(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】化学発光体
(51)【国際特許分類】
F21K 2/06 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
F21K2/06
(21)【出願番号】P 2019571138
(86)(22)【出願日】2018-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2018003989
(87)【国際公開番号】W WO2019155521
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000230630
【氏名又は名称】株式会社ルミカ
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】原田 士郎
(72)【発明者】
【氏名】山手 哲郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5980055(US,A)
【文献】特開2000-90701(JP,A)
【文献】特開2001-70124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が密閉可能であり中空空間を有する外部ケースと、
前記外部ケースの前記中空空間に内包される少なくとも二つのアンプルと、
第一の化学発光用組成物と第二の化学発光用組成物との一対の化学発光用組成物と、
前記外部ケースの前記中空空間の内部に配置される吸液材と、
を有する化学発光体であって、
前記第一の化学発光用組成物は、第一のアンプルの内部に充填され、前記第二の化学発光用組成物は第二のアンプルの内部に充填され
、
前記外部ケース内において、前記アンプルを保持するアンプル保持部材であって、
前記アンプルの一部を外部ケース内で固定する固定部を有し、
前記固定部と離れたアンプルの押圧位置に対応する外部ケースの位置を押圧することで前記アンプルが破割する化学発光体。
【請求項2】
両端が密閉可能であり中空空間を有する外部ケースと、
前記外部ケースの前記中空空間に内包される少なくとも一つのアンプルと、
第一の化学発光用組成物と第二の化学発光用組成物との一対の化学発光用組成物と、
前記外部ケースの前記中空空間の内部に配置される吸液材と、
を有する化学発光体であって、
前記第一の化学発光用組成物は前記アンプルの内部に充填され
前記第二の化学発光用組成物は、前記外部ケースの前記中空空間の内部であり、かつ、前記アンプルの外部の第一空間に充填され
、
前記外部ケース内において、前記アンプルを保持するアンプル保持部材であって、
前記アンプルの一部を外部ケース内で固定する固定部を有し、
前記固定部と離れたアンプルの押圧位置に対応する外部ケースの位置を押圧することで前記アンプルが破割する化学発光体。
【請求項3】
前記アンプル保持部材が、前記アンプルの押圧位置に対応し前記アンプルを保持し前記固定部方向に可撓性の可撓性保持部を有する、請求項
1または2に記載の化学発光体。
【請求項4】
前記吸液材が、シュウ酸エステル、触媒、および蛍光物質からなる群から選択される少なくとも1以上の成分を担持したものである請求項1~
3のいずれかに記載の化学発光体。
【請求項5】
前記吸液材がシート状であり、前記外部ケースの内周面に沿って配置されたものである請求項1~
4のいずれかに記載の化学発光体。
【請求項6】
前記吸液材が、その少なくとも一部に蛍光剤を含侵されたものである請求項1~
5のいずれかに記載の化学発光体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学発光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンサートライトのようにイベント時に用いられるライトや防災用ライト等の手持ち型ライト、夜間の釣り用に使用される浮き、セレモニー会場の装飾等のように、化学発光用蛍光液と化学発光用酸化液の組み合わせのような2種類の液体や固体を混合させることで化学発光を生じさせる化学発光体が広く用いられている(特許文献1、2)。
【0003】
これらの化学発光体は、前述の特許文献1や2に示されるように、筒状容器内(外部ケース内)に、さらにガラスアンプル等の内筒を設け、一方の液(または固体)をこの内筒内に充填し、その内筒の外側でありかつ外部ケース内に他方の液を充填し、保管時においては2種の液が内筒(ガラスアンプルの場合、ガラス)によって分離されるものの、使用時には化学発光体を折り曲げることで内筒が破割し、2種の液(または液と固体)が混合し筒状容器内で化学発光が生じる構成として提案され利用されている。
【0004】
特許文献3には、化学発光体を大型化しても軽量とするものとして、外部ケースの略中央に配置されるスペーサーを有する化学発光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4044934号公報
【文献】特開平8-280421号公報
【文献】特許6138743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献等に開示されるように、円柱状等の形状を有する種々の化学発光体が開示されている。これらの化学発光体は、その筒(外部ケース)内にアンプルや、化学発光用組成物の液等が内包されている。
化学発光体の筒内に化学発光用組成物の液を充填しすぎると、化学発光反応が起きる際に発生するガス(CO2)により外部ケースが変形して液漏れが生じる恐れがある。また、蓋を設ける溶封などのとき、液漏れや溶封熱等による反応等が生じる恐れがある。また、気温差等により化学発光体内で溶媒の蒸発等による内圧変化等が生じて変形や液漏れ等が生じる恐れがある。このため、化学発光体内は容量の限界付近まで組成物等が充満された状態とせず、容量に余裕がある状態に内容量(液量)等が調整される。
