(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】絶縁導電体
(51)【国際特許分類】
H01B 7/02 20060101AFI20220411BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20220411BHJP
H01B 13/14 20060101ALI20220411BHJP
H01F 5/06 20060101ALI20220411BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
H01B7/02 A
H01B13/00 515
H01B13/14 Z
H01F5/06 W
H01F5/06 R
H01F41/12 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021040199
(22)【出願日】2021-03-12
(62)【分割の表示】P 2018551942の分割
【原出願日】2017-03-20
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2016-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518344357
【氏名又は名称】ゲバウアー・アンド・グリラー・メタルベルク・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Gebauer & Griller Metallwerk GmbH
【住所又は居所原語表記】Muthgasse 36,1190 Wien, AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ユールゲン・ホヒシュテーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・シュライフォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】エバルト・コッペンシュタイナー
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095363(JP,A)
【文献】特開平03-222210(JP,A)
【文献】特開昭61-165909(JP,A)
【文献】特開2003-346578(JP,A)
【文献】特開昭63-274470(JP,A)
【文献】特開昭63-192867(JP,A)
【文献】特開平10-130817(JP,A)
【文献】米国特許第06214479(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0042837(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106663500(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0038039(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
H01B 13/00
H01B 13/14
H01F 5/06
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を備える絶縁導電体であって、ここにおいて、前記絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
前記導電体の表面上に形成された酸化層を除去するために、及び/又は、前記導電体の表面エネルギーを増加させるために、前記導電体が保護ガス雰囲気下に置かれ、ガスプラズマ中の保護ガスのイオンでボンバード処理される方法によって得られ、
その後、
前記少なくとも1つの絶縁層が、保護ガス雰囲気下で前記導電体の前記表面に直接適用されるか、
又は、前記被覆が前記プラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも前記プラスチック含有中間層が、前記導電体の前記表面に保護ガス雰囲気下で直接適用されるか、
のいずれか一方である、絶縁導電体。
【請求項2】
前記導電体の前記表面上での新たな酸化層の形成を防止するために、前記導電体が、前記絶縁被覆の適用まで保護ガス雰囲気下で継続的に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁導電体。
【請求項3】
前記導電体をボンバード処理するための前記ガスプラズマは、好ましくは80
hPa未満の圧力を有する低圧プラズマであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の絶縁導電体。
【請求項4】
前記絶縁被覆、特に前記少なくとも1つの絶縁層は、少なくとも180°C、好ましくは少なくとも200°C、特に少なくとも220°Cの耐熱性を有することを特徴とする、請求項1~3のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項5】
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、請求項1~4のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項6】
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリエーテルケトン[PEK]、ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリエーテルケトンケトン[PEKK]、ポリエーテルエーテルケトンケトン[PEEKK]、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン[PEKEKK]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるポリアリールエーテルケトン[PAEK]であることを特徴とする、請求項1~5のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項7】
前記少なくとも1つの絶縁層は、10μmと1000μmとの間、好ましくは25μmと750μmとの間、特に好ましくは30μmと500μmとの間、特に50μmと250μmとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1~6のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項8】
前記少なくとも1つの絶縁層は、押出方法によって製造され得ることを特徴とする、請求項1~7のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項9】
前記絶縁被覆は、前記少なくとも1つの絶縁層からなることを特徴とする、請求項1~8のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項10】
前記絶縁被覆は、1つの絶縁層からなることを特徴とする、請求項9に記載の絶縁導電体。
【請求項11】
前記絶縁被覆は、少なくとも2つ、好ましくは厳密に2つの絶縁層からなることを特徴とする、請求項9に記載の絶縁導電体。
【請求項12】
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの更なる絶縁層が、前記絶縁被覆に適用され、ここにおいて、前記少なくとも1つの更なる絶縁層は、保護ガス雰囲気下で適用されないことを特徴とする、請求項1~11のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項13】
前記少なくとも1つの更なる絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、好ましくはポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の絶縁導電体。
【請求項14】
前記絶縁被覆は、不均一の鎖長の架橋された高分子のプラズマポリマ層を備え、そのプラズマポリマ層は、ガスプラズマ中、好ましくは前記導電体をボンバード処理するための前記ガスプラズマ中のガス状モノマーの重合によって製造され得ること、及び前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記プラズマポリマ層からなることを特徴とする、請求項1~8のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項15】
前記プラズマポリマ層は、1μm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項14に記載の絶縁導電体。
【請求項16】
前記プラズマポリマ層の製造のための前記モノマーは、エチレン、ブタノール、アセトン、又はテトラフルオロメタン[CF
4]であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の絶縁導電体。
【請求項17】
前記絶縁被覆は、少なくとも1つのフッ素ポリマ層を有することと、
及び、前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記フッ素ポリマ層からなることと、
