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  • 特許-路面監視装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】路面監視装置
(51)【国際特許分類】
   E01C 23/01 20060101AFI20220411BHJP
   G01B 11/30 20060101ALI20220411BHJP
   B60R 1/20 20220101ALI20220411BHJP
【FI】
E01C23/01
G01B11/30 W
B60R1/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021061537
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518155649
【氏名又は名称】学校法人久留米工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】東 大輔
(72)【発明者】
【氏名】服部 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】田中 基大
(72)【発明者】
【氏名】金子 寛典
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/024847(WO,A1)
【文献】特開2020-117182(JP,A)
【文献】特開2018-069788(JP,A)
【文献】特開2017-184358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0016846(US,A1)
【文献】中国実用新案第208630488(CN,U)
【文献】特開2017-143712(JP,A)
【文献】中国実用新案第209977905(CN,U)
【文献】中国実用新案第208836267(CN,U)
【文献】特開2021-065468(JP,A)
【文献】特開2019-022338(JP,A)
【文献】特開2019-197328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G01B 11/30
B60R 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低速度の運転車両の車輪付近の地上から10cm以下の高さに設けられる、路面情報を取得する撮影装置と、
前記撮影装置を覆う本体部と、
前記本体部の天面部分の縁に沿って一続きで設けられ、前記撮影装置により撮影される路面を照らす光源と、
を含み、
前記撮影装置は、当該光源の内側に設けられ、
前記本体部の側面部分は、障害物と接触した際に衝撃を吸収する緩衝材であり、前記天面部分の縁から鉛直下方向に向かってすだれ状のゴム素材で形成される緩衝材である
路面監視装置。
【請求項2】
前記運転車両が有するそれぞれの車輪付近にそれぞれ設けられる請求項1に記載の路面監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低速度の運転車両のそれぞれの車輪付近に設けられ、当該運転車両が走行する路面の状況を撮影することで、路面状況を監視する路面監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会やMaaS(Mobility as a Service)の普及を背景に、運転車両(例えば、自動運転車両)のニーズが増加している。このような運転車両は、主に高齢者や身体障害者が利用するものであり、特に安全性が強く求められている。運転車両の制御は、走行する路面を監視しつつ行われるものであり、そのため、運転車両の走行において、路面の確認・監視は非常に重要な問題となる。具体的には、運転車両が走行する路面に段差がないか、または石やゴミなどの障害物がないかなどを監視しつつ、これらの情報に基づいて運転車両のハンドル操作やスピード制御を適切に行うことで、高い安全性を実現することができる。
【0003】
従って、運転車両が路面を走行する際において、路面の状況を正確に知ることが求められている。ここで、路面を撮影する技術として、例えば、特許文献1に記載されている路面画像撮影・編集装置がある。特許文献1には、路面画像の重なり領域における画素の輝度に基づいて一致度を算出することにより、日向・日陰ができた路面の路面画像を識別可能に撮影する路面画像撮影・編集装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-90367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている技術では、日射状況次第で路面状況を正確に監視できない場合がある。例えば、陽射しが強すぎて、撮影対象の路面が明るくなりすぎると、明るい部分が白く飛んでしまうことがある(いわゆる、白飛び)。
【0006】
そこで、本発明は、日射状況や天候によらず、運転車両が走行する路面の状況を正確に監視することができる路面監視装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の路面監視装置は、低速度の運転車両の車輪付近に設けられる、路面情報を取得する取得手段と、取得手段を覆う本体部と、を含む。これにより、運転車両が走行する路面は、本体部により日射や電波、電磁波などが遮られつつ、取得手段により路面情報の取得が行われる。
【0008】
また、本体部は、障害物と接触した際に衝撃を吸収する緩衝材で形成されることが望ましい。これにより、路面監視装置が石やゴミなどの障害物と接触した場合でも、緩衝材で形成された本体部により、接触による衝撃が吸収される。
【0009】
また、取得手段は、運転車両の車輪付近の地上から10cm以内の高さに設けられることが望ましい。これにより、より日射や電波、電磁波などの入り込みを防ぐことができる。
【0010】
