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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】サポーター
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20220411BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20220411BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20220411BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20220411BHJP
   A01K 13/00 20060101ALI20220411BHJP
   A61D 3/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
A41D13/05 162
A61F13/06 A
A61F13/00 355S
A41D27/00 B
A01K13/00 Z
A61D3/00 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019127187
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011663
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390003230
【氏名又は名称】株式会社啓愛義肢材料販売所
(74)【代理人】
【識別番号】110002653
【氏名又は名称】特許業務法人アズテックIP
(72)【発明者】
【氏名】亀田 和弘
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-201867(JP,A)
【文献】登録実用新案第3097132(JP,U)
【文献】特開2002-088534(JP,A)
【文献】国際公開第2013/115139(WO,A1)
【文献】特開2003-342812(JP,A)
【文献】特開2004-305540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/05
A61F 13/06
A61F 13/00
A41D 27/00
A01K 13/00
A61D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆体に接触するように巻き付けて使用されるサポーターにおいて、
表裏両面の外面にパイル生地が設けられた本体部と、
前記本体部の裏面の一方の側端部に設けられたサポーター固定用鉤状面ファスナーと、
傾斜パイルと、パッチ固定用鉤状面ファスナーからなる複数のパッチと、を備え、
前記パッチは、前記パッチ固定用鉤状面ファスナーが前記パイル生地に接合可能であり、
一の前記パッチの前記傾斜パイルの起毛部分は、パイル状に加工された繊維が任意に定められた一方向に傾斜しており、
他の一の前記パッチの前記傾斜パイルの起毛部分は、パイル状に加工された繊維が、前記一の前記パッチの前記傾斜パイルの起毛部分とは逆方向に傾斜していることを特徴とするサポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚部に装着するサポーターに関するものであり、詳しくは、脚部に巻き付けた際に、周方向の回旋を防止するとともに、表面の接触部位と本体部との間の摺動を防止する機構を備えたサポーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脚部の大腿部や下腿部に巻き付け、表面と裏面に設けられた接合手段によって、脚部に固定するといった態様のサポーターが開示されている。特許文献1にて開示されているサポーターは、サポーターの本体の側辺から延長する押えベルトや、側辺に縫い付けられた複数の舌片が設けられ、本体の表面に縫い付けられた面ファスナーと、押えベルトおよび舌片の裏面に縫い付けられた面ファスナーとが接合し、下腿部に固定される。特許文献2にて開示されているサポーターは、サポーターの本体の側辺の上部および下部から延長する固定帯や、側辺に設けられた複数の締付帯を備え、本体の設けられた面ファスナーと、固定帯および締付帯に設けられた面ファスナーとが係合し、大腿部、下腿部に限らず前腕部や腰部を締め付けることができる。
【0003】
特許文献1および特許文献2にて開示されているサポーターは、人間の脚部に巻き付け、筋肉の固定や血流の調整によって、疲労を軽減することを主目的としている。巻き付け型のサポーターは、その構造上、外部からの衝撃に対して、サポーターで覆われた部分を保護することができる。また、対外的には、サポーターを装着した部分が他の物体に当たったときに、当てられた側の物体から見ると、当てられた部分の損傷が回避されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-245919号公報
