(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20220411BHJP
H03H 9/25 20060101ALI20220411BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20220411BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20220411BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20220411BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/145 D
H03H9/25 C
H03H9/72
H03H9/64 Z
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
(21)【出願番号】P 2021135274
(22)【出願日】2021-08-23
(62)【分割の表示】P 2020219941の分割
【原出願日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】古藤 祐喜
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-176254(JP,A)
【文献】特開2000-49565(JP,A)
【文献】特開2008-5241(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103953(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/018207(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/187827(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、多重モード型共振器を備えるバンドパスフィルタと
を備える弾性波デバイスであって、
前記多重モード型共振器は、第1のIDT電極、第2のIDT電極、第3のIDT電極、第4のIDT電極および第5のIDT電極を備え、
前記第3のIDT電極の対数は、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極、前記第4のIDT電極および前記第5のIDT電極の対数の合計よりも多く、
前記バンドパスフィルタの配線パターンは、第1金属層、前記第1金属層上に形成された第2金属層および前記第1金属層と前記第2金属層の間に形成された絶縁体を含み、前記第1金属層は、前記第3のIDT電極の信号ラインに囲まれ、かつ、絶縁されたアイランドパターンを有し、前記アイランドパターンは、前記第2金属層を介して前記第2のIDT電極および前記第4のIDT電極のグランドラインと電気的に接続されている弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第1のIDT電極の対数と前記第5のIDT電極の対数は同等である請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記第2のIDT電極の対数と前記第4のIDT電極の対数は同等である請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記圧電基板は、前記バンドパスフィルタが形成された面とは反対の主面に、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスからなる基板が接合されている
請求項1から3のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記バンドパスフィルタは受信フィルタであり、さらに送信フィルタを備えたデュプレクサである
請求項1から4のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記受信フィルタの通過帯域は、前記送信フィルタの通過帯域よりも低周波である請求項5に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記送信フィルタは、ラダー型に配置された複数の共振器を備える請求項5または6に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記送信フィルタのラダー型に配置された複数の共振器は、音響薄膜共振器である請求項7に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記送信フィルタは、前記圧電基板上に形成されている
請求項5から7のいずれか一項に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の弾性波デバイスを備えるモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関連する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術的進歩により、移動体通信端末に代表されるスマートフォンなどは、目覚ましく小型化、軽量化されている。このような移動通信端末に用いられるフィルタとしては、小型化が可能な弾性波デバイスが用いられている。また、移動体通信システムとしては、同時送受信する通信システムが急増しデュプレクサ等の需要が急増している。