一方、化学発光体内では、化学発光用組成物がある場所で発光する。すなわち、化学発光体の外部ケース内の化学発光用組成物の容積の高さ(液面等)がその発光範囲となる。化学発光体容器内に液が充満されていない空間があると、その空間は発光されていないため、発光面積は制限されたものとなっていた。係る状況下、本発明は、発光面積がより広い化学発光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 両端が密閉可能であり中空空間を有する外部ケースと、
前記外部ケースの前記中空空間に内包される少なくとも二つのアンプルと、
第一の化学発光用組成物と第二の化学発光用組成物との一対の化学発光用組成物と、
前記外部ケースの前記中空空間の内部に配置される吸液材と、を有する化学発光体であって、
前記第一の化学発光用組成物は、第一のアンプルの内部に充填され、前記第二の化学発光用組成物は第二のアンプルの内部に充填される化学発光体。
<2> 両端が密閉可能であり中空空間を有する外部ケースと、
前記外部ケースの前記中空空間に内包される少なくとも一つのアンプルと、
第一の化学発光用組成物と第二の化学発光用組成物との一対の化学発光用組成物と、
前記外部ケースの前記中空空間の内部に配置される吸液材と、を有する化学発光体であって、
前記第一の化学発光用組成物は前記アンプルの内部に充填され
前記第二の化学発光用組成物は、前記外部ケースの前記中空空間の内部であり、かつ、前記アンプルの外部の第一空間に充填される化学発光体。
<3> 前記外部ケース内において、前記アンプルを保持するアンプル保持部材であって、
前記アンプルの一部を前記外部ケース内で固定する固定部を有し、前記固定部と離れたアンプルの押圧位置に対応する外部ケースの位置を押圧することで前記アンプルが破割する前記<1>または<2>に記載の化学発光体。
<4> 前記アンプル保持部材が、前記アンプルの押圧位置に対応し前記アンプルを保持し前記固定部方向に可撓性の可撓性保持部を有する、前記<3>記載の化学発光体。
<5> 前記吸液材が、シュウ酸エステル、触媒、および蛍光物質からなる群から選択される少なくとも1以上の成分を担持したものである前記<1>~<4>のいずれかに記載の化学発光体。
<6> 前記吸液材がシート状であり、前記外部ケースの内周面に沿って配置されたものである前記<1>~<5>のいずれかに記載の化学発光体。
<7> 前記吸液材が、その少なくとも一部に蛍光剤を含侵されたものである前記<1>~<6>のいずれかに記載の化学発光体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化学発光体は、化学発光用組成物の内容量による液面等に対してより広範な発光面積を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る化学発光体の斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る化学発光体の断面図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係る化学発光体の部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係る化学発光体の正面図である。
【
図5】本発明の第二の実施形態に係る化学発光体に用いるアンプル保持部材を説明するための図である。(a)はアンプル保持部材の正面図、(b)はアンプル保持部材の平面図、(c)はアンプル保持部材の斜視図、(d)はアンプル保持部材の断面図である。
【
図6】本発明の第二の実施形態に係る化学発光体に用いるアンプル保持部材がアンプルを保持した状態を示す図である。
【
図7】本発明の第二の実施形態に係る化学発光体を組み立てる工程の一部を説明するための図である。
【
図8】本発明の第二の実施形態に係る化学発光体を使用するときの状態を説明するための概略図である。(a)はアンプル破割前の状態を説明する図であり、(b)はアンプル破割後の状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0012】
[第一の実施形態]
図1~3は、本発明の化学発光体の第一の実施形態を示すものである。
図1は化学発光体100の全体構造を示す斜視図である。化学発光体100は、外部ケース1と、吸液材2と、アンプル3と、スペーサー4とを有する。外部ケース1の中に、吸液材2と、アンプル3と、スペーサー4と収容されており、外部ケース1の両端は蓋部11、12によりそれぞれ密閉されている。
【0013】
図2は、
図1に示す化学発光体100のA-A断面図である。
図3は、
図1に示す化学発光体100の蓋部11を上側としたときの、一部拡大略断面図である。スペーサー4の溝部41にアンプル3が嵌め込まれる。アンプル3には第一の化学発光用組成物5が収容されている。スペーサー4およびアンプル3と、外部ケース1との間には空間7が形成されている。空間7で、スペーサー4とアンプル3との周囲に沿って吸液材2が設けられる。空間7には第二の化学発光用組成物6が収容され、この第二の化学発光用組成物6は、吸液材2に吸液され保持され、吸液材2の吸液量を超えるものは空間7で流動可能である。この空間7に吸液材2は配置され、筒状を有する外部ケース1の内周面に沿って配置される。
【0014】
