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特許7055424立体物を形成するために液体ポリマーの光硬化のための光エンジンを用いる方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】立体物を形成するために液体ポリマーの光硬化のための光エンジンを用いる方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/135 20170101AFI20220411BHJP
   B29C 64/277 20170101ALI20220411BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220411BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220411BHJP
【FI】
B29C64/135
B29C64/277
B33Y30/00
B33Y10/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019539903
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 US2018012774
(87)【国際公開番号】W WO2018140218
(87)【国際公開日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】62/531,211
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/531,276
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/450,470
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/531,461
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/415,688
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518113546
【氏名又は名称】ネクサ3ディー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ジテッリ ジャンニ
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェンタール アヴィ エヌ
(72)【発明者】
【氏名】トリンガリー ルチアーノ
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0290876(US,A1)
【文献】特開2010-253882(JP,A)
【文献】特表2016-540665(JP,A)
【文献】米国特許第08663539(US,B1)
【文献】特開2002-370286(JP,A)
【文献】特表2012-519874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線への暴露によって光硬化性液体ポリマーを光硬化させることによって立体物を形成する装置であって、前記液体ポリマーを収容したタンクを有し、前記タンクは、透明な開口部が設けられたベースを有し、前記装置は、前記ベースの前記透明な開口部を通って前記放射線を放出する平行光源をさらに有し、前記光硬化性液体ポリマーは、前記放射線によって硬化を生じ、前記平行光源は、発光ダイオード(LED)源のアレイ、バッフルのアレイ、第1のレンズのアレイおよび第2のレンズのアレイを有し、前記バッフルは、前記LED源のアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅を前記第1のレンズのアレイに属する一レンズのほぼ直径に制限するよう配置され、前記第1のレンズのアレイの各々のレンズは、前記LED源の一つからの電磁線の第1のビームを受け、電磁線の中間ビームを放射するように構成され、前記第2のレンズのアレイの各々のレンズは前記第1のレンズのアレイの一レンズからの前記中間ビームを受け、電磁線の第2のビームを前記光硬化性液体ポリマーの方へ放射するように構成され、前記第2のレンズのアレイの各々のレンズは、凸状頂面及び6つの平坦な側壁を有する六角形レンズからなり、隣り合う前記六角形レンズの前記平坦な側壁は、不透明なクラッディング層によって互いに隔てられている、立体物の形成装置。
【請求項2】
前記LED源のうちの少なくとも幾つかは、放射線を400~700nmの波長で放出するよう構成されている、請求項1記載の立体物の形成装置。
【請求項3】
前記LED源のうちの少なくとも幾つかは、放射線を410nmの波長で放出するよう構成されている、請求項2記載の立体物の形成装置。
【請求項4】
前記LED源のうちの1つまたは2つ以上は、放射線を複数の波長で放出するよう構成されている、請求項2記載の立体物の形成装置。
【請求項5】
前記平行光源は、液晶ディスプレイ(“LCD”)をさらに有し、前記LCDは、前記LEDのアレイと前記タンク内に設けられた一領域との間に位置決めされ、物体が前記一領域内において前記光硬化性液体ポリマーの光硬化によって作製される、請求項2記載の立体物の形成装置。
【請求項6】
前記LCDは、複数のフィルタを含み、前記複数のフィルタの各フィルタは、放出された放射線の前記波長のうちの1つに対応している、請求項5記載の立体物の形成装置。
【請求項7】
前記LED源のうちの1つまたは2つ以上は、複数のLEDエミッタから成り、前記エミッタの各々は、放射線を1つまたは2つ以上の波長で放出するよう構成されている、請求項2記載の立体物の形成装置。
【請求項8】
前記平行光源の前記LED源は、複数のLED群として組織化されており、前記LED群の各々は、前記LED群から伝搬している電磁線の第1のビームを拘束するとともに方向づけるよう構成された前記バッフルのうちの1つに対応する、請求項1記載の立体物の形成装置。
【請求項9】
前記複数のLED群の各々は、2つ以上のLEDを含む、請求項8記載の立体物の形成装置。
【請求項10】
放射線に暴露された光硬化性液体ポリマーを光硬化させることによって立体物を形成する方法であって、前記立体物は、前記放射線に対して透明なシートと支持プレート、すなわち前記立体物のすでに形成された一部分との間の空間内で、前記光硬化性液体ポリマーの漸次硬化に起因して成長により生じ、前記支持プレートは、前記透明なシートから徐々に遠ざかる、方法において、前記光硬化性液体ポリマーを平行光源からの照射によって硬化させ、前記平行光源は、発光ダイオード(LED)源のアレイ、バッフルのアレイ、第1のレンズのアレイおよび第2のレンズのアレイを有し、前記バッフルは、前記LED源のアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅を前記第1のレンズのアレイに属する一レンズのほぼ直径に制限するよう配置され、前記第1のレンズのアレイの各々のレンズは、前記LED源の一つからの電磁線の第1のビームを受け、電磁線の中間ビームを放射するように構成され、前記第2のレンズのアレイの各々のレンズは前記第1のレンズのアレイの一レンズからの前記中間ビームを受け、電磁線の第2のビームを前記光硬化性液体ポリマーの方へ放射するように構成され、前記第2のレンズのアレイの各々のレンズは、凸状頂面及び6つの平坦な側壁を有する六角形レンズからなり、隣り合う前記六角形レンズの前記平坦な側壁は、不透明なクラッディング層によって互いに隔てられている、立体物の形成方法。