【0003】
これらの状況によって、デュプレクサの受信側のフィルタとして不平衡―平衡変換機能を有する多重モード型共振器が使用されている。さらには移動通信システムの変化に伴い、デュプレクサの要求仕様がより厳しくなってきている。すなわち、従来に比してより矩形に近く、低損失で急峻性に優れた通過帯域特性を持つ多重モード型共振器が必要となっている。
【0004】
特許文献1には、弾性波デバイスに関する技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、十分な通過帯域特性を持つ多重モード型共振器を用いた弾性波デバイスを提供することができない。本発明は、より矩形に近く、低損失で急峻性に優れた通過帯域特性を持つ多重モード型共振器を用いた弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる弾性波デバイスは、
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、多重モード型共振器を備えるバンドパスフィルタと
を備える弾性波デバイスであって、
前記多重モード型共振器は、第1のIDT電極、第2のIDT電極、第3のIDT電極、第4のIDT電極および第5のIDT電極を備え、
前記第3のIDT電極の対数は、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極、前記第4のIDT電極および前記第5のIDT電極の対数の合計よりも多く、
前記バンドパスフィルタの配線パターンは、第1金属層、前記第1金属層上に形成された第2金属層および前記第1金属層と前記第2金属層の間に形成された絶縁体を含み、前記第1金属層は、前記第3のIDT電極の信号ラインに囲まれ、かつ、絶縁されたアイランドパターンを有し、前記アイランドパターンは、前記第2金属層を介して前記第2のIDT電極および前記第4のIDT電極のグランドラインと電気的に接続されている弾性波デバイスとした。
【0008】
前記第1のIDT電極の対数と前記第5のIDT電極の対数は同等であることが、本発明の一形態とされる。
【0009】
前記第2のIDT電極の対数と前記第4のIDT電極の対数は同等であることが、本発明の一形態とされる。
【0010】
前記圧電基板は、前記バンドパスフィルタが形成された面とは反対の主面に、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスからなる基板が接合されていることが、本発明の一形態とされる。
【0011】
前記バンドパスフィルタは受信フィルタであり、さらに送信フィルタを備えたデュプレクサであることが、本発明の一形態とされる。
【0012】
前記受信フィルタの通過帯域は、前記送信フィルタの通過帯域よりも低周波であることが、本発明の一形態とされる。
【0013】
前記送信フィルタは、ラダー型に配置された複数の共振器を備えることが、本発明の一形態とされる。
【0014】
前記送信フィルタのラダー型に配置された複数の共振器は、音響薄膜共振器であることが、本発明の一形態とされる。
【0015】
前記送信フィルタは、前記圧電基板上に形成されていることが、本発明の一形態とされる。
【0016】
前記弾性波デバイスを備えるモジュールが、本発明の一形態とされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より矩形に近く、低損失で急峻性に優れた通過帯域特性を持つ多重モード型共振器を用いた弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1にかかる弾性波デバイス1の断面図である。
【
図2】
図2は、デバイスチップ5(Rx)の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施例と比較例の多重モード型共振器の共振特性を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施例と比較例のバンドパスフィルタの通過特性を示す図である。
【
図5】
図5は、
図2において破線で囲われた領域FIG.5の構成を説明するための図である。
【
図6】
図6は、デバイスチップ5(Tx)の構成例を示す図である。
【
図7】
図7は、弾性波素子52が弾性表面波共振器である例を示す平面図である。
【
図8】
図8は、弾性波素子52が圧電薄膜共振器である例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例1にかかるデュプレクサの帯域特性を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例2にかかるデバイスチップ105の構成例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施例3にかかるモジュール100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施の形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
