(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】遺骨灰を主成分とする焼結体
(51)【国際特許分類】
C04B 35/447 20060101AFI20220411BHJP
C04B 41/86 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C04B35/447
C04B41/86 F
(21)【出願番号】P 2021136286
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2020141373
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519449471
【氏名又は名称】山川 敦司
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【氏名又は名称】清水 尚人
(74)【代理人】
【識別番号】100186772
【氏名又は名称】入佐 大心
(72)【発明者】
【氏名】山川 敦司
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-203930(JP,A)
【文献】特表昭57-500608(JP,A)
【文献】特開昭55-121960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0080479(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106747401(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111187068(CN,A)
【文献】猪狩 美貴,釉薬の発色に及ぼす融剤および遷移金属の効果,東京藝術大学リポジトリ 博士論文,日本,東京藝術大学,2019年03月25日,p27,http://id.nii.ac.jp/1144/00001018
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/42-35/447
C04B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
70重量%~98重量%の範囲内で遺骨灰を含有する焼結体であって、
重量比で1:0.03~1:0.3(遺骨灰:融剤)の範囲内の遺骨灰と融剤としてのMgCO
3、
MgO、またはZnOとを含有する可塑性組成物が焼結されてなることを特徴とする、焼結体。
【請求項2】
請求項
1に記載の焼結体に対して下絵付または釉掛を行った上で再び焼成してなる、焼結体。
【請求項3】
請求項
2に記載の焼結体に対して上絵付を行った上で再び焼成してなる、焼結体。
【請求項4】
遺骨灰および融剤を含む可塑性組成物であって、請求項1~
3のいずれか一項に記載の焼結体の原料として用いられる、可塑性組成物。
【請求項5】
さらに成形助剤を含む、請求項
4に記載の可塑性組成物。
【請求項6】
前記成形助剤が粘土もしくは
ZrSiO
4
、有機バインダー、またはその両者である、請求項
5に記載の可塑性組成物。
【請求項7】
前記粘土
がカオリンであるか、または前記有機バインダーが
親水性コロイド基剤である、請求項
6に記載の可塑性組成物。
【請求項8】
前記親水性コロイド基剤が増粘性多糖類、ゲル性タンパク質、または両者を含む混合物である、請求項7に記載の可塑性組成物。
【請求項9】
前記混合物がパン粉または小麦粉である、請求項8に記載の可塑性組成物。
【請求項10】
遺骨灰と融剤とを重量比で1:0.03~1:0.14(遺骨灰:融剤)の範囲内で含有する、請求項4~9のいずれか一項に記載の可塑性組成物。
【請求項11】
粘土または珪酸塩の含有量が、遺骨灰に対する重量比で1:0.3(遺骨灰:粘土および珪酸塩)以下である、請求項6~10のいずれか一項に記載の可塑性組成物。
【請求項12】
有機バインダーの含有量が、有機バインダー以外の固形成分に対する重量比で1:0.4(有機バインダー以外の固形成分:有機バインダー)以下である、請求項6~11のいずれか一項に記載の可塑性組成物。
【請求項13】
次の1~3の工程を含むことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか一項に記載の焼結体の製造方法:
1.遺骨灰と、融剤または融剤および成形助剤とを含む原料を混合することにより、請求項
4~
12のいずれか一項に記載の可塑性組成物を得る工程、
2.前記可塑性組成物を成形することにより、成形物を得る工程、
3.前記成形物を焼成処理することにより、請求項1~
3のいずれか一項に記載の焼結体を得る工程。
【請求項14】
請求項
13に記載の工程に加え、さらに次の4の工程を含む、請求項2に記載の焼結体の製造方法:
4.請求項
13に記載の工程3で得られた焼結体に下絵付または釉掛を行った上で再び焼成処理を行うことにより、請求項
2に記載の焼結体を得る工程。
【請求項15】
請求項
14に記載の工程に加え、さらに次の5の工程を含む、請求項3に記載の焼結体の製造方法:
5.請求項