化学発光体100は、例えば、以下のように製造することができる。外部ケース1に蓋部12を設けて溶着させ、外部ケース1の蓋部11を設ける側を開放状態とする。この開放された側から、外部ケース1の内周に沿うように吸液材2のシートを配置するように挿し込む。次に、開放された側からスペーサー4を、外部ケース1の略中央に配置されるように挿し込む。次に、予め第一の化学発光用組成物5が収容されて溶封されているアンプル3を、スペーサー4の溝部に挿し込む。次に、スペーサー4と外部ケース1との隙間に第二の化学発光用組成物6を流し込む。その後、外部ケース1に蓋部11を溶着する。これにより、化学発光体100は製造される。化学発光体100は、外部ケース1の内部で吸液材2に、第二の化学発光用組成物6が吸液されて、化学発光体100を振ったりすることで吸液材2の全体に第二の化学発光用組成物6が含浸された状態となる。
【0015】
使用時には、外部ケース1の外側からアンプル3が配置された位置を押したり、化学発光体100全体に折り曲げの力を加えることで、アンプル3が破割し、アンプル3に収容されていた第一の化学発光用組成物5が、外部ケース1内の空間7に放出される。この第一の化学発光用組成物5(例えば、化学発光用酸化液)が、第二の化学発光用組成物6(例えば、化学発光用蛍光液)と接することで、化学発光が生じる。第二の化学発光用組成物6は吸液材2の全体に吸液された状態であり、化学発光体100を振ると第一の化学発光用組成物5が、外部ケース1内に拡がり、吸液材2が配置された部分全体で、化学発光が生じる。よって、化学発光体100は、その端から端まで全体的に均一に発光して見える。これは従来の場合、化学発光用組成物が筒の下部に集まり、その範囲のみ発光していたものよりも広く発光したものとなる。
【0016】
[第二の実施形態]
図4~9は、本発明の化学発光体の第二の実施形態を示すものである。
図4は化学発光体101の全体構造を示す正面図である。化学発光体101は、外部ケース1と、吸液材2と、アンプル31と、アンプル32(
図6)と、アンプル保持部材8とを有する。外部ケース1の中に、吸液材2と、アンプル保持部材8が収容されており、アンプル保持部材8にアンプル31とアンプル32とが保持されている。外部ケース1の両端は蓋部11、12によりそれぞれ密閉されている。
【0017】
図5は化学発光体101に用いられているアンプル保持部材8の詳細を説明するための図である。
図5(a)はアンプル保持部材8の正面図である。
図5(b)はアンプル保持部材8の平面図である。
図5(c)はアンプル保持部材8の斜視図である。
図5(d)はアンプル保持部材8のB-B(
図5(b))断面図である。
【0018】
アンプル保持部材8は、固定部81と、アンプル保持部82とを有し、アンプル保持部82は固定部81と可撓性連結部83で連結されている。また、アンプル保持部材8は、アンプル固定部84と、アンプル固定部84と固定部81とを連結する連結部85を有する。アンプル保持部材8は、2本のアンプルを保持することができ、第一のアンプルがアンプル保持部821からアンプル固定部841間に配置され、第二のアンプルがアンプル保持部822からアンプル固定部842間に配置される。アンプル保持部材8は、化学発光体101において、固定部81が吸液材2に接し、さらに外部ケース1に近接する配置となる。アンプル保持部材8は、固定部81が固定された状態で、アンプル保持部82を
図5(a)における上側方向に押すことで、可撓性連結部83を軸に折り曲げることができる。アンプル保持部82と可撓性連結部83とにより、固定部81方向に可撓性を有する可撓性保持部をなす構造となる。なお、アンプル保持部材8は、化学発光体101における蓋部11となる部分を一体成形した構造である。
【0019】
図6は、アンプル保持部材8に、アンプル31と、アンプル32とを保持させた状態を示す。アンプル31には第一の化学発光用組成物51が収容され、アンプル32には第二の化学発光用組成物61が収容されている。
【0020】
図7は、外部ケース1に蓋部12を設けて一端を閉じた状態に、吸液材2を外部ケース1の内周に沿わせて配置し、外部ケース1の開放端側から、
図6に示すようにアンプル31、32を保持させたアンプル保持部材8を挿し込む工程を説明する図である。このアンプル保持部材8を十分に挿し込み、蓋部11を閉じることで化学発光体101を製造することができる。
【0021】
図8は、化学発光体101を使用するときの操作を説明するための概略正面図である。
図8(a)は化学発光体101を使用するときの押圧位置14等を説明するための概略正面図である。
図8(b)は押圧によりアンプル31が破割した状態等を説明するための図である。
【0022】
図8(a)に示すように、アンプル保持部材8の固定部81と離れたアンプル31の押圧位置14を押圧して使用する。この押圧位置14は、外部ケース1の側部にあり、その内側にアンプル保持部82が近接した部分である。なおアンプル31には第一の化学発光用組成物51が収容されている。押圧位置14を、押圧方向P1に押すだけで、外部ケース1はその押圧位置14付近がわずかに凹む。この凹みにより、アンプル保持部82は可撓性連結部83を軸に固定部81方向へと折り曲げられる。
【0023】
このアンプル保持部82の折り曲げに合わせて、保持されているアンプル31にも折り曲げの力が加わる。アンプル31はガラス製等の折り曲げの力により破割しやすいアンプルで成形され、この折り曲げの力により、可撓性連結部83付近にアンプル破割部311が生じる(
図8(b))。そして、このアンプル破割部311から、アンプル31に収容されていた第一の化学発光用組成物51が放出液511として外部ケース1内の空間71に放出される。
ここではアンプル31を中心に説明したが、アンプル保持部材8に保持されるアンプル32も同様に破割し、そこに収容されている第二の化学発光用組成物61も同様に放出される。
【0024】
アンプル31から放出された第一の化学発光用組成物51と、アンプル32から放出された第二の化学発光用組成物61とは、外部ケース1内の空間71内で適宜混合され、さらに、それぞれの液や混合液は吸液材2に吸液される。化学発光体101を振ることで、外部ケース1内の空間で、混合液等が撹拌され、吸液材2に適宜吸液され、吸液材2が配置された部分全体で化学発光が生じたものとなる。この第二の実施形態にかかる化学発光体101は、前述のように押圧位置14を押すだけで、化学発光を開始させることができる。すなわち、片手でも速やかに化学発光を開始させることができる優れた構造である。また、複数本のアンプルを同時に破割することもできる点でも優れている。