を特徴とする、請求項1~8のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項18】
前記フッ素ポリマ層は、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]又はパーフルオロエチレンプロピレン[FEP]を備えることを特徴とする、請求項17に記載の絶縁導電体。
【請求項19】
前記少なくとも1つのフッ素ポリマ層の厚さは、1μmと120μmとの間、好ましくは5μmと100μmとの間、特に好ましくは10μmと80μmとの間、特に20μmと50μmとの間にあることを特徴とする、請求項17又は18に記載の絶縁導電体。
【請求項20】
前記絶縁被覆全体が、保護ガス雰囲気下で前記導電体に適用されることを特徴とする、請求項14~19のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項21】
絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を備える絶縁導電体であって、ここにおいて、前記絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
前記導電体の表面上に形成された酸化層が、ガスプラズマ中の保護ガス雰囲気の保護ガスのイオンによる前記導電体のボンバード処理によって除去され、
その後、
前記少なくとも1つの絶縁層が、前記導電体の前記酸化層のない表面に直接適用されるか、
又は、前記被覆が前記プラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも前記プラスチック含有中間層が、前記導電体の前記酸化層のない表面に直接適用されるか、
のいずれか一方であることを特徴とする、絶縁導電体。
【請求項22】
前記絶縁被覆、特に前記少なくとも1つの絶縁層、は、少なくとも180°C、好ましくは少なくとも200°C、特に少なくとも220°Cの耐熱性を有することを特徴とする、請求項21に記載の絶縁導電体。
【請求項23】
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、請求項21又は22に記載の絶縁導電体。
【請求項24】
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリエーテルケトン[PEK]、ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリエーテルケトンケトン[PEKK]、ポリエーテルエーテルケトンケトン[PEEKK]、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン[PEKEKK]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるポリアリールエーテルケトン[PAEK]であることを特徴とする、請求項21~23のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項25】
前記少なくとも1つの絶縁層は、10μmと1000μmとの間、好ましくは25μmと750μmとの間、特に好ましくは30μmと500μmとの間、特に50μmと250μmとの間の厚さを有することを特徴とする、請求項21~24のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項26】
前記少なくとも1つの絶縁層は、押出加工によって製造され得ることを特徴とする、請求項21~25のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項27】
前記絶縁被覆は、前記少なくとも1つの絶縁層からなることを特徴とする、請求項21~26のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項28】
前記絶縁被覆は、1つの絶縁層からなることを特徴とする、請求項27に記載の絶縁導電体。
【請求項29】
前記絶縁被覆は、少なくとも2つ、好ましくは正確に2つの絶縁層からなることを特徴とする、請求項27に記載の絶縁導電体。
【請求項30】
熱可塑性材料の少なくとも1つの更なる絶縁層が、前記絶縁被覆に適用され、ここにおいて、前記少なくとも1つの更なる絶縁層は、保護ガス雰囲気下で適用されない、ことを特徴とする、請求項21~29のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項31】
前記少なくとも1つの更なる絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、好ましくはポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、請求項30に記載の絶縁導電体。
【請求項32】
前記絶縁被覆は、不均一の鎖長の架橋された高分子のプラズマポリマ層を備え、そのプラズマポリマ層は、ガスプラズマ中、好ましくは前記導電体をボンバード処理するための前記ガスプラズマ中のガス状モノマーの重合によって製造されること、
及び、前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記プラズマポリマ層からなることを特徴とする、請求項21~26のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項33】
前記プラズマポリマ層は、1μm以下の厚さを有することを特徴とする、請求項32に記載の絶縁導電体。
【請求項34】
前記プラズマポリマ層の製造のための前記モノマーは、エチレン、ブタノール、アセトン、又はテトラフルオロメタン[CF
4]であることを特徴とする、請求項32又は33に記載の絶縁導電体。
【請求項35】
前記絶縁被覆は、少なくとも1つのフッ素ポリマ層を有することと、
及び、前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記少なくとも1つのフッ素ポリマ層からなることと、
を特徴とする、請求項21~26のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【請求項36】
前記フッ素ポリマ層は、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]又はパーフルオロエチレンプロピレン[FEP]を備えることを特徴とする、請求項35に記載の絶縁導電体。
【請求項37】
前記少なくとも1つのフッ素ポリマ層は、1μmと120μmとの間、好ましくは5μmと100μmとの間、特に好ましくは10μmと80μmとの間、特に20μmと50μmとの間にあることを特徴とする、請求項35又は36に記載の絶縁導電体。
【請求項38】
前記絶縁被覆全体が、保護ガス雰囲気下で前記導電体に適用されることを特徴とする、請求項32~37のうちの一項に記載の絶縁導電体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウム(copper or aluminum)の導電体を備える絶縁導電体であって、ここにおいて、絶縁被覆は、熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの外部絶縁層を備える絶縁導電体と、そのような絶縁導電体を製造するための方法とに関する。
【先行技術の説明】
【0002】
絶縁導電体は、非絶縁導電体(non-electrically insulated conductors)の接触によって引き起こされ得る短絡を引き起こすことなく電流を伝導するために、ほとんど何れの電気デバイスにも据え付けられている。そのような絶縁導電体は、銅導電体、及び通常1つ又は複数の層を備える導電体を電気的に絶縁する被覆を備える。導電体の絶縁を確実にするために、絶縁被覆は、(熱可塑性樹脂、熱可塑性合成材料、又は熱可塑性ポリマとも呼ばれる)熱可塑性材料の絶縁層を備える。
【0003】
絶縁被覆の導電体への密着性が弱く、導電体の容易な剥離を許容することは、多くの用途で有利であるけれども、他の用途では、可能な限り最大の密着性を確実にすることが望ましい。そのような用途は、例えば電気工学において、及び特に電動機又は変圧器において見出され、ここで絶縁導電体はまた、高温に曝される。絶縁導電体の加工性は度々、高作動温度のケースであっても、絶縁被覆の導電体への密着性の増加を要求する。
【0004】
密着性を確認するために、通常、導体軸に直角に、円状切断が絶縁導電体に対して行われ、導電体が20%伸張され、その後、絶縁被覆の導電体からの剥離が測定される。絶縁被覆の導電体からの剥離が低い程、密着性は良好である。
プラスチックの導電体への密着性は表面特性に起因して低いので、好ましくは耐熱性が高い絶縁層のある絶縁被覆を有する従来の絶縁導電体では、導電体、特に銅から作られた導電体と、絶縁被覆、特に絶縁層との間の密着性は、幾分低い。
【発明の目的】
【0005】
従って、先行技術の欠点を克服し、絶縁被覆と導電体との間の良好な密着性を確実にする絶縁導電体を提案することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
