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特許7055370アンダーピニングにおけるポスト・ロード工法及びその制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】アンダーピニングにおけるポスト・ロード工法及びその制御システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/48 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
E02D27/48
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018126333
(22)【出願日】2018-07-02
(65)【公開番号】P2020007709
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】山本 將人
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-21356(JP,A)
【文献】特開2018-184753(JP,A)
【文献】特開2014-95199(JP,A)
【文献】特開2014-92008(JP,A)
【文献】特開昭61-87026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/48
E02D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物下の地盤を掘削して前記既設構造物の下に複数支点の仮受け機構を構築し、油圧ジャッキで前記既設構造物を仮受けするようにしたアンダーピニング工法において、前記油圧ジャッキにより1支点ずつ全支点の先行プレロードを実施し仮受け機構の耐力確認を行い除荷する第1の工程と、前記仮受け機構と前記既設構造物との間に圧力をかけることなく前記油圧ジャッキを面接触させておく第2の工程と、この後に、本プレロードを実施することなく、その後の前記既設構造物の浮沈に応じて前記油圧ジャッキへの油の供給・排出を制御して前記既設構造物の前記油圧ジャッキ面接触時点の変位を維持する第3の工程(変位制御)とからなることを特徴とするアンダーピニングにおけるポスト・ロード工法。
【請求項2】
前記第3の工程は、全支点の油圧ジャッキ1台毎に電磁比例流量制御弁を搭載した油圧源1台が配管され、すべての油圧ジャッキが他の油圧ジャッキの動作に影響されることなく独立して個々に制御されることを特徴とする請求項1記載のアンダーピニングにおけるポスト・ロード工法における制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設構造物の真下に新設構造物を構築する場合等において、既設構造物の真下の地盤掘削の際に既設構造物の浮上や沈下などの変位が発生しないように原位置を維持しながら、安全で高品質な既設構造物の受替えを可能にしたアンダーピニングにおけるポスト・ロード工法及びその制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンダーピニングにおける既設構造物の受替えには、種々の方式が知られている(非特許文献1)。
同文献のP125には、杭直受け方式が記載されている。
この文献記載の杭直受け方式のフローを図1及び図2に基づき説明する。
(S-0):既設構造物11の上部及び側部の掘削
(S-1):下部の導坑14の掘削
(S-2):仮受け杭12の設置
(S-3):仮受け工(プレロード工)
(S-4):導坑14間の掘削
(S-5):下部の掘削
(S-6):新設構造物15の築造
(S-7):本受け工(プレロード工)
(S-8):仮受け杭12の切断
(S-9):埋戻し・復旧
そして、本文の説明文には、次のように記載されている。
杭直受け方式では、導坑杭方式が採用されることが多く、この場合、仮受け杭は導坑内から施工する。プレロード工は導坑ごとに行い、変位や荷重の計測により影響される範囲のジャッキ制御を行う。また、新設構造物の構築完了後に本受け工を行い、仮受け杭を切断、撤去する。仮受け杭の施工による既設構造物下部の大規模な導坑掘削にともなう既設構造物の安定の確保や、狭隘部での仮受け杭の施工など、入念な施工方法の検討が必要である。