【請求項11】
前記LED源は、放射線を400~700nmの波長で放出する、請求項10記載の立体物の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンティングと通称されている三次元印刷またはプリンティングの分野、特に立体物(三次元物体)の形成のために液体ポリマーの光硬化を利用する3Dプリンティング装置で用いられる光エンジンに関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2017年1月25日に出願された米国特許仮出願第62/450,470号、2017年7月11日に出願された米国特許仮出願第62/531,211号、2017年7月11日に出願された米国特許仮出願第62/531,276号、および2017年7月12日に出願された米国特許仮出願第62/531,461号ならびに2017年1月25日に出願された米国特許出願第15/415,688号の優先権主張出願である。
【背景技術】
【0003】
知られているように、光硬化による3Dプリンティングによる分野は、2つの基本的な技術、すなわち、約400nmのレーザ放出光が用いられて放出されたビームによって特殊なタンク内に入れられた光硬化性液体ポリマーを凝固させる光造形プリンティングおよびこの場合もまたタンク内に存在している光硬化性液体ポリマーをプロジェクタと同様な装置によって放出された光放射線に暴露させるDLP(ディジタル光加工)プリンティングを含むと言える。これら両方の技術によれば、プリンティングプロセスは、完成物体の形成まで物体の1つの層を別の層の後に作製することによって、すなわち、支持プレート(または取り出しプレート)に付着している第1の層を凝固させ、次に第1の層にくっついている第2の層を凝固させるなどすることによって進む。したがって、これらの技術によれば、形成されるべき立体物を表しているデータは、構築中の物体の横方向区分を表す一連の二次元層として組織化される。
【0004】
SLAおよびDLPタイプのいずれかの機械を必要とする場合のあるボトムアップ方法によれば、物体を取り出すためのプレートは、物体が層ごとに形成されているときに、タンクの底部から上方に動く。基本的なボトムアップ方法は、次のステップから成り、すなわち次の通りである。
a.構築されるべき物体の3Dモデルをコンピュータソフトウェアで層の順序づけられた連続体として表し、その厚さは、採用した技術、液体ポリマーの不透明度、ポリマーとともに用いられる触媒の量、得られるべき精度、および提供される機械の特性に従って定められ、通常、この厚さは、50~200ミクロンであるが、いずれの場合においても、3Dモデルは、別々のかつ有限数の層の連続体として表され、
b.ポリマーの第1の層のそれ自体へのくっつきを容易にすることができる材料から成る取り出しプレートが第1の層から所定の距離を置いたところまで動き、そして光ビーム(SLAまたはDLP)が第1の層を凝固させるのを待ち、次に、取り出しプレートが形成されたばかりの層がタンクのベースから外れるのに十分な距離(通常、約1mm)だけ上昇し、次に同一距離だけ下降し、第2の層の形成のために所定の距離よりも短い距離だけ下降するなどし、ついには物体全体が形成されるようにする。
【0005】
基本的なボトムアップ方法の改良例が2016年10月3日に出願された本出願人の国際出願PCT/IT2016/000225号明細書に記載されており、この国際出願は、2015年10月2日に出願されたイタリア国特許出願第102015000057527号明細書の優先権主張出願である。この特許出願では、液体ポリマーを硬化させるために用いられる電磁スペクトル放射線に対して透明でありかつ硬化が行われるタンクの底部と形成中の物体の層との間に存在する自己潤滑性サブストレータム(またはメンブレン)が記載されている。メンブレンは、潤滑性物質の層を次第に放出し、それにより、メンブレンの上方に浮いた状態で存在する液体ポリマーがメンブレン上で硬化することができ、かくして形成中の物体層とタンクベースとの吸引効果および付着性を減少させる。光源、例えばDLPプロジェクタは、液体ポリマーとのメンブレンのインターフェースのところに像焦点面を有する。液体ポリマーの光硬化は、投影された像に従ってこのインターフェースのところで起こる。構築中の物体の成長がそれにより容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際出願PCT/IT2016/000225号明細書
【文献】イタリア国特許出願第102015000057527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる構成は受け入れ可能なプリンティング速度を見越しているが、かかる構成は、構築中の物体に限定されたx‐y解像度(例えば、75ミクロンのオーダ)をもたらすに過ぎない。さらに、液体ポリマーを硬化させるのに相当な光強度が必要なので、DLPプロジェクタは、焦点面の近くに位置決めされなければならず、それにより液体ポリマーの硬化を行わせることができる面積が制限される(例えば、120×90mmのオーダまで)。作業空間へのDLPプロジェクタのこの近接性はまた、焦点面内に光収差およびディストーション(歪曲)をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、DLPプロジェクタを平行光源(collimated light source)で置き換え、そしてLCDディスプレイを結像プラットホームとして用いることによって例えば上述したような欠点を解決する。光源は、像を作るためにLCDパネルを通る放射線(radiation)の平行光束流をもたらし、この平行光束流は、一実施形態では、400~700nmの波長範囲内にあり、特に410nmである。LCDパネルは、複数のアドレス指定可能な画素を含み、これら画素は、入射放射線に対して個別的に透明または不透明に作られるのが良い。マトリックス中の結晶のうちの透明な結晶を通る入射放射線の作用効果により、ディスプレイ表面上に像が作られる。マトリックスの個々の結晶は、代表的には表示のための像のビットマップ(または他の)バージョンが提供されるプロセッサまたは他のコントローラの制御下において、電圧をそれぞれの結晶に印加しまたは印加しないことによって透明にまたは不透明に作られる。
【0009】
