(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】多自由度試料ホルダ
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
H01J37/20 A
(21)【出願番号】P 2021502455
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2019106864
(87)【国際公開番号】W WO2020108038
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】201811450211.X
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811450175.7
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811450173.8
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811450184.6
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】王 宏涛
(72)【発明者】
【氏名】張 奕志
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-514641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と回転軸とを含み、外殻と回転軸との間に骨格が設けられ、骨格と、外殻と、回転軸とは同軸であり、
外殻は内チャンバを有し、回転軸は外殻の内チャンバに位置し、内チャンバには自己位置決め機構が設けられ、
自己位置決め機構はブラケットブロックと押板とを含み、ブラケットブロックは対称な斜面を有し、ブラケットブロックの斜面は回転軸に接触し、
押板は平板を有し、平板の両側には斜面が対称に設けられ、
回転軸はブラケットブロックと押板との間に位置し、
平板の回転軸に接触する面には耐摩耗層が設けられ、
押板は一対の取付翼を有し、取付翼には固定孔が設けられ、取付翼は弾性取付アセンブリを介して骨格に取り付けられることを特徴とする、多自由度試料ホルダ。
【請求項2】
弾性取付アセンブリはボルトとバネから構成され、バネはボルトのロッド部位に外嵌され、バネは取付翼とボルトの頭部との間に位置することを特徴とする、請求項1に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項3】
骨格は、外殻の内壁に隙間ばめされる整合部と、回転軸を収容する収容溝と、部品を搭載する取付部とを有し、
収容溝は対称な斜面を有し、取付部に接続回路基板が固定され、接続回路基板に接続導線を有することを特徴とする、請求項1に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項4】
前記試料ホルダは回転軸駆動アセンブリを有し、ブラケットブロックは骨格に設けられ、ブラケットブロックは収容溝に固定され、収容溝は骨格の軸方向に沿って複数も受けられ、
骨格には回転軸駆動アセンブリを収容する取付チャンバが設けられ、収容溝と取付チャンバは間隔をあけて分布することを特徴とする、請求項1に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項5】
回転軸駆動アセンブリは駆動ユニットを含み、各駆動ユニットはそれぞれ電流が流れるための接続回路基板を有し、接続回路基板はPCBプリント基板であり、接続回路基板には回転軸駆動アセンブリに電気的接続される回線を有し、
各回転軸駆動アセンブリは1つの中継回路基板に対応し、中継回路基板はPCBプリント基板であり、中継回路基板に接続回線を有し、
接続回路基板の電流は中継回路基板に集まることを特徴とする、請求項4に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項6】
接続回路基板と中継回路基板とは導線を介して電気的接続され、及び/又は
中継回路基板は骨格に固定され、回転軸は中継回路基板の下方に位置することを特徴とする、請求項5に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項7】
骨格は円柱形であり、骨格の片側に溝が切り欠かれ、溝が骨格の軸方向に亘り、収容溝及び取付チャンバはいずれも溝上に位置し、
骨格の円弧面を底部、溝の開口を頂部とする場合、接続回路基板が置かれる位置には頂部から下へ骨格壁の一部を切り欠けてなる欠け口があることを特徴とする、請求項3に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項8】
各接続回路基板の幅は骨格の肉厚以下であり、接続回路基板は螺ボルトにより切欠口の頂面に固定され、及び/又は
中継回路基板が取り付けられる骨格壁の平面は、接続回路基板が取り付けられる骨格壁の平面よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項9】
骨格にはネジ孔が設けられ、ネジ孔は上から下へ骨格を貫通することを特徴とする、請求項1に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項10】
回転軸の末端には磁石が設けられ、骨格には引出回路基板が設けられ、骨格には切欠口が開設され、引出回路基板は折り曲げ部を含み、折り曲げ部は切欠口内に位置し、磁界センサは折り曲げ部に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項11】
引出回路基板は平面部を含み、平面部と折り曲げ部は骨格を被覆し、平面部と折り曲げ部とは導線を介して接続され、磁界センサと折り曲げ部とははんだ接続されることを特徴とする、請求項10に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項12】
引出回路基板はPCBプリント基板であり、
平面部は折り曲げ部に垂直であり、磁界センサは磁石に対向することを特徴とする、請求項11に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項13】
骨格には光ファイバー溝が開設され、
光ファイバー溝は骨格の側面に開設され、軸方向に沿って骨格を貫通することを特徴とする、請求項1に記載の多自由度試料ホルダ。
【請求項14】
試料ホルダのヘッド部に先端回路基板を有し、先端回路基板は光ファイバーをガイドするガイド面を有し、先端回路基板は光ファイバー溝に繋がり、ガイド面は光ファイバー溝に揃っていることを特徴とする、請求項13に記載の多自由度試料ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡下で使用される試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡(TEM)により、普通の光学顕微鏡ではっきりと見えない0.2μm未満な微細構造が見えるようになる。これらの構造は、サブマイクロストラクチャー又はウルトラストラクチャーと呼ばれている。1932年、Ruskaにより電子線を光源とする透過型電子顕微鏡が発明された。現在、TEMの分解能は0.2nmに達することができる。
【0003】
その場観察技術は、透過型電子顕微学の研究において長い歴史を持っている。試料に様々な物理的作用を加えることにより、透過型電子顕微鏡により材料の微細構造及び化学状態の変化を観察することで、材料又はデバイスの実際使用中のパフォーマンスを直感的に研究することができ、材料性能の研究に対して重要な実用的意義を持っている。透過型電子顕微鏡のその場観察技術では、物理的作用を試料に正確に加えるとともに、一連の過酷な条件を満たさなければならないので、非常に困難であった。例えば、要電子顕微鏡システムの超高真空度を維持すること、試料台の非常に高い安定性を保証すること、結像光路を干渉してはいけないこと、透過型電子顕微鏡の狭い試料室などに適用するために、構造全体をコンパクトに設計する必要があることなどの問題がある。そのため、電子顕微鏡のその場観察技術は、主にその場試料ホルダの研究及び製造で困難である。
【0004】
スウェーデンのK.Svenssonにより2003年に発表された文章「Compact design of a transmission electron microscope-scanning tunneling microscope holder with three-dimensional coarse motion」には、三次元圧電プローブが開示された。この三次元圧電プローブは、透過型電子顕微鏡の試料ホルダの一部であり、1本の圧電セラミック管及び1つの小球を含み、小球は圧電セラミック管の末端に固定され、小球にはフレキシブルなワイヤークローで小球を挟持する試料挟持器が取り付けられ、圧電セラミック管は小球の「低速移動、快速復帰」の小振幅(圧電セラミック管の軸方向において2.5μm以下、他の2つの方向で30μm以下)の循環運動を制御する。フレキシブルなワイヤークローは、摩擦力により小球をしっかりとつかめ、圧電セラミック管は循環運動し、試料挟持器はフレキシブルなワイヤークローと小球との間の摩擦力により段階的に動き、これによってストロークが長く、ステップ長さが比較的大きい変位制御(粗調整)が達成される。圧電セラミック管それ自体のストロークが短く、連続的に調整可能な変位制御(微調整)と組み合わせて、狭いスペースにおいて累積して3つの自由度(軸方向での1つの自由度の平行移動及び小球を中心とする回転の2つの自由度)の長いストローク(約3mm)の正確な変位制御を達成できる。このような三次元圧電プローブは、既に米国FEl社のNanoEx 3D STM/EPシステム及びNanoEx 3D lndentorシステムに適用され、透過型電子顕微鏡でのSTMその場観察、その場インデント及び電気的探査が達成された。
【0005】
このような三次元プローブには、以下の欠点が存在する。
1、フレキシブルなワイヤークローが変形しやすく、小球との間の摩擦力を保持するために、フレキシブルなワイヤークローの形状をよく調整する必要がある。しかし、フレキシブルなワイヤークローは複数本あるので、すべてのフレキシブルなワイヤークローの一致性を保証できず、使用時間・使用回数の増加に伴い、三次元プローブの信頼性及び精度は低くなる。
【0006】
2、フレキシブルなワイヤークローの長さにより、試料挟持器と小球との間に隙間があり、小球が循環運動する際に、試料挟持器はワイヤークローにつれて小球に近づいたり離れたりすることにより、試料の軸方向での変位が達成される。しかし、試料挟持器は、フレキシブルなワイヤークローを介して小球に掛かり、試料挟持器及び試料は重力の作用により下に落ちるので、位置精度が高くない。また、透過型電子顕微鏡の観察視野の範囲はナノメーターとマイクロメーターであり、重力作用による試料の位置偏差により、試料上の観察すべき領域は電子顕微鏡の観察視野範囲から外れ、観察できなくなる可能性が高い。さらに、位置偏差の存在により、試料の観察すべき領域を観察に適切な位置及び角度に調整することが困難である。
【0007】
3、プローブ挟持装置は、圧電セラミック管の軸方向に沿って前後に運動する際に、フレキシブルなワイヤークローの形状と前記摩擦力との関係は複雑であり、その形状を調整することで摩擦力が常に適切であることを保証できない。さらに、プローブ挟持装置は重力の影響により、粗調整時に連動が発生しやすく、プローブを正確に制御できない。また、フレキシブルなワイヤークローの形状が適切に調整されないと、小球をつかめることができず、プローブ挟持装置が設備の内部に落ちて設備を損傷させる場合がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、多自由度試料ホルダが提供される。試料ホルダにはナノポジショナーが設けられ、ナノポジショナーは1本の圧電セラミック管及び1つのジョイントボールを含み、ジョイントボールは圧電セラミック管の末端に固定され、ジョイントボールには挟持機構が取り付けされ、挟持機構の先端に試料挟持ノズルが設けられる。圧電セラミック管は、ジョイントボールの「低速移動、快速復帰」の小振幅の循環運動を制御し、挟持機構は摩擦力によりジョイントボールをしっかりとつかめ、圧電セラミック管は循環運動し、試料挟持ノズルは、挟持機構とジョイントボールとの間の摩擦力により段階的に動き、これによってストロークが長く、ステップ長さが比較的大きい変位制御が達成される。圧電セラミック管それ自体のストロークが短く、連続的に調整可能な変位制御(微調整)と組み合わせる。
【0009】
本発明の第1態様において、小球の球面の周りに正確に回転し、試料ホルダの軸方向における自転駆動能力を有し、繰り返し使用されても性能が安定する多自由度試料ホルダが提供される。
【0010】
多自由度試料ホルダにはナノポジショナーが設けられ、ナノポジショナーは駆動部、ジョイントボール及び締付具アセンブリを含み、ジョイントボールは駆動部に固定され、締付アセンブリは少なくとも2つの締付具及び弾性連結アセンブリを含み、弾性連結アセンブリは隣接する締付具を接続し、締付具はジョイントボールを抱き込み、締付具とジョイントボールとの間に予張力がある。例えば、圧電セラミック管は駆動部として使用される。駆動部、ジョイントボール及び締付アセンブリは挟持機構を構成する。
【0011】
[締付具]
締付具はジョイントボールを抱き込むものである。圧電セラミック管(駆動部)が動作していないときに、締付具は試料及び試料挟持器を安定的に支持する作用を奏し、圧電セラミック管(駆動部)が動作するときに、締付具とジョイントボールとの摩擦力により締付具はジョイントボールに対して累積的に回転又は揺動することができる。
【0012】