(実施例1)
図1は、実施例1にかかる弾性波デバイス1の断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施例にかかる弾性波デバイス1は、配線基板3と、配線基板3上に実装された、2つのデバイスチップ5を備える。本実施例では、デバイスチップ5(Rx)を受信フィルタとして、デバイスチップ5(Tx)を送信フィルタとする、デュプレクサである弾性波デバイスの例を示すが、当然のことながら、本発明の適用対象として、デバイスチップ5が一つであるバンドパスフィルタとしての弾性波デバイスでもよいし、クワトロプレクサとしてもよい。また、一つのデバイスチップ上にデュプレクサを実現する機能素子を形成することもできる。
【0022】
配線基板3は、例えば、樹脂からなる多層基板、または、複数の誘電体層からなる低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)多層基板等が用いられる。また、配線基板3は、複数の外部接続端子31を備える。
【0023】
デバイスチップ5上には、所望の周波数帯域の電気信号が通過するように構成されたバンドパスフィルタが形成されている。デバイスチップ5(Rx)上には、多重モード型共振器7を含むバンドパスフィルタが形成されている。本実施例において、デバイスチップ5(Rx)は、受信フィルタである。
【0024】
デバイスチップ5(Tx)上には、ラダー型フィルタが形成されている。本実施例において、デバイスチップ5(Tx)は送信フィルタである。
【0025】
デバイスチップ5は、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶などの圧電単結晶、あるいは圧電セラミックスからなる基板を用いることができる。あるいは、後述するように、音響薄膜共振器を用いたバンドパスフィルタにおいては、シリコン等の半導体基板、または、サファイア、アルミナ、スピネルもしくはガラス等の絶縁基板を用いることができる。
【0026】
また、デバイスチップ5は、圧電基板と支持基板が接合された基板を用いてもよい。支持基板は、例えば、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板またはシリコン基板を用いることができる。
【0027】
配線基板3上に、複数の電極パッド9が形成されている。電極パッド9は、例えば、銅または銅を含む合金を用いることができる。また、電極パッド9は、例えば、10μm~20μmの厚みとすることができる。
【0028】
デバイスチップ5を覆うように、封止部17が形成されている。封止部17は、例えば、合成樹脂等の絶縁体により形成してもよく、金属を用いてもよい。合成樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミドなどを用いることができるが、これらに限るものではない。好ましくは、エポキシ樹脂を用い、低温硬化プロセスを用いて封止部17を形成する。
【0029】
デバイスチップ5は、バンプ15を介して、配線基板3にフリップチップボンディングにより実装されている。
【0030】
バンプ15は、例えば、金バンプを用いることができる。バンプ15の高さは、例えば、20μmから50μmである。
【0031】
電極パッド9は、バンプ15を介して、デバイスチップ5と電気的に接続されている。
【0032】
図2は、デバイスチップ5(Rx)の構成例を示す図である。
【0033】
図2に示すように、デバイスチップ5(Rx)上に、弾性波素子52および配線パターン54が形成されている。
【0034】
弾性波素子52は、多重モード型共振器7を含む。多重モード型共振器7は、第1のIDT電極71、第2のIDT電極72、第3のIDT電極73、第4のIDT電極74および第5のIDT電極75を備える。
【0035】
本実施例において、第1のIDT電極71の対数は、18である。また、第2のIDT電極72の対数は、22である。また、第3のIDT電極73の対数は、96.5である。また、第4のIDT電極74の対数は、22である。また、第5のIDT電極75の対数は、18である。すなわち、第3のIDT電極73の対数は、第1のIDT電極71、第2のIDT電極72、第4のIDT電極74および第5のIDT電極75の対数の合計よりも多い。
【0036】
第1のIDT電極71の対数と第5のIDT電極75の対数は18で、同等である。また、第2のIDT電極72の対数と第4のIDT電極74の対数は22で、同等である。
【0037】
配線パターン54は、第1金属層と第2金属層(
図2においては図示しない)を含み、第1金属層と第2金属層との間に、絶縁体(
図2においては図示しない)が形成されている。絶縁体は、例えば、ポリイミドを用いることができる。絶縁体は、例えば、1000nmの膜厚で形成する。
【0038】