【0003】
前記非特許文献1には、杭直受け方式の工事全体の施工フローが示されているが、本発明の対象範囲である前記(S-3):仮受け工(プレロード工)をより詳細に説明するために、図3及び図4を追加して前記(S-3)工程を以下の各工程として説明する。
(S-31):油圧ジャッキ設置
(S-32):先行プレロード(1導坑1本のみ載荷し耐力確認後、荷重除荷)
(S-33):本プレロード(1導坑全本数荷重載荷)
【0004】
図3及び図4において、前記(S-31)では、1導坑につき図中奥行き方向(既設構造物の幅方向)に複数本(以下、5本とする)の仮受け杭を打設してそれぞれに油圧ジャッキが設置される。その後の(S-32)の先行プレロードは、(S-33):本プレロード前の準備運動を兼ねた試験施工といった位置づけとして、来るべき本プレロードの範囲の中で、1導坑5本の仮受け杭12の中から代表的な1本を選定し、制御システムを含む機材運転リハーサルを兼ね、前記油圧ジャッキにより載荷し、地盤10、仮受け杭12の耐力確認を行い、その後除荷して既設構造物11の事前の構造解析結果と照合し検討するというものであった。
【0005】
前記(S-33)の本プレロードは、先行プレロード結果を踏まえ、設計荷重(計算値)により全点同時プレロードを行い、除荷することなく、既設構造物11の荷重を仮受け杭12に受替え、既設構造物崩落のリスクを排除し、以後の工事の安全性を担保していた。
【0006】
(S-4):導坑14間の掘削、(S-5):下部の掘削、(S-6):新設構造物15の築造は、本プレロード以降の工事進捗に伴う仮受け杭12の沈下・隆起(仮受け杭12のリバウンド)などの様々な減少に対応し、既設構造物の安定を保つために、各油圧ジャッキ13の荷重と既設構造物11の鉛直方向の位置の変動を監視する期間である。この監視期間中のジャッキ制御には、荷重に上限値と下限値を設定し、各油圧ジャッキ13の荷重の変動をこの範囲内に収束させるべく荷重制御していた。具体的には、荷重が上下限値内に収まっている油圧ジャッキ13については放置し、上限値を超えるか又は下限値を下回る段階で油を供給・排出し、油圧ジャッキ13の荷重を上下限値範囲内に収束させる制御をしていた。しかし、既設構造物11の変位については、上下限値を設けて常時計測しているものの、上限値を超えたり下限値を下回ったりしても、直ちに油圧ジャッキ13を制御することはせず、放置し、一定期間経過後、異常変位の支点をピックアップし、1点ずつ変位調整していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】アンダーピニング工法設計・施工マニュアル 技報堂出版株式会社 2007年5月25日発行 第125~129頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記背景技術として杭直受け方式について記載したが、非特許文献1のP125-129で紹介されたすべての方式、すなわち、P126の新設構造物直受け方式、P127の下受けばり方式、P128の耐圧版方式、P128の添えばり方式のいずれの方式も、施工フロー中に「仮受け工(プレロード工)」を内在しているので、杭直受け方式同様、安全施工は保証されているものの、工事完了時点で既設構造物11の原位置を維持できないという問題があった。この問題を杭直受け方式を例にとり以下の通り説明する。
【0009】
土中に構築されている既設構造物11は、図5(a)に示すように、既設構造物11の下向きの荷重と土のもつ上向きの押し上げるばね力とが釣り合って土中に安定している状態にあり、この時の位置をAとする。
ここで、前記(S-33)の本プレロードにおいて、油圧ジャッキ13a5台、13b5台、13c5台、…にて既設構造物11のa部分、b部分、c部分、…を支持するように設計荷重(計算値)を掛け(全導坑全点同時本プレロード)、既設構造物11の荷重を仮受け杭12に受替える。すると、既設構造物11の荷重で縮んでいた土のばねが伸び、それに伴い既設構造物11が図5(b)のBの位置まで上昇する。(なお、本載荷により油圧ジャッキ13を載せた仮受け杭12は沈下するが、当該沈下量は、油圧ジャッキ13のストロークの伸びが吸収し、既設構造物11の上昇距離には影響を及ぼすことはない。)
【0010】
