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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】X線発生システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/30 20060101AFI20220411BHJP
   H01J 35/14 20060101ALI20220411BHJP
   H01J 35/08 20060101ALI20220411BHJP
   H05G 1/52 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
H01J35/30
H01J35/14
H01J35/08 C
H01J35/08 B
H05G1/52 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019520651
(86)(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2017076770
(87)【国際公開番号】W WO2018073375
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-08-24
(31)【優先権主張番号】16195035.7
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】317016811
【氏名又は名称】エクシルム・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】トゥオヒマー、トミ
(72)【発明者】
【氏名】タクマン、ペル
(72)【発明者】
【氏名】ソフィエンコ、アンドリー
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-213078(JP,A)
【文献】特開平09-320795(JP,A)
【文献】特表2009-517828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0067578(US,A1)
【文献】特開2014-225401(JP,A)
【文献】特開平07-211274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/30
H01J 35/14
H01J 35/08
H01J 35/24
H05G 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム(1)における方法であって、このシステム(1)は、
電子ビーム(I)を発生させるように動作可能な電子源(200)と、
前記電子ビームと相互作用するとX線放射を発生させるための静止X線ターゲット(100)と、を備え、
前記静止X線ターゲットは、第1のターゲット領域(110)及び第2のターゲット領域(120)を備え、
前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域は、X線放射を発生させるための互いに異なる性能を有しており、
前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域は、互いに相対的な角度に方向付けられた第1の境界(112)と第2の境界(113)とによって分離されており、
前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域の各々は、前記電子ビームの断面全体を受け入れることができる大きさを有し、
前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域は、共通の基板上に配置されており、
前記方法は、
前記第1の境界を越えて前記第2のターゲット領域の中へ第1の方向に前記電子ビームを移動させて、前記電子ビームの断面全体が前記第2のターゲット領域の中に配置されるようにし、次いで、
前記第2のターゲット領域を超えて、前記第2の境界を越えて前記第1のターゲット領域の中へ第2の方向に前記電子ビームを移動させて、前記電子ビームの断面全体が前記第1のターゲット領域の中に配置されるようにし、
前記方法は、さらに、
前記電子ビームが前記第1の境界を越えて移動するとき、前記電子ビームと前記第1のターゲット領域との相互作用、及び前記電子ビームと前記第2のターゲット領域との相互作用を示す量の変化を測定することと、
前記電子ビームが前記第2の境界を越えて移動するとき、前記電子ビームと前記第2のターゲット領域との相互作用、及び前記電子ビームと前記第1のターゲット領域との相互作用を示す量の変化を測定することと、
前記量の測定された変化及び前記電子ビームの前記移動に基づいて、前記電子ビームの前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って、それぞれ前記電子ビームの幅を決定することと、を備える方法。
【請求項2】
前記量は、X線放射の量、二次電子若しくは後方散乱した電子の量、又は前記静止X線ターゲットに吸収された電子の量のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の境界は、前記第2の境界に対して実質的に垂直である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のターゲット領域及び前記第2のターゲット領域において前記電子ビームの焦点を変更することを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記決定された電子ビームの幅に基づいて、前記静止X線ターゲットに供給される出力密度が所定の限界値より下に維持されるようにするための前記電子ビームの強度か、又は前記電子ビームのスポットサイズのうちの少なくとも1つを調整することをさらに備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記決定された電子ビームの幅、又は前記X線放射の所望の波長のうちの少なくとも1つに基づいて、前記静止X線ターゲット上の特定ロケーションに前記電子ビームを向けることをさらに備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の境界、及び/又は第2の境界は、前記静止X線ターゲットの表面段差を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の方向は前記第1の境界に対して実質的に垂直であり、前記第2の方向は前記第2の境界に対して実質的に垂直である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のターゲット領域を前記第2のターゲット領域と分けている第3の境界を越えて第3の方向に前記電子ビームを移動させ、ここで、前記第1の方向、前記第2の方向、及び前記第3の方向は、互いに異なるものであり、
前記電子ビームが前記第3の境界を越えて移動するとき、前記電子ビームと前記第2のターゲット領域との相互作用、及び前記電子ビームと前記第1のターゲット領域との相互作用を示す量の変化を測定し、