配線パターン54は、絶縁体を介して第1金属層と第2金属層とが立体的に交差するように配線される、立体配線部58を有する。
【0039】
弾性波素子52および配線パターン54は、例えば、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウムなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。また、これらの金属パターンは、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成されてもよい。弾性波素子52および配線パターン54は、その厚みが、例えば、150nmから400nmとすることができる。
【0040】
配線パターン54は、入力パッドIn、出力パッドOutおよびグランドパッドGNDを構成する配線を含んでいる。また、配線パターン54は、弾性波素子52と電気的に接続されている。
【0041】
図2に示すように、第3のIDT電極73は、出力パッドOutと、出力パッドOutと直接電気的に接続された弾性波素子52を介して、複数の立体配線部58により、電気的に接続されている。
【0042】
図2に示すように、弾性波素子52を複数形成することで、バンドパスフィルタを構成することができる。バンドパスフィルタは、入力パッドInから入力された電気信号のうち、所望の周波数帯域のみの電気信号を通過させるように設計されている。
【0043】
入力パッドInから入力された電気信号は、バンドパスフィルタを通過し、所望の周波数帯域の電気信号が、出力パッドOutに出力される。
【0044】
出力パッドOutに出力された電気信号は、バンプ15および電極パッド9を介して、配線基板3の外部接続端子31から出力される。
【0045】
図3は、本実施例と比較例の多重モード型共振器の共振特性を示す図である。
【0046】
実線で示された波形は、本実施例である弾性波デバイスの多重モード型共振器7の共振特性を示す。また、破線で示された波形は、比較例の多重モード型共振器の共振特性を示す。比較例の多重モード型共振器は、第1のIDT電極の対数を18、第2のIDT電極の対数を22、第3のIDT電極の対数を78.5、第4のIDT電極の対数を22、第5のIDT電極の対数を18とした。その他の条件は、本実施例の多重モード型共振器7と同様とした。
【0047】
図3に示すように、通過帯域の特性は、本実施例および比較例ともに同等の特性であるのに対して、通過帯域外となる820MHz付近よりも高周波となる領域から、本実施例の減衰特性が優れていることがわかる。
【0048】
図4は、本実施例と比較例のバンドパスフィルタの通過特性を示す図である。
【0049】
実線で示された波形は、本実施例である弾性波デバイスのバンドパスフィルタの通過特性を示す。また、破線で示された波形は、比較例の通過特性を示す。比較例のバンドパスフィルタは、
図3で示した共振特性をもつ比較例の多重モード型共振器を用いたバンドパスフィルタである。その他の条件は、本実施例のバンドパスフィルタと同様とした。
【0050】
図4に示すように、通過帯域の特性は、本実施例および比較例ともに同等の特性であるのに対して、通過帯域外となる820MHz付近よりも高周波となる領域から、本実施例の減衰特性が優れていることがわかる。
【0051】
すなわち、本発明によれば、より矩形に近く、低損失で急峻性に優れた通過帯域特性を持つ多重モード型共振器を用いた弾性波デバイスを提供することができる。
【0052】
図5は、
図2において破線で囲われた領域FIG.5の構成を説明するための図である。
【0053】
図5に示すように、デバイスチップ5(Rx)上に、第1金属層54M1が形成されている。また、第1金属層54M1である、第3のIDT電極73の信号ラインL73に囲まれ、かつ、絶縁されているアイランドパターンIPが形成されている。
【0054】
第2のIDT電極72と第4のIDT電極74のグランドラインGLが形成されている。また、グランドラインGLとアイランドパターンIPを電気的に接続する第2金属層54M2が形成されている。また、第2金属層54M2と信号ラインL73の間に、絶縁体56が形成されている。
【0055】
このように、信号ラインL73、絶縁体56および第2金属層54M2は、立体的に配線される立体配線部58を構成している。
【0056】
本発明の第3のIDT電極73は、幅が大きいため、絶縁体56が剥離するという問題が生じた。そこで、発明者は、第3のIDT電極73への配線にかかる立体配線を分割して、複数の立体配線により配線を行うことで、絶縁体56が剥離するという問題を解決した。
【0057】
また、
図5に示すように、アイランドパターンIPを2つ形成して、立体配線部58を3つ形成してもよいし、アイランドパターンIPを1つ形成して立体配線部58を2つ形成してもよい。アイランドパターンIPを1つ形成するときは、必要に応じて長くするなどしてもよい。
【0058】
ここで、絶縁体56の厚みや面積如何により、立体配線部58は信号ラインL73とグランドラインGLである第2金属層54M2との間に寄生容量が生じ、バンドパスフィルタの特性に影響がでてしまう場合がある。絶縁体56の厚みを厚くするほど、寄生容量は少なくなる一方で、絶縁体56が剥離しやすくなる。また、絶縁体56の面積を大きくするほど、剥離しにくくなるが、寄生容量は大きくなる。