以上の段落[0009]は、分かり易く簡略化された説明であり、実際の施工では、導坑毎(1導坑ずつ)に本プレロードする場合が多い。
この場合、既設構造物11の位置が図5(b)のAからBまで一挙に上昇することはないが、すべての導坑の本プレロード完了時点ではBまで上昇することになる。
【0011】
全支点(縦横)の本プレロード完了時点で、既設構造物11は、図5(b)で示したBの位置までに浮上するだけでなく、各支点の設計荷重(計算値)は、真の荷重とは言えないので、鉛直方向の各部分の位置の変動量もバラバラとなり、縦断と横断の両方向で捩れが発生する。さらに、監視期間に入り、掘削の進捗に伴い仮受け杭12の沈下・隆起(仮受け杭12のリバウンド)などの様々な現象が待ち受けている。かかる状況下で、どのように油圧ジャッキを制御し、既設構造物の原位置を維持するかが課題となる。
【0012】
油圧ジャッキの制御方法は、荷重制御と変位制御の2種に分類される。前者は、油圧ジャッキの荷重を制御する(その結果として既設構造物11の変位は変動する)。後者は、既設構造物11の変位を制御する(その結果としてジャッキ荷重は変動する)。課題は、既設構造物11の原位置維持(実際には本プレロードで乱された既設構造物11の変位を原位置に復帰させる)なので、後者を採用するのが理想だが、既設構造物11を仮受け杭12で支える形は不静定構造となるので、許容値を超える荷重の急激な大変動で既設構造物11が損壊するなどのリスクが大きく、且つ変位修正が困難(1支点の修正が他支点の変位を変動させる)だった。そのため既設構造物11の原位置の維持は諦め、段落[0006]の通り既設構造物11に優しい荷重制御を採用し、一定期間経過後(最終的には監視期間終了時に)異常変位を示す支点を1点ずつ可能な限り修正していた。
【0013】
以上の通り、工事期間を通して既設構造物11の原位置を維持するという観点からすれば、本プレロードで発生する変位のハンディキャップをその後の油圧ジャッキの制御により克服するには限界があった。
【0014】
本発明は、上記点に鑑みなされたもので、安定して地中に構築されている既設構造物の周囲の地盤を撤去して仮受け機構を構築し、油圧ジャッキで既設構造物を仮受けするときに、既設構造物の安全を担保した上で本プレロードによる浮き上がりをなくし工事完了まで原位置を保持することを可能にしたアンダーピニングにおけるポスト・ロード工法及びその制御システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
従来の方法では、本プレロードによる既設構造物11の浮上・捩れ(変位上昇とそのバラツキ)を以後の油圧ジャッキの制御で原位置に戻すのは困難なので、本発明では、本プレロードを実施しない。この場合、本プレロードに代わり、既設構造物11の崩落リスクを排除し、工事の安全性を担保する他の手段が必要となる。
【0016】
その手段として、先行プレロードを全支点実施する。従来、先行プレロードは、本プレロード前の準備運動・試験施工的な位置付けだったが、これを格上げし、本プレロードの代替として1支点ずつ全支点実施する。1支点ずつ載荷の後、除荷するので、仮受け機構自体の全支点の耐力・安全性が確認できるが、既設構造物11は浮上せず、原位置を維持したままである。
【0017】
この先行プレロードが全支点終了し除荷され、油圧ジャッキ頭部が既設構造物11に面接触された時点では当然に既設構造物11の荷重は、仮受け機構に受け換わっていない。受け換わっていないが、仮受け機構の耐力・安全性は確認できているので、仮受け機構と既設構造物11の間に設置されている油圧ジャッキの以後の制御を下記の通り変位制御で実施すれば、既設構造物11の崩落リスクを排除できるだけでなく、掘削完了時点において既設構造物11の原位置を維持できる。
【0018】
監視開始時点では、油圧ジャッキ荷重は(ほぼ)0だが、掘削の進捗にともない既設構造物11は主として沈下方向に動き、油圧ジャッキ経由仮受け機構に既設構造物11の荷重が伝達され、仮受け機構は地中に押し込まれていく。既設構造物11の原位置を維持する変位制御システムのもと沈下支点の油圧ジャッキには直ちに油を供給し、ストロークを伸ばし当該支点の原位置を維持しつつ仮受け機構の沈下を促進する。当然に油圧ジャッキ荷重も上昇する。全支点で個別にこの一連の動作を監視期間中1日24時間連続で反復することにより、掘削完了時点で既設構造物11の原位置は維持され、この時油圧ジャッキが示す荷重が本支点の真の荷重と認識できる。本プレロード(掘削前載荷)は実施せず、掘削の進捗に伴い既設構造物11が仮受け杭12に載荷されていくので、本発明の方法を一言でポスト・ロードと表現した。