一般的な絶縁導電体の導電体は、銅又は高い銅含有量の合金、或いはアルミニウム、或いは他の電気的導電材料をからなる。導電体は、単一の導体と、いくつかの個別の導体を含む撚線との両方を意味すると理解される。導体軸に垂直(normal to a conductor axis)な、導電体の断面の幾何学的形状は、正方形、矩形、円形、又は楕円形といった何れの幾何学的形状も有することができ、ここにおいて、何れのエッジも丸めることは慣用であり、或いはそれらはプロフィールされる。導電体の絶縁は、少なくとも1つの設けられた熱可塑性材料(熱可塑性樹脂、熱可塑性合成材料、又は熱可塑性ポリマとも呼ばれる)の絶縁層によって確実にされ、ここにおいて、少なくとも1つの絶縁層は、絶縁被覆の最外層を有利に形成することができる。しかしながら、1つ又は複数の追加の絶縁層が少なくとも1つの絶縁層に適用されることも考えられる。
導電体が雰囲気に曝されている場合に避けられない酸素との接触により、酸化層、例えば酸化銅又は酸化アルミニウムが、導電体の表面上に形成される。酸化層が、導電体の表面に適用された絶縁被覆の層の密着特性に対してマイナス効果があることを、広範な一連の実験が示してきた。
【0007】
しかしながら、酸化層が除去されるとき、酸化層から除去された導電体の表面に適用された絶縁被覆の層の密着性は、著しく改善される。酸化層が、(無酸素)保護ガス雰囲気下でのプラズマ処理によって完全に除去され得ることが示されており、ここにおいて、他の不純物も、プラズマ処理によって除去され得る。導電体の最上部の原子層がプラズマ処理によって除去されることさえも可能である。
【0008】
プラズマ処理では、保護ガス雰囲気においてガスプラズマが生成され、プラズマ中の導電体が、イオンボンバード処理によって少なくとも酸化層を除去するために、保護ガスのイオンでボンバード処理される。例えば、窒素(nitrogen)、アルゴン(argon)、又は水素(hydrogen)が、保護ガス又はプロセスガスとして適している。プラズマ処理は、酸化層の除去に加えて、絶縁導電体に対して更なるプラス効果がある:一方で、導電体は、表面に対するイオンの衝撃エネルギーによって熱せられ、導電体の組織を再結晶化するためにプラズマ処理中にアニール処理され得る。他方では、イオンボンバード処理が、導電体の表面エネルギーを増加させ、これは更に、絶縁被覆の絶縁導電体の表面への密着性を向上させる。この文脈において、このことは、導電体の表面の活性化とも称される。プラズマ処理の別の効果は、導電体の表面のマイクロラフネスを増加させることであり、これもまた、絶縁被覆の密着性に対してプラス効果がある。
導電体の表面上における酸化層の再形成を防ぐために、絶縁被覆の少なくとも一部が、保護ガス雰囲気下で、好ましくはプラズマ処理が実行される同じ保護ガス雰囲気下で、導電体の表面に適用される。
【0009】
従って、上で提示した目的を達成するために、本発明に従うと、絶縁導電体は、絶縁被覆のある導電体、好ましくは銅又はアルミニウムの導電体を備え、
ここにおいて、絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
それは、導電体の表面上に形成された酸化層を除去するために、及び/又は導電体の表面エネルギーを増加させるために、導電体が保護ガス雰囲気下に置かれ、ガスプラズマ中の保護ガスのイオンでボンバード処理される方法によって得られ、
その後、
少なくとも1つの絶縁層が、保護ガス雰囲気下で導電体の表面に直接適用されるか、 又は、被覆がプラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも絶縁被覆のプラスチック含有中間層が、導電体の表面に保護ガス雰囲気下で直接適用されるか、
のいずれか一方である、
ことが提供される。
【0010】
本発明に従った絶縁導電体は、絶縁被覆のプラスチック含有中間層の直接適用によって、又はプラズマ処理され、それにより酸化層のない導電体の表面に対する熱可塑性材料の絶縁層の直接適用によって、特に良好な密着特性を有する。円形切断が、導体軸に直角に、絶縁導電体周囲に実行され、導体が20%伸張された場合、導体軸の方向で測定された絶縁被覆の導電体からの剥離は、せいぜい3mmのみであり、好ましくはせいぜい2mm、特にせいぜい1mmである。
従って、密着効果は、好ましくはプラスチックからなるプラスチック層が、プラズマ洗浄され、それにより酸化層のない導電体の表面に対して保護ガス雰囲気下で直接適用される点から、両方の変形において達成される。一方で、プラスチック層は、中間層が設けられない場合、まさに熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層であり得る。他方では、プラスチック層はまた、プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層でもあり得る。絶縁被覆がプラスチック含有中間層を有する場合、少なくとも1つの絶縁層が、好ましくは、プラスチック含有中間層に直接適用される。しかしながら、1つ又は複数の更なる中間層が、プラスチック含有中間層と少なくとも1つの絶縁層との間に設けられることも考えられる。
【0011】
絶縁被覆のプラスチック含有中間層のための材料として適している複数の異なるプラスチックが考えられるけれども、絶縁被覆のプラスチック含有中間層は、好ましくは、プラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層である。
【0012】
プラスチック含有中間層が設けられず、絶縁層が導電体の表面に直接適用される場合、絶縁被覆が少なくとも1つの絶縁層からなる、即ちそれが更なる中間層を有さない場合が特に好まれる。
驚くべきことに、テスト系列(test series)の文脈では、少なくとも1つの絶縁層が導電体の表面に直接適用されるとき、絶縁被覆の導電体からの剥離は通常、1mmよりはるかに小さく、特にせいぜい0.2mm、好ましくはせいぜい0.1mm、より好ましくはせいぜい0.05mm、特に好ましくはせいぜい0.01mm、に留まることがわかる。特に有利な効果が、少なくとも1つの絶縁層がポリアリールエーテルケトン(polyaryletherketone)[PAEK]、特にポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)[PEEK]を備えるか、又はポリアリールエーテルケトン[PAEK]、特にポリエーテルエーテルケトン[PEEK]からなる点において達成され得る。
【0013】
本発明の同じ効果が、絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を備える絶縁導電体において達成され得、
ここにおいて、絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
好ましくはガスプラズマ中の保護ガス雰囲気の保護ガスのイオンによる導電体のボンバード処理によって、導電体の表面上に形成された酸化層が除去される形であり、
その後、
少なくとも1つの絶縁層が、導電体の酸化層のない表面に直接適用されるか、
又は、被覆がプラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも絶縁被覆のプラスチック含有中間層が、導電体の酸化物のない表面に直接適用されるか、
のいずれか一方である。
本発明の実施形態の変形は、導電体の表面上での新たな酸化層の形成を防止するために、導電体が絶縁被覆の適用まで保護ガス雰囲気下に継続的に配置されることを提供する。プラズマ処理された導電体が不活性ガス雰囲気のうちの1つの下に途切れなく配置される限り、いくつかの保護ガス雰囲気を連続して通過することも可能である。
【0014】
本発明の更なる実施形態の変形では、導電体をボンバード処理するためのガスプラズマが、それ自体が知られている方法で生成され得る、好ましくは80mbar以下の圧力を有する低圧プラズマに関係することが提供される。例えば、50mbar以下、又は更には20mbar以下の圧力が考えられる。
【0015】
高温の環境、例えば作動温度が上がった電気機械における絶縁導電体の使用を可能にするために、本発明の更なる実施形態の変形では、絶縁被覆、特に少なくとも1つの絶縁層は、少なくとも180°C、好ましくは少なくとも200°C、特に少なくとも220°Cの耐熱性を有することが提供される。
【0016】
特に、耐熱性、並びに、様々な有機及び化学溶剤、特に加水分解に対する耐性に関する良好な特性は、本発明に従った絶縁導電体及び本発明に従った方法の好ましい実施形態では、少なくとも1つの絶縁層の熱可塑性材料が、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、ポリイミド(polyimide)[PI]、ポリアミドイミド(polyamideimide)[PAI]、ポリエーテルイミド(polyetherimide)[PEI]、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)[PPS]、及びこれらの組合せからなる基(group)から選択される点で達成される。熱可塑性材料が上で言及されたプラスチックのうちの1つ又は複数、及びオプションで、繊維材料、充填材、又は他のプラスチックのような更なる成分を備え得ることが理解される。
【0017】
