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特許7055392帽子状カバー及び帽子状カバーを備えたヘルメット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】帽子状カバー及び帽子状カバーを備えたヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/04 20210101AFI20220411BHJP
   A42B 1/06 20210101ALI20220411BHJP
   A42B 7/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
A42B1/04 J
A42B1/06
A42B7/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019091334
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020186488
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592244789
【氏名又は名称】株式会社オージーケーカブト
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】上辻 友美
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-023448(JP,A)
【文献】特開2003-147621(JP,A)
【文献】特開2003-082517(JP,A)
【文献】特開2004-011078(JP,A)
【文献】実開昭59-160526(JP,U)
【文献】登録実用新案第3157207(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0043121(US,A1)
【文献】米国特許第01616475(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B1/00-1/248
A42B3/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメット体の外形に沿う形状に形成されると共に前記ヘルメット体に対して外側から被着される帽体と、前記帽体の外周縁から外方に向かって突出すると共に前記帽体に形成された鍔部と、を備えた帽子状カバーであって、
前記鍔部のうち、少なくとも前記帽体の前側及び左右両側に位置する鍔部を、当該鍔部の基端に対して突端が上方に位置するように跳ね上げ状態とし且つ跳ね上げ状態を維持させる跳上手段が設けられていて、
前記跳上手段は、
前記帽体の周囲を周回するように前記鍔部の表面に複数配備されるベルト挿通部と、
前記複数のベルト挿通部に挿通されると共に前記帽体の周囲を周回するように配備されるベルトと、
前記帽体の後部に設けられ且つ、前記鍔部の前部を跳ね上げた時に前記ベルト挿通部より上側の位置となるベルト通しと、
前記鍔部の前部を跳ね上げて前記ベルトを後方へ引っ張る状態にして維持すると共に、前記ベルト通しを通った前記ベルト同士を係合する連結部と、
を有している
ことを特徴とする帽子状カバー。
【請求項2】
前記連結部には、
前記鍔部の垂れ下がりを許容する周回長さで、前記ベルトの両端同士を連結する第1連結部と、
前記鍔部を跳ね上げ可能な周回長さで、前記ベルトの両端同士を連結する第2連結部と、
が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の帽子状カバー。
【請求項3】
前記第1連結部は、前記ベルトの一方側の端部に設けられた第1係合突起と、前記ベルトの他方側の端部に設けられると共に前記第1係合突起と係合可能な被係合部と、を有しており、
前記第2連結部は、前記ベルトの一方側の端部に設けられた第2係合突起と、前記被係
合部と、を有しており、
前記第2係合突起は、前記第1係合突起よりも被係合部に近い側に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の帽子状カバー。
【請求項4】
前記鍔部には、前記鍔部が跳ね上がった状態を維持可能とする姿勢保持ワイヤーが設けられている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の帽子状カバー。
【請求項5】
前記帽体は、水平方向の一方側からもう一方側に向かうに連れて、上下方向の寸法が短くなるくさび状に裁断された布片を複数枚継ぎ合わせて形成されている