好ましい実施形態において、締付具は、それぞれ凹部及び接続部を有し、弾性連結アセンブリは、隣接する締付具の接続部の間に設けられ、すべての締付具の凹部は共同でジョイントボールにフィットする凹状空間を構成する。凹状空間は、ジョイントボールと線接触、面接触又は点接触する。弾性連結アセンブリにより締付具とジョイントボールとの間に予張力を有する。ジョイントボールが静止するか、又は駆動部の駆動によりジョイントボールがゆっくりと移動する場合、ジョイントボールと締付具との間の静止摩擦力により締付具はジョイントボールに対して静止する。駆動部の駆動によりジョイントボールが迅速に復帰する場合、ジョイントボールと締付具との間にすべり摩擦力が発生するため、ジョイントボールが復帰し、締付具がジョイントボールにつれて復帰せず静止するか、或いはジョイントボールの復帰につれて移動するが、移動距離がジョイントボールの復帰距離よりも小さい。
【0013】
好ましくは、凹状空間は、半球状、V字状又は円錐状である。
【0014】
好ましくは、締付具は一体型の板体であり、凹部は板体の中央に位置する。
【0015】
好ましくは、第1締付具及び第2締付具はそれぞれジョイントボールの両側に位置する。或いは、第1締付具は上にあり、第2締付具は下にある。第2締付具の凹状空間は貫通孔である。貫通孔の内壁は半球状、V字状又は円錐状などである。好ましくは、第1締付具に試料治具が設けられる。
【0016】
好ましくは、締付具はジョイントボールの外側に位置する。試料ホルダが直立する場合、ナノポジショナーは上向きである。両側では、試料ホルダが直立する場合、左右前後は外側となる。好ましくは、締付具上には試料挟持部が設けられる。すべての締付具が装着されると、試料挟持部は組み合わせて試料治具を形成する。試料治具は、試料の取り付けに用いられる。取り付ける際に、締付具でジョイントボールの両側からジョイントボールを抱き込み、弾性連結アセンブリは締付具とジョイントボールの間の予張力を提供する。
【0017】
好ましい実施形態において、締付具は、第1締付具及び第2締付具を含み、第1締付具の凹部及び第2締付具の凹部の周りにそれぞれ複数の取付位置が均一に分布し、各取付位置は、1つの弾性連結アセンブリに対応し、第1締付具の取付位置は、第2締付具の取付位置に対向する。このようにして、弾性連結アセンブリの一端は、第1締付具の取付位置に取り付けられ、他端は、第2締付具の取付位置に取り付けられる。
【0018】
好ましい実施形態において、第1締付具の凹状空間の表面に耐摩耗層を有する。好ましくは、第2締付具の凹状空間の表面に耐摩耗層を有する。
【0019】
[弾性連結アセンブリ]
弾性連結アセンブリは、締付具とジョイントボールの間の圧力を提供する。
【0020】
好ましい実施形態において、、弾性連結アセンブリは、バネ又は弾性材料で作製される弾性柱(例えば、シリカゲル柱、ゴム柱等)であり、弾性連結アセンブリの一端は、第1締付具に固定され、他端は、第2締付具に固定される。2つの締付具がジョイントボールを抱き込んでいる場合、弾性連結アセンブリは変形状態であり、弾性連結アセンブリの復元力は2つの締付具とジョイントボールとの間に予張力を提供する。
【0021】
或いは、弾性連結アセンブリは、ボルト及びバネから構成される。バネは、ボルトに外嵌され、ボルトと第1締付具との間に位置する。第2締付具の取付位置は、ボルトに噛み合うボルト穴である。ボルトが第2締付具の取付位置に噛み合うと、バネは圧縮されて第1締付具を第2締付具に押し付ける。これによって、バネは、第1締付具、第2締付具とジョイントボールとの間の予張力を提供する。
【0022】
好ましくは、第1締付具の取付位置は貫通孔であり、貫通孔とボルトが隙間ばめされる。貫通孔とボルトとの間に摩擦がないので、バネが第1締付具を押し付けることに有利である。
【0023】
好ましくは、ボルトは第2締付具の取り付け孔から伸び出し、又はボルトと第2締付具との間の固定部がある。例えば、第2締付具を装着した後、ボルトと第2締付具とを溶接固定又は接着固定し、或いはボルト上のネジ山を破壊する。これは、ジョイントボールの循環運動により第1締付具及び第2締付具が変位する際に、第1締付具及び第2締付具の動きによりボルトと第2締付具の間の振動を引き起こし、ボルトが緩み、さらに第2締付具から脱離するからである。ボルトが緩むと、位置に対する正確な制御が影響される。ボルトが第2締付具から脱離すると、第1締付具と試料が落ちて電子顕微鏡を損傷させる。
【0024】
ボルトとバネを採用し、ボルトの締め付けの程度により締付具とジョイントボールとの間の予張力を調整することにより、弾性それ自体に対する設計、製造上の要求が低下する。
【0025】
[駆動部]
本発明の第2態様において、試料がジョイントボールの球面の周りに多角度で揺動又は回転するように試料を駆動できる駆動部構造を提供することを目的とする。駆動部は、圧電セラミック管であり、圧電セラミック管上に導電領域を設けることで締付具、試料挟持器及びジョイントボールに対する試料の揺動方向を制御する。
【0026】
好ましい実施形態において、駆動部は圧電セラミック管であり、圧電セラミック管は中空の管体である。圧電セラミック管の一端はジョイントボールに固定され、他端は試料ホルダに取り付けられる。圧電セラミック管は内面と外面を有し、圧電セラミック管の1つの表面には複数の導電領域群が設けられる。各導電領域群は、対称な2つの導電領域を含み、各導電領域はそれぞれ独立し、導電線を有する。圧電セラミック管のもう1つの表面は、全領域導電部である。全領域導電部とは、導電塗層がもう1つの表面を完全に覆うことをいう。
【0027】
好ましくは、導電領域群は、圧電セラミック管の外面に設けられ、全領域導電部は、圧電セラミック管の内面に設けられる。或いは、導電領域群は、圧電セラミック管の内面に設けられ、全領域導電部は、圧電セラミック管の外面に設けられる。導電領域群が圧電セラミック管の外(内)面に沿って均一に分布する場合、全領域導電部は内(外)面を覆う。
【0028】
好ましくは、隣接する導電領域の間に絶縁塗層がある。
【0029】
好ましくは、各導電領域群中の2つの導電領域は、電圧の方向が逆である。
【0030】
好ましい実施形態において、ジョイントボールは、ボール台座を介して圧電セラミック管に接続される。ボール台座は、ジョイントボールに固定された接続ロッド及び圧電セラミック管に固定された接続台を含む。接続ロッドの直径は、ジョイントボールの直径よりも小さい。
【0031】
好ましい実施形態において、接続ロッドと接続台は、着脱可能な締付接続、例えば、ネジ山接続、キー接続などである。取り付けの際に、まず、接続ロッドをジョイントボールと接触する第2締付具の凹状空間の貫通孔を通過させ、さらに、接続ロッドと接続台とを固定する。これによって、第2締付具の着脱と交換が便利である。
【0032】
[静電気放出]
本発明の第3態様において、透過型電子顕微鏡における電子線結像により蓄積した静電気を外部へ放出できる試料ホルダを提供する。
【0033】
透過型電子顕微鏡は、電子線で結像するので、電子線が試料に照射されると、試料の観察すべき領域に静電気が蓄積して静電界が発生し、静電界は、電子線を偏向させて電子線結像に影響を与える。そこで、試料の観察すべき領域上の静電気を外部へ放出する必要がある。
【0034】
好ましい実施形態において、試料が導体又は半導体である場合、ナノアクチュエータの先端に試料を装着する套管が設けられる。套管上に試料を締め付ける仮締付ボルトが設けられる。ナノアクチュエータの尾端に静電気放出部材が設けられ、仮締付ボルト及び静電気放出部材は導電性を有する。ナノアクチュエータ上に仮締付ボルトと静電気放出部材とを連通する電気回路が設けられ、静電気放出部材は導線に接続され、導線は接地し、又は外部設備により提供される定電圧電源に接続され、又は試料ホルダの本体に接続されて透過型電子顕微鏡に接続される。このようにして、試料の観察すべき領域上の静電気は、試料を介して仮締付ボルトに伝達され、さらにナノアクチュエータ上の電気回路を介して静電気放出部材に到達し、静電気放出部材上の電流が導線を介して外部へ導出される。
【0035】
好ましくは、電気回路は、仮締付ボルトと静電気放出部材を接続する導線であってもよく、導線がナノアクチュエータの動作を干渉しないように導線の長さを余裕を持って設置すればよい。又は、ナノアクチュエータは前記構造を採用し、套管は第1締付具に設けられ、静電気放出部材は第2締付具に固定して取り付けられる。第1締付具、套管及び第2締付具はいずれも導体である。第1締付具と第2締付具との間に少なくとも1つ弾性連結アセンブリがある。弾性連結アセンブリは、ボルト及びバネを含み、バネはボルトに外嵌され、ボルト及びバネはいずれも導体である。第1締付具のボルトに対応する貫通孔の表面に導電性が保持される。このようにして、静電気の流れ方向は、試料→仮締付ボルト→第1締付具→バネ→ボルト→第2締付具→静電気放出部材である。
【0036】
好ましくは、静電気放出部材は導電性ボルトであり、第2締付具には導電性ボルトにフィットするボルト穴があり、導電性ボルトの頭部は、第1締付具から離れる方向に向かい、導線は、導電性ボルトの頭部と第2締付具との間に位置する。これは、このようにして導電性ボルトの取り付けが便利で、導線を導電性ボルトに固定できるからである。或いは、導線は導電性ボルトに溶接され、これにより導線の接続がより強固になる。
【0037】
好ましくは、導電性ボルトのロッド部位は、第2締付具内に位置する。つまり、導電性ボルトは、頭部以外の他の部分が第2締付具内に位置し、その尾部が第2締付具から露出することもなく、第1締付具内に入ることもない。このようにして、第1締付具、ジョイントボール及び第2締付具の間の相対的な動きによる導電性ボルトの安定性に対する影響が回避される。
【0038】
好ましくは、導電性ボルトの頭部が第2締付具から露出することにより、導線を導電性ボルトと第2締付具の表面との間に固定できるので、導線を第2締付具のボルト穴内に挿入する必要がなく、断裂しにくくなる。
【0039】
好ましくは、導電性ボルトの尾部は、第2締付具にスポット溶接により固定される。スポット溶接により導電性ボルトを第2締付具内に固定することにより、電流伝送の安定性が保持され、導電性ボルトが第2締付具から脱離して落ちることが回避される。透過型電子顕微鏡は、コストが非常に高く、メンテンスが困難であるので、部品又は試料などが透過型電子顕微鏡の試料チャンバ内で落ちると損失が大きく、試料チャンバ内のスペースが限られているので、落ちた部品を取り出すのが困難である。従って、試料ホルダの各部品の接続信頼性は非常に重要である。
【0040】
[試料挟持ノズル]
本発明の第4態様において、様々なサイズの試料を強固に装着でき、試料を透過型電子顕微鏡の観察視野内に常に保持できる試料ホルダを提供することを目的とする。
【0041】
試料は試料挟持ノズルを介して試料ホルダ上に装着される必要がある。例えば、試料はΦ0.3mm、長さ10mmの棒状であり、試料の観察すべき領域は試料の一端の厚さ100nm以下の領域、例えば、針先又は付着されたナノ粒子などである。各資料には1つ又は複数の観察すべき領域があってもよい。試料観察実験の前に、軸を中心に試料を回転することで試料の観察すべき領域を透過型電子顕微鏡の観察視野内に常に保持し、試料の観察すべき領域をなるべく回転軸に接近させる必要がある。通常、試料ホルダの先端に套管を設け、仮締付ボルトを一側から試料を套管壁に締め付けることにより試料を装着している。しかし、試料をスムーズで損失なしで套管内に入れるために、套管の内径を試料よりも長くする必要がある。そうすると、試料の観察すべき領域は必ず試料ホルダの中心軸を外れる。透過型電子顕微鏡の観察スケールは、通常ミクロンやナノスケールであるので、試料の観察すべき領域を観察する際に、圧電摺擦機構により試料を回転させた後、試料の観察すべき領域が透過型電子顕微鏡の観察視野を出る可能性が高い。様々なサイズの試料の観察を可能にするために、試料を装着するための試料挟持ノズルを設け、試料と試料挟持ノズルを試料アセンブリとして試料ボーダの先端に取り付ける。
【0042】
好ましい実施形態において、試料挟持ノズルは、締付部と接続部を含み、試料が締付部に装着される。試料を装着する際に、試料の一部を銅管に挿入し、銅管の内面と試料が貼り合って締付部となるアーチが形成されるようにツール(例えば、ペンチなど)で挿入された銅管の一端を締め付けることで、試料をアーチに制限し、試料挟持ノズルへの試料の装着が完成する。試料挟持ノズルの接続部と套管は隙間ばめされる。例えば、套管が円形である場合、接続部は円柱形であり、接続部と套管が隙間ばめすることができればよい。このようにして、仮締付ボルトが試料挟持ノズルを直接締め付けるので、いかなるサイズの試料でも試料挟持ノズルに装着することができ、さらに試料アセンブリを試料ホルダに取り付けることができる。これによって、試料ホルダは、試料汎用性に優れている。仮締付ボルトは、試料挟持ノズルを締め付ければよく、試料に接触しないので、試料を損傷させることがない。また、試料挟持ノズルと試料ホルダとの間の取付隙間をなるべく小さく設置してもよく、これにより、試料を試料ホルダの軸になるべく接近させることができる。
【0043】
好ましくは、締付部の中線位置に試料装着孔があり、試料が試料装着孔に装着される。これにより、試料がバランスよく締め付けられる。
【0044】
好ましくは、試料装着孔の両側には、試料装着孔に連通する2つの緩衝隙間が対称に開設される。試料装着孔のサイズが試料サイズよりも小さい場合においても、緩衝隙間により試料装着孔のサイズが増大するスペースが確保されるため、試料が試料装着孔にスムーズに装着され得る。
【0045】
好ましくは、締付部は、頂部が扁形であるように底部から徐々に収縮する。頂部が扁形であることで、試料挟持ノズルが占めるスペースが小さくなり、試料の操作が便利である。締付部は中空状である。締付部を中空にすることで、試料を収容する空間の奥行きが長くなる。