ポリアリールエーテルケトンは、酸素橋、即ちエーテル又はケトン基によって連結された結合フェニル基(composed phenyl groups)であり、ここにおいて、ポリアリールエーテルケトン内のエーテル又はケトン基の数及び配列は可変である。ポリイミドは、その最も重要な構造的特徴がイミド基であるプラスチックである。これらは、ポリコハク酸イミド(polysuccinimide)(PSI)、ポリビスマレイミド(polybismaleimide)(PBMI)及びポリオキサジアゾベンズイミダゾール(polyoxadiazobenzimidazole)(PBO)、ポリイミドスルフォン(polyimide sulfone)(PISO)及びポリメタクリルイミド(polymethacrylimide)(PMI)を含む。
従って、本発明に従った絶縁導電体、及び本発明に従った方法の特に好ましい実施形態の変形では、少なくとも1つの絶縁層の熱可塑性材料は、ポリエーテルケトン(polyetherketone)[PEK]、ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリエーテルケトンケトン(polyetherketoneketone)[PEKK]、ポリエーテルエーテルケトンケトン(polyetheretherketoneketone)[PEEKK]、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(polyetherketoneetherketoneketone)[PEKEKK]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるポリアリールエーテルケトン[PAEK]であることが提供される。ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]は、少なくとも1つの絶縁層に特に適していることが判明している。
【0018】
本発明の更なる実施形態の変形では、少なくとも1つの絶縁層は、10μmと1000μmとの間、好ましくは25μmと750μmとの間、特に好ましくは30μmと500μmとの間、特に50μmと250μmとの間の厚さを有することが提供される。他の層厚としては、可能性のあるものを数例挙げると、例えば40μm、60μm、80μm、100μm、又は200μm、が考えられることが理解される。上述の値は、絶縁層の単一層の厚さ、及び絶縁層が1つより多い層を備える場合には絶縁層の全体の厚さの両方に関連し得ることが理解される。
【0019】
少なくとも1つの絶縁層は、それが押出加工によって適用される場合、即ちそれが押出被覆される場合、安く、迅速に製造され得る。従って、本発明の更なる好ましい実施形態の変形では、その絶縁層、好ましくは外部の絶縁層は、押出方法によって製造され得ることが提供される。
【0020】
絶縁被覆が少なくとも1つの絶縁層からなり、少なくとも1つの絶縁層が導電体の表面に直接適用される場合、プラズマ処理による少なくとも1つの絶縁層の導電体の表面への密着性が既に良好であり、中間層は必要でないので、本発明に従った絶縁導電体の特にシンプルで費用対効果の高い製造が可能になる。
従って、本発明の更なる特に好ましい実施形態の変形では、絶縁被覆が少なくとも1つの絶縁層からなること、及び導電体の表面に直接適用され、プラスチックを含有する中間層が少なくとも1つの絶縁層であることが提供される。
【0021】
従って、特に好ましい実施形態は、絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を備える絶縁導電体に関連し、ここにおいて、絶縁被覆は熱可塑性材料の少なくとも1つの絶縁層からなり、それは、導電体の表面上に形成された酸化層を除去するために、及び/又は導電体の表面エネルギーを増加させるために、導電体が保護ガス雰囲気下に置かれ、ガスプラズマ中の保護ガスのイオンでボンバード処理され、及び少なくとも1つの絶縁層が導電体の表面に直接適用され、少なくとも1つの絶縁層が保護ガス雰囲気下で導電体に適用される方法によって得られる。
【0022】
同じように、特に好ましい実施形態はまた、絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を備える絶縁導電体に関連し、ここにおいて、絶縁被覆は熱可塑性材料の少なくとも1つの絶縁層からなり、本発明に従うと、導電体の表面上に形成された酸化層が、ガスプラズマ中の保護ガス雰囲気の保護ガスのイオンによる導電体のボンバード処理によって除去され、その後、少なくとも1つの絶縁層が、導電体の酸化層のない表面に直接適用されることが提供される。
絶縁被覆は、例えば、特にシンプルな製造を可能にするために、導電体の表面に直接適用される単一の絶縁層のみからなり得る。
【0023】
しかしながら、絶縁被覆の欠陥、例えば絶縁層の製造工程におけるエラーに起因して絶縁被覆を設けられていない導電体のセクションの可能性を徹底的に低減するために、本発明の更なる特に好ましい実施形態では、絶縁被覆は、厳密に2つ以上、例えば3つ又は4つの絶縁層からなることが提供される。このケースでは、最下部の絶縁層が導電体の表面に直接適用され、ここにおいて、更なる絶縁層がそれぞれ、先行する絶縁層のうちの1つに適用される。最下部の絶縁層において欠陥が生じた場合、即ち導電体のあるセクションが最下部の絶縁層によってカバーされていない場合、最下部の絶縁層の欠陥セクションが後続の絶縁層によって正確にカバーされない確率は、指数関数に従って低減されることになる。絶縁層の数が多いほど、導電体の一部分が絶縁被覆を全く有さない確率は低くなる。後続の絶縁層の導電体への向上した密着性を達成するために、後続の絶縁層の密着性が、先行する絶縁層の欠陥セクションの領域において確実にされるように、全ての絶縁層が保護ガス雰囲気下で適用される。
【0024】
原則として、熱可塑性材料の少なくとも1つ、例えば1つ、2つ、3つ、又は4つの更なる絶縁層が、絶縁被覆に又は少なくとも1つの絶縁層からなる絶縁被覆に適用され得る。少なくとも1つの更なる絶縁層は、好ましくは、少なくとも1つの更なる絶縁層の熱可塑性材料がポリアリールエーテルケトン[PAEK]、特にポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide)[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるように、少なくとも1つの絶縁層に類似して構成される。
少なくとも1つの絶縁層の欠陥セクションが一般に比較的小さいエリアであるため、絶縁被覆の欠陥部分の領域において絶縁被覆の何れの欠陥セクションもカバーするために、少なくとも1つの更なる絶縁層が、該更なる絶縁層の密着性が絶縁被覆の欠陥部分の領域において向上しないように、絶縁被覆に保護ガス雰囲気の外部で適用されることも考えられる。より厚い絶縁が要求される場合、他の絶縁層が適用され得ることが理解される。従って、本発明の更なる実施形態の変形では、少なくとも1つの更なる絶縁層、好ましくは、そのうちの1つ、2つ、又は3つが、絶縁被覆に適用されることが提供され、ここにおいて、少なくとも1つの更なる絶縁層は、保護ガス雰囲気下では適用されない。
【0025】
本発明の第1の代替実施形態の変形では、絶縁被覆の導電体の表面への密着性を向上させるために、絶縁被覆が、導電体の表面に直接適用される不均一の鎖長の架橋された高分子のプラズマポリマ層を有し、そのプラズマポリマ層は、ガスプラズマ中、好ましくは導電体をボンバード処理するためのガスプラズマ中のガス状モノマーの重合によって製造され得ることが提供される。言い換えると、導電体の表面に直接適用され、プラスチックを含む絶縁被覆の中間層は、この実例的な実施形態ではプラズマポリマ層である。プラズマポリマ層は、中間層としての役割をし、一方では、導電体の表面に優れて密着し、他方では、プラズマポリマ層に適用される絶縁被覆の層、例えば少なくとも1つの絶縁層の密着性の増加を可能にする。
第1の代替実施形態の更なる実施形態の変形は、プラズマポリマ層が1μm以下の厚さを有することを提供する。せいぜい100分の1マイクロメータの厚さが下限として考えられる。薄い層の厚さに起因して、プラズマポリマ層は、絶縁導電体の全体の厚さに対して取るに足らないほどの影響しか(insignificant effects)ない。
【0026】
第1の代替実施形態の変形の更なる実施形態の変形に従うと、プラズマポリマ層を製造するためのモノマーは、エチレン(ethylene)、ブタノール(buthenol)、アセトン(acetone)、又はテトラフルオロメタン(tetrafluoromethane)[CF4]である。プラズマ中のこれらのモノマーによって形成されるプラズマポリマ層は、特に良好な密着特性で卓越している。特に、プラズマポリマ層がポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)[PTFE]又はパーフルオロエチレンプロピレン(perfluoroethylene propylene)[FEP]と同様の特性を有する場合、CF4がモノマーとして適している。
【0027】
第2の代替実施形態では、絶縁被覆が、導電体の表面に直接適用され、好ましくはポリテトラフルオロエチレン[PTFE]又はパーフルオロエチレンプロピレン[FEP]を備える、少なくとも1つのフッ素ポリマ層を有することが提供される。フッ素ポリマ層もまた、導電体とフッ素ポリマ層に適用された層との両方に対する優れた密着特性で卓越しており、絶縁被覆の中間層としての役割をする。いくつかのフッ素ポリマ層、例えば2つ、3つ、又は4つが、互いに対して上下になる状態で(one above the other)導電体に適用されることも考えられる。特に有利な密着特性は、少なくとも1つのフッ素ポリマ層の厚さが1μmと120μmとの間、好ましくは5μmと100μmとの間、特に好ましくは10μmと80μmとの間、特に20μmと50μmとの間にある点で達成される。