【0025】
外部ケース1は一般的に熱可塑性樹脂組成物等を用いて成形される。そのため、微量ながら通気性を有しており、そこに収容される化学発光用組成物が、長期保管時に劣化等する場合がある。この劣化を避けるためには、双方の化学発光用組成物をより保管時の密閉性が高いガラスアンプル内とすることが考えられる。従来の構造の化学発光体は、化学発光体の内容量(液面)が発光面積となっていたため、できるだけ内容量を多くしたほうが良かった。しかし、液量が増えると化学発光体を大型化するとき重くなってしまう。また、ガラスアンプルを2本用いると、そのガラスアンプル内に収容できる液量の制限が生じてしまい、内容量が少なくなってしまい発光面積が減少する。しかし、本発明のように吸液材2を配置することで、少量の内容量(液量)の化学発光用組成物でも、その化学発光用組成物が効率よく、化学発光体の全体に展開した状態が維持されるため、発光面積が広く、軽量の化学発光体とすることができる。
【0026】
この実施形態に基づいて、例えば、以下のような化学発光体を製造することができる。
・外部ケース1:外径φ30mm(厚み0.7mm)、長さ20cm、PP樹脂組成物製
・蓋部12:外部ケースの内側に嵌め込む大きさでPP樹脂組成物製の蓋部を用いた。
・吸液材2:PP樹脂組成物製不織布シート(厚み150μm)、外部ケースの内壁に沿って巻回して配置。
・アンプル31、32:ガラス製アンプル 内容量30mL
・第一の化学発光用組成物51:アセチルクエン酸トリブチル80質量部と安息香酸20質量部を混合して溶媒(1)を調製した。シュウ酸エステルであるCPPOが0.164mol/L、蛍光剤が3.27mmol/L、残部が前記溶媒(1)として、蛍光液として機能する組成物を調製して、アンプル31に充填して用いた。
・第二の化学発光用組成物61:フタル酸ジメチル70質量部とジエチレングリコールモノエチルエーテル30質量部とを混合して溶媒(2)を調製した。過酸化水素が3質量%、サリチル酸ナトリウムが0.7mmol/L、残部が前記溶媒(2)として、酸化液として機能する組成物を調製して、アンプル32に充填して用いた。
・アンプル保持部材8:アンプル保持部材8として、外部ケース中央で、外部ケースの内壁と接する固定部81を有し、外部ケース中央に可撓性連結部83が配置され、可撓性連結部83から蓋部12側へ50mm伸長しアンプルを保持することができるアンプル保持部82を有するアンプル保持部材8を、PP樹脂組成物で製造した。このアンプル保持部材8は蓋部11と一体成形されている。
・化学発光体の製造:これらの部材等を用いて、化学発光体を作製した。この化学発光体は、外部ケースの最大内容量に対して、非常に少ない液量の化学発光用組成物を収容しているため軽いが、使用時に吸液材が吸液し、発光体全体が均一に発光するものであった。
【0027】
(第二の実施形態の変形例)
なお、第二の実施形態では、アンプルを2本用いて、第一の化学発光用組成物と、第二の化学発光用組成物とをそれぞれに収容させたものを例に説明した。この第一の化学発光用組成物と、第二の化学発光用組成物とは第一の実施形態と同様に、一方の液をアンプル内としてアンプルは1本のみ用いて、他方の液は、外部ケース内であり、そのアンプルの外に収容させる形式としてもよい。
【0028】
(外部ケース1)
本発明の化学発光体は、両端が密閉された外部ケースを有する。この外部ケースの内部であり、かつ外部ケースに内包されるアンプルの外部には化学発光用組成物の一方の組成物が充填される場合がある。外部ケースは、外部ケースの長さ方向に延びる単一の中空空間を有する。
外部ケースは、樹脂製容器が一般的であり、この容器は樹脂を用いて射出成形等の樹脂成形法により成形される。この樹脂としては、耐熱性、耐溶剤性、機械強度といった観点から、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等を主とするものが一般的に用いられる。例えば、ポリプロピレンの場合、適宜、添加剤が加えられたポリプロピレン樹脂組成物が市販されており、このような樹脂組成物により製造される容器は樹脂としてポリプロピレンを採用した樹脂組成物製の化学発光体の外部ケースとなる。
また、使用時に化学発光体内部の化学発光による光の分散性を向上させるために、樹脂組成物に適宜、光分散剤を加えたり、色調を変えるために着色剤を混合して外部ケースを製造してもよい。
また、製造条件の制御によって結晶化度をコントロールする等して、白濁状態の光分散性が高い容器としてもよい。
【0029】
(外部ケースの成形)
本発明の外部ケースは、前述のように樹脂製である。ここで、外部ケースは、外部ケース内に、アンプル、化学発光用の化学組成物等を加えた後、所定の方法で密閉された外部ケースとなる。この密閉方法の代表的な方法としては、外部ケース用の本体容器に当該容器の横断面を閉塞する蓋部を取り付ける方法が挙げられ、具体的な蓋部の取り付け方として、熱溶着により蓋部を取り付ける方法が挙げられる。この蓋部を取り付けるにあたっては、その蓋部を取り付けるためのスペースが外部ケース用の本体容器に設けられる。さらには、その蓋部は熱溶着等を行いやすいように、外部ケースを円柱状とし、溶着部はその円周部とするように溶着しやすい構造であることが好ましい。
【0030】