14に記載の工程4で得られた焼結体に上絵付を行った上で再度焼成処理を行うことにより、請求項
3に記載の焼結体を得る工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結体の技術分野に属する。本発明は、人や愛玩動物等の遺骨灰から主としてなる焼結体などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人や愛玩動物等が不幸にも亡くなった場合、後には様々な所縁の品が遺されることがある。それらの遺品の中で最も重要なものの一つは遺骨であると考えられる。
従来より、亡くなった人や愛玩動物等(以下、「故人等」という。)の遺骨は、保管する場合には、墓の中や宗教施設の納骨堂等にのみ納骨されるのが通常である。しかし、近年、荼毘に付された遺骨の一部を原料として用い、故人等を身近に感じられるように意図した物品がつくられている。これは、手元供養とよばれているものの一種である。
そのような手元供養に用いられる物品の一つとして、粒状または粉状の遺骨灰が混入したガラスまたは樹脂からなる成形品(装飾品やオブジェ等)が知られている。しかし、このような成形品においては、装飾性や成形性等を重視した場合には、通常、遺骨灰の混入量が少なくなってしまう。
【0003】
一方、特許文献1には、遺骨灰を20重量%~80重量%と比較的多量に含有し、さらにガラス転移温度降下剤および酸化ケイ素を所定量含むガラス状物質が開示されている。当該文献によれば、当該ガラス状物質は一般的なガラスと同様に所要の形状に成形加工できるとされており、人工石やオブジェ等に加工することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のガラス状物質は、遺骨灰を含む原料を加熱溶融して、高温下で型に流し込むことにより成形するものである。そのため、加熱前に成形することはできない。そして、一度成形してしまえば、形状を維持したまま同様の温度で加熱することは困難である。例えば、陶器等の他素材に元の形状のまま焼き付けることは難しく、また、所縁の深い他の故人等のご遺体や遺骸とともに火葬(通常800℃~1200℃程度)すれば溶けてしまう。
【0006】
本発明は、遺骨灰を主成分としつつ、焼成前に常温において成形することができ、また、焼成後に再び加熱しても一定形状を維持したまま溶融しない、新規な焼結体を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、遺骨灰および融剤を含む可塑性組成物からなる成形物を焼成して焼結体とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
本発明としては、例えば、下記のものを挙げることができる。
[1]遺骨灰から主としてなり、さらに融剤を含む焼結体であって、1200℃の温度において溶融状態とならないことを特徴とする、焼結体。
[2]前記融剤が、ZnO、MgO、またはMgCO3である、上記[1]に記載の焼結体。
[3]さらに粘土または珪酸塩を含む、上記[1]または[2]に記載の焼結体。
[4]前記粘土または珪酸塩がカオリンまたはZrSiO4である、上記[3]に記載の焼結体。
[5]遺骨灰の含有量が70重量%~98重量%の範囲内である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の焼結体。
[6]融剤の含有量が2重量%~15重量%の範囲内であり、粘土または珪酸塩の含有量が25重量%以下である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の焼結体。
[7]上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の焼結体に対して下絵付または釉掛を行った上で再び焼成してなる、焼結体。
[8]上記[7]に記載の焼結体に対して上絵付を行った上で再び焼成してなる、焼結体。
【0009】
[9]遺骨灰および融剤を含む可塑性組成物であって、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の焼結体の原料として用いられる、可塑性組成物。
[10]前記融剤が、ZnO、MgO、またはMgCO3である、上記[9]に記載の可塑性組成物。
[11]さらに成形助剤を含む、上記[9]または[10]に記載の可塑性組成物。
[12]前記成形助剤が粘土もしくは珪酸塩、有機バインダー、またはその両者である、上記[11]に記載の可塑性組成物。
[13]前記粘土または珪酸塩がカオリンまたはZrSiO4であり、前記有機バインダーがパン粉または小麦粉である、上記[12]に記載の可塑性組成物。
【0010】
[14]次の1~3の工程を含むことを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の焼結体の製造方法:
1.遺骨灰と、融剤または融剤および成形助剤とを含む原料を混合することにより、上記[9]~[13]のいずれか一項に記載の可塑性組成物を得る工程、
2.前記可塑性組成物を成形することにより、成形物を得る工程、