【0046】
好ましくは、締付部と接続部は固定接続されるか又は一体成型され、締付部は上にあり、接続部は下にある。固定接続の方式は溶接であってもよい。一体成型の方式により、締付部と接続部とのスムーズな接続を保証できる。
【0047】
好ましくは、接続部は中実柱であってもよく、中空であってもよい。中実柱は、押されて変形することがなく、仮締付ボルトが中実柱に抵当することで試料挟持ノズルへの試料の装着信頼性が確保される。接続部が中空である場合、試料を装着する空間の奥行きがさらに長くなり、試料挟持ノズルの製造コストも削減される。
【0048】
好ましくは、接続部に凹みがある。仮締付ボルトは、対応して接続部の凹みに挿入され、接続部を締め付けるとともに、試料の回転変位を阻止することができる。
【0049】
好ましくは、試料挟持ノズルは導体である。これにより、試料の観察すべき領域に蓄積した静電気を外部へ放出することを促進できる。
【0050】
好ましくは、試料挟持ノズルは薄肉銅管であり得る。薄肉銅管を使用することにより、コストが低く、様々なサイズの試料が適用され得る。
【0051】
試料ホルダが挟持ノズルを有する場合、静電気の流れ方向は、試料→挟持ノズル→仮締付ボルト→第1締付具→バネ→ボルト→第2締付具→静電気放出部材である。
【0052】
[試料を回転軸の軸線に位置合わせる調整方法]
本発明の第5態様において、試料の観察すべき領域を透過型電子顕微鏡の観察視野内に常に保持できる試料の調整方法を提供する。
【0053】
回転軸が自転する際に試料の観察すべき領域を常に透過型電子顕微鏡の観察視野内にあることを確保するために、試料の観察すべき領域をなるべく回転軸の軸線に接近させる必要がる。
【0054】
試料の観察すべき領域を回転軸の軸線まで調整する方法は、以下のステップS1~S8を含む。
【0055】
(ステップS1)
前記試料挟持ノズルを作製し、試料を試料挟持ノズル内に装着し、さらに試料挟持ノズルを試料ホルダの試料治具に取り付ける。
【0056】
(ステップS2)
試料が装着された試料ホルダを透過型電子顕微鏡に挿入し、試料の1つの観察すべき領域を見つけ、試料の観察すべき領域の1つの特徴点を選択する。選択の原則は、この特徴点が回転過程において識別されやすいことである。
【0057】
(ステップS3)
回転軸を0°に自転させ、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をD1として記録し、回転軸を180°に自転させ、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をD2として記録する。
【0058】
(ステップS4)
ナノポジショナーをY方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をD1とD2の中心位置Dzに移動させる。
【0059】
(ステップS5)
回転軸を90°に自転させ、ナノポジショナーをZ方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をDzに移動させる。
【0060】
(ステップS6)
回転軸を0°に自転させ、ナノポジショナーをY方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をDzに移動させる。
【0061】
(ステップS7)
往復回転において電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置の電子顕微鏡での横向位置が変わらなくなるまで、ステップS5~S6を繰り返す。
【0062】
(ステップS8)
透過型電子顕微鏡の拡大倍率を増大させ、ステップS3~S7を繰り返す。機械的誤差によるランダムな移動が無視できなくなる時は、試料の特徴点が回転軸に正確に位置することを示す。
【0063】
回転過程において、連動により前後移動する可能性があるので、毎回の回転の後に圧電摺擦機構をX方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置を同じX位置に移動させる必要がある。
【0064】
透過型電子顕微鏡の試料ホルダ全体の直径は15mmである。シール用のOリング溝を取り付け、十分な構造剛性を確保する必要を考慮すると、回転軸の空間直径を10mm以下にする。
【0065】
[試料ホルダの軸線の自己位置決め]
本発明の第6態様において、試料が試料ホルダの軸方向の周りに自転した後、試料ホルダの中軸線と一致するまで自動的に復帰できる試料ホルダを提供することを目的とする。
【0066】
試料の軸を中心とする360°自転を達成するために、試料ホルダは、外殻と回転軸を含み、外殻が回転軸と同軸であり、回転軸が外殻の内チャンバに位置し、内チャンバには摺擦回転軸が自転する圧電摺擦機構及び自己位置決め機構が設けられ、自己位置決め機構が対称な斜面を有し、斜面が回転軸に接触するように設けられる。回転軸がどのように回転しても、斜面の作用により、回転軸の中心軸は常に自動的に元の位置に復帰でき、これによって、回転軸の中心変位により試料の観察すべき領域が透過型電子顕微鏡の観察視野から外れることが回避される。好ましくは、回転軸はセラミック軸である。
【0067】
好ましい実施形態において、自己位置決め機構は、ブラケットブロックを含む。ブラケットブロックは、対称な斜面を有し、ブラケットブロックの斜面が回転軸に接触する。好ましくは、ブラケットブロックの斜面上に耐摩耗層を有し、耐摩耗層は回転軸と接触する部位である。好ましくは、回転軸の軸方向に沿って複数のブラケットブロックが分布する。
【0068】
好ましい実施形態において、自己位置決め機構は、押板を含む。押板は平板1を有し、平板の両側に斜面が対称に設けられる。回転軸は、ブラケットブロックと押板との間に制限されることにより、使回転軸は、軸を中心に自転する時に上下又は左右に変位しない。好ましくは、各ブラケットブロックは1つの押板に対応し、ブラケットブロックが下にあり、押板が上にある。或いは、自己位置決め機構は、複数のブラケットブロック及び1つの押板を含む。
【0069】
押板は、一対の取付翼を有する。取付翼には固定孔がある。取付翼は、斜面の一端に位置する。平板の内側に耐摩耗層が設けられ、耐摩耗層は回転軸に接触する部位である。
【0070】
外殻と回転軸との間に骨格が設けられる。取付翼は、弾性取付アセンブリを介して骨格に取り付けられる。弾性取付アセンブリは、ボルトとバネから構成される。バネは、ボルトのロッド部位に外嵌され、取付翼とボルトの頭部との間に位置する。弾性取付アセンブリにより、押板は回転軸の径方向に沿って微動することができ、回転軸に予張力が加わるとともに、回転軸が自転することができる。回転軸は、押板とブラケットブロックとの間に制限され、取り付ける際にボルトを捻ることで予張力を調整する。取付が完成した後、使用過程においてバネは変形し続けない。
【0071】
[回転軸駆動アセンブリ]
本発明の第7態様において、回転軸の自転及び軸方向移動を同時に駆動でき、又は回転軸の自転又は軸方向移動を選択的に駆動できる試料ホルダを提供することを目的とする。
【0072】
好ましい実施形態において、外殻と回転軸との間に骨格を設けられ、骨格と回転軸との間に少なくとも1組の回転軸駆動アセンブリが設けられる。前記回転軸駆動アセンブリは圧電摺擦機構である。各組の回転軸駆動アセンブリは、駆動ユニットを含み、駆動ユニットは、基板及び圧電セラミックスシートを含む。基板は、絶縁体又はPCBプリント基板である。
【0073】
<回転軸の軸方向移動を駆動する形態>
回転軸駆動アセンブリは、軸方向駆動ユニットを含む。軸方向駆動ユニットの圧電セラミックスシートのせん断変形方向は、回転軸の軸方向と一致する。圧電セラミックスシートは、基板に接着し、圧電セラミックスシートの両側の表面に導電塗層が塗布される。駆動のときに、導電塗層の間に電圧信号、例えば、連続的又は断続的なノコギリ波などを入力する。
【0074】
<回転軸の自転を駆動する形態>
回転軸駆動アセンブリは、自転駆動ユニットを含む。自転駆動ユニットの圧電セラミックスシートのせん断変形方向は、回転軸の周方向と一致する。圧電セラミックスシートは、基板に接着される。圧電セラミックスシートの両側の表面に導電塗層が塗布される。駆動のときに、導電塗層の間に電圧信号、例えば、連続的又は断続的なノコギリ波などを入力する。
【0075】
<回転軸自転と軸方向移動との組み合わせの形態>
回転軸駆動アセンブリの駆動ユニットは、基板、第1圧電セラミックスシート及び第2圧電セラミックスシートを含む。第1圧電セラミックスシートの変形方向は、第2圧電セラミックスシートの変形方向に直交し、第1圧電セラミックスシート及び第2圧電セラミックスシートの両側の表面に導電塗層が塗布される。駆動のときに、導電塗層の間に電圧信号、例えば、連続的なノコギリ波などを入力する。
【0076】
第1圧電セラミックスシートの変形方向は、第2圧電セラミックスシートの変形方向に直交する。例えば、第1圧電セラミックスシートの変形方向は、回転軸の軸方向(前後方向)に沿い、回転軸の前後移動を駆動するためである。第2圧電セラミックスシートの変形方向は、回転軸の周方向(回転方向)に沿い、回転軸の自転を摺擦するためである。
【0077】
好ましくは、第1圧電セラミックスシートは、第2圧電セラミックスシート上に積層されるか、又は第2圧電セラミックスシートは、第1圧電セラミックスシート上に積層される。第1圧電セラミックスシートと第2圧電セラミックスシートとは接着固定される。駆動ユニットには耐摩耗層が設けられる。耐摩耗層は、回転軸に直接接触することにより、摩耗が低減され、駆動ユニットの使用寿命が延長される。第1圧電セラミックスシートの片側の表面と第2圧電セラミックスシートの片側の表面とは導通され、1本の導線を共用する。
【0078】
好ましくは、回転軸駆動アセンブリは、回転軸の軸方向に沿って3組又は5組も受けられる。好ましくは、5組の回転軸駆動アセンブリが設けられる。回転軸の前後にそれぞれ2組の回転軸駆動アセンブリが対称に設けられ、中間位置に1組の回転軸駆動アセンブリが設けられる。2組の回転軸駆動アセンブリの場合、回転軸の自転及び軸方向移動の力に制限があり、複数組の回転軸駆動アセンブリを設けて回転軸に同一方向の力を加えることは、回転軸の自転及び軸方向移動に有利である。
【0079】
[骨格]
本発明の第8態様において、回転軸駆動アセンブリ及び回転軸を収容可能な試料ホルダを提供する。
【0080】
骨格は、外殻と回転軸との間に設けられ、外殻及び回転軸と同軸である。骨格は、回転軸と外殻との間の過渡部材として、組み立てる際に、回転軸と骨格とを同軸にし、さらに回転軸と、骨格と、外殻とが同軸になるように回転軸-骨格を外殻内に取り付け、これにより取付精度が高くなる。また、骨格は、回転軸駆動アセンブリに取付位置を提供する。さらに、骨格は、回転軸と導線とを離間させ、回転軸動作に対する導線の干渉を避ける作用を奏する。
【0081】
好ましい実施形態において、骨格は、外殻の内壁に隙間ばめされる整合部、回転軸を収容する収容溝、及び部品を搭載する取付部を有する。収容溝は、対称な斜面を有し、取付部には接続回路基板が固定される。接続回路基板には接続導線を有する。
【0082】
好ましくは、ブラケットブロックは、収容溝に固定され、収容溝は、骨格の軸方向に沿って複数設けられる。骨格には、回転軸駆動アセンブリを収容する取付チャンバが設けられ、収容溝及び取付チャンバは間隔をあけて設けられる。回転軸駆動アセンブリが取り付けられた後、回転軸駆動アセンブリの耐摩耗層は、回転軸を位置規制する斜面となる。
【0083】
好ましくは、各駆動ユニットは、それぞれ電流が流れるための接続回路基板を有する。接続回路基板はPCBプリント基板である。接続回路基板には、回転軸駆動アセンブリに電気的に連通する回線が設けられる。各回転軸駆動アセンブリは、1つの中継回路基板に対応する。中継回路基板は、PCBプリント基板である。中継回路基板には接続回線が設けられる。接続回路基板の電流は、中継回路基板に集まる。中継回路基板は、伝送導線に接続され、伝送導線は、試料ホルダ上の信号コネクタに接続される。信号コネクタは、外部信号源に接続され、制御信号を出力する。回路基板の方式により電気信号の伝送を実現することにより、回転軸の回転に対する導線の干渉が回避される。
【0084】
好ましくは、中継回路基板は骨格に固定され、回転軸は中継回路基板の下方に位置する。好ましくは、中継回路基板は、押板と回転軸駆動アセンブリとの間に位置する。中継回路基板はPCBプリント基板である。駆動ユニットの溶接可能領域の面積は限られているので、強固な溶接が得られない。中継回路基板を使用することにより、組立過程において駆動ユニット上の導線との接触が減少されるので、溶接スポットが保護される。
【0085】
好ましくは、接続回路基板と中継回路基板とは導線で電気的接続される。
【0086】
好ましくは、骨格は円柱形であり、骨格の片側に骨格の軸方向に亘る溝が切り欠かれ、収容溝及び取付チャンバはいずれも溝に位置する。骨格の円弧面を底部、溝の開口を頂部とする場合、接続回路基板が置かれる位置には頂部から下へ骨格壁の一部を切り欠けてなる欠け口がある。切欠口の両端の壁は、接続回路基板を位置決めする作用を奏する。
【0087】
好ましくは、各接続回路基板の幅は、骨格の肉厚以下である。接続回路基板は、ボルトにより切欠口の頂面に固定される。
【0088】
好ましくは、中継回路基板が取り付けられる骨格壁の平面は、接続回路基板が取り付けられる骨格壁の平面よりも高い。このようにして、中継回路基板の一部が浮き上がり、その下方の接続回路基板と共に取り付けられ、取付スペースが節約される。さらに、中継回路基板と接続回路基板との間に隙間があるので、回線の短絡が回避される
【0089】
好ましくは、骨格にネジ孔が取り付けられ、ネジ孔は、上から下へ骨格を貫通する。ネジ孔は、いずれも貫通孔であることで、骨格の清浄が便利であり、試料ホルダが清潔に保持されるため、透過型電子顕微鏡内の試料チャンバに対する汚染及び干渉が回避される。