【0028】
導電体に適用された先行する層の欠陥セクションの領域における後続の層の密着性が向上するように、導電体に対するプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層に適用される絶縁被覆の層、特に少なくとも1つの絶縁層について、上で説明された改善された密着特性を達成するために、本発明の好ましい実施形態では、絶縁被覆全体が保護ガス雰囲気下で適用される。
絶縁被覆における異なる層の数を低減するため、及び関連する製造コストを低く保つために、本発明の更なる実施形態では、少なくとも1つの絶縁層が、プラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層に直接適用されることが提供される。言い換えると、絶縁被覆は、少なくとも2つの層、即ち第1又は第2の代替実施形態の変形に従った導電体に直接適用される第1の下部層、及び熱可塑性材料の少なくとも1つの絶縁層の形態の第2の上部層からなる。絶縁被覆の最外層は、少なくとも1つの絶縁層それ自体か、或いは1つ又は複数の更なる層のどちらかによって形成され得る。
【0029】
本発明は更に、絶縁導電体を製造するための方法であって、
銅又はアルミニウムから作られた保護ガス下に置かれた導電体を、ガスプラズマ中、好ましくは低圧プラズマ中の保護ガスのイオンで、好ましくは導電体の表面上に形成された酸化層を除去するために、及び/又は導電体の表面エネルギーを増加させるために、ボンバード処理することと、
導電体の表面に絶縁被覆を適用することと、
を備え、ここにおいて、絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
少なくとも1つの絶縁層が、保護ガス雰囲気下で導電体の表面に直接適用されるか、 又は、被覆がプラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも絶縁被覆のプラスチック含有中間層が、導電体の表面に保護ガス雰囲気下で直接適用されるか、
のいずれか一方である、
方法に関する。
好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体は、バンド又はワイヤの形態での方法に従う。このケースでは、導電体は、本発明に従った方法に従って、(例えば、冷間成形又は押出によって)「インライン」、即ち導電体の製造直後に処理されるか、又は、導電体がコイル出口を介して巻き付けられた形態で設けられる。基本的に、導電体は、プラズマ処理前に機械的及び/又は化学的事前洗浄を受ける。プラズマ処理は、先の実施形態と同様に行われ、ここにおいて、導電体は、プラズマ処理を実行するプラズマ処理ユニットを継続的に通るように搬送される(conveyed through)。工程パラメータの適した選択により、導電体からプラズマ処理によって除去される層の厚さは、正確に調整され得る。加えて、導電体の微細構造のソフトアニール処理、及び関連する再結晶化のための温度を定義することも可能である。
【0030】
プラズマ処理、即ち導電体の表面からの酸化層及びあらゆる不純物の除去において、導電体の表面自体の薄い層でさえ(1μm未満、好ましくは0.1μm未満)、導電体の表面のガスプラズマ中のイオンによるボンバード処理又は活性化によって除去され得るが、このプラズマ処理後、絶縁被覆が、処理された導電体の表面に適用される。絶縁被覆は、酸化層の除去に起因して、又は導電体の表面エネルギーを増加させることによる表面の活性化によって、導電体の表面に特に良好に密着する。本発明による効果を阻むか、又は少なくとも著しく弱めるだろう導電体の表面上での新たな酸化層の形成を防止するために、少なくとも1つの絶縁層、又は、特にプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層のような絶縁被覆のプラスチック含有中間層のどちらかが、導電体の酸化層のない表面に直接、保護ガス雰囲気下で適用される。特に、導電体が絶縁被覆の適用まで保護ガス雰囲気下で継続的に配置される場合、それは有利である。言うまでもなく、熱可塑性材料の2つ、3つ、又はそれより多い絶縁層が設けられるとすると、少なくとも絶縁層のうちの最初のものが導電体の表面に直接適用され、後続の絶縁層が下部にある絶縁層に少なくとも部分的に適用される。
この方法で製造された絶縁導電体は、絶縁被覆のプラスチック含有中間層の直接適用の結果として、又はプラズマ処理され、酸化物のない導電体の表面に対する熱可塑性材料の少なくとも1つの絶縁層の直接適用によって、特に良好な密着特性を示す。円形切断が、絶縁導電体に対して導体軸に直角に行われ、導体が20%伸張された場合、導体軸の方向で測定された絶縁被覆の導電体からの剥離は、せいぜい3mmのみ、好ましくはせいぜい2mm、特にせいぜい1mmである。
【0031】
熱可塑性材料の少なくとも1つの絶縁層が導電体の表面に直接適用される場合、絶縁被覆の導電体からの剥離は通常、1mm未満よりもはるかに小さく、特に0.2mm以下、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.05mm以下、特に好ましくは0.01mm以下に留まることがわかる。少なくとも1つの絶縁層の熱可塑性材料がポリアリールエーテルケトン[PAEK]、特にポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるとき、特に有利な効果が達成される。
方法の変形は、少なくとも1つの絶縁層が押出被覆されることを提供する。押出は、絶縁層を適用するための費用対効果が高い方法であり、またPAEK、特にPEEK、及びPPSに特に適している。従って、少なくとも1つの絶縁層はまた、絶縁被覆の最外層としてシンプルな方法で適用され得る。
【0032】
導電体を予熱することは、少なくとも1つの絶縁層又は絶縁被覆が導電体の表面の上に向かって直接押し出されるときに特に有利であるが、導電体を予熱することによって、プラスチック含有中間層の急激な冷却が導電体と接触して低減され、それにより密着性に対する負の影響が最小限にされる。同様に、導電体に接触したプラスチック含有中間層の溶解のような過度な加熱を防止するために、絶縁被覆を適用する前に導電体が冷却されることが提供され得る。従って、本発明に従った方法の更なる好ましい実施形態の変形では、導電体は、絶縁被覆の適用に先だって、少なくとも200°C、好ましくは400°Cの温度にされることが提供される。
【0033】
本発明の更なる実施形態の変形では、少なくとも1つの絶縁層が押出被覆された後に、絶縁導電体が、達成されるべき少なくとも1つの絶縁層の強度に応じて冷却されることが提供される。少なくとも1つの絶縁層の機械的特性、特に機械的強度の調整は、とりわけ、絶縁導電体の定義された冷却及び結果として生じる結晶化の度合いの調整により行われ、少なくとも1つの絶縁層が絶縁被覆の最外層である場合に特に重要である。例えば、絶縁導電体が、例えば空気中の冷却により徐冷される場合、少なくとも1つの絶縁層の高い結晶度(degree of crystallinity)が達成される。水浴における急冷即ち急激な冷却、又は急激な冷却と徐冷との組み合わせを提供することも考えられる。
絶縁被覆の導電体への密着性を更に向上させるために、特に、少なくとも1つの絶縁層が導電体の表面に直接適用される場合、本発明に従った方法の好ましい実施形態では、表面の上に少なくとも1つの絶縁層を押出成形した後、絶縁導電体は、ローラ、好ましくは圧着ローラを介して案内されることが提供される。このケースにおいて、少なくとも1つの絶縁層が絶縁被覆の最外層を形成する場合、それは特に有利である。絶縁導電体の圧力下での圧着ローラを介した絶縁導電体の密着性の高い(tight)案内は、絶縁被覆、又は特に少なくとも1つの絶縁層の導電体の表面上への特に良好な密着に繋がる。このケースでは、いくつかの層が存在する場合には個別の層の間の絶縁被覆の境界面、及び/又は絶縁被覆の最下層と導電体の表面との境界面は、押し付けられ(pressed together)、これにより密着効果を強化する。
【0034】
特に良好な密着特性によって特徴付けられる、本発明の特に好ましい実施形態の変形では、絶縁被覆が少なくとも1つの絶縁層からなること、及び少なくとも1つの絶縁層が保護ガス雰囲気下で絶縁被覆のプラスチック含有中間層として導電体の表面に直接適用されることが提供される。従って、以下の方法工程が行われる:
導電体の表面に絶縁被覆を適用すること、ここにおいて、絶縁被覆は熱可塑性材料の少なくとも1つの絶縁層からなり、少なくとも1つの絶縁層は、導電体の表面に直接保護ガス雰囲気下で適用される。
【0035】
このことはまた、先に言及された1mm未満の特に低い剥離を達成する。
【0036】
上で言及されたように、絶縁被覆における欠陥の確率を徹底的に低減するために、別の実施形態の変形では、絶縁被覆は、少なくとも2つ、好ましくは厳密に2つの絶縁層からなり、絶縁被覆が、保護ガス雰囲気下でタンデム式押出によって製造されることが提供される。タンデム式押出に起因して、少なくとも2つの絶縁層が、押出工具の障害が絶縁層のうちの1つにおいてのみ欠陥を引き起こすように、互いから独立した形で製造される。結果として、欠陥セクションは、高い確率で後続の押出工程によってカバーされる。