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の帽子状カバー。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の帽子状カバーと、前記帽子状カバーが被着されるヘルメット体と、を備えたヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルメットの外側に帽子状カバーを被着させることで、着用したときの外観の見栄えを向上することができる帽子状カバー及びこの帽子状カバーを備えたヘルメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヘルメットに被着して用いる帽子状カバーとしては、特許文献1や特許文献2に示すようなものが知られている。
すなわち、特許文献1には、自転車などの乗車時に用いられるヘルメットの上に被着可能なヘルメットカバーが開示されている。この特許文献1のヘルメットカバーは、シルクハット(トップハット)のような外観を備えるものであり、前後方向に寸法調整可能に構成されることでヘルメットにも使用者の頭部にもフィット可能とされている。
【0003】
また、特許文献2には、麦わら帽子のように防暑性や防眩性に優れる鍔付き帽子を、ヘルメットの外面に着脱自在に固着してなる防暑用ヘルメットが開示されている。この特許文献2の防暑用ヘルメットは、酷暑地または夏季において屋外で用いても防暑性および/または防眩性を実用に耐え得るほど向上させることができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-219901号公報
【文献】特開2006-249626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1や特許文献2の帽子状カバーは、いずれも帽体の周囲に鍔部を備えたものであり、自転車などに乗用している場合に、ヘルメットに対して外側から被着されるものとされている。
ここで、このような帽子に設けられる鍔部は、帽体の周縁から外方に向かって庇状に張り出されただけの構造であり、風に煽られたり振動などを加えられたりすると、鍔が垂れ下がって使用者の視界を遮る場合がある(図6参照)。
【0006】
ところが、自転車用や自動二輪用のヘルメットには、製品安全協会が定めた安全基準に適合していることを示すSG規格などがあり、これらの規格を満足するかどうかの判断基準の一つに、「左右両側から前方にかけての視野の確保」がある。
つまり、鍔が風や振動で垂れ下がって前方の視野が遮られる可能性がある特許文献1や特許文献2の帽子は、上述したSG規格に適合できない可能性がある。また、SG規格がない場合には、これらのヘルメットの売れ行きが悪くなってしまう。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、風や振動などを受けても鍔部が垂れ下がることがなく、側方から前方にかけての視野を確保して、自転車用や自動二輪用のヘルメットの工業規格を満足することができる帽子状カバー及びこの帽子状カバーを備えたヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の帽子状カバーは以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の帽子状カバーは、ヘルメット体の外形に沿う形状に形成されると共に前記ヘルメット体に対して外側から被着される帽体と、前記帽体の外周縁から外方に向かって突出すると共に前記帽体に形成された鍔部と、を備えた帽子状カバーであって、前記鍔部のうち、少なくとも前記帽体の前側及び左右両側に位置する鍔部を、当該鍔部の基端に対して突端が上方に位置するように跳ね上げ状態とし且つ跳ね上げ状態を維持させる跳上手段が設けられていて、前記跳上手段は、前記帽体の周囲を周回するように前記鍔部の表面に複数配備されるベルト挿通部と、前記複数のベルト挿通部に挿通されると共に前記帽体の周囲を周回するように配備されるベルトと、前記帽体の後部に設けられ且つ、前記鍔部の前部を跳ね上げた時に前記ベルト挿通部より上側の位置となるベルト通しと、前記鍔部の前部を跳ね上げて前記ベルトを後方へ引っ張る状態にして維持すると共に、前記ベルト通しを通った前記ベルト同士を係合する連結部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
なお、好ましくは、前記連結部には、前記鍔部の垂れ下がりを許容する周回長さで、前記ベルトの両端同士を連結する第1連結部と、前記鍔部を跳ね上げ可能な周回長さで、前記ベルトの両端同士を連結する第2連結部と、が設けられているとよい。
【0010】
なお、好ましくは、前記第1連結部は、前記ベルトの一方側の端部に設けられた第1係合突起と、前記ベルトの方側の端部に設けられると共に前記第1係合突起と係合可能な