3.前記成形物を焼成処理することにより、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の焼結体を得る工程。
[15]上記[14]に記載の工程に加え、さらに次の4の工程を含む、上記[7]に記載の焼結体の製造方法:
4.上記[14]に記載の工程3で得られた焼結体に下絵付または釉掛を行った上で再び焼成処理を行うことにより、上記[7]に記載の焼結体を得る工程。
[16]上記[15]に記載の工程に加え、さらに次の5の工程を含む、上記[8]に記載の焼結体の製造方法:
5.上記[15]に記載の工程4で得られた焼結体に上絵付を行った上で再度焼成処理を行うことにより、上記[8]に記載の焼結体を得る工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遺骨灰を比較的多く含んだ可塑性組成物を、常温にて任意形状の成形物とすることができ、その成形物を焼成することにより、遺骨灰から主としてなる焼結体を得ることができる。そして、本発明に係る焼結体は再焼成しても形状が崩れないため、既存の陶磁器とともに焼成して元の形状のまま当該陶磁器に焼き付けることができる。また、他の故人等の遺体や遺骸とともに火葬してもその形状が維持され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る焼結体(実施例2)を示す図(写真)である。
【
図2】再加熱後の本発明に係る焼結体(実施例2)を示す図(写真)である。
【
図3】本発明に係る焼結体(実施例4)を示す図(写真)である。
【
図4】再加熱後の本発明に係る焼結体(実施例4)を示す図(写真)である。
【
図5】本発明に係る焼結体(実施例6)を示す図(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
1 本発明に係る焼結体について
本発明に係る焼結体(以下、「本発明焼結体」という。)は、遺骨灰から主としてなり、さらに融剤を含む焼結体であって、1200℃の温度において溶融状態とならないことを特徴とする。本発明焼結体は、さらに粘土または珪酸塩を含んでいてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分を含んでいてもよい。
【0014】
ここで「遺骨灰」とは、人または愛玩動物等が火葬された後に遺る遺骨、遺灰、またはそれらから得られる骨灰のことを意味する。骨または骨由来の成分(例えば、リン酸カルシウム)から主としてなるが、骨以外の他の成分の含有を排除するものではない。
【0015】
「主としてなる」とは、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含みうることを意味し、成分の含有率を制限するものではないが、通常、本発明焼結体の総量に対する含有量が50重量%以上を占めていることをいう。好ましくは当該含有量が70重量%以上を占めること、より好ましくは80重量%以上ないし90重量%以上を占めていることをいう。当該含有量が99重量%以上であってもよい。
【0016】
本発明焼結体は遺骨灰から主としてなるが、その含有量は70重量%~98重量%の範囲内であることが好ましく、81重量%~96重量%の範囲内、さらには90重量%~94重量%であることがより好ましい。
【0017】
1.1 融剤
本発明焼結体は、融剤を含む。かかる融剤は、陶材として通常用いられるものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、カリ(K2O)、炭酸カリ(K2CO3)、ソーダ(Na2O)、炭酸ソーダ(Na2CO3)、酸化ホウ素(B2O3)、ホウ砂(Na2B4O7)、ホウ酸(Na2BO3)、酸化鉛(PbO)、炭酸鉛(PbCO3)、鉛丹(Pb3O4)、方鉛鉱(PbS)、マグネシヤ(MgO)、マグネサイト(MgCO3)、酸化バリウム(BaO)、炭酸バリウム(BaCO3)、亜鉛華(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、ストロンチウム(SrO)を挙げることができる。この中、例えば、ZnO、MgO、MgCO3、BaO、BaCO3が好ましく、MgO、MgCO3がより好ましい。これら融剤は、一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
【0018】
本発明焼結体における融剤の含有量には特に制限はないが、2重量%~15重量%の範囲内が適当である。その中でも、3重量%~12.5重量%の範囲内が好ましく、4重量%~10重量%の範囲内がより好ましく、5.5重量%~7.5重量%の範囲内が最も好ましい。
なお、融剤の含有量が2重量%未満の場合には、手指の力で容易に破砕したり粉状になる等したり、遺骨灰がまとまった形状に焼結されないおそれがある。また、23重量%より多い場合には、1200℃以下の温度において焼結体が溶融するおそれがある。
【0019】
1.2 粘土または珪酸塩