前記量の測定された変化及び前記電子ビームの前記移動に基づいて、楕円形状を有する電子ビームスポットの長軸、短軸、及び角度方位を決定する、
ことをさらに備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記電子ビームスポットの前記決定された長軸、短軸、及び角度方位に基づいて、前記電子ビームのスポット形状、又は前記電子ビームのスポット方位のうちの少なくとも1つを調整することをさらに備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
X線放射を発生させるように適応されたシステム(1)であって、
電子ビーム(I)を発生させるように動作可能な電子源(200)と、
第1のターゲット領域(110)及び第2のターゲット領域(120)を備え、前記電子ビームと相互作用するとX線放射を発生させるための静止X線ターゲット(100)であって、前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域は、X線放射を発生させるための互いに異なる性能を有し、互いに相対的な角度に方向付けられた第1の境界(112)と第2の境界(113)とによって分離されており、前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域の各々は、前記電子ビームの断面全体を受け入れることができる大きさを有し、前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域は、共通の基板上に配置されている、静止X線ターゲット(100)と、
前記電子ビームを移動させるための電子光学手段(300)であって、前記第1の境界を越えて前記第2のターゲット領域の中へ第1の方向に前記電子ビームを移動させて、前記電子ビームの断面全体が前記第2のターゲット領域の中に配置されるようにし、その後、前記第2のターゲット領域を超えて、前記第2の境界を越えて前記第1のターゲット領域の中へ第2の方向に前記電子ビームを移動させて、前記電子ビームの断面全体が前記第1のターゲット領域の中に配置されるようにする、電子光学手段(300)と、
相互作用を示す量の変化を測定するように適応されたセンサ(400)であって、前記電子ビームが前記第1の境界を越えて移動するとき、前記電子ビームと前記第1のターゲット領域との相互作用、及び前記電子ビームと前記第2のターゲット領域との相互作用を示す量の変化を測定するとともに、前記電子ビームが前記第2の境界を越えて移動するとき、前記電子ビームと前記第2のターゲット領域との相互作用、及び前記電子ビームと前記第1のターゲット領域との相互作用を示す量の変化を測定する、センサ(400)と、
前記センサ及び前記電子光学手段に動作可能に接続された制御器(700)であって、前記量の前記測定された変化及び前記電子ビームの前記移動に基づいて、前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って、それぞれ前記電子ビームの幅を決定するように適応された制御器(500)と、
を備える、システム。
【請求項12】
X線放射を発生させるように適応されたシステム(1)であって、
電子ビーム(I)を発生させるように動作可能な電子源(200)と、
第1のターゲット領域(110)及び第2のターゲット領域(120)を備え、前記電子ビームと相互作用するとX線放射を発生させるための静止X線ターゲット(100)であって、前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域は、互いに相対的な角度に方向付けられた第1の境界(112)と第2の境界(113)とによって分離されており、前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域の各々は、前記電子ビームの断面全体を受け入れることができる大きさを有し、前記第1のターゲット領域と前記第2のターゲット領域は、共通の基板上に配置されている、静止X線ターゲット(100)と、
前記電子ビームを移動させるための電子光学手段(300)であって、前記第1の境界を越えて前記第2のターゲット領域の中へ第1の方向に前記電子ビームを移動させて、前記電子ビームの断面全体が前記第2のターゲット領域の中に配置されるようにし、その後、前記第2のターゲット領域を超えて、前記第2の境界を越えて前記第1のターゲット領域の中へ第2の方向に前記電子ビームを移動させて、前記電子ビームの断面全体が前記第1のターゲット領域の中に配置されるようにする、電子光学手段(300)と、
相互作用を示す量の変化を測定するように適応されたセンサ(400)であって、前記電子ビームが前記第1の境界を越えて移動するとき、前記電子ビームと前記第1のターゲット領域との相互作用、及び前記電子ビームと前記第2のターゲット領域との相互作用を示す量の変化を測定するとともに、前記電子ビームが前記第2の境界を越えて移動するとき、前記電子ビームと前記第2のターゲット領域との相互作用、及び前記電子ビームと前記第1のターゲット領域との相互作用を示す量の変化を測定する、センサ(400)と、
前記センサ及び前記電子光学手段に動作可能に接続された制御器(500)であって、前記量の前記測定された変化及び前記電子ビームの前記移動に基づいて、前記第1の方向及び前記第2の方向に沿って、それぞれ前記電子ビームの幅を決定するように適応された制御器(500)と、を備え、
前記静止X線ターゲットの前記第1のターゲット領域及び前記第2のターゲット領域は、前記量の少なくとも2パーセントの差異を提供するように配置されている、
システム。
【請求項13】
前記第1のターゲット領域は、前記電子ビームの進行の方向で見て異なる厚さを有する、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記静止X線ターゲットの前記第1のターゲット領域は層の一部を形成し、前記第2のターゲット領域は前記基板の一部を形成し、前記層は前記基板上に配置される、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1のターゲット領域は、前記第2のターゲット領域に少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項16】
前記第1のターゲット領域及び前記第2のターゲット領域は、互いに異なる材料から形成され、前記第2のターゲット領域は、前記第1のターゲット領域と比較して前記電子ビーム及びX線放射に対するより高い透過性か、又は前記第1のターゲット領域の材料の原子番号よりも低い原子番号のうちの少なくとも1つを有する材料を備える、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項17】
前記第1のターゲット領域は、タングステン、レニウム、モリブデン、バナジウム、及びニオビウムを含むリストから選択された材料を備え、前記第2のターゲット領域は、ダイヤモンドのような炭素又はベリリウムを備える、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のターゲット領域及び前記第2のターゲット領域は、少なくとも1つの八角形に合致する形状を形成する複数の境界によって分離されている、請求項11又は12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される発明は、概して、X線放射の発生に関する。特に、固体ターゲットを有する電子衝突X線源、及び電子ビームがターゲットと相互作用するときの電子ビームの幅を決定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