平行光源は、個々の光エミッタのアレイ、特に、放射線を400~700nmの波長で、特に410nmの波長で放出するよう構成された発光ダイオード(LED)源のアレイによって作られる。平行光源は、バッフルのアレイおよびレンズのアレイをさらに含むのが良く、バッフルは、LED源のアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅をレンズアレイに含まれる一レンズのほぼ直径に制限するよう配置され、レンズのアレイは、LED源のアレイから焦点距離1つ分のところに配置される。
【0010】
本発明のこれらの実施形態および追加の実施形態を以下にさらに説明する。
【0011】
いま、本発明の実施形態を示す添付の図面を参照して一例によりかつ本発明の範囲を限定しないで、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】メンブレンを採用した光硬化性システムのDLPプロジェクタの使用の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に従って平行光源および液晶ディスプレイを用いた光硬化によって物体を形成するシステムの動作原理の略図である。
図3A】点光源を用いた場合に生じる像ディストーションの一例を示す図である。
図3B】点光源のアレイを用いた場合に生じるシャドー効果の一例を示す図である。
図4】点光源のアレイを用いた場合に生じるシャドー効果を示す写真画像を示す図である。
図5】本発明の実施形態に従って個々のLED源および液晶ディスプレイで構成された平行光源を用いる光硬化によって物体を形成するシステムの動作原理の略図である。
図6】本発明の実施形態に従って個々のLED源および液晶ディスプレイで構成された平行光源の分解組立図である。
図7】本発明の実施形態に従って構成された平行光源のための空間放射線パターンの一例を示す図である。
図8】本発明の平行多周波光源の一実施形態の動作原理の略図である。
図9】電磁線が光硬化性液体ポリマーを硬化させるために用いられる本発明の幾つかの実施形態による3Dプリンティングシステムを示す図である。
図10】本発明の一実施形態に従って正方形レンズの単一の層が正方形アレイをなして配列された光源の1つのセルと関連したコンポーネントを示す図である。
図11A】本発明の一実施形態による正方形レンズの平面図である。
図11B】本発明の一実施形態による図11AのA‐A線に沿って見た正方形レンズの断面図である。
図12】本発明の一実施形態に従って正方形レンズの単一の層がアレイをなした状態に配列された光源の斜視図である。
図13】本発明の一実施形態に従って隣り合うセル相互間の放射線の混合状態を示す図12の光源の断面図である。
図14】本発明の一実施形態に従って正方形レンズの2つの層がアレイをなして配列された光源の1つのセルの斜視図である。
図15】本発明の一実施形態に従って六角形セルを含む光源の平面図である。
図16A】本発明の一実施形態に従って図15の光源のベースプレートに取り付けられたLEDの斜視図である。
図16B】本発明の一実施形態に従って図15の光源のベースプレートに取り付けられたLEDの平面図である。
図16C】本発明の一実施形態に従って図15の光源のベースプレートに取り付けられたLEDの側面図である。
図17A】本発明の一実施形態に従ってベースプレート上に設けられたバッフルプレート(すなわち、バッフル付きのプレート)の斜視図である。
図17B】本発明の一実施形態に従ってベースプレート上に設けられたバッフルプレート(すなわち、バッフル付きのプレート)の平面図である。
図17C】本発明の一実施形態に従ってベースプレート上に設けられたバッフルプレート(すなわち、バッフル付きのプレート)の側面図である。
図18A】本発明の一実施形態によるバッフルプレート中に挿入された円形レンズの斜視図である。
図18B】本発明の一実施形態によるバッフルプレート中に挿入された円形レンズの平面図である。
図18C】本発明の一実施形態によるバッフルプレート中に挿入された円形レンズの側面図である。
図19A】本発明の一実施形態に従って円形レンズ上に設けられた六角形レンズの斜視図である。
図19B】本発明の一実施形態に従って円形レンズ上に設けられた六角形レンズの平面図である。
図19C】本発明の一実施形態に従って円形レンズ上に設けられた六角形レンズの側面図である。
図20】本発明の一実施形態に従って図14の光源の1つの六角形セルと関連したある特定のコンポーネントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願人の国際出願PCT/IT2016/000225号明細書では、自己潤滑性サブストレータムを採用しながら立体物または三次元物体の形成のために液体ポリマーを光硬化させる方法および装置が記載されている。これら方法および装置は、吸引効果(形成中の物体の層とこの下に位置決めされたタンクのベースとの間の真空に起因して生じる)を減少させまたはなくし、形成中の層とタンクベースとの付着性を減少させまたはなくし、上述の作用効果によって生じる機械的応力を減少させ、そして従来型解決策と比較して、立体物を非常に短い時間で形成するプロセスを提供する。特に、立体物の形成のための光硬化を行うかかる方法および装置では、タンクのベースと光硬化性液体ポリマーとの間にメンブレンを介在させ、このメンブレンは、関心のある電磁スペクトルに対して透明であり、かつ潤滑性物質の層を徐々に放出することができ、それにより適切にドープされたポリマーが潤滑性物質の層上に浮いた状態のままで凝固することができる。
【0014】
かかる構成の一例が図1に示されている。DLPプロジェクタ10がタンク(図示せず)のベースのところに設けられたホウケイ酸ガラスの層14を通って光束流12を生じさせる。ホウケイ酸ガラスの上にはメンブレン16が位置している。メンブレン16は、2016年10月3日に出願された国際出願PCT/IT2016/000225号明細書に詳細に記載されており、この国際出願は、2015年10月2日に出願されたイタリア国特許出願102015000057527号の優先権主張出願であり、このイタリア国出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。概要を説明すると、メンブレン16は、DLPプロジェクタ10からの電磁スペクトル放射線に対して透明でありかつ潤滑性物質の層を徐々に放出することができる自己潤滑性サブストレータムであり、それにより、メンブレンの上方に浮いた状態で位置する液体ポリマー18がメンブレン上で硬化することができ、かくして吸引効果を減少させるとともに形成中の物体層とタンクベースとの付着性をなくす。DLPプロジェクタ10は、液体ポリマー18とのメンブレン16のインターフェースのところに像焦点面20を有する。液体ポリマーの光硬化は、投影された像に従ってこのインターフェースのところで起こり、構築中の物体の成長は、それにより容易になる。液体ポリマーには紫外線触媒(DLPプロジェクタによって生じる光束流の帯域幅において敏感である)および潤滑性物質が適切にドープされるのが良い。この構成は、迅速な物体成長(厚さ200ミクロンの層について1.8min/cmのオーダのプリンティング速度で)を可能にするが、x‐y解像度を制限する(例えば、75ミクロン)。さらに、相当な光強度が液体ポリマーを硬化させるのに必要なので、DLPプロジェクタは、作業空間の近くに位置決めされなければならず、それにより液体ポリマーの硬化を行わせることができる面積が制限される(例えば、120×90mmのオーダまで)。作業空間へのDLPプロジェクタのこの近接性はまた、焦点面内に光収差およびディストーション(歪曲)をもたらす。