【0090】
[光ファイバーの導入]
本発明の第9態様において、光ファイバーを試料ホルダに導入し、透過型電子顕微鏡下で試料の変化過程をその場撮影できる試料ホルダを提供することを目的とする。
【0091】
試料ホルダに光ファイバーが導入される。光ファイバーの作用は、1)光源で特定のスペクトルを有する光に調整して電子顕微鏡に射入し、試料を照射し、電磁界を加えること、2)試料が射出/反射した光を収集して測定及び分析のために電子顕微鏡から送信し、例えば、試料からの黒体放射を測定して試料温度を得ることである。
【0092】
好ましい実施形態において、光ファイバー溝が骨格の側面に開設され、光ファイバー溝の軸方向が骨格に亘る。骨格の側面に光ファイバーが通過するための光ファイバー溝を開設することにより、光ファイバーの摩耗が回避される。
【0093】
好ましい実施形態において、試料ホルダのヘッド部に先端回路基板を有し、先端回路基板は、光ファイバー溝に繋がる。先端回路基板は、光ファイバー溝と同一直線に位置する。光ファイバー溝が骨格の側面に開設されるのは、試料ホルダのヘッド部に先端回路基板を有し、光ファイバー溝が先端回路基板に繋がるためである。先端回路基板は、光ファイバーをガイドする作用を有し、光ファイバーのヘッド部は、先端回路基板を経過し、比較的小さな曲げ幅を有する。光ファイバーのヘッド部の曲げ幅が大き過ぎると、光波が減衰し、さらに光ファイバーが折断される恐れがある。光信号が減衰すると、信号の信号対雑音比が低下し、機器の測定範囲以下に低下すると、測定できなくなる。
【0094】
好ましくは、先端回路基板は、取付ブロックにより骨格に取り付けられる。取付ブロックは、ボルトにより先端回路基板が骨格に固定される。先端回路基板は、光ファイバーをガイドするガイド面を有し、ガイド面は光ファイバー溝に揃っている。ガイド面は、試料挟持ノズルの方向へ延伸し、光ファイバーは、ガイド面に沿って試料に接近する。
【0095】
好ましくは、骨格には2つの光ファイバー溝が対称に開設される。先端回路基板には、対称に設けられたガイド面を対応して有する。それぞれのガイド面は、それぞれの光ファイバー溝に繋がる。光ファイバーは、いずれか1つの光ファイバー溝を通過してもよいか、又は2つの根光ファイバーは、それぞれ2つの光ファイバー溝を通過してもよく、例えば、異なるスペクトルを導入するか、又は1本の光ファイバーが発光し、もう1本が光を収集する。
【0096】
好ましくは、光ファイバー溝は、接続回路基板と同一直線に位置する。即ち、接続回路基板は、光ファイバー溝の経路に沿って配置される。接続回路基板の引出導線は、骨格の内壁から引き出されてもよく、光ファイバー溝を通過してもよい。このように設置することにより、導線の配置と回転軸の回転は互いに干渉しない。
【0097】
好ましくは、光ファイバー溝は直線状である。光ファイバー溝には、少なくとも直径0.5mmの光ファイバーを収容可能である。
【0098】
[導線のガイド]
本発明の第10態様において、試料ホルダの外部の信号を試料ホルダ内に安定して入力することで、ナノアクチュエータの動作を正確に制御するとともに、透過型電子顕微鏡の試料チャンバ内の静電気、試料ホルダが採取した情報を安定して出力でき、かつ導線間の接続の信頼性が高く、回転軸の回転を干渉することなく、回転軸により干渉されない試料ホルダを提供することを目的とする。
【0099】
先端回路基板に接続される導線は、外部のコントロールボックスに接続される必要がある。導線は、骨格の外部から引き出されると、長時間の接触摩擦により導線が摩耗されると共に、導線の直径が小さく、配置が複雑であるので、互いに絡み合いやすい。そこで、骨格の底部に導線が通過するための導線通過溝を開設することにより、導線の摩耗及び絡み合いが回避される。
【0100】
好ましい実施形態において、骨格の底部には導線通過溝が開設される。導線通過溝の軸方向は骨格に亘る。導線通過溝は、底部に向いて開口する溝である。
【0101】
好ましい実施形態において、先端回路基板の導線は、導線通過溝を通過する。
【0102】
[圧電セラミックスシート及び電極の配置]
回転軸平移又は自転を駆動する圧電セラミックスシートは、厚さ方向に沿う外部電界の作用によりせん断変形が発生する圧電セラミックスせん断シートである。
【0103】
好ましくは、圧電セラミックスシートの両側の表面には、導電塗層が均一に塗布され、それぞれ上層電極と下層電極とされる。
【0104】
好ましい実施形態において、駆動ユニットは、基板と、圧電セラミックスシートと、耐摩耗シートを有する。基板上にセラミックスシート領域と電極領域を有する。圧電セラミックスシートは、セラミックスシート領域に積層して接着され、電極領域上には複数の回線があり、回線は圧電セラミックスシートの表面の導電塗層に電気的接続される。
【0105】
好ましくは、セラミックスシート領域には1つの圧電セラミックスシート又は少なくとも2つの圧電セラミックスシートが積層される。
【0106】
好ましくは、少なくとも2つの圧電セラミックスシートが積層される場合、圧電セラミックスシートの伸縮方向は互いに異なる。
【0107】
好ましくは、基板は、PCBプリント基板である。
【0108】
好ましくは、基板は、金属ベースPCBプリント基板である。
【0109】
好ましくは、基板は、アルミベースPCBプリント基板である。好ましくは、基板には凹台及び一対の取り付け孔を有し、取り付け孔を基板の前後両端とすると、セラミックスシート領域及び電極領域は基板の中央に位置し、凹台は基板の前後両端であって取り付け孔の周囲に位置し、セラミックスシート領域及び電極領域は基板の左右両側に位置する。
【0110】
好ましくは、最下層の圧電セラミックスシートの下層電極は、基板上のセラミックスシート領域に直接接触し、セラミックスシート領域上の回線により基板上の電極領域に接続される。最上層の圧電セラミックスシートの上層電極の表面は、A領域とB領域を有する。A領域に耐摩耗シートが貼り付けられる。B領域は1本の中継導線に電気的接続され、中継導線の一端は基板上の電極領域に電気的接続される。
【0111】
好ましくは、中継導線は、B領域にはんだ付けされ、又は導電性接着剤を介してB領域に接着される。
【0112】
好ましくは、少なくとも2つの圧電セラミックスシートがある場合、最上層圧電セラミックスシート以外の各層の圧電セラミックスシートの上層電極は、重なり領域及び露出領域を有する。重なり領域は、当該層の圧電セラミックスシートの上の層の圧電セラミックスシートの下層電極に電気的接続され、露出領域は、1本の中継導線に電気的接続され、中継導線の一端は、基板上の電極領域に電気的接続される。
【0113】
好ましくは、中継導線は、露出領域にはんだ付けされ、又は導電性接着剤を介して露出領域に接着される。
【0114】
好ましくは、中継導線は、基板上の電極領域にはんだ付けされる。
【0115】
好ましくは、重なり領域は、当該層の圧電セラミックスシートの上の層の圧電セラミックスシートの下層電極に直接接触される。
【0116】
好ましくは、下層電極は接地する。各圧電セラミックスシートの上層電極及び下層電極は、容量性負荷に相当しかつ各圧電セラミックスシートを駆動するのに必要な電圧が比較的高いので、高周波信号で各圧電セラミックスシートを駆動する際に、電圧信号は骨格に漏れやすく、電子顕微鏡を損傷させる可能性がある。そのため、最下層の圧電セラミックスシートの下層電極を接地させることにより、骨格に漏れる電圧を減少できる。
【0117】
或いは、圧電セラミックスシートと電極の別の配置方式では、駆動ユニットは、電極板及び圧電セラミックスシートを含み、圧電セラミックスシートが電極板の表面に接着固定される。電極板は導体であり、電極板は引出導線に電気的接続される。
【0118】
好ましくは、駆動ユニットは、第1電極板と、第1圧電セラミックスシートと、第2電極板とを含む。第1圧電セラミックスシートは、回転軸の軸方向に沿ってせん断変形し、又は第1圧電セラミックスシートは、回転軸の周方向に沿ってせん断変形する。第1圧電セラミックスシートは、第1電極板と第2電極板との間に位置し、第1電極板及び第2電極板は、それぞれリード線端を有する。
【0119】
好ましくは、駆動ユニットは、第1電極板と、第1圧電セラミックスシートと、第2電極板と、第2圧電セラミックスシートと、第3電極板とを含む。それらは、第1電極板、第1圧電セラミックスシート、第2電極板、第2圧電セラミックスシート、第3電極板の順に取り付けられる。第1圧電セラミックスシートのせん断変形方向は、第2圧電セラミックスシートのせん断変形方向と異なる。第三電極板は、回転軸に近いが、回転軸に接触しない。
【0120】
好ましくは、第1電極板は、絶縁層に接着固定され、絶縁層は、骨格又は外殻に接着固定される。第3電極板には回転軸に接触する耐摩耗層が設けられる。第1、第2及び第3は、3つの電極板があることを説明するための用語に過ぎない。第1及び第2は、2つの圧電セラミックスシートがあることを説明するための用語に過ぎない。
【0121】
好ましくは、第1電極板は接地する。第1電極板、絶縁層及び骨格は回路において容量性負荷に相当し、かつ各圧電セラミックスシートを駆動するのに必要な電圧が比較的高いので、高周波信号で各圧電セラミックスシートを駆動する際に、電圧信号は骨格に漏れやすく、電子顕微鏡を損傷させる可能性がある。そのため、第1電極板を接地させることにより、骨格に漏れる電圧を減少できるので、適切な電圧信号で第2電極板及び第3電極板を駆動でき、必要な電界が得られ、駆動機能の実現に影響を与えない。
【0122】
[回転軸の位置情報]
本発明の第11態様において、回転軸の回転角度を取得できるとともに、磁界センサの取付を容易にする試料ホルダを提供することを目的とする。
【0123】
回転軸の末端に磁石が設けられ、骨格に引出回路基板が設けられる。回転及び前後移動に伴い、磁界が変化し、磁界センサにより磁界を測定し、磁界に応じて回転軸の位置情報、即ち、回転軸の回転角度及び移動距離を得ることができる。三次元再構成には投影角度が必要であるので、回転軸の回転角度を測定する必要がある。回転軸の移動距離を測定するのは、試料を磁界センサを較正するときの位置に位置させ、回転軸の回転角度の測定誤差をより小さくするためである。現在の試料ホルダは、3自由度駆動であるのに対し、本発明の試料ホルダは4自由度駆動であり、回転軸の軸方向回転が増加され、回転軸の回転角度を測定することにより三次元再構成に投影角度を提供する。
【0124】
回転軸の末端に磁石が設けられ、骨格に引出回路基板が設けられ、骨格に切欠口が開設される。引出回路基板は、折り曲げ部を含む。折り曲げ部は、切欠口内に位置する。磁界センサは、折り曲げ部に固定される。磁界センサを切欠口内に置くことにより、取るスペースが小さくなり、骨格に外嵌される外殻の直径が小さくなる。切欠口のスペースは、磁界センサを収容するのに必要なスペースよりも遥かに大きいので、磁界センサの取り外しとメンテナンスに十分なスペースを提供する。
【0125】
好ましい実施形態において、引出回路基板は、平面部を含む。平面部と折り曲げ部は骨格を被覆する。平面部と折り曲げ部は導線により接続される。磁界センサは、折り曲げ部にはんだ接続される。引出回路基板は、PCBプリント基板である。磁界センサは、引出回路基板にはんだ接続されることにより、磁界センサを固定するとともに、引出回路基板上の一対のピンの接続を短縮でき、接続に必要な導線の数を減少させる。
【0126】
好ましい実施形態において、平面部及び折り曲げ部はL字状であり、磁界センサは磁石に対向する。折り曲げた回路基板を使用することにより、取るスペースが小さく、取り外しが容易である。回路基板が折り曲げられないと、ボルトを設けるのに必要なスペースが不十分であるので、接着固定しかできず、取り外しとメンテナンスが困難である。
【0127】
好ましくは、引出回路基板は、2組の引出端子を有する。1組の引出端子は、駆動ユニットの導線に電気的接続され、もう1組の引出端子は、試料ホルダの電気コネクタに接続される。
【0128】
[多自由度試料ホルダを用いて試料のその場動的三次元再構成を行う方法]
本発明の第12態様において、前記試料ホルダを用いて透過型電子顕微鏡の試料チャンパ内で実際に発生した試料の形態変化をその場再構築する三次元再構成方法を提供することを目的とする。
【0129】
多自由度試料ホルダを用いて試料のその場動的三次元再構成を行う方法は、以下のステップS1~S4を含む。
【0130】
(ステップS1)
前記試料ホルダを作製し、試料を試料ホルダの先端に装着し、試料ホルダを透過型電子顕微鏡に挿入する。
【0131】
(ステップS2)
試料の観察すべき領域での1つの特徴点を試料ホルダの軸線に位置合わせされるように調整する。
【0132】
(ステップS3)
回転軸を累積的に180°回転させ、1°ごとに写真を撮る。
【0133】
(ステップS4)
ステップS3で得られた写真をコンピュータに導入して三次元再構成を行う。
【0134】
本発明は以下の利点を有する。
1、ナノポジショナーに仮締付ボルト、電気回路及び静電気放出部材を設けることにより、試料の観察すべき領域上の静電気は試料を介して仮締付ボルトに伝送され、仮締付ボルトよりナノアクチュエータ上の電気回路を介して静電気放出部材に到達し、静電気放出部材上の電流が導線を介して外部へ導出されることにより、電子線が試料に照射されるときに試料の観察すべき領域に静電界が発生して電子線結像に影響を与えることを回避できる。
【0135】
2、透過型電子顕微鏡の観察スケールは、通常ミクロンやナノスケールであるので、試料の観察すべき領域を観察する際に、ナノアクチュエータにより試料が回転した後、試料の観察すべき領域が透過型電子顕微鏡の観察視野から外れる可能性が高い。様々なサイズの試料の観察を可能にするために、試料を装着するための試料挟持ノズルを設け、試料と試料挟持ノズルを試料アセンブリとして試料ボーダの先端に取り付ける。