被係合部と、を有しており、前記第2連結部は、前記ベルトの一方側の端部に設けられた第2係合突起と、前記被係合部と、を有しており、前記第2係合突起は、前記第1係合突起よりも被係合部に近い側に設けられているとよい。
【0011】
なお、好ましくは、前記鍔部には、前記鍔部が跳ね上がった状態を維持可能とする姿勢保持ワイヤーが設けられているとよい。
なお、好ましくは、前記帽体は、水平方向の一方側からもう一方側に向かうに連れて、上下方向の寸法が短くなるくさび状に裁断された布片を複数枚継ぎ合わせて形成されているとよい。
【0012】
また、本発明のヘルメットは、上述した帽子状カバーと、前記帽子状カバーが被着されるヘルメット体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の帽子状カバー及びこの帽子状カバーを備えたヘルメットによれば、風や振動などを受けても鍔部が垂れ下がることがなく、側方から前方にかけての視野を確保して、自転車用や自動二輪用のヘルメットの工業規格を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態のヘルメットを着用して自転車に乗用した場合の使用態様を示した図である。
図2】本実施形態のヘルメットの分解図である。
図3】鍔部が跳ね上げられた本実施形態の帽子状カバーを前方から見た図である。
図4】鍔部が跳ね上げられた本実施形態の帽子状カバーを側方から見た図である。
図5】帽体と鍔部との位置関係を跳ね上げ前後で比較して示した図である。
図6】鍔部が垂れ下がった本実施形態の帽子状カバーを斜め前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の帽子状カバー1及びこの帽子状カバー1を備えたヘルメット2の実施形態を図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本実施形態の帽子状カバー1及びこの帽子状カバー1を有するヘルメット2を着用した使用者Uを模式的に示したものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のヘルメット2は、自転車や自動二輪車などの車両に乗用する使用者Uが、自らの頭部に着用することで、事故などを起こした場合に重大な損傷を受けやすい頭部を保護するものとなっている。なお、以降の実施形態では、図1に示すような自転車Bに乗車する使用者Uが使用するヘルメット2(自転車用ヘルメット)を例に上げて、本発明の帽子状カバー1及びヘルメット2を説明するが、本発明のヘルメット2は自転車以外の車両、例えば自動二輪車、自動車、カートなどに乗車する際や、スポーツなどで用いるものであっても良い。具体例を挙げれば、本発明のヘルメット2は、スノーボード、ローラーボードなどのボード類、ラフティングなどのボートやカヌーに乗る場合に用いるものであっても良い。また、本発明のヘルメット2は、ロッククライミング、ボルダリング、登山などに用いるものであっても良い。
【0017】
図2に示すように、本実施形態のヘルメット2は、使用者Uの頭部を保護するヘルメット体3と、このヘルメット体3の外側に被着される帽子状カバー1と、の2つの部材を備えている。以降では、帽子状カバー1を説明する前に、まずヘルメット体3を簡単に説明する。
上述したヘルメット体3は、一般にサイクリングショップなどで「自転車用ヘルメット」として販売等されるものと同等のものである。このヘルメット体3は、上方に向かって半球状に盛り上がった形状に形成されており、内側の上方に向かって凹んだ部分に使用者Uの頭部を差し入れることで使用者Uの頭部を被覆できるようになっている。また、ヘルメット体3は、異なる合成樹脂材料で内外2層に組み合わせて形成されており、本実施形態では発泡スチロール製の内層3aと、ポリカーボネート製の外層3b(外殻)との2重構造を採用している。
【0018】
ヘルメット体3の上部には、上述した内層3aと外層3bとを内外に貫通する通気孔4が複数形成されており、発汗などによって発生した水分や熱をヘルメット体3の内側から外側に逃がせるようになっている。また、ヘルメット体3の下側には、使用者Uのあご下を通って左右に伸びるあご紐5が設けられている。このあご紐5は、ヘルメット体3の左側に連結された第1のあご紐5aと、ヘルメット体3の右側に連結された第2のあご紐5bと、第1のあご紐5aと第2のあご紐5bとを着脱自在に連結する連結部材5cと、を有している。つまり、上述したあご紐5を備えたヘルメット体3では、連結部材5cを用いて第1のあご紐5aと第2のあご紐5bとを連結すると、左右のあご紐5a、5b同士が使用者Uのあご下を通って結ばれ、使用者Uの頭部にヘルメット2を外れないように装着することが可能となる。