X線放射は、電子ビームを固体陽極ターゲットに衝突させることによって発生され得る。発生したX線放射の質、例えば空間分布及び輝度等が、とりわけ、ターゲット上の相互作用領域における電子ビームのスポットサイズ及び強度によって決定される。スポットサイズは、縮小されたスポットサイズにより解像度の増加が可能となり得る、例えばイメージング用途で特に関心のあるものである。さらに、電子ビームの比較的高い出力密度が、X線源の効率を増加させるために望まれるが、ターゲットの過度の加熱及び最終的には破壊を回避するために制御される必要がある。
【0003】
従来では、有効なX線スポットサイズは、X線投影イメージングセットアップにおいて専用のキャリブレーションチャートを使用することによって決定され得る。
【0004】
そのような技術が、ターゲットと相互作用する電子ビームの特性を決定及び制御するための方法を提供できても、X線放射を発生させるためのシステム及び方法の改善の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上記事項の少なくとも一部に対処するシステム及び方法を提供することである。特定の目的は、電子ビームとX線ターゲットとの相互作用の制御の容易化及び改善を可能にすることである。
【0006】
開示される技術のこの目的及び他の目的は、独立請求項に規定された特徴を有するシステム及び方法によって達成される。有利な実施形態が従属請求項に規定される。
【0007】
したがって第1の態様によれば、静止ターゲットのようなX線ターゲットと、X線ターゲットと相互作用する電子ビームを発生させるように動作可能である電子源とを備えるシステムにおける方法が提供される。本方法によれば、電子ビームは、ターゲット上に向けられ、X線ターゲットの第1の領域と第2の領域を分離するエッジを越えて、継続的又は段階的のいずれかで移動又は走査され、ここにおいて第1の領域及び第2の領域は、電子ビームと相互作用するとX線放射を発生させるための異なる性能を有する。さらに、電子ビームとターゲットとの相互作用、及び特に第1の領域及び第2の領域との相互作用の差を示す量が測定される。量は、例えば、発生したX線放射の量又はターゲットの電子透過性を示し得る。測定された量、及び特に位置又は時間に応じた量の変化又は変動は次いで、電子ビームの横方向の伸張を決定するために使用される。追加的に、電子ビームの走査速度又はステップ長が、横方向の伸張を決定するための入力として使用され得る。
【0008】
第2の態様によれば、X線放射を発生させるように適応されたシステムが提供される。本システムは、第1の領域及び第2の領域を有する、例えば静止ターゲットのようなX線ターゲットと、X線ターゲットと相互作用してX線放射を発生させる電子ビームを発生させるように動作可能な電子源とを備え、ここにおいてターゲットの第1の領域及び第2の領域は、X線放射を発生させるための異なる性能を有する。本システムはさらに、電子ビームを制御するための電子光学手段と、電子ビームとX線ターゲットとの相互作用を示す量を測定するように適応されたセンサとを備える。センサ及び電子光学手段は、電子光学手段がターゲットの第1の領域及び第2の領域にわたって電子ビームを移動させた又は走査したときの、センサから受信された測定された量に基づいて電子ビームの横方向の伸張を決定するように適応された制御器に動作可能に接続される。横方向の伸張は、例えば、測定された量の変動又は時間発展及び/又はターゲット上への電子ビームの走査速度又はステップ長に基づいて決定され得る。
【0009】
第3の態様によれば、第1の領域及び第2の領域を有する、例えば静止ターゲットのようなX線ターゲットと、X線ターゲットと相互作用してX線放射を発生させる電子ビームを発生させるように動作可能な電子源と、電子ビームを制御するための電子光学手段と、電子ビームとX線ターゲットとの相互作用を示す量を測定するように適応されたセンサと、センサ及び電子光学手段に動作可能に接続された制御器とを備える、X線放射を発生させるように適応されたシステムが提供される。電子光学手段は、X線ターゲットの第1の領域及び第2の領域上に電子ビームを向け、第1の領域と第2の領域を分離するエッジを越えて電子ビームスポットを移動させるように適応される。X線ターゲットの第1の領域及び第2の領域は、センサによって測定された量において少なくとも2パーセントの差異を提供するように配置され、それによって制御器が、測定された差異に基づいて電子ビームの横方向の伸張を決定することを可能にする。横方向の伸張は、例えば、測定された量の変化及び電子ビームの移動に基づいて、電子ビームの移動の方向に沿って決定され得る。
【0010】
本発明は、X線発生容量の観点で2つの別個の領域から成るターゲットを使用することによって、その差が、電子ビーム特徴についての情報を抽出するために使用されることができるという認識に基づくものである。ターゲットの第1の領域と第2の領域との間の機能差はまた、電子とターゲット材料との相互作用に影響を及ぼし得る、電子衝突断面、電子散乱性能、又は電子透過性の観点から表現され得る。それゆえX線放射の大部分を発生させるように適応され得る第1の領域の材料は、第2の領域の材料によって吸収又は散乱されるものよりも多い電子ビームのエネルギー及び/又は電子を吸収又は散乱し得る。換言すれば、X線ターゲットの異なる領域は、電子源によって発生された電子ビームと異なるように相互作用し、それによって測定されることができる差異を提供すると言える。この相互作用又は相互作用の差を示す量を測定することによって、第1の領域と第2の領域との間の差異は、どちらの領域と―及び好ましくはどの程度まで―電子ビームが相互作用するかを決定することを可能にする。さらに、2つの領域を画定するエッジ又は境界を越えて電子ビームを走査又は移動させることによって、電子スポットの物理的又は横方向の伸張が決定され得る。異なる方向に電子ビームを走査することによって、電子スポットの対称性が検証され得る。よって、本態様は、X線ターゲットそれ自体が電子スポットの位置及び横方向の伸張(幅など)並びに電子ビーム内の電子の空間分布のうちの少なくとも1つを決定するために使用される方法を提供する。
【0011】
本態様は、電子ビームが、第1の領域の外で衝突するのか、第1の領域の部分的に内部で衝突するのか、第1の領域の完全に内部で衝突するのかを、高精度に決定することを可能にする。電子ビームとターゲットとの相互作用を示す量、及び好ましくは量の差異をモニタリングしながら第1の領域及び/又は第2の領域へと又はそこから電子ビームを偏向又は走査させることによって、電子光学系の設定をターゲットの位置と関連付けることが可能である。異なって置かれて、電子ビームの(又はむしろ電子ビームがターゲットに当たるスポットの)位置は、特定の電子光学系設定の観点から決定され得る。電子ビームはまた、ターゲットの2次元画像を捕捉するために、好ましくはライン走査のセットにおいてターゲットの少なくとも一部分にわたって走査され得る。画像は、スポットサイズの横方向の伸張又はサイズの測定値を取得するために後処理及び分析され得る。これは、例えば、第1の領域及び/又は第2の領域の構成又は構造が既知であるターゲットに対して実行され得る。このような場合、画像は、スポット分布及びサイズを抽出するようにデコンボリューションされ得る。さらに、達成可能な最も鮮明な画像に対応する、達成可能な最大値を見つけるために、多くの焦点設定に対して画像における総分散が計算され得る。