【0059】
また、アイランドパターンIPを長くとると、寄生容量を低減できるが、長くしすぎると、信号ラインL73の配線パターン54が狭くなり、抵抗値が増大することを考慮する。
【0060】
本発明の構成によれば、絶縁体56の剥離や寄生容量による特性劣化を防止しつつ、最適化した設計をすることができる。本発明の構成によれば、設計の自由度が高く、優れた特性の弾性波デバイスを提供することができる。
【0061】
図6は、デバイスチップ5(Tx)の構成例を示す図である。
【0062】
図6に示すように、デバイスチップ5(Tx)上に、弾性波素子52および配線パターン54が形成されている。
【0063】
弾性波素子52および配線パターン54は、例えば、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウムなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。また、これらの金属パターンは、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成されてもよい。弾性波素子52および配線パターン54は、その厚みが、例えば、150nmから400nmとすることができる。
【0064】
配線パターン54は、入力パッドIn、出力パッドOutおよびグランドパッドGNDを構成する配線を含んでいる。また、配線パターン54は、弾性波素子52と電気的に接続されている。
【0065】
図6に示すように、弾性波素子52を複数形成することで、バンドパスフィルタを構成することができる。弾性波素子52は、複数形成され、直列共振器、並列共振器のいずれかとしてラダー型に配置されている。バンドパスフィルタは、入力パッドInから入力された電気信号のうち、所望の周波数帯域のみの電気信号を通過させるように設計されている。
【0066】
入力パッドInから入力された電気信号は、バンドパスフィルタを通過し、所望の周波数帯域の電気信号が、出力パッドOutに出力される。
【0067】
出力パッドOutに出力された電気信号は、バンプ15および電極パッド9を介して、配線基板3の外部接続端子31から出力される。
【0068】
図7は、弾性波素子52が弾性表面波共振器である例を示す平面図である。
【0069】
図7に示すように、デバイスチップ5上に、弾性表面波を励振するIDT(Interdigital Transducer)52aと反射器52bが形成されている。IDT52aは、互いに対向する一対の櫛形電極52cを有する。櫛形電極52cは、複数の電極指52dと複数の電極指52dを接続するバスバー52eを有する。反射器52bは、IDT52aの両側に設けられている。
【0070】
IDT52aおよび反射器52bは、例えば、アルミニウムと銅の合金からなる。IDT52aおよび反射器52bは、その厚みが、例えば、150nmから400nmの薄膜である。IDT52aおよび反射器52bは、他の金属、例えば、チタン、パラジウム、銀などの適宜の金属もしくはこれらの合金を含んでもよく、これらの合金により形成されてもよい。また、IDT52aおよび反射器52bは、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成されてもよい。
【0071】
図8は、弾性波素子52が圧電薄膜共振器である例を示す断面図である。
【0072】
図8に示すように、チップ基板60上に圧電膜62が設けられている。圧電膜62を挟むように下部電極64および上部電極66が設けられている。下部電極64とチップ基板60との間に空隙68が形成されている。下部電極64および上部電極66は、圧電膜62内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。
【0073】
チップ基板60は、例えば、シリコン等の半導体基板、または、サファイア、アルミナ、スピネルもしくはガラス等の絶縁基板を用いることができる。圧電膜62は、例えば、窒化アルミニウムを用いることができる。下部電極64および上部電極66は、例えば、ルテニウム等の金属を用いることができる。
【0074】
弾性波素子52は、所望のバンドパスフィルタとしての特性が得られるよう、適宜、多重モード型フィルタやラダー型フィルタに採用されることができる。
【0075】
図9は、実施例1にかかるデュプレクサの帯域特性を示す図である。
【0076】
図9に示すように、実施例1にかかるデュプレクサは、受信フィルタの通過帯域Rxが、送信フィルタの通過帯域Txよりも周波数が低い。このような周波数関係にあるデュプレクサにおいては、受信フィルタは、受信フィルタの通過帯域Rxの高周波側に急峻な抑圧を求められる。一般に、多重モード型フィルタは、通過帯域の高周波側の抑圧を急峻とすることが難しいが、本発明によれば、このような周波数関係にあるデュプレクサであっても、受信フィルタの通過帯域、送信フィルタの通過帯域ともに、優れた通過特性を得られる。
【0077】
(実施例2)
次に、本発明の別の実施形態である実施例2について説明する。
【0078】