【0019】
次に、上述したヘルメット体3に取り付けられる帽子状カバー1について説明する。
図1に示すように、本実施形態の帽子状カバー1は、上述したヘルメット2の外側に被着されるカバー部材であり、ヘルメット2を着用していても外観上はあたかも帽子を着用しているような外観を付与可能なものとなっている。
このような帽子状カバー1を設けるのは、次のような理由による。
【0020】
つまり、使用者U、特に女性の中には、自転車Bに乗る際にヘルメット体を着用することに抵抗感を感じる人がいる。このような使用者Uは、着用経験が少ないせいもあって、ヘルメット体を着用した外観を仰々しいと感じたり、不格好と感じたりすることが多い。そのため、ヘルメット体を抵抗なく着用してもらうためには、ヘルメット体を着用した際の外観を異なるものに変更するのが好ましい。そこで、本発明のヘルメット2では、上述した帽子状カバー1を設けることで、外観上はあたかも帽子を着用しているような外観を付与し、抵抗感を感じる使用者Uでもヘルメット体3を抵抗なく着用できるようにしている。言い換えれば、本発明のヘルメット2は、ヘルメット2を着用したときの外観(見栄え)を向上可能なものとなっている。
【0021】
具体的には、図3図5に示すように、本実施形態の帽子状カバー1は、頭部の形状に沿うように半球状に形成された帽体の周縁に、鍔が全周に亘って設けられた婦人用の帽子となっている。この帽子状カバー1は、ヘルメット体3の外形に沿う形状に形成されると共にヘルメット2に対して外側から被着される帽体6と、帽体6の外周縁から外方に向かって突出すると共に帽体6に形成された鍔部7と、を備えている。また、帽子状カバー1は、鍔部7のうち、少なくとも帽体6の前側及び左右両側に位置する鍔部7を、この鍔部7の基端に対して突端が上方に位置するように跳ね上げ状態とし且つ跳ね上げ状態を維持させる跳上手段8を有している。そして、本実施形態の帽子状カバー1は、この跳上手段8を有することを特徴としている。
【0022】
以降では、本実施形態の帽子状カバー1を構成する帽体6、鍔部7、及び跳上手段8について説明する。
本実施形態の帽子状カバー1に設けられる帽体6は、使用者Uの頭部に沿うように上方に向かって膨出するように盛り上がった略半球状の曲面で形成されている。
このように帽体6を略半球状の曲面で構成するのは、以下のような理由による。
【0023】
つまり、一般的な帽子では、ベースボールキャップなどの帽子を除けば、帽体6を略半球状の曲面で形成することは少ない。これは、帽体6を略半球状にするとデザイン性が損なわれることが多いからである。しかし、本実施形態の帽子状カバー1は、上述したヘルメット体3に被着されるものであるため、ヘルメット体3の表面との接着面をできる限り大きくしたいとの考えから、このような略半球状の曲面で帽体6を構成している。
【0024】
なお、上述したように略半球状の曲面で帽体6を構成すると、デザイン性が下がってしまうため、本実施形態の帽体6では帽体6の縫製を工夫して、デザイン性を落とさないようにしている。
具体的には、本実施形態の帽体6は、複数枚の布片6aを組み合わせることで、半球状に形成されている。つまり、これら複数枚の布片6aとは、水平方向の一方側からもう一方側に向かうに連れて、上下方向の寸法が短くなるくさび状(鎌刃状)に裁断されたものである。このようなくさび状の布片6aを下方から上方に向かって左右方向で向きを違えながら複数枚継ぎ合わせることで、帽体6は略半球状に形成されている。このような複数枚の布片6aを組み合わせた帽体6であれば、帽体6を左右に横切るように縫い目が複数条に亘って走り、これらの縫い目がアクセントとなって帽体6のデザイン性を高めるため、帽体6を半球状に形成していてもデザイン性が落ちることはない。
【0025】
なお、本実施形態の帽体6は、複数枚のくさび状の布片6aを組み合わせてデザイン性を高めているが、本発明の帽子状カバー1を構成する帽体6は異なる布片6aの組み合わせ方でデザイン性を高めたものであってもよいし、不織布のように1枚の布地で形成されたものであっても良い。
また、上述した帽体6の上部には、車両のヘッドライトなどの光を後方に向かって反射することで、使用車の位置を車両の運転者などに認知させる再帰反射を用いた反射部9が設けられている。
【0026】
さらに、上述した帽体6の下縁には、帽体6の内側に向かって上方に折り返された折返部10が形成されている。このような折返部10を帽体6の下縁に設ければ、ヘルメット体3の下縁が内側に巻き込まれるように折返部10を帽体6の内側(ヘルメット体3の内側)に向かって折り返すことができ、帽体6をヘルメット体3により強固に被着させることが可能となる。
【0027】