この外部ケースは、適宜、化学発光体の用途に合わせた任意の形状としてよいが、円筒状や柱状、略直方体状のものなどを用いることができる。本発明の化学発光体は、収容させる液量が少なくても広範な発光面積をえることができるため、径を太くしたり、長さを長くすることで広い発光面積を有する化学発光体の設計に適している。この発光面積はこの外部ケースの大きさにも依存する。また、外部ケースに螺合部や、クリップのような係止部等の他の部材と連結することができる連結部を設けてもよい。このような連結部を有する場合、被連結部を有する他の部材と組み合わせてより広範な用途に使用しやすくなる。
【0031】
具体的な外部ケースの大きさは、例えば、断面の円相当に換算したとき20mmφ~40mmφや、28mmφ~32mmφとすることができる。また、例えばその長さは、長さ下限は100mm以上や、150mm以上、180mm以上とすることができ、長さの上限は500mm以下や、400mm以下、300mm以下とすることができる。また、外部ケースの筒の厚みは化学発光体として十分な機械強度や液漏れ等を防止でき、同時に内部のアンプル等を破割する押圧や折り曲げができる範囲で適宜設定される。具体的な厚みとしてその下限は、0.4mm以上が好ましく、0.5mm以上や、0.6mm以上とすることもできる。厚みの上限は、1.5mm以下が好ましく、1.2mm以下や、1.0mm以下とすることもできる。
【0032】
(吸液材2)
本発明の化学発光体は、外部ケースの内部に配置される吸液材を有する。この吸液材は化学発光用組成物を吸液するものである。吸液材は、化学発光用組成物を吸液し、化学発光時に発光面となる。吸液材には、多孔性シートなどを用いることができる。多孔性シートとは、多量の細孔があるシートである。このようなシートとしては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、レーヨンなどを素材とする織布や不織布等が挙げられ、これらの素材を単独で用いた不織布や、あるいは複数組み合わせた複合不織布等を用いることができる。この多孔性シートの厚みは30μm以上程度のものが用いられ、化学発光体の用途にも併せて適宜、その厚みの下限は50μm以上や、80μm以上、100μm以上のものを用いてもよい。また、その厚みの上限は、適宜、2mm以下や1mm以下、500μm以下程度の厚みのものが用いられる。吸液材は蓋部に接する面にも配置することができ、発光面積を広げることができる。
【0033】
吸液材は、化学発光時に液状の化学発光用組成物のいずれかを吸液することができればよく、非使用時には吸液していない状態であってもよい。吸液材は、化学発光用組成物のいずれかを吸液したり、粉状や液状、ゲル状のような高粘度の液状等、種々の状態の化学発光用組成物を浸透させ保持、担持させてもよい。この吸液材には、化学発光用組成物の浸透・保持性と、化学発光体の外部ケース内で形状を維持させるための一定の形状保持性(機械的強度)を有することが好ましい。また、化学発光用組成物に用いられる化合物、特に溶媒に一定の耐性があり、それらの化合物と接しても分解しにくいことが好ましい。このために、適宜、複数の素材を組み合わせた複合不織布を用いてもよい。
【0034】
吸液材は、シュウ酸エステル、触媒および蛍光剤からなる群から選択されるいずれかを担持したものとすることができる。これらの成分は単独で粉体上のものでもよく、粉体そのまま担持させたり、スラリー状にして吸液材に含浸させ乾燥させてスラリーの分散媒等を揮発させて担持させた状態としてもよい。このように担持させることで、吸液材に直接、化学発光に寄与する成分を高濃度で担持させることもでき発光強度を向上させることができる。また、これらの成分が担持した吸液材の部分が発光しやすくなる。
【0035】
この吸液材は、化学発光体の外部ケースの形状に合わせて内部に配置される。この配置はできるだけ吸液材の配置位置が広範なものとなるように配置されることが好ましい。このような構成とすることで、化学発光体内で鉛直方向の下側に組成物がたまることを防ぐことができ、化学発光体全体に広く均一な発光部を設けることができる。
外部ケース内で化学発光体が安定するように、外部ケースと吸液材とを複数個所、加熱溶着や、接着剤等により接着させることもできる。この接着は外部ケースの蓋部等と行ってもよい。これにより、吸液材が化学発光体の外部ケース内での移動や、剥離などを防止できる。
【0036】
配置される吸液材は、外部ケース内に複数の層を有するように配置するものであってもよい。すなわち、複数枚の吸液材を配置したり、1枚の吸液材を折り曲げて複数の層となるように配置してもよい。複数の層を有するように配置することで、それぞれの層(シート)の吸液量を制御して発光性を調整したり、層間に化学発光用組成物を挟み込んで担持させたり、吸液材としての機械的強度を向上させたりといった設計を行うこともできる。また、この複数の層として配置することで、化学発光体内の内部構造がより見えにくくなるため、全体として化学発光の光のみが認識される意匠性に優れたものとなる。
【0037】
吸液材は、文字や図形、模様等を設けたものであってもよい。吸液材は一部前述したように、多孔性シートなどが用いられる。一般に化学発光体に用いられる外部ケースはポリオレフィン系、特にポリプロピレン樹脂等が用いられる。このポリプロピレン樹脂等を容器のように平滑性が高い状態とすると文字や図形等の印刷等が難しい場合がある。また、化学発光体の内側で発光した光の外の文字や図形等となるため発光を遮る配置となる。しかし、吸液材に文字や図形等を設けると、多孔性シート等の繊維間などにより印刷等も容易となる。また、吸液材は、その少なくとも一部に蛍光剤が含侵されたものとすることができる。化学発光用組成物と微視的にも隣接した状態となり、外部ケースと吸液材との間の化学発光用組成物が発光し吸液材の印刷等はその光に照らされる配置も取りうることから、明るく表示される効果も得られる。この印刷等は、各種染料や顔料等により行うことができる。特に化学発光の光を利用するために、蛍光剤を含むインク等を用いることが好ましく、この蛍光剤が吸液材に担持されたものとなっている。これらの蛍光剤は化学発光用組成物の蛍光物質と共通するものでもよく、他の蓄光剤等を用いてもよい。