【0015】
本発明の実施形態は、DLPプロジェクタの使用をなくし、これに代えて約410nmの波長(または、より一般的に言って、400~700nmの波長範囲内にある波長)で電磁線を放出する平行光源を用いることによってこれらの欠点を解決する。光源は、一実施形態では、出力が個々のビームディレクタ(beam director)(またはバッフル)によって拘束されるとともにレンズアレイによって平行にされる発光ダイオード(LED)のアレイからなる。その結果得られる平行光ビームは、液体ポリマーを収容したタンク内にかつ上述のメンブレンの下に配置された液晶ディスプレイ(LCD)を照明するために用いられる。LCDは、印刷されるべき物体の断面の像の表示を提供するようコンピュータ制御下にあり、その結果、平行光ビームは、入射放射線の波長に対して不透明になっていないLCDの部分を通過してLCDの真上に位置する装置の作業空間内の液体ポリマーの光硬化を生じさせる。この構成は、x‐y平面内に光収差またはディストーションのない高い解像度(例えば、約50ミクロン以下のオーダで、一実施形態では、約30ミクロン)をもたらし、他方、迅速なプリンティング速度(例えば、約2~2.5秒で200ミクロンのオーダのプリンティング厚さ)を保つ。
【0016】
図2は、この構成の一例を示している。光源32が像39を作るためにLCDパネル33を通る放射線の平行光束流38をもたらし、この平行光束流は、一実施形態では、400~700nmの波長範囲内にあり、特に410nmである。LCDパネルは、液晶マトリックス36をサンドイッチした2つの偏光層34,35を有する。液晶マトリックスは、複数のアドレス指定可能な画素を含み、これら画素は入射放射線に対して個別的に透明にまたは不透明に作られるのが良い。マトリックス中の結晶のうちの透明な結晶を通る入射放射線の作用効果により、ディスプレイ表面37上に像39が作られる。マトリックス36の個々の結晶は、代表的には表示のための像のビットマップ(または他の)バージョンが提供されるプロセッサまたは他のコントローラの制御下において、電圧をそれぞれの結晶に印加しまたは印加しないことによって透明にまたは不透明に作られる。一実施形態では、LCDディスプレイ33は、840dpiの解像度を有するのが良い。
【0017】
平行光源のための光の波長は、LCDディスプレイの偏光子が典型的にはUVフィルタとして働くので、光の可視範囲のエッジで選択される。3Dプリンティング用に用いられる形式の多くの光硬化可能なポリマー(レジンとも呼ばれる)がUV帯で硬化する。したがって、LCD結像装置を用いることにより、紫外線がLCDディスプレイの偏光子によって濾波除去されるので従来型システムでは問題が生じる。同時に、可視帯で硬化するレジンは、典型的には、像平面内に約50ミクロン以下のx‐y解像度を達成するようには使用できない。これとは異なり、これらシステムは、典型的には、100ミクロンのオーダの解像度を達成する。したがって、本発明の実施形態で用いられるレジンは、約370nmの中心波長で硬化可能であるが、平行光源の好ましい波長である410nmでは良好な硬化特性を依然としてもたらす。
【0018】
上述したように、好ましい光源は、平行光源であり、これは、個々の光エミッタのアレイによって作られる。これは、点光源がレジン(少なくとも、十分に広い領域にわたってではない)の硬化を生じさせるのに十分なエネルギーを生じさせない傾向があり、さらに、図3Aに示されているようにズーム効果に起因したディストーションを生じさせるからである。点光源、例えば単一のUV LED40が光硬化性配列体中のLCDディスプレイ33を照明するため用いられる場合(単純化のため、この配列体のホウケイ酸ガラス14およびメンブレン16だけが示されている)、元の像41がメンブレン16の頂面上の像平面のところで拡大状態42になる。これは、拡大像がそのエッジのところで不規則になる傾向がありかつ誤ったサイズのものとなるので、満足のゆくものではない。さらに、像平面のところの光エネルギーは、その領域全体にわたって非一様であり、したがって、硬化時間は、像の中心とそのエッジとの間ではばらつきがある。
【0019】
しかしながら、光源のアレイを用いることは、それ自体必ず難題である。源のアレイは、レジンの光硬化を生じさせるとともに像領域全体にわたって光エネルギーの分布を一層一様にするのに十分なエネルギーを達成するために必要とされるが、図3Bに示されているように、アレイ中の個々の源が各々像平面内にそれ自体の像(拡大状態)を生じさせるのでシャドー効果を生じさせる。個々のLED源43‐1,43‐2,43‐3のアレイ43がホウケイ酸ガラス14とメンブレン16との間に設けられたLEDディスプレイ33を照明する。かくして、これら源の各々は、メンブレン16と光硬化性レジン(図示せず)とのインターフェースのところで像平面のところでLCDディスプレイ33上にそれ自体のそれぞれの像の表示44‐1,44‐2,44‐3を生じさせる。これら像は、各々、拡大されて互いにオーバーラップし、その結果、シャドー効果および他の望ましくない像硬化が生じる。単一の物体(例えば、LCD像)上に入射する2つの光源に関するシャドー効果の一例が図4に示されている。
【0020】
平行光源を用いると、図5に示されているように、これらシャドー効果がなくなる。平行光束流45がバッフル47およびコリメートレンズ48のアレイを用いて個々のLED46‐1,46‐2,46‐3のアレイ46によって作られる。バッフル47は、個々のLED源46‐1,46‐2,46‐3の各々のビーム幅をアレイ48中に用いられているレンズのほぼ直径に制限するよう配置されている。レンズのアレイは、各LED源から焦点距離1つ分だけ離れて配置され、各LED源はまた、互いに焦点距離1つ分だけ離されて配置されるのが良く、それゆえ、バッフルは、かかる離隔距離に対応するよう寸法決めされる。本発明の一実施形態では、LED源の9×12アレイが用いられる。これは、図6に示されており、図6は、LEDのアレイ46、各々がLEDの各々にそれぞれ対応したバッフル47、レンズ48のアレイ、LED1つ当たり1つのレンズ、およびLCDディスプレイ33を分解組立図で示しており、これらにより、印刷されるべき像がもたらされる。図5に戻ってこれを参照すると、レンズのアレイ48により生じた平行光は、LCD33からの像が光硬化性液体ポリマー(図示せず)の底面の真下でメンブレン16の頂部インターフェース上に投影されたときにその元のサイズを保持するようにする。LCDは、印刷されるべき物体の断面の像の表示を提供するようコンピュータ制御下にあり、その結果、平行光ビームは、入射放射線の波長に対して不透明になっていないLCDの部分を通過してLCDの真上に位置する装置の作業空間内の液体ポリマーの光硬化を生じさせる。この構成は、x‐y平面内に光収差またはディストーションのない高い解像度(例えば、約50ミクロン以下のオーダで、一実施形態では、約30ミクロン)をもたらし、他方、迅速なプリンティング速度を保つ。