本発明焼結体は、その一態様として粘土または珪酸塩を含む。かかる粘土は、含水珪酸礬土(Al2O3・mSiO2・nH2O)を主成分とする鉱物であって、陶磁器の可塑性原料として通常用いられるものであれば、特に制限されない。また、珪酸塩は、二酸化珪素と金属酸化物とからなる塩を主成分とする鉱物であって、陶磁器用原材料として通常用いられるものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、カオリン、ニュージーランドカオリン、蛙目粘土、木節粘土、せっ器粘土、ベントナイト、陶石、ZrSiO4を挙げることができる。この中、カオリン、ニュージーランドカオリン、陶石、ZrSiO4が好ましく、カオリン、ZrSiO4がより好ましい。これらの粘土または珪酸塩は、一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
【0020】
当該粘土または珪酸塩は、顔料等の色素を含んでいてもよい。当該顔料としては、例えば、プラセオジム(Pr)系、バナジウム(V)系、クロム(Cr)系、鉄(Fe)系等の顔料を挙げることができる。
【0021】
本発明焼結体における粘土または珪酸塩の含有量には特に制限はないが、粘土および珪酸塩の含有率が、本発明焼結体全体の25重量%以下であることが適当である。その中でも、5重量%~20重量%の範囲内が好ましく、10重量%~18重量%の範囲内がより好ましい。
【0022】
1.3 添加剤
本発明可塑性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含むことができる。用い得る添加剤としては、着色用釉薬原料、石灰質原料、木灰類、長石類、ろう石、硅石(珪石)、アルミナ等を挙げることができる。
【0023】
1.4 温度特性
本発明焼結体は、1200℃の温度において溶融状態とならないことを特徴とするが、1300℃においても溶融状態とならないこととすることができ、さらに1400℃においても溶融状態とならないこととすることも可能である。このことは、例えば、当該温度範囲内において融解する成分(溶媒や分散媒となり得る成分)が、本発明焼結体中に一定量以上含まれないようにすることで実現できる。
例えば、本発明焼結体はシリカ(SiO2)を含んでいてもよいが、焼結体中に含まれるSiO2の含有量が5重量%より多く、かつ所定の融剤の含有量が10重量%より多く、さらにSiO2と当該融剤の合計含有量が22重量%より多い場合には、1400℃以下の温度範囲にて溶融するガラス状物質となるおそれがある。上記所定の融剤としては、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ホウ素(B)のいずれかを含む酸化物、水酸化物または炭酸塩を挙げることができる。なお、本発明焼結体は、シリカ成分を全く含まないものであってもよい。
また、例えば、本発明焼結体は釉薬を含んでいてもよいが、焼結体に含まれる中火度釉または低火度釉の含有量が20重量%より多い場合には、1400℃以下の温度範囲にて溶融するおそれがある。
【0024】
1.5 再焼成
本発明焼結体は、下絵付、釉掛、またはその両方を行った上で再び焼成したものとすることができる。また、当該再焼成後の焼結体に対して上絵付を行い、さらに焼成したものとすることもできる。以下、これら再焼成で得られた焼結体を含めて「本発明焼結体」という。
【0025】
上記釉掛、下絵付、または上絵付にて用いることができる釉薬は、アルカリ金属酸化物(R2O)またはアルカリ土類金属酸化物(RO)、シリカ(SiO2)または酸化ホウ素(B2O3)、およびアルミナ(Al2O3)を主成分とするものであれば特に制限されない。この中、例えば、中火度釉、低火度釉が適当である。
具体的には、市販の釉薬ないし透明釉、例えば、一号釉、一号乙釉、三号釉、四号釉、特四号釉、九号釉、土灰釉を挙げることができる。この中、三号釉、九号釉、土灰釉が好ましく、三号釉、土灰釉がより好ましい。これら釉薬ないし透明釉は、一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
【0026】
上記釉掛、下絵付、または上絵付にて用いることができる着色用釉薬原料についても、特に制限はない。具体的には、酸化鉄(FeO,Fe2O3)、酸化コバルト(CoO,Co2O3,Co3O4)、酸化銅(CuO)、二酸化マンガン(MnO2)、炭酸マンガン(MnCO3)、酸化クロム(CrO,Cr2O3,CrO2,CrO3)、クロム酸鉛(PbCrO4)、酸化チタン(TiO2)、呉須等が挙げられる。また、プラセオジム(Pr)系、バナジウム(V)系の顔料を用いてもよい。
【0027】
2 本発明に係る可塑性組成物について
本発明に係る可塑性組成物(以下、「本発明可塑性組成物」という。)は、遺骨灰および融剤を含む可塑性組成物であって、上記本発明焼結体の原料として用いられることを特徴とする。本発明可塑性組成物は、さらに成形助剤を含んでいてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の成分を含んでいてもよい。
例えば、本発明可塑性組成物からなる成形物を焼成することにより、本発明焼結体を得ることができる。
【0028】
2.1 融剤
本発明可塑性組成物は、融剤を含む。かかる融剤は、陶材として通常用いられるものであれば、特に制限されない。