【文献】実用新案登録第3123678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2のいずれのサポーターも、使用する部位は、軸方向において太さが一定ではないことを想定している。しかしながら、いずれのサポーターも、複数の接合部分を備えることによって、巻き付ける部位の形状に合わせて締め付け強度を調節できる。そのため、軸方向へのずれが生じづらく、その効果に関しては、各特許文献でも説明がされている。他方、複数の接合部分が、概ね周方向に締め付けられているため、周方向へのずれに対しては、本体と締め付けられる部位との摩擦抵抗に依拠するのみであり、効果的な対策がなされていない。
【0006】
ところで、馬は繁殖活動の際に、雄馬が雌馬の腹部から腰部のあたりに前脚を載せる乗駕姿勢をとる。このとき、雄馬の前脚が雌馬の腹部から腰部を傷つけることがある。雌馬の受傷を回避するためには、雄馬の前脚に、乗駕姿勢に適したサポーターを使用することが望ましい。従来の巻き付け型のサポーターを、乗駕姿勢の雄馬の前脚に適用しようとすると、サポーターが上下にずれることはなくても、サポーターが回旋したり、サポーターを装着した前脚が雌馬の体表で滑ったりするといった課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、保護対象の部位に巻き付けた際に、周方向の回旋を防止するとともに、表面の接触部位と本体部との間の摺動を防止する機構を備えた、巻き付け型のサポーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は前記した目的を達成せんとするもので、請求項1の手段は、本発明のサポーターは、被覆体に接触するように巻き付けて使用されるサポーターにおいて、表裏両面の外面にパイル生地が設けられた本体部と、前記本体部の裏面の一方の側端部に設けられたサポーター固定用鉤状面ファスナーと、傾斜パイルと、パッチ固定用鉤状面ファスナーからなる複数のパッチと、を備え、前記パッチは、前記パッチ固定用鉤状面ファスナーが前記パイル生地に接合可能であり、一の前記パッチの前記傾斜パイルの起毛部分は、パイル状に加工された繊維が任意に定められた一方向に傾斜しており、他の一の前記パッチの前記傾斜パイルの起毛部分は、パイル状に加工された繊維が、前記一の前記パッチの前記傾斜パイルの起毛部分とは逆方向に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の構成によって、本発明のサポーターの裏面に、傾斜パイルの密集したパイル繊維がサポーターの巻き付けの周方向に傾斜するように取り付けられたパッチが被覆体と接触する際に、傾斜パイルのパイル繊維は、起立しようとする周方向に抵抗力を生じさせ、本体部の回旋が防止される。また、傾斜パイルの密集したパイル繊維がサポーターの巻き付けの軸方向に傾斜するように取り付けられた傾斜パイルのパイル繊維は、起立しようとする軸方向に抵抗力を生じさせるため、本発明のサポーターを装着した部位と、サポーターの表面が接触する部位との間で摺動することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のサポーターを平らに広げた状態の裏面図である。
図2】本発明のサポーターを平らに広げた状態の表面図である。
図3】本発明のサポーターのパッチに関する図である。
図4】本発明のサポーターを馬の前脚に装着した例を示す図である。
図5】本発明のサポーターを人間の脚部に適応させた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明について、実施するための形態を図面にしたがって説明する。
【0012】
図1は、本発明のサポーター1を平らに広げた状態の裏面図である。また、図2は、本発明のサポーター1を平らに広げた状態の表面図である。サポーター1は、裏面の側が被覆体である脚部に接触するように巻き付けて使用される。本体部2は、クロロプレンゴムを下地として、表裏両面の外面にパイル生地を設けている。
【0013】
本体部2の裏面の一方の側端部には、サポーター固定用鉤状面ファスナー3が設けられる。側端部は、サポーター1を被覆体に巻き付けたときに重なり合う部分であり、サポーター固定用鉤状面ファスナー3が本体部2の表面のパイル生地と接合して、サポーター1が被覆体に固定される。ここで、本体部2のパイル生地は輪状に起毛しており、サポーター固定用鉤状面ファスナー3のフック状の先端と容易に接合可能である。
【0014】
本体部2の表裏両面には、ともに複数のパッチ4が装着される。図1においては裏面に4箇所に、図2においては表面に2箇所に、パッチ4を配置している。
【0015】
本実施例のサポーター1は、軸方向の一方が太く、他方が細い被覆体を想定して、重ね縫い部5を設けている。上部に1箇所、下部に3箇所の重ね縫い部5を設けることによって、上部が太く、下部が細い被覆体に巻き付けたときに、密着性を高める設計となっている。また、本実施例のサポーター1は、外縁部をバイアステープ6によって保護している。