【0021】
本発明の種々の実施形態では、LED源ビーム幅は、中心からのこれらの角変位全体の約90%以上に拘束される。幾つかの実施形態では、これは、レンズのアレイ中に用いられているレンズの焦点距離1つ分のバッフル付きLED相互間の距離に一致している。本発明の一実施形態では、平行光源は、約410nmで250mW/cm2の光束を生じさせ、840dpiのLCDディスプレイを用いてディストーションなしで約30ミクロンのx‐y解像度で約2~2.5秒以内の厚さ200ミクロン層の印刷を可能にする。アレイの個々のLED源は、レンズアレイに属するレンズの焦点距離のところでレンズから間隔を置いて位置し、それゆえ、バッフルは各々四方が焦点距離1つ分である。
【0022】
図7に示されているように、一実施形態では、平行光源は、ポリマーが硬化を生じている作業領域全体にわたって十分なかつ適度に一貫した光束を保証するよう、幅が約20°以下であり、すなわちその中心軸線から半径方向に約10°以内であり、より具体的には約15°以内であり、すなわちその中心軸線から半径方向に約7.5°以内の空間放射パターンをなして各源LED源から放出された光を拘束するよう構成されている。
【0023】
本発明の別の実施形態は、放射線への暴露によって液体ポリマーを光硬化させることによって立体物の形成をもたらし、この放射線は、多周波LED源のアレイ、バッフルのアレイ、およびレンズのアレイで構成された平行光源によって提供される。バッフルは、LEDのアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅を制限し、レンズのアレイは、LED源のアレイから焦点距離1つ分のところに配置される。平行光源は、複数のフィルタを有する液晶ディスプレイをさらに含み、複数のフィルタの各フィルタは、LED源からの放出放射線の波長に対応している。
【0024】
図8は、ディスプレイ表面37のところに像を作るようLCDパネル33′を通る放射線の平行光束流を提供する光源32′の一例を示している。LCDパネル33′は、液晶マトリックス36をサンドイッチした2つの偏光層34,35を有する。液晶マトリックスは、複数のアドレス指定可能な画素を含み、これら画素は入射放射線に対して個別的に透明にまたは不透明に作られるのが良い。マトリックス中の結晶のうちの透明な結晶を通る入射放射線の作用効果により、ディスプレイ表面37上に像39が作られる。マトリックス36の個々の結晶は、代表的には表示のための像のビットマップ(または他の)バージョンが提供されるプロセッサまたは他のコントローラの制御下において、電圧をそれぞれの結晶に印加しまたは印加しないことによって透明にまたは不透明に作られる。この実施例では、偏光層34,35は、多源LEDアレイ46′を構成するLED62a~62nからの紫外線に対して透明である。
【0025】
加うるに、LCDパネル33′内には組をなす2つまたは3つ以上のUVフィルタ66が含まれている。UVフィルタ66は、各々が多源LEDアレイ46′のLEDからの入射放射線の幅の狭い周波数範囲を濾波除去するよう狭い帯域幅を有するよう設計されている。UVフィルタ66は、この実施例で示されているようにまたはLCDパネル内のどこかほかの場所で液晶マトリックス36と上側偏光フィルム35との間に位置決めされるのが良い。好ましくは、多源LEDアレイ46′を構成するLED62a~62nは各々、2つまたは3つ以上の幅の狭い帯域幅の光を放出し、UVフィルタ66は、かかる帯域幅に合わされており、その結果、LEDの放出光の各波長について対応のUVフィルタが存在するようになっている。
【0026】
上述したように、液晶マトリックス36は、複数のアドレス指定可能な画素を含み、これらアドレス指定可能な画素は、入射放射線に対して個々に透明または不透明に作られるのが良い。一実施形態では、能動型(例えば、TFT)LCDパネルが用いられるが、他の場合、受動型(例えば、STN)LCDパネルが用いられるのが良い。液晶マトリックスの各セグメントは、LED62a~62nからの入射光に対してゲートとして働く。UVフィルタ66と一緒に、LCDパネルは、画素ごとの条件に基づいて、入射紫外線の特定の波長を通しまたは遮断する。例えば、LED62a~62nが各々、光を波長UVa,UVb,UVcで放出することができる場合、液晶マトリックスのセグメントを透明であるようにまたは透明ではないように制御することによって、ディスプレイ表面のところの像の各「画素」を波長UVa,UVb,またはUVcのうちの1つであるようにまたはこれらの2つまたは3つ以上の組み合わせであるように制御するのが良い。これは、赤色‐緑色‐青色LCDディスプレイがカラー画像を提供する仕方と類似している。光を多数の別々のUV波長で放出するLEDの例は、カリフォルニア州サンジョゼ所在のエルイーディー・エンジン・インコーポレイテッド(LED Engin, Inc.)から入手できるLEDのLZ4シリーズである。
【0027】
バッフル47は、個々のLED源62a~62nのビーム幅を中心からのこれらの角変位全体のほんの何分の一かに拘束する。幾つかの実施形態では、バッフルは、互いにレンズ48のアレイ中に用いられているレンズの焦点距離1つ分のところに心出しされている。さらに、アレイの個々のLED源62a~62nは、レンズアレイ48に属するレンズの焦点距離のところでレンズから間隔を置いて位置し、それゆえ、バッフル47は各々四方が焦点距離1つ分である。
【0028】
光エンジン32′は、ディスプレイ表面のところに像を作るようLCDパネル33′を通って放射線の平行光束流を1つまたは2つ以上の波長で提供する。LED源に関する光の種々の波長は、作製中の三次元物品を形成する元となるポリマーレジン中への種々の添加物を可能にするよう選択されるのが良い。3Dプリンティング用に用いられる形式の多くの光硬化可能なポリマー(レジンとも呼ばれる)がUV帯で硬化する。互いに異なる波長で敏感な硬化剤を導入することにより、入射放射線を適切に濾波することによって、作製中の物体の互いに異なる構造的特性を達成することができる。
【0029】
例えば、硬化剤の中には波長UVaで敏感なものがあれば、波長UVbで敏感なものもある。適当に選択されたUVフィルタ66を維持するとともに上述した仕方でLCDパネル33′の画素に光を波長UVa,UVbで選択的に通しまたは通さないようにすることによって、互いに異なる硬化剤をポリマーレジンとのメンブレン(図8には示されていない)のインターフェースのところでほぼ画素ごとの条件で(硬化がLCDパネルの頂面にすぐ隣接してほとんど起こり、したがってビーム発散度は、最小限であると期待できる限り)活性化することができる。その結果、例えば互いに異なる硬化剤が所与のポリマーレジンに関して互いに異なる硬化時間を有する場合、物体の幾つかの領域は、他の領域よりも剛性である場合がある。