また、取得手段が、路面を撮影する撮影装置と、撮影装置により撮影される路面を照らす光源と、を含むことが望ましい。これにより、運転車両が走行する路面は、本体部により日射が遮られつつ、光源により照らされて撮影装置により撮影される。
【0011】
また、光源は、本体部の天面部分の縁に沿って設けられており、撮影装置は、当該光源の内側に設けられていることが望ましい。これにより、光源により十分に照らされた路面が、撮影装置により撮影される。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明の路面監視装置は、低速度の運転車両の車輪付近に設けられる、路面情報を取得する取得手段と、取得手段を覆う本体部と、を含む構成により、運転車両が走行する路面は、本体部により日射や電波、電磁波などが遮られつつ、取得手段により路面情報の取得が行われるため、日射状況や天候によらず、運転車両が走行する路面の状況を正確に監視することができる。
【0013】
(2)また、本体部は、障害物と接触した際に衝撃を吸収する緩衝材で形成される構成により、路面監視装置が石やゴミなどの障害物と接触した場合でも、緩衝材で形成された本体部により、接触による衝撃が吸収されるため、本体部の内部に設けられている機器(光源や取得手段など)の破損を防ぐことができる。
【0014】
(3)また、取得手段は、運転車両の車輪付近の地上から10cm以内の高さに設けられる構成により、より日射や電波、電磁波などの入り込みを防ぐことができるため、運転車両が走行する路面の状況をより正確に監視することができる。
【0015】
(4)また、取得手段が、路面を撮影する撮影装置と、撮影装置により撮影される路面を照らす光源と、を含む構成により、運転車両が走行する路面は、本体部により日射が遮られつつ、光源により照らされて撮影装置により撮影されるため、日射状況によらず、常に一定の明るさで照らされた路面画像を取得することができる。
【0016】
(5)また、光源は、本体部の天面部分の縁に沿って設けられており、撮影装置は、当該光源の内側に設けられている構成により、光源により十分に照らされた路面が、撮影装置により撮影されるため、光が足りずに写りが不鮮明な撮影画像の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る路面監視装置を説明するための図である。
図2】本発明の実施の形態に係る路面監視装置の構成を説明するための図であり、(A)は路面監視装置の平面図、(B)は路面監視装置の底面図、(C)は路面監視装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0019】
[路面監視装置]
図1は、本発明の実施の形態に係る路面監視装置を説明するための図である。図1に示すように、路面監視装置1は、低速度の運転車両Mの車輪W付近に設けられる。例えば、路面監視装置1は、車輪W付近の上部を覆うカバー(泥除け、マッドガード、フェンダーなど)や、車輪Wと繋がっている車軸(図示せず)などと、取付部材20によって取り付けられる。取付部材20は、例えば、L型金具や湾曲型金具などであり、路面監視装置1を車輪Wの付近に設けることができるものであれば、他の部材でもよい。または、路面監視装置1は、車輪W(車輪Wの回転中心)と直接繋がることで設けられてもよい。
本実施の形態において、路面監視装置1は、運転車両Mのそれぞれの車輪W(前輪2箇所、後輪2箇所の計4箇所)付近に設けられる。なお、路面監視装置1は、車輪W付近の地上から10cm以下の高さに設けられる。
【0020】
運転車両Mは、例えば、主に高齢者や身体障害者が利用する電動車椅子である。運転車両Mの走行速度は最高時速6kmであり、運転車両Mは、交通ルールに則り、歩道を走行(利用)することができるものである。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係る路面監視装置の構成を説明するための図であり、(A)は路面監視装置の平面図、(B)は路面監視装置の底面図、(C)は路面監視装置のA-A断面図である。図2に示すように、路面監視装置1は、底部103が開口した本体部10を含む。本体部10は、路面方向を向いている底部103のみが開口しているため、路面監視装置1の真下に位置する路面は、本体部10により、自然光(例えば、日射)や人工的な光(例えば、車のライトや街頭の明かり)など、外部からの光が遮られる。また、本体部10により、外部からの不要な磁気信号、電波、電磁波などが遮られる。
【0022】
本実施の形態において、本体部10は円柱状であるが(図1,2参照)、角柱状や、その他の形状でもよい。つまり、本体部10は、用途や仕様環境に応じて、形状や大きさを適宜変えることができる。
【0023】
また、本体部10は、その内側に、取得手段12を装着(格納)する。つまり、取得手段12は、本体部10により覆われる。例えば、取得手段12は、本体部10の内側の、天面部分101の略中央の位置に装着される。
【0024】
取得手段12は、例えば、路面を撮影するカメラなどの撮影装置12aである。また、取得手段12は、撮影装置12a以外であれば、例えば、路面に設けられた磁気マーカやRFID(Radiо Frequency Identifer)タグ(アクティブ)などの機器から発せられる磁気信号や電波、電磁波などを受信して、路面情報を取得する磁気センサーやRFIDタグ(パッシブ)などを用いることも可能である。
【0025】
また、取得手段12が撮影装置12aの場合、路面監視装置1は、路面を照らす光源11を含む。光源11は、例えば、LEDライトである。取得手段12である撮影装置12aにより撮影された路面は、運転車両Mが自動走行するための情報として用いられる。例えば、取得手段12により撮影された路面の画像に、段差や、石やゴミなどの障害物が撮影されていた場合、当該撮影画像が通知された運転車両Mに対して、それらを避けるような走行制御(方向転換や減速など)が行われる。
【0026】