具体的には、例えば、カリ(K2O)、炭酸カリ(K2CO3)、ソーダ(Na2O)、炭酸ソーダ(Na2CO3)、酸化ホウ素(B2O3)、ホウ砂(Na2B4O7)、ホウ酸(Na2BO3)、酸化鉛(PbO)、炭酸鉛(PbCO3)、鉛丹(Pb3O4)、方鉛鉱(PbS)、マグネシヤ(MgO)、マグネサイト(MgCO3)、酸化バリウム(BaO)、炭酸バリウム(BaCO3)、亜鉛華(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、ストロンチウム(SrO)を挙げることができる。この中、例えば、ZnO、MgO、MgCO3、BaO、BaCO3が好ましく、MgO、MgCO3がより好ましい。これら融剤は、一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
【0029】
本発明可塑性組成物における融剤の含有量には特に制限はないが、本発明可塑性組成物中の遺骨灰と融剤との重量比を1:0.03~1:0.14(遺骨灰:融剤)の範囲内とするのが適当である。中でも、1:0.04~1:0.11(遺骨灰:融剤)の範囲内が好ましく、1:0.06~1:0.08(遺骨灰:融剤)の範囲内がより好ましい。
なお、融剤の含有量が重量比で1:0.03(遺骨灰:融剤)未満の場合には、焼成しても手指の力で容易に破砕したり粉状になるなどしたり、遺骨灰がまとまった形状に焼結できないおそれがある。また、1:0.14(遺骨灰:融剤)より多い場合には、焼成の際に周囲の接触物に固着するおそれがある。そして、1:0.3(遺骨灰:融剤)より多い場合には、1200℃以下の温度において溶融するおそれがある。
【0030】
2.2 成形助剤
本発明可塑性組成物は、その一態様として成形助剤を含むことができる。本発明可塑性組成物は、成形助剤を含むことにより可塑性を増し、その成形性が向上し得る。
かかる成形助剤として、粘土または珪酸塩、有機バインダー等を挙げることができる。これら成形助剤は、一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
【0031】
2.2.1 粘土または珪酸塩
上記成形助剤としての粘土は、含水珪酸礬土(Al2O3・mSiO2・nH2O)を主成分とする鉱物であって、陶磁器の可塑性原料として通常用いられるものであれば、特に制限されない。また、珪酸塩は、二酸化珪素と金属酸化物とからなる塩を主成分とする鉱物であって、陶磁器用原材料として通常用いられるものであれば、特に制限されない。
かかる粘土または珪酸塩として、例えば、カオリン、ニュージーランドカオリン、蛙目粘土、木節粘土、せっ器粘土、ベントナイト、陶石、ZrSiO4を挙げることができる。この中、カオリン、ニュージーランドカオリン、陶石、ZrSiO4が好ましく、カオリン、ZrSiO4がより好ましい。これらの粘土または珪酸塩は、一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
【0032】
本発明可塑性組成物における粘土または珪酸塩の含有量には特に制限はないが、本発明可塑性組成物中の遺骨灰に対する粘土または珪酸塩の重量比を1:0.3(遺骨灰:粘土および珪酸塩)以下とするのが適当である。中でも、1:0.05~1:0.275(遺骨灰:粘土および珪酸塩)の範囲内が好ましく、1:0.1~1:0.25(遺骨灰:粘土および珪酸塩)の範囲内がより好ましい。
【0033】
また、遺骨灰、粘土または珪酸塩、および融剤の三成分間の関係では、その重量比を1:0.01:0.025~1:0.2:0.3(遺骨灰:融剤:粘土および珪酸塩)の範囲内とするのが適当である。中でも、1:0.03:0.05~1:0.15:0.275(遺骨灰:融剤:粘土および珪酸塩)の範囲内が好ましく、1:0.05:0.1~1:0.125:0.25(遺骨灰:融剤:粘土および珪酸塩)の範囲内がより好ましい。
【0034】
当該粘土または珪酸塩は、顔料等の色素を含んでいてもよいし、当該顔料としては、例えば、プラセオジム(Pr)系、バナジウム(V)系、クロム(Cr)系、鉄(Fe)系等の顔料を挙げることができる。
【0035】
2.2.2 有機バインダー
上記有機バインダーは、本発明可塑性組成物に粘性特性を付与して成形性を向上し、1200℃以上の温度において焼失するものであれば、特に制限されない。本発明可塑性組成物は、有機バインダーを含むことにより成形性が向上される。また、成形後の修正についても、例えば、水等の溶媒を含ませた刷毛や筆等の簡易な道具を用いることにより、簡便に行うことができる。
また、当該有機バインダーは、本発明可塑性組成物からなる成形物を焼成して焼結体を得る過程で焼失し、その占有部分が空隙となるため、焼成後に得られる本発明焼結体は、低密度の多孔質焼結体となり得る。
【0036】
かかる有機バインダーとしては、親水性コロイド基剤、金属粉末成形用バインダー等が挙げられる。
親水性コロイド基剤としては、例えば、パン粉、小麦粉、米粉、片栗粉、葛粉、蕨粉、キャッサバ粉(タピオカ粉)、デンプン、カンテン、ペクチン、ヒアルロン酸、アルギン酸またはその塩、グルコサミン、大豆多糖類、ゼラチン、コラーゲン、ホエイ、アルブミン、卵白タンパク質、大豆タンパク質、カゼイン、その他の増粘性多糖類またはゲル性タンパク質や、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールを挙げることができる。