【0038】
(アンプル3(31、32))
本発明の化学発光体は、非使用時(保管時等)は、2種の化学発光用組成物が混合されないように化学発光体の外部ケースに内包されるアンプルによって分離される。外部ケースの内部であり、かつ、アンプルの外部に化学発光用組成物の一方の組成物が充填されたものとすることができる。または対となる化学発光用組成物がそれぞれに収容されている2本以上のアンプルを用いてもよい。なお、アンプルは複数の色素を含む組成物を別々に設けるなどして、3本以上としてもよい。
アンプル内部には、対となる化学発光用組成物のいずれかが内包されている。例えば、アンプル内に蛍光液または酸化液いずれか一方を充填し、外部ケース内には他方の液が充填されるか、またはそれぞれ異なるアンプル内に、蛍光液、酸化液をそれぞれ充填し密封されている。
【0039】
このアンプルは、折り曲げの力が加わった時に、外部ケース内で割れるアンプルであればよく、一般的にはガラス製のアンプルが用いられる。ガラス製とすることで、非使用時には外部の液と内部の液の混合を遮断することができ、さらに、化学発光体にかける力によって、適度に割れやすいものとすることができるためである。なお、化学発光体にかける力は、破割性アンプルが破割する程度の折り曲げ等であれば足り、特にガラス製の破割性アンプルとする場合、その折り曲げは緩やかなカーブを描く程度の折り曲げでよい。さらには、アンプル保持部材を用いることで折り曲げよりも弱い、外部ケースに対する押圧程度のわずかな凹みで片手でも簡易にアンプルを破割させることもできる。
【0040】
(スペーサー4)
本発明の化学発光体は、外部ケースの内部にスペーサーを設けてもよい。スペーサーを設けることで全体としての重量を低減させやすいため、径を太くしたり、長さを長くすることで広い発光面積を有する化学発光体の設計に適している。
【0041】
また、本発明の化学発光体は、前記外部ケースの略中央に配置されるスペーサーであって、前記スペーサーの外縁にアンプルを収容する保持部を有し、前記外部ケースの略中央に配置されることで前記外部ケースと前記スペーサーとの間に化学発光用組成物が充填される隙間(空間)が生じるスペーサーを有することができる。このスペーサーにより、外部ケースに内包される化学発光用組成物量を低減することができる。また、スペーサーに設けられた保持部にアンプルを収容することで、そのアンプルを安定して保持することができる。
【0042】
スペーサーを用いるとき、スペーサーと外部ケースとの間に生じる隙間(空間)に化学発光用組成物の一方の組成物を充填することができ、この隙間に充填されている化学発光用組成物の一方の組成物がアンプルを破割した時にアンプル内の他方の組成物と反応することで化学発光して化学発光体の外部ケース内で発光する。このとき化学発光体の外部ケースの外周部に相当する部分が発光面となり、その化学発光体の外周部の周方向全体がほぼ均一に発光しやすいようにスペーサーは略中央の外部ケースと同じ軸心上に設けておき、スペーサーと外部ケースとの隙間に吸液材を配置し、化学発光体の外周部に発光面が得られるように配置することが好ましい。このスペーサーと外部ケースとの間に生じる隙間は、例えば約0.3mm~5mm程度の隙間とすることができる。
【0043】
このスペーサーはその外縁にアンプルを収容する保持部を有することができる。この保持部は、スペーサーの長さ方向に沿って設けられた溝部のような形状で達成することができる。この溝部にアンプルをはめ込むように収容することができる。この保持部にアンプルを保持させることで、非使用時には、内部のアンプルが破割しないように保護し、一方で、使用時に軽い折り曲げの力などを加えれば容易に破割することができるような、使用しやすい化学発光体とすることができる。前記スペーサーに設けられたアンプルを収容する保持部は、スペーサーに2個以上5個以下程度設けることが好ましい。本発明の化学発光体は、その直径が太いものを得るときに好ましい形状である。このため、その広い外周面に沿って化学発光用組成物、特にアンプルを破割した後のアンプル内の化学発光用組成物が放出されやすく、混合されやすいように、外縁の複数の位置にアンプルが設けられていることが好ましい。また、そのような配置とすることで、バランスのとれた美感と、重量感を得ることができる。
【0044】
本発明において、このスペーサーを化学発光用組成物よりも比重が軽いものを採用することで、化学発光体全体の軽量化にも資することができる。また、化学発光用組成物を吸液しないような素材を用いることで、スペーサー内部に化学発光用組成物が含有される量も減るため、より軽量化しやすくなる。さらに、スペーサーとして光散乱性の高い白色物質等を用いることで、使用時に化学発光体ないで発光する化学発光用組成物による発光の色の変化を少なくし、かつ、光損失を少なくし外部に散乱させ高い輝度とすることが期待される。このような観点から、スペーサーは、発泡樹脂製の発泡体であることが好ましい。また、スペーサーは、化学発光用組成物に用いられる溶剤等に対する耐溶剤性等も有することが好ましい。このようなスペーサーとしては、ポリエチレン(PE)および/またはポリプロピレン(PP)の発泡樹脂製の発泡体を用いることが好ましい。
【0045】
(第一の化学発光用組成物5(51)、第二の化学発光用組成物6(61))
本発明は、2種の化学発光用組成物を混合することで化学発光を生じさせる化学発光体に関する。ここで、混合することで化学発光を生じさせる2種の組成物とは、例えば、化学発光用蛍光液(シュウ酸エステルと色素(蛍光物質)、溶媒等)と化学発光用酸化液(過酸化水素水のような酸化剤と触媒成分、溶媒等)のような液状のものが一般的であるが、これらの液と同様に混合することで化学発光を生じさせる液状や、粉体状や粒状の固体状のものなど、種々の化学発光用組成物を用いることができる。本願においては、この一方を第一の化学発光用組成物とよび、他方を第二の化学発光用組成物と呼ぶ場合がある。この組成物は双方が液状の場合、混合性に優れており全体で均一な発光を速やかに生じさせやすく好ましい。