【0016】
図3は、パッチ4に関する図であり、図3の上の図は、本体部2とパッチ4との接合を示す側面図であり、図3の下の図は、パッチ4の分解図である。パッチ4は、傾斜パイル4aと、パッチ固定用鉤状面ファスナー4bからなる。傾斜パイル4aとパッチ固定用鉤状面ファスナー4bは、縫い合わされて一体としてパッチ4を形成する。パッチ固定用鉤状面ファスナー4bが本体部2のパイル生地と接合して、パッチ4が本体部2に固定される。
【0017】
図3に示すとおり、傾斜パイル4aの起毛部分は、パイル状に加工された細い繊維が、ブラシ状に密集した状態で、任意に定められた一方向に傾斜している。傾斜パイル4aを被覆体に当接して摺動させると、摺動方向が、パイル繊維が傾斜する方向と一致するときは、抵抗なく摺動し、パイル繊維の傾斜に逆らって摺動するときは、被覆体の体毛および表皮と係合したり、起立しようとするパイル繊維が、密集する周囲のパイル繊維に起立が妨げられたりするために、摺動に対して抵抗を生じる。
【0018】
本発明のサポーター1の裏面に、傾斜パイル4aの密集したパイル繊維が本体部2の巻き付けの周方向に傾斜するように取り付けられたパッチ4が被覆体と接触する際に、傾斜パイル4aのパイル繊維は、起立しようとする周方向に抵抗力を生じさせ、本体部2の回旋が防止される。図1に戻って、例えば、図面左側のパッチ4は、傾斜パイル4aが左側に傾斜するように装着し、図面右側のパッチ4は、傾斜パイル4aが右側に傾斜するように装着すると、サポーター1を被覆体に巻き付けたときに、本体部2は、どちらの周方向に対しても回旋することが防止される。
【0019】
図2のように、表面に装着されたパッチ4は、表面が接触する部位に対する本体部2の摺動を防止することを目的として装着する。表面に装着されたパッチ4の傾斜パイル4aは、密集したパイル繊維が起立しようとする周方向に抵抗力が働くため、表面が接触する部位に対して、本発明のサポーター1を装着した部位が、表面が接触する部位に対して摺動することを防止する。例えば、図2の図面上側のパッチ4は、傾斜パイル4aが上側に傾斜するように装着し、図面下側のパッチ4は、傾斜パイル4aが下側に傾斜するように装着すると、サポーター1を被覆体に巻き付けたときに、どちらの軸方向に対しても、サポーター1を装着した部位が、本体部2の表面が接触する部位に対して摺動することを防止できる。
【0020】
パッチ4を用いて防止する回旋や摺動の方向は、先述の例に限られない。周方向の摺動を防止するように表面にパッチ4を配置することも可能である。どちらの面であっても、装着するパッチ4の枚数は限定されず、1枚であってもよい。パッチ4を裏面に1枚だけ装着して、特定の周方向のみの回旋を防止するという使用の態様も考えられる。傾斜パイル4aの向きを考慮することで、回旋または摺動の防止の所望の効果を得ることができる。傾斜パイル4aの向きは、軸方向や周方向に限定されず、軸方向や周方向に対して角度を付けてもよい。また、パッチ4は、本体部2のパイル生地の部分であれば、どこにでも接合することができ、パッチ4の傾斜パイル4aの部分の面積は、接合する位置を考慮して適宜定めることができる。
【0021】
パッチ4の傾斜パイル4aは、起毛部分が、パイル状に加工された細い繊維が密集した状態で、任意に定められた一方向に傾斜していればよいため、公知の物品を適用することができる。例えば、埃取りや毛玉取りを目的とした衣類用のリントブラシが、傾斜パイル4aとしては好適である。図3は、傾斜パイル4aの起毛部分の密集状態を模式的に拡大図として表しているが、傾斜パイル4aの起毛部分の密集状態は、図3の拡大図に示したものに限定されず、本発明の範囲内で改変して用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明のサポーター1は、人の手によって管理されている馬、例えば競走馬の繁殖活動の際に適用することができる。図4は、種馬となる雄馬の前脚を被覆体としてサポーター1を装着した図である。馬の乗駕姿勢のとき、雄馬の前脚に巻き付けられたサポーター1は、裏面のパッチ4によって本体部2の回旋が防止されるとともに、本体部2の表面が雌馬の体表に接触し、本体部2の表面に装着したパッチ4が雄馬の前脚と雌馬の体表の位置ずれを防止するため、乗駕姿勢が安定するだけでなく、雌馬の体表を保護することができる。
【0023】
また、図5は、本発明のサポーター1を人間の脚部を被覆体として適応させた人用サポーター7の裏面図である。人用サポーター7は側方に2箇所の窪み部8を設けてあり、膝の上下の大腿部と下腿部に同時に巻き付けたときに、締め付けの調整が容易な構造となっている。裏面に配置したパッチ9によって、人用サポーター7の回旋が防止され、安定した装着感を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
1…サポーター。
2…本体部。
3…サポーター固定用鉤状面ファスナー。
4…パッチ。
5…重ね縫い部。
6…バイアステープ。
7…人用サポーター。
8…窪み部。
9…パッチ。

図1
図2
図3
図4
図5