【0136】
3、試料の軸を中心とする360°自転を達成するために、試料ホルダは、外殻と回転軸を含み、外殻が回転軸と同軸であり、回転軸が外殻の内チャンバに位置し、内チャンバには摺擦回転軸が自転する圧電摺擦機構及び自己位置決め機構が設けられ、自己位置決め機構が対称な斜面を有し、斜面が回転軸に接触するように設けられる。回転軸がどのように回転しても、斜面の作用により、回転軸の中心軸は常に自動的に元の位置に復帰でき、これによって、回転軸の中心変位により試料の観察すべき領域が透過型電子顕微鏡の観察視野から外れることが回避される。
【0137】
4、試料ホルダに骨格が設けられ、骨格は外殻と回転軸との間に位置する。骨格は外殻、回転軸と同軸である。骨格は、回転軸と外殻との間の過渡部材として、組み立てる際に、回転軸と骨格とを同軸にし、さらに回転軸と、骨格と、外殻とが同軸になるように回転軸-骨格を外殻内に取り付け、これにより取付精度が高くなる。また、骨格は、回転軸駆動アセンブリに取付位置を提供する。さらに、骨格は、回転軸と導線とを離間させ、回転軸動作に対する導線の干渉を避ける作用を奏する。
【0138】
5、試料ホルダに光ファイバーが導入される。光ファイバーの作用は、1)光源で特定のスペクトルを有する光に調整して電子顕微鏡に射入し、試料を照射し、電磁界を加えること、2)試料が射出/反射した光を収集して測定及び分析のために電子顕微鏡から送信することである。骨格の側面に光ファイバーが通過するための光ファイバー溝が開設され、先端回路基板は光ファイバー溝に繋がることにより、光ファイバーの摩耗が回避されるとともに、光ファイバーのヘッド部は、先端回路基板から引き出され、比較的小さな曲げ幅を有する。
【0139】
6、試料ホルダには回転軸駆動アセンブリが設けられる。回転軸駆動アセンブリにより、回転軸の軸方向の移動及び自転は試料の多方向観察を満たす。
【0140】
7、試料ホルダは回転軸の位置情報を検出することができる。磁界センサは、引出回路基板にはんだ接続されることにより、磁界センサを固定するとともに、引出回路基板上の一対のピンの接続を短縮でき、接続に必要な導線の数を減少させる。引出回路基板は、平面部と折り曲げ部を含み、平面部と折り曲げ部は直交して骨格の表面に被覆され、磁界センサは折り曲げ部に固定される。折り曲げた回路基板を使用することにより、取るスペースが小さく、取り外しが容易である。
【0141】
8、弾性連結アセンブリにより締付具とジョイントボールとの間の予張力を提供することにより、締付具とジョイントボールとの間に調整可能な安定した静止摩擦力及び動摩擦力を有し、静止摩擦力により試料及び試料挟持器、締付具を支持することにより、重力の試料運動に対する影響が低減され、変位の制御精度が向上し、ナノポジショナーに含まれる部材数が少なく、かつ接続関係が簡単で、生産されやすく、調整と校正が容易である。凹状空間はジョイントボールにフィットするので、締付具とジョイントボールとの間の位置が安定的であり、締付具の間の接続が強固であり、ナノポジショナーの脱落が回避される。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【
図3】本発明の透過型電子顕微鏡下で試料の観察すべき領域を観察する効果図であるり、ここで、a、b、cは比較的大きいノコギリ波ピークピーク値を用いて駆動するときのシングルステップの大ステップ長さ運動であり、d、e、fは比較的小さいノコギリ波ピークピーク値を用いて駆動するときのシングルステップの小ステップ長さ運動である。
【
図11】ブラケットブロックと押板を組み合わせる構造の模式図である。
【
図14】押板が駆動ユニットを有する構造の模式図である。
【
図17】第1の圧電セラミックスシート及び電極の配置方式を示す。
【
図18】第2の圧電セラミックスシート及び電極の配置方式を示す。
【
図20】骨格に光ファイバー溝を有する構造の模式図である。
【
図21】骨格に導線通過溝を有する構造の模式図である。
【
図23】本発明と従来の試料ホルダとの性能対比表である。
【発明を実施するための形態】
【0143】
図1は、多自由度試料ホルダを示す。
図2に示すように、試料ホルダにはナノポジショナーが設けられ、ナノポジショナーは駆動部101、ジョイントボール103及び締付アセンブリを含み、ジョイントボール103と駆動部101とが固定され、締付アセンブリは、少なくとも2つの締付具105及び弾性連結アセンブリ104を含み、弾性連結アセンブリ104により隣接する締付具が連結され、締付アセンブリはジョイントボール103を抱き込み、 締付具とジョイントボール103との間に予張力がある。駆動部101は、例えば、圧電セラミック管であってもよい。
【0144】
[締付具]
いくつかの実施例において、
図2に示すように、締付具は、それぞれ凹部1051及び接続部1052を有し、弾性連結アセンブリ104は、隣接する締付具の接続部1052の間に設けられ、すべての締付具の凹部1051は共同でジョイントボール103にフィットする凹状空間を構成する。凹状空間は、ジョイントボール103と線接触、面接触又は点接触する。弾性連結アセンブリ1052により締付具とジョイントボール103との間に予張力を有する。ジョイントボール103が静止するか、又は駆動部101の駆動によりジョイントボール103がゆっくりと移動する場合、ジョイントボール103と締付具105との間の静止摩擦力により締付具105はジョイントボール103に対して静止する。駆動部101の駆動によりジョイントボール103が迅速に復帰する場合、ジョイントボール103と締付具105との間にすべり摩擦力が発生するため、ジョイントボール103が復帰し、締付具105がジョイントボール103につれて復帰せず静止するか、或いはジョイントボール103の復帰につれて移動するが、移動距離がジョイントボールの復帰距離よりも小さい。
【0145】
凹状空間は、半球状、V字状又は円錐状である。
【0146】
締付具105は一体型の板体であり、凹部1051は板体の中央に位置する。
【0147】
締付具105はジョイントボール103の外側に位置する。試料ホルダが直立する場合、ナノポジショナーは上向きである。両側では、試料ホルダが直立する場合、左右前後は外側となる。好ましくは、締付具105上には試料挟持部が設けられる。すべての締付具が装着されると、試料挟持部は組み合わせて試料治具を形成する。試料治具は、試料の取り付けに用いられる。取り付ける際に、締付具105でジョイントボール103の両側からジョイントボール103を抱き込み、弾性連結アセンブリ104は締付具105とジョイントボール103の間の予張力を提供する。
【0148】
図2~5に示すように、いくつかの実施例において、締付具は、第1締付具1053及び第2締付具1054を含み、第1締付具1053の凹部1051及び第2締付具1054の凹部1051の周りにそれぞれ複数の取付位置が均一に分布し、各取付位置は、1つの弾性連結アセンブリ104に対応し、第1締付具1053の取付位置は、第2締付具1054の取付位置に対向する。このようにして、弾性連結アセンブリ104の一端は、第1締付具1053の取付位置に取り付けられ、他端は、第2締付具1054の取付位置に取り付けられる。第1締付具1053は上にあり、第2締付具1054は下にあり、第2締付具1054の凹状空間は貫通孔である。貫通孔の内壁は、半球状、V字状又は円錐状などである。第1締付具1053には試料治具が設けられる。
【0149】
或いは、第1締付具1053及び第2締付具1054は、それぞれジョイントボール103の両側に位置してもよい。
【0150】
第1締付具1053の凹部1051の表面に耐摩耗層を有する。第2締付具1054の凹部1051の表面に耐摩耗層113を有する。耐摩耗層は、摩擦力の安定維持に有利である。ジョイントボール103の表面に耐摩耗層を有するか、又はジョイントボール103は耐 磨材料で作成される。例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金で作製され、陽極酸化により凹部の表面及び/又はジョイントボールの表面を処理することにより作成される。
【0151】
駆動部が左側(又は右側、前側、後側)に揺動すると、ナノポジショナーは摩擦力によりその側に移動し、さらに試料はその側に移動する。試料の移動距離は、前記2枚の導電塗層に加える反対の定電圧の電圧値に比例する。試料の位置を繰り返して観察しながら電圧値を調整し、試料を所望の位置まで移動させる。
【0152】
[弾性連結アセンブリ]
図2~5に示すように、いくつかの実施例において、弾性連結アセンブリ104は、バネ又は弾性材料で作製される弾性柱(例えば、シリカゲル柱、ゴム柱等)であり、弾性連結アセンブリ104の一端は、第1締付具1053に固定され、他端は、第2締付具1054に固定される。2つの締付具がジョイントボール103を抱き込んでいる場合、弾性連結アセンブリ104は変形状態であり、弾性連結アセンブリ104の復元力は2つの締付具とジョイントボール103との間に予張力を提供する。
【0153】
或いは、弾性連結アセンブリは、ボルト1041及びバネ1042から構成される。バネ1042は、ボルト1041に外嵌され、ボルト1041と第1締付具1053との間に位置する。第2締付具1054の取付位置は、ボルト1041に噛み合うボルト穴である。ボルト1041が第2締付具1054の取付位置に噛み合うと、バネ1042は圧縮されて第1締付具1053を第2締付具1054に押し付ける。これによって、バネ1042は、第1締付具1053、第2締付具1054とジョイントボール103との間の予張力を提供する。第1締付具1053の取付位置は貫通孔であり、貫通孔とボルト1041が隙間ばめされる。貫通孔とボルト1041との間に摩擦がないので、バネ42が第1締付具1053を押し付けることに有利である。
【0154】
いくつかの実施例において、ボルト1041は第2締付具1054の取り付け孔1043から伸び出し、又はボルト1041と第2締付具1054との間の固定部があり、又はボルト1041は順に第1締付具1053、第2締付具1054を通過してナッツに噛み合う。例えば、第2締付具1054を装着した後、ボルト1041と第2締付具1054とを溶接固定又は接着固定し、或いはボルト上のネジ山を破壊する。これは、ジョイントボール103の循環運動により第1締付具1053及び第2締付具1054が変位する際に、第1締付具1053及び第2締付具1054の動きによりボルト1041と第2締付具1054の間の振動を引き起こし、ボルト1041が緩み、さらに第2締付具1054から脱離するからである。ボルト1041が緩むと、位置に対する正確な制御が影響される。ボルト1041が第2締付具1054から脱離すると、第1締付具1053と試料が落ちて電子顕微鏡を損傷させる。ボルトと第2締付具を固定し、又はナッツを設け、余分なネジ山部分を設置する目的は、ナノポジショナーの動きによる衝撃を緩和又は抵抗し、ボルトの第2締付具1054からの脱離によるナノポジショナーと試料の脱落を避け、締付具とジョイントボール103との接続の安定性を維持するためである。
【0155】
ボルト1041とバネ1042を採用し、ボルト1041の締め付けの程度により締付具とジョイントボール103との間の予張力を調整することにより、弾性それ自体に対する設計、製造上の要求が低下する。弾性連結アセンブリ104は、締付具とジョイントボール103との間に継続的で安定した圧力を提供し、これにより締付具とジョイントボール103との間に安定した摩擦力が存在する。
【0156】
[駆動部]
図2に示すように、いくつかの実施例において、駆動部101は圧電セラミック管であり、圧電セラミック管は中空の管体である。圧電セラミック管の一端はジョイントボール103に固定され、他端は試料ホルダに取り付けられる。圧電セラミック管は内面と外面を有し、圧電セラミック管の1つの表面には複数の導電領域群が設けられる。
図6に示すように、各導電領域群は、対称な2つの導電領域1011を含み、各導電領域1011はそれぞれ独立し、導電線を有する。圧電セラミック管のもう1つの表面は、全領域導電部1012である。全領域導電部1012とは、導電塗層がもう1つの表面を完全に覆うことをいう。
【0157】
図2に示すように、導電領域群は、圧電セラミック管の外面に設けられ、全領域導電部1012は、圧電セラミック管の内面に設けられる。或いは、導電領域群は、圧電セラミック管の内面に設けられ、全領域導電部1012は、圧電セラミック管の外面に設けられる。導電領域群が圧電セラミック管の外(内)面に沿って均一に分布する場合、全領域導電部1012は内(外)面を覆う。隣接する導電領域1011の間に絶縁塗層がある。各導電領域群中の2つの導電領域1011は、電圧の方向が逆である。
【0158】
いくつかの実施例において、
図3に示すように、ジョイントボール103は、ボール台座102を介して圧電セラミック管に接続される。ボール台座102は、ジョイントボール103に固定された接続ロッド及び圧電セラミック管に固定された接続台を含む。接続ロッドの直径は、ジョイントボール103の直径よりも小さい。接続ロッドと接続台は、着脱可能な締付接続、例えば、ネジ山接続、キー接続などである。取り付けの際に、まず、接続ロッドをジョイントボールと接触する第2締付具の凹状空間の貫通孔を通過させ、さらに、接続ロッドと接続台とを固定する。これによって、第2締付具の着脱と交換が便利である。
【0159】
圧電セラミック管の底端を固定し、1本の導線を圧電セラミック管の内側面の導電塗層に溶接し、接地を保持し、4本の導線の一端をそれぞれ圧電セラミック管の外側面の4枚の導電塗層に溶接し、他端を電圧増幅器の各出力端に接続し、さらに電圧増幅器の各入力端を関数信号発生器に接続する。この試料ホルダの2つの自由度はそれぞれ駆動することができる。試料ホルダの任意の自由度を駆動し、試料をこの自由度上で所望の位置まで移動させる方法は、導線により圧電セラミック管の外側面上の対称な2枚の導電塗層にそれぞれ正と負のノコギリ波を加えることである。このノコギリ波は連続波であってもよく、パルス波であってもよい(