【0030】
上述したように、好ましい光源は、平行光源であり、これは、個々の光エミッタのアレイによって作られる。これは、上述したように、本出願人の米国特許出願第15/415,688号明細書において、点光源が樹脂(少なくとも、十分に広い領域にわたってではない)の硬化を生じさせるのに十分なエネルギーを生じさせない傾向があり、しかもズーム硬化に起因したディストーションを生じさせる場合があるからである。さらに、バッフル47の使用は、像平面内のシャドー効果をなくすのを助ける。バッフルは、個々のLED源の各々のビーム幅をアレイ48で用いられているレンズのほぼ直径に制限するよう配置されている。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態では、光源およびスペクトルのUV範囲内のフィルタに代えて、光を可視帯で放出する光源および対応のフィルタフィルムを用いるのが良い。例えば、別々の赤色、緑色、および青色の光を放出するLED源は、LED62a~62nとして用いられるのが良く、対応の赤色、緑色、および青色のフィルタ66がこれとともに使用される。赤色‐緑色‐青色LEDパネルは、容易に入手でき、それゆえかかる実施形態は、適当な硬化剤を液体ポリマーに用いることができることを条件として、作るのに費用がそれほどかからない場合がある。
【0032】
さらに別の実施形態では、光を可視およびUV波長の広いスペクトル全体にわたって放出しまたは光を各帯域内で多数の別々の波長で放出するLEDを用いることができる。かかる実施例では、種々の画素のところでの作製物体の色は、適当な波長の光をLCDパネルに通してレジン内の色剤(顔料)を活性化することによって制御されるのが良く、そのところどころにおいてレジンは硬化されている。
【0033】
さらに別の実施形態では、LED源は、多数のLEDを含むのが良い。すなわち、LED源62a~62nのうちの1つまたは2つ以上は、各々がUVの異なる波長、および/または赤色、緑色、および青色光の多数の光源(例えば、多数のLEDエミッタ)を含むのが良い。すなわち、LEDのアレイのうちの1つまたは2つ以上のセルは、各々異なる1つの波長または複数の波長で活性である多数のLEDを含むのが良く、それにより、セルは、広いスペクトルにわたって光を作ることができる。かかる実施例では、種々の画素のところでの作製された物体の色および/または組成は、適当な波長の光をLCDパネルに通してレジン内の色剤または物質剤(顔料)を活性化することによって制御されるのが良く、そのところどころにおいてレジンは硬化されている。かくして、放射線への暴露によって光硬化性液体ポリマーを光硬化させることによって立体物を形成する装置は、この光硬化性液体ポリマーを硬化させる放射線を放出する平行光源を有するのが良く、この平行光源は、複数のLED源から成り、これらLED源の各々は、放射線を複数の波長で放出するよう構成されている。これらLED源のうちの1つまたは2つ以上は、複数のLEDエミッタを有するのが良く、これらエミッタの各々は、放射線を1つまたは2つ以上の波長で放出するよう構成されている。
【0034】
図9は、本発明の幾つかの実施形態に従って電磁線が光硬化性液体ポリマーを硬化させるために用いられる3Dプリンティングシステムを示している。タンク100が光硬化性液体ポリマー18を収容しており、この液体ポリマーは、ある特定の周波数の電磁線(例えば、UV光)に暴露されると硬化する(すなわち、硬くなる)。タンク100の底部は、タンク窓110を有するのが良い。一実施形態では、タンク窓110は、剛性裏当て材14(例えば、ホウケイ酸ガラス)で裏打ちされた可撓性メンブレン16によって形成され、これらの両方は、光硬化性液体ポリマーの硬化が起こる電磁線のある特定の周波数に対して透明である。
【0035】
光源32は、LCD33を通って電磁線45(またはその光線)を光硬化性液体ポリマー18内に配置された焦点面120上に投射する。LCD33は、電磁線45を選択的に濾波し、それにより物体の断面の像を焦点面120上に生じさせることができる。光源32は、上述したように、平行にされて一様な強度を有する光線とともに柱状の電磁線を投射する。
【0036】
光硬化性液体ポリマー18中に存在する電磁線45と光硬化剤との相互作用の結果として、湾曲した層が部分的に形成された3D物体22の底部とタンク100の底部との間に生じる。硬化済みの層は、物体22の底部にくっついて物体の断面を形成するが、メンブレン16およびメンブレン16の表面上に位置する潤滑性層12の非粘着性に起因してタンク100の底部には実質的にくっつかない。硬化済み層を形成した後、物体22をタンク100に対して持ち上げるのが良い。高さ調節手段(図示せず)を用いて取り出しプレート24を持ち上げるのが良く、それにより物体22(今や、新たに作られた層が設けられている)を持ち上げる。光硬化性液体ポリマー18は、次に、物体22の底面とメンブレン16との間の隙間(すなわち、物体22の持ち上げによって作られている)中に流れ、プロセスを繰り返して(すなわち、像を投影し、物体を持ち上げ、像を投影し、物体を持ち上げて)物体22が完全に形成されるまで追加の硬化済み層を形成するのが良い。
【0037】
上述したように、本発明の実施形態は、部分的にレンズのアレイの使用により平行光源を提供する。幾つかの実施形態では、正方形レンズがアレイをなして配列されている。他の実施形態では、正方形レンズの2つの層が用いられる。さらに別の実施形態では、ハニカムパターンをなして配列された六角形レンズが採用される。以下において、これら構成の各々について説明する。
【0038】
図10は、光源32の1つのセルと関連したコンポーネントを示している。コンポーネントは、LED70および正方形レンズ72を含むのが良い。一実施形態では、レンズ72は、凸状頂面72A、平坦な底面72Cおよび4つの平坦な側面72B(これらのうちの1つだけがラベル表示されている)を含む平凸ガラスレンズであるのが良い。正方形レンズ72は、LED70から伝搬する電磁線を平行にするよう構成されている。上述したように、光源32は、各々がLED70および対応のレンズ72を含むセルのアレイを有するのが良い。図11Aは、正方形レンズ72の平面図である。レンズ72の長さおよび幅の両方の測定寸法は、15.58mm±0.20mmであるのが良い。図11Bは、図11AのA‐Aに沿って見たレンズの断面図である。レンズ72の高さの測定寸法は、7.00mm±0.10mmであるのが良い。
【0039】