鍔部7は、上述した帽体6と同じ布地を用いて、帽体6の周囲に形成された部材である。本実施形態の鍔部7は帽体6の周縁の全周に亘って形成されているため、略円環状に形成されるものとなっている。しかし、本発明の帽子状カバー1に設けられる鍔部7は帽体6の周縁の一部のみに形成されていても良く、周縁の一部のみの場合は例えば略U字状や三日月状などに形成されていても良い。
【0028】
具体的には、本実施形態の鍔部7は、帽体6の下端縁から外方に向かって庇状に張り出すように、帽体6の全周に亘って形成されている。鍔部7の後側には、帽体6の反射部9と同様に再帰反射を用いた反射片11が縫い込まれており、夜間における後方からの視認性を向上させられるようになっている。
具体的には、本実施形態の鍔部7は、2枚の布片6aを重合した状態で縫い合わせて形成されており、重合した布片6aの間には、鍔部7を跳ね上がった状態(鍔部7の外縁側が内縁側に対して上方に位置するように傾斜した状態)に維持可能とする姿勢保持ワイヤー12が設けられている。
【0029】
つまり、この姿勢保持ワイヤー12は、使用者Uが手で曲げただけで容易に折り曲がる程度の強度となるような材質や太さで形成されている。本実施形態の場合であれば、手で折り曲げられる程度の硬度を備えたアルミ、鉄、銅などの金属線材を用いて、1mm~3mm程度の太さに形成されている。このような材料や太さの姿勢保持ワイヤー12を用いれば、使用者Uが自らの手で任意の形状に折り曲げるだけでなく、折り曲げることで鍔部7に跳ね上げ状の折り癖を付けることも可能となり、鍔部7を跳ね上がった状態を変形させるだけでなく維持することも可能となる。
【0030】
さらに、鍔部7の表面には、帽体6の周囲を環状に周回する軌道(円軌道)に沿ってベルト14を案内できるようにベルト挿通部13が複数配備されている。このベルト挿通部13は、鍔部7に形成されたスリット状の切り込みであり、鍔部7を上下に貫通するように形成されている。また、ベルト挿通部13は、ベルト14を挿通可能な長さの切り込み長さを備えている。そのため、ベルト挿通部13では、例えば鍔部7の上側にあるベルト14を鍔部7の下側に案内したり、鍔部7の下側にあるベルト14を鍔部7の上側に案内したりすることができる。つまり、上述した鍔部7では、複数設けられたベルト挿通部13を順番に繋ぎ合わせるようにベルト14を案内することができるので、円環状に形成された鍔部7の表面に沿って、帽体6の周囲を周回するようにベルト挿通部13を並べれば、帽体6の周囲を周回するようにベルト14を導くことが可能となる。
【0031】
図例の本実施形態の帽子状カバー1の場合であれば、上述したベルト挿通部13は、帽体6の周囲を取り囲むように、帽体6の左側の側面から右側の側面まで、ほぼ等しい間隔をあけて8ヶ所形成されている。それゆえ、本実施形態の帽子状カバー1では、隣り合ったベルト挿通部13の間を結ぶようにベルト14を通すと、鍔部7に対してベルト14を刺し縫いされたような状態で取り付けることができる。
【0032】
跳上手段8は、鍔部7の基端(鍔部7の内周側の端部)に対して突端(鍔部7の外周側の端部)が上方に位置するように鍔部7を跳ね上げ状態とし、且つ、この鍔部7の跳ね上げ状態を維持させるものである。具体的には、本実施形態の跳上手段8は、上述したベルト挿通部13と、複数のベルト挿通部13に挿通されると共に帽体6の周囲を周回するように配備されるベルト14と、ベルト14の両端同士を連結する連結部15と、を有している。
【0033】
上述したベルト14は、細長い帯状の部材であり、帽体6や鍔部7と同様に合成繊維などの布で形成されている。なお、ベルト14は、帽体6や鍔部7と同じ布地で形成されていてもよいが、デザイン性を高められるように、色、模様、質感が異なる布地で形成されているとよい。また、ベルト14として、伸縮性を有するゴム製のベルト14、あるいはゴムが縫い込まれたベルト14などを用いても良い。
【0034】
ベルト挿通部13は、上述したように鍔部7に形成された切り込みであり、ベルト14を上下に貫通状に案内可能となっている。これらのベルト挿通部13は、帽体6の左側部から前部を通って右側部に至る範囲に、50mm~80mm程度の間隔をあけて8ヶ所設けられている。
帽体6の後部には、ベルト通し16が左右に距離を開けて2つ設けられている。このベルト通し16は、上述したベルト挿通部13とは異なる部材であり、鍔部7ではなく帽体6に取り付けられている。そして、上述したベルト14は、左側のベルト通し16と、右側のベルト通し16との間で、左右の端部が連結部15により連結される構成となっている。
【0035】