図3)。導電領域1011が多ければ多いほど、ジョイントボール103の可能な運動方向が多くなる。
【0160】
図3に示すように、連続なノコギリ波では、好ましいパラメータは、ピークピーク値100V、周波数100Hz以下、スルー・レート100V/μs以上である。ピークピーク値を適切に低減することにより、運動ステップ長さを小さくすることができるが、ピークピーク値が低くなり過ぎると(いつくかの例では、40V未満)、運動ステップ長さはゼロまで急速に低下する場合がある。これは、摩擦面の微細構造に関係があると考えられる。ピークピーク値が100V超えである場合、圧電セラミックスがブレークダウンされ、圧電セラミック管が破壊されることがある。周波数が100HZ超えである場合、圧電セラミック管又は装置構造全体の固有振動が励起されることで、ジョイントボール103の運動は平面内での「遅い、速い」運動ではなくなり、ナノポジショナーの駆動原理が満たされず、試料が運動できなくなる。周波数を低減することにより、単位時間あたりに発生する運動ステップの数を減少させ、試料の運動速度を制御できる。スルー・レートが100V/μs未満である場合、摺動段階でのジョイントボール103の運動加速度は低くなりすぎ、摩擦力により運動部材が滑ることなくジョイントボール103につれて運動し、試料は各ステップを累積することでロングストローク運動を行うことができない。
【0161】
他の観察装置(例えば、光学顕微鏡、電子顕微鏡など)により試料の位置を観察し、試料が目的位置の近傍に移動するときに、前記対称な導電領域に反対の定電圧を加え、全体が曲がるように圧電セラミック管の一側を伸長させ、他側を短縮させることで、圧電セラミック管の一端に固定されたジョイントボール103を一側に移動させる。
【0162】
いくつかの実施例において、接続ロッドと接続台の接続は、着脱可能な締付接続、例えば、ネジ山接続、キー接続などである。これによって、第1締付具の着脱と交換が便利である。
【0163】
図4に示すように、試料治具は套管106である。套管106は第1締付具1053に一体であり、套管106の壁には仮締付ボルト1061が貫通して取り付けられる。棒状又は管状の試料を套管106内に挿入し、仮締付ボルト1061で試料を締め付けることにより、試料の装着が完成する。
【0164】
図5に示すように、試料治具の別の態様では、試料治具は円錐であり、円錐1062は第1締付具1053に一体である。粉末状資料を円錐1062の頂点に接着することで、試料の装着が完成する。
【0165】
図6に示すように、試料治具の別の態様では、試料治具は基体1063と、スペーサー1064と、締付ボルト1065とを含む。基体1063は、接続部と挟持部に分けられる。接続部は、第1締付具に固定され、一部が切り欠かれて平面が形成された不完全な円柱体である。スペーサー1064は、締付ボルト1065により挟持部に締め付けられる。挟持部の平面とスペーサー1064との間に試料1066の装着に用いられる。
【0166】
図7に示すように、試料治具の別の態様では、試料治具は、挟持ノズル108及び套管106を含む。挟持ノズル108は、套管106内に位置する。套管106は、第1締付具1053と一体である。套管106の壁には仮締付ボルト1061が貫通して取り付けられる。棒状又は管状試料を挟持ノズル108に挿入し、仮締付ボルト1061で挟持ノズル108を締め付けることにより、試料の装着が完成する。
【0167】
[静電気放出]
透過型電子顕微鏡は、電子線で結像するので、電子線が試料に照射されると、試料の観察すべき領域に静電気が蓄積して静電界が発生し、静電界は、電子線を偏向させて電子線結像に影響を与える。そこで、試料の観察すべき領域上の静電気を外部へ放出する必要がある。
【0168】
いくつかの実施例において、
図8、
図9に示すように、試料が導体又は半導体である場合、ナノアクチュエータの先端に試料を装着する套管106が設けられる。套管上に試料を締め付ける仮締付ボルト1061が設けられる。ナノアクチュエータの尾端に静電気放出部材107が設けられ、仮締付ボルト1061及び静電気放出部材107は導電性を有する。ナノアクチュエータ上に仮締付ボルト1061と静電気放出部材107とを連通する電気回路が設けられ、静電気放出部材107は導線に接続され、導線は接地し、又は外部設備により提供される定電圧電源に接続され、又は試料ホルダの本体に接続されて透過型電子顕微鏡に接続される。このようにして、試料の観察すべき領域上の静電気は、試料を介して仮締付ボルト1061に伝達され、さらにナノアクチュエータ上の電気回路を介して静電気放出部材107に到達し、静電気放出部材107上の電流が導線を介して外部へ導出される。
【0169】
具体的な実施例として、電気回路は、仮締付ボルト1061と静電気放出部材107を接続する導線であってもよく、導線がナノアクチュエータの動作を干渉しないように導線の長さを余裕を持って設置すればよい。又は、ナノアクチュエータは前記構造を採用し、
図8、
図9に示すように、套管106は第1締付具1053に設けられ、静電気放出部材107は第2締付具1054に固定して取り付けられる。第1締付具1053、套管106及び第2締付具1054はいずれも導体である。第1締付具1053と第2締付具1054との間に少なくとも1つ弾性連結アセンブリ104がある。弾性連結アセンブリ104は、ボルト1041及びバネ1042を含み、バネ1042はボルト1041に外嵌され、ボルト1041及びバネ1042はいずれも導体である。第1締付具1053のボルト1041に対応する貫通孔の表面に導電性が保持される。このようにして、静電気の流れ方向は、試料→仮締付ボルト→第1締付具→バネ→ボルト→第2締付具→静電気放出部材である。
【0170】
具体的な実施例として、静電気放出部材107は導電性ボルトであり、第2締付具1054には導電性ボルトにフィットするボルト穴があり、導電性ボルトの頭部は、第1締付具1053から離れる方向に向かい、導線は、導電性ボルトの頭部と第2締付具1054との間に位置する。これは、このようにして導電性ボルトの取り付けが便利で、導線を導電性ボルトに固定できるからである。導電性ボルトのロッド部位は、第2締付具1054内に位置する。つまり、導電性ボルトは、頭部以外の他の部分が第2締付具1054内に位置し、その尾部が第2締付具1054から露出することもなく、第1締付具1053内に入ることもない。このようにして、第1締付具1053、ジョイントボール103及び第2締付具1054の間の相対的な動きによる導電性ボルトの安定性に対する影響が回避される。導電性ボルトの尾部は、第2締付具1054にスポット溶接により固定される。スポット溶接により導電性ボルトを第2締付具1054内に固定することにより、電流伝送の安定性が保持され、導電性ボルトが第2締付具1054から脱離して落ちることが回避される。透過型電子顕微鏡は、コストが非常に高く、メンテンスが困難であるので、部品又は試料などが透過型電子顕微鏡の試料チャンバ内で落ちると損失が大きく、試料チャンバ内のスペースが限られているので、落ちた部品を取り出すのが困難である。従って、試料ホルダの各部品の接続信頼性は非常に重要である。導電性ボルトの頭部が第2締付具1054から露出することにより、導線を導電性ボルトと第2締付具1054の表面との間に固定できるので、導線を第2締付具1054のボルト穴内に挿入する必要がなく、断裂しにくくなる。
【0171】
[試料挟持ノズル]
試料は試料ホルダ上に装着される必要がある。例えば、試料はΦ0.3mm、長さ10mmの棒状であり、試料の観察すべき領域は試料の一端の厚さ100nm以下の領域、例えば、針先又は付着されたナノ粒子などである。各資料には1つ又は複数の観察すべき領域があってもよい。試料観察実験の前に、軸を中心に試料を回転することで試料の観察すべき領域を透過型電子顕微鏡の観察視野内に常に保持し、試料の観察すべき領域をなるべく回転軸に接近させる必要がある。通常、試料ホルダの先端に套管を設け、仮締付ボルトを一側から試料を套管壁に締め付けることにより試料を装着している。しかし、試料をスムーズで損失なしで套管内に入れるために、套管の内径を試料よりも長くする必要がある。そうすると、試料の観察すべき領域は必ず試料ホルダの中心軸を外れる。透過型電子顕微鏡の観察スケールは、通常ミクロンやナノスケールであるので、試料の観察すべき領域を観察する際に、圧電摺擦機構により試料を回転させた後、試料の観察すべき領域が透過型電子顕微鏡の観察視野を出る可能性が高い。様々なサイズの試料の観察を可能にするために、試料を装着するための試料挟持ノズルを設け、試料と試料挟持ノズルを試料アセンブリとして試料ボーダの先端に取り付け、これにより着脱が便利である。
【0172】
好ましい実施形態において、
図10に示すように、試料挟持ノズル108は、締付部1081と接続部1082を含み、試料が締付部1081に装着される。締付部の中線位置に試料装着孔1083があり、試料が試料装着孔1083に装着される。試料を装着する際に、試料の一部を銅管に挿入し、銅管の内面と試料が貼り合って締付部1081となるアーチが形成されるようにツール(例えば、ペンチなど)で挿入された銅管の一端を締め付けることで、試料をアーチに制限し、試料挟持ノズル108への試料の装着が完成する。試料挟持ノズルの接続部1082と套管106は隙間ばめされる。例えば、套管106が円形である場合、接続部1082は円柱形であり、接続部1082と套管106が隙間ばめすることができればよい。このようにして、仮締付ボルト1061が試料挟持ノズルを直接締め付けるので、いかなるサイズの試料でも試料挟持ノズルに装着することができ、さらに試料アセンブリを試料ホルダに取り付けることができる。これによって、試料ホルダは、試料汎用性に優れている。仮締付ボルト1061は、試料挟持ノズルを締め付ければよく、試料に接触しないので、試料を損傷させることがない。また、試料挟持ノズル108と試料ホルダとの間の取付隙間をなるべく小さく設置してもよく、これにより、試料を試料ホルダの軸になるべく接近させることができる。
【0173】
具体的な実施例において、試料装着孔1083の両側には、試料装着孔1083に連通する2つの緩衝隙間1084が対称に開設される。試料装着孔1083のサイズが試料サイズよりも小さい場合においても、緩衝隙間1084により試料装着孔1083のサイズが増大するスペースが確保されるため、試料が試料装着孔1083にスムーズに装着され得る。締付部1081は、頂部が扁形であるように底部から徐々に収縮する。頂部が扁形であることで、試料挟持ノズル108が占めるスペースが小さくなり、試料の操作が便利である。締付部1081は中空状である。締付部1081を中空にすることで、試料を収容する空間の奥行きが長くなる。
【0174】
具体的な実施例において、締付部1081と接続部1082が固定接続されるか、又は一体成型される。締付部1081は上にあり、接続部1082は下にある。接続部1082は中実柱であってもよく、中空であってもよい。ここで、固定接続とは、溶接などの方式を指す。接続部1082が中実柱である場合、中実柱が押されて変形することがなく、仮締付ボルト1061が中実柱に抵当することで試料挟持ノズルへの試料の装着信頼性が確保される。接続部1082が中空である場合、試料を装着する空間の奥行きがさらに長くなり、試料挟持ノズル108の製造コストも削減される。
【0175】
好ましくは、接続部1082に凹みがある。仮締付ボルト1061は、対応して接続部1082の凹みに挿入され、接続部1082を締め付けるとともに、試料の回転変位を阻止することができる。
【0176】
試料挟持ノズル108は導体である。これにより、試料の観察すべき領域に蓄積した静電気を外部へ放出することを促進できる。試料挟持ノズル108は薄肉銅管であり得る。薄肉銅管を使用することにより、コストが低く、様々なサイズの試料が適用され得る。試料ホルダが挟持ノズルを有する場合、静電気の流れ方向は、試料→挟持ノズル→仮締付ボルト→第1締付具→バネ→ボルト→第2締付具→静電気放出部材である。
【0177】
[試料を回転軸の軸線に位置合わせる調整方法]
回転軸が自転する際に試料の観察すべき領域を常に透過型電子顕微鏡の観察視野内にあることを確保するために、試料の観察すべき領域をなるべく回転軸の軸線に接近させる必要がる。
【0178】
試料の観察すべき領域を回転軸の軸線まで調整する方法は、以下のステップS1~S8を含む。
【0179】
(ステップS1)
前記試料挟持ノズルを作製し、試料を試料挟持ノズル内に装着し、さらに試料挟持ノズルを試料ホルダの試料治具に取り付ける。
【0180】
(ステップS2)
試料が装着された試料ホルダを透過型電子顕微鏡に挿入し、試料の1つの観察すべき領域を見つけ、試料の観察すべき領域の1つの特徴点を選択する。選択の原則は、この特徴点が回転過程において識別されやすいことである。
【0181】
(ステップS3)
回転軸を0°に自転させ、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をD1として記録し、回転軸を180°に自転させ、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をD2として記録する。
【0182】
(ステップS4)
ナノポジショナーをY方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をD1とD2の中心位置Dzに移動させる。
【0183】
(ステップS5)
回転軸を90°に自転させ、ナノポジショナーをZ方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をDzに移動させる。
【0184】
(ステップS6)