なお、ここで混合することで化学発光を生じさせるものは、一般的にそれぞれを複数の化合物等の組成物として調製されるが、本発明においては単独の物質で用いることができるようなものも含めて組成物と表記する。
【0046】
本発明においては、一部前述したように、吸液材が、シュウ酸エステル、触媒、および蛍光物質からなる群から選択される少なくとも1以上の成分を担持したものでもよい。これらの成分は、化学発光用組成物を構成する成分として用いられるものである。
シュウ酸エステルとしては、例えば、CPPO(Bis(2,4,5-trichloro-6-carbopentoxyphenyl)oxalate:ビス(2,4,5-トリクロロ-6-カルボペントキシフェニル)オキサレート)や、CIPO(Bis[3,4,6-trichloro-2-(3-methylbutyloxycarbonyl)pheny]oxalate:ビス[3,4,6-トリクロロー2-(3-メチルブチルオキシカルボニル)フェニル]オキサレート)等を用いることができる。これらのシュウ酸エステルはシュウ酸組成物として担持させてもよい。シュウ酸組成物は、シュウ酸エステル等を含むもので、化学発光用組成物として用いることができ、主としてシュウ酸エステルを含む組成物である。例えば、組成物のうちシュウ酸エステルを50質量%以上や80質量%以上、90質量%以上含むものを用いることができ、シュウ酸エステルからなるものも含む概念である。シュウ酸エステル自体が常温で固体のため、その粉状で吸液材と接したり、適宜溶媒等により分散させることで担持させることができる。他の成分としては、溶媒や触媒、色素等を混合した組成物としてもよい。
【0047】
触媒としては、化学発光の触媒として使用できるものを適宜用いることができ、サリチル酸リチウム、サリチル酸アンモニウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸テトラアルキルアンモニウム塩等のサリチル酸およびその誘導体や、テトラブチルアンモニウムサリシレート(TBAS)、安息香酸ナトリウム等を用いることができる。通常、化学発光用組成物に用いられる酸化液に対し0.1mmol/Lから10mmol/L程度含まれ、化学発光体としてそれに相当する量程度を吸液材に担持させてもよい。
【0048】
蛍光物質としては、300~1200nmにスペクトル発光を有し、且つ、酸化液溶媒に少なくとも部分的に可溶な蛍光化合物であれば特に制限はない。これらの蛍光化合物としては、アントラセン、置換アントラセン、ベンゾアントラセン、フェナントレン、置換フェナントレン、ナフタセン、置換ナフタセン、ペンタセン、置換ペンタセン、ペリレン、置換ペリレン、ビオラントロン、置換ビオラントロン、ナフタルイミド、置換ナフタルイミドなどの縮合環を有する共役多環芳香族化合物が例示される。上記化合物の置換基としては、発光反応を妨げない限りにおいて特に制限はなく、フェニル基、低級アルキル基、クロロ基、ブロモ基、シアノ基、アルコキシ基、フェニルナフチル基などが例示される。化学発光用組成物(蛍光液)における蛍光物質の濃度の目安は、0.01~5質量%程度であり、色、強度、時間等の発光性能や混合性等によって設定され、化学発光体としてそれに相当する量を吸液材に担持させてもよい。
【0049】
本発明は化学発光用組成物を、高粘度化学組成物として用いてもよい。高粘度化学組成物とは、第一の化学組成物に増粘剤を含むことで粘度を上昇させたものである。化学発光用の酸化組成物を例にすると、従来の代表的な組成としては、過酸化水素水、酸化剤、触媒および溶媒の混合物が用いられており、粘度が低い液であり、このまま用いることもできる。
【0050】
本発明においては、さらに化学組成物中に増粘剤を加えて粘度を上昇させて用いても良く、これにより吸液材による保持性も向上し、化学発光体内で沈降しにくくなる。高粘度化学組成物に用いる増粘剤としては、任意の粘度が得られるものであれば特に限定されず、高粘度化学組成物中に使用する溶媒等の成分を著しく劣化させることがないものを適宜選択することができる。この増粘剤としては、ワックスや超低分子量ポリエチレン、ペトロラタム物質、パラフィン、ポリマー、ヒュームドシリカなどが挙げられる。適切な増粘剤のさらなる例としては、ポリアミド、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、およびポリアクリレートのようなポリマー性増粘剤、ゴム改質剤、ゴム、デンプン、食用ゲル、ポリアクリルアミドならびにヒュームドシリカからなる群から選択される1以上の物質などを用いることができる。また、これらの増粘剤は適宜、組み合わせて用いることもできる。これらのなかでも、ヒュームドシリカを用いることが好ましい。
【0051】
(アンプル保持部材8)
本発明の化学発光体は、アンプル保持部材を有するものとしてもよい。このアンプル保持部材は、アンプルの一部を外部ケース内で固定する固定部を有する。すなわち、アンプル保持部材により外部ケース内でアンプルの一部が所定の位置に固定される。そして、この固定部と離れたアンプルの押圧位置に対応する外部ケースの位置を押圧することで、固定部を支点、押圧位置を力点として、その位置関係に対応した作用点がアンプルに生じる。この作用点からアンプルはその応力により破割して、アンプル内の化学発光用組成物が外部ケース内に放出される。このアンプル保持部材の構造は、外部ケースを押圧することでアンプルを破割することができる種々の構造を採用することができる。例えば、アンプルの両端を外部ケース内で固定する固定部を有し、そのアンプルが外部ケースの内壁に近接する位置に配置されるアンプル保持部材とすることができる。このとき、外部ケースの内壁に近接するアンプル中央付近等を外部ケースの外から押圧すると、アンプルの両端は固定されて支点となっており、押圧によりアンプルが変形しやすい状態となっているため押圧のみでアンプルを破割することができる。