連結部15は、ベルト14における一方側の端部ともう一方側の端部とを連結する(ベルト14の左端部と右端部とを連結する)ものである。本実施形態の帽子状カバー1の場合、連結部15として、ベルト14を蝶結び状に折り曲げたものが採用されており、蝶結び状に折り曲げられた部分に取り付けられたスナップボタン(ホックボタン)を用いてベルト14の端部同士を連結するものが採用されている。なお、本発明の連結部15には、スナップボタンに代えてマジックテープ(登録商標)(面ファスナー)、フックボタン、バックルなどを用いても良い。
【0036】
具体的には、連結部15は、ベルト14の両端同士を連結した場合、連結時の長さに差がある第1連結部15aと第2連結部15bとを有している。第1連結部15aは、鍔部7の垂れ下がりを許容する周回長さで、ベルト14の両端同士を連結する部分である。また、第2連結部15bは、鍔部7を跳ね上げ可能な周回長さで、ベルト14の両端同士を連結する部分であり、第1連結部15aの周回長さより短い長さでベルト14の両端同士を連結する部分である。
【0037】
具体的には、スナップボタン(ホックボタン)を用いた本実施形態の連結部15は、ベルト14の一方側の端部に設けられた係止部17(スナップボタンにおいて一般にゲンコと呼ばれる部分)と、ベルト14の他方側の端部に設けられた被係止部18(スナップボタンにおいて一般にバネと呼ばれる部分)と、で構成されている。本実施形態の場合、ベルト14の一方側の端部(左端部)に設けられたスナップボタンの第1係止部17aと、ベルト14の他方側の端部(右端部)に設けられたスナップボタンの被係止部18とが、上述した第1連結部15aを構成している。また、ベルト14の一方側(左端側)には、上述した第1係止部17aよりも被係止部18側(右方)に離れた位置にスナップボタンの第2係止部17bが設けられており、上述した第2係止部17bと被係止部18とが、上述した第2連結部15bを構成している。
【0038】
つまり、図5に示すように、ベルト14の一方側に設けられた第1係止部17aを、ベルト14の他方側に設けられた被係止部18に係合させると、鍔部7の垂れ下がりを許容する周回長さで、ベルト14の両端同士が連結される。ところが、第2係止部17bをベルト14の他方側に設けられた被係止部18に係合させると、第2係止部17bの方が第1係止部17aよりも被係止部18に近い位置に設けられているため、ベルト14の両端同士がより短い周回長さで連結される。つまり、第2係止部17bを被係止部18に連結させた場合の周回長さは、第1係止部17aから第2係止部17bまでの長さの分だけ短いものとなり、ベルト14により鍔部7が締め上げられるため、鍔部7の跳ね上げが可能となる。
【0039】
つまり、本実施形態の跳上手段8を用いれば、被係止部18に連結されている第1係止部17aを外して第2係止部17bを被係止部18に付け替えるだけで、ベルト14の周回長さが短くなり、周回長さが短くなった分だけ鍔部7が締め上げられるため、鍔部7の基端(鍔部7の内周側の端部)に対して突端(鍔部7の外周側の端部)が上方に位置するように鍔部7を跳ね上げることが可能となる。
【0040】
上述した跳上手段8を用いた帽子状カバー1では、自転車Bなどに乗車する場合は、第2係止部17bを被係止部18に係合させて、鍔部7を跳ね上げることが可能となるため、垂れ下がる鍔部7で使用者Uの視野が遮られることがなくなる。そのため、側方から前方にかけての視野を確保することができ、自転車用や自動二輪用のヘルメットの工業規格を満足することができる。
【0041】
一方、図6に示すように、第1係止部17aを被係止部18に連結すれば、ベルト14の周回長さが長くなり、鍔部7の基端(鍔部7の内周側の端部)に対して突端(鍔部7の外周側の端部)が下方に位置するように鍔部7を垂れ下げることが可能となる。この綱部7が垂れ下がった状態では、ヘルメット2を被った外観が普通の帽子を被った外観と見分けにくくなるため、例えばヘルメット2を被ったままショッピングなどをすることができ、下車の際にいちいちヘルメット2を外したり(脱いだり)、再乗車の際にヘルメット2を被り直さなくても良くなり、ヘルメット2の利便性を大きく高めることも可能となる。
【0042】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【符号の説明】
【0043】
1 帽子状カバー
2 ヘルメット
3 ヘルメット体
3a ヘルメット体の内層
3b ヘルメット体の外層
4 通気孔
5 あご紐
5a 第1のあご紐
5b 第2のあご紐
5c 連結部材
6 帽体
6a 布片
7 鍔部
8 跳上手段
9 反射部
10 折返部
11 反射片
12 姿勢保持ワイヤー
13 ベルト挿通部
14 ベルト
15 連結部
15a 第1連結部
15b 第2連結部
16 ベルト通し
17 係止部
17a 第1係止部
17b 第2係止部
18 被係止部
U 使用者
B 自転車
図1
図2
図3
図4
図5
図6