【0012】
ターゲットの第1の領域は、ターゲット内の熱の伝導を促進する構成で第2の領域と組み合わされ得る。好ましくは、第1の領域は、熱が第1の領域から第2の領域に放散し得るように、第2の領域と熱接触して配置される。よって第2の領域は、衝突電子との相互作用により熱くなり得る第1の領域を冷ますように構成され得る。第1の領域は、例えば、第2の領域の材料の基材に埋め込まれ得るか、又は第2の領域上に配置された層に設けられ得る。第1の領域のための有利な材料は、タングステン、レニウム、モリブデン、バナジウム、ニオビウム、及びこれらの合金を含み得る。概して、好適な材料は、12以上、又はさらには25より上の原子番号を有し得る。第2の領域のための有利な材料は、例えば、ベリリウム、ダイヤモンドのような炭素、及び第1の領域の材料と比較して比較的に低原子番号の他の材料を含み得る。それぞれの領域によって発生されたX線スペクトルの妨害のリスクを低減するために、第1の領域の材料と比較してより低い原子番号の材料を使用することが望ましいこともある。好ましくは、第2の領域の材料は、15より下の原子番号を有し得る。代替的又は追加的に、第2の領域のための材料は、熱を効率的に放散するために比較的高い熱伝導率を有し得る。別の代替物は、電子ビームとターゲットとの相互作用によって発生された熱を効率的に放散するように選択された特性を有する共通基板上に第1の領域及び第2の領域を設けるものであり得る。
【0013】
電子源は、電圧源によって電力供給される陰極を備え得、例えば熱電子、熱電界、又は冷電界荷電粒子源を含む。電子ビームは加速開口部に向かって加速され得、そのポイントで電子ビームは、相互作用領域におけるターゲット上に電子ビームを向けるように較正及び動作され得る電子光学系に入射し得る。電子光学系は、制御器によって供給される信号によって制御可能である、整列手段、レンズ、及び偏向手段の配置を備え得る。整列手段、偏向手段、及びレンズは、静電、磁気、及び/又は電磁構成要素を備え得る。
【0014】
本明細書で使用されるとき、ターゲット又はX線ターゲットという用語は、衝突電子と相互作用するとX線放射を放出することが可能な任意の材料又は構成要素を指し得る。特に、ターゲットは、X線放射を発生させる性能の観点で少なくとも2つの別個の領域を有する、例えばシート、ホイル、又は基板のような、固体ターゲットであり得る。ターゲットは、パターニング又はエッチングされた材料から形成され得、ここにおいて、パターン又は幾何学的構造を画定する、除去された部分は、第2の領域を形成し得る。ターゲットは、静止ターゲット、又は回転ターゲットのような移動ターゲットであり得る。回転ターゲットの場合、ターゲットは、異なる領域間を走査される電子ビームの幅の決定中、一時的に静止していてもよい。代替的又は追加的に、ターゲットは、電子ビーム幅の横方向の伸張の決定中に移動していてもよい。そのような場合、電子ビームスポットは、システムの光軸に対して静止していてもよい、又はターゲットの移動によって電子源の走査運動が引き起こされるように移動してもよい。さらなる代替物では、走査運動は、電子ビームの偏向及びターゲットの移動によって提供され得る。よって、走査とは、電子ビームを偏向させること、ターゲットを移動させること、又はその両方によって、ターゲットの表面にわたって電子ビームを横断させる動作と理解されるべきである。
【0015】
いくつかの例によれば、両方の領域、すなわち第1の領域及び第2の領域は、X線発生ターゲットとしての使用に好適であり得る。換言すれば、両方の領域は、ターゲット構造の一部を形成し、X線分析又はX線放射を利用する他の用途のために使用されることができるX線放射を発生させることが可能であるとみなされ得る。この場合、第1/第2の領域とターゲット保持器との区別が行われ得、ここにおいて、後者は主に、X線放射ではなくむしろ機械的支持を提供するためのアセンブリを表し得る。そのような保持器は、ある特定の状況下では、制限された量のX線光子を発生させることができる材料を備え得るが、X線放射を発生させるのに好適な構造を表すとはみなされないであろう。よって、第1/第2の領域は、機械的支持を提供するための保持器ではなくむしろ、X線放射を発生させることが可能なターゲットと解釈され得る。
【0016】
「相互作用を示す量」という用語は、直接的又は間接的のいずれかで測定又は決定することが可能であり、電子ビームとターゲットとの相互作用を決定又は特徴付けるために使用されることができる情報を備える、任意の量と理解されるべきである。そのような量の例は、発生したX線放射の量、ターゲットを通過する又はターゲットによって吸収される電子の数、二次電子又はターゲットから後方散乱される電子の数、ターゲットにおいて発生した熱、例えば陰極ルミネセンスによりターゲットから放出された光、及びターゲットの帯電を含み得る。量はまた、発生したX線放射の輝度も指し得る。輝度は、例えば、特定出力での平方ミリメートル当たりのステラジアン当たりの光子として測定され得るか、又はW当たりで正規化され得る。代替的又は追加的に、量は、X線放射のバンド幅、すなわち波長スペクトルにわたるフラックス分布に関連し得る。
【0017】
「横方向の伸張」という用語は、電子ビームの断面の形状、幅、若しくは面積、ビームスポット、又はターゲット上への電子ビームの2次元投影を意味し得る。本願のコンテキストでは、該用語は、ビームスポットの幅、空間分布、又は形状と交換可能に使用されてもよい。さらに、ビームスポットの横方向の伸張が複数の焦点設定について決定される場合、電子ビームの3次元空間分布が推定され得る。
【0018】
さらに、電子ビームとターゲットとの相互作用とは、ここで、ターゲットの物質及び電子ビームの電子が互いに影響し合う特定の方法を意味する。特に、X線放射の発生を意味する。
【0019】
一実施形態によれば、電子ビームの焦点は、空間伸張を決定するために第1の領域及び第2の領域において変更され得る。ビームスポットは、例えば、ビームスポットによって覆われるのに十分小さい第1の領域上に向けられ得る。焦点調整パラメータが異なる設定間で走査又は変更されたときの測定された量を調べることによって、ビームスポットの空間伸張は、特定の焦点設定に対して計算され得る。特に、ビームスポットのサイズが第1の領域のサイズより下に減少される場合、すなわちビームスポットが第1の領域をそれ以上覆わないように縮小される場合、測定された量に著しい変化があり得る。第1の領域のサイズ又は空間伸張が既知である場合、これは、ビームスポットの空間伸張を決定するために使用されることができる。
【0020】
電子ビームとターゲットとの相互作用を示す量は、感知手段によって測定され得る。
【0021】
一実施形態によれば、感知手段は、ターゲットによって吸収された電流を測定するための電流計を備え得る。この実施形態を用いた利点は、吸収された電流が、ターゲットによって吸収された熱出力の測定値を示し得るということである。よってターゲットが熱的に過負荷状態とならないことを確実にするために、制御回路が実装され得る。