また、金属粉末成形用バインダーとしては、例えば、セルロース系有機バインダー、ポリビニル系有機バインダー、アクリル系有機バインダー、ワックス系有機バインダー、樹脂系有機バインダーを挙げることができる。
これらの中、親水性コロイド基剤が好ましく、パン粉、小麦粉をはじめとする増粘性多糖類またはゲル性タンパク質がより好ましい。上記有機バインダーは、一種であっても、二種以上の併用であってもよい。
【0037】
本発明可塑性組成物における有機バインダーの含有量には特に制限はないが、本発明可塑性組成物中の有機バインダー以外の固形成分に対する有機バインダーの重量比を1:0.4(有機バインダー以外の固形成分:有機バインダー)以下とするのが適当である。中でも、1:0.025~1:0.3(有機バインダー以外の固形成分:有機バインダー)の範囲内が好ましく、1:0.05~1:0.2(有機バインダー以外の固形成分:有機バインダー)の範囲内がより好ましい。
【0038】
2.3 水
本発明可塑性組成物は、水を含んでいることが適当である。かかる水には特に制限はないが、例えば、精製水や蒸留水、鉱泉水、水道水を挙げることができる。ミネラル分を含む水であってもよく、水質は硬水であってもよいし、軟水であってもよい。本発明可塑性組成物は、水を適量含むことにより可塑性を得、常温における成形が可能となる。また、本発明可塑性組成物は、鋳込成形に適した泥漿状の形態であってもよい。
なお、本発明可塑性組成物が有機バインダーを含む態様である場合には、本発明可塑性組成物は、水以外の、当該有機バインダーと親和性のある溶媒を含んでいてもよい。
【0039】
2.4 添加剤
本発明可塑性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で添加剤を含むことができる。用い得る添加剤としては、着色用釉薬原料、石灰質原料、木灰類、長石類、ろう石、硅石(珪石)、アルミナ等を挙げることができる。
【0040】
3 本発明に係る焼結体の製造方法について
本発明に係る焼結体の製造方法(以下、「本発明製造方法」という。)は、(1)遺骨灰と、融剤または融剤および成形助剤とを含む原料を混合することにより、本発明可塑性組成物を得る工程(混合工程)と、(2)得られた本発明可塑性組成物を成形することにより、成形物を得る工程(成形工程)と、(3)得られた成形物を焼成処理することにより、本発明焼結体を得る工程(焼成工程)とを含むことを特徴とする。
本発明製造方法は、さらに、(4)上記(3)の工程で得られた本発明焼結体に下絵付または釉掛を行った上で再び焼成処理を行うことにより、いわゆる本焼あるいは釉焼された状態の本発明焼結体を得る工程(再焼成工程)を含んでいてもよい。
また、本発明製造方法は、さらに、(5)上記(4)の再焼成工程で得られた本発明焼結体に上絵付を行った上で再び焼成処理を行うことにより、いわゆる上絵付焼成された状態の本発明焼結体を得る工程(上絵付工程)を含んでいてもよい。
【0041】
3.1 混合工程
本発明焼結体を製造するに際して、遺骨灰と、融剤または融剤および成形助剤とを含む原料を混合する。ここで、遺骨灰、融剤、および成形助剤は、上記と同義である。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、当該原料には他の成分を含むことができる。
遺骨灰の形状は、粉状であることが適当である。粉化の方法については特に制限されないが、粉砕機や製粉機で行っても良いし、一旦粗く砕いておいてボールミルやポットミルで行っても良い。粉砕は、乾燥状態(乾式)で行ってもよいし、水等を加えて湿式で行ってもよい。粒度は、80メッシュ以上であることが適当である。さらに、遺骨灰と融剤との均一な混合の観点からは、100メッシュ以上であることが好ましく、120メッシュ以上であることがより好ましい。
【0042】
融剤は、本発明可塑性組成物中の遺骨灰と融剤との重量比が1:0.03~1:0.14(遺骨灰:融剤)の範囲内となるような量を配合するのが適当である。中でも、1:0.04~1:0.11(遺骨灰:融剤)の範囲内が好ましく、1:0.06~1:0.08(遺骨灰:融剤)の範囲内がより好ましい。
なお、融剤の配合量が1:0.01(遺骨灰:融剤)未満の場合には、焼成しても手指の力で容易に破砕したり粉状になるなどしたり、遺骨灰がまとまった形状に焼結できないおそれがある。また、1:0.14(遺骨灰:融剤)より多い場合には、焼成の際に周囲の接触物に固着するおそれがある。そして、1:0.3(遺骨灰:融剤)より多い場合には、後の焼成工程において溶融するおそれがある。
【0043】
成形助剤として粘土または珪酸塩を用いる場合、粘土または珪酸塩は、本発明可塑性組成物中の遺骨灰に対する粘土および珪酸塩の重量比が1:0.3(遺骨灰:粘土および珪酸塩)以下となるような量を配合するのが適当である。中でも、1:0.05~1:0.275(遺骨灰:粘土および珪酸塩)の範囲内が好ましく、1:0.1~1:0.25(遺骨灰:粘土および珪酸塩)の範囲内がより好ましい。
【0044】