なお、光源11は、本体部10の内側に設けられる。本実施の形態においては、光源11は、円柱状の本体部10の天面部分101の縁に沿って、円を描くように設けられる(図2(B)参照)。
【0027】
また、取得手段12が磁気センサーやRFIDタグ(パッシブ)などである場合、路面に設けられた磁気マーカやRFIDタグ(アクティブ)などの機器から発せられる磁気信号や電波、電磁波などを受信して路面情報を取得し、運転車両Mへ通知する。運転車両Mは、当該路面情報に基づいて、走行制御が行う。
【0028】
路面に設けられたとは、例えば、磁気マーカやRFIDタグ(アクティブ)などの機器が、路面に埋め込まれている場合などである。
なお、路面情報とは、例えば、走行車両Mの進行方向を示すもので、路面に連続して設けられた磁気センサーからの進行方向を取得手段12が取得し、走行車両Mは当該進行方向に沿って進むように制御される。
【0029】
また、本体部10、特に、側面部分102は、障害物O(図1参照)と接触した際に、変形して衝撃を吸収する緩衝材で形成される。障害物Oとは、石や空き缶・空き瓶などのゴミ、縁石や自転車、建物や通行人などを含め、自動運転車両Mが走行する路面に存在し、自動運転車両Mが走行時に接触する可能性がある物である。衝撃材で形成される本体部10は、例えば、障害物Oと接触すると凹み、その後通常の運転に戻ると、元の形状に復元する。
【0030】
衝撃材は、ゴムやウレタンなど、障害物Oと接触した際に、変形して衝撃を吸収するもので形成される。例えば、衝撃材は、すだれ状のゴム素材で形成される。本実施の形態においては、図2(C)に示すように、本体部10の側面部分102は、本体部10の天面部分101の縁に沿って、ゴム素材がすだれ状に垂れるように設けられている。すだれ状のゴム素材で形成される緩衝材である側面部分102は、障害物Oに接触すると変形して衝撃を吸収し、その後は元の形状に復元する。
【0031】
[路面監視装置の使用方法]
以下、各図面を参照して、本実施の形態における路面監視装置の使用方法を説明する。なお、本実施の形態において、取得手段12は、撮影装置12aを用いる場合を説明する。
【0032】
運転車両Mが自動または手動走行する際、路面監視装置1は車輪W付近の地上から10cm以下の高さに設けられているため、路面監視装置1の真下に位置する路面は、本体部10により外部からの光が遮られ、光の影響を受けない。また、本体部10の内部には、路面を照らす光源11が設けられているため、路面監視装置1の直下に位置する路面は、光源11により、ムラのない、一定の明るさで照らされる。そのため、本体部10の内部に設けられている撮影装置12aは、常に一定の明るさで照らされた路面を撮影することができる。
【0033】
このように、撮影装置12aは、光源11により常に一定の明るさで照らされた路面を撮影することができるため、高精度の路面の撮影画像を取得することができる。つまり、外部からの光が強すぎて白飛びが発生している画像や、光が足りずに写りが不鮮明な画像ではなく、撮影対象(路面)がはっきりと写っている画像を取得することができる。
【0034】
また、本体部10の側面部分102は、障害物Oと接触した際に衝撃を吸収する緩衝材で形成されるため、運転車両Mが走行中に石やゴミなどの障害物と接触した場合でも、本体部10の内部に設けられている光源11や撮影手段12aの破損を防ぐことができる。
【0035】
なお、本実施の形態において、光源11は、本体部10の天面部分101の縁に沿って設けられているため、本体部10の直下に位置する路面は、光源11によりまんべんなく照らされる。よって、光源11により十分に照らされた路面が、撮影装置12aにより撮影されることとなるため、光が足りずに写りが不鮮明な撮影画像の発生を防ぐことができる。
【0036】
このように、路面監視装置1は、運転車両Mの車輪W付近に設けられ、自動運転車両Mが走行する路面の、高精度の撮影画像を取得することができる。なお、以上のように説明した路面監視装置1はあくまで一例であり、例えば、本体部10の側面部分102だけでなく、天面部分101もゴム素材で形成される緩衝材として、情報からの衝撃を吸収することができるようにしてもよい。さらに、本実施の形態において、路面監視装置1は、自動運転車両Mのそれぞれの車輪W(前輪2箇所、後輪2箇所の計4箇所)付近に設けられているが、当該数も適宜増減可能である。
【0037】
また、取得手段12が磁気センサーやRFID(パッシブ)などである場合も同様に、磁気センサーやRFID(パッシブ)などは本体部10に覆われているため、外部からの不要な磁気信号、電波、電磁波などが遮られる。不要な磁気信号などとは、例えば、他の磁気マーカや、他の走行車両から発せられる磁気信号などである。つまり、他の機器からの干渉を防ぐことができる。
【0038】
このような干渉を防ぐため、本体部10に電磁波シールドを用いたり、一部または全部をアルミニウムで覆ったりと、磁気信号、電波、電磁波などをより遮る構成とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明は、運転車両の車輪付近に設けられ、運転車両が走行する路面情報を高精度に取得することができる路面監視装置として用いることができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 路面監視装置
10 本体部
101 天面部分
102 側面部分
103 底部
11 光源
12 取得手段
12a 撮影装置
20 取付部材
O 障害物
M 運転車両
W 車輪
【要約】
【課題】日射状況や天候などの外的要因によらず、運転車両が走行する路面の状況を正確に監視することができる路面監視装置の提供。
【解決手段】低速度の運転車両の車輪付近に設けられる、路面情報を取得する取得手段12と、取得手段12を覆う本体部10と、を含む路面監視装置1。ここで、特に、取得手段12が、路面を撮影する撮影装置12aと、撮影装置12aにより撮影される路面を照らす光源11と、を含む路面監視装置1。
【選択図】図2
図1
図2