【0022】
一実施形態によれば、ターゲットからそれて散乱した電子、後方散乱として知られる過程が測定され得る。これは、X線の軌道を妨げないように、例えばターゲットの前(すなわち、電子ビームに対して上流側)に配置され得る、後方散乱検出器によって達成され得る。後方散乱した電子は、比較的大きい立体角(半球)にわたって分布し得るのに対して、任意のセンサは、この立体角の何らかの有限部分からの電子を収集し得る。
【0023】
一実施形態によれば、発生したX線の量が測定され得る。この実施形態を用いた利点は、電子ビームスポットのサイズではなくむしろX線スポットのサイズが決定され得るということである。さらに、第1の領域と第2の領域との間で得られることができる差異は、放出されたX線放射を観測するときにより高くなると期待されることができ、(ターゲット又は後方散乱したものいずれかにおける)電流を測定するときの数パーセントのオーダの差異と比較して、5から10のオーダの係数が観測されている。ターゲットにおいて発生した電流ではなくX線放射を測定することにより、ターゲットが接地され、またX線検出器又はセンサがハウジングの外部に配置されることが可能となる。
【0024】
一実施形態によれば、電子の強度は、ターゲットに供給される出力密度が所定の限界値より下に維持されるように、決定された横方向の伸張に基づいて調整され得る。所定の限界値又はしきい値は、ターゲット材料の溶融及びデブリの発生のような損傷につながることもある、ターゲットの局部過熱のリスクを低減するように選択され得る。局部過熱は、例えばターゲットに衝突する電子のスポットサイズ及び総電流、すなわち換言すれば、ビームスポットに露出されるターゲットの面積単位当たりの衝突電子の観点では出力密度によって影響され得る。それゆえ出力密度は、電子ビームのエネルギー又は強度を変更することによって、及び/又はターゲット上のスポットサイズを変更することによって調整され得る。
【0025】
電子ビームによって供給される総出力は、電子源から測定又は与えられ、決定されたスポットサイズ又は幅と組み合わされ得、それにより、電子スポット内の出力密度及び/又はターゲットの体積当たりの出力密度(例えばW/m3として測定される)を計算する。出力密度が一旦推定されると、結果は、(例えばルックアップテーブルに記憶された)所定のしきい値と比較され、フィードバックループで制御回路要素に供給し戻されることができる。1つの例では、電子光学手段は、電子ビームの幅を変更してもよく、別の例では、電子ビームのエネルギー又は出力が調整されてもよい。(例えばターゲット材料の昇華又は溶融によって引き起こされる)熱的に誘発される損傷のリスクを低減するために、ターゲット材料におけるピーク温度、ひいては蒸気圧を決定するために出力分布が使用され得る。
【0026】
第1及び第2の領域を含むX線ターゲットは、例えば、材料のタイプ、熱容量、熱伝導率、X線発生性能、又は、(電子ビームの伝播の方向から見た)ターゲット材料の厚さ、若しくは、例えばターゲットの表面上又は表面に存在し得るエッジ、溝、開口部、及び突出部のような構造特性の観点から互いに異なるロケーションを備え得る。よって電子ビームとターゲットとの相互作用は、ターゲット上のビームスポットの特定のロケーションに依存し得る。
【0027】
特定の出力密度のビームスポットを、より高い熱容量(又はより高い熱伝導率)を有するロケーションに移動させることは、例えば、相互作用点における温度の低下をもたらし得るのに対して、該ビームスポットを、熱管理能力がより乏しいロケーションに移動させることは、相互作用点におけるより高い温度につながり得る。電子ビームの決定された横方向の伸張が電子ビームの出力密度を示し得るので、この情報は、例えば相互作用点をある特定のしきい値温度より下に維持するために、電子ビームをターゲットの特定のロケーションに向けるときの入力パラメータとして使用され得る。
【0028】
さらに、ターゲット上の異なるロケーションは、特定の波長のX線放射の発生に関連付けられ得る。したがって一実施形態によれば、電子ビームは、そのような特定のロケーションに向けられ得、それにより所望のエネルギースペクトルを備えるX線放射を発生させる。
【0029】
一実施形態によれば、ターゲットの第1の領域と第2の領域はエッジによって分離され得る。エッジを越えて、好ましくはエッジに対して実質的に垂直の方向に電子ビームを走査することによって、電子ビームとターゲットとの相互作用の差が、走査中に測定され、電子ビーム(又はビームスポット)の横方向の伸張を決定するために使用され得る。例えば幅のような横方向の伸張の決定は、電子ビームの走査速度又はステップ長(すなわち連続する測定間の距離)が知られていることを必要とし得る。これは、例えば、ターゲット及び電子光学系の相対位置並びに電子光学系の動作パラメータに基づいて、又は既知の寸法を有する基準点又は構造特徴を越えて電子ビームを走査することによって、提供又は計算され得る。代替的に、基準点は、幅(又は断面形状)を決定するために使用され得る。
【0030】
エッジという用語は、例えば、ターゲットの2つの表面領域がそれに沿って交わる線又は境界、若しくはターゲットの第1の領域と第2の領域との間の境界によって画定される表面段差と理解されるべきである。該用語はまた、第1の領域を形成する第1の材料から、第2の領域を形成する第2の材料への移行部も指し得る。この移行部は、いくつかの例では実質的にシームレス又は平滑であり得る。
【0031】
ターゲットが、ターゲットの表面上に異なる方向に沿って延在する少なくとも2つのエッジを備え得ることが理解されよう。代替的又は追加的に、単一のエッジが、1つより多くの方向に沿って、すなわち湾曲又は屈曲した経路に沿って延在し得る。エッジ(単数又は複数)を越えて異なる方向に電子ビームを走査することによって、電子ビームの幅は、それらの方向で決定され得る。
【0032】
一実施形態によれば、第1の領域は、電子ビームの伝播の方向から見て異なる厚さを有し得る。厚さは、異なる電子エネルギーに応じて異なり得、それにより、電子ビームの特定の電子エネルギーに適応される厚さを有するロケーションに、ビームスポットが向けられることを可能にする。(例えば、衝突電子の侵入深さと比較して)比較的薄いターゲット材料が、ターゲット材料における電子の散乱を低減し、ひいてはX線スポットサイズを縮小するために使用され得る。これに対して、出力X線放射の強度を増加させるために比較的厚いターゲット材料が使用され得、これは、より厚いターゲット材料が衝突電子との相互作用を増加させる傾向にあるからである。1つの例では、ターゲットは、システムの電子光軸に近い最小の厚さを有し得る。これは、電子光軸に対して最適な焦点性能を有するシステムにおいて特に有利である。
【0033】
衝突電子の電子侵入深さに関連して比較的薄いターゲット及び自己吸収が制限されたX線の平均自由行程が使用される場合、透過構成、すなわち発生したX線が、電子ビームが衝突する側面とは反対のターゲットの側面から発する構成が使用されることができる。透過ターゲットとも称されてもよい、そのような構成は、X線源と照射されることになる試料との間の距離の短縮を可能にするという点で有利である。
【0034】