上述したように、光源32の個々のセルは、バッフルによって互いに隔てられるのが良い。幾つかの場合、図12に示されているように、バッフルは、不透明な仕切り壁74を有するのが良い。不透明な仕切り壁は、1つのセルからの電磁線が隣のセルに入るのを阻止する(少なくとも、電磁線がレンズ72から出る前に)。レンズ72に達する電磁線は、レンズのエッジの近くで出る放射線を除き、実質的に平行にされる。図13に示されているように、仕切り壁74の近くの電磁線78は、レンズ72によって隣のセルの方へ方向づけられて仕切り壁74のシャドーによって作られる「デッドゾーン」76を照明する。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態では、焦点面に送り出される全パワーを増大させるため(LEDの数を不変に保つとともにLEDを作動させるパワーを不変に保ちながら)、光エンジンのセル1つ当たりの2つの正方形レンズが図14に示されているように利用されるのが良い。正方形レンズ80は、もし上述のように構成されていなければ仕切り壁74によって吸収されている放射線82を正方形レンズ72中に方向づけるのを助け、それにより全パワーを増大させる。上述したように、正方形レンズ72は、凸状頂面72A、平坦な底面72Cおよび4つの平坦な側面72B(これらのうちの1つだけがラベル表示されている)を含む平凸ガラス(またはプラスチック)レンズであるのが良い。同様に、正方形レンズ80は、凸状頂面80A、平坦な底面80Cおよび4つの平坦な側面80B(これらのうちの1つだけがラベル表示されている)を含む平凸ガラス(またはプラスチック)レンズであるのが良い。正方形レンズ80は、正方形レンズ72よりも小さい寸法を有するのが良い。頂面72A,80Aの両方は、非球面であるのが良い。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態は、六角形セルを含む光源を利用するのが良い。六角形セルの使用により、正方形セルと比較してセル中心とそのエッジとの間の平均距離が短くなり(LEDの数と全セル表面積の比が一定に保たれた状態で)、その結果、セルエッジのところ、特にセルコーナー部のところに存在する照射度の不均一性の減少が得られる。図15は、ハニカムパターンによる六角形セルの配置状態を示しており、LED70がセルの各々の中心のところに存在する。換言すると、LED70は、二等辺三角形の頂点のところに配置される。図示の測定値は、例示であるに過ぎない。
【0042】
図16Aは、六角形セルを含む光源を部分的に形成するベースプレート90に取り付けられているLED70の斜視図である。説明を簡単にするために7つのLEDが示されているが、理解されるべきこととして、これよりも多い数のLEDを同様な仕方で配置することができる(すなわち、二等辺三角形の角のところに)。図16Bおよび図16Cは、それぞれ、ベースプレート90に取り付けられているLED70の平面図および側面図である。
【0043】
図17Aは、ベースプレート90上に設けられたバッフルプレート92(すなわち、バッフル94を形成する切欠き付きのプレート)の斜視図である。バッフル94の各々は、対応のLED70から伝搬する電磁線のビームを拘束するよう構成されている。一実施形態では、バッフルプレート92は、4mmだけベースプレート90から隔てられるのが良い。一実施形態では、バッフルプレート94の各々は、形状が円形である。図17Bは、ベースプレート90上に設けられたバッフルプレート92の平面図である。図17Bに示されているように、バッフル94の各々は、ベースプレート90に取り付けられた対応のLED70と整列している。図17Cは、ベースプレート90上に設けられたバッフルプレート92の側面図である。
【0044】
図18Aは、バッフルプレート92のバッフル94中にそれぞれ挿入された円形レンズ96の斜視図である。円形レンズ96の各々は、対応のバッフル94からの第1の放射線ビームを受け入れて第1の放射線ビームよりも集束度の高い第2の放射線ビームを投射するよう構成されている。図18Bは、バッフルプレート92のバッフル94中に挿入された円形レンズ96の平面図である。円形レンズの周長は、バッフルの周長よりも大きいのが良く、その結果、円形レンズのリムは、バッフルプレート92の頂面上に載ることができる。図18Cは、バッフルプレート92のバッフル94中に挿入された円形レンズ96の側面図である。図18Cに示されているように、円形レンズ96の底部分は、バッフル94から突き出るのが良い。一実施形態では、円形レンズ96は、プラスチックで作られた平凸レンズであるのが良い。別の実施形態では、円形レンズ96は、両凸レンズであるのが良い。
【0045】
図19Aは、円形レンズ96上に設けられた六角形レンズ98の斜視図である。六角形レンズ98の各々は、対応の円形レンズ96からの第2の放射線ビームを受け入れ、そして第3のビーム(これは実質的に平行にされている)を焦点面120の方へ投射するよう構成されている。六角形レンズ98の各々は、凸状頂面98Aおよび6つの平坦な側壁98Bを有するのが良い。特に、頂面98Aは、非球面であるのが良い。種々の実施形態では、素子50は、六角形セル相互間に(すなわち仕切り、ダイヤフラム)を形成する薄い材料シートであるのが良い。他の場合、素子50は、レンズ98の各々を包囲した覆いまたは被膜、クラッディングであるのが良い。特定の一実施例では、素子50は、レンズ98を互いに結合する光学的に不透明な(光硬化性液体ポリマーを硬化させる放射線の波長の状態にある)接着剤であるのが良い。
【0046】
比較のため、不透明な接着剤50は、正方形セル実施形態の仕切り74の役割を果たすことが注目される。不透明接着剤50の厚さ(例えば、5ミクロン)は、仕切り壁74の厚さ(例えば、1mm)よりも実質的に小さいので、不透明接着剤50に起因するシャドー効果は、仕切り74のシャドー効果と比較して実質的に低い。その結果、六角形セル光源に必要な不透明接着剤50のシャドー効果についての補償が事実上なく、その結果、セルエッジのところの非一様性が小さくなる。図19Bおよび図19Cは、それぞれ、円形レンズ46上に設けられた六角形レンズ98の平面図および側面図である。六角形レンズ98の底面98Cが部分的に図19Cに見える。互いにくっつけられる六角形レンズ98のアンサンブルまたは組み合わせの周囲を支持するために構造体(図示せず)が用いられる。
【0047】
図20は、本発明の一実施形態に従って光エンジン1つの六角形セルと関連したある特定のコンポーネントの斜視図である。図20には、頂面98A、6つの側面98B、および底面98Cを備えた六角形レンズ98が記載されている。円形レンズ96が六角形レンズ98とLED70との間に設けられている。図20にはバッフルが図示されていない。多数のかかるレンズが光エンジン全体内に存在するのが良い。さらに、上記説明では1つのLEDが各セルについて存在しているが、別の実施形態では、多数のLED(例えば、1つまたは2つ以上のUV、1つの赤色、1つの緑色、および/または1つの青色LED)が各セル内に存在していても良い。
【0048】
上述の実施形態に加えて、本発明の別の実施形態は、レンズアレイをなした正方形または他のレンズに代えて、テレセントリックレンズを採用することができる。テレセントリックレンズは、複合レンズであり、本発明の実施形態は、無限遠のところに入射瞳と出射瞳の両方を有するものとして特徴づけられるバイテレセントリックレンズを採用するのが良い。バイテレセントリックレンズの使用により、平行光源からの照明の際の像ディストーション(例えば、糸巻き型歪曲および/または樽型歪曲)および他の誤差を減少させることができる。