回転軸を0°に自転させ、ナノポジショナーをY方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置をDzに移動させる。
【0185】
(ステップS7)
往復回転において電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置の電子顕微鏡での横向位置が変わらなくなるまで、S5-S6を繰り返す。
【0186】
(ステップS8)
透過型電子顕微鏡の拡大倍率を増大させ、S3-S7を繰り返す。機械的誤差によるランダムな移動が無視できなくなる時は、試料の特徴点が回転軸に正確に位置することを示す。
【0187】
回転過程において、連動により前後移動する可能性があるので、毎回の回転の後に圧電摺擦機構をX方向に沿って駆動し、電子顕微鏡のスクリーンへの試料特徴点の投影位置を同じX位置に移動させる必要がある。
【0188】
透過型電子顕微鏡の試料ホルダ全体の直径は15mmである。シール用のOリング溝を取り付け、十分な構造剛性を確保する必要を考慮すると、回転軸の空間直径を10mm以下にする。
【0189】
[試料ホルダの軸線の自己位置決め]
試料の軸を中心とする360°自転を達成するために、試料ホルダは、外殻109と回転軸110を含み、外殻109が回転軸110と同軸であり、回転軸110が外殻109の内チャンバに位置し、内チャンバには摺擦回転軸が自転する圧電摺擦機構及び自己位置決め機構が設けられ、自己位置決め機構が対称な斜面を有し、斜面が回転軸に接触するように設けられる。回転軸がどのように回転しても、斜面の作用により、回転軸の中心軸は常に自動的に元の位置に復帰でき、これによって、回転軸110の中心変位により試料の観察すべき領域が透過型電子顕微鏡の観察視野から外れることが回避される。好ましくは、回転軸110はセラミック軸である。
【0190】
好ましい実施形態において、自己位置決め機構は、ブラケットブロック1092を含む。
図11に示すように、ブラケットブロック1092は、対称な斜面10921を有し、ブラケットブロック1092の斜面が回転軸110に接触する。好ましくは、ブラケットブロック1092の斜面10921上に耐摩耗層113を有し、耐摩耗層113は回転軸110と接触する部位である。好ましくは、回転軸110の軸方向に沿って複数のブラケットブロック1092が分布する。
【0191】
好ましい実施形態において、自己位置決め機構は、押板1093を含む。
図11及び
図12に示すように、押板1093は平板10931を有し、平板10931の両側に斜面10932が対称に設けられる。回転軸110は、ブラケットブロック1092と押板1093との間に制限されることにより、使回転軸110は、軸を中心に自転する時に上下又は左右に変位しない。好ましくは、各ブラケットブロック1092は1つの押板1093に対応し、ブラケットブロック1092が下にあり、押板1093が上にある。或いは、自己位置決め機構は、複数のブラケットブロック1092及び1つの押板1093を含む。
【0192】
図12に示すように、押板1093は、一対の取付翼10933を有する。取付翼10933には固定孔10934がある。取付翼10933は、斜面10932の一端に位置する。平板の内側に耐摩耗層113が設けられ、耐摩耗層113は回転軸110に接触する部位である。
【0193】
外殻109と回転軸110との間に骨格112が設けられる。取付翼10933は、弾性取付アセンブリ114を介して骨格112に取り付けられる。
図12に示すように、弾性取付アセンブリ114は、ボルト1141とバネ1142から構成される。バネ1142は、ボルト1141のロッドに外嵌され、取付翼10933とボルト1141の頭部との間に位置する。弾性取付アセンブリ114により、押板1093は回転軸110の径方向に沿って微動することができ、回転軸110に予張力が加わるとともに、回転軸110が自転することができる。回転軸110は、押板1093とブラケットブロック1092との間に制限され、取り付ける際にボルト1141を捻ることで予張力を調整する。取付が完成した後、使用過程においてバネ1142は変形し続けない。
【0194】
[回転軸駆動アセンブリ]
好ましい実施形態において、骨格112と回転軸110との間に少なくとも1組の回転軸駆動アセンブリが設けられる。前記回転軸駆動アセンブリは圧電摺擦機構である。各組の回転軸駆動アセンブリは、駆動ユニットを含み、駆動ユニットは、基板及び圧電セラミックスシートを含む。基板は、絶縁体又はPCBプリント基板である。
【0195】
<回転軸の軸方向移動を駆動する形態>
回転軸駆動アセンブリは、軸方向駆動ユニットを含む。軸方向駆動ユニットの圧電セラミックスシートのせん断変形方向は、回転軸の軸方向と一致する。圧電セラミックスシートは、基板に接着し、圧電セラミックスシートの両側の表面に導電塗層が塗布される。駆動のときに、導電塗層の間に電圧信号、例えば、連続的又は断続的なノコギリ波などを入力する。
【0196】
<回転軸の自転を駆動する形態>
回転軸駆動アセンブリは、自転駆動ユニットを含む。自転駆動ユニットの圧電セラミックスシートのせん断変形方向は、回転軸110の周方向と一致する。圧電セラミックスシートは、基板に接着される。圧電セラミックスシートの両側の表面に導電塗層が塗布される。駆動のときに、導電塗層の間に電圧信号、例えば、連続的又は断続的なノコギリ波などを入力する。
【0197】
<回転軸自転と軸方向移動との組み合わせの形態>
回転軸駆動アセンブリの駆動ユニットは、基板、第1圧電セラミックスシート及び第2圧電セラミックスシートを含む。第1圧電セラミックスシートの変形方向は、第2圧電セラミックスシートの変形方向に直交し、第1圧電セラミックスシート及び第2圧電セラミックスシートの両側の表面に導電塗層が塗布される。駆動のときに、導電塗層の間に電圧信号、例えば、連続的なノコギリ波などを入力する。
【0198】
第1圧電セラミックスシートの変形方向は、第2圧電セラミックスシートの変形方向に直交する。例えば、第1圧電セラミックスシートの変形方向は、回転軸の軸方向(前後方向)に沿い、回転軸110の前後移動を駆動するためである。第2圧電セラミックスシートの変形方向は、回転軸の周方向(回転方向)に沿い、回転軸110の自転を摺擦するためである。第1圧電セラミックスシートは、第2圧電セラミックスシート上に積層されるか、又は第2圧電セラミックスシートは、第1圧電セラミックスシート上に積層される。第1圧電セラミックスシートと第2圧電セラミックスシートとは接着固定される。駆動ユニットには耐摩耗層113が設けられる。耐摩耗層113は、回転軸110に直接接触することにより、摩耗が低減され、駆動ユニットの使用寿命が延長される。第1圧電セラミックスシートの片側の表面と第2圧電セラミックスシートの片側の表面とは導通され、1本の導線を共用する。
【0199】
好ましくは、回転軸駆動アセンブリは、回転軸110の軸方向に沿って2組又は3組も受けられる。1組の回転軸駆動アセンブリによる回転軸自転及び軸方向移動の力が限られているので、複数組の回転軸駆動アセンブリを設けることにより、回転軸110に加える同じ方向の力は、回転軸自転及び軸方向移動に有利である。しかし、回転軸駆動アセンブリが多すぎると、付勢が乱れる恐れがある。
【0200】
<回転軸の2点駆動の形態>
回転軸の先端には、軸方向に沿って1組の回転軸駆動アセンブリが設けられ、当該組の回転軸駆動アセンブリは、回転軸に沿って対称に設けられる2組の駆動ユニットを含み、回転軸の左、右両側はそれぞれ駆動ユニットによる駆動力を受ける。2つの駆動ユニットの表面の耐摩耗シートは、回転軸110の接触点に揃っている。
図13におけるa、bは、それぞれ2組の駆動ユニット111である。
【0201】
<回転軸の3点駆動の形態>
回転軸駆動アセンブリが2組設けられる場合、回転軸110の先端には軸方向に沿って1組の回転軸駆動アセンブリが設けられ、先端回転軸駆動アセンブリは、回転軸に沿って対称に設けられる2組の駆動ユニットを含む。押板1093と回転軸110との間に1組の回転軸駆動アセンブリが設けられ、当該組の回転軸駆動アセンブリは1組の駆動ユニットを含む。押板1093は、2組の駆動ユニットの上方に位置し、3組の駆動ユニットの表面の耐摩耗シートは回転軸110の接触点に揃っており、具体的は、軸方向に揃っている。接触点が回転軸110の軸方向にずれると、回転軸110の後端が浮き上がる恐れがある。押板1093の横方向には貫通孔が開設され、銅箔は貫通孔から露出する。銅箔は、駆動ユニット電極のリード媒体として外部に導線を介して接続される。
図15におけるa、b、cは、それぞれ3組の駆動ユニット111である。
【0202】
<回転軸の5点駆動の形態>
回転軸駆動アセンブリが5組設けられる場合、回転軸110の前後端にそれぞれ軸方向に沿って2組の回転軸駆動アセンブリが対称に設けられ、各組の回転軸駆動アセンブリは、回転軸に沿って対称に設けられる2組の駆動ユニットを含む。回転軸110の中部位置には1組の回転軸駆動アセンブリが設けられる。当該組の回転軸駆動アセンブリは、1組の駆動ユニットを含み、当該組の駆動ユニットは、押板1093と回転軸110との間に位置する。回転軸110の前後端にある2組の駆動ユニットの表面の耐摩耗シートは、回転軸110の接触点に揃っている。
図13におけるa、b、c、d、eは、それぞれ5組の駆動ユニット111である。
【0203】
[骨格]
図21に示すように、骨格112は、外殻109と回転軸110との間に設けられ、外殻109及び回転軸110と同軸である。骨格112は、回転軸110と外殻109との間の過渡部材である。組み立てる際に、回転軸110と骨格112とを同軸にし、さらに回転軸110と、骨格113と、外殻109とが同軸になるように回転軸-骨格を外殻内に取り付け、これにより取付精度が高くなる。また、骨格112は、回転軸駆動アセンブリに取付位置を提供する。さらに、骨格112は、回転軸と導線とを離間させ、回転軸動作に対する導線の干渉を避ける作用を奏する。
【0204】
図16に示すように、骨格112は、外殻109の内壁に隙間ばめされる整合部1121、回転軸を収容する収容溝1122、及び部品を搭載する取付部1123を有する。収容溝1122は、対称な斜面を有し、取付部1123には接続回路基板1124が固定される。接続回路基板1124には接続導線を有する。接続回路基板はPCBプリント基板である。
【0205】
ブラケットブロック1092は、収容溝1122に固定され、収容溝1122は、骨格112の軸方向に沿って複数設けられる。骨格112には、回転軸駆動アセンブリを収容する取付チャンバ1125が設けられ、収容溝1122及び取付チャンバ1125は間隔をあけて設けられる。回転軸駆動アセンブリが取り付けられた後、回転軸駆動アセンブリの耐摩耗層は、回転軸を位置規制する斜面となる。
【0206】
各駆動ユニットは、それぞれ電流が流れるための接続回路基板1124を有する。接続回路基板はPCBプリント基板である。接続回路基板1124には、回転軸駆動アセンブリに電気的に連通する回線が設けられる。各回転軸駆動アセンブリは、1つの中継回路基板1131に対応する。中継回路基板1131は、PCBプリント基板である。中継回路基板1131には接続回線が設けられる。接続回路基板1124の電流は、中継回路基板1131に集まる。中継回路基板1131は、伝送導線に接続され、伝送導線は、試料ホルダ上の信号コネクタに接続される。信号コネクタは、外部信号源に接続され、制御信号を出力する。回路基板の方式により電気信号の伝送を実現することにより、回転軸の回転に対する導線の干渉が回避される。
【0207】
具体的な実施例において、中継回路基板1131は骨格112に固定され、回転軸110は中継回路基板1131の下方に位置する(
図13を参照)。中継回路基板1131は、押板1093と回転軸駆動アセンブリとの間に位置する。中継回路基板1131はPCBプリント基板である。駆動ユニット111の溶接可能領域の面積は限られているので、強固な溶接が得られない。中継回路基板1131を使用することにより、組立過程において駆動ユニット上の導線との接触が減少されるので、溶接スポットが保護される。中継回路基板1131の左右2つの駆動ユニットからの6本の導線(3点駆動の場合、押板下方の駆動ユニットを含む9本の導線)を3本まで接続することで、電気的接続は簡単化される。
【0208】
好ましくは、接続回路基板1124と中継回路基板1131とは導線で電気的接続される。
【0209】
好ましくは、骨格112は円柱形であり、骨格112の片側に骨格112の軸方向に亘る溝が切り欠かれ、収容溝1122及び取付チャンバ1125はいずれも溝に位置する。骨格112の円弧面を底部、溝の開口を頂部とする場合、接続回路基板1124が置かれる位置には頂部から下へ骨格壁の一部を切り欠けてなる欠け口がある。切欠口の両端の壁は、接続回路基板1124を位置決めする作用を奏する。
【0210】
好ましくは、各接続回路基板1124の幅は、骨格の肉厚以下である。接続回路基板1124は、ボルトにより切欠口の頂面に固定される。
【0211】
好ましくは、中継回路基板1131が取り付けられる骨格壁の平面は、接続回路基板1124が取り付けられる骨格壁の平面よりも高い。このようにして、中継回路基板1131の一部が浮き上がり、その下方の接続回路基板1124と共に取り付けられ、取付スペースが節約される。さらに、中継回路基板1131と接続回路基板1124との間に隙間があるので、回線の短絡が回避される
【0212】
好ましくは、
図21に示すように、骨格112にネジ孔1126が取り付けられ、ネジ孔1126は、上から下へ骨格112を貫通する。ネジ孔1126は、いずれも貫通孔であることで、骨格112の清浄が便利であり、試料ホルダが清潔に保持されるため、透過型電子顕微鏡内の試料チャンバに対する汚染及び干渉が回避される。
【0213】
[光ファイバーの導入]
