搬軸を中心に回動角度が可変である反射板とを備え、前記装入物の表面を面状に走査して該装入物の堆積プロフィールを測定する表面検出装置を複数、前記高炉の中心軸を中心にして等間隔で該高炉の外部に設置するとともに、
前記装入物の表面全面を前記表面検出装置の数に分割するとともに、各々の分割領域を担当する前記表面検出装置に割り当て、かつ、各々の前記表面検出装置を前記分割領域の直上に位置するように配置し、割り当てられた前記表面検出装置にて前記分割領域における前記装入物の堆積プロフィールを測定し、
各々の前記表面検出装置による測定作業を、割り当てされた前記分割領域に前記シュータが存在しない期間内に行うことを特徴とする高炉における装入物の装入及び堆積方法。
)前記分割領域の堆積プロフィールを合成して前記装入物の全表面の堆積プロフィールを求め、理論堆積プロフィールと比較して該理論堆積プロフィールからの差分を修正するように前記シュータの次回以降の旋回動作を制御することを特徴とする上記()記載の高炉における装入物の装入及び堆積方法。
)前記検出波がマイクロ波またはミリ波であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高炉における装入物の装入及び堆積方法。
)高炉の内部に、旋回するシュータにより鉄鉱石やコークス等の装入物を装入し、堆積させながら操業する高炉の操業方法において、
上記(1)~()の何れか1項に記載の方法により前記装入物の堆積プロフィールを求め、前記シュータの旋回動作を制御しながら前記装入物を装入、堆積させて操業することを特徴とする高炉の操業方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シュータによる測定妨害が無く、鉄鉱石やコークスの全面の堆積プロフィールを3次元的に精度良く。シュータの旋回毎に迅速に測定することができる。そのため、理論堆積プロフィールからの差分が正確になり、理論堆積プロフィールにより近い堆積状態にすることが可能になり、高炉の操業をより安定に行うことができる。また、表面検出装置を設置するための高炉の開口部を小さくすることができ、大掛かりな浮遊物の侵入防止対策も不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】2基の表面検出装置を設置した場合の実施形態を、高炉の中心軸に沿って示す断面図である。
図2図1のSS断面図であり、各表面検出装置に割り当てられた分割領域を示す図である。
図3】シュータによる装入物の堆積状態の断面を示す模式図である。
図4】特許文献1に記載の表面検出装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1は、2基の表面検出装置を設置した場合の実施形態を、高炉の中心軸に沿って示す断面図である。高炉1の炉頂に、中心軸Cの左右2箇所に、中心軸Cから等間隔で2基の表面検出装置10A,10Bを設置する。個々の表面検出装置10A(10B)は、鉄鉱石7aやコークス7b(以下、まとめて「装入物7」)の表面を面状に走査できる構成であれば制限はなく、例えば図4に示した特許文献1に記載の表面検出装置10を用いることができる。あるいは、何れも本出願人による特開2015-219129号公報、特開2014-196992号公報に記載された表面検出装置等であってもよい。何れも、反射板とアンテナとを対向配置するとともに、反射板のアンテナに対する傾斜角度が可変で、かつ、アンテナからの検出波の伝搬軸を中心にして回動可能な構成になっており、反射板の傾斜角度及び回動角度を制御することにより、検出波Mにより装入物7の表面を面状に走査することができる。そして、装入物7による検出波Mの反射波を、送受信手段で受信することにより、装入物7の堆積プロフィールが3次元的に得られる。
【0017】
尚、検出波Mとしては、炉内の水蒸気や浮遊物の影響を受けないように、マイクロ波やミリ波を用いることができ、特にミリ波はマイクロ波よりも指向性が高く、好ましい。
【0018】