【発明の効果】
【0019】
前記段落[0012]の通り、従来の方法では不静定構造物を変位制御するのは許容値を超える急激な荷重変動のリスクが大きく、且つ変位修正が困難(1支点の修正が他支点の変位を変動させる)だったが、下記の通り、本発明では前者リスクを最小限に抑えられ、後者修正も容易なので、変位制御を採用できる。
(1)そもそも荷重0からスタートする変位制御なので、荷重の許容値まで十分な余裕がある(荷重の急変動があったとしても許容値内)。
(2)従来の方法では全支点で変位修正が必要な状態から制御を開始しなければならなかったが、本発明では、全支点が変位修正の必要がない原位置からの制御開始となり、変動した支点を直ちに修正すれば、他支点への悪影響は最小限に抑えられる。
(3)全支点の油圧ジャッキに個別に電磁比例流量制御弁が搭載された油圧源が配管され、1台の油圧ジャッキの動作が他ジャッキの動作に影響を与えることはなく、既設構造物11の沈下に即応し油圧ジャッキに適量の油が供給され直ちに原位置に復帰できる変位制御に最適なシステムとすることで本発明を実現できる。
【0020】
変位制御といっても段落[0018]の通り、主として1方向の制御であり(沈下対応)、既設構造物11の事前の浮上、変位のバラツキというハンディキャップもないので、本プレロード後に変位制御すると想定した場合に比べてはるかに容易であり、(微小な変位の制御に適した)流量を制御できる電磁比例流量制御弁32・33を搭載した制御基材により制御可能である。
掘削完了時まで本制御を継続し、その時点で油圧ジャッキ13の油圧を表示する荷重計22の荷重が計算値(設計荷重)ではない真の既設構造物11の自重を表している。
工事開始以降、既設構造物11の変位を動かしていないので、極論すればそもそも構造解析も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のアンダーピニング工法の工程順序を示すフロー図である。
図2】従来のアンダーピニング工法の工程順序を示す断面図である。
図3図1に示す従来のアンダーピニング工法の工程順序を示す詳細なフロー図である。
図4図2に示す従来のアンダーピニング工法の工程順序を示す詳細な断面図である。
図5】従来の本プレロードによる地盤バネ開放による既設構造物の浮上の原理を示す説明図である。
図6】本発明による杭直受け方式を例にとったアンダーピニングにおけるポスト・ロード工法の実施例1を示すフロー図である。
図7】本発明によるアンダーピニングにおけるポスト・ロード工法の工程順序を示す断面図である。
図8】本発明によるによるアンダーピニングにおけるポスト・ロード工法の油圧制御回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例1を図6及び図7に基づき説明する。
(A-0):既設構造物11の上部及び側部を掘削する。
(A-1):既設構造物11の下部に導坑14を掘削する。導坑14は、前記既設構造物の下の地盤を掘削し複数形成する。それぞれの導坑は、前記既設構造物11の幅方向(図7の奥行方向)に細長く形成される。
(A-2):仮受け機構としての仮受け杭12を打設する。導坑14から既設構造物11の幅方向(図7の奥行方向)に所定間隔で仮受け杭12を複数支点(以下、5支点とする)に打設する。
なお、仮受け機構は、以下の例では、仮受け杭12とするが、これに限られるものではなく、前述の新設構造物直受け方式における新設構造物躯体、下受けばり方式における仮受け桁、耐圧版方式における既設杭に耐圧版を設置したものなどであってもよい。
【0023】
(A-3):油圧ジャッキ13を設置する。5本の仮受け杭12と既設構造物11との間に油圧ジャッキ13を設置する。
(A-4):先行プレロード(載荷し耐力確認後、荷重除荷)を行う。この手順は、前記複数支点の中の1支点について仮受け杭12上に前記油圧ジャッキ13を載置し、設計荷重を載荷し仮受け杭12の耐力確認を行い、除荷した後、既設構造物11に面接触させておくものである。