試料ホルダに光ファイバーが導入される。光ファイバーの作用は、1)光源で特定のスペクトルを有する光に調整して電子顕微鏡に射入し、試料を照射し、電磁界を加えること、2)試料が射出/反射した光を収集して測定及び分析のために電子顕微鏡から送信し、例えば、試料からの黒体放射を測定して試料温度を得ることである。
【0214】
好ましい実施形態において、
図20に示すように、光ファイバー溝1127が骨格112の側面に開設され、光ファイバー溝1127の軸方向が骨格112に亘る。光ファイバーが光ファイバー溝1127から通過することにより、光ファイバーの摩耗が回避され得る。
【0215】
好ましい実施形態において、試料ホルダのヘッド部に先端回路基板1129を有し、先端回路基板1129は、光ファイバー溝1127に繋がる。先端回路基板1129は、光ファイバー溝1127と同一直線に位置する。光ファイバー溝1127が骨格112の側面に開設されるのは、試料ホルダのヘッド部に先端回路基板1129を有し、光ファイバー溝1127が先端回路基板1129に繋がるためである。先端回路基板1129は、光ファイバー1130をガイドする作用を有し、光ファイバーのヘッド部は、先端回路基板1129を経過し、比較的小さな曲げ幅を有する。光ファイバーのヘッド部の曲げ幅が大き過ぎると、光波が減衰し、さらに光ファイバーが折断される恐れがある。
【0216】
先端回路基板1129は、取付ブロック1132により骨格に取り付けられる。取付ブロック1132は、ボルトにより先端回路基板1129が骨格112に固定される。先端回路基板1129は、光ファイバーをガイドするガイド面1133を有し、ガイド面1133は光ファイバー溝1127に揃っている。ガイド面1133は、試料挟持ノズルの方向へ延伸し、光ファイバーは、ガイド面1133に沿って試料に接近する。
【0217】
骨格112には2つの光ファイバー溝1127が対称に開設される。先端回路基板1129には、対称に設けられたガイド面1133を対応して有する。それぞれのガイド面1133は、それぞれの光ファイバー溝1127に繋がる。光ファイバー1130は、いずれか1つの光ファイバー溝1127から通過してもよいか、又は2つの根光ファイバー1130は、それぞれ2つの光ファイバー溝1127から通過してもよく、例えば、異なるスペクトルを導入するか、又は1本の光ファイバーが発光し、もう1本が光を収集する。
【0218】
図16に示すように、光ファイバー溝1127は、接続回路基板1124と同一直線に位置する。即ち、接続回路基板は、光ファイバー溝1127の経路に沿って配置される。接続回路基板1124の引出導線は、骨格112の内壁から引き出されてもよく、光ファイバー溝1127を通過してもよい。このように設置することにより、導線の配置と回転軸110の回転は互いに干渉しない。光ファイバー溝1127は直線状である。光ファイバー溝1127には、少なくとも直径0.5mmの光ファイバーを収容可能である。
【0219】
[導線のガイド]
先端回路基板に接続される導線は、外部のコントロールボックスに接続される必要がある。導線は、骨格109の外部から引き出されると、長時間の接触摩擦により導線が摩耗されると共に、導線の直径が小さく、配置が複雑であるので、互いに絡み合いやすい。そこで、骨格112の底部に導線が通過するための導線通過溝1128を開設することにより、導線の摩耗及び絡み合いが回避される。
【0220】
好ましい実施形態において、
図21に示すように、骨格112の底部には導線通過溝1128が開設される。導線通過溝1128の軸方向は骨格112に亘る。導線通過溝1128は、底部に向いて開口する溝である。
【0221】
[圧電セラミックスシート及び電極の配置]
回転軸平移又は自転を駆動する圧電セラミックスシートは、厚さ方向に沿う外部電界の作用によりせん断変形が発生する圧電セラミックスせん断シートである。
【0222】
好ましくは、圧電セラミックスシートの両側の表面には、いずれも導電塗層が塗布され、それぞれ上層電極と下層電極とされる。
【0223】
好ましい実施形態において、
図17に示すように、駆動ユニット111は、基板1111と、圧電セラミックスシート1112と、耐摩耗シート113を有する。基板1111上にセラミックスシート領域1113と電極領域1114を有する。圧電セラミックスシートは、セラミックスシート領域1113に積層して接続され、電極領域1114上には複数の線路があり、線路は圧電セラミックスシートの表面の導電塗層に電気的接続される。
【0224】
セラミックスシート領域1113には1つの圧電セラミックスシート又は少なくとも2つの圧電セラミックスシート1112が積層される。少なくとも2つの圧電セラミックスシート1112が積層される場合、圧電セラミックスシート1112の伸縮方向は互いに異なる。
【0225】
好ましくは、基板1111は、PCBプリント基板である。
【0226】
好ましくは、基板1111は、金属ベースPCBプリント基板である。
【0227】
好ましくは、基板1111は、アルミベースPCBプリント基板である。好ましくは、基板1111には凹台及び一対の取り付け孔1116を有し、取り付け孔1116を基板1111の前後両端とすると、セラミックスシート領域1113及び電極領域1114は基板の中央に位置し、凹台は基板1111の前後両端であって取り付け孔の周囲に位置し、セラミックスシート領域1113及び電極領域1114は基板1111の左右両側に位置する。
【0228】
好ましくは、最下層の圧電セラミックスシートの下層電極は、基板1111上のセラミックスシート領域1113に直接接触し、セラミックスシート領域1113上の回線により基板1111上の電極領域1114に接続される。最上層の圧電セラミックスシートの上層電極の表面は、A領域とB領域を有する。A領域に耐摩耗シート113が貼り付けられる。B領域は1本の中継導線に電気的接続され、中継導線の一端は基板1111上の電極領域1114に電気的接続される。
【0229】
好ましくは、中継導線は、B領域にはんだ付けされ、又は導電性接着剤を介してB領域に接着される。
【0230】
好ましくは、少なくとも2つの圧電セラミックスシートがある場合、最上層圧電セラミックスシート以外の各層の圧電セラミックスシートの上層電極は、重なり領域及び露出領域を有する。重なり領域は、当該層の圧電セラミックスシートの上の層の圧電セラミックスシートの下層電極に電気的接続され、露出領域は、1本の中継導線に電気的接続され、中継導線の一端は、基板上の電極領域1114に電気的接続される。
【0231】
好ましくは、中継導線は、露出領域にはんだ付けされ、又は導電性接着剤を介して露出領域に接着される。
【0232】
好ましくは、中継導線は、基板1111上の電極領域1114にはんだ付けされる。
【0233】
好ましくは、重なり領域は、当該層の圧電セラミックスシートの上の層の圧電セラミックスシートの下層電極に直接接触される。
【0234】
或いは、圧電セラミックスシートと電極の別の配置方式では、駆動ユニットは、電極板及び圧電セラミックスシートを含み、圧電セラミックスシートが電極板の表面に接着固定される。電極板は導体であり、電極板は引出導線に電気的接続される。
【0235】
図18に示すように、駆動ユニットは、第1電極板1117と、第1圧電セラミックスシート1118と、第2電極板1119とを含む。第1圧電セラミックスシート1118は、回転軸110の軸方向に沿ってせん断変形し、又は第1圧電セラミックスシート1118は、回転軸の周方向に沿ってせん断変形する。第1圧電セラミックスシート1118は、第1電極板1117と第2電極板1119との間に位置し、第1電極板1117及び第2電極板1119は、それぞれリード線端を有する。
【0236】
好ましくは、駆動ユニットは、第1電極板1117と、第1圧電セラミックスシート1118と、第2電極板1119と、第2圧電セラミックスシート1110と、第3電極板1120とを含む。それらは、第1電極板1117、第1圧電セラミックスシート1118、第2電極板1119、第2圧電セラミックスシート1110、第3電極板1120の順に取り付けられる。第1圧電セラミックスシート1118のせん断変形方向は、第2圧電セラミックスシート1110のせん断変形方向と異なる。第三電極板1120は、回転軸110に近いが、回転軸110に接触しない。
【0237】
好ましくは、第1電極板1117は、絶縁層に接着固定され、絶縁層は、骨格又は外殻に接着固定される。第3電極板1120には回転軸に接触する耐摩耗層113が設けられる。第1、第2及び第3は、3つの電極板があることを説明するための用語に過ぎない。第1及び第2は、2つの圧電セラミックスシートがあることを説明するための用語に過ぎない。
【0238】
好ましくは、第1電極板、絶縁層及び骨格は回路において容量性負荷に相当し、かつ各圧電セラミックスシートを駆動するのに必要な電圧が比較的高いので、高周波信号で各圧電セラミックスシートを駆動する際に、電圧信号は骨格に漏れやすく、電子顕微鏡を損傷させる可能性がある。そのため、第1電極板1117を接地させることにより、骨格に漏れる電圧を減少できるので、適切な電圧信号で第2電極板1119及び第3電極板1120を駆動でき、必要な電界が得られ、駆動機能の実現に影響を与えない。
【0239】
[回転軸の位置情報]
回転軸の末端に磁石1101が設けられ、骨格112に引出回路基板1106が設けられる。回転及び前後移動に伴い、磁界が変化し、磁界センサにより磁界を測定し、磁界に応じて回転軸の位置情報、即ち、回転軸の回転角度及び移動距離を得ることができる。三次元再構成には投影角度が必要であるので、回転軸の回転角度を測定する必要がある。回転軸の移動距離を測定するのは、試料を磁界センサを較正するときの位置に位置させ、回転軸の回転角度の測定誤差をより小さくするためである。現在の試料ホルダは、3自由度駆動であるのに対し、本発明の試料ホルダは4自由度駆動であり、回転軸の軸方向回転が増加され、回転軸の回転角度を測定することにより三次元再構成に投影角度を提供する。
【0240】
回転軸110の末端に磁石1101が設けられ、骨格112に引出回路基板1106が設けられ、骨格112に切欠口が開設される。引出回路基板1106は、折り曲げ部1105を含む。折り曲げ部1105は、切欠口内に位置する。磁界センサ1103は、折り曲げ部1105に固定される。磁界センサ1103を切欠口内に置くことにより、取るスペースが小さくなり、骨格に外嵌される外殻の直径が小さくなる。切欠口のスペースは、磁界センサ1103を収容するのに必要なスペースよりも遥かに大きいので、磁界センサ1103の取り外しとメンテナンスに十分なスペースを提供する。
【0241】
好ましい実施形態において、引出回路基板1106は、平面部1104を含む。平面部1104と折り曲げ部1105は骨格112を被覆する。平面部1104と折り曲げ部1105は導線により接続される。磁界センサ1103は、折り曲げ部1105にはんだ接続される。引出回路基板1106は、PCBプリント基板である。磁界センサ1103は、引出回路基板1106にはんだ接続されることにより、磁界センサ1103を固定するとともに、引出回路基板1106上の一対のピンの接続を短縮でき、接続に必要な導線の数を減少させる。
【0242】
好ましい実施形態において、平面部1104及び折り曲げ部1105はL字状であり、磁界センサ1103は磁石1101に対向する。折り曲げた回路基板を使用することにより、取るスペースが小さく、取り外しが容易である。回路基板が折り曲げられないと、ボルトを設けるのに必要なスペースが不十分であるので、接着固定しかできず、取り外しとメンテナンスが困難である。
【0243】
好ましくは、引出回路基板1106は、2組の引出端子を有する。1組の引出端子は、駆動ユニット111の導線に電気的接続され、もう1組の引出端子は、試料ホルダの電気コネクタに接続される。
【0244】
[多自由度試料ホルダを用いて試料のその場動的三次元再構成を行う方法]
多自由度試料ホルダを用いて試料のその場動的三次元再構成を行う方法は、以下のステップS1~S4を含む。
【0245】
(ステップS1)
前記試料ホルダを作製し、試料を試料ホルダの先端に装着し、試料ホルダを透過型電子顕微鏡に挿入する。
【0246】
(ステップS2)
試料の観察すべき領域での1つの特徴点を試料ホルダの軸線に位置合わせされるように調整する。
【0247】
(ステップS3)
回転軸を累積的に180°回転させ、1°ごとに写真を撮る。
【0248】
(ステップS4)
ステップS3で得られた写真をコンピュータに導入して三次元再構成を行う。なお、三次元再構成とは、三次元の物体に対してコンピュータによる表示及び処理に適される数学モデルを構築することをいい、従来技術に属する。
【0249】
図23は、本発明と従来試料ホルダの性能の比較表であり、今まで唯一の4自由度試料ホルダである。
【0250】
本明細書で具体的に開示されている要素および制限がない場合、本明細書で示された実施形態及び前記本発明を実現することができる。使用される用語および表現は、制限としてではなく例示的な用語として使用され、これらの用語および表現の使用は、上に示されまたは説明された特徴またはその一部の同等物を除外することを意図しておらず、本発明の範囲内で様々な修正が可能であることを認識されたい。したがって、本発明は様々な実施形態および特徴を通じて具体的に開示されているが、本明細書に記載された概念の修正および変形は、当業者によって採用され得、これらの修正および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれると考えられる。本明細書に記載または開示された記事、特許、特許出願、その他すべての文書および電子的に入手可能な情報の内容は、個々の出版物が具体的かつ個別に参照用に示されているのと同じように、参照によりその全体がある程度に本明細書に含まれる。本出願人は、このような記事、特許、特許出願、またはその他の文書からのすべての資料および情報をこの出願に組み込む権利を留保する。