装入物7の表面は、表面検出装置の数に応じて分割され、本実施形態では2つの半円に分割される。そして、表面検出装置10A,10Bは、それぞれの直下にある装入物7の表面の分割領域A,Bにおける各堆積プロフィールを測定する。即ち、図2に示すように、装入物7の右半円の分割領域Aを表面検出装置10Aが走査し、左半円の分割領域Bを表面検出装置10Bが走査する。表面検出装置10A,10Bともに、図4のように表面検出装置10が1基の場合に比べて走査範囲が半減するため、高炉1の開口部140A,140Bを小さくすることができる。そのため、浮遊物の侵入防止対策のためのセラミックボードやセラミックフィルター141A,141Bを小径にすることができる。
【0019】
また、側壁2に近いテラス部についても、装入物7への入射角θ、θが、図4に示すように表面検出装置10が1基の場合の入射角θに比べて大きくなり、測定精度も高まる。
【0020】
更には、走査時間も、表面検出装置10が1基の場合に比べて半減し、走査面積も半分の面積になるため反射板100の傾斜角度や回動角度も狭くなり、傾斜や回動のための駆動装置の負荷も小さくてすむ。
【0021】
ベルレス式高炉では、旋回するシュータ20により装入物7が炉内に投下される。そのため、シュータ20が表面検出装置10A,10Bの直下にあると、検出波Mの送信ができなくなる。そこで、同図において、シュータ20が分割領域Bに居る期間内に表面検出装置10Aによる走査を完了し、シュータ20が分割領域Aに居る期間内に表面検出装置10Bによる走査を完了する。そして、分割領域Aにおける堆積プロフィールと分割領域Bにおける堆積プロフィールとを合成することにより、シュータ20が一回旋回する毎に、装入物7の全面の堆積プロフィールが得られる。このようにシュータ20の旋回による検出波Mの送信が遮断されることが無いため、欠落部の無い、装入物7の全面にわたる堆積プロフィールが得られる。
【0022】
図3図1の部分拡大図であり、ここでは鉄鉱石7aの堆積の仕方を説明する。尚、コークス7bも同様に堆積する。既に堆積している鉄鉱石7aの堆積プロフィールをP0とすると、シュータ20を回転角度θ1にて旋回させると、新たな鉄鉱石7aが堆積プロフィールP0の上に、シュータ20の回転角度θ1に応じた位置を起点として堆積され、このときの堆積プロフィールを表面検出装置10A(10B)で測定してその堆積プロフィールP1を得る。次いで、シュータ20を回転角度θ2にて新たに旋回させると、新たな鉄鉱石7aが堆積プロフィールP1の上に、シュータ20の回転角度θ2に応じた位置を起点として堆積され、そのときの堆積プロフィールを表面検出装置10A(10B)で測定してその堆積プロフィールP2を得る。このようなシュータ20の旋回及び表面検出装置10A(10B)による測定を繰り返すことにより、最終的に鉄鉱石7aの堆積プロフィールPnが得られる。
【0023】
従って、例えば堆積プロフィールP3に理論堆積プロフィールからの差分が大きい箇所がある場合、次回のシュータ20の旋回時に堆積プロフィールP3の差分は大きい箇所を修正できれば、以降の鉄鉱石7aの堆積プロフィールを理論堆積プフィールに近い状態に保つことができる。しかし、シュータ20により検出波Mの送信が遮断されると、堆積プロフィールP3に異常があったとしても、それを見落として、検出できないおそれがある。
【0024】
尚、上記の実施形態では2基の表面検出装置10A,10Bを用いているが、表面検出装置は多いほど1基当たりの測定領域(分割領域)が狭くなり、測定時間も短く、測定精度もより高まる。
【0025】
また、表面検出装置を1基だけ用い、装入物7の全面の半分のみを走査し、その堆積プロフィールを求めてもよい。具体的には、図1において、表面検出装置10Aのみを設置し、シュータ20が分割領域Bに居る期間内に、分割領域Aのみを走査してその堆積プロフィールを測定する。そして、分割領域Bの堆積プロフィールも分割領域Aの堆積プロフィールに類似していると見做し、分割領域Aの堆積プロフィール同士を合成して装入物7の全表面の堆積プロフィールとして疑似的に求めることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 高炉
7a 鉄鉱石
7b コークス
10A、10B 表面検出装置
20 シュータ
100 反射板
110 送受信手段
120 アンテナ
140 開口部
141 セラミックボードまたはセラミックフィルター
A、B 分割領域
図1
図2
図3
図4