【0049】
変形例として、上述の正方形レンズまたは他のレンズに代えて、レンズアレイ中にフレネルレンズを採用しても良い。例えば、ヴ等(Vu et al.),「エルイーディー・ユニフォーム・イルミネーション・ユージング・ダブル・リニア・フレネル・レンズ・フォー・エネルギー・セービング(LED Uniform Illumination Using Double Linear Fresnel for Energy Saving)」,エナジーズ(Energies)2017年,10,2091(2017年12月11日)は、LEDのアレイのためのかかるコリメータの使用を記載している。本発明の実施形態では、直線フレネルレンズアレイは、所望の焦点距離が得られるよう比較的薄いという利点を提供する。LED源からできるだけ多くの光を捕捉するため、追加のプリズム素子を用いてLEDによって放出された光を個々のレンズ素子に方向づけるのが良い。代替的にまたは追加的に、個々のLEDは、もしそのように構成されていなければバッフルによって吸収される追加の光の方向をアレイのレンズに向け直すようレフレクタによって包囲されても良い。
【0050】
上述の実施形態では、LEDおよび平行光学系の直線配置状態を説明したが、他の配置状態の採用が可能である。例えば、LEDがタンク中への最終的な光投射平面に対して直交方向に光を放出するよう配置されている側照明配置状態を用いることができる。かかる「側照明」または「縁照明」配置状態は、光をLCDユニットに方向づけるようコリメートフィルム、例えばミネソタ州セントポール所在のスリーエム・カンパニー(3M Company)製のいわゆるブライトネス・エンハンスメント・フィルムズ(Brightness Enhancement Films)を採用するのが良い。これらフィルムは、入射光の方向を変えるようプリズム構造を採用している。
【0051】
さらに、光源としてのLEDの使用を上述の実施形態と関連して説明したが、他の光源を採用することができる。例えば、水銀アーク灯が伝統的にフォトリソグラフィ用途において紫外線の源として用いられており、かかる水銀アーク灯を同様に、本明細書において説明したように光エンジンに採用することができる。
【0052】
かくして、立体物の形成のために液体ポリマーの光硬化を利用する3Dプリンティング装置で用いられる光エンジンについて説明した。
なお、好ましい構成態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. 放射線への暴露によって光硬化性液体ポリマーを光硬化させることによって立体物を形成する装置であって、前記液体ポリマーを収容したタンクと、前記放射線を放出する平行光源とを有し、前記光硬化性液体ポリマーは、前記タンクに設けられている開口部を通って硬化される、立体物の形成装置。
2. 前記平行光源は、発光ダイオード(LED)源のアレイから成り、前記LED源のうちの少なくとも幾つかは、放射線を400~700nmの波長で放出するよう構成されている、上記1記載の立体物の形成装置。
3. 前記平行光源は、発光ダイオード(LED)源のアレイから成り、前記LED源のうちの少なくとも幾つかは、放射線を410nmの波長で放出するよう構成されている、上記2記載の立体物の形成装置。
4. 前記平行光源は、バッフルのアレイおよびレンズのアレイをさらに有し、前記バッフルは、前記LED源のアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅を前記レンズのアレイに属する一レンズのほぼ直径に制限するよう配置され、前記レンズのアレイは、前記LED源のアレイから焦点距離1つ分のところに配置されている、上記3記載の立体物の形成装置。
5. 前記LED源のうちの1つまたは2つ以上は、放射線を複数の波長で放出するよう構成されている、上記2記載の立体物の形成装置。
6. 前記平行光源は、バッフルのアレイおよびレンズのアレイをさらに有し、前記バッフルは、前記LED源のアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅を前記レンズのアレイに属する一レンズのほぼ直径に制限するよう配置され、前記レンズのアレイは、前記LED源のアレイから焦点距離1つ分のところに配置されている、上記2記載の立体物の形成装置。
7. 前記平行光源は、液晶ディスプレイ(“LCD”)をさらに有し、前記LCDは、前記LEDのアレイと前記タンク内に設けられた一領域との間に位置決めされ、物体が前記一領域内において前記光硬化性液体ポリマーの光硬化によって作製される、上記2記載の立体物の形成装置。
8. 前記LCDは、複数のフィルタを含み、前記複数のフィルタの各フィルタは、放出された放射線の前記波長のうちの1つに対応している、上記7記載の立体物の形成装置。
9. 前記LED源のうちの1つまたは2つ以上は、複数のLEDエミッタから成り、前記エミッタの各々は、放射線を1つまたは2つ以上の波長で放出するよう構成されている、上記2記載の立体物の形成装置。
10. 前記平行光源は、
複数の発光ダイオード(LED)群を有し、前記LED群の各々に対応して、
(i)前記LED群から伝搬している電磁線の第1のビームを拘束するとともに方向づけるよう構成されたバッフルと、
(ii)前記電磁線の第1のビームを受け入れて電磁線の第2のビームを投射するよう構成されたレンズ配列体とを有し、前記電磁線の第2のビームは、実質的に互いに平行な光線によって特徴づけられる、上記1記載の立体物の形成装置。
11. 前記複数のLED群の各々は、2つ以上のLEDを含む、上記10記載の立体物の形成装置。
12. 放射線に暴露された光硬化性液体ポリマーを光硬化させることによって立体物を形成する方法であって、前記立体物は、前記放射線に対して透明なシートと支持プレート、すなわち前記立体物のすでに形成された一部分との間の空間内で、前記光硬化性液体ポリマーの漸次硬化に起因して成長により生じ、前記支持プレートは、前記透明なシートから徐々に遠ざかる、方法において、前記光硬化性液体ポリマーを平行光源からの照射によって硬化させる、立体物の形成方法。
13. 前記平行光源は、発光ダイオード(LED)源のアレイから成る、上記12記載の立体物の形成方法。
14. 前記LED源は、放射線を400~700nmの波長で放出する、上記13記載の立体物の形成方法。
15. 前記平行光源は、バッフルのアレイおよびレンズのアレイを含み、前記バッフルは、前記LED源のアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅を前記レンズのアレイに属する一レンズのほぼ直径に制限するよう配置され、前記レンズのアレイは、前記LED源のアレイから焦点距離1つ分のところに配置されている、上記13記載の立体物の形成方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20