図10は、実施例2にかかるデバイスチップ105の構成例を示す図である。
【0079】
図10に示すように、一つのデバイスチップ105上に、受信フィルタRxBPFと送信フィルタTxBPFが形成されている。これにより、一つのデバイスチップでデュプレクサとしての弾性波デバイスを提供することができる。
【0080】
図10に示すように、受信フィルタRxBPFの入力端子In(Rx)と送信フィルタTxBPFの出力端子Out(Tx)は、共通端子となっている。また、受信フィルタRxBPFの出力端子Out(Rx)と送信フィルタTxBPFの入力端子In(Tx)は、デバイスチップ105上において、最も離れた配置とすることが望ましい。受信フィルタRxBPFと送信フィルタTxBPF間の干渉を低減することができ、デュプレクサの特性が向上するからである。
【0081】
また、一つのデバイスチップ上での受信フィルタRxBPFと送信フィルタTxBPFの設計において、受信フィルタRxBPFは、省スペースで通過帯域外の抑圧を確保するため、多重モード型フィルタが望ましく、送信フィルタTxBPFは、耐電力を確保するため、ラダー型フィルタとすることが望ましい。
【0082】
その他の構成は、実施例1と同様の構成を採用することができるため、説明を省略する。
【0083】
(実施例3)
次に、本発明の別の実施形態である実施例3について説明する。
【0084】
図11は、本発明の実施例3にかかるモジュール100の断面図である。
【0085】
図11に示すように、配線基板130の主面上に、弾性波デバイス1が実装されている。弾性波デバイス1は、例えば、実施例1または実施例2で説明した構成を採用したデュプレクサであるとすることができる。配線基板130は、複数の外部接続端子131を有している。複数の外部接続端子131は、所定の移動通信端末のマザーボードに実装される構成となっている。
【0086】
配線基板130の主面上に、インピーダンスマッチングのため、インダクタ111が実装されている。インダクタ111は、Integrated Passive Device(IPD)とすることができる。モジュール100は、弾性波デバイス1を含む複数の電子部品を封止するための封止部117により、封止されている。
【0087】
配線基板130の内部に、集積回路部品ICが実装されている。集積回路部品ICは、図示はしないが、スイッチング回路、ローノイズアンプを含む。
【0088】
その他の構成は、実施例1または実施例2で説明した内容と重複するため、省略する。
【0089】
以上説明した本発明の実施形態によれば、より矩形に近く、低損失で急峻性に優れた通過帯域特性を持つ多重モード型共振器を用いた弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールを提供することすることができる。
【0090】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【0091】
また、少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面を上述したが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本発明の範囲内にあることが意図される。理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。また、ここで使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。前後左右、頂底上下、および横縦への言及はいずれも、記載の便宜を意図しており、本発明の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は例示にすぎない。
【符号の説明】
【0092】
1 弾性波デバイス
3 130 配線基板
5 105 デバイスチップ
7 多重モード型共振器
9 電極パッド
15 バンプ
17 117 封止部
31 131 外部接続端子
52 弾性波素子
54 配線パターン
54M1 第1金属層
54M2 第2金属層
56 絶縁体
IP アイランドパターン
GL グランドライン
60 チップ基板
62 圧電膜
64 下部電極
66 上部電極
68 空隙
71 第1のIDT電極
72 第2のIDT電極
73 第3のIDT電極
L73 信号ライン
74 第4のIDT電極
75 第5のIDT電極
100 モジュール
111 インダクタ
112 第2のインダクタ
IC 集積回路部品
【要約】
【課題】より矩形に近く、低損失で急峻性に優れた通過帯域特性を持つ多重モード型共振器を用いた弾性波デバイスおよびその弾性波デバイスを備えるモジュールを提供する。
【解決手段】圧電基板と、前記圧電基板上に形成され、多重モード型共振器を備えるバンドパスフィルタとを備える弾性波デバイスであって、前記多重モード型共振器は、第1のIDT電極、第2のIDT電極、第3のIDT電極、第4のIDT電極および第5のIDT電極を備え、前記第3のIDT電極の対数は、前記第1のIDT電極、前記第2のIDT電極、前記第4のIDT電極および前記第5のIDT電極の対数の合計よりも多い、弾性波デバイス。
【選択図】
図2