本手順を一つの導坑の全支点について繰り返し、同じ事を全導坑で実施する。
【0024】
(A‐5):各導坑14間を連結するように掘削する。
(A‐6):床付け掘削をする。新設構造物15の構築可能な深さまで導坑14を掘削する。
(A‐7):新設構造物15を構築する。新設構造物15に仮受け杭12を貫通して構築する。
(A‐8):本受け工(プレロード工)では、既設構造物11と構築された新設構造物15の間に本受け用油圧ジャッキ16を介在して既設構造物11を載荷する。
(A‐9):新設構造物15が構築されると、新設構造物15を貫通する仮受け杭12を切断する。
(A‐10):導坑14、既設構造物11の上部、側部等の掘削個所を埋め戻して復旧する。
【0025】
前記(A‐5)、(A‐6)、(A‐7)における監視期間中の油圧ジャッキ13の制御について説明する。
図8において、既設構造物11と仮受け杭12との間に設置された油圧ジャッキ13は、シリンダー25の内部に油23によって上下するピストン24が嵌合し、このピストン24と既設構造物11との間に玉軸受け26を介在している。前記全支点の油圧ジャッキ13に個別に、油圧ポンプユニット27がジャッキ油口38を介して連結されている。
【0026】
油圧ポンプユニット27の油圧回路は以下の通り構成されている。
1.油の供給
モーター30の回転に伴いポンプ本体29が回転しタンク34より吸入した油を油圧ジャッキ13に向けて吐出する。吐出された油は、電磁比例流量制御弁32により流量調整された上で逆止弁31を押し上げ油圧ジャッキ13に供給され、ピストン24を押し上げる(既設構造物11の沈下傾向に対応する変位制御)。逆止弁31の動きで油が逆流することはない。
2.油の排出
ポンプ本体29から吐出される油は、ドレーン弁35からタンク34へ排出し、油圧ジャッキ13への供給をストップした上で、ピストン24を下げるための油圧ジャッキ13からの油の排出は、圧抜き弁36を開くことにより行う。ここで排出される油量は、電磁比例流量制御弁33により調整される(既設構造物11の浮上傾向に対応する変位制御)。
3.電気制御
相対変位センサー20、絶対変位センサー21、荷重計22の3種類の計測データは、常時、制御CPU28に伝送・入力されている。制御CPU28は、これらデータを予めインストールされていた制御ソフトにより演算処理の上、ポンプユニット27内の電磁弁32、33、35、36に向け電気信号を出力することにより油圧回路を制御する。(従来の制御方法は、荷重制御主体だったため、電磁比例流量制御弁32、33の搭載までは必要なかったが、本発明では、厳密な変化制御が必要なので、本弁の搭載は必須となる。変位制御について更なる精度向上を求めるなら、本弁に代わりサーボ弁(もしくはサーボモーター)を使用する方法もあるが、これらは高価なため現実使用には適さない。)
4.安全弁37
油圧回路内の油圧が一定限度を超えた場合、油をタンク34内に排出し、油圧を限度内に抑える安全装置である。
【0027】
既設構造物11が沈下した場合には、直ちに絶対変位センサー20で検出され、油圧ジャッキ13に対し油を適量だけ適切なスピードで供給して既設構造物11の当該支点を上昇させる。
原位置まで上昇すると、ドレーン弁35がオンとなり、油圧ジャッキ13への油の供給を停止する。
【0028】
以上の動作は、1台の油圧ジャッキ13とそれに接続される1台の油圧ポンプユニット27について説明したが、油圧ジャッキ13と油圧ポンプユニット27は、全支点にセットされているので、全支点同時に又は個別に前記電磁比例流量制御弁32・33の働きで迅速、確実な原位置維持の変位制御が可能である。
【符号の説明】
【0029】
10…地盤、11…既設構造物、12…仮受け機構としての仮受け杭、13…油圧ジャッキ、14…導坑、15…新設構造物、16…本受け用油圧ジャッキ、20…相対変位センサー、21…絶対変位センサー、22…荷重計、23…油、24…ピストン、25…シリンダー、26…玉軸受け、27…油圧ポンプユニット、28…制御CPU、29…ポンプ本体、30…モーター、31…逆止弁、32…電磁比例流量制御弁(押し側)、33…電磁比例流量制御弁(戻し側)、34…油戻しタンク、35…ドレーン弁、36…圧抜き弁、37…安全弁、38…ジャッキ油口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8