代替的に、電子源は、発生したX線が、電子ビームが衝突するのと同じターゲットの側面から発する反射モードで動作される。反射モードでは、電子侵入深さに関連して比較的厚いターゲットが使用され得る。ターゲットの厚さを増加させることは、熱負荷に耐えるというターゲットの性能を有利に改善し、ターゲットの損傷を誘発する加熱のリスクを低減する。
【0035】
さらなるオプションは、システムの利用し易さ及び性能を改善するために、衝突する電子ビームの方向に対して垂直のX線を除外することであり得る。ビームスポットがターゲット上に位置する平面と一致する方向でX線がシステムを出る場合、(ターゲット上のビームスポットのロケーションに依存する)異なるロケーションから生じるX線の線形蓄積が達成され得る。
【0036】
一実施形態によれば、エッジは、例えば少なくとも1つの八角形に合致する形状のような多角形を有し得る。
【0037】
一実施形態によれば、エッジは、少なくとも3つの異なる方向に沿って延在し得る。これは、ターゲット上に電子ビームによって形成されたスポットの長軸、短軸、及び角度方位の決定を可能にするために、電子ビームが、3つの異なる方向の各方向に対して実質的に垂直のエッジを越えて移動されることを可能にする。特に、そのようなスポットは、長軸、短軸、及び角度方位によって表される楕円形状を有し得る。
【0038】
一実施形態によれば、本方法はさらに、電子ビームスポットの決定された長軸、短軸、及び角度方位に基づいて、電子ビームのスポット形状又は電子ビームのスポット方位のうちの少なくとも1つを調整することを備え得る。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、X線ターゲットの第1の領域は、第2の領域に少なくとも部分的に埋め込まれ得る。代替的に、第1の領域は、基板上に配置された層の一部を形成し得、ここにおいて該層は、下にある基板を露出する開いた領域又は穴を備え得る。露出された基板領域はこうして、ターゲットの第2の領域を形成し得る。
【0040】
一実施形態によれば、第2の領域の厚さは、ターゲットの過度の加熱を回避するために電子ビームとの相互作用を最小限にするように適応され得る。特定の実施形態では、第1の領域は、第2の領域を備える基板の上部の層として設けられ得るか、又は該基板に埋め込まれ得、ここにおいて基板は、第1の領域を貫通する電子が基板を出る前に散乱事象に遭うわずかな可能性しか有さないように十分に薄くされ得る。よって、第1の領域を横断した電子は、基板の加熱の一因に比較的ほとんどならない。ターゲットが耐えることができる総熱負荷を増加させるために、基板は異なる厚さを有し得、ここで、電子ビームスポットの真下にある基板の一部が他の部分よりも薄くされる。この実施形態は、透過電子が放出されたX線の適用を妨げないので、電子ビームに沿う以外の何らかの角度のX線が除外される構成の場合有利であり得る。
【0041】
本発明は、相互に異なる請求項に記載されていても、上で概説された技術的特徴の全組合せに関することに留意されたい。
【0042】
ここから本発明の実施形態が、以下の添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1a】本発明の一実施形態にしたがうX線放射を発生させるためのシステムの透視図である。
図1b図1aに示されるシステムの代替的な実装形態を示す図である。
図1c図1aに示されるシステムの代替的な実装形態を示す図である。
図2a】本発明の一実施形態によるX線ターゲットの断面図である。
図2b図2aに示されるタイプのターゲットの代替的な実装形態を示す図である。
図2c図2a及び図2bに示されるタイプと同様のターゲットの上面図を示す図である。
図2d図2a及び図2bに示されるタイプと同様のターゲットの上面図を示す図である。
図2e図2a及び図2bに示されるタイプと同様のターゲットの上面図を示す図である。
図3a】本発明の一実施形態にしたがうターゲットの第1の領域及び第2の領域にわたって走査される電子ビームのロケーションを、走査平面において示す図である。
図3b】ターゲット上の電子ビームの異なる位置に対するセンサ信号のプロットを示す図である。
【0044】
別途記載されていない限り、図面は概略的であり縮尺通りではない。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、X線ターゲット100、電子ビームIを発生させるための電子源200、及び電子ビームIとターゲット100との相互作用を示す量Qを測定するためのセンサ装置400を概して備える、X線放射を発生させるためのシステム1を示す。図面に示されるように、この機器は、ハウジング600の外に位置してもよい電圧源700及び制御器500の例外を除いて、ハウジング600内部に位置し得る。電磁相互作用によって機能する様々な電子光学手段300もまた、電子ビームIを制御及び偏向させるために設けられ得る。
【0046】
電子源200は、概して、電圧源700によって電力供給される陰極210を備え、電子源220、例えば熱電子、熱電界、又は冷電界荷電粒子源を含む。電子源200からの電子ビームIは、加速開口部350に向かって加速され得、そのポイントでビームIは、整列板310の配置、レンズ320、及び偏向板340の配置を備え得る電子光学手段300に入射する。整列手段310、偏向手段340、及びレンズ320の可変的特性が、制御器500によって供給される信号によって制御可能であり得る。この実施形態では、偏向及び整列手段340、310は、少なくとも2つの横方向に電子ビームIを加速するように動作可能である。
【0047】
電子光学手段300の下流で、出射電子ビームIは、X線ターゲット100と交差し得、これは下記でさらに詳細に説明される。これはX線生成が行われるところであり、このロケーションは、相互作用領域又は相互作用点とも称されてもよい。X線は、電子ビームIと一致しない方向に、例えばX線窓610を介して、ハウジング600から外に導かれ得る。
【0048】
本実施形態によれば、電子ビームIの一部分は、相互作用領域を通り越して進み、センサ400に到達し得る。センサは、例えば、電流計410を介して接地に接続された導電板であり得、それはターゲット100の下流に電子ビームIによって流された総電流のおおよその測定値を供給する。制御器500は電流計410からの実信号にアクセスできることが理解される。
【0049】
図1bは、図1aに示されるものとほとんど同様の別の実施形態を示すが、ここでセンサ400及びターゲット100が異なって実装される。この実施形態では、別個のセンサ装置はない。そうではなくむしろ電流計410が、ターゲット100によって吸収された電荷の量を決定するために使用され、したがってターゲットに直接接続されている。
【0050】
図1cは、これもまた図1aに示されるものとほとんど同様の本発明のさらなる実施形態を示すが、ここで後方散乱センサ400が相互作用領域の上流に配置される。後方散乱センサ400は、例えば、ターゲット100から後方散乱した電子の量のおおよその測定値を供給するための電流計(図示せず)に接続された導電板又はグリッドを備え得る。本図に示されているように、システム1は、透過構成で動作され得、ここにおいて、発生したX線は、電子ビームIが衝突する側面とは反対のターゲット100の側面から発する。ターゲット100がハウジング600に配置、又はさらにはハウジング600と統合される場合、図1a及び図1bに示されるX線窓610は省略されてもよく、発生したX線はターゲット100を通って直接ハウジング600を出る。