また、遺骨灰、融剤、および粘土または珪酸塩の三成分間の関係では、その重量比が1:0.01:0.025~1:0.2:0.3(遺骨灰:融剤:粘土および珪酸塩)の範囲内となるような量を配合するのが適当である。中でも、1:0.03:0.05~1:0.15:0.275(遺骨灰:融剤:粘土および珪酸塩)の範囲内が好ましく、1:0.05:0.1~1:0.125:0.25(遺骨灰:融剤:粘土および珪酸塩)の範囲内がより好ましい。
【0045】
当該粘土または珪酸塩は、顔料等の色素を含んでいてもよいし、当該顔料としては、例えば、プラセオジム(Pr)系、バナジウム(V)系、クロム(Cr)系、鉄(Fe)系等の顔料を挙げることができる。
【0046】
成形助剤として有機バインダーを用いる場合、有機バインダーは、本発明可塑性組成物中の有機バインダー以外の固形成分に対する有機バインダーの重量比が1:0.4(有機バインダー以外の固形成分:有機バインダー)以下となるような量を配合するのが適当である。中でも、1:0.025~1:0.3(有機バインダー以外の固形成分:有機バインダー)の範囲内が好ましく、1:0.05~1:0.2(有機バインダー以外の固形成分:有機バインダー)の範囲内がより好ましい。
【0047】
なお、成形助剤として粘土または珪酸塩と有機バインダーとを併用してもよい。
【0048】
遺骨灰とその他の成分との混合の方法に特段の制限はなく、通常の陶料の調合と同様にすればよい。例えば、各成分を乾燥状態で混合する方法、各成分を混合し水を加えて攪拌する方法を挙げることができる。当該混合または攪拌の際に用いる容器に制限はないが、例えば、乳鉢、ポットミルを挙げることができる。
なお、各成分は常温では反応しないため、先に遺骨灰以外の成分のみを混合してその後に遺骨灰を混合しても、同時に各成分と遺骨灰を混合しても、実質的には同じことであり、これらの混合順序は問わない。
【0049】
本工程では、上記各成分に水を加えた混合物とすることが適当である。混合する水には特に制限はないが、例えば、精製水や蒸留水、鉱泉水、水道水を用いることができる。ミネラル分を含む水であってもよく、水質は硬水であってもよいし、軟水であってもよい。水量としては、上記混合物が可塑性組成物として成形可能となる程度に、適量を加えればよい。また、後の成形工程において鋳込成形が可能な程度の水量を加えてもよい。
なお、成形助剤として有機バインダーを加えている場合には、当該有機バインダーと親和性のある溶媒を加えた混合物としてもよい。
【0050】
3.2 成形工程
本発明焼結体は、上記混合工程にて得られた可塑性組成物を成形することにより成形物とし、その後焼成工程を経ることにより製造することができる。
成形方法には特に制限はなく、手捻り成形、轆轤成形、タタラ成形、型打ち成形、押型成形、鋳込成形等、各種の成形法を適宜用いることができる。成形の際には、コテ、カキベラ、ツゲベラ、剣先等、成形に適した道具を適宜用いることができる。また、3Dプリンターを用いて成形してもよい。
【0051】
また、特に、成形対象の可塑性組成物が成形助剤として有機バインダーを含んでいる場合には、乾燥後の成形物に対し、例えば、水もしくは当該有機バインダーと親和性のある他の溶媒を含んだ刷毛または筆等の簡易な道具を用いることにより、容易に形状修正を行うことができる。成形性、形状修正の観点からは、かかる有機バインダーとして既述の親水性コロイド基剤を用いるのが好ましく、中でも、パン粉、小麦粉をはじめとする増粘性多糖類またはゲル性タンパク質を用いるのがより好ましい。
【0052】
3.3 焼成工程
上記成形工程を経て得られた成形物は、窯詰して焼成処理される。例えば、当該成形物が水を含んでいる場合には、乾燥させるなどして焼成に適した状態にした上で、窯詰する。窯詰の際には、成形物の下に付着防止剤を敷いておくことが好ましい。かかる付着防止剤としては、例えば、アルミナ粉末、石灰、貝殻、石(珪砂等)を用いることができる。当該付着防止剤の使用は、一種のみであってもよいし、例えば、アルミナと珪砂とを併用するなど、二種以上の併用であってもよい。
焼成に用い得る窯としては、例えば、電気窯、灯油窯、ガス窯、薪窯(登り窯、トンネル窯等)が挙げられる。温度調整の観点からは、電気窯が好ましい。
焼成雰囲気に関しては特に制限はなく、技術常識に則して適宜選択される。酸化焼成(OF)、還元焼成(RF)、炭化焼成のいずれに依ってもよい。
【0053】
焼成温度については、例えば、1100℃~1400℃の範囲内が適当である。中でも、1200℃~1300℃が好ましく、1225℃~1265℃の範囲内であることがより好ましい。また、ゼーゲルコーン(SK)で表記した場合、焼成条件はSK5a~SK13の範囲内であることが好ましい。その中でも、SK6a~SK9の範囲内であることがより好ましく、SK7~SK8の範囲内であることが最も好ましい。
【0054】
焼成時間についても特に制限はないが、概ね6時間~24時間の範囲で焼成させることができ、標準的には10時間~12時間程度で焼成を行えばよい。
【0055】
3.4 再焼成工程
本発明焼結体には、さらに下絵付、釉掛、またはその両方を施すことができる。下絵付や釉掛を施した後、必要に応じて乾燥させ、焼成処理を施すことができる。