【0052】
好適なアンプル保持部材の構成は、アンプルの一部を外部ケース内で固定する固定部を有し、さらに、アンプルの押圧位置に対応してアンプルを保持し、固定部方向に可撓性の可撓性保持部を有するものとすることができる。外部ケースを押圧して内部のアンプルに応力をかけるとき、アンプル全体が外部ケース内で移動すると破割しにくい。このため、アンプルの移動を制限する固定部が、押圧位置の反対方向にありそこでアンプルの一部の移動を抑制する。一方、押圧位置自体は押圧により押し込まれ可撓性保持部の可撓性部分を基点として変形可能なものとする。これにより、固定部が支点、押圧位置が力点、可撓性保持部の可撓性部分が作用点となり、効率よく安定してアンプルを破割することができる。このようなアンプル保持部材により、化学発光体を折り曲げずとも、所定の位置を押すだけでアンプルを破割し発光させることができる。なお、従来の化学発光体はその両端を両手でそれぞれ把持し折り曲げる必要があったが、本発明の化学発光体は例えば片手の親指で押すだけのような片手でアンプルの破割ができる。
アンプル保持部材は、同時に複数本のアンプルを保持するものであっても良い。この場合、対をなす化学発光用組成物の双方をアンプル内とすることができ、酸化劣化等の保管時の変性をより防止することができる。
【0053】
(化学発光体100(101))
本発明は、2種の化学発光用組成物を混合することで化学発光を生じさせる化学発光体の構造に特徴を有するものである。本発明の化学発光体は、特に太い径を有するものとしたいときに適した構成であり、例えば直径20mm以上や、好ましくは直径30mm以上のような径の化学発光体としても、全体としての重量を軽量化することができる。また、その長さも、その用途に合わせて適宜設定されるが、例えば、長さ4インチ以上等として設計することができる。外部ケースの内部に吸液材があることで、酸化液と蛍光液等の化学発光用組成物の量が少量であっても筒の表面全体が発光して見える。
【0054】
ここで、化学発光体における化学発光用組成物の量は、その合計量(例えば、酸化液と蛍光液の合計量等)が、外部ケースの最大内容量に対して、70容積%以下のように、化学発光用組成物の占める割合の上限を定めて設計してもよい。この上限は60容積%以下や、50容積%以下、40容積%以下としてもよい。特に、吸液材の吸液性が高いものを用いたり、吸液材に化学発光用組成物の一部を担持させたり、スペーサーを用いることでこの化学発光用組成物が占める割合その下限は特に定めなくてもよいが、例えば1容積%以上や5容積%以上のような下限を設けても良い。
【0055】
(製造工程)
本発明の化学発光体を製造するにあたっては、本発明の化学発光体を得ることができればよく、一端が密閉された外部ケースの開放端側から、吸液材や、化学発光用組成物の一方の組成物、スペーサー、アンプル保持部材、化学発光用組成物の他方の組成物が含まれるアンプルといった各化学発光体に必要な構造を任意の順序で加えて、その後、外部ケースの開放端を密閉することで製造することができる。
より具体的には、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、両端が開放された管上の外部ケースを、所望の長さに切断する。次に、その外部ケースの一方の端部に蓋を溶着することで、一方の端部が開放された容器状の外部ケースとする。次に、外部ケースに所定の量の化学発光用組成物の一方の組成物として化学発光用蛍光液を加える。次に、アンプルを収容する保持部として機能する溝部を設けた中実のPP製発泡体からなるスペーサーや、アンプル保持部材を、化学発光用蛍光液が加えられた外部ケースの略中央部に配置する。スペーサーを用いるとき、外部ケースに配置されたスペーサーの保持部に、化学発光用組成物の他方の組成物を含有するアンプルを配置する。アンプル保持部材をもちいるとき予めアンプル保持部材の所定の位置にアンプルを配置させておいてもよい。その後、外部ケースの横断面を閉塞する蓋部を嵌合し溶着することで開放端を密閉する。これによって、化学発光体を製造することができる。
【0056】
上記した製造方法等で製造される化学発光体は、化学発光体内部に化学発光用液のような組成物を内包しているが、それらすべてを内包する外部ケースの溶着部を溶着しやすい形状とすることができるため、製造時、および得られる製品の液漏れ防止効果等の安全性が高い。また、スペーサーはアンプルの保持部を有することから、複数のアンプルを外部ケース内に内包させる場合でも、アンプル同士の接触等のおそれが少なく、欠陥品が生じにくい方法で製造することができる。また、アンプル保持部材も予めアンプルを保持して、意図しない移動を抑制できるため、アンプルの破割等を防止して、欠陥品が生じにくい方法で製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の化学発光体は、広い発光面積を有する化学発光体として、化学発光体が従来使用されてきたようなコンサートライトや、警告灯、表示灯等の様々な用途に使用することができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 外部ケース
100、101 化学発光体
11、12 蓋部
111 溶着部
2 吸液材
3、31、32 アンプル
4 スペーサー
41 溝部
5、51 第一の化学発光用組成物
6、61 第二の化学発光用組成物
7、71 空間
8 アンプル保持部材
81 固定部
82 アンプル保持部
821 第一のアンプル保持部
822 第二のアンプル保持部
83 可撓性連結部
84 アンプル固定部
841 第一のアンプル固定部
842 第二のアンプル固定部
85 連結部