【0037】
上で述べられたように、欠陥の比較的小さいエリアに起因して、向上した密着を不要にするか、又は、より厚い絶縁被覆が要求される場合、本発明の更なる実施形態の変形は、熱可塑性材料の少なくとも1つの更なる絶縁層が絶縁被覆の上にタンデム式押出によって押し出され、ここにおいて、更なる絶縁層の押出は保護ガス雰囲気下では行われないことを提供する。
【0038】
好ましくは、少なくとも1つの更なる絶縁層の熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、特にポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択される。
【0039】
絶縁被覆が、導電体の表面に直接プラスチック含有中間層として適用される少なくとも1つのフッ素ポリマ層を備える場合、絶縁被覆の製造に要求される工程は、少なくとも1つの絶縁層及び少なくとも1つのフッ素ポリマ層が共押出又はタンデム式押出によって準備され得る事実によって短縮され得る。従って、両層は、単一の製造工程で、及び押出ユニットを用いて製造され得る。
絶縁被覆の導電体への密着性を向上させるために、更なる実施形態では、プラズマポリマ層が、プラスチック含有中間層として、ガスプラズマ中のガス状モノマーの重合によって導電体の表面に直接適用されることが提供される。
【0040】
特に電気工学では、絶縁被覆の導電体上への高い密着性及び高い耐熱性が重要であるため、本発明に従うと、電気機械、好ましくは電動機又は変圧器用の巻線として本発明に従った絶縁導電体が使用されることが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明はこれから、実例的な実施形態を参照してより詳細に以下で説明されることになる。図面は例として提供され、本発明の概念を説明するように意図されているが、決して本発明を限定したり、断定的に本発明を示したりするものではない。
【
図2a】矩形の断面の絶縁導電体の第1の実施形態の変形を示す。
【
図2b】矩形の断面の絶縁導電体の第2の実施形態の変形を示す。
【
図2c】矩形の断面の絶縁導電体の第3の実施形態の変形を示す。
【
図3a】円状の断面の第1~第3の実施形態の変形を示す。
【
図3b】円状の断面の第1~第3の実施形態の変形を示す。
【
図3c】円状の断面の第1~第3の実施形態の変形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、
図2a~
図2d及び
図3a~
図3dで図示されるような、絶縁導電体を製造するための方法の概略図を示す。絶縁導電体は、銅或いはアルミニウムのような他の材料から作られた導電体1と、熱可塑性材料(熱可塑性樹脂、熱可塑性合成材料、又は熱可塑性ポリマとも呼ばれる)、好ましくは高耐熱性プラスチックから作られた少なくとも1つの絶縁層3を有する絶縁被覆2を備える。以下の実例的な実施形態では、少なくとも1つの絶縁層3が外部絶縁層3として形成され、従って絶縁被覆2の最外層を形成する。しかしながら、代替実施形態の変形では、依然として1つ又は複数の更なる層、好ましくは絶縁層が、絶縁層3に適用され得、それが、絶縁被覆2の最外層を形成し得る。
【0043】
導電体1は、例示されている実施形態では、コイル出口7を介してバンド又はワイヤとして継続的に工程に供給され、例えばConform(登録商標)技術を用いて引抜又は圧延又は押出のような冷間加工で準備され得る。言うまでもなく、本発明に従った方法は、「インライン」、即ち製造工程に直接結びついて実行されることもできる。第1の工程では、導電体1は、粗汚損(coarse soiling)を導電体1から除去するために、例えば研削加工によって事前洗浄ユニット8において機械的に、或いは、例えば適した溶剤又は酸によって化学作用により、事前洗浄される。
【0044】
次の方法工程では、窒素、アルゴン、又は水素の保護ガス雰囲気が存在し、低圧プラズマの形態のガスプラズマが20mbar未満の圧力で製造されるプラズマ処理ユニット9に事前洗浄された導電体1が入る。しかしながら、低圧プラズマは既に、80mbar未満の圧力でさえ製造されていることができる。この低圧プラズマでは、導電体1の表面は、導電体1の表面上に形成された酸化層を運び去るか、又は除去するために、保護ガスのイオンでボンバード処理される。同時に、導電体1は、プラズマ処理によってソフトアニール処理され、それにより導電体1の表面エネルギーが増加し、その結果表面を活性化する。
導電体1の表面から酸化層及び何れの汚染物質も除去すること、或いは導電体1自体の非常に薄い層が表面から除去されることによって、及び、表面エネルギーの増加によって、銅から作られた導電体1と導電体1に適用された絶縁被覆2との間の密着性が決定的に向上し得る。
【0045】
図2aでは矩形の断面の平板導体として図示され、
図3aでは円状の断面で図示されている、本発明に従った絶縁導電体の第1の実施形態の変形では、絶縁被覆2は、絶縁層3のみからなる。絶縁層3は、絶縁導電体が高作動温度でさえ使用され得るように、180°Cよりも高い、好ましくは220°Cを上回る耐熱性を有する。外部絶縁層3は、高い耐熱性と大量の有機及び無機物質に対する高い抵抗との両方を有するポリエーテルエーテルケトン[PEEK]からなる。代替的に、外部絶縁層3は、ポリフェニレンスルフィド[PPS]からも成り得るか、又はPEEK及び/又はPPSも備え得る。
【0046】
導電体1と外部絶縁層3との間の密着性の増加を達成するために、導電体1は、プラズマ処理ユニット9を通った後、押出ユニット11に達し、ここで、外部絶縁層3が導電体1の上に押出被覆される。このケースでは、導電体1は、少なくとも200°C、好ましくは少なくとも300°Cの温度に予熱される。酸化層の再形成を防止するために、押出ユニット11中への導体1の押出と輸送との両方が保護ガス雰囲気下で行われる。この方法で製造される絶縁導電体は、例えば、電動機又は変圧器のような電気機械における、英語では「magnet wire」としても知られている巻線として使用され得る。外部絶縁層3の厚さは、本願の実例的な実施形態では約30μmである。
特に、絶縁層3が、ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]のようなポリアリールエーテルケトン[PAEK]からなるとき、特に良好な密着特性が達成される。従って、絶縁層3の導電体1からの剥離は通常、1mmより十分小さく留まり(remains well below)、特に、せいぜい0.2mm、好ましくはせいぜい0.1mm、より好ましくはせいぜい0.05mm、特に好ましくはせいぜい0.01mmである。絶縁層3の熱可塑性材料がポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]である場合でも、増加した密着特性が達成される。
【0047】
一般に、少なくとも1つの絶縁層3は、2つ、3つ、4つ、又はそれより多い個別の絶縁層3も備え得、それらの全てが、押出ユニット11において保護ガス雰囲気下で製造される。結果として、絶縁層3の最下層における欠陥が後続の絶縁層3によって補償されるため、絶縁被覆2における欠陥の確率は、徹底的に低減され得る。タンデム式押出加工が、そのような準備に特に適している。
【0048】
加えて又は代わりに、好ましくは少なくとも1つの絶縁層3と同様に構成された、即ち特にポリエーテルエーテルケトン[PEEK]のようなポリアリールエーテルケトン[PAEK]又は上で言及されたプラスチックの別のものの、更なる絶縁層が、更なる押出ユニット12において保護ガス雰囲気外部で絶縁被覆2に適用されることもまた提供され得る。
第1の実施形態の変形の代わりとして、絶縁被覆2と導電体1との間の密着性を増加させるために、絶縁被覆2は、
図2b及び
図3bで図示されている第2の実施形態では、PEEK又はPPSから作られた外部絶縁層3に加えて、プラズマポリマ層4の形態でプラスチック含有中間層を備える。このプラズマポリマ層4は、プラズマ処理ユニット9の後及び押出ユニット11の前に配置されたプラズマ重合ユニット10において、本発明に従った方法で製造される。プラズマ処理及びプラズマ重合が組み合わされたデバイスにおいて行われることも考えられる。プラズマ重合ユニット10では、上述のとおり、酸化層が除去され、表面エネルギーが増加した後、プラズマポリマ層4は、プラズマによってエチレン、ブタノール、アセトン、又はテトラフルオロメタン[CF
4]のようなガス状モノマーを活性化し、それにより異なる鎖長の高く架橋された高分子及びある割合の遊離基(a proportion of free radicals)を形成することによって、導電体1の表面上に形成され、それは、導電体1の表面上にプラズマポリマ層4として堆積する。本実例的な実施形態では、結果として生じるプラズマポリマ層4は、1μm未満の厚さであり、導電体1の、活性化され、酸化物のない表面に特に良好に密着する。
【0049】
外部絶縁層3は、今度は、上で説明されたように、プラズマポリマ層4の上に押出ユニット11において押し出され、ここにおいて、プラズマポリマ層4と外部絶縁層3との間の密着性も高い。
【0050】
図2c及び