この際の焼成方法に特に制限はなく、本焼あるいは釉焼において通常行われている公知の焼成方法に依ればよい。用い得る窯、焼成雰囲気、焼成温度等にも特に制限はなく、好ましい条件等は上記焼成工程の場合と同様である。
【0056】
3.5 上絵付工程
本発明焼結体には、さらに上絵付を施すことができる。上絵付は本焼後の焼結体表面に彩画着色して行われる。焼付けは700~850℃程度の低温で行うため、高温度での色釉には出せない種々様々な色を出すことができる。また、焼成前後の本発明焼結体表面に、さらにプリンター等を用いた絵付やレーザーマーカー等を用いた刻印等を施すこともできる。
【0057】
下絵付もしくは上絵付の際、または上絵焼後における彩画または刻印等は、例えば、故人が生前好んだもの、趣味としたもの、ライフワークとしたものや、亡くなった愛玩動物の容姿等、故人等を象徴するものをそのモチーフとすることができる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0059】
使用した原料等は、次のとおりである。
・朝鮮カオリン
・マグネサイト:MgCO3
・ジルコン:ZrSiO4
・小麦粉:日清製粉社製薄力粉
・乾水酸化アルミナ粉末
また、陶芸用の骨灰を遺骨灰の代用として用いた。
【0060】
[実施例1および2]
本発明可塑性組成物および本発明焼結体を、以下の手順で製造した。
まず、遺骨灰2g、マグネサイト0.14g、および小麦粉0.2gを乳鉢内で混合した。得られた混合物に適量の水を加え、可塑性組成物を得た(本発明可塑性組成物、実施例1)。得られた可塑性組成物を成形し、桜花型形状の成形物を得た。
【0061】
得られた成形物を常温にて12時間乾燥させた後、電気窯(八重洲技研社製陶磁器用電気炉 YH-13)に窯詰した。窯詰の際には、成形物の下に適量のアルミナ粉末を敷いた。焼成処理は、設定温度1230℃にて酸化雰囲気で12時間行った。焼成後窯内にて12時間以上かけて放冷し、桜花型形状の焼結体(本発明焼結体、実施例2)を得た。得られた本発明焼結体(実施例2)を
図1に示す。
【0062】
得られた本発明焼結体は、1340℃にて12時間再加熱してもその形状を維持した。再加熱後の本発明焼結体を
図2に示す。
【0063】
図1に示す通り、本発明焼結体は、93.5重量%もの遺骨灰を含みながら、成形性良く焼成されていることが分かる。手指の力で容易に破砕されることのない堅固な焼結体である。また、
図1および2より、本発明焼結体は、再加熱を経てもその形状を維持していることが分かる。
【0064】
[実施例3および4]
本発明可塑性組成物および本発明焼結体を、以下の手順で製造した。
まず、遺骨灰2g、マグネサイト0.2g、カオリン0.26g、および小麦粉0.25gを乳鉢内で混合した。得られた混合物に適量の水を加え、可塑性組成物を得た(本発明可塑性組成物、実施例3)。得られた可塑性組成物を成形し、桜花型形状の成形物を得た。
【0065】
得られた成形物を常温にて12時間乾燥させた後、電気窯(八重洲技研社製陶磁器用電気炉 YH-13)に窯詰し、設定温度1230℃にて12時間焼成処理を施した。焼成後窯内にて12時間以上かけて放冷し、桜花型形状の焼結体(本発明焼結体、実施例4)を得た。得られた本発明焼結体(実施例4)を
図3に示す。
【0066】
また、得られた本発明焼結体を1340℃にて12時間再加熱した。再加熱後の本発明焼結体を
図4に示す。
【0067】
図3に示す通り、本発明焼結体は、81.3重量%もの遺骨灰を含みながら、成形性良く焼成されていることが分かる。手指の力で容易に破砕されることのない堅固な焼結体である。また、
図3および4より、本発明焼結体は、再加熱を経てもその形状を維持していることが分かる。
【0068】
[実施例5および6]
本発明可塑性組成物および本発明焼結体を、以下の手順で製造した。
まず、遺骨灰2g、マグネサイト0.16g、ジルコン0.05g、および小麦粉0.3gを乳鉢内で混合した。得られた混合物に適量の水を加え、可塑性組成物を得た(本発明可塑性組成物、実施例5)。得られた可塑性組成物を成形し、桜花型形状の成形物を得た。
【0069】
得られた成形物を常温にて12時間乾燥させた後、電気窯(八重洲技研社製陶磁器用電気炉 YH-13)に窯詰し、設定温度1230℃にて12時間焼成処理を施した。焼成後窯内にて12時間以上かけて放冷し、桜花型形状の焼結体(本発明焼結体、実施例6)を得た。得られた本発明焼結体(実施例6)を
図5に示す。
【0070】
図5に示す通り、本発明焼結体(実施例6)は、90.5重量%もの遺骨灰を含みながら、成形性良く焼成されていることが分かる。手指の力で容易に破砕されることのない堅固な焼結体である。また、本発明焼結体(実施例6)は、実施例2および4と同様、再加熱を経てもその形状を維持した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明焼結体は、遺骨灰を多く含みながら任意の形状に焼成させることができ、その成形は、焼成前に常温にて行うことができる。また、本発明焼結体は、一度焼成すれば再加熱してもその形状が崩れない。したがって、本発明は、例えばエンディング産業において有用である。