【0051】
上記実施形態は、電子ビームIとX線ターゲット100との相互作用を示す量Qを測定するように適応されたセンサの可能な実装形態の例にすぎない。これらの例に示されているように、量Qは、ターゲットを通過する電子の数、ターゲットに吸収された(又は帯電した)電子の数、及びターゲットから後方散乱した電子の数を指し得る。しかしながら他の量が考えられ、例えば、ターゲットの局部加熱、発生したX線の量、発生した可視光の量、及びターゲットによって吸収されない電子のエネルギーに関連し得る。
【0052】
図2aは、本発明の一実施形態によるX線ターゲットの断面部分を示す。ターゲット100は、第1の領域110及び第2の領域120を備え、ここにおいて第1の領域110と第2の領域120との境界がエッジ又は段差112を形成する。第1の領域110は、衝突電子と相互作用するとX線を発生させることが可能な材料から形成され得、例えば、タングステンのような緻密材料等を含み得る。タングステン領域110は、基板122上に蒸着され得る層に設けられ得る。該層は、例えば約500nmの厚さであり、下にある基板122を露出する、正方形、八角形、又は円形状の穴のような、開口部が設けられ得る。開口部は、例えば、フォトリソグラフィ及びエッチングによって形成され得る。基板は、第1の領域110の材料と比較して、衝突電子に対してより透過性のある材料から形成され得、例えば約100マイクロメータの厚さであり得る。基板は、例えば、ダイヤモンド又は低原子番号及び好ましくは高い熱伝導率を有する同様の軽材料を備え得る。
【0053】
図2aに例示されるように、タングステン層110は、下にあるダイヤモンド基板122を露出する開口部又は開いた領域を備え得、それによりターゲット100の第2の領域120を形成する。
【0054】
図2bは、図2aのものと同様に構成され得るターゲットの別の実施形態を示すが、ここで第1の領域110は、基板122に少なくとも部分的に埋め込まれており、ターゲット100の表面に沿って異なる厚さを、電子ビームの伝播の方向に有する。代替的に、第1の領域110は、他の第1の領域110とは異なる一定の厚さを有してもよい。
【0055】
図2cは、図2a及び図2bのものと同様のターゲット100の上面図である。この実施形態では、第2の領域120は、2つの実質的に垂直の方向に延在するエッジ112を有する5つの長方形又は正方形として形成される。
【0056】
図2dは、図2a~図2cにおけるものと同様のターゲット100の上面図であり、ここにおいて第1の領域110は、第2の領域120によって囲まれた円として形成される。第2の領域120はまた、異なる領域110、120間に円形エッジを形成する、第1の領域110内にも配置され得る。円形エッジにより、ビームスポットの横方向の伸張が任意の方向で決定されることが可能となる。
【0057】
図2eは、八角形、正方形、及び長方形の形状である複数の第1の領域110を備える、ターゲット100の一部分を示す。八角形は、0°、45°、及び90°のような少なくとも3方向にビームスポットのサイズを測定するために使用され得、それによってビームスポットの楕円率(ひいては非点作用)が推定されることを可能にする。3方向に沿って測定することによって、楕円スポットの長軸及び短軸の長さ並びに角度方位が決定され得る。この推定された情報は、例えば、これらの3方向に沿う電子光学系の較正のために使用され得る。例えば、特定の方向に楕円スポットの長軸を方位付けることが利点である場合もあり、又は代替的に、円形スポットを取得することが利点であることもある。よって推定された情報を使用する1つの方法は、所望のビームスポットを取得するように電子光学系を調整することである。
【0058】
図3aは、矢印によって示される方向にターゲット100の表面にわたって横断する電子ビームスポットAIのロケーションを、走査平面において示す。ターゲットは、図2a乃至図2eと関連して説明されたターゲットと同様に構成され得る。第1の方向に幅Wxを有し、第2の方向にWyを有し得るビームスポットAIは、ターゲットの第1の領域110から、第1の領域110と第2の領域120との間の第1のエッジ112を越えて、ターゲット100の第2の領域120に向かって走査され得る。さらにビームスポットAIは、第2の領域120にわたって、第1のエッジ112に対して垂直の第2のエッジ113に向かって進み得、ここでビームスポットAIは、再度第1の領域110に入射する。走査運動は、制御器及び電子光学手段(図示せず)によって制御され得る。
【0059】
第1の領域110及び第2の領域120の材料が概して、衝突電子と異なって相互作用する―第1の領域110を形成し得るタングステンがX線を発生させる傾向があるのに対して、第2の領域120を形成し得るダイヤモンドは、より低いX線発生性能を有する傾向がある―ので、電子ビームスポットのロケーションは、ターゲット100との相互作用を観測することによって決定され得る。相互作用は、例えば、発生したX線放射量のような量Qを測定することによって、又はターゲット100を通過する若しくは後方散乱する電子の数を測定することによってモニタリングされ得る。
【0060】
結果として得られる量Qが図3bに示され、それは後方散乱した電子又は発生したX線についての、ターゲット100の表面上の移動した距離dに応じた測定された量Qを示すセンサ信号のプロットを示す。移動した距離d又はターゲット100の表面上の位置は、例えば、電子ビームを偏向させるために使用される特定のデフレクタ設定によって決定され得る。本例では、初めの比較的一定のレベルから、低減されたセンサ信号又はほぼゼロのセンサ信号へのセンサ信号(例えばターゲット上の異なるロケーションで発生したX線放射の量を示す)の変化率は、ビームスポットAIの第1の幅Wyに比例する。次いでビームスポットAIが、第1のエッジ112に対して垂直の方向の第2のエッジ113と交差するとき、センサ信号の増加率は、ビームスポットAIの第2の幅Wxに比例する。
【0061】
同様の手順が、デフレクタのような電子光学手段の設定と、ターゲットに対する電子ビームの位置との相関を決定するために使用され得る。これは、電子光学手段の異なる設定についての、上述のようなセンサ信号を観測し、ターゲット100のエッジ112、113を越えて通過する電子ビームと設定を相関させることによって行われ得る。
【0062】
当業者は、上述の例示的実施形態に決して限定されないことが理解されよう。逆に、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び変形が可能である。特に、1つより多くの電子ビームを備えるX線源及びシステムが、本発明の概念の範囲内で考えられる。さらに、本明細書で説明されたタイプのX線源は、特定用途に適合されたX線光学系と有利に組み合わされ得る(これの多くの例がX線技術の分野内で周知である)。特に、電子ビームをターゲット上の異なるロケーションに偏向させる性能は、X線源を光学系と整列させるために使用され得る。追加的に、開示された実施形態に対する変形が、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の参酌から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解及び遂行されることができる。特許請求の範囲において、「備える」という単語は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] システム(1)における方法であって、このシステムは、
電子ビーム(I)を発生させるように動作可能な電子源(200)と、
第1の領域(110)及び第2の領域(120)を備える、前記電子ビームと相互作用するとX線放射を発生させるための静止X線ターゲット(100)と
を備え、
前記第1の領域と前記第2の領域は、エッジ(112、113)によって分離され、X線放射を発生させるための異なる性能を有しており、
前記方法は、
前記エッジを越えて前記電子ビームを移動させることと、
前記電子ビームが前記エッジを越えて移動されるときの、前記電子ビームと前記第1の領域との、及び前記電子ビームと前記第2の領域との前記相互作用を示す量の変化を測定することと、
前記量の前記測定された変化及び前記電子ビームの前記移動に基づいて、前記電子ビームの移動の方向に沿って前記電子ビームの横方向の伸張を決定することと
を行うステップを備える、方法。
[2] 前記量は、X線放射の量、二次電子又は後方散乱した電子の量、及び前記ターゲットに吸収された電子の量のうちの少なくとも1つである、[1]に記載の方法。
[3] 前記エッジに対して実質的に垂直の方向に前記エッジを越えて前記電子ビームを移動させることを備える、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記第1の領域及び前記第2の領域において前記電子ビームの焦点を変更することを備える、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記決定された横方向の伸張に基づいて、前記ターゲットに供給される出力密度が所定の限界値より下に維持されるようにするための前記電子ビームの強度か、又は前記電子ビームのスポットサイズのうちの少なくとも1つを調整することをさらに備える、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6] 前記決定された横方向の伸張及び前記X線放射の所望の波長のうちの少なくとも1つに基づいて、前記ターゲット上の特定ロケーションに前記電子ビームを向けることをさらに備える、[1]~[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7] 前記エッジは、前記X線ターゲットの表面段差を備える、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記エッジは、少なくとも2つの異なる方向に沿って延在し、前記電子ビームは、前記少なくとも2つの異なる方向に対して実質的に垂直の前記エッジを越えて移動され、それにより前記電子ビームの幅が前記少なくとも2つの異なる方向に対して実質的に垂直と決定されることを可能にする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 前記エッジは、少なくとも3つの異なる方向に沿って延在し、前記電子ビームは、前記少なくとも3つの異なる方向に対して実質的に垂直の前記エッジを越えて移動され、それにより楕円形状を有する電子ビームスポットの長軸、短軸、及び角度方位の決定を可能にする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記電子ビームスポットの前記決定された長軸、短軸、及び角度方位に基づいて、前記電子ビームのスポット形状又は前記電子ビームのスポット方位のうちの少なくとも1つを調整することをさらに備える、[9]に記載の方法。
[11] X線放射を発生させるように適応されたシステム(1)であって、
電子ビーム(I)を発生させるように動作可能な電子源(200)と、
第1の領域(110)及び第2の領域(120)を備える、前記電子ビームと相互作用するとX線放射を発生させるための静止X線ターゲット(100)と、ここで、前記第1の領域と前記第2の領域は、エッジ(112、113)によって分離され、X線放射を発生させるための異なる性能を有し、
前記エッジを越えて前記電子ビームを移動させるための電子光学手段(300)と、
前記電子ビームが前記エッジを越えて移動されるときの、前記電子ビームと前記第1の領域との、及び前記電子ビームと前記第2の領域との前記相互作用を示す量の変化を測定するように適応されたセンサ(400)と、
前記センサ及び前記電子光学手段に動作可能に接続され、前記量の前記測定された変化及び前記電子ビームの前記移動に基づいて、前記電子ビームの移動の方向に沿って前記電子ビームの横方向の伸張を決定するように適応された制御器(700)と
を備える、システム。
[12] X線放射を発生させるように適応されたシステム(1)であって、
電子ビーム(I)を発生させるように動作可能な電子源(200)と、
第1の領域(110)及び第2の領域(120)を備える、前記電子ビームと相互作用するとX線放射を発生させるための静止X線ターゲット(100)と、ここで、前記第1の領域と前記第2の領域は、エッジ(112、113)によって分離され、
前記エッジを越えて前記電子ビームを移動させるための電子光学手段(300)と、
前記電子ビームが前記エッジを越えて移動されるときの、前記電子ビームと前記第1の領域との、及び前記電子ビームと前記第2の領域との前記相互作用を示す量の変化を測定するように適応されたセンサ(400)と、
前記センサ及び前記電子光学手段に動作可能に接続され、前記量の前記測定された変化及び前記電子ビームの前記移動に基づいて、前記電子ビームの移動の方向に沿って前記電子ビームの横方向の伸張を決定するように適応された制御器(700)と
を備え、
前記X線ターゲットの前記第1の領域及び前記第2の領域は、前記量の少なくとも2パーセントの差異を提供するように配置されている、
システム。
[13] 前記第1の領域は、前記電子ビームの進行の方向で見て異なる厚さを有する、[11]又は[12]に記載のシステム。
[14] 前記X線ターゲットの前記第1の領域は層の一部を形成し、前記第2の領域は基板の一部を形成し、前記層は前記基板上に配置される、[11]~[13]のいずれか一項に記載のシステム。
[15] 前記第1の領域は、前記第2の領域に少なくとも部分的に埋め込まれている、[11]~[13]のいずれか一項に記載のシステム。
[16] 前記第1の領域及び前記第2の領域は、互いに異なる材料から形成され、前記第2の領域は、前記第1の領域と比較して前記電子ビーム及びX線放射に対するより高い透過性か、又は前記第1の領域の材料の原子番号よりも低い原子番号のうちの少なくとも1つを有する材料を備える、[11]~[15]のいずれか一項に記載のシステム。
[17] 前記第1の領域は、タングステン、レニウム、モリブデン、バナジウム、及びニオビウムを含むリストから選択された材料を備え、前記第2の領域は、ダイヤモンドのような炭素又はベリリウムを備える、[11]~[16]のいずれか一項に記載のシステム。
[18] 前記エッジは、少なくとも1つの八角形に合致する形状を有する、[11]~[17]のいずれか一項に記載のシステム。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図3a
図3b