図3cにおいて例示されている第3の実施形態の変形では、絶縁被覆2は、PEEKから作られた外部絶縁層3に加えて、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]又はパーフルオロエチレンプロピレン[FEP]のフッ素ポリマ層5として形成されたプラスチック含有中間層を備え、それは、導電体1の表面に直接適用され、更に導電体1と外部絶縁層3との間の密着性を向上させる。フッ素ポリマ層5は、共押出又はタンデム式押出加工によって押出ユニット11において外部絶縁層3と共に製造される。フッ素ポリマ層5の厚さは、本実施形態では、約30μmである。
外部絶縁層3を押出被覆した後、絶縁導電体は、制御された方法、例えば空冷によって冷却され、絶縁導電体に圧力を加えることによって密着性を更に向上させる一連の圧着ローラに引き渡される。最後に、絶縁導電体は、巻線機13上に巻き付けられる。
【0051】
図1において例示されたデバイスは、個別の実施形態の変形の製造に必要な、全てのデバイスが図示されている概要に関係している。通過するデバイスの右から左へのシーケンスは、実施形態の変形から独立しており、何れのケースでも、プラズマ重合ユニット9及び押出ユニット11は通過されなければならないが、プラズマ処理ユニット9及び更なる押出ユニット12は、特定の設計の変形の製造にのみに使用されるオプションのデバイスである。共押出又はタンデム式押出加工の代わりに、いくつかの個別の押出が連続して行われ得ることが理解される。
【符号の説明】
【0052】
1導電体
2絶縁被覆
3絶縁層
4プラズマポリマ層
5フッ素ポリマ層
6金属層
7コイル出口
8事前洗浄ユニット
9プラズマ処理ユニット
10プラズマ重合ユニット
11押出ユニット
12更なる押出ユニット
13巻線機
以下に本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を備える絶縁導電体であって、ここにおいて、前記絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
前記導電体の表面上に形成された酸化層を除去するために、及び/又は、前記導電体の表面エネルギーを増加させるために、前記導電体が保護ガス雰囲気下に置かれ、ガスプラズマ中の保護ガスのイオンでボンバード処理される方法によって得られ、
その後、
前記少なくとも1つの絶縁層が、保護ガス雰囲気下で前記導電体の前記表面に直接適用されるか、
又は、前記被覆が前記プラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも前記プラスチック含有中間層が、前記導電体の前記表面に保護ガス雰囲気下で直接適用されるか、
のいずれか一方である、絶縁導電体。
[C2]
前記導電体の前記表面上での新たな酸化層の形成を防止するために、前記導電体が、前記絶縁被覆の適用まで保護ガス雰囲気下で継続的に配置されることを特徴とする、C1に記載の絶縁導電体。
[C3]
前記導電体をボンバード処理するための前記ガスプラズマは、好ましくは80mbar未満の圧力を有する低圧プラズマであることを特徴とする、C1又は2に記載の絶縁導電体。
[C4]
前記絶縁被覆、特に前記少なくとも1つの絶縁層は、少なくとも180°C、好ましくは少なくとも200°C、特に少なくとも220°Cの耐熱性を有することを特徴とする、C1~3のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C5]
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、C1~4のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C6]
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリエーテルケトン[PEK]、ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリエーテルケトンケトン[PEKK]、ポリエーテルエーテルケトンケトン[PEEKK]、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン[PEKEKK]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるポリアリールエーテルケトン[PAEK]であることを特徴とする、C1~5のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C7]
前記少なくとも1つの絶縁層は、10μmと1000μmとの間、好ましくは25μmと750μmとの間、特に好ましくは30μmと500μmとの間、特に50μmと250μmとの間の厚さを有することを特徴とする、C1~6のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C8]
前記少なくとも1つの絶縁層は、押出方法によって製造され得ることを特徴とする、C1~7のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C9]
前記絶縁被覆は、前記少なくとも1つの絶縁層からなることを特徴とする、C1~8のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C10]
前記絶縁被覆は、1つの絶縁層からなることを特徴とする、C9に記載の絶縁導電体。
[C11]
前記絶縁被覆は、少なくとも2つ、好ましくは厳密に2つの絶縁層からなることを特徴とする、C9に記載の絶縁導電体。
[C12]
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの更なる絶縁層が、前記絶縁被覆に適用され、ここにおいて、前記少なくとも1つの更なる絶縁層は、保護ガス雰囲気下で適用されないことを特徴とする、C1~11のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C13]
前記少なくとも1つの更なる絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、好ましくはポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、C12に記載の絶縁導電体。
[C14]
前記絶縁被覆は、不均一の鎖長の架橋された高分子のプラズマポリマ層を備え、そのプラズマポリマ層は、ガスプラズマ中、好ましくは前記導電体をボンバード処理するための前記ガスプラズマ中のガス状モノマーの重合によって製造され得ること、及び前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記プラズマポリマ層からなることを特徴とする、C1~8のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C15]
前記プラズマポリマ層は、1μm以下の厚さを有することを特徴とする、C14に記載の絶縁導電体。
[C16]
前記プラズマポリマ層の製造のための前記モノマーは、エチレン、ブタノール、アセトン、又はテトラフルオロメタン[CF
4
]であることを特徴とする、C14又は15に記載の絶縁導電体。
[C17]
前記絶縁被覆は、少なくとも1つのフッ素ポリマ層を有することと、
及び、前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記フッ素ポリマ層からなることと、
を特徴とする、C1~8のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C18]
前記フッ素ポリマ層は、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]又はパーフルオロエチレンプロピレン[FEP]を備えることを特徴とする、C17に記載の絶縁導電体。
[C19]
前記少なくとも1つのフッ素ポリマ層の厚さは、1μmと120μmとの間、好ましくは5μmと100μmとの間、特に好ましくは10μmと80μmとの間、特に20μmと50μmとの間にあることを特徴とする、C17又は18に記載の絶縁導電体。
[C20]
前記絶縁被覆全体が、保護ガス雰囲気下で前記導電体に適用されることを特徴とする、C14~19のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C21]
絶縁被覆を有する、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を備える絶縁導電体であって、ここにおいて、前記絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
前記導電体の表面上に形成された酸化層が、ガスプラズマ中の保護ガス雰囲気の保護ガスのイオンによる前記導電体のボンバード処理によって除去され、
その後、
前記少なくとも1つの絶縁層が、前記導電体の前記酸化層のない表面に直接適用されるか、
又は、前記被覆が前記プラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも前記プラスチック含有中間層が、前記導電体の前記酸化層のない表面に直接適用されるか、
のいずれか一方であることを特徴とする、絶縁導電体。
[C22]
前記絶縁被覆、特に前記少なくとも1つの絶縁層、は、少なくとも180°C、好ましくは少なくとも200°C、特に少なくとも220°Cの耐熱性を有することを特徴とする、C21に記載の絶縁導電体。
[C23]
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、C21又は22に記載の絶縁導電体。
[C24]
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリエーテルケトン[PEK]、ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリエーテルケトンケトン[PEKK]、ポリエーテルエーテルケトンケトン[PEEKK]、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン[PEKEKK]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるポリアリールエーテルケトン[PAEK]であることを特徴とする、C21~23のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C25]
前記少なくとも1つの絶縁層は、10μmと1000μmとの間、好ましくは25μmと750μmとの間、特に好ましくは30μmと500μmとの間、特に50μmと250μmとの間の厚さを有することを特徴とする、C21~24のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C26]
前記少なくとも1つの絶縁層は、押出加工によって製造され得ることを特徴とする、C21~25のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C27]
前記絶縁被覆は、前記少なくとも1つの絶縁層からなることを特徴とする、C21~26のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C28]
前記絶縁被覆は、1つの絶縁層からなることを特徴とする、C27に記載の絶縁導電体。
[C29]
前記絶縁被覆は、少なくとも2つ、好ましくは正確に2つの絶縁層からなることを特徴とする、C27に記載の絶縁導電体。
[C30]
熱可塑性材料の少なくとも1つの更なる絶縁層が、前記絶縁被覆に適用され、ここにおいて、前記少なくとも1つの更なる絶縁層は、保護ガス雰囲気下で適用されない、ことを特徴とする、C21~29のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C31]
前記少なくとも1つの更なる絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、好ましくはポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、C30に記載の絶縁導電体。
[C32]
前記絶縁被覆は、不均一の鎖長の架橋された高分子のプラズマポリマ層を備え、そのプラズマポリマ層は、ガスプラズマ中、好ましくは前記導電体をボンバード処理するための前記ガスプラズマ中のガス状モノマーの重合によって製造されること、
及び、前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記プラズマポリマ層からなることを特徴とする、C21~26のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C33]
前記プラズマポリマ層は、1μm以下の厚さを有することを特徴とする、C32に記載の絶縁導電体。
[C34]
前記プラズマポリマ層の製造のための前記モノマーは、エチレン、ブタノール、アセトン、又はテトラフルオロメタン[CF
4
]であることを特徴とする、C32又は33に記載の絶縁導電体。
[C35]
前記絶縁被覆は、少なくとも1つのフッ素ポリマ層を有することと、
及び、前記導電体の前記表面に直接適用される前記プラスチック含有中間層は、前記少なくとも1つのフッ素ポリマ層からなることと、
を特徴とする、C21~26のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C36]
前記フッ素ポリマ層は、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]又はパーフルオロエチレンプロピレン[FEP]を備えることを特徴とする、C35に記載の絶縁導電体。
[C37]
前記少なくとも1つのフッ素ポリマ層は、1μmと120μmとの間、好ましくは5μmと100μmとの間、特に好ましくは10μmと80μmとの間、特に20μmと50μmとの間にあることを特徴とする、C35又は36に記載の絶縁導電体。
[C38]
前記絶縁被覆全体が、保護ガス雰囲気下で前記導電体に適用されることを特徴とする、C32~37のうちの一項に記載の絶縁導電体。
[C39]
絶縁導電体を製造するための方法であって、
保護ガス下に配置されている、好ましくは銅又はアルミニウムから作られた導電体を、ガスプラズマ中、好ましくは低圧プラズマ中の前記保護ガスのイオンで、前記導電体の表面上に形成された酸化層を除去するために、及び/又は前記導電体の表面エネルギーを増加させるために、ボンバード処理することと、
前記導電体の前記表面に絶縁被覆を適用することと、
を備え、ここにおいて、前記絶縁被覆は、
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、
又は
熱可塑性材料から作られた少なくとも1つの絶縁層、及び
プラスチック含有中間層、好ましくはプラズマポリマ層又は少なくとも1つのフッ素ポリマ層、
のいずれか一方を備え、
ここにおいて、前記少なくとも1つの絶縁層が、保護ガス雰囲気下で前記導電体の前記表面に直接適用されるか、
又は、前記被覆が前記プラスチック含有中間層を備えるケースでは、
少なくとも前記プラスチック含有中間層が、前記導電体の前記表面に保護ガス雰囲気下で直接適用されるか、
のいずれか一方である、方法。
[C40]
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、C39に記載の方法。
[C41]
前記少なくとも1つの絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリエーテルケトン[PEK]、ポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリエーテルケトンケトン[PEKK]、ポリエーテルエーテルケトンケトン[PEEKK]、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン[PEKEKK]、及びこれらの組合せからなる基から選択されるポリアリールエーテルケトン[PAEK]であることを特徴とする、C39又は40に記載の方法。
[C42]
前記少なくとも1つの絶縁層は、押出被覆されることを特徴とする、C39~41のうちの一項に記載の方法。
[C43]
前記導電体は、前記絶縁被覆の前記適用の前に、少なくとも200°C、好ましくは少なくとも400°Cの温度にされることを特徴とする、C39~42のうちの一項に記載の方法。
[C44]
前記絶縁導電体は、前記少なくとも1つの絶縁層の押出被覆後に、前記少なくとも1つの絶縁層の達成可能な強度に応じて冷却されることを特徴とする、C42又は43に記載の方法。
[C45]
前記少なくとも1つの絶縁層の押出被覆後、前記絶縁導電体は、ローラ、好ましくは圧着ローラを介して案内されることを特徴とする、C42~44のうちの一項に記載の方法。
[C46]
前記絶縁被覆は、前記少なくとも1つの絶縁層からなることを特徴とする、C42~45のうちの一項に記載の方法。
[C47]
前記絶縁被覆が、少なくとも2つ、好ましくは正確に2つの絶縁層から成り、前記絶縁被覆が、保護ガス雰囲気下でタンデム式押出によって製造されることを特徴とする、C46に記載の方法。
[C48]
熱可塑性材料の少なくとも1つの更なる絶縁層が、タンデム式押出によって前記絶縁被覆の上に押出被覆され、ここにおいて、前記少なくとも1つの更なる絶縁層の前記押出は、保護ガス雰囲気下で行われないことを特徴とする、C46又は47に記載の方法。
[C49]
前記少なくとも1つの更なる絶縁層の前記熱可塑性材料は、ポリアリールエーテルケトン[PAEK]、特にポリエーテルエーテルケトン[PEEK]、ポリイミド[PI]、ポリアミドイミド[PAI]、ポリエーテルイミド[PEI]、ポリフェニレンスルフィド[PPS]、及びこれらの組合せからなる基から選択されることを特徴とする、C45に記載の方法。
[C50]
前記絶縁被覆は、プラズマポリマ層からなることと、
前記プラズマポリマ層は、前記導電体の前記表面に直接保護ガス雰囲気下で前記絶縁被覆のプラスチック含有中間層としてガスプラズマ中のガス状モノマーの重合によって適用されることと、
を特徴とする、C42~45のうちの一項に記載の方法。
[C51]
前記絶縁被覆は、少なくとも1つの少なくとも1つのフッ素ポリマ層を備えることと、 前記フッ素ポリマ層は、前記導電体の前記表面に直接保護ガス雰囲気下で前記絶縁被覆のプラスチック含有中間層として適用されることと、
を特徴とする、C42~45のうちの一項に記載の方法。
[C52]
少なくとも1つのフッ素ポリマ層及び前記少なくとも1つの絶縁層は、共押出又はタンデム式押出によって製造されることを特徴とする、C51に記載の方法。
[C53]
電気機械、好ましくは電動機又は変圧器のための巻線としての、C1~38のうちの一項に記載の